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2017年3月13日月曜日

★中国経済の退潮は止まらない:フリードマンは中国をこう見ている






中国経済の矛盾はあまりにも規模が大きく全体像を理解している向きは少ないのですが、さすがフリードマンはうまくまとめていますね。中国経済が崩壊しないのもお金が今は回っているためだとよくわかります。では、ソ連のように軍拡が経済の実態を無視して進んで破綻することはあるのか。これが今後の中国で注視すべき進展でしょうね。ちなみにフリードマンは中国は大国になれないと見ているのですね。


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Reality Check.

March 6, 2017

By George Friedman

China’s Economy Continues to Decline

中国経済の退潮は続く

経済苦がそこまできている

  1. 李克強首相が全人代でGDP成長率は2016年の7パーセントが今年は6.5パーセントとの見通しを発表した。中国経済の成長率としては2016年は1990年以来最低だった。経済成長を占う予測精度はどの国でも疑わしいものだが、中国経済統計の信頼度は著しく疑わしい。そのため実際の成長率は6.5パーセント未満と見ている。
  2. 李首相発表の重要部分は中国政府として経済弱体化を止める手立てがないと示した点であり、これから経済面の苦痛が来るとも示唆している点だ。李克強は中国経済の変革はこれから期待できるものの苦痛が伴うと述べている。李は中国経済を蛹から変身するべく苦闘する蝶に例えた。言い換えれば状況はこれから悪化することになる。
  3. 中国の経済奇跡はかつての日本同様に終了している。経済再生は機能していないがこれに驚く向きは皆無だ。二桁経済成長が持続できたのは出発点の経済状況が最悪だったからだ。日本の例では第二次大戦からの復興で、中国は毛沢東の政策からの回復であった。単純に以前の状況に戻せば経済は動いた。損害が大きければ経済上昇もそれだけ長く続く。
  4. だが全土を覆った大失策の後始末をする社会で成長率が持続できたこと自体が不合理だ。経済が成熟すれば、異常なほどの成長率の維持も困難になる。中国が世界経済を支配するとの説は1980年代には疑わしかった。日本が支配すると思われていた。ただし日本は経済成長を維持できず世界支配もできなかった。一旦不可能とわかれば、幻想も霧散消滅する。世界も過剰に期待しなくなる。
  5. 中国のジレンマは日本同様に成長を輸出中心で達成したことによる。日中両国はともに貧しく国内需要は低かった。そこで低賃金を武器に製品を先進国で売り活性化をねらった。その結果、輸出関連部門が潤い、東シナ海の港湾から遠い地区の経済は富を蓄積できなかった。
  6. 日中両国には問題がふたつある。まず、賃金上昇だ。熟練工には一層精緻だが供給が間に合わない製品づくりが求められる。だが輸出重点の政策が成功したのは海外諸国の需要に支えられたためであって、中国自体の政策が要因ではない。
  7. 2008年に中国はツナミふたつに襲われた。まず中国が頼りにする顧客が経済危機で不況になり、中国製品への需要も縮んだ。二番目に中国の競争力は価格だったが、コスト競争力が低下した。
  8. 中国最大の恐怖は失業で、国内内陸部は貧困のままだ。輸出が減れば失業が伸び、格差が大きくなれば社会、政治上で望ましくない。沿海部でも失業者が大量に生まれる。1920年代に共産党が台頭したのと同じ状況で、党は状況を完全に理解している。このため出てきた解決策は競争力をすでに失っている事業に巨額貸付を続け、賃金を支払い続けることだ。その結果、非生産性が更に伸び、中国製品はさらに競争力を失った。
  9. 中国の台頭には別の結果もあった。西側諸国に中国投資ブームが生まれた。中国の上昇期には投資に旨味があったが、中国の顧客側を2つの意味で傷つける効果が生まれた。まず、低価格製品で消費国の産業経済が低下した。次に投資資本が中国に集中した。
  10. これで政治面の反動が生まれた。2008年以降の経済不振と輸出を維持するべく中国が通貨安を維持しつつ非合理的な金融を利用したことで政治反動が生まれたのだ。これは中国としても耐えられないことで今もこの状態のままだ。中国の産業構造は欧米の需要に連繋しているが、欧米の一部で中国輸出の阻害要因が生まれてきた。中国内需の増大も議論になっているが、中国は巨大な国であり、同時に貧しい国家だ。中国だけで十分な需要を生み、消費需要が産業活動を満足させるまでには相当の時間がかかる。
  11. その一方で失業を防ごうとするあまり合理性のない投資が続き経済の脚を引っ張っている。借入れで延命してるような企業を整理するためには不況が必要になるのは経済学上明らかだ。政治面では失業コストは負担できない。習近平体制で独裁体制が強化されたのもこのつながりで理解できよう。つまり解決策の一つは制御された形で政策矛盾を容認し、抑圧を継続することだ。
  12. 米国が中国に最大の脅威だ。ドナルド・トランプ大統領は中国に受け入れられない政策をちらつかせている。中国の有する米国とのつながりを制限することだ。さらに中国は輸出のため太平洋インド洋の通商路が必要だ。つまり南シナ海東シナ海を自分の思い通りにすることだ。米国はこの動きに強く反対している。
  13. 日本も同じ状況を経験し、低成長時代に入ったが、安定した国家になった。ただ日本国内には貧困層が10億人いるわけではないし、社会騒乱や革命の伝統もない。中国の問題は経済に留まらない。問題は政治で、経済業績の不振に不満を覚える莫大な人口層をどう抑えるかだ。低成長は当たり前になっている。中国に対抗する米国はじめ外国勢力をうまく取り扱う必要がある。米国は中国の中核利益でもある。中国が世界を安心させる動きをすれば、しばらくは効果を上げても世界は中国を古いレンズで見ようとするだろう。だが現実は現実だ。中国は今や米政府発行債券の最大の所有国ではない。日本がその地位についている。中国が蓄えた資金は底をつき、真実はひとつ。資金がある国は米国に資金を安全に保管するものだ。
  14. 中国は高成長を遂げた。だが今や、経済ニーズを政治の許す範囲で模索し苦闘するその他大勢の国のひとつにすぎない。■

2017年2月9日木曜日

★2040年の世界:中国から首位を奪う国は日本だ



ちょっと歯切れの悪い論調でもあるのですが、フリードマンの前著では中国を100年後の大国としてはまったく想定しなかったことを思い出す必要があります。海洋大国としての日本の将来についてはもっと楽観的になって良いのではないでしょうか。そのためにも国内に残るしがらみをひとつひとつ検討して本当に維持する価値があるか見極める必要があります。保守とはなんでも昔通りに守ることにこだわることではないはずです。皆さんはどう思いますか。

Asia's superpower in 2040 won't be China

  1. 日本が2040年までに東アジアの主導権を握る大国に上り詰める。これがGeopolitical Futures(GPF)による物議をかもす予測の一部だ。
  2. GPFが中国に消極的なことはよく知られている。またこの見方に同意しない向きがあるだろうが、当社の理由付けには納得してもらえると思う。中国はこれから深刻な問題に直面し、中国共産党の支配力が衰える。
  3. 日本が超大国になる可能性は一見少ない。人口は中国の十分の一にすぎず、高齢化しつつ減少中だ。日本の負債総額は対国内総生産比で229%にのぼる。
  4. そんな日本があと25年もすると東アジア最大国になるとはどういうことだろうか。
  5. 出発点は日中両国の経済構造の違いだ。
  6. 分析を進めると両国の強み弱みがはっきりとし、当社の予測が一層正確に見えてくる。

中国経済を地域別に見ると
  1. 下の地図では中国は4地帯に分け、それぞれのGDP構成比を示した。データは中国国家統計局のものである。中国はこの区分で各地方の経済動向を把握する。(数字が政治的思惑で操作されている可能性が高いことを忘れてはならない)
ChinaMauldin Economics
  1. この地図から中国経済のいびつさと弱点が見える。
  2. 東部の沿海地方が中国経済の半分以上に相当する。中部、西部はそれぞれ2割ほどの国富を形成する。ただもっと詳しく見る必要がある。
  3. 西部は国土の半分以上だが経済規模は東部の半分に満たない。また中部と同程度の経済産出成果を示すが、中部は西部の半分に満たない面積だ。
  4. 東北部は例外のようだ。GDPではわずか8%だが、経済は重工業中心で中国が内需拡大で輸出依存を減らすと大きな影響を受ける。この意味は何か。
中国最大の弱みは国内貧困だ
  1. 最大の経済上の弱みであり、最大の敵となりうるのが貧困だ。地域間の経済格差は世界の多くの国に見られるが、中国ほど大きい例はない。
  2. この問題の根本に国土規模がある。
  3. 1981年ではおよそ10億人が一日3.1米ドル(2011年の購買力平価換算)以下で暮らしていた。世界銀行の最新データでは2010年に3.6億人に低下している。これ自体は大きな成果だが問題はそれで終わりではない。
  4. 中国の経済成長はこの30年間通じ目を見張る規模だったが、ここに来て成長は鈍化し、その中で3.6億人はまだ絶望的な貧困生活を余儀なくされている。
  5. つまり中国の経済成長を享受したのは沿海部で、その他国土とは別だと地図は示す。

諸刃の剣

  1. 中国の人口は世界最大で国土面積は世界四番目だ。これが国力の源泉だが両刃の剣にもなる。
  2. 大規模な軍の整備には有利だ。広大な国土と厳しい地理条件で敵国の侵入を阻みながら大量の人員を動員できるのは他国にない特徴だ。
  3. 他方、国内治安維持に投入する労力が人民解放軍整備を上回っている。漢族が少数の地方多数での支配を維持する必要が生まれているが、地方には自治を求める声が根強い。また国境警備に多大な負担をしている。
  4. 中国は大陸国家としては強力だが、世界規模の海軍国になったことはない。つねに内乱と外部勢力からの支配を恐れてきた。では日本はどうなのか。

日本国内の富の分布状況

  1. 下図を見てもらいたい。日本でも富の集中が一部地域に見られる。中国と同様に日本でもデータが地域別にまとめられる。
JapanMauldin Economics
  1. 本州5地区が日本経済の87%を構成する。(関東地区が43%に相当する)地図からGDPで18%を生み出す東京都の突出度がわかる。
  2. さらに2012年OECDデータから東京広域圏のGDPは都市として世界最大の1.48兆ドルであることがわかる。(第二位はソウルだったが半分未満の規模)つまり東京が日本のGDP全体の三分の一を占めることになる。

日本の優位性

  1. 中国と違うのは日本の富が格差が少ないまま全国に広く分布していることだ。端的に言えば13億の中国に対して1.273億の日本の違いだ。
  2. だが単純に規模の差だけではない。中国で不利なのは規模の大きさから生まれた多様性だ。中国のような内陸部沿海部の格差問題は日本には存在しない。
  3. 中国では沿海部各省を内陸部と比較すると大きな差が歴然だ。東京が全国の一人あたり所得3.1百万円より突出しているとは言え生活費が高いことも原因だ。たしかに日本国内にも豊かさの格差はあるものの、中国のような大きな格差はない。

日本の課題

  1. 日本の弱点は食料及び原材料の輸入依存度だ。食物自給率はカロリー換算で2015年は39%しかなかった。製品価格では66%だった。

  2. エネルギーでも輸入依存は同じで、第2次大戦への参戦理由の一つが原油輸送路の確保にあったのは明らかだ。
  3. 現在の日本もエネルギー輸入依存では変わらない。2011年の福島原発事故の前でもエネルギー供給の輸入依存度は80%近かった。2012年以降は91%近くまで上がっている。(米エネルギー情報局まとめ)
  4. 日本の大問題は人口構成だと主張する向きがある。たしかに高齢化は進行中だが、中国でも同様である。ヨーロッパ主要国も直面する問題は共通している。だが日本には選択肢がある。
  5. 日本は人工知能分野への支出が世界最大級である。自動化、ロボット工学でも同様で生産性の維持を図っている。また日本社会に同質性志向があり、外国人には比較的冷たい傾向があるが、深刻な状況から移民政策で大きな転換を迫られる事態が来るかもしれない。
  6. 広範なアジア太平洋地域から日本は必要な労働力を確保する可能性がある。

そうなると日中を比較すると

  1. 日本は国土面積では世界第62位で、人口では11位だが、だからといって日本が地域大国の座につけないわけではない。
  2. 中国と違い、日本に国境を接する敵国はない。中国と違い、日本政府には全国規模で統治効果を心配する必要はない。
  3. また地域間で格差も心配する必要がない。日本には経済の高成長から低成長を平穏に変化させた実績もある。
  4. 日本が持つ弱点から強力な海軍力の整備が実現し、海洋通商路の保護が目標になった。また通商路の保護に当たる米国と緊密な同盟関係を整備してきた。
  5. 端的に言えば、中国はきわめて強い国であるのは事実だ。本稿では中国の経済問題が政治課題につながると示唆したつもりだ。
  6. いまのところ日本は精彩を欠いているが、その重要性は増えていく。日本に関する発言を当社が増やしていくのは日本がアジア太平洋で主導的な立場につくのと比例するはずである。■
Read the original article on Mauldin Economics. Copyright 2017.
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