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2025年4月18日金曜日

ドイツの大規模軍事力再起動が始まった(19fortyfive)


ドイツの防衛戦略は、実質的で持続的な予算投入を計画しているフリードリッヒ・メルツ次期首相の下で変革の時を迎えている


  • オラフ・ショルツ首相は以前、ロシアのウクライナ侵攻に対応するため、1000億ユーロの単発防衛基金を設立したが、この措置は憲法上の債務制限のため制限された

  • メルツ新連立政権は5000億ユーロの巨額基金を発表し、軍事投資とインフラ投資を大幅に強化する

  • ドイツ軍の活性化だけでなく、生産性向上、技術進歩、イノベーションでの経済成長もめざし、ドイツの長年の国防緊縮からの戦略的転換となる


さらば国防緊縮:ドイツは軍事力復活を目論む

2022年、ロシアがウクライナに全面侵攻した後、中道左派の社会民主党のオラフ・ショルツ首相が「ツァイテンヴェンデ(転換期)」を宣言したのは、ドイツの基準からすれば衝撃的な出来事だった。モスクワのウクライナ侵攻を受けて、ベルリンの防衛態勢は戦争態勢に移行した。

 ロシアの銀行、武器、特にエナジー部門に対する膨大で広範囲な制裁措置に加え、ショルツ首相は、ドイツ基準で巨額の資金を防衛に投入する特別な単発基金の創設を発表した。

 友好国と同盟国は長い間、ドイツ連邦軍を非難していた。批評家たちは、ドイツ連邦軍は非効率的であり、最悪の場合、防衛には絶望的に無力と述べていた。しかし首相は、ドイツ連邦軍に1000億ユーロの予算が投入され、冷戦終結とそれに続く軍縮以来最大の若返りが行われると説明した。

 紛争が始まった当初は、ウクライナへの武器・弾薬の供給をためらったことで世界中から非難を浴びたドイツだが、ベルリンは、ゆっくりとではあるが、ウクライナの最も強固な支援国のひとつとなり、今日に至っている。ドイツ政府は、ウクライナへの軍事援助の完全リストを継続的に更新している。


誤ったスタート

ドイツが憲法で義務づけられている債務ブレーキを回避するために、抜け穴を利用した巧妙な会計トリックだった。

 アンゲラ・メルケル首相の在任中、ドイツの国会議員は、GDPの0.35%を超える余剰支出を禁じる連邦規則を法律で定めた。ドイツは世界で最も財政が堅実で、財政に責任を持っている国のひとつで、スターリング債の格付けを持つ国である。

 このルールを解除した例外は緊急時であり、最近ではCOVID-19のパンデミック時に実施された。

 この80年間でヨーロッパで最大かつ最も残忍な戦争が緊急事態に該当しなかったことは、外部から見ればほとんど不可解なことであった。   ショルツ首相のゾンダーベルメーゲンは、ロシアの全面的なウクライナ侵攻に対応するために憲法改正によって可決されたもので、厳密にはドイツの債務ブレーキ支出法を遵守するものだった。

 金額は印象的だったが、持続可能ではなかった。ドイツの中核的な国防支出レベルは上昇しておらず、2026年か2027年までにこの基金が使われても基本的な支出レベルは変わらないだろう。


国防支出と成長: 波及効果

ドイツの国防費が現行水準を上回り、将来にわたり持続的に増加することは、経済の足を引っ張るのではなく、経済成長を生み出す力になるという明確な論拠がある。

 シンクタンクのキール世界経済研究所は、国防費増額の問題を研究し、重要な結論に達した。「国防費の増加、生産、調達、雇用の少なくとも一部に対応するために経済が拡大するというのが大方のコンセンサスである。この拡大の規模や、軍事費が民間部門を圧迫するのか刺激するのかについては、意見が分かれている。その影響は、ECBの対応や資金源を含む状況によって異なる」と報告書は説明している。

 「控えめに見積もっても、国防費がGDPの2%から3.5%に増加した場合、欧州全体のGDPは0.9%から1.5%成長する。これは、短期的には軍備と民間消費との間に限られたトレードオフしかないことを意味する」。

 しかし、報告書で最も重要な発見のひとつは注目に値する。 それは、「軍事費による長期的な生産性向上は相当なものかもしれない」という指摘だ。 「公的研究開発の最良の例が軍事用途であり、民間部門に波及している証拠がある」。

 さらに、「軍事費の一過性のGDP比1%増は、学習による実行と研究開発の両方を通じて、長期的な生産性を4分の1増加させる可能性がある。 公的研究開発への見返りは特に大きく、それだけでペイできる可能性がある。 研究開発支出は、ドラギ・レポートにおいて、欧州の生産性の遅れに対処するための3つの主要な鍵のひとつとされている」。

 興味深いことに、報告書はNATOが防衛に費やしているGDP割合をバッシングしている。「軍事費にGDP比目標を設定するのは逆効果だ。 プロシクリカルなマクロ経済政策につながりかねず、効率的な調達を阻害する」。その代わりに、「予想される財政コストに照らして、必要な物資と人員の長期的なコスト・ベネフィット分析を行い、可能な限り低コストで最高の品質を達成できるような調達を行うべきである」と報告書は述べている。


新首相と国防費改革、あるいは革命

ショルツ首相の日々は終わろうとしている。5月に行われるドイツ連邦選挙では、中道右派のキリスト教民主党フリードリヒ・メルツが新首相に指名される。 メルツの防衛費計画は野心的だ。その範囲も持続可能性も、これまでの1回限りの1000億ユーロの基金を凌ぐものだ。 ウクライナへの軍事援助増額に加え、次期首相の連立交渉により、防衛とインフラ投資に関連する5000億ユーロの特別基金が実現した。

 連邦軍とドイツ国防産業にとっては歓迎すべきことだが、おそらくより重要なのは国防費の将来だ。メルツ率いる政府は憲法改正で国防費を憲法で定められた債務ブレーキから除外した。ドイツの国防支出はもはやGDPのごくわずかなパーセンテージに縛られることはなく、必要性に応じて増加することが許される。


ドイツ軍の将来は?

新首相はまだ就任していないが、ドイツの産業力が、不振にあえぐドイツ連邦軍の装備と再武装という試練にまもなくさらされることは明らかだ。 しかし、それがロシアを撃退するのに十分かどうか、米国が欧州に

対抗する姿勢を固めるかどうかは、まだわからない。■


Germany’s Great Military Reboot Has Now Arrived

By

Caleb Larson

https://www.19fortyfive.com/2025/04/germanys-great-military-reboot-has-now-arrived/


著者について カレブ・ラーソン

カレブ・ラーソンはドイツ・ベルリンを拠点とするアメリカ人マルチフォーマット・ジャーナリスト。 アメリカの外交政策とヨーロッパの安全保障を中心に、紛争と社会の交差点を取材。 ドイツ、ロシア、米国で取材。 直近ではウクライナ戦争を取材し、ドンバスから戦線の移り変わりを幅広くレポートするとともに、戦争の民間人および人道的被害について執筆した。 以前はPOLITICO Europeで防衛担当記者として勤務。 彼の最新の仕事はXで追うことができる。


2022年6月1日水曜日

ドイツ:憲法改正で大幅軍事費追加支出に目処がつく。だが、どう支出したらいいのか国防省が悩んでいる模様。

 

2022年5月10日、ドイツ・ミュンスター近郊のヴェッティナー・ハイデ演習でパンツァーハウビッツェ2000自走榴弾砲を整備するドイツ兵 (Morris MacMatzen/Getty Images)

 

 

イツの政権連立与党と野党幹部は、ロシアのウクライナ侵攻後の2月末にオラフ・ショルツ首相Olaf Scholzが提唱した1000億ユーロ(約1080億米ドル)の防衛基金を確保する憲法改正を承認するよう、所属議員に働きかけている。

 

 

 同基金は、装備や弾薬の不足を補うのが目的で、NATO合意の国内総生産2%を防衛費に充てる目標に向けドイツを軌道に乗せる鍵となる。ドイツ連邦議会が承認すれば、年間500億ユーロ強で凍結された軍事予算に今後数年間にわたる上乗せになる。

 追加支出は、新規債務を制限する政策と衝突するため、例外として認めるには3分の2の賛成が必要だ。社会民主党、自由民主党、緑の党による連立政権と野党キリスト教民主党の各政党は、週末に合意し、同提案の可決の可能性が高くなってきた。

 政府関係者は、7月上旬の夏期休暇の開始前に法改正を成立させたいとする。並行し、追加予算をどのように使うか、さらに重要なのは、いつ支出するかという優先順位付き調達希望リストを作成している。

 月曜日、3人の著名な社会民主党議員、ショルツ首相、クリスティーネ・ランブレヒトChristine Lambrecht国防相、ロルフ・ミュッツェニヒRolf Mützenich連邦議会議長が法改正への投票支持を議員に求める書簡を出した。

 ウクライナ戦争は、欧州の安全保障構造に大変化をもたらすと、書簡は主張した。「自由の中で生きるには、自由を守り抜く軍事力が必要と教えている」。

 政府が資金をどう使うべきか、ドイツで数カ月にわたる議論の的となってきた。国防省は、通常の国防予算より250億ユーロ追加され、年間総額750億ユーロにされても、能力強化につなげらないからだ。計算では、現在の経済見通しを考慮し、新資金を4年間にわたり均等支出し、毎年NATO目標に達する想定だ。

 Defense Newsが入手した社会民主党の書簡によると、党全体の妥協案は、目標達成に多少余裕を持たせている。計画は、5年間でGDPの2%という「平均的」な支出率を達成するもので、特にNATOでのドイツの責務に関連した投資を行う。

 書簡によると、弾薬の補充だけでも200億ユーロを要するとある。

 党の交渉担当者は、配分の詳細と関連する買収の開始時期を交渉してきた。妥協案では、2022年から始まる「重要な」複数年の調達投資で能力ギャップを埋めると想定している、と書簡は伝えている。

 ベルリンは、核シェアリングミッションでF-35を35機購入したい意向だ。また、ボーイングロッキード・マーチン両社からオファーが出ている新型大型輸送ヘリコプターも検討対象にある。

 EUの東欧諸国はドイツとフランスから離れつつある。かつてはEUの防衛政策の舵取り役だったドイツとフランスが各国のウクライナ向け武器供与政策に怒ったためだ。ロシアに近い欧州諸国は、テンポが遅すぎる一方で、プーチン大統領との会談を重視するのは見当違いと考えている。■

 

 

German government tees up $108 billion defense boost for a vote

By Sebastian Sprenger

 Jun 1, 04:35 AM

 

About Sebastian Sprenger

Sebastian Sprenger is Europe editor for Defense News, reporting on the state of the defense market in the region, and on U.S.-Europe cooperation and multinational investments in defense and global security. He previously served as managing editor for Defense News.

 


2018年11月5日月曜日

★納入したばかりの装備が使えない、ドイツ軍装備品が大変なことになっている理由とは

ドイツ連邦軍の装備が悲惨な状態にあることはかねてからお伝えしているとおりですが、事態はさらに深刻なようです。根本には予算削減があるようですが、安全保障に対するヨーロッパの考え方がまちがっていたのではないでしょうか。ロシア、イラン他が全然手綱を緩めない間にヨーロッパでは新世紀とともに国防支出を削減してしまったためでしょう。しわよせが整備や部品の不足で表れているのでは。ヨーロッパでは自前防衛装備設計の優秀さを誇りながら、生産が追い付かず挙句の宛にはここにきて米製装備の採用が増えているようです。その結果、地場の防衛産業は衰退するでしょう。日本にも良い教訓になりそうですね。

Brand-new German tanks, helicopters need improvement before deployment ドイツ軍新型戦車、ヘリコプターで配備前に重整備が必要な事態へ


Deutschland Bundeswehr Truppenübungsplatz (picture alliance/dpa/H. Hollemann)

イツで2017年納入ずみの大型装備品で稼働前に整備が不要だったのは39パーセントにとどまったと国防省が報告している。
連邦軍へ納入済みの戦車、戦闘機、ヘリコプター多数が稼働できない状況と国防省が発表。納品98品目で完全に作戦投入可能なのは38のみと判明した。
納品済み装備の品質は「改善が必要」と国務相ペーター・トーバーが述べた。トーバーはアンヘラ・メルケル率いる保守政党キリスト教民主党(CDU)で幹事長を務めていた人物だ。
これは野党議員の質問に答える発言だたがドイツ軍がノルウェーでのNATO演習で即応体制に国防相ウルスラ・フォン・デア・レイエンはじめ関係者から疑問が出ている中での質疑となった。
ドイツDPA通信社配信のトーバー答弁では連邦軍装備の7割が常時稼働可能状態と述べている。2017年にはわずか39パーセントしかだった。「以前と同様、業界には契約通りの性能諸元の実現を可能な限り迅速にお願いしたい」
だが心配なのがエアバスA400M軍用輸送機とプーマ歩兵戦闘車両(写真上)だ。後者はドイツのクラウス-マッファイ・ベグマン(KMW)とラインメタル・ディフェンスの共同事業体が2010年から納入中だ。
エアバスはA400Mを「最高性能かつ実績実証ずみの輸送機で21世紀の最新技術で現在さらに将来の軍のニーズにこたえる機体」と豪語していた。
装甲車両の共同事業体はプーマでは乗員が「最新鋭の防御技術で守られる」と述べていた。
DPA調べで作戦投入可能なのは昨年度納入のピューマ71両のうち27両、A400M8機中半分、ティーゲル戦闘ヘリコプター7機のうち2機、NH90輸送ヘリコプターでは7機中4機のみだ。ユーロファイターは昨年4機が納入されたが使用可能なのは1機しかない。残る機体は主コンピュータの換装中だ。
「ユーロファイターで残る3機の稼働許可は間もなく下りる」とトーバーは議会で答弁した。
これに対し野党議員はフォン・デア・レイエン国防相が「防衛産業のだらしなさを放置し、そのつけを納税者に回している」と非難。

6月にフォン・デア・レイエン国防相は議会へドイツ国防予算の増額を求め、冷戦後の予算削減で保守整備が不十分になり、交換部品入手も困難になっていると危機を訴えていた。■