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2023年1月9日月曜日

2023年の展望③ 地政学で見る世界の現状、米中関係、ロシア、中東、アフリカなど

 

 

 

21世紀で最初の25年が近づいてきが、世界情勢は今までになく不安定で、不確実なままだ。

 

 

2023年は、市場の混乱が続く中、過去数十年で最も困難な年になる予想がある。インフレは抑制されるかもしれないが、例外的に高止まりし、世界的な景気後退は避けられない。大きな疑問点は、景気後退がどの程度の長さと深刻さになるかだ。世界的な景気後退は、COVID-19大流行とウクライナ戦争に影響をされ、地域ごとに異なる反応を示すだろう。

 英国は不況に突入していると言ってよい。米国は、地理的に近く、伝統的にエネルギーに依存しているため、ウクライナ紛争に直接さらされる欧州に比べて、景気後退は短く、深刻ではない可能性が高い。2023年に中国がCOVIDとの共存を覚えれれば、中国の景気は回復するだろう。しかし、いつ、どのようにウイルスを管理するかという問題が残る。さらに、パンデミック後の中国需要の回復は、欧米諸国にインフレ率の上昇をもたらすかもしれない。

 新興国における債務の増大は、ほとんど持続不可能になりつつある。2023年には、協調的かつ効果的な再建努力が開始されない限り、特にアフリカで国債のデフォルトが続出するリスクがある。ガーナは2022年末に国際通貨基金(IMF)との間でぎりぎりの救済措置に合意した。2023年には他の国もこれに続くと思われる。さらに、投資家は保有株式のヘアカットの可能性にも備えなければならない。

 地政学的な面では、ウクライナで今後数週間から数ヶ月の間に最悪の事態が起こっておかしくないという残念な現実がある。特にロシアは2022年末までの数ヶ月間に20万人以上の新兵を採用し、2023年前半の大攻勢に備えつつある。現時点では真剣な交渉のための信頼、意志、インセンティブがなく、当面の間、停戦の見通しは立っていない。

 ロシアの指導者プーチンにとって、この紛争は存亡の危機であり、ウクライナでの勝利のため必要なものは何でも投入することを約束するものである。さらに、プーチンは時間が味方になると考えており、戦争を無期限に引き延ばすことができる。彼は、ウクライナ疲れによって、西側諸国の政治的連帯と国民の忍耐力を時間をかけて消耗させようとする。しかし、ロシア軍の士気と資源へのアクセスは、プーチンが勝利を追求する上で深刻な課題となっており、そもそも勝利がまだ明確に定義されていない。

 

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ワシントンDCを訪問し、高性能ミサイル防衛システムPatriotを含む、2023年までに求めるものの多くを確保した。ウクライナの主要な軍事資金提供者として米国は、紛争初年度に1,000億ドル近くを拠出する。しかし、新たに就任した共和党下院の指導部は、これ以上ウクライナに「白紙委任」しないと明確にしている。2023年に米国の資金援助が停止することはないものの、ペースは落ち、支出前の精査も厳しくなるだろう。

 2023年、米中間の緊張は、特に台湾と南シナ海(海洋権益と領土問題)をめぐるいくつかの面で危険なまで高まったままとなりそうだ。米中双方は直接対立を避けたいと願っているが、瀬戸際外交が続けば、思わぬ災難に見舞われる可能性がある。

 最近、南シナ海で米中両国の航空機がわずか3メートル差で衝突を回避したが、武力紛争の火種として歴史の流れを変えていたかもしれない。今回の事件や過去の同様の事件は、冷戦時代の米ソのような米中間の効果的なコミュニケーション・ホットラインが不可欠であることを強調している。

 中国による台湾侵攻の脅威は、2023年に実現する可能性は極めて低い。中国には効果的な侵略能力がない。さらに、中国と世界にとって経済的な影響は壊滅的になるだろう。ロシアのウクライナ侵攻の失敗が貴重な教訓を与えてくれる。結局のところ、西側諸国は中国の指導者が期待していたほど分裂しておらず、衰退もしていないのかもしれない。

 習近平国家主席は、米国からの挑戦を感じ、台湾独立への政治的転換が不可逆的になれば、台湾を封鎖はしても、侵略はしないであろう。2022年8月のナンシー・ペロシ前下院議長の訪台など、米国の政治指導者がさらに台湾を訪問すれば、中国に封鎖の口実を与え、台湾に対する圧力のラインをさらに有利に変化させることができる。

 2024年に行われる台湾総統選挙で、独立を求める声が高まり、危機に陥る可能性がある。根本的には、米中両国の指導者は、定期的に関与し、果的に関係を管理する必要がある。それを怠れば、世界的に悲惨な結果が生まれる。

 2022年はCOVIDがほぼ制御下に置かれた年になった。2023年、中国は、悲惨なゼロCOVID政策を突如終了したが透明性を欠いたため、この進展が覆される危険性がある。ワクチンに耐性を持つ新たな変異体の脅威は、依然として現実のものだ。

 共産党指導部は、面子を保ち、権力を維持するため、2020年初頭のCOVID発生当初と同じ無責任な行動を見せている。パンデミック制御の失敗とそれに伴うシナリオによって、国内ですでに信用を大きく失いつつある。

 地政学面では、2023年にも世界の安定を脅かす深刻な火種として、ペルシャ湾におけるイランとサウジアラビア、そしてその主要な安全保障保証国である米国との間で続く不安定で危険な瀬戸際外交がある。さらに、インドとパキスタン、中国という核保有三カ国の微妙な国境は、日常的な小競り合いがいつ深刻な武力紛争につながるかわからないホットスポットのままだ。

 2023年には、地域レベルで地政学を形成し、定期的に世界的な影響を及ぼす中東の影響力が増大する。特に、サウジアラビアの国際エナジー価格決定力、トルコのウクライナ戦争への影響力などがある。■

 

 

In 2023, Uncertainty Will Shape the Global Landscape

by Marco Vicenzino

January 8, 2023  Topic: geopolitics  Region: Eurasia  Tags: GeopoliticsRecessionCoronavirusChinaRussiaTaiwanWar

https://nationalinterest.org/feature/2023-uncertainty-will-shape-global-landscape-206086

 

Marco Vicenzino is a global strategy advisor to decisionmakers operating internationally in both private and public sectors. He focuses on geopolitical forecasting and analysis and international business development.

Image: Shutterstock.



2023年1月7日土曜日

2023年の展望② ウクライナ戦の決定要因は弾薬数だ。西側防衛産業は増産が不可避となる

2023年の展望。ウクライナ戦は消耗戦へ。

西側兵器産業の増産は避けられない。

Image: Russian State Media.

クライナ戦争は、2カ月足らずで1周年を迎える。ウクライナ軍の戦果とウクライナ国民の総合的な回復力が予想を超えた事実で祝福されるべきだろう。ウクライナの決意は揺るぎないが、同時に、プーチンとモスクワのとりまきたちは、勝利にむけたコミットメントを倍加させているように映る。

 

 

 これはもはや消耗戦であり、人口や領土の面ではモスクワが有利に見えるものの、この戦争では人的要因と弾薬が決定的となる可能性がある。

 ウクライナ戦争は、戦争における人的要因の決定的な重要性を示している。独裁者の誇大妄想がいかに危険で破壊的であるか、特に長期にわたって権力を握ってきた者がいかに危険な存在かを明らかにしている。また、ロシア伝統の腐敗が、自国の軍事力について歪んだ情報評価を常に生み出し、プーチンに行き過ぎた行動を取らせている。

 何よりも、政治学の「現実主義」パラダイムに反し、故郷が攻撃され、同胞が殺害される事態に対し、動員された自由と愛国心のある人々が何を成し遂げられるかをウクライナは、再び示している。

 しかし、ウクライナ戦争は急速に数の戦争になりつつある。簡単に言えば、弾薬量の問題だ。これはロシア側にもウクライナ側にも当てはまる。ロシア自慢の弾薬は、NATOとの全面戦争に備え、ソ連時代に計画されたものだが今や恐ろしい速度で枯渇しつつある。夏の最盛期、ソ連の戦術書に従い大規模な砲撃で作戦を遂行したとき、ロシア軍は1日に約6万発、ときにはそれ以上の弾丸を発射していた。現在、ロシアは1日にせいぜい2万発、時にはそれ以下しか撃てず、その限られた量を維持するために備蓄から蔵出ししている。一方で、ロシアはイランや北朝鮮をはじめ、世界各地で軍需品の買い付けを行っている。

 さらに、ロシアがベラルーシから持ち込んだ弾薬の備蓄は、ほぼ使い尽くされたようで、モスクワにとって状況は厳しい。「ソ連流の戦争方式」を維持できる軍産複合体かが問われている。

 ロシアが新たな30万人規模の攻撃部隊を訓練する準備を進めている中で直面しているもう一つの問題は、新編成部隊が、昨年2月にウクライナで活動した部隊の質に及ばない可能性だ。ヴァレリー・ゲラシモフ将軍の改革が生み出したロシア軍は、ウクライナのような従来型の消耗戦にミスマッチであると判明している。2022年のキーウの戦い以来、ロシアが戦場に投入した部隊は、訓練も装備も不十分で、下士官も不足し、何よりも最も自慢のロシアの新兵器プラットフォームの配備ができない。プーチンの新部隊は、この戦争における第1軍、第2軍と同じ運命をたどるかもしれない。そうなれば、ウクライナが求めている戦略的突破口が現実のものになる。

 しかし、ウクライナ側もピンチだ。欧州供与の備蓄は底をつき、ほとんどの欧州政府はウクライナの武器弾薬を補う戦時生産にまだ移行していない。米国でさえも、優先順位をつける必要性を感じ始めている。例えば、155mm榴弾砲の弾薬で、米国は毎月約1万4000発を生産しているが、ウクライナの報告によると、1日平均約5000発を発射しているという。

 米国防総省は最近、春までに155mm砲弾を月産2万発に増産し、2025年に3倍とする計画を発表した。ウクライナ弾薬以上に重要な問題はない。ウクライナ軍が防衛を維持し、再攻撃と多くの国土の解放に向け勢いをつけるには、1日の使用量の2倍の備蓄が少なくとも必要だ。

 というわけで、今年の課題は単純明快だ。欧州各国政府は、ロシアの進出を阻止し続け、その後、ロシアを撃破して主導権を握り、国土のすべてを解放するねらいのウクライナのため、ウクライナのニーズに合わせて軍需品や装備品の生産を加速させる契約を交付し、資金を投入するかどうかの判断に迫られる。

 米国は軍需品生産を加速させているが、ワシントンには台湾などへの供給契約を含め、未達の兵器契約があるため、欧州各国への期待が高まる。つまり、ヨーロッパが負担しなければならない。

 ウクライナ紛争は、その結果が今後の欧州大陸の安全保障を変革させる戦争である。東側諸国だけでなく、すべての欧州の政府が、何が危機に瀕しているかを理解し、行動する時だ。これは、数のゲームなのだ。■

 

Numbers Game: 2023 Could Be a Decisive Year for Ukraine - 19FortyFive

ByAndrew A. Michta

 

Dr. Andrew A. Michta is Dean of the College of International and Security Studies at the George C. Marshall European Center for Security Studies in Garmisch, Germany and a Nonresident Senior Fellow at the Scowcroft Strategy Initiative in the Atlantic Council’s Scowcroft Center for Strategy and Security. Michta is also a 19FortyFive Contributing Editor. 

The opinions expressed here are those of the author and do not reflect the official policy or position of the George C. Marshall European Center for Security Studies, the U.S. Department of Defense, or the U.S. government.