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2025年5月31日土曜日

イスラエルの「アイアン・ビーム」レーザー対空防衛システムが敵ドローンの撃墜に成功(The War Zone)—過大な期待は無理ですが、少なくとも迎撃手段の価格体系を一変させる可能性が出てきました

 

Israel has used a new air defense laser to shoot down Hezbollah drones in the current conflict in the Middle East, it has been confirmed. What is described as an adapted version of the Iron Beam system made its combat debut last October and the definitive version should be fielded by the Israel Defense Forces (IDF) later this year, joining an already formidable, layered air defense network.

ラファエルのスクリーンショット


高出力レーザーがイスラエルの多層対空・ミサイル防衛システムに追加された

スラエルが新たな空対空レーザーを使用してヒズボラ無人機を撃墜したことが確認された。アイアン・ビームシステムの改良型とされるこのシステムは昨年10月に戦闘デビューを果たし、最終バージョンはイスラエル国防軍(IDF)により今年後半に配備される。強力な多層式空対空防衛網に追加される。

昨年10月にアイアン・ビームの暫定版によって標的とされたヒズボラ無人機の破壊とみられるシーン。ラファエルのスクリーンショット

アイアン・ビーム(ヘブライ語名:マゲン・オル)の使用は、IDF、イスラエル空軍(IAF)、防衛企業ラファエルの共同声明で発表された。3組織は、「革命的な迎撃システムを展開するための加速開発プログラムを実施した」とされ、イスラエルの防衛研究開発局も関与している。

この緊急プログラムにより、IAFの空中防衛システムがアイアン・ビームを配備し、高出力レーザーの試作機を使用して「数十の敵の脅威」を成功裏に迎撃した。

アイアン・ビームシステムのクローズアップ。イスラエル国防省のスクリーンショット

イスラエルのメディアは、アイアン・ビームが当初「最終システムのスケーリングダウン版」として配備されたと報じたが、その違いやバッテリー配置の詳細は明かされていない。

最終形態のアイアン・ビームはトレーラー搭載型で、ロケット、迫撃砲、ドローンなどの目標を破壊する指向性エネルギー兵器を使用する。過去には、報告書で「100~150kWの固体レーザーを放出し、ロケットやミサイルを撃墜できる」と説明されていた。

2022年4月、イスラエル国防軍(IDF)のヤニブ・ロテム准将は、タイムズ・オブ・イスラエルの報道によると、アイアン・ビームが「困難な射程とタイミング」でテストされたと述べた。「レーザーの使用は『ゲームチェンジャー』であり、技術は操作が簡単で経済的に実現可能であることが証明されている」とロテムは付け加えた。

イスラエル国防省によると、その試験には「破片、ロケット、対戦車ミサイル、無人航空機を、多様な複雑なシナリオ下で迎撃する」内容が含まれていた。イスラエルは「世界初の国の一つとして、運用基準を満たす強力なレーザー技術を開発し、運用シナリオ下での迎撃を実証した」とされた。

同時に、イスラエル国防軍(IDF)はオンラインで103秒の動画を公開し、システムがロケット、迫撃砲、ドローンを捕捉し破壊する様子を展示した。

一般的に、実用的な対空レーザーの開発と配備は、多くの国にとって長年の課題だったが、イスラエルにとって、このようなシステムのメリットは特に明白だ。

長年、IDFは敵対国から大規模な集中攻撃の脅威に直面してきた。これには、比較的低コストのロケット、砲弾、迫撃砲弾が大量に用いられるケースも含まれる。

これまで、このような攻撃への防御は、小型で高速な目標を標的とするために開発された「アイアン・ドームシステム」に委ねられてきた。

ガザ市から発射されたロケットを迎撃するため、南部都市スデロット上空に展開されたイスラエルのアイアン・ドーム防空システム。写真:Saeed Qaq/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

複数の報告でアイアン・ドームの有効性を示しているが、これは多大なコストを伴なう。タミルミサイル迎撃弾を大量に消費するためだ。大規模集中攻撃は、少なくとも短期的にタミル迎撃弾の在庫を枯渇させるリスクがある。

一方、アイアン・ビームは大幅に低いコストで多数の目標を攻撃できる。

2022年4月、当時のイスラエル首相ナフタリ・ベネットは、アイアン・ビームが1発あたり$3.50のコストで目標を撃破できると述べた。

最近の報告では、アイアン・ビームの1発あたりのコストは$2.50に近いとされている。

いずれにせよ、これはタミル迎撃ミサイル1発あたりの約$50,000(最も低い見積もりの中でも)という価格と比べて、大幅な差がある。

アイアン・ドームで使用されるタミルミサイル。Rafael

中東の最新の紛争以前から、イスラエルはアイアン・ビームの配備計画を加速させていた。この計画は当初、2024年に運用開始予定だった。この背景には、アイアン・ドームや他のシステム用の迎撃ミサイルが、より激烈で長期にわたる作戦で枯渇する可能性への懸念がある。

戦闘前にヒズボラが約13万発のロケット、ミサイル、迫撃砲弾を保有していると推定されていた。一方、ガザではハマスとパレスチナ・イスラム聖戦が数千発の追加のロケットと迫撃砲弾を保有していた。同時に、イランから供給された長距離一方通行攻撃ドローンからの脅威が拡大しており、現在の紛争でも大幅に使用されている。注目すべきは、10月の戦闘で暫定的な「アイアン・ビーム」で撃墜されたドローンはヒズボラのドローンだけと報告されている点だが、他の種類の標的も存在した可能性はある。

同時に、レーザー兵器には制限があり、熱負荷によりシステムが冷却を必要とするまで連続発射が限られる。さらに、レーザーシステムは厚い雲や悪天候下では機能しない。

「レーザーで撃墜できるのは、見えるものだけだ」とロテムは以前、タイムズ・オブ・イスラエルに語っていた。

同時に、このようなレーザー兵器は点防御兵器であり、短射程のため、広範な領域をカバーするには複数システムが必要となる。一部の状況では、単一の非常に大規模な軍事基地でも、十分な防御を確保するために複数のシステムが必要になる可能性がある。

この点を踏まえ、アイアン・ビームはアイアン・ドームや他の動的防御システムと補完的なシステムとして位置付けられており、代替システムではない。

暫定版のアイアン・ビームがどのような形で配備されたかは不明だが、報告によると、少なくとも一定程度の成功を収めたとされている。

「イスラエルは世界で初めて大規模なレーザー迎撃能力を実証した国となった」と、アイアン・ドームの開発に参画した国防研究開発局長のダニエル・ゴールド博士は述べた。「戦争中に技術的・運用上の大きな成功を収め、レーザー兵器の配備に関する私たちのビジョンが実現した」

ゴールドはまた、イスラエル国防軍(IDF)が航空機や軍艦に同様のレーザーベースの迎撃システムを配備する計画があると示唆した。

イスラエルは既に高出力の空中レーザー兵器を少なくとも1基試験しており、国防省は2021年にこの種のシステムを使用して複数の標的ドローンを成功裏に迎撃したと発表している。

イスラエルのセスナ208 Caravanに搭載された高出力レーザーシステム。イスラエル国防省のスクリーンショット

興味深いことに、イスラエルの防衛企業エルビット・システムズは、アイアン・ビームの戦闘使用に関する報道に対し、F-16戦闘機に搭載された未公開のポッド式レーザー兵器のイラストをツイートで公開した。添付のテキストには次のように記載されている:

「エルビット・システムズでは、数百人のエンジニアと専門家が毎日、次なるフロンティアである空中高出力レーザーシステムの開発に取り組んでいる。これが私たちの使命だ。これが私たちの未来だ。」

エルビット・システムズが発表した、ポッド式レーザー兵器を装備したF-16のコンセプトアート。エルビット・システムズ

注目すべきは、米国で空中レーザーシステムの開発と実戦配備が困難である点で、本誌は過去にもこの件を報じている。

総合的に見ると、レーザー兵器は依然として初期段階にある。しかし、イスラエルが昨年、アイアン・ビームのバージョンを急いで実戦配備したことは、この技術がどれほど価値あるものと見なされているかを示している。レーザー兵器は空域防衛の万能薬ではないが、明確な役割があり、アイアン・ビームの最終バージョンは、イスラエルの既に高度な多層空域防衛システムに貴重な追加となるだろう。■

Israel’s Iron Beam Laser Air Defense System Has Downed Enemy Drones

The high-power laser is the latest addition to Israel’s densely-layered air and missile defense array.

Thomas Newdick

Published May 29, 2025 1:36 PM EDT

https://www.twz.com/news-features/israels-iron-beam-laser-air-defense-system-has-downed-enemy-drones

トーマス・ニューディック

スタッフライター

トーマスは、軍事航空宇宙分野と紛争に関する報道で20年以上の経験を持つ防衛分野のライター兼編集者だ。数多くの書籍を執筆し、編集を手がけ、世界有数の航空専門誌に多数寄稿している。2020年に『The War Zone』に参加する前は、『AirForces Monthly』の編集長を務めていた。

2021年10月11日月曜日

アイアンドームがグアムへ配備される。巡航ミサイル迎撃の暫定策として。米陸軍発表。

  

Iron Dome at White Sands Missile Range, New Mexico. (Army)

 

陸軍はアイアンドーム防空ミサイル防衛二基をグアムへ送り込む。米国は巡航ミサイル防衛策の暫定策としてアイアンドームを導入したばかりで、第94陸軍対空ミサイル防衛司令部(AAMDC)が10月7日に発表した。

 

 

今回の展開にはアイアンアイランド作戦の名称がつき、同システムの実力をテストしつつ、防空部隊の運用能力を磨くことが目的と発表文にある。また2019年度国防整備認可法でアイアンドーム装備を2021年末までに作戦方面に展開することが求められているのに対応する。

 

アイアンドームは10月中旬に現地に到着し、11月から演習を開始すると陸軍報道官が述べている。

 

第94AAMDCがアンダーセン空軍基地で臨時展開部隊を統括すると発表文にある。

 

テキサスのフォートブリスから2-43防空砲兵大隊が展開する。同部隊は今年から運用訓練を続けている。第38ADA連隊も日本から現地入りし、ミッションを支援する。

 

演習では「運用データ収集、展開に当たり考慮すべき事項、並びにアイアンドームを既存の防空装備にどう統合するか」が中心とあり、後者については最終段階高高度広域防空(THAAD)が2013年からグアムに展開しているのでこれを指している。「グアムで実弾演習を行う予定はない」と発表文にある。

 

アイアンドームはイスラエル防衛企業ラフェエルが製造し、レイセオンテクノロジーズが共同開発した。陸軍は議会の要望によりアイアンドーム二式を調達し、巡航ミサイル防衛の不足分を埋めることとしながら、より本格的な解決方法を模索している。

 

陸軍はアイアンドームの追加調達の予定がないが、同装備の構成部分を間接火力防御機能に取り組む。これは巡航ミサイルと合わせ無人機、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾に対応させる構想。■

 

 

Iron Dome heads to missile defense experiment in Guam

By Jen Judson

 Oct 8, 07:16 AM


2017年11月29日水曜日

イスラエルのアイアンドームに艦載版が登場


「次回の戦争」とかイスラエルの表現はリアルですね。ナチスばりにイスラエル壊滅を公式に発言するような国がすぐそばにあるためですね。ミサイル防衛として空軍、海軍、陸軍の垣根を壊す動きも注目です。それにしてもイスラエルの軍高官は異例に階級が低いですね。権限移譲が進んでいるのか、組織構造が違うのか。イスラエルには今後も注目したいと思います。


Israel declares operational capability for sea-based Iron Dome 

イスラエルが海上配備アイアンドームの実戦化を発表


IDF

TEL AVIV, Israel — イスラエル軍が艦載版アイアンドーム迎撃システムの初期作戦能力獲得を宣言した。11月27日に海上実弾試験で標的迎撃に成功した。
当日の成功の前にイスラエル空軍、海軍、民間企業が1年半もアイアンドームをINSラハヴ海防艦のアディール追尾誘導レーダーに統合する共同作業に従事していた。
「本日をもって公式にイスラエル防衛の新しい陣容が地中海に生まれた」と空軍防空部門司令官ズヴィカ・ハイモヴィッチ准将Brig. Gen. Zvika Haimovichが記者団に語った。
「艦載アイアンドーム、アディールレーダーおよび地上配備アイアンドーム部隊が完全に接続された。本日の実弾発射実験で優秀な性能が実証された」
アイアンドームは国営ラファエル社が開発し、2011年の配備以来1,700回以上の迎撃に成功している。艦載アイアンドームはC-ドームC-Domeの名称となる。
空軍関係者によれば艦載アイアンドームも空軍が運用する。地上配備アイアンドームで整備した運用ノウハウと技術があるためだ。「海軍用のアイアンドームは新規アイアンドーム部隊として扱う。陸上、海上の装備を統合し今後のエスカレーションや次回の戦争に備える」という。
海軍兵器部長ジヴ・バラク大佐Capt. Ziv Barakは2014年のガザ戦役の教訓から海上配備のアイアンドームが沿岸部や艦船さらに沖合エネルギー施設の防衛に必要と認識されたと語る。艦上配備と陸上配備の各装備の統合で北部国境から飛来する脅威対象に容易に対応できるようになると付け加えた。■

2015年12月25日金曜日

★イスラエル>デイビッズ(ダビデ)スリングが配備前の迎撃テストに成功



いまやイスラエルはミサイル防衛(イスラエルの場合は迫撃砲弾や初歩的なロケット弾への対応も含む)を磐石の態勢で整備しつつあり、世界最先端の防衛体制を構築しようとしています。その背後には優秀なイスラエル技術を活性化している米国の支援があるのはいうまでもありません。イスラエル技術が今後どこまで発展するのか、他の地域にも有効活用されるのかが注目ですね。

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David’s Sling System Shows Ability To Destroy Rockets, Missiles

By Barbara Opall-Rome 2:58 p.m. EST December 21, 2015
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(Photo: Courtesy photo)

TEL AVIV, Isreal — 高い命中精度を誇る米イスラエル共同開発のデイヴィッズスリングウェポンシステム David’s Sling Weapon System (DSWS)が12月21日に大型長距離短距離あわせたロケット連続発射に対応し迎撃に成功した。
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  1. テストは主契約企業ラファエル社のネゲブ砂漠にある試射場で実施され、開発期間中のテストは4回目となりこれが最終となる。2016年第一四半期に実戦装備がイスラエル空軍に引き渡される。

  1. テストには米側、イスラエル側の関係者数百名が立会い、作戦シナリオを組み合わせ多数の目標を飛翔させ「現実の脅威を再現した条件」だったとシュロモ・ヘス Shlomo Hess (ラファエルの統括責任者)が語る。「DSWSはこれで実用化に向かう」

  1. 「これだけ複雑な条件のテストで成功したのはまれなこと。長距離を飛翔する目標には強力な弾頭がつくもので、命中すれば付随被害の発生は避けられない。関係者は今回の成功で興奮している」

  1. イスラエル国防省はテストに投入された標的の詳細を一切公表していないが、DSWSが高度なまでに制御可能で命中即破壊になる率が高いとだけ発表。スタナー Stunner 迎撃体は「複数の脅威が同時に発生する事態でリアルタイム迎撃に成功した」としている。

  1. また国防省によればシステムの多数ミッション対応レーダーはエルタシステムズ製で標的を発射直後に探知し、飛翔情報をゴールデンアーモンド戦闘統制センター Golden Almond Battle に都度転送してきた。

  1. スタナー迎撃体はラファエルが米レイセオンミサイルシステムの支援を受けて開発したもので、「発射に成功し、すべての飛翔段階をこなし、予定通り標的を迎撃した」と国防省は発表。

  1. イスラエルは四層からなる積極的防衛ネットワークの構築をめざし、このうち上部と下部の間をつなぐのがDSWSで運用上はアイアンドームシステムより上層、大気圏上部を担当するアロー2と大気圏外を受け持つアロー3より下層を対応範囲とする。

  1. イスラエルはシリアの302ミリロケットやイランの半トン弾頭つきファタ110ロケットが精度を上げていることを懸念し、とくにレバノンに展開するヒズボラがこれらを保有していることが問題だ。またスカッドB級の弾道ミサイルへの対応も想定している。スカッドは1トンの弾頭を300キロ先に到達させる。

  1. 「デイヴィッズスリングにより上層下層の防衛体制の間のギャップが埋められます」とイスラエルミサイル防衛機構を創設したミサイル専門家ウジ・ルービン Uzi Rubin は評する。

  1. イスラエル防衛相モシェ・ヤーロン Moshe Ya’alon は四層積極防衛ネットワークをアイアンドーム、DSWS、アロー2、アロー3で構成し、世界トップクラスの迎撃体制を構築するとし、米国との共同開発は「貴重な機会」で政府間、業界間の共同体制と米国政府による潤沢な資金提供でイスラエルの戦略的機能が実現したと評している。

  1. 今回のテストを持ってDSWSの初回ブロックの開発は完了した。さらにブロック二個分が企画されており、巡航ミサイル対応も視野に入っている。■


2014年8月30日土曜日

★★注目されるアイアンドームの迎撃実績 ミサイル防衛でさらに一歩先を進むイスラエル



なぜかイスラエルに関する報道では軍事面の分析が見られない日本ですが、アイアンドームが目論見通りの成績をあげたことで今後は大いに注目されるのではないでしょうか。パスレスチ側が一層追い詰められると今回のようにロケットといっても手製のお粗末な兵器を高価なシステムで迎撃するという経済学的には不合理な非対称戦になりそうですね。



Iron Dome Blunts 90% Of Enemy Rockets

Overall, Iron Dome missile deflection proves effective through 50 days of conflict
Sep 1, 2014Alon Ben David | Aviation Week & Space Technology
Credit: Zeev Stein
ガザ回廊を巡るイスラエル対パレスチナ抗争でアイアンドーム防空システムの成功事例があきらかになっている。合計735回の対ロケット、迫撃砲迎撃で90%近い成功率をあげている。
  1. ガザから発射されたロケット・迫撃弾は50日間で合計4,594発で、この内アイアンドームの迎撃失敗は70発にとどまる。アイアンドームの配備地区でイスラエル市民に死傷者は発生していない。この運用実績は米国で同システムの有効性を巡り疑問が出ているのと好対照だ。

  1. 「前例のない大きな戦略的成果になった」とイスラエル国防相モシェ・ヤーロン Israeli Defense Minister Moshe Ya’alon がAviation Weekに語っている。「アイアンドームはハマスの中長距離攻撃をほぼ無効にした」とイスラエル空軍高官も付け加える。「迎撃735回で数十名のイスラエル市民の生命を未然に守れた」

  1. イスラエルはガザ侵攻の前に人口集中地区にアイアンドーム6個部隊を配備した。さらにメーカーのラファエル高度防衛システムズ Rafael Advanced Defense Systems が完成直後の3個隊を納品していたので合計9隊で数千のミサイルに対応できた。さらに戦闘期間中に第10番目の装備も納品されたが操作員不足で稼働できなかった。

  1. パレスチナ側ではハマスとPIJ(パレスチナイスラム聖戦軍)が9,000発ものロケット弾をかきあつめており、そのうち1,000発は122-mmロケットで有効射程距離は 45 km、200発はM75 8インチロケット弾( 75 km)だった。その他の大多数は短距離弾。またシリア製の302-mmロケットR160(100 km以上)も持っていた。
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  1. ただしエジプトからガザに密輸された標準生産品は少数。エジプトではアブド-アル-ファタ・ア-シシ大統領Abd Al-Fatah A-Sisi,が権力を握った2013年7月以後にガザ密輸トンネルを多数破壊したので、パレスチナ戦闘員はロケット等を自らの手で製作することを迫られた。即席ロケット弾の精度は低く、軌道も不安定でアイアンドーム操作員も混乱させられた。

  1. ロケットは多数発射されているが、そのうち人口集中地区に脅威となったのは25%で、殆どの場合は飛来するロケットに照準を合わせた「タミール」迎撃ミサイルが一対一で発射された。ただし大都市部がロケットの標的となった場合には二発で対処させた。なお、タミールミサイルの価格は一発50千ドルである。

  1. アイアンドームは完全自動モードでも作動できるが、イスラエル空軍は手動とし、操作員が毎回数秒以内に迎撃判断を下すこととした。これが功を奏し、イスラエル国民の生活はほぼ正常どおりで推移した。ただし、操作員の一人の過誤でイスラエルへの国際航空路線が一日半使えなくなった事例が発生している。

  1. ハマスはベン・グリオン国際空港攻撃を狙っていた。7月22日にロケット一発が発射されたが、アイアンドーム操作員が探知し、迎撃しない選択をしたのは民間航空への影響を恐れての事だった。結局、このロケットは空港から1Km離れた地点に落下し、その後FAAは米系エアライン各社にイスラエル便の運航停止を命じた。

  1. これに対しイスラエルは欧米各国にロケット攻撃とアイアンドームによる迎撃で民間航空への影響は「無視できる範囲」と説明し、「イスラエル空軍の分析ではランダムに発射されたロケット弾が飛行中の航空機に命中する可能性は10億分の一」とイスラエル民間航空局(ICAA)のジオラ・ロム Giora Rom 局長が各国へ書簡を送付している。さらにベングリオン国際空への航空路をアイアンドームの稼働範囲から分離する調整も行っている。その結果、エアライン各社は36時間後にイスラエル便を再開した。ただし大韓航空は例外。

  1. アイアンドームの作動条件は民間航空の運航を前提としており、アイアンドームにより民間航空機が被弾する可能性はロケット弾の命中確率より低いという。

  1. パレスチナ側はイスラエル攻撃を続けたが、備蓄が低くなり標的をガザ近辺の農村に切り替えている。アイアンドームは配備されていないが、迎撃を試みている。

  1. アイアンドームの活躍でイスラエルの被害は最小限となったが、それでもアイアンドームは迎撃に失敗していると主張する向きがある。とくにマサチューセッツ工科大学の物理学者テッド・ポストルTed Postol は迎撃成功率は5%にすぎないとの研究結果を示している。

  1. 「ばかげだ主張です」と反論するのはイスラエルミサイル防衛機構 Missile Defense Organizationの前局長ウジ・ルービン Uzi Rubin だ。「もしそれが正しければ、4,000発ものロケットがイスラエルに発射されたのにアイアンドーム配備地区で死者がでていないのはおかしいでしょう。2006年のヒズボラ攻勢でもほぼ同数のロケットが発射されており、当時はアイアンドームがなく死者多数が出ています」

  1. 米議会もアイアンドームの効果を認め、225百万ドル追加支援を8月1日に承認している。この予算でアイアンドーム迎撃弾の追加調達ができ、これで米国による支出総額は13億ドルになった。

  1. ただしアイアンドームの効果が目立ちすぎて 負の影響も出そうだという。イスラエル国防関係者が言う。「これではイスラエルに被害が全然ない印象を与え、なぜイスラエルが戦闘に踏み切ったのか世界に説明できなくなる」■


2014年7月25日金曜日

アイアンドーム生産増強に米国防予算の支出を認める


Pentagon Supports Emergency $225M for Israel's Iron Dome

Jul. 23, 2014 - 05:54PM   |  
By PAUL McLEARY
A missile is launched by an Iron Dome battery in the southern Israeli city of Ashdod. The Pentagon is seeking additional funding to speed production of components for the anti-missile system.
イスラエル南部アシュドッドで発射されるアイアンドーム迎撃ミサイル。ペンタゴンは追加予算で製造を加速させようとしている。(David Buimovitch / AFP)

WASHINGTON — チャック・ヘイゲル国防長官は有力議員に書簡を送り、追加225百万ドルでアイアンドーム迎撃ミサイル用の部品製造を加速化させることによりイスラエルが十分な備蓄をもち、ハマスがガザから発射しているロケット弾への防御手段を維持できるように求めている。.
最近になりイスラエルから部品の追加要望が入り、ペンタゴンはこの要請を受け入れ、オバマ政権が2015年度国防予算に盛り込んでいた176百万ドル相当のリストの上位に乗せることにしている。
今年春の会期中に修正案として上下院の国防、歳出両委員会はペンタゴンがもとめたアイアンドーム向け351百万ドル予算を倍増するとしていた。下院は6月に法案を通過させたが、上院は未対応。
下院軍事委員会の重鎮アダム・スミス下院議員Rep. Adam Smith(民、ワシントン州)はこの増額要請を支持しており、「イスラエルにとってハマスのロケット攻撃を遮るのはアイアンドームしかない。イスラエルがアイアンドームを有効活用し、一般市民を防衛できるよう保証したい。ヘイゲル長官はじめとする現政権がこの要請を受け入れたことを称賛したい。同僚議員とともに本会議でこの要請が承認されるように努力する」と書状で回答している。
23日午後には上院歳出委員会委員長バーバラ・ミクルスキSen. Barbara Mikulski,(民、メリーランド州)が上院の非戦闘補正支出案にこのミサイル関連支出が含まれていることを確認している。
「法案では225百万ドルを国防総省緊急補正予算としてイスラエル用に確保し、アイアンドームの追加調達を認めている。現在進行中のイスラエルとガザでの危機的状態で数千のロケット弾がイスラエルの各都市向けに発射されており、アイアンドームはロケット弾に対して有効な防御手段と実証済みだ」と書状で述べている。
ヘイゲル長官は議会指導層に対し、「米国産業基盤の維持はアイアンドーム支持と密接に関係している」と書簡で述べており、米イ間合意で米国内で一部生産すると決まってるためとする。
「しかしながらイスラエル側の評価では米国内の生産が本格化するにはまだ二三年かかり、イスラエルの備蓄不足を補えないとしている」
そこでアイアンドーム向け支出増額案に加え、下院軍事委員会は数億ドルをイスラエルのその他ミサイル開発にも支出するよう求めている。130百万ドルをアロー Arrow に、137.9百万ドルをダビデのスリング David’s Sling 向けとなっている。
「2015年度国防予算支出承認法案には600百万ドル以上がイスラエルのミサイル防衛に振り向けられており、米国は10億ドル超をアイアンドームの誕生から今日まで提供している」とスミス議員は述べている。 ■