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2025年4月7日月曜日

E-3セントリーAWACSが運用最終段階に突入(Air & Space Forces Magazine) ― 次期機材E-7の到着は2027年とされるので米空軍には707ベースの機材をだましだましながら運用する常人の域を超えた活躍が求められているのですね

                                                                         




E-7の到着を待ちつつ米空軍は、E-3の運行を継続している。

オクラホマ州ティンカー空軍基地にて


の機体を見る者は老朽化している、古すぎる、あるいは老齢であると評してる。数年先になる後継機の到着を待ち望む一部の関係者は、現在の状態を「ホスピスケア」と表現している。

 しかし、ここにある飛行ラインや格納庫では、E-3セントリー Sentry(ほとんどの人はAWACS、Airborne Warning and Control System(空中警戒管制機)として知っている)が今も堂々たる姿を見せている。KC-46とほぼ同じ大きさの機体に、特徴的なレーダーを搭載している。ある将軍がE-3を「レーダーの登場以来、最も重要な戦術的改善」と評したのも、このレーダーのおかげである。

 最近では、その数はかつてないほど少なくなっている。 空軍はフリートを維持するため、老朽化した15機を売却し、現在では世界各地に16機のE-3を配備している。この機体は、空軍兵士たちが連携して示している有能な手に委ねられ、戦闘管理機材として維持、飛行、運用を日々行っている。


飛ばし続けるためにはまさに奇跡的な働きをする人々が必要なのです..

—マーク・ケリー大将(前統合戦闘軍団司令官)


「E-3は依然として必要とされています」と、AWACSの後部座席に座る空中戦闘指揮官は今夏、本誌に語った。「空に浮かぶ大きな目、人々は常にそれを求めています。だから、ええ、心配していません。まだ忙しいのです」


飛行を継続

確かにE-3は老朽化している。1950年代に初飛行したボーイング707をベースにE-3は、1970年代後半に就役し、中東の暑さと砂塵の中で、ほぼ50年間飛行を続けてきた。

 その結果、故障が頻繁に発生し、整備員が常時注意を払う機体群になった。2022年に空軍戦闘司令部の前司令官マーク・ケリー大将は、「飛行させ続けるには、まさに奇跡的な人材が必要だ」と述べていた。


しかし、奇跡には時間がかかる。

 

 「1機を整備して飛行させるだけでも、約16時間働きます。航空機を整備するだけです」と整備員は語ります。「故障する可能性があるというわけではありません。点検作業です。本当に念入りに点検を行っています。機体が古くなるにつれ、点検回数も点検の厳しさも増します。大きな部品にまで入り込み、機体を安全に飛行させることができることを確認します。

 腐食が最大の懸念事項だ。18ヶ月ごとにチームが等時性検査を実施している。これは、本質的には「ミニ・デポ」だと整備士は言います。

 E-3内部では、アナログとデジタルのコンポーネントが組み合わさっている。各種センサー、何マイルものワイヤー、通信システムには、他の米空軍機体の標準の3~4倍にあたる11種類の空軍専門コード(AFSC)を持つ空軍整備士のチームによるメンテナンスが必要だ。

「AFSCが11種類もあり、さらにそれぞれのAFSCと統合する複数のパーツがある場合、互いに連携させる必要があります。そのため、電子機器担当者をトラブルシューティングに派遣できるかもしれませんが、コンピューター担当者を派遣できない場合もあります」と彼は言う。「メンテナンスで厄介なのは、ほぼ全部を統合しなければならない点です」。

 さらに、第552作戦群司令官ジェイソン・ゼムラー大佐は、残存機数が少ないことと修理に要する時間が増大していることから、整備と運用の間で微妙なバランスを取る必要があり、そのため日々のコミュニケーションが欠かせないと指摘している。

 「大尉だった頃…もし1機が使えなくて、次の機、さらにその次の機と順番に見て回ると、E-3が並んでいるのが見えたものです」とゼムラー大佐は語った。「今では、1機が使えず、次の機、その次の機と順番に見て回ると、機体に関する問題について、整備士とじっくり話し合うことになる可能性が高いです」。

 552航空管制団(ACW)の副司令官ジェームズ・コームズ大佐は、1機の航空機の飛行スケジュールやメンテナンススケジュールに変更があると、他の機材にも波及効果が生じると述べた。

 ここまで古い機材の場合、部品が故障しても交換部品を見つけるのが難しい。707の生産は30年以上前に終了しており、部品供給業者は生産ラインを縮小している。

 あるロジスティクス担当者は、予備部品の調達には、請負業者を当たったり、退役した航空機から入手困難な部品を調達できる「ボーンヤード」を漁る必要があると語っている。

 「私の仕事はただボタンを押して『どこにある? 飛ばなきゃいけない航空機があるんだ』と言うだけです。私は厄介な蚊のようなものです」と彼女は言う。

 当然ながら、E-3は日常的に飛行しているわけではない。2024年には、全体の任務遂行率(航空機が割り当てられた任務の少なくとも1つを遂行できる率)はわずか55.7パーセントだった。つまり、任意の日に利用可能なE-3は9機未満ということである。平時であれば十分であるが、戦時には困難を伴う。

 「整備陣は、必要な要員を維持し、グローバルな軍事管理要件に対応するため、維持可能な訓練レベルに見合った機体稼働率を維持しています」とコームズ大佐は述べた。

 しかし、コームズ大佐は、E-3が「もはや部品が製造されていない機体であり、E-3が使用されてきた能力に慣れている」ことを考えると、これは悪くないと述べた。


生き残れない

航空戦力を指揮し、戦域を監視する上で依然としてE-3が重要な機体であるに変わりはないが、E-3は同等戦力を有する国との戦闘に不適だ。

 「将来の戦闘では生き残れないため、必要な能力をもたらせない」と、2022年当時、予算担当副次官補であったジェームズ・D・ペシア3世少将は述べていた。E-3は「最も懸念している環境下では、基本的に有効ではない」と、当時の空軍長官フランク・ケンドールは付け加えた。


E-3の一機でシステムが作動できない場合や飛行できない場合、別の機材が待機していたと、E-3の退役軍人は振り返ります。しかし今では、代替手段は皆無に近い。マスター・サージェント、ナターシャ・スタナード/米空軍

 

 空軍は代替機としてE-7ウェッジテイルを取得する緊急計画を実施している。E- 7ウェッジテイルは、737をベースに、最新エンジンと新しい多目的電子走査アレイ(MESA)センサーを搭載し、より優れた、より一貫性のある監視を提供し、より少ない人員で運用が可能だ。

 最初のE-7の納入は2027年の予定で、それまでの間、すでに同機を運用しているオーストラリア空軍で、米空軍の乗組員が操縦方法を学んでいる。

 E-3AWACSは、日本の嘉手納空軍基地、およびアラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地にも配備されているが、当初の削減計画ではティンカー空軍基地と第552航空管制団に重点が置かれていた。2023年3月、対象機材はアリゾナ州のデービス・モンサン空軍基地にあるボーンヤード(旧軍用機廃棄場)に向けて出発し、その後6か月間でさらに12機が続いた。2024年には2機が離陸し、1年半の間に15機が姿を消した。



E-7Aウェッジテルはオーストラリア空軍で運用されており、最終的にE-3に取って代わる予定だ。2027年頃から始まる新しいプラットフォームの運用に備えるため、米空軍は米空軍要員のオーストラリアへ派遣し訓練を実施している。 Airman 1st Class Josey Blades/USAF

 

 元第965空挺航空管制中隊司令官で、現在はAFAのミッチェル航空宇宙研究所の研究員グラント・ジョージルーリス中佐は、大幅な削減は後方支援と士気にとって大きな課題をもたらしていると語った。

 「鉄はすぐに処分したのですが、その鉄に関連する人間はすべて残りました」と彼は振り返ります。「そのため、今では、もはや訓練の熟練度を維持できる鉄がない航空乗務員の一団の維持に問題が生じている。

「フリートが縮小しても、パイロット、空中戦指揮官、センサー操作員の熟練度を維持することは、知識を保持し、個人と米空軍のニーズのバランスを取るために不可欠です。

 「E-7の処分とE-7への投資を、2つの別々の出来事として見ることはできません」とコームズ大佐は述べた。

 「この機材で私たちが試みているのは、それらを一緒に織り合わせることです。... 頭脳流出を回避しながら、同時に航空兵士が専門性を高め続ける必要性とのバランスを取るためです」。

 当初は、ジョージューリスによると、整備士がジェット機の健康維持に必要な時間を確保しながら、全機で十分な飛行任務を与えるのは困難を極めたという。しかし、空軍兵士が各地に異動するにつれ、全員で飛行時間を確保することが容易になった。

 「以前は、1個飛行隊あたり280人から300人で運用していました。」とゼムラー大佐は語る。「現在は1個飛行隊あたり120人ほどに減り、比較的小規模になりました」。

 しかし、有能な人材がすべて排除されたわけではない。E-7が到着した際に人員を確保できるよう、飛行隊は長期計画に取り組んでいます。

 「PCS(恒久的な配置転換)のサイクルを検討し、予測を立てています。つまり、今すぐにでも誰かをPCSさせて、他の場所で3年間勤務させ、E-7の導入時に戻ってくることもできるのです」と、コームズ大佐は述べた。

 それでも、人員と航空機が削減される中、首脳部は人材の維持と空軍兵士たちの反応を心配している。

 「率直に言って、[2023年]は少し厳しいものでした」とゼムラー大佐は語る。「機体がボーンヤードに飛んでいくのを見て、飛行ラインに並ぶ機体が減っていくのを目の当たりにするのは、かなり衝撃的な瞬間です。だから、[2023]はかなり衝撃的だったと言えます。しかし、今では『ここが私たちの居場所だった。ここに私たちの力を注いできた』と実感できるところまで来ていると思います」。

 必然的に、取り残された航空兵たちは、少ないリソースでより多くのことが求められていると感じている。

 「私たちは、航空兵たちが日々行っている素晴らしい仕事ぶりを正しく評価しようとしています。多忙時には、何かを見落としてしまう可能性があることを指摘しています」とぜムラー大佐は言う。「しかし、たとえ忙しく疲れていても、正しい行動を取っている彼らを評価します。そして、その評価を公のものにします」、


まだまだ続く

E-3と同様に、後継機ウェッジテイルも視覚的に非常に印象的だ。E-7を運用するオーストラリア空軍(RAAF)は、定期的にアメリカ空軍要員を交換プログラムで受け入れ、新型プラットフォームについて教えている。RAAFはウェッジテイルをレッドフラッグ演習に持ち込み、アメリカ空軍の上級指導者も同機に搭乗した。

 しかし、未来を夢想する自分の部隊の誰もを現実に戻す簡単な方法があることをジョージルーリスは知っていた。

 「このジェット機(E-3)は今後10年間は飛ぶことになるんだぞ」と彼は言った。ベテランにとっては長い時間ではないが、若い空軍兵にとっては人生の半分だ。「10年前、君たちは何をしてた?高校生だったよね」と ジョージューリスは、E-7への機種変換を前にして夢見がちになりがちな若い空軍兵士にそう語っている。「だから、本格的に考え始める前に、あと10年あると思って考えてみてほしい」。

 今のところ、戦闘機の指揮統制や空域の競合回避などを行うE-3を欠いたままの大規模な演習は、空軍ではまだほとんど実施されていない。

空軍は新しい地上ベースの指揮統制機器に投資しており、一部の標的ミッションを衛星に移行することを望んでいるが、指導層は、航続距離と柔軟性の面で、空中のC2機能が依然重要だと述べています。

 つまり、E-3の各フライトに搭乗する12人ほどの乗組員にとって、訓練と作戦はこれまで同様、緊急かつ集中的に行われるということだ。

 「コンピューターが起動し準備が整うや否や、私たちはスコープをセットし、必要な状態にします」と航空戦闘指揮官は語る。「センサーオペレーターはシステムをチェックし、最適化されていか確認し、いつでも出撃できる状態にします。戦闘機が『出撃せよ』と指示を出せば、それは出撃の合図です。任務中になる。..それは激しいものです。常に何かが起こります。あなたは確認を行い、人々が安全であること、戦闘機同士が衝突したり、領空外に出ていないことを確認します。そして戦闘が始まると、新しい情報を提供し、最新の状態を維持します。決して座って観察しているだけということではありません。」

 地上では、新しいフライトシミュレーターが、オペレーターが貴重な飛行時間を費やすことなく、技術を磨くのに役立っている。新型シミュレーターは「油圧支柱の上に設置された大型ポッド」で、パイロットが緊急手順や空中給油の訓練を行う際に、フルモーションのリアリズムを提供する。

 しかし、実際の飛行時間は重要なままであり、航空団のメンテナンスとオペレーションのグループが協力し、「非常に独創的なスケジュールプロセス」を構築していると、コームズ大佐は語る。

 「着任したとき、現場には変化を望まない古株の隊員が大勢いました」と整備士は語りました。「その後、より革新的な方法で…トラブルシューティングのプロセスをより簡単かつ迅速にするなど、さまざまなことを実現しました。彼らに自ら考え、こうしたアイデアを出す自由を与えなければ、この機体を飛ばすことは決してできないでしょう」。


付加価値

E-3で進む老朽化と機体数の減少を考えると、空軍がAWACSの配備と使用についてより慎重になっていると指揮官たちが言うのも無理からぬことた。E-7が登場するまでまだ数年あり、彼らは残るE-3の寿命をできるだけ長く保ち、機体にもそこで働く人間にも過剰な負担をかけないようにしたいと考えている。


E-7A ウェッジテイルの近代的な内装とコンソールは、E-3 とは対照的だす。2024年、機内ミッションコンソールで訓練中の米空軍士官たち 米空軍


 しかし、誇り高いAWACSコミュニティ内では、この機材にはまだ十分な耐用年数が残されているという感覚がある。「私たちは装備を常に進化させています」と、空中データシステムの技術員は語る。「私たちは常に前進し続け、必要なものを機に追加し、いつでも対応できる状態を維持しています」。


E-3のメンテナンスは、嘉手納空軍基地の第961航空機整備部隊で常時行われている。 Airman 1st Class Melany Bermudez/USAF


テープでデータを記録していた旧式技術は姿を消した。ゼムラー大佐は2000年代初頭を振り返り、「初めて搭乗した機のシステムは、Windowsではありませんでした」と語る。「ディスプレイに表示する3色のいずれかを得るためにコードと行を手入力する必要がありました」。

 「今では、インターフェースはラップトップや家庭用コンピューターのそれに似ています。」と技術員は言う。「動作は高速で、クリーンで、使い勝手も同じように良いのです」。

 AWACSのコックピットも改良され、新しいデジタル多機能ディスプレイにアップグレードされた。AWACSパイロットは次のように説明している。「移動マップ表示を片側に表示し、どこに向かっているのか、より多くの制御と状況認識を可能にしています。すべてがデジタル化されたことで、アナログコンバーターを介してデジタルディスプレイに表示され、より多くの状況が私たちに示されます。昔より近代的です」。


E-3セントリーの空中警戒管制システムは、時代とともに進化してきた。初期バージョンでは操作にコードが必要だったが、現在はWindowsオペレーティングシステムが採用されている。Senior Airman Julia Lebens/USAF


 アナログシステムとデジタルシステム間の接続は困難な場合があり、油圧制御にはフライバイワイヤシステムでは必要のないパイロットの正確さが求められるが、空軍要員は、任務場所への深夜の出発までの間に、研究や雑談、UNOをしながら、同機に対する深い愛情を育んできたと語っている。ある技術員は、作業スペースについて次のように語っている。「3万フィート上空から素晴らしい景色を一望できる最高のオフィスです」。

 「AWACSが大好きです」と整備士は語ります。「AWACSコミュニティは15年間私の家でした。ですから、他の機体については語れませんが、552ACWほど家族的な絆で結ばれたコミュニティは他にないと思います」。

 部隊規模が縮小するにつれ、結束はさらに強固になっている。

 「明日戦闘に出撃するよう要請されたとしても、空軍や統合参謀本部は依然としてAWACを要請してくると、本当に信じています」とゼムラー大佐は語った。「見せかけの自信ではありません。…私たちは、整備士や運用担当者の努力を最大限に引き出し、必要とされるその時に備え、最先端技術を活用できるよう全力を尽くしています」。 ■                                                                         


AWACS Enters the Homestretch

By Greg Hadley

April 4, 2025

https://www.airandspaceforces.com/article/awacs-enters-the-homestretch/


2022年8月1日月曜日

AWACS E-3を早く退役させたい空軍と疑念を持つ議会。また同じ構図か。後継機はE-7に事実上決まっているのだが、能力ギャップの発生は必至か。

E-3 Sentry Sunset


アラブ首長国連邦のダフラ航空基地に駐機するE-3セントリーAWACS (U.S. Air National Guard Photo by Staff Sgt. Colton Elliott)



防総省予算について、議会の主要委員会4つがすべて議決し、各議員は軍事計画の運命を交渉する。Bradley BowmanとBrian Leitzke少佐は、代替に時間がかかっても、一部E-3を廃棄すべきとFDDで主張している。


議会は能力格差の発生を懸念するが、FDDの両名は、それはすでに存在している、と書いている。時間と予算は、E-3後継機に投入した方が良いとふたりは主張している。


空軍は、E-3「セントリー」空中警戒管制システム(AWACS)のほぼ半分を退役させ、次世代能力の導入を早め、残るE-3の即応性を強化するのに必要だが有限の資源を確保したいと考えている。しかし、先週発表の上院軍事委員会の2023会計年度国防認可法では、議会が空軍の計画により「空中指揮統制能力に大きなギャップが生じる」ことを懸念しているのが明らかにされた。


特に今後数年間は、北京が台湾を攻撃する可能性があるため、能力ギャップ発生を避けることは確かに称賛に値する目標だ。しかし、E-3に関して言えば、同機の一部売却を延期することは、すでに発生している能力格差を単に長引かせ、より能力の高い代替機E-7の配備に必要な時間、資金、人員などの希少資源を流用する可能性があることがよく分かる。


空軍のE-3は31機ある。空軍は来年度、オクラホマ州のティンカー空軍基地から15機を売却し、日本の嘉手納空軍基地に2機、アラスカ州のエルメンドルフ・リチャードソン統合基地に2機、ティンカーに12機を維持したいとしている。


しかし、空軍は最初のE-7は2027年会計年度まで配備されないと言っており、議会は躊躇している。


上院軍事委員会は、下院が可決したさらに厳しい文言に続き、空軍が当初5機以上のE-3を売却するのを制限すると票決した。空軍が詳細な取得戦略を承認すれば、上院の現行法案でさらに5機のE-3売却が可能になる。空軍がE-7を購入契約を結んだ場合、上院案ではさらに5機、合計15機の退役を認める。


そこに、空軍と軍事委員会間の押し問答の揉め事が加わる。


意見の相違の中心には争点が2つある。一つは、E-3処分をE-7調達と関連付けるべきか、もう一つは、空軍がE-7調達と配備をどの程度のスピードで進められるかだ。


E-3処分の反対派は、最初の質問でより良い議論をしているように見えるかもしれない。ターザンに喩えれば、E-7の蔓をしっかり掴む前にE-3の蔓を手放すと、ターザンにとって重大な問題(そして統合軍の能力ギャップ)を引き起こすからだ。


しかし、この比喩を続けるなら、空軍の反応は本質的に、E-7の蔓の状態に関係なく、E-3の蔓が切れている(ある意味、すでに切れている)、ということである。これ以上、固執しても良いことはない。この議論では、空軍が正しいと信じるに足る理由がある。


空軍は1977年に最初のE-3を受領したが、同機は飛行の継続が難しくなってきた。2019年から2022年にかけ、E-3の完全または部分的な任務遂行率は75%から59%へ低下し、完全な任務遂行状態を達成できたE-3は今年10%に過ぎない。


また、E-3のボーイング707プラットフォームが老朽化するにつれて、重要な交換部品のサプライヤーを見つけることが難しくなっている。民間航空会社はとっくの昔にボーイング707を退役させている。E-3の非ミッション・遂行率は、部品供給の問題から過去3年間で2倍以上になっている。


ケネス・ウィルスバックGen. Kenneth Wilsbach米太平洋空軍司令官のコメントによれば、太平洋に配備中のE-3の4機はすべて頻繁に飛行できなくなっているという。戦闘指揮官が機体の離陸を当てにできない場合、航空機の売却が新たな能力格差を生むと主張するのは困難であり、特に機材の一部を売却することで残りの航空機の即応性が高まるならばなおさらである。実際、E-3で保有機数が減れば、入手困難部品の需要が減り、弱体化している物流拠点が、より少数機の即応性維持に集中できるようになる。


残念ながら、E-3問題はメンテナンスに留まらない。ウィルスバック大将は、E-3の空中早期警戒管制(AEW&C)能力は「21世紀の戦いに役立たない」と言う。E-3は、中国とのハイエンド紛争でほとんど役に立たないだろう。


とはいえ、E-3の有用性がゼロというわけではない。戦闘指揮官からの要請は続いている。E-3は、ある環境では貴重な情報、監視、偵察の役割を果たし、通常の抑止に貢献し、先進国以外の敵に対し建設的なAEW&Cの役割を果たせる。


しかし、E-3が抱えるメンテナンスの課題やコストの増大、同レベルの敵との戦闘シナリオにおける陳腐化について、幻想を抱くべきではない。言い換えれば、能力格差はすでに存在しており、E-3機材の状態がさらに悪化し、北京がより高度な能力を保有し続ければ、時間と共に悪化する。


FDD の調査によると、15 機の E-3を退役させることで、5 年間で 30 億ドル近くを節約でき、この資金は、 E-7 を購入する資金になる。また、E-3を廃棄することで、現在E-3を運用しメンテナンスしている約1,500人の空軍隊員が解放され、うち一部はE-7訓練に回され、フル稼働を早めることができる。


そのため、E-3の少なくとも一部を退役させたいと考えるのは空軍にとって賢明なことである。つまり、空軍がE-7の取得をどの程度早め、2027年度までに実戦配備を開始できるかが重要な問題となる。


関連する点として、以下がある。空軍は9月末までに取得戦略を策定できるのか?来年初頭までにE-7の初期契約を締結することは可能か?


もしそうなら、上院軍事委員会で承認された文言の下でも、空軍は2023会計年度にE-3を15機売却できる。空軍の取得責任者は、E-7調達の「劇的な加速」は不可能と注意を促している。しかし、ボーイングの関係者がその後、E-7の早期配備を可能にする「多くのオプション」を示唆しているのは注目に値する。


いずれにせよ、調達プロセスの合理化やスケジュールの迅速化が不可能だと示唆する人物には、特にインド太平洋における利害関係が非常に深刻であるため、立証責任がある。


もちろん、調達の迅速化は「言うは易く行うは難し」だ。しかし、プーチンの無謀な侵攻を受け、米国はウクライナへ必要な兵器を提供するため、天地を揺るがすような行動に出ている。E-7を自軍に配備する際にも、同様の危機感を持つべきだろう。


E-3に関して空軍と議会間で進行中の会話は、複数のプログラムにまたがり、全軍に影響する、より大きな長年の課題の縮図である。予算は有限で、近代化ニーズの積み残しがあるため、各軍は既存システムの維持とあわせて次世代システムの獲得に苦心しているのだ。


売却により許容できない能力格差が生じることもあれば、既存システムがあまりにも古く、システムを維持しても能力格差がすでに存在している場合もある。E-3は後者の部類に入る。


より重要な問題は、空軍、議会、産業界、および米国の同盟国が、E-7の実戦配備を促進するためどこまで効果的に協力できるかだ。米軍はこの近代化能力を強く必要としており、無駄にできる時間はない。■


Let the Air Force let go of the E-3 ‘Sentry’ - Breaking Defense

By   BRADLEY BOWMAN and MAJ. BRIAN LEITZKE

on July 29, 2022 at 12:29 PM


Bradley Bowman is senior director of the Center on Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies. Maj. Brian Leitzke is an Air Force officer and visiting military analyst at FDD. The views expressed in this commentary are those of the authors and do not necessarily represent the views of the Defense Department or the Air Force.


2022年4月27日水曜日

米空軍がAWACS E-3セントリー後継機にE-7ウェッジテイル導入を決定。

  

 

ボーイング社製のオーストラリア向けE-7Aウェッジテイル航空早期警戒管制機。2014年撮影。空軍は、老朽化したE-3セントリー機の後継機としてウェッジテイルを選択した。(Melina Young/Royal Australian Air Force via Getty Images)

 

空軍は4月26日、E-3セントリー(空中警戒管制システム)の一部をボーイングE-7ウェッジテイルに交代させると発表した。

 空軍発表では、ウェッジテイルの採用は市場調査に基づいた決定で、戦術的戦闘管理、指揮統制、目標追跡に関する国防総省の要求全点を満たすのが可能な「唯一のプラットフォーム」で、1970年代まで遡る老朽化してきたE-3との交替に間に合うとある。

 米空軍は2023年度にボーイング社に発注する。ウェッジテイルはもともとオーストラリア空軍向けにボーイングが開発した機材。

 空軍の2023年度予算案では、オクラホマ州のティンカー空軍基地のE-3を15機(保有機数の約半分)を退役させるとある。代替用に、227百万ドルの研究開発・試験・評価資金を計上する。最初の迅速プロトタイプ仕様E-7は2027年度に納入される。

 空軍は、2024年度に迅速試作2機目に資金を投入する計画で、その翌年よりウェッジテールの実戦配備を目指すと述べている。

 ただし、今回の発表では、空軍がウェッジテイルを何機購入するかの言及はない。

 AWACSはボーイング707を大改造し、機体上部に30フィートの回転式レーダードームをつけ、指揮統制と情報、監視、偵察能力を提供し、レーダーの有効範囲は250マイル以上である。イラクやアフガニスタンなど数多くの紛争に投入され、現在はウクライナ紛争を監視中だ。

 しかし、同機は平均使用期間が43年を超えており、任務遂行率の低下や保守維持が厳しくなってきたことから、空軍は後継機の必要性を繰り返し強調してきた。

 先月、フランク・ケンドール空軍長官は記者団に対し、ウェッジテイルが「明らかに最有力候補」だが、適正な手続きでの検討が必要と述べていた。■

 

It’s the Wedgetail: Air Force to buy E-7 to replace AWACS

By Stephen Losey

 Apr 27, 06:27 AM

https://www.defensenews.com/air/2022/04/26/its-the-wedgetail-air-force-to-buy-e-7-to-replace-awacs/


2022年2月17日木曜日

USAF: E-3セントリーAWACS後継機調達がスタート。E-7ウェッジテイルの採用が最右翼視される。

  E-7_WEDGETAIL

U.S. AIR NATIONAL GUARD / STAFF SGT. JOHN LINZMEIER

 

空軍はE-3セントリー空中警戒指揮統制機(AWACS)の後継機材調達を正式に開始した。情報開示請求(RFI)では2023年度に試作型2機ないし3機を調達し、5年以内の納入を想定している。セントリー後継機としてE-7ウェッジテイルが有望といわれ、米同盟数カ国が供用中だ。

 

 

RFIは昨日出ており、E-3後継機の業界パートナーを特定するのが目的。「生産仕様機に近い試作機」の2機に加え、関連地上支援や訓練機器も評価後に生産契約に移行する。E-3は計31機あり、27機が航空戦闘軍団(ACC)に、4機が太平洋空軍(PACAF)で供用中だ。

U.S. AIR FORCE/TECH SGT. MICHAEL CHARLES

米空軍機付き長がサウジアラビアのプリンス・スルタン航空基地でE-3セントリーを誘導している。 March 2020.

 

RFIでは高性能移動標的識別 (AMTI) および戦闘管理指揮統制l (BMC2) 機能を求めており、敵味方識別 (IFF)、電子支援対策も加わる。

空軍の求めるセントリー後継機は最低6種類のミッションに同時対応するもので、攻撃的防御的双方の制空任務、航空交通管制、近接航空支援、敵防空体制制圧(SEAD)、空中給油、戦闘捜索救難(CSAR)が対象。これと別にRFIではレーダーによる海洋監視ミッションの実施可否も求め、アジア太平洋方面への投入を意識している。

通信装備としてLink 16データリンクや機動性利用者目的システム(MUOS)があり、機体防御用の統合防御装備一式の搭載も求めている。AWACSのような高価装備の防御が一層重要な課題になっている。

空軍はボーイングに別個に関連業務契約を昨年10月に公布し、E-7ウェッジテイルの追加情報を求めている。「現行のE-7A基本仕様で必要業務が実施できるのか検討、分析する」とあり、同型機で空軍の求める「標準と性能が実現するか」を見る。

ただし最新のRFIで更にデータを集めてから選考するのは方針変更なのか不明だ。すくなくとも別の選択肢を求める狙いなのだろうが、ボーイング製品が最右翼の候補なのは明らかで、米国内で生産されており、米軍も各種演習で同型機と普段から一緒に活動している。

ボーイングは同社製品が米空軍に採用されると自信たっぷりで、昨年11月のドバイ航空ショーで防衛事業開発担当副社長マイク・マナジール Mike ManazirもE-7の採用に「極めて強い自信」を記者団に述べていた。「2022年中にE-7採用の発表が出ると見ています」

ただし、現時点でE-3後継機は決定していない。

とはいえ、ACCトップのマーク・ケリー大将 Gen. Mark Kelly 、PACAF司令ケネス・ウィルスバック大将 Gen. Kenneth Wilsbach の公然たる支援があるため、空軍が非競争形式でE-7を導入する決定を下すと見る向きがある。英国がこの方式で決定していた。この点でE-7が有利となるのは同機が長期開発段階を終えており、成熟度が上がったまま投入可能となっていることだ。

空軍協会主催の航空宇宙サイバー会議で空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウン大将Gen. Charles Q. BrownもE-3後継機にウェッジテイルを本命視する発言をしており、「優秀な機体」として、実機に乗った経験があると述べていた。また、同大将は新型機を一から開発するよりE-7なら迅速に供用開始できるのも利点だと述べた。

2021年12月、空軍長官フランク・ケンドールFrank Kendall がE-7調達を検討していると認め、空中及び移動標的識別機能を最優先事項とした。ケンドールからはウェッジテイル調達は将来の宇宙配備移動標的識別能力が実現するまでのつなぎとの発言もあった。

より最近では王立オーストラリア空軍(RAAF)のE-7がネリス空軍基地(ネヴァダ)のレッドフラッグ航空戦闘演習で今年初めに参加し、ハイエンド訓練シナリオで米空軍のF-22、F-35ステルス戦闘機等と運用された。

U.S. AIR FORCE/WILLIAM R. LEWIS

オーストラリアのE-7Aがネリス空軍基地(ネヴァダ)にRed Flag 22-1参加のため、到着した。 January 20, 2022, 

 

レッドフラッグでのRAAF所属E-7との共同運用の経験を振り返り、ケイス・A・カニンガム少将Maj. Gen. Case A. Cunningham(航空戦センター司令)は「E-7が導入された場合を想定して学ぶ点がある」と発言していた。

オーストラリアが想定するウェッジテイル運用環境に無人戦闘航空機材の管制があり、米空軍も当然関心を示す分野だ。

アジア太平洋での将来の戦闘作戦を想定すれば、クリストファー・ニーミ准将Brig. Gen. Christopher Niemi(PACAF戦略立案事業部長)が先にE-3センサーの有効距離に限界があるため、同機は戦術面で効果を発揮できにくくなっていると発言していた。

ミサイル防衛庁主催のアライアンス円卓会議で同准将は次のように説明していた。「現実を見れば、E-3は機齢50年に達した機材で信頼性やセンサー能力を維持する費用には際限がない。このため、E-7こそ将来の航空優勢を維持する点で最重要機材になると思う」

E-7が搭載する多機能電子スキャンアレイ(MESA)監視レーダーを製造するノースロップ・グラマンではレーダー性能向上と合わせオープンアーキテクチャによる改良に取り組んでおり、米空軍仕様のウェッジテイルでの採用につながるだろう。

偶然なのか、RFIにある2機以上が英空軍が発注取り消ししたE-7の2機と合致する。RAFは当初ウェッジテイル5機を総額19.8億ドルで2019年に発注した。だが、国防費削減で3機に減らし、生産枠2機分が米空軍向けに振り当てられそうだ。

固定翼の早期警戒統制機は極めて特殊な機材の部類になっており、米国除く西側で製造元は皆無に近い。SaabはグローバルアイでE-7に対抗の可能性があるが、スウェーデン製装備品が米国製を差し置いて採用されるとは考えにくい。今回のRFIではブーム/レセプタクル両方式の空中給油能力も求めており、グローバルアイの原型ボンバルディア・グローバルビジネスジェットでは対応できない。さらにグローバルアイのような小型機で空軍の要求性能が満たせるかも不明だ。

とはいうものの、SaabのCEOマイケル・ジョハンソン Micael JohanssonはBreaking Defenseに対し、同社はグローバルアイを米空軍に提案する準備ができたとし、「競争力の高い実現策になる」と昨年11月に語っていた。

今回のRFIは調達手順を明示していないが、E-7調達への条件が整いつつある。宇宙配備レーダーの実用化はまだ先になりそうで、E-3後継機にはウェッジテイルが最右翼のようだ。■

The Search To Replace The Air Force's Geriatric E-3 Sentry Radar Jets Has Officially Begun (Updated)

Officials from across the service have earmarked the Boeing E-7 Wedgetail as their preferred Sentry successor.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 9, 2022