2017年5月31日水曜日

もし戦わば(14)26億人の戦争:インド対中国



もし戦わばシリーズも11回目になりました。インドが中国を攻撃するとは考えにくく、中国がインド国境を越えて進軍したらどうなるかという想定です。周辺国にストレスを与える中国の存在は中国に近いパキスタンという宿敵を持つインドには特に面倒な存在でしょう。

 

If 2.6 Billion People Go To War: India vs. China 26億人の戦争になったらどうなるか:インド対中国


The National InterestKyle Mizokami May 27, 2017


  1. 仮にインドと中国が交戦すればアジア最大規模の破壊絵図が繰り広げられるだろう。さらにインド太平洋地区全体が動揺をうけ両国の世界経済も影響を免れない。地理と人口構成が大きな要素となり、戦役の範囲とともに戦勝条件が制約を受ける。
  2. 中印国境で以下の地点が注目だ。インド北方のアクサイチンAksai Chinおよび北東部のアルナチャルプラデシュ州Arunachal Pradeshである。中国はともに自国領土と主張しており、それぞれ新疆省および中国が占拠するチベットの一部だとする。中国は1962年に両地点を侵攻し、両軍は一か月交戦し、中国がわずかに領土を確保する結果になった。
  3. 両国とも核兵器の「非先制使用」を是としており、核戦争への発展は極めて可能性が低い。両国ともそれぞれ13憶人ほどと膨大な人口を擁し、実質的に占領は不可能だ。近代戦の例にもれず、インド中国が戦争に入れば陸海空が舞台となるはずだ。地理条件のため陸戦の範囲は限定されるが、空での戦いが両国で最大の損害を生むはずだ。ただし海戦ではインドの位置が優位性を生み、中国経済への影響がどうなるかが予想が難しい。
  4. 次回両国が武力衝突すれば1962年と異なり、双方が大規模な航空作戦を展開するだろう。両国とも戦術航空部隊は大規模に保有し人民解放軍空軍は蘭州軍区からアクサイチンに出撃し、成都軍区からアルナチャルプラデシュを狙うはずだ。蘭州軍区にはJ-11、J-11B戦闘機部隊があり、H-6戦略爆撃機二個連隊も配備されている。新疆に前方基地がないため蘭州軍区からの北インド航空作戦支援は限定的になる。成都軍区には高性能J-11AおよびJ-10戦闘機部隊が配備されているが、インドに近いチベットに航空基地は皆無に等しい。
  5. 中国のインド攻撃には戦術航空機部隊が必ずしも必要ではない。航空攻撃力の不足を弾道ミサイルで補えばいいので、人民解放軍ロケット部隊PLARFが重要だ。PLARFは核、非核両方の弾道ミサイルを扱い短距離、中距離弾道ミサイルはDF-11、DF-15、DF-21の各種を発射できる。ミサイルでインドの地上目標を戦略的に電撃攻撃するはずだが、その間南シナ海、東シナ海の緊急事態に対応できなくなる。
  6. それに対しインドの空軍部隊は空では中国より有利だ。戦闘の舞台は中国領と言えども人工希薄な地帯だが、ニューデリーはチベット国境からわずか213マイルしか離れておらず、インドのSu-30Mk1フランカー230機、MiG-29の69機さらにミラージュ2000部隊は中国機材と互角あるいは上を行くはずだ。少なくともJ-20戦闘機が投入されるまでこれは変わらない。インドはパキスタンを仮想敵とし、二正面作戦も想定して十分な数の機材を整備している。航空基地や重要施設の防衛にはアカーシュAkash中距離対空ミサイルの配備が進んでいる。
  7. インドは空軍力による戦争抑止効果に自信を持つが、中国の弾道ミサイル攻勢は少なくとも近い将来まで食い止める手段がない。中国ミサイルが新疆やチベットから発射されればインドの北側内の目標各地が大損害を受ける。インドには弾道ミサイルの迎撃手段がなく、ミサイル発射地点を探知して攻撃する手段もない。インドの弾道ミサイルは核運用のみで、通常戦に投入できない。
  8. 一方でインド、中国の地上戦が決定的な意味があるように見えるが、実はその反対である。アクサイチン=新疆戦線とアルナチャイプラデーシュ=チベット戦線の両方とも岩だらけの過酷な場所で輸送用インフラは皆無に近く機械化部隊の派遣は困難だ。攻撃部隊は渓谷通路を移動せざるを得ず砲兵隊の格好の目標となる。両国とも膨大な規模の陸軍部隊を擁するが(インド120万名、中国220万名)地上戦は被害も少ないが得るものも少ない手詰まり状態に入るはずだ。
  9. 海上戦が両国の優劣を決するはずだ。インドはインド洋にまたがり中国の急所を押える格好だ。インド海軍の潜水艦、空母INSビクラマディチャVikramaditya、水上艦部隊は簡単に中国の通商を遮断できる。中国海軍が封鎖を破る部隊を編成し派遣するには数週間かかるはずだが、広大なインド洋で封鎖解除は容易ではない。
  10. そうなると中国発着の航路は西太平洋を大きく迂回する必要があるが、今度はオーストラリア、日本、米国の海軍作戦が障害となる。中国の原油需要の87パーセントは輸入に依存し、中東、アフリカからの輸送が重要だ。中国も戦略石油備蓄を整備中で2020年代に完成すれば77日分の需要に対応できるが、それ以上に戦闘が長引けば北京は終戦を真剣に考えざるを得なくなる。
  11. 海上戦の二次効果がインド最大の武器になる。戦闘による緊張、世界経済への影響、さらにインド側につく日米はじめ各国の経済制裁で中国の輸出が減退し、国内で数百万単位の失業者が生まれる。国内の騒乱状態に経済不況が火に油を注ぐ格好となり、中国共産党の支配に悪影響が生まれる。中国の選択肢はインドより少なく、ニューデリー等大都市に非核弾頭のミサイルを撃ち込むしかなくなる。
  12. インドー中国間の戦闘は短期に終わるが、後味の悪い相当の破壊が生まれる。また世界経済にも広範囲の影響を残す。力の均衡と地理上の制約条件のため簡単に決着がつく戦闘にならないはずだ。両国ともこの点は理解しており50年にわたり戦闘がないのはこのためだろう。このまま今後も推移するのを祈るばかりだ。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: French Air Force Mirage 2000D at Kandahar Airfield. Wikimedia Commons/SAC Tim Laurence/MOD


中国戦闘機編隊がP-3に海南島付近で危険な挑発飛行を示す


A P-3C Orion aircraft in 2016. US Navy Photo

バルト海、黒海でもロシアが非常識な行為に走っていますが、こちら側でも中国の軍事拠点海南島を巡って神経が高ぶっているのかまたもや危険な飛行が目撃されました。当然中国は正当化しているようですが、そもそも国際空域、公海の概念が理解できず、全部自分の領土と考える異常な思考の国ですので何をするかわかりません。米軍も相当に注意しているでしょう。

 

Official: Pair of Chinese Fighters Unsafely Intercept U.S. Navy Aircraft Over South China Sea 中国戦闘機二機が米海軍機に南品海上空で危険な挑発行為

May 26, 2017 3:03 PM



  1. 中国戦闘機2機が米海軍P-3Cオライオン対潜哨戒機に対して南シナ海上空で危険な飛行行為をしかけてきたと米国防関係筋が26日USNI Newsに伝えてきた。
  2. 当該P-3C機は海南島から150マイルほどの地点を飛行中に成都J-10二機に5月24日現地時間7:30 A.M. と遭遇した。
  3. 中国の一機がオライオン右主翼から800ヤード地点につき、もう一機はP-3前方200ヤードを飛行しゆっくりと旋回した。P-3乗員は20分間におよぶ中国機の行動を「危険」と判断せざるを得なかったと国防関係筋がUSNI Newに語った。
  4. これまでも海南島付近で中国戦闘機が米軍機に接近することはよくあった。海南島は人民解放軍海軍の潜水艦運用の中心地だ。
  5. 2016年5月には米海軍EP-3Eがやはり海南島付近で瀋陽J-11の二機編隊により危険な飛行をしかけられたと米軍から苦情が申し立てられた。2014年にはP-8AポセイドンにJ-11一機が海南島付近で危険な迎撃を受け、J-11はポセイドンの前方を横切り、搭載兵装をみせびらかした。
  6. 同地区では2001年にEP-3が人民解放軍海軍の瀋陽J-8フィンバックに迎撃され、フィンバックは墜落しパイロットが死亡、EP-3は海南島に緊急着陸を迫られた事例が発生している。■

B-21大量調達に期待する米空軍・北朝鮮攻撃に必要な爆撃機は何機か


北朝鮮攻撃に戦略爆撃機60機必要なら中国はどうなのでしょう。
実際には巡航ミサイルやサイバー攻撃もあり、有人爆撃機だけを投入するわけではありませんが。(B-21も最初から無人運用も想定している言われますが。)トランプ政権になり、ヒラリー等が提唱したソフトパワーは否定されており、軍にとってはまず予算上限の制限をとり、次に本当に必要な装備を遠慮なく要求できる環境づくりが可能になりつつあるようですね。一方、KC-46はさらに苦労しそうです。コンパスコールでも空軍が批判をうけていますが、裏にボーイングがあるといはいえ、議会には優秀なスタッフがついていますので相当の勉強をして議員が取り上げるわけです。ここは政権の脚を引っ張るため次から次に醜悪な話題を「でっち上げてもいい」と考える政党がはびこる日本との違いですね。
B-21 artist renderingB-21 の想像図

B-21 Bomber Boost? General Touts 165; KC-46 Still Late B-21爆撃機調達数は上方修正されるのか KC-46開発は依然遅れ気味

May 25, 2017 at 3:11 PM
WASHINGTON: B-21爆撃機は何機必要なのか。80機、100機、165機なのか。予算の制約と別に議会の予算配分もあり、米空軍調達部門トップはこの質問に慎重に答弁したが、空軍内から意外なヒントが出た。
Lt. Gen. Arnold Bunchアーノルド・バンチ中将
  1. 機数は「最低100機」と高度機密事項の戦争実施案の検討内容を背景に、訓練、整備能力も考慮して答弁したのはアーノルド・バンチ中将で下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員会でのことだ。
  2. 100機とこれまでも空軍が表明していた。B-21レイダー爆撃機は80機から100機必要という説明が先行していた。その時点でも機数は最低100機との説明だったが、本日、ジェリー・ハリス中将(戦略作戦立案担当参謀次長)がマイク・ギャラガー議員(共、ウィスコンシン)に「おそらく必要になるのは」165機だと戦争実施構想すべてを総合した結果として伝えている。
  3. ギャラガー議員は中将クラスを招いたパネル討論でミッチェル研究所の研究報告書(”US Bomber Force: Sized to Sustain an Asymmetric Advantage for America” )に触れ、ロシア戦では258機、イラン戦では103機、北朝鮮向けに60機が必要との試算内容を尋ねている。各機数は該当国内の攻撃目標数と投下爆弾数から割り出しており、作戦期間と必要なソーティー数から求めた。
  4. ハリス中将からは報告書の試算は「不正確ではない」とし、「165機をおそらく整備すべき」と述べ、トランプ政権の新軍事戦略の内容より先行するつもりはないと加えた。(統合参謀本部議長ジョー・ダンフォード大将がオバマ政権下で次の戦略構想は極秘としていたことを想起すると現政権がこれを覆す可能性は低いと思われる)
  5. そうなると早晩新型爆撃機の必要機数が引き上げられそうだが、すぐに予算手当がつくことにはならない。2018年度予算案ではB-21には20億ドルが計上されている。
  6. 一方で「低リスク」給油機ソリューションのKC-46で想定外のリスクが増えている。空軍からはボーイング製給油機の就役が遅れると再度発表している。バンチ中将もジョン・ガラメンディ議員の質問に答えて、空軍はボーイングと共同でリスク評価を来週実施すると述べている。テスト項目の実施は予定より遅れているのは明らかで、バンチ中将はボーイングは予定通り実施可能と見ているが、「空軍は遅れるとの評価だ」と述べている。
  7. この問題に連邦航空局がからんでいる。同局は10年以上かけて次世代航空管制システムの実現を目指し、ガラメンディ議員はバンチ中将にFAAが問題なのか問いただし、中将は以下驚くべき答弁をしている。「FAAが問題だと断言できる立場にありません」 ガラメンディ議員は空軍関係者の表情からFAAが問題だと空軍が見ているのは明らかと述べた。
EC-130 Compass Call electronic warfare aircraft, used for an experimental cyber attackEC-130 コンパスコール電子戦機がサイバー攻撃実験を行った。
  1. 次にバンチ中将は先に出た報道内容を確認しボーイングからEC-130Hコンパスコール契約を空軍がL3に交付したことに対して異議申し立てがあったと認めた。L3が高度機密電子戦機材の作業で美味しい部分を得た形だ。空軍は同社に機体改修をさせるのが一番工期が短く、安価かつうまく実施することにつながると判断した。
  2. 空軍はコンパスコール機材を昨年退役させようとし、新型機材としてガルフストリームのG550ビジネスジェット機にBAEシステムズ製EW装備を搭載するとしていた。
  3. 「L3はシステム統合機能の実施で実績があり、ミッション装備での知見がも豊かです」とバンチ中将は小委員会で発言。「ミッション装備は高度の機密事項ですが、電子戦の実施に投入するための機材を求めています。同社は必要な設備をすべて保有しており、知見と活かしモデリング他必要な情報を有しています」
  4. L3がシステム統合機能で中心的システム統合企業(lead system integrator, LSI)なのかで議論が交わされた。バンチ中将がL3を中心企業と誤って発言する場面があり、以前のやりとりに詳しい向きは次世代戦闘システムや沿岸警備隊のDeepwater事業でLSIを使用しており、政府が契約企業側に従来は政府が行ってきた決定内容を任せている。両事業とも批判にさらされ、前者は中止され、後者は実質的に内容を改定している。バンチ中将はL3はLSIと称したくない理由がそこにあったのだ。■

2017年5月30日火曜日

不気味な中国公的債務の増加はグローバル経済にも深刻な問題


航空宇宙テーマなのになぜ金融問題なのか。読者の中に訝しく思われる向きがあるかもしれません。要は巨大になった中国の動向に世界が振り回されており、中国経済が破たんするような事態(これを望む勢力もあるわけですが)が本当に来るのか。安全保障上にどんな影響が出る(出ない)のかが関心の的だからです。金融経済政策を司るエリート層が導入中の各種政策手段を以下エッセイでは好意的に受け止めていますが、その結果がいつ、どう出てくるかで巨大な軍事力整備の動向も変わってくると思います。そろそろ中国単独での経済金融動向=地政学専門のターミナル5を増設すべきでしょうか。読者の皆さんのご意見を頂戴したいと思います。

The Next Global Financial Crisis: A Chinese Sovereign Debt Default? 次の世界金融危機で中国の公的債務はデフォルトになるのか


May 28, 2017

  1. ムーディズが中国国債を格下げし金融市場と政府中枢に波紋が広がっている。ただし格付け変更の例にもれずリスク要因の今後を占うより遅れて現状を追認する指標の観がある。中国には深刻な赤字問題があるが、近年の政策方向から中国の公的債務リスクは軽減しそうだが他の部門で高まりそうだ。
  2. 中国の債務問題でよく引用される指標が広義のマネーサプライ(M2、現金と銀行預金の合計)で、中国ではGDP比率(2016年末で208パーセント)が世界有数の水準になっている。国際比較では中国のM2/GDP比率は170パーセントとなるべきところが70ポイント高い。セクター別の借り入れ比率を見ると政府、家計両部門がとくに高いわけでない。だが金融除く企業部門の借入総額はGDPの170パーセントに達しており、世界最高水準だ。
  3. 中国で借入比率が全般的に高い背景には要因が三つある。
  4. まず、銀行中心の中国の金融では銀行預金と貸出しがほぼ全ての業務形態だ。米国では金融市場が発達しており、M2のGDP比率が80パーセントにしかなっていない。だが日本では銀行が中心で240パーセントになっている。
  5. 二番目に中国の貯蓄比率は異例なほど高いGDPの50パーセント以上の状態が数十年続いている。貯蓄の多くは銀行預金。
  6. 三番目に中国の通貨政策を加速する仕組みがある。マネーサプライは好況時に拡大し経済活動の活況を円滑化するが、不況時でも拡大させ経済、市場を安定化させる。
  7. 中国は大規模な金融危機を経験していないが、金融市場にリスクや不効率な要因が多々残っている。この原因は主に二つあり、高度経済成長が続いたことと銀行業界、国営企業への政府保証だ。例えばアジア金融危機で不良債権が30-40パーセントまで増えたが、銀行預金の保証があったため銀行破たんは出なかった。
  8. もちろんこの手法は永遠に続けられない。GDP成長率は2010年と2016年の比較で4ポイント近く低下した。ここから深刻な問題が生まれているのが企業のキャッシュフローとバランスシートで、ゾンビ企業が続々と生まれている。また中国経済は国際決済銀行が「三重のリスク」と呼ぶ負債比率上昇、生産性低下、政策選択幅の減少に直面しており、金融リスクが上昇すると政府の保証効果は減少する。
  9. ここ数年で金融リスクが各所に波及する兆候が見られ、株式市場から金融仲介業(シャドーバンキング)へ、債権取引から不動産へ、デジタル金融から外国為替市場へ移っている。投資流動性が高すぎる一方で投資対象が少なすぎる。
  10. M2のGDP比率が長く高止まりしているが、中国の預金者はこれまでは安全な銀行貯蓄に満足していた。だが二年前に狭義のマネーサプライ(M1つまり流通中の現金)がM2を上回る事態が突如発生し、以後両者の差が広がっている。預金金利の低さに我慢できない預金者が投資に走る様子がうかがえる。しかし投資機会は限られ、新規流入資金がバブルを形成して望ましくない整理統合が生まれる。
  11. 2016年末から中国は全般的金融リスクの危険度を発表しはじめ、政策パッケージで対応中だ。
  12. ただし政府の包括的保証きな問題が大きな問題そのものだ。金融商品の焦げ付きとゾンビ企業の倒産が最近始まっているが金融安定のため必要だ。財務省は地方政府の借り入れに明確な方針を最近設定している。また地方政府の短期銀行借り入れを政府発行長期債券にスワップする仕組みも導入し、バランスシート上で満期日が合わなくなる問題を軽減しようとしている。
  13. 2015年初頭に中央銀行が預金保険制度を商業銀行に導入した。2016年に債務株式スワップを導入し、政府が企業部門の債務軽減に本腰を入れ始めた。2017年に入り、金融規制当局が透明性の低いシャドウーバンキング部門を中心に金融部門から資金引き上げを開始した。当局は国営企業改革に手を付けるはずで、国営企業の日常業務を阻害せず投資利益にメスを入れることになろう。
  14. 債務問題解決で中国政府は正しい方向に向かっているようだ。
  15. もちろんムーディーズが指摘しているように、この段階で各改革策の成功を宣告するのは時期尚早である。中国が金融危機を回避できる保証もない。たとえば預金保険制度の導入で銀行破たんが増えても国債含むその他の金融危機の発生の可能性は下がる。そもそも倒産や破たんは回避できない。リスクのプレッシャーを軽減し、全般的な金融安定度を維持する方法である。とはいえ政府借り入れがGDP50%相当の中国には近い将来の国債不安を緩和する余地あり、とくに莫大な国有財産、比較的閉鎖的な資本勘定を考慮する必要がある。
  16. ムーディーズ格下げはその意味で今後のリスクを占うかわりにこれまでの問題へ警戒の目を向けさせる効果を生む。■
Yiping Huang is Professor of Economics at the National School of Development, Director of the Institute of Digital Finance, Peking University and Visiting Professor in the Crawford School of Public Policy at The Australian National University.
This first appeared in East Asia Forum here.
Image Credit: Creative Commons.


LM-100Jは十分軍用に転用できるC-130Jの民生用新型機


なるほど複雑で高価格の軍用仕様でなくても十分とする途上国需要をあてこんでいるわけですか。確かに民生用貨物輸送機需要はマーケット規模が限られているのでロッキードの狙いは面白いと思います。日本もC-130Hの後継機で検討してはいかがでしょう。え、先進国のプライドが許さないですか?

Lockheed Martin marks maiden flight of LM-100J

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
26 May 2017

ロッキード・マーティンの新型輸送機LM-100Jハーキュリーズが5月25日初飛行した。
軍用C-130Jの民生仕様機でジョージア州マリエッタ工場から離陸した。機体は2月にロールアウトしており飛行テストが始まり、FAA型式証明取得を目指す。
ロッキード・マーティンはC-130Jの拡販を狙うが、各国の国防予算が縮小気味でとくにペンタゴン予算の落ち込みが痛いところだ。
ハーキュリーズでは以前も民生用L-100が1964年から1992年にかけて115機が生産されたが、LM-100Jでは大型貨物輸送、石油ガス採掘業務、鉱業用補給活動、空中消火、貨物搬送、救急救命、人道救難、捜索救難等を過酷な飛行施設でも行えることをうたう。
民生用とはいうもののLM-100Jは官公庁、軍用用途も狙い、とくに高性能つまり高価格となるC-130Jまでは必要ない層を狙う。民生版では秘匿通信装置、電子戦装備、配線、ラック類はすべて外されており、ロッキードはLM-100J機体価格を60ないし70百万ドルとし、C-130Jの1億ドルより安価だ。また機体重量が軽くなり、燃料経費や整備費用が節約できる。このため同社は同機を軍用用途にも売り込む方針で途上国向けに訴求力があるとみている。
なお、旧型のL-100はアルゼンチン、エクアドル、インドネシア、リビア、ペルー、フィリピン、サウジアラビア、アラブ首長国連合の各国で軍が運用していた。■

2017年5月29日月曜日

★南シナ海航行の自由作戦で人工島6カイリ以内を通航した米海軍艦船と中国の反応




中国としては既成事実の積み重ねで逃げ切るつもりでしょうが、法による支配と相いれないとんでも主張であることは明確なのです。問題は北朝鮮他に目を取られる間に時間が経過することなのですが、今回の航行の自由作戦は意味が違うようです。中国といい朝鮮といい本当に面倒な隣国に日本は恵まれていますね。

USS デューイ(DDG-105)が南シナ海を航行している。 May 6, 2017. US Navy Photo

 

U.S. Warship Came Within 6 Miles of Chinese Artificial Island in Toughest Challenge Yet to Beijing South China Sea Claims

米艦が中国人工島から6カイリ以内を通航し、中国領有権主張に最大級の抗議を示した

 By: Sam LaGrone
May 25, 2017 1:04 PM • Updated: May 25, 2017 3:25 PM

  1. 米海軍駆逐艦が中国が造成した南シナ海内人工島から6カイリ地点を5月25日に航行し、中国主張へこれまでで最大の抗議活動となっていたと判明した。
  2. 同日現地時間午前7時にUSSデューイ(DDG-105)がスプラトリー島しょミスチーフ礁から6カイリ地点を航行したと米関係筋複数がUSNI Newsに認めた。
  3. 同艦は国際法で認める無害通航を行い、軍艦の権利として事前通告なしで他国領海を通航できる。
  4. 同艦はミスチーフ礁から12カイリ内を90分にわたりジグザグ航行した。乗員は艦外訓練も行ったと米関係者が伝えている。
  5. ただし航行中は中国フリゲ―ト艦が追尾し、無線で20回にわたり人民解放軍施設付近からの退去を求めてきた。
  6. 人民解放軍報道官は25日に中国海軍フリゲート艦部隊がデューイを「警告し遠ざけた」と伝えている。
  7. 今回はトランプ政権で初の航行の自由作戦(FON op)として中国の南シナ海領有主張に挑戦した形になった。USSデカター(DDG-73)がパラセル諸島でFON opを昨年10月に実施して以来となった。
2016年初めのミスチーフ礁。 CSIS Asian Maritime Transparency Initiative, DigitalGlobe Image

  1. ペンタゴン報道官ジェフ・デイヴィス大佐は航行の自由作戦の具体的事実を確認していない。「FON opsは通常通り実施しており、これまでと変わりなく、今後も継続していく」「作戦の総括は年間報告書で公表するがまだ刊行時期ではない」
  2. 反面、中国はデューイのミスチーフ礁航行の事実をさっそく確認し非難している。
  3. 「ミサイル駆逐艦USSデューイが南沙(スプラトリー)諸島付近に中国政府の許可なく進入してきた。中国海軍は合法的に同艦を米海軍艦船と識別し退去を求めた」と中国外務省報道官陸慷Lu Kangが述べている。
  4. 「米艦船の行動は中国主権の侵害であり安全保障上の利益も妨害するものであり、不必要な衝突につながりかねない行為だ。中国はこの行為に強く不満を表明し、明確に反対する」
  5. デューイが行ったFON opの性質、実施位置は人工島をもって領有権主張の根拠とする中国に明確にメッセージを送っている。
  6. 南シナ海ではほかにも人工島があるが、ミスチーフ礁の施設は他国の領有権主張と重ならない地点であることが異なり、引き潮時に姿を現す地点に建設されている。この事実は2016年のハーグ国際仲裁裁判所の裁定内容でも指摘されている。
  7. 国連海洋法条約では引き潮時の島しょはどの国も領有を主張できず領海の根拠とならない。
  8. 「今回はFON opsの中でも一番目立つ形となり、中国の南シナ海領有主張に真っ向から挑戦している」と米海軍大学校で国際法、海洋法、海洋政策を教えるジェイムズ・クラスカ教授がUSNI Newsに語っている。「その根拠はもし米国が無害航行と認識しないと領海ではなく、領海でなければ中国の領有主張が崩れる」
  9. FON opsを定期的に開始したのは2015年末のことで複数国が領有を主張する地点を対象に航行しており、中国の過剰な主張だけを対象にしたのではない。
  10. 戦略国際研究所内のアジア海洋透明性イニシアチブのグレゴリー・ポーリングは今回のミスチーフ航行は性格が違うとUSNI Newsに指摘。「ミスチーフは中国が領海外で実力占拠する唯一の地物featureであり、無害通航ではないFON opで現状に挑戦できる唯一の場所なのです」
  11. 「デューイはそのメッセージを送ったのであり、米国に関する限り、ミスチーフ礁とは人工島にほかならず、いかなる権利主張も発生しないと見ています。課題はこれを今後も続けるべきかという点です」
  12. USNI Newsは今月初めに国防長官官房が国家安全保障会議NSCに今後のFON opsの予定を提示し、NSCにいつ米艦船等の該当地区航行を選べるようにしたことを知った。NSC報道官からはNSCはFON op予定は把握していない旨の声明文がUSNI Newsに届いている。
  13. 南シナ海でのFON opsをカール・ヴィンソン空母打撃群が2月に同地を航行した際に実施できたが、ペンタゴンは同地区で意味のある戦略を構築する時間がなく見送られていたと国防関係筋複数からUSNI Newsに伝えられている。
  14. 今回の作戦はトランプ政権が承認した初の機会であったが、南シナ海では米艦船航空機は活発に運用されている。
  15. FON opとして地物の12カイリ地点を通航させるにはホワイトハウスの事前許可が必要だが、12カイリ地点の外側であれば米艦船はここ数か月継続して航行している。■
 
うーん、若干わかりにくい論理ですね。訳が間違っているのでしょうか。



ボーイングが新型極超音速スペースプレーン契約を獲得


ボーイングは長期間無人運航をして地球に帰ってきている謎の無人シャトルX-37で知見を有しており、今回の構想はX-37の延長という感じで契約受注は当然と言えば当然でしょう。まず国防用途のようですが、民間利用も開放されれば低費用と柔軟な打ち上げのパラダイムチェンジで低軌道上のビジネス活動にあらたな可能性が生まれますね。

Boeing beats out competitors to build hypersonic space plane

DARPA:極超音速スペースプレーン製造でボーイング案を選定

By: Jill Aitoro, May 24, 2017 (Photo Credit: DARPA)

国防高等研究プロジェクト庁DARPAがスペースプレーン試験機XS-1でボーイング案を選定した。極超音速機として低地球周回軌道に数日間活動する新しい構想だ。DARPAが5月24日に発表した。
「XS-1は従来型の航空機や打ち上げ機でなく言ってみれば二つを組みあわせ、打ち上げ費用を十分の一程度に下げて現在は必要とされる打ち上げ準備時間を短縮し必要なときに使えるようにする」とDARPAのジェス・スポネイブルが述べている。「ボーイングがXS-1のフェーズ1で進展を示していることをうれしく思い、今後も密接に協力しながら予算を確保したフェーズ2および3つまり機体製造と飛行段階に向かいたい」
XS-1は短期間で飛行可能となり低費用で宇宙空間に到達できる手段として宇宙機とジェット機の長所を組み合わせた構想だ。フェーズ1はコンセプト構築で三社が契約を交付され民間宇宙打ち上げ企業とタッグを組んだ。ボーイングはブルーオリジンと、メイステン・スペースシステムズXCORエアロスペースと、ノースロップ・グラマンヴァージンギャラクティックとそれぞれ連携した。
フェーズ2ではボーイングが技術実証機の設計、製造、試験を2019年にかけ実施する。まずエンジンの地上運転を10日間で10回行い飛行テスト前に推進系の有効性を確認する。フェーズ3の狙いはテスト飛行の12回ないし15回実施で2020年予定とする。うちフライト10回を10日以上内に行う目標があり、ペイロードなしでマッハ5程度の飛行からはじめ、マッハ10まで伸ばし、実証用のペイロード900ポンドを3,000ポンドまで増やし低地球周回軌道に乗せる。
DARPAはXS-1を再利用可能な無人機とし、大きさはビジネスジェット程度でロケット垂直打ち上げ方式で極超音速飛行を狙う。
「航空機同様に飛行しオンデマンドで宇宙空間に普通にアクセスする手段を実現するのは国防総省のニーズに答えるとともに将来の商用用途にも可能性を開く意義があります」(DARPAの戦術技術室長ブラッド・タウスレイ)■

★F-15.F/A-18の発展改修型を売りこむボーイングの勝算



ボーイングは商魂たくましい企業ですから既存機種を改良して性能威力を向上させて勝算ありと見ているわけです。F-35があることでF-15やF/A-18が逆に注目されるのは面白い現象ですね。もし日本がF-15Jを改修するとしたら三菱重工業で対応可能なのでしょうか。米空軍がF-XあらためPCAに向かう中、日本も大型ステルス機F-3開発に乗り出していますが、途中でF-15の大幅改修は避けて通れないのではないでしょうか。

攻撃任務では高性能版F-15は小口径爆弾16発、AIM-120AMRAAM4発、AGM-88HARM2発、JDAM-ER(2千ポンド)一発、600ガロン燃料タンク二個を搭載するCredit: Boeing

 

Boeing Touts Advanced Fighter Versions As ‘Different Animals’ ボーイングが売り込む高性能版戦闘機各型は「別の生き物」になる

Aviation Week & Space TechnologyMay 25, 2017 James Drew | Aviation Week & Space Technology


  1. ロッキード・マーティンのX-35がボーイングX-32を破り総額1兆ドルの共用打撃戦闘機に採用され、ボーイングはこれで戦闘機事業は先が見えたと考えたはずだ。だが16年たってボーイングのF-15とF/A-18は20年ほどのステルス熱狂時代を生き延び、旧式化する予測を跳ね返し、しっかり生き残っている。
  2. 一方でロッキードではF-35ライトニングIIと生産終了したF-22ラプターがともに費用超過と開発の遅れに苦しんでいるが、ボーイングはイーグル、スーパーホーネット、グラウラーの各機により高性能装備、センサーや兵装を組み込み、第五世代戦闘機に十分対抗できる機体になったとする。
  3. ボーイングはCH-47チヌークやAH-64アパッチの供用を2060年まで可能にする技術の順次応用「反復革新」により、同社の戦闘機生産ラインも2020年代初頭までの生産予定が確保され、さらにその先でも稼働させるとする。機体自体は2040年を越しても運用可能だ。
イーグル:ステルスはなくても火力はもっと強力になる
  1. 米海軍は当初構想どおりスーパーホーネットを全機導入したが、脅威の変化で120機程度の追加調達に向かいそうでブロック3機材を2019年以降に導入する。米空軍は120億ドルでC型イーグル、E型ストライクイーグルの改修を2025年にかけ行う。ここにはボーイング自社資金投入や海外運用国の改修分50億ドルはふくまれていない。
  2. ボーイングに言わせるとF-35やF-22に対してステルス性除けば十分対抗できる性能が実現しているという。高性能センサーや兵装がF/A-18やF-15に投入されているが、F-35では2020年代のブロック4まで待つことになるという。
  3. 低視認性や全方位ステルス性能はないが、「ドアを破れば航続距離、攻撃力、接続性を当社機材が提供します」とボーイングは説明。ボーイングのファントムワークスが開発中の新装備をF/A-18やF-15に搭載し統合防空体制下でもF-22やF-35同様に十分対抗できるようにする。戦闘シナリオの大部分では空対空、空対地、対艦攻撃のいずれでも「高性能版F-15」や「高性能版F/A-18」が理想的な機材になるという。
  4. 「生産中の航空優勢戦闘機でF-15に優る機材はありません」とボーイング・ミリタリーエアクラフト副社長F-15事業担当のスティーブ・パーカーは述べる。「同機の速力、高高度上昇性能、兵装搭載量以上の機材はありません」
Boeing fighter
ボーイングは電子戦能力、赤外線被探知性能の向上でF/A-18スーパーホーネットの残存性は大幅に向上すると説明。 Credit: Boeing

  1. 同社は以前提唱していた「サイレントイーグル」構想は取り下げた。兵装類を機内搭載しレーダー探知性を下げる構想だった。ボーイングによれば敵側もステルス性能に対して周波数変更で対抗しているという。またより強力なアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーの導入や長距離広範囲探査用の赤外線探知追尾ポッドが導入されつつある。
  2. サイレントイーグル構想で提唱された性能内容はサウジアラビア向けに引き渡しが進むF-15SAやカタールに提案中のF-15QAさらにイスラエルが検討中の高性能版機材に搭載される。
  3. 米空軍の改修策ではボーイングが世界最速の処理速度と説明するミッションコンピュータ(高性能ディプレイ・コアプロセッサーII)やきわめて強力な電子戦装備(BAEシステムズ製イーグル・パッシブ/アクティブ警告残存装備)を搭載する。
  1. ボーイングはレイセオン製APG-63(V)3 AESAレーダーを制空用F-15Cイーグル200機中125機に搭載し、さらにレイセオンのAPG-82(V)1をF-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機200機近くに搭載する準備中だ。米国仕様のF-15技術ロードマップでは2025年までに120億ドルを投入することにしている
  2. 最新型イーグルではフライバイワイヤ飛行制御を導入し兵装装着ポイントNo. 1からNo. 9を利用可能とし、ソーティーあたりの兵装搭載量、センサー運用を増やしている。さらにミサイル22発を運用できる。
  3. 前席後席にデジタル共用ヘルメット装着目標標的システムが搭載し、将来は広範囲ディプレイを採用したコックピットや低照度ヘッドアップディスプレイを搭載すべくボーイングは各社と共同開発中。最新のF-15ではジェネラルエレクトリック製F110-129ターボファン双発をサウジアラビアが選定した。またGEのさらに強力なF110-132の搭載も可能でこれはアラブ首長国連邦がロッキードF-16E/Fに搭載中だ。
  4. 一番目立つ変更点は機体構造の寿命延長だ。米空軍が飛ばすイーグルは9千飛行時間まで供用できる設計だが、改修型F-15は主翼と胴体部分を改修し2万飛行時間まで延長する。
  5. 「全く別の生き物といってよいでしょう」とパーカーは言う。「見かけは同じですが、大きく異なる機体になっています。ロードマップではF-15を2040年まで供用する想定です」
  6. ほんの一二年前までボーイングはF-15とF/A-18双方で生産継続の見込みは少ないと見ていたが大きく様相が変わってきた。
  7. 現在の発注規模でF-15生産は2019年まで続けられると同社は見ている。追加発注で2022年後半まで伸びそうだという。「2020年代中頃までは確実ですね」とパーカーも述べる。ボーイングは「最大72機までの」カタール向けF-15QAの受注を固めており、中東では別の国も相当数の発注を検討中だという。おそらくイスラエルのことだろう。
  1. 米軍向けストライクイーグルの納入は2000年代中頃で終わったが、パーカーは新規受注に積極的だ。今のところ米空軍は新規製造のF-15に関心を示しておらずF-15Cの後継は第六世代機の侵攻型制空戦闘機(PCA)としている。PCA開発が完了し納入開始までF-15Cへの予算投入は続くとパーカーは見ており、1970年代製の各機を2030年代まで飛ばすべく構造面での改修が必要だとする。
スーパーホーネットの最新動向
  1. F/A-18では海軍はスーパーホーネット調達はF-35Cと並行し今後も進め攻撃戦闘機の機数を確保する。海軍は563機を導入済みだが、ボーイングとしては追加発注を期待したいところだ。2019会計年度以降に納入される国内外向け機材はブロック3仕様になる。
  2. クウェートは「上限40機」のF/A-18E/F調達を承認され、カナダも「つなぎ機材」で18機を新規調達し、旧式化したCF-18ホーネットに追加する。ただしカナダ向け商談はボーイングが提起しているボンバルディア商用機向けカナダ政府補助金を巡る論争の行方に左右されそうだ。そのほかインド、フィンランドでもスーパーホーネット売り込みが展開中で、カナダもさらに発注数を増やす可能性がある。ただし、デンマークではロッキードF-35に敗れ受注できなかった。
  3. グローバル戦闘攻撃機事業のグローバル営業部長ラリー・バートによれば含めF/A-18生産は2020年代中頃まで継続できるという。生産ラインの維持には年間24機のスーパーホーネット生産が必要だ。
  1. ブロック3も以前の機材から相当進化しているが、ボーイングはブロック4の性能検討も開始している。
  2. 「F-35はめざさない。すべてのミッションで第五世代機が必要ではないですからね」とバートは言うが、低視認性機体の新規開発よりF/A-18やF-15の性能を進化させていく方がはるかに容易だと指摘する。「ミッションシステムズ、センサー類は進化し続け、スーパーホーネットの性能は向上していきます」
グラウラーはどうなるか
  1. グラウラーはボーイング流の「反復革新」の例そのもので、米海軍は当初の88機導入を160機近くまで増やす。
  2. 海軍は同機の供用期間を2040年代まで延長する企画にとりくんでいる。「高性能グラウラー」で中心となるのがノースロップ・グラマンの次世代ジャマーで4月に重要な設計審査を通過したばかりだ。またグラウラー搭載のALQ-218レーダー警戒電子支援電子情報処理システムもノースロップが製造する。
  3. ボーイングによれば米海軍とグラウラー改修事業で交渉が継続中で、機体構造寿命を現行の6千時間を9千時間に引き上げる。GEのF414高性能エンジンをグラウラー、スーパーホーネット双方に搭載する案もボーイングが売り込んでおり、実現すれば推力が18%増える。
  4. グラウラーを運用するのは米国以外ではオーストラリアのみだがすでに次世代ジャマーの導入を決めている。カナダ、クウェート向けのスーパーホーネット商談ではグラウラー導入は入っていないとボーイングは確認している。■




2017年5月28日日曜日

★★米陸軍が韓国から事前集積装備を米本国に送付するのはなぜか



一見すると韓国の防衛を放棄するような話ですが、よく見ると米陸軍が即応体制の高い部隊を交代で各地に派遣する体制づくりに投入されるのですね。朝鮮半島の危機はまだ続くと思うのですが、もっと大きな視野で運用を考えているようです。

Pre-positioned US stock leaving South Korea to create armored brigade 前方配備装備品を韓国から米本土に送り装甲旅団編成に投入する米陸軍

By: Jen Judson, May 26, 2017 (Photo Credit: Capt. Jonathan Camire/U.S. Army)

WASHINGTON — 米陸軍は韓国国内に集積した事前装備を米本土に呼び戻し装甲旅団戦闘集団(ACBT)の編成にあてる検討中と米陸軍参謀総長マーク・ミレー大将が明かした。
  1. この動きは旅団戦闘チームで軽装備歩兵中心から強力重装備の装甲旅団戦闘チームに再編成する意味がある。米陸軍は歩兵旅団戦闘チームを第15装甲旅団戦闘チームに再編成し、第16旅団用には韓国内の事前配備装備を活用する。
  2. 陸軍の事前集積装備はAPSと呼ばれ、各戦闘司令部下で迅速即応が必要な事態で緊急作戦用に使う想定だ。ただし陸軍は装備品セットを訓練で消費した分の補充に振り向け、さらに必要に応じ部隊規模を拡大する。このため事前配備装備を払い出し以前よりも頻度が高くなっている演習に投入する。
  3. 参謀総長の発言では従来の中心が対テロ作戦や国内治安確保作戦がイラク、アフガニスタンにあったが、部隊戦力を再構築し再び大国を相手にした本格戦闘に備える必要を実感しているのだという。
  4. 議会公聴会ではテッド・クルーズ上院議員(共、テキサス)がミレー参謀総長に韓国内装備を米本国に送還する必要について問いただした。参謀総長は装備品の本国送付で編成する第16ABCTは交替配備で後日韓国に展開され、陸軍の戦略方針の一環となるとし「リスクもたしかにあるが、許容範囲のリスクだ」と答えた。
  5. 韓国内にABCTを順繰りに配備するのは陸軍が進める交代方式の部隊配置方針と合致し従来のような継続前方配備はとらない。さらに陸軍は交代部隊は完全装備状態にさせる。
  6. 1月に交代配備による初のABCTを欧州に派遣したが、ドイツのブレーマーハーヴェン港到着からわずか14日でポーランドで装備品すべてを運用可能になっている。
  7. 米陸軍の迅速交代部隊派遣戦略では長年保管したままの装備品も使い作戦能力を誇示する。
  8. 前方配備部隊に装甲旅団規模の重装備を常時配備すべきかで論争があるが、ミレー大将は迅速な部隊派遣体制を維持するほうが良いと見る。「戦闘能力を高いままで、全部隊を恒久配備した際の固定費が不要になる」からだという。
  9. また同大将は下院軍事委員会委員長マック・ソーンベリー議員(共、テキサス)から欧州の前方配備ABCTの見直しを交代派遣の費用との比較で進めるよう求めがあったと述べている。
  10. ただミレー大将は「当方の提言として交代派遣をこのまま続け、...一国から別の国への移動を続けるべきと考えるのは部隊を一か所に貼り付けておくわけにいかないため」と述べた。さらに旅団を恒久的に駐留させると購買部や学校まで含めた体制の維持につながり、軍属家族を戦闘発生の可能性ある地帯に送ることになると述べている。
  11. 交代で配備する旅団は「戦闘を視野に入れた訓練体制を維持し、訓練内容も意味のあるもになる」と付け加えている。■