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2017年7月24日月曜日

ISIS狩りはAIでどう変わるか





Artificial Intelligence Will Help Hunt Daesh By December

デーイシュ狩りに人工知能が支援開始する

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 13, 2017 at 6:14 PM
  1. 民生部門の支援を受け戦場に人工知能がやってくる。半年以内に米軍は民生用AIのアルゴリズムを使いイスラム国関連の膨大な情報の分類抽出を実施する。
  2. 「今年末までに戦闘地帯にアルゴリズムを持ち込みたい。その実現には民間連携先を使うのが唯一の方法だ」(ドリュー・キューカー大佐)
  3. この話はどこまでの規模になるのか。キューカー大佐を軽く見てはいけない。大佐はアルゴリズム戦闘機能横断チームを率いており、同チームは退任近づくボブ・ワーク国防副長官の肝いりで創設されAIで情報データの洪水をさばくのが目的だ。
  4. 何年もかけ完璧な解決策をつくろうというのではない。「現在の技術水準で政府には十分」と大佐はDefenseOne主催技術カンファレンスで今朝発表している。民生の既存技術を政府の既存システムに統合するのだ。
  5. 「三百万行コードの話ではありません。コードは75行ほどで大型ソフトウェア内部に挿入します」と大佐は既存の情報収集用ソフトウェアを念頭に置いている。
  6. これまで長年にわたり米軍は高性能センサーで情報収集量の増加を狙い、高性能ネットワークでデータを伝え、人員を大量に投入して情報を監視させ何か発見させようとしてきた。「率直に言って情報量に圧倒されています」とキューカー大佐は指摘。問題点は「長時間の情報監視は人間の機能上無理」だという。分析官が収集データ全部に目を通すのは無理で疲れた目で肝心な点を見逃す可能性がある。
  7. このまま人員投入は続けられない。例えば国家地理空間情報局では情報収集衛星を次々と投入していくと画像分析だけで二百万人追加が必要になるとスコット・キューリー部長が危惧している。
  8. ヒューストンの人口相当の人員を雇うのではなく、「業務処理をアルゴリズムと機械学習により進めるべきだ。民間業界の力を借りて実現したい。独力では無理だからだ」とキューリー部長は述べた。
  9. キューカー大佐のチームが今のところ国防総省で最先端を進んでいる。国防長官官房の主任研究部長デイル・オーモンドは「同チームには協力を惜しまない。国防総省全体の研究部門の専門力を結集して結果を出したい」と述べている。
  10. 「まもなくワークショップを開催し民間業界と省内の研究部門で基本線を確認したい」とオーモンドは会合で発言。「その後は機密作業で省として必要な投資規模、民間が実施中の投資を把握したい」
  11. ペンタゴンが民間部門に協力を求めるように、有望だが苦労中の新興企業は政府資金を切望している。テスラ、グーグル、GM他の企業が自動運転車に潤沢な資金を投入しており、衝突回避の自動回避機能の実現を目指している一方でその他の技術課題への投資資金ははるかに少ない。物体認識機能もそのひとつだ。グーグルカーの場合は衝突回避のため他の車両や物体があるかわかればよい。軍用AIでは相手が民間人のトラックなのかISISのテクニカルなのかを荷台に機関銃の有無で判断する必要があるのだ。
http://cs.stanford.edu/people/karpathy/deepimagesent/
「幼児が野球バットを握っている」画像認識機能が人工知能の欠点の例だ。(Andrej Karpathy, Li Fei-Fei, Stanford University)

  1. キューカー大佐は問題が山積しているわけではないと強調する。アルゴリズム戦闘プロジェクトの主眼はデーィシュの打倒にあるのであり、あらゆる武器、車両の認識は想定していない。大佐の見解ではソフトウェアで識別する対象は「38例」にすぎないという。
  2. 人工知能に離れた場所の物体をそれぞれ認識できるプログラム作りは容易ではない。テロリストのライブ画像から正体をAIで判別するのではなく、AIはたくさんの現実世界のデータから試行錯誤で共通特徴を学習する。これは幼児が自動車と汽車を区別する認識を学ぶのと似ている。人間がデータにラベル分類を事前にしておけば作業は容易になる。
  3. 「アルゴリズムには大規模なデータセット群が必要で、ラベルづけを開始したばかりです」とキューカーは紹介している。「ラベル付けデータセットがどれだけの大きさになるかで決まります」このラベル付けの一部を政府職員が行うがキューカー大佐は理由を説明しなかった。おそらく最高高度の機密情報があるためだろう。だが作業の大部分は「データのラベル付け企業大手」に委託できるはずと大佐は述べた。ただし社名は明らかにしなかった。■

2017年6月10日土曜日

ISIS戦は新たな局面に入ったのか、無人機から攻撃を受けた米軍特殊部隊


イラク、シリアでは敵対勢力が空軍力を持たない前提で作戦を実施した来たため今回の無人機襲撃事例はショックでしょう。無人機を有効に活用すれば効果を上げるのも可能だと示しています。さらに無人機の製造元がイランであり、イランへの警戒をあらためて強める効果も生まれそうです。


U.S. F-15E Downs Iranian-Built Syrian Drone After Airstrike on U.S. Led Forces 米F-15Eがシリア無人機を撃墜したが、イラン製無人機は米軍主導の地上部隊を空爆していた

By Tom Demerly Jun 09 2017

 

  1. ストライクイーグルがシリアの無人機を撃墜したがその前に同無人機は反アサド地上部隊を攻撃していた。ストライクイーグルの撃墜例は湾岸戦争終結後二件目になった。
  2. 反アサド勢力のシリア軍を補佐中の米特殊部隊軍事顧問団がシリア政府に近い勢力が操作するイラン製シャヘド129型無人機の攻撃を受けた。6月8日に発生したと米陸軍が発表した。
  3. これに対し米空軍F-15Eストライクイーグルが同無人機を撃墜した。
  4. 現場はアル-タンフ、シリア南部でヨルダン国境に近い地点。アル-タンフには前線基地があり英米特殊部隊がISISに対抗するシリアゲリラ部隊マガウィル-アル-タウラ(「革命戦士部隊」)を援助している。同部隊はシリア地元の特殊作戦部隊で連合国勢力から訓練支援を受けながらアサド政権を相手に戦っている。
  5. 米軍はF-15Eストライクイーグル一機に無人機の探知撃破を命じた。米軍が敵対勢力による攻撃を空から受けるのはほぼ20年ではじめてで、ストライクイーグルが空対空戦で撃墜したのは1991年にイラクの武装ヘリコプターの撃墜事例以来二件目となった。
  6. 不朽の決意作戦の統合共同タスクフォース広報官ライアン・ディロン米陸軍大佐によればアサド政権所属の無人機が米顧問団とシリア革命戦隊を攻撃したが「連合軍部隊に被害は発生していない」
  7. 「政権側のUAVは米MQ-1プレデターに類似し、米空軍機が撃墜する前に搭載兵装の一部をISISに対抗する地上部隊の訓練支援にあたる連合軍人員の近くに投下した」との声明文を発表。「今回の撃墜の前に同日には連合軍が政権側テクニカル車両二台を破壊している。車両は武装衝突回避地帯内部に侵入し連合軍・提携勢力部隊の脅威となっていた」
  1. ペンタゴン担当記者タラ・コップは米軍機が無人機を撃墜したとツィッターで真っ先に報じた一人である。
  2. アル-タンフ周辺の34マイルにわたる地帯は「武装衝突回避地帯」として連合軍が設定している。緩衝地帯とし英米が支援する反アサド部隊の安全を図るのが目的だ。だが同地帯内部で事件数件が発生しており米軍による対応が必要とされてきた。6月6日火曜日には米海軍F/A-18ホーネットが爆弾四発を投下し推定10名の親アサド勢力戦闘員が死亡し、車両数台を破壊している。
  3. 親アサド勢力がイラン製シャヘド129無人機を近辺から操作した可能性がある。
  4. 注目されるのは、同地域での米陸上部隊がはじめて航空攻撃を受けたことだ。イラン製シャヘド129はヒズボラも2012年にイスラエル戦に投入している。イスラエルも無人機を撃墜していたが、テロ集団の運用能力が危険なエスカレーションをしたことが話題になっていた。■
イラン製シャヘド129武装無人機 (Iranian News Media)


2017年2月25日土曜日

ISIS戦闘員の累計死亡数は6万名?


要は何人殺したか、と数字にこだわっても意味がないということですね。ISISはなんとしても撃滅しなければなりませんが、イスラムの名前があれば異教徒になにをしてもいいと言う考えがある以上また狂戦士集団が発生するでしょう。イスラム世界に自浄力があるかが問われています。連合軍に参戦する湾岸諸国にその意識が本当にあるのでしょうか。歴史が証明します。

General claims 60,000 ISIS fighters have been killed

By Christopher Woody, Business Insider
Feb 15, 2017 4:53:24 pm

レイモンド・トーマス米特殊作戦軍団司令官は米軍および同盟軍は対ISIS作戦で戦闘員をこれまで6万名殺害したと2月14日に述べている。
  1. この発言は推定5万名との昨年12月の米関係者推定を上回っている。トーマス将軍の指揮下には海軍SEALsや陸軍特殊部隊があり、慎重な言い回しながら対ISIS作戦の効果が示されている。
  2. トーマスはワシントンDC近郊で開かれた全国国防産業協会主催の特殊作戦低強度紛争カンファレンスの席上で「死者数は大きな意味がある」と述べた。
  3. 「もっと強力な対策が必要なのか交戦規則改正が必要なのかと聞かれるが、実際にはおおきな成果になっているのです」
| Creative Commons photo

  1. 12月から急増の原因はモスル作戦とラッカでの戦闘強化が原因と考えられるが、死体数はいろいろな理由で信憑性が薄いとされる。
  2. まずISISに戦闘員が何人いるのかはっきりしていない。
  3. Military.comによればシリア人道観察団が2014年にISISにはイラク・シリア合わせて10万名の戦闘員がいたと発表していたが、ペンタゴンは2016年夏に15千名から20千名しかいないと発表していた。
統計上、この写真の戦闘員は大部分が死亡していることになる。
| Photo via Flickr

  1. さらに英国防相マイケル・ファロンがISIS戦闘員殺害数をややこしくしている。「ダーイシュ戦闘員25千名以上が死亡している」と12月に発言していた。
  2. ISISの規模で評価が分かれていることからトランプ政権や同盟各国による有効な対抗策が困難になっている。
  3. 死体数評価からヴィエトナム戦の記憶が蘇ってきた。当初の楽観的見積もりが欺瞞だったことが軽蔑の対象となった記憶だ。
  4. アフガニスタン、イラク事例では米政府は二度以上も殺害数を修正している。
  5. 元国防長官チャック・ヘイゲルも殺害者数の算出を非難している。「長官としての方針は一切公表しないことだった」とCNNのウルフ・ブリッツアーに12月述べている。「死亡者数でヴィエトナム戦で教訓があったではないか」
  6. 「敵側死亡者数は推定であり、正確な数字ではありません」と国防総省報道官クリストファー・シャーウッドはCNNに伝えていた。「殺害数は軍事作戦の成功の尺度の一つですが、連合軍はISIS打倒作戦ではこの数字を成功の基準にしていません」■

2017年2月14日火曜日

トランプ政権はISIS壊滅に向けてどんな動きを示すだろうか


トランプ政権が発足してから変化の流れが早くなっている気がします。以下ご紹介の記事でも前提としていたフリン補佐官が辞任してしまいました。ISISとの戦いはまだまだ続きそうですが、新政権の新思考で事態をうまく展開してもらいたいものです。

The National Interest

Here's How Trump's Pentagon Could Take On ISIS

February 7, 2017


ドナルド・トランプ大統領は国防長官および統合参謀本部議長にイラク・シリアのイスラム国(ISIS)に猛然と対決する案の作成を求めている。また大統領執行令では案の提出は2月末締切となっている。
電話一本で済む指示をわざわざペンタゴンまで足を運んで署名式を開催したのは大統領がISIS問題を真剣に捉えていることの現れだ。新政権の中東政策はまだ固まっていないが、いかなる政策になろうともISIS打倒が最上段に乗るのは間違いない。選挙運動中は「奴らをふっとばす」と主張していた大統領の公約はISISには海賊集団の末路を準備する(つまり壊滅)として政策に落とし込むとする。
ペンタゴン上層部にはオバマ政権時からの選択リストがあるが、前大統領も対ISIS作戦としては有効とは見ていなかった内容もある。ダンフォード統合参謀本部議長はISIS問題でトランプ大統領、ペンス副大統領と繰り返し会見しており、ホワイトハウスにもペンタゴンから出てくる提案内容は察しがついているようだ。いずれにせよ国家安全保障会議は今後30日間で考えられる選択肢全部を深く検討するだろう。
提案内容はおおむね以下に要約されるはずだ。
1. 戦術裁量権を拡大する
世界共通の交戦時の指揮命令系統の原則があり、武力衝突では敵側が民間人を利用する傾向がある際には特にこれが重要だ。ISISはこの戦術を多用している。モスルでのイラク攻勢が長引きイラク治安維持部隊に多大な損害が生まれたのはおよそ百万人の住民が戦闘の真っ只中にいたためだ。ISISは抜け目なく米軍は多数の住民がいれば空爆を実施しないと踏んだのだ。
ISIS掃討作戦をモスルで加速すべく、ペンタゴン上層部は交戦規則の変更を命じることができたはずだ。イラク治安維持部隊と共同作戦中の特殊部隊にもっと裁量を与えるとか、支援航空隊に現在は禁じられている民間人被害のリスクを承知で攻撃させるとかだ。残念ながら目標リストが拡大すれば民間人殺傷のリスクも増えることになるのは特に人口密度の高い都市部にあてはまる。トランプ大統領が米主導の空爆で数百名の現地市民の犠牲もやむを得ないと判断すれば、モスル解放はもっと早く実現し、作戦展開ももっと激烈にできていただろう。
2. 地上部隊を増強する
6千名の米軍隊員がISIS攻撃の顧問ならびに特殊部隊として現地にいる。これは2006年から2008年の最盛期の150千名体制とは大違いだ。当時はイラクはばらばらになりそうな状況だったがこれがオバマ政権で甘受できる最大値だった。オバマ大統領は国内政治の風向きからイラク・シリア派兵はこれ以上無理と判断していた。またオバマは千名単位で米軍を増派し、最前線近くに送っても効果は少ないと強く信じていた。現地友邦勢力を増強すればよいのであり、米兵が戦い命を犠牲にする必要があるのか。
ただしオバマ政権時の前提は消えた。保安官が変わり、新保安官は結果を求めている。しかも迅速に。CNN報道ではペンタゴンは12千名までの追加部隊をシリアに投入する提案をする可能性がある。ISISが自称する首都ラッカの陥落のためだ。米特殊部隊が攻撃の先頭に立つだろう。残りの部隊はラッカ近郊に展開し、航空部隊に攻撃目標を指示する。これで米軍がISIS領土深くに進軍することになり、前政権の方針とは大きく変わる。シリア民主部隊含む現地友邦勢力が米軍部隊を助けるだろうが、その逆はない。
3. クルド人部隊に武器をもっと供与する
米軍はシリア民主部隊のうちアラブ人部隊をシリア北部で何度となく空中物資投下で支援してきた。この根底にはシリア国内のクルド人勢力がトルコに衝突するのを回避する意義があった。トルコはシリア国内クルド人勢力を徹底して憎んでおり米国政府はあぶなかしいバランスをとってNATO主要加盟国のトルコを怒らせず、トルコ国内のインチリック空軍基地から米軍機を引き続き運用可能とし、地上で実力を三年間にわたり実証済みのクルド人勢力にも良い顔をしなければならない。トランプ大統領は外交上の配慮など無視するかもしれない。もしシリア国内のクルド人戦闘部隊がISIS地上作戦で一番有効な勢力だとわかれば、米国はクルド勢力が求める武器を配布するだけの思慮があっていいはずだ。
4. 敵の探知、捕捉、壊滅
スタンリー・マクリスタル、マイケル・フリン両将軍が特殊作戦、情報収集をイラク・アフガニスタンで指揮していたころ、米軍はテロリスト拠点への強襲作戦を毎晩実施していたものだ。強襲して大量の情報を回収し即座に司令部へ送り分析され、さらに強力な戦闘集団への作戦に応用されていた。この動きはF3EADと呼ばれ、find探知し、fix目標をおさえ、finish全滅させ、exploit情報を回収し、analyze分析し、disseminate次回作戦に応用するとの意味だ。このやり方でイラクのアルカイダは2010年にほぼ壊滅状態に追い込まれた。
マイク・フリンはこのF3EDづくりに一役買っており、今やトランプ大統領の国家安全保障担当補佐官である。一般閣僚が堆積したあとで大統領と直接協議できる立場だ。フリンはF3EADの復活を主張し、情報収集面を強調する形に変える可能性がある。その目的はISIS指導部を根本から壊滅することだ。
トランプ大統領はどんな選択をするだろうか。国内政治面での逆効果をあえて甘受しても数千名の追加派兵をイラク、シリアで命じ、米軍の死傷者増加を受け入れるだろうか。あるいは前任者の政策を継承し、地上戦は現地軍に任せ、米軍は空爆を強化するだろうか。最高司令官の検討課題は多いようだ。■
Daniel R. DePetris is a fellow at Defense Priorities.
Image: U.S. Marine Pfc. Garrett Reed during a security patrol in Garmsir, Afghanistan. Flickr/DVIDSHUB

2016年5月31日火曜日

★ISIS空爆が想定を超える規模で世界各地から爆弾をかき集める米軍





The US is Raiding its Global Bomb Stockpiles to Fight ISIS

MAY 26, 2016 BY MARCUS WEISGERBER

反ISIS連合は爆弾41,500発以上を投下し、ペンタゴンは他地域の備蓄弾薬を使い始めている

  1. 米軍はスマート爆弾の備蓄を世界各地から確保して二年目に入ったISIS空爆に投入しているとペンタゴン関係者が明らかにした。
  2. 空爆作戦を統括するチャールズ・ブラウン空軍少将は「他地域でどんなリスクが生まれるかを注視していきます」とカタールのアルウデイド空軍基地からビデオ会議で述べている。「どこかから爆弾を引き出した場合、緊急事態が発生したらどう対応できるかが問題です」
  3. 連合軍の空爆は2014年8月から延べ12,453回を数えている。このうちイラクで8,500回、シリアが4,000回近くで米軍が9,495回を実施している。投下爆弾数は合計41,697発で米軍は同盟各国へ爆弾を提供している。
  4. このため爆弾不足が生まれているがペンタゴンの方針でクラスター爆弾の処理が必要となっていることで状況がさらに深刻になっている。
  5. 米軍は弾薬備蓄をヨーロッパ、中東、アジア太平洋で維持しているが、旧型弾薬が多くなっているとシンクタンク指摘がある。本当は新型爆弾に切り替えたいが予算管理法により思うに任せないのが現実だ。
  6. アシュ・カーター国防長官は二月にペンタゴンは議会に18億ドル超で新規製造爆弾45,000発の調達を要求した。米国内弾薬メーカーはこの要望に応えるべく増産体制を整えている。
  7. 爆弾不足になったのは需要をあらかじめ予想していなかったためだ。当時はイラクに米軍は駐留しておらず軍はアフガニスタンからも撤退しようとしていた。だがこれは実現せず、アフガニスタンには米軍は数千名が駐留中で、さらにイラクに数千名が戻り現地軍の訓練助言にあたっている。ブラウン少将は同盟軍が投下する爆弾の大部分は米国製誘導スマート爆弾と指摘する。「空軍が次年度予算で調達を増やす動きに出ていますが、実際に使用可能になるのはあと2年後でしょう」
  8. 爆弾不足は米中央軍以外にも広がっている。太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍大将は議会に対して爆弾備蓄を食いつぶす事態を憂慮していると発言。
  9. ハリス大将は2月23日の上院軍事委員会公聴会で「重要弾薬の不足が最重要事項であり懸念材料」との声明文を準備した。「米太平洋軍USPACOMは今後も着実に予算を付け、追加調達し、性能向上につながる弾薬技術を開発して侵略を抑止し、撃退するよう進言する」
  10. ハリス大将はまたPACOMは「弾薬技術の改良、生産増強、事前配備を求めるが財政圧力がリスク要因」とも指摘している。
  11. 3月10日付下院軍事委員会マック・ソーンベリー委員長(共、テキサス)宛書簡でハリス大将は弾薬追加調達を優先事項上位3項目の一つとし、AIM-9X、AIM-120D空対空ミサイル、SM-6対空ミサイル、MK-48魚雷を列挙したがすべてレイセオンが製造している。
  12. 3月22日の下院軍事委員会公聴会ではジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長から「全方面での即応体制が完成し、消耗分の重要精密兵器の補充が完了するまで数年かかる」との見解が出た。
  13. 2月にはカーティス・スカパロッティ大将(当時在韓米軍司令官)からクラスター爆弾がなくなり太平洋における米軍の備蓄が消耗されるとの警告が出ている。
  14. 同大将は「重要弾薬は適度の備蓄を維持し朝鮮半島での開戦初頭で優位性を確保すべきだ」と下院軍医委員会公聴会で陳述している。
  15. また「問題を複雑化しているのは『備蓄分期限切れと使用禁止によりクラスター爆弾が使えなくなっていることだ」とも述べている。
  16. 2008年に当時の国防長官ロバート・ゲイツがクラスター爆弾の備蓄と使用双方で制限を加えたが、米国はクラスター爆弾制限条約を批准していない。
  17. ゲイツ長官の方針は2019年まで有効で、「クラスター爆弾は今後の装備から外し、使用しない」としている。スカパロッティ大将は2月23日の上院軍事委員会公聴会で「クラスター爆弾には多大な作戦効果をを期待しており、半島で危機状態が発生した場合に使用したい」「クラスター爆弾に替わる装備がないこと、同様の効果を生む通常弾が存在しないことを懸念している」と語っている。
  18. 上院による2017年度国防予算認可法案では国防総省に対して国防長官からクラスター兵器取り扱い方針を議会に説明あるまではクラスター爆弾の処分を禁じている。この文言を追加したのはトム・コットン議員(共、アーカンソー)だった。
  19. 同法案では同時にペンタゴンに別途10億ドル勘定を設定し「同盟各国軍が将来の緊急作戦で使用し米国支援に当てる精密誘導弾薬類の予見できる消費量」の調達備蓄を求めている。コットン議員は上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長(共、アリゾナ)と協議しこの文言を盛り込んだ。

AUTHOR

Marcus Weisgerber is the global business editor for Defense One, where he writes about the intersection of business and national security. He has been covering defense and national security issues for nearly a decade, previously as Pentagon correspondent for Defense News and chief editor of Inside ... Full Bio



2016年5月5日木曜日

不動の決意作戦>米海軍SEALに戦死者発生、12月以来の激戦があった模様


連休続きでのんびりしている日本ですが、イラクでは相当の激戦が今週あった模様です。そこで米海軍SEALに戦死者が発生したことが話題になっています。自由と繁栄の代償とはいえISISにより犠牲者が出るのは何とも悲しいことです。


UPDATED: U.S. Officials Describe Fight That Killed Navy SEAL Charles Keating IV

May 4, 2016 2:20 PM • Updated: May 4, 2016 4:52 PM

Special Warfare Operator 1st Class Charles Keating IV, 31, of San Diego. US Navy Photo
第一級特殊戦通信士チャールズ・キーティングIV(31) US Navy Photo
THE PENTAGON – 海軍SEAL隊員一名が北部イラクでのISISとの交戦で死亡したと不動の決意作戦司令部から5月4日に発表があった。戦闘は米軍の顧問支援チームとクルド人ペシュメルガ部隊がISISの奇襲攻撃を受けた中で発生した。

  1. 第一級特殊戦通信士チャールズ・キーティング(31)は迅速対応部隊(QRF)の一員としてテルアスクフ近郊の米軍小部隊の要請にこたえ出動した。同地はクルド人部隊とISISの前線から約二マイルの地点と米陸軍報道官スティーブ・ウォーレン大佐が四日午前に発表している。
  2. 12名ほどの顧問支援チームはテルアスクフでSIS戦闘員120名強が移動してくるのを発見。ISIS部隊は20両の「テクニカル」(民生車両を兵員輸送や武器搭載車両へ改装したもの)に分乗しブルドーザーも最低でも一台伴っていたとウォーレン大佐は述べた。
  3. ISISがペシュメルガ防衛線を突破したのは三日現地時間午前7時30分ごろで20分後に顧問支援チームからISIS部隊と交戦中との報告が入った。
  4. 「敵部隊が前方防衛線を攻撃し、テルアスクフに移動してくるとわが方の部隊は長期戦に自然にさらされた。直ちに迅速対抗部隊の出動要請を入れつつ、戦闘を続けたが隊員一名が銃弾を受け、救難隊が搬送している」(ウォーレン大佐)
  5. 顧問支援チームの緊急時にはQRFを送る体制ができていた。
  6. 戦闘は二時間以上続き、キーティングは午前9時32時に被弾したが、その時点でQRFがどの位戦闘に参加していたかは明らかにしていない。
  7. 「キーティングは直撃弾を受け、後方へ搬送されたものの傷が致命傷となった」「残りの米軍、連合軍側に負傷者は発生していないが救難ヘリは小火器から損傷を受けている」
  8. 米軍がISISと何時間交戦したかは不明だが、QRFおよび顧問支援チームが撤収して連合軍の機材が飛来した時点でもペシュメルガはISIS戦闘員と銃撃戦を続けていた。
  9. 「現地に航空機を派遣した。F-15、F-16、無人機、さらにB-52とA-10が戦闘に加わった」
  10. 「連合軍の空爆は有人機11機と無人機2機で31回を数えた。航空部隊が敵車両20台、爆弾トラック二台、迫撃砲三門、ブルドーザー一両を破壊しISIS戦闘員58名が戦死した。ペシュメルガはテルアスクフを再度確保した」
  11. 戦闘は14時間にわたり現地時間午後9時30分に終了した。
Photos released by ISIS that show some of the technicals alleged to have been used in assault on Tel Askuf
ISISが公表した写真ではテルアスクフ強襲作戦にテクニカルを投入したことがわかる。

  1. ウォーレン大佐はペシュメルガ側の正確な戦死者人数は把握していないと述べ、今回の戦闘は昨年12月以来最大規模だったと明らかにした。
  2. 三日のロイターではキーティングが狙撃されたとのペシュメルガ側の情報を伝えたが、ウォーレン大佐は状況ははっきりしていないと述べた。
  3. 「直撃を受けたのは事実。だが銃撃戦は非常に活発でその中で銃弾を浴びている。狙撃銃なのかAKの銃弾かは不明だ」
  4. ウォーレン大佐の報道発表を受けて海軍からキーティングの経歴発表が出た。
  5. インディアナ大では長距離ランナーで、海軍入隊は2007年だった。2008年に基本水中破壊教程(SEAL訓練)を修了し、イラクに自由作戦で二回、アフガニスタンへ普及の自由作戦で一回派遣されている。
  6. 「その後西海岸狙撃偵察訓練部隊で主任下士官となり、教官を務めた後で西海岸のSEALチームに分隊主任下士官として2015年2月に復帰している」と海軍特殊戦第一集団発表の資料が述べている。
  7. 「イラク派遣は三回目で、不動の決意作戦の支援中に戦死したことになる」
  8. キーティングの戦死は3月のルイス・F・カーディン二等軍曹(第二十六海兵遠征部隊第六海兵連隊第二大隊)に続くものとなった。カーディン二等軍曹はモスル近郊の火力支援陣地でISISのロケット弾攻撃を受け死亡している。■

2016年4月13日水曜日

★ISISを包囲しつつある連合軍 「サイバー爆弾」投入を国防副長官が認める



どうやらISIL(ISIS)への戦いは連合軍側が今や主導権を握り、各方面で着実にIS側を追い詰めているようです。副長官の言うサイバー爆弾の中身は不明ですが、一時e爆弾と言われていた装備ではないでしょうか。相手側の通信、コンピュータ性能を麻痺させる電磁パルス発生装置なのか、それとも全く未知の装備なのか、時間がたてばその概要があきらかになるでしょうね。
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‘It Sucks To Be ISIL:’ US Deploys ‘Cyber Bombs,’ Says DepSecDef

By COLIN CLARK on April 12, 2016 at 1:45 PM

IMG_9485Deputy Defense Secretary Bob Work at Buckley AFB
BUCKLEY AFB: 国防副長官ボブ・ワークが本日報道陣にISILは「全方位から」相当の圧迫を米国から受けていると語り、テロ集団はこの半年で連合軍側との交戦にことごとく敗北していると明かした。明らかにサイバー空間も含まれているようだ。
  1. 「この時期にISIL側にいるのは最悪だ」と副長官は宇宙シンポジウムに向かう専用機内で報道陣に語った。「連中は相当プレッシャーにさらされている。この10か月で連中が占拠する地点を攻撃すると都度敗退させている。守勢に回っているんだ」
  2. 国家として動員可能な手段をすべて投入しており、ワークが「サイバー爆弾」と呼ぶ装備が初めて投入されているという。ワークはアシュ・カーター国防長官の手腕を高く評価しており、「きわめて革新的にわが方の能力をISILに使っている。例えばサイバー爆弾を投下している。これは前例がない。長官は初めてサイバー軍にISIL攻撃を命じた。航空作戦同様にサイバー作戦が必要だ。宇宙装備も全部使いたい」
  3. カーター長官は4月5日の国際戦略研究所での講演でサイバー兵器投入をほのめかしていた。「戦略司令部およびサイバー軍にも宇宙空間とサイバー空間それぞれで強みを生かしてISIL打倒への貢献を求めている」
  4. 同僚記者のマイク・グラス(Space News)が宇宙装備をどう利用しているのかワークに説明を求めたが副長官はこれに応じなかった。
  5. 記者は「サイバー爆弾」の情報を知りたく、長官に尋ねている。今後情報が明らかになればお伝えできるだろう。■


2016年2月17日水曜日

★シリアへの地上軍展開でサウジアラビアはシリアの「流砂」で立ち往生しないか



日本からは今一理解が難しい中東情勢ですが、ここまで深刻になっている問題をどう解決するのか、答えはむき出しの暴力しかないのではないかと思います。平定後は民生復興にもっと努力が必要ですが、一度難民化した百万オーダーの住民を元に戻すためにも相当の努力が必要ですね。そうなると地上兵力の投入が避けて通れず、盟主を自任するサウジアラビア中心のアラブ軍だけで事に当たれるのか、米軍はじめとする西側軍事機構がどれだけ効果的な介入を実施できるかにかかっているのではないでしょうか。それにしてもここでもロシアの介入をむざむざと許したオバマ政権の失点が悔やまれますね。
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Syria: 'Quicksand' for Saudi Forces?

By Awad Mustafa and Aaron Mehta, Defense News10:03 a.m. EST February 14, 2016
(DUBAI and BRUSSELS — 米国に湾岸アラブ同盟各国からシリアでの有志連合軍活動への貢献拡大を約束する声が届いたが、現在展開中のアラブ各国によるイエメン介入を見る限り実効性が疑わしく見えてくる。
  1. 氏名不詳のサウジ政府関係者が今月初めに15万名を湾岸協力協議会に参加するスーダン、エジプト、ヨルダンの部隊をトルコ国内からシリアへ侵攻させると述べていたが有志連合軍に参加中の少なくとも二か国から否定されている。
  2. ヨルダン政府関係者はトルコあるいはアラブ主導によるシリア侵攻には参加しないが、国連決議が出て西側部隊も参加の上ロシアが調整するなら話は別と述べている。
  3. 「ヨルダンにシリア派兵の意向はないが、英米が中心となれば別個考える」と上記関係者は匿名を条件に述べている。「イラク、シリアとは550キロにものぼる長い国境線がある。ヨルダン軍含め地上軍派兵は国連が認めた上でロシアが調整に入れば実施できる」
  4. クウェート政府高官が2月9日ロイターにクウェートはイスラム過激派に対抗する国際努力を支持するが、湾岸アラブ諸国の憲法では防衛目的以外の参戦は禁じていると指摘していた。
  5. 「クウェートはサウジアラビアと全方位で国境を共にしている。我が国憲法の制約範囲内で可能ないかなる貢献を湾岸各国向けに提供する用意はある」とシーク・モハマド・アルムバラク・アルサバー内閣府相はドバイでロイターに述べている。
  6. 同相は作戦支援は情報共有や有志連合軍向けの拠点提供に限定されるとも示唆している。
  7. 地上作戦について国防長官アシュ・カーターが2月11日にブリュッセルで多数の選択肢をアラブ各国と検討中と紹介した。
  8. 「まず軍部隊と警察部隊向け訓練がある。訓練の実施に地上に部隊を配置する必要がある。次に、各国軍の支援と場合によっては同行がある。これは地上部隊で実施できる範囲だ。この可能性はすでに議論しているが、これ以上ここではお話しできない。特殊部隊に関する問題で、きわめて特別な能力に関する話題だからだ」
  9. 「また兵站補給の支援、ラマディ復興の支援についても検討した。すべて融資連合国が参画できる内容で、サウジアラビアも当然ここに含まれる。また課題のaあらゆる点を検討している」
  10. サウジがシリア、イエメンで二正面作戦を実施できるのかについてカーター長官はだれもその実施を望んでいいないとしながらサウジには能力とやる気があり、対ISIS戦闘に自国資源をつぎ込む覚悟ができていると述べている。
  11. 「サウジに代わりお話しできないが、イエメンで事態鎮静化を願うばかりだ、イエメン国民のためににも戦闘が下火になることが望ましい」
  12. ウバイ・シャバンダール(前米国防総省、現在ドバイのドラゴーマンパートナーズを主宰)によればシリア国内でサウジがプレゼンスをどれだけ示すかはサウジの関与次第だという。
  13. 「サウジは空輸能力と特殊部隊で特に兵力投射能力を整備してきました。迅速に移動させ現地で協力関係を作ります。これはアメリカのやり方を参考にしていますが、選び抜かれた精鋭部隊です。下命あれば素早く機動的に展開し、あらゆる事態に対応できます」「つまりサウジにとってトルコ南部への進駐は容易だということです。」
  14. ただしシリアの地政学的条件は複雑で、ロシアも介入し、イランが北部にプレゼンスを置いているため事情が異なるはずだとシャバンダールは指摘する。
  15. 「トルコ・アラブ連合軍がシリア北部に侵攻するためにはNATOが空から支援するか各国の支援が必要でしょう」
  16. サウジ軍のイエメン介入でアラブ側は多大な資源投入を迫られており、同じ水準で兵力を多方面に投射するのは難関と指摘する。
  17. 「兵站補給の問題があるからと言って派遣部隊を送ることを躊躇する理由にはならないし、シリア-ヨルダン国境に偵察部隊を送る、またはシリア-トルコ国境にトルコまたはヨルダン軍部隊を送ることも同様だが、不確定要素はNATO、米国のいずれかか双方が航空支援を効果的に提供できるのか、シリア南部北部のダーシュ(ISIS)を平定できるのかだ」とする。「ロシアが空爆を継続していることも忘れてはならない。結果としてシリア北部やダマスカス郊外でダーシュが力をつけている」という。
  18. またシーア派外国人戦闘員がシリア国内に搬送されており、その視点ではシリア北部に侵攻するアラブ連合軍は一義的な脅威にとらえると指摘する。アレッポ前線で戦闘に加わっているシーア派過激派がイラン革命防衛隊の指揮下にあり、その意味ではイエメンで抵抗するフーシと同じだという。
  19. サウジがイエメンに派兵しているのは自国南部方面の国境の保全が主目的であると湾岸地区の安全保障軍事面で詳しいマシュー・ヘッジスは指摘する。「サウジ軍は国内の基地から作戦を展開している」という。
  20. サウジアラビアが投入するのは特殊部隊と戦闘航空機および少数の兵員になりそうだ。ただし、イエメンでの投入規模(戦闘部隊3,500名、支援部隊6,500名)を上回ることはないだろうとヘッジスは述べた。
  21. 「イエメンなのかシリアなのかの選択で人員の質が大きく変わる。戦闘経験があるのは一部の兵員に限られ、両方面で有能な働きができる兵員数は多くないだろう。サウジアラビアがシリア地上戦の実施準備ができているとの報道は各国に対して対イスラム過激主義への戦闘を早く実施させ、アサド政権の復権にも対抗させようというねらいがあるのだろう」
  22. 国家国防大学校のポール・サリヴァン教授によればサウジアラビアは軍事活動、外交活動ともに手を広げすぎないよう注意が必要と指摘する。シリアは「流砂」になりかねないというのだ。
  23. 「もしサウジアラビアがUAEやその他GCC加盟国とともに関与しなければシリア問題は一時的な解決しか望めない。ISIS問題にはモスレム教徒の軍隊が対処すべきと考える向きが多い。それはある程度正しいのだが、サウジアラビアやその他GCC加盟国は多くの脅威に今日直面しているのだ」
  24. 「そこでシリア問題の大きな課題は軍事的対応で脅威の深刻化を避ける点だ。おしなべてどのように戦闘状態を下火にすることにかかっており、もっと大事なのはシリアを再建し、国民に希望を与え、仕事や住居を確保することだ」■


2016年2月4日木曜日

オーストラリアの安全保障のとらえ方・コミットメントは日本にも参考になる


最近はインド太平洋Indo-Pacificという言葉が目立ちます。安全保障、通商上の権益を考えると太平洋だけでは不十分という意識の広がりからでしょう。日本にとっても単に潜水艦の調達問題以上にオーストラリアとの安全保障意識の共有は重要です。その中でオーストラリアで国防問題に精通した前国防相の発言が出ていますので、同国の問題意識をのぞいてみましょう。

Australia Taking Long View in Defense Spending in Emerging Sub, Frigate Programs

By: John Grady
February 3, 2016 9:57 AM

Collins-class attack boats HMAS Dechaineux leads HMAS Waller and HMAS Sheean in formation in Cockburn Sound, near Rockingham Western Australia in 2013. RAN Photo
2013年、西部オーストラリアのコックバーンサウンドを通過するコリンズ級潜水艦三隻、前からHMASデシャニューDechaineux、HMASウォーラーWaller、HMASシーアンSheean RAN Photo

オーストラリア軍の装備近代化の上位項目は潜水艦、フリゲート、遠洋監視艇だと前国防相が2月2日にヘリテージ財団で講演した。
  1. ケビン・アンドリュース前国防相はワシントンDCで自由民主党政権により国防支出をGDP2%相当まで引き上げると決定されたことで10年間にわたる「長期的展望」で安全保障上の抑止効果と各国との協力体制がより効果を上げると述べた。
  2. アジアがオーストラリアの主要貿易相手先であり、「安全保障上の権益を決定する要因だ」と述べた。
  3. また新型潜水艦ではまもなく調達先をドイツ、フランス、日本から選ぶとしている。「既成の潜水艦では選択対象にならない」とし、潜水艦事業はオーストラリアにとって大型案件であり、今後10年間が事業期間となり、艦隊就役もその後20年に及ぶと指摘した。
  4. オーストラリア政府はインド・太平洋諸国が軍事装備の近代化を進めるのを横目に見ながら事業を推進していくが、特に中国の動向を意識している。アンドリュースも中国が域内で最大規模の海軍力、空軍力を保有しつつサイバー・宇宙分野でも装備を拡充していることを指摘し、「オーストラリアも静観しているわけにいかない」と発言。

Royal Australian Navy MH60R 'Romeo' Seahawk, flies past HMAS Canberra. RAN Photo
HMASキャンベラのわきを飛行するオーストラリア海軍所属のMH-60R『ロミオ」シーホーク。RAN Photo

  1. ますます自己主張を強める中国は東シナ海、南シナ海で大部分を自国領土と主張している。サンゴ礁を人工島に変換させ、米駆逐艦より大きな海洋巡視船を建造し、海洋進出の動きで野心を隠そうともしていない。
  2. 米駆逐艦が最近になり問題海域を航行したが「中国にとっては脅威と感じられない」形で人工島の近辺を航行しただけだとアンドリュースは指摘する。またオーストラリアも同海域に艦船を派遣しており、米国と同様に自国機を上空飛行させているほか、マラッカ海峡では30年にわたり監視活動を展開しているという。
  3. 「航行の自由を主張すると中国の利益にかなうことになる」とし、問題海域での領有権を巡っては平和裏に交渉すべきだと主張。
  4. アンドリュースは昨年行われたオーストラリア北部での演習に米海兵隊2,500名が参加しており、今後はダーウィン協定で海兵隊の規模は増えると紹介した。またダーウィンの軍港施設は拡張工事中でさらに大型の艦船の利用が可能になると言及。
  5. 「日本とは良好な関係にある」とアンドリュースは通商と安全保障の両面で権益を共有し、自衛隊との演習に米軍も加え実施していると紹介。インドとの関係は労働党政権で「険しくなった」が関係は改善しつつある。シンガポール、インドネシア、マレーシアとは強いつながりがあると述べた。
Three F/A-18 Hornets, Royal Australian Air Force, fly in a training mission during Red Flag 12-3 March 9, 2012. US Air Force Photo
オーストラリア空軍所属のF/A-18ホーネット三機編隊がレッドフラッグ演習で飛行中。2012年3月9日撮影。US Air Force Photo

  1. 中東ではオーストラリアはイラク政府を米国に次ぐ規模で支援しており、イスラム国との闘争を助けているという。イラクでは900名のオーストラリア軍隊員がイラク正規軍、特殊部隊の訓練にあたっており、空軍も作戦を展開している。F/A-18ホーネット・スーパーホーネット6機を派遣し、イラク・シリアで空爆を実施中であり、空中給油機、空中指揮統制機もそれぞれ1機派遣している。ただアンドリュースは空軍ミッションの三分の二は弾薬を投下せずに帰還していると推測している。目標情報が不正確なためだという。
  2. イスラム国との戦いが続くが、アンドリュースは「ラマディ奪還はモスルやラッカよりも重要度は低い」と述べた。モスルはイラク第二の都市でラッカはシリアでイスラム国が首都と称する都市である。ラマディはイラクのアンバール地方の中心都市だ。
  3. アンドリュースはインド太平洋地区の各国とオーストラリアは域内でイスラム過激主義が台頭していることを懸念していると強調した。ジャカルタで発生したテロ事件で8名が死亡したが、インドネシアが容疑者を釈放したこと、イラクやシリアから外国人戦闘員が帰国していること、さらにフィリピン南部でゲリラ活動が依然続いていることをオーストラリア政府は他国とともに注意深く観察していると述べた。■