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2017年10月7日土曜日

米空軍の戦力低下と世界危機、ヘリテージ財団の警鐘


予算確保のため米軍は厳しい状況を意図的に伝える傾向があるのですが、米空軍の状況は実際に悪いようです。予算削減が続く中でしわよせが人的資源に現れた結果と思われますが、再建に数年かかるでしょう。その間に北朝鮮とイランという最悪の組み合わせで戦闘が始まれば戦勝の実現はおぼつかないというのが今回の報告書の指摘でしょうか。

Aerospace Daily & Defense Report

Influential Think Tank Warns Of Drop In Fighter Capability

有力シンクタンクが米空軍戦闘機兵力の減衰に警鐘を鳴らす

Oct 5, 2017Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

F-15: Boeing
  1. トランプ政権に近いワシントンの有力シンクタンクが米空軍の戦闘機戦力の低下に警鐘を鳴らしている。
  2. ヘリテージ財団による「米軍事力指標」によれ戦闘機数がば昨年から大幅減少し空軍の第一線戦術戦闘機は現在923機とある。昨年より236機の減少で、ヘリテージが算出した二大戦役同時勝利に必要な水準1,200機からも277機不足している。同財団はこの機数を基準にして米戦力を評価した。
  3. パイロット不足も1,000名の大台に近づきつつあり、整備陣が3千名も不足しているため米空軍の有事対応力は減衰中と報告書で指摘した。
  4. 総合評価では米空軍の戦力、規模、即応体制は「最低限」と評価し、いいかえると現時点で同時に二方面で大規模戦に米国が巻き込まれると現状の戦力水準では要求にこたえられない。
  5. 総合評価は昨年から大きくは変わっていないものの訓練・機体整備両面の不足に加えパイロット自身の自己評価でも退潮は明らかとしている。
  6. 米空軍が状況悪化の進行を食い止められない一方で海外の敵勢力は戦力整備にまい進しているとヘリテージが強調している。
  7. 「米空軍の総合戦力評点は下降を続けており、米国の航空優勢確保は潜在敵国の技術力向上により脅かされている」と報告書はまとめている。同財団が特に懸念するのはF-15Cの第一線配備が106機しかないことで同型が全機退役した場合に生まれる能力ギャップだ。
  8. 朗報もある。F-35Aは価格面、日程面、さらに技術面で苦労を経験してきたが新戦力として期待できる存在に育ってきたと同財団は評価している。「同機パイロットは機体に多大な信頼感を寄せており、同機事業にはずみがついてきた観がある」
  9. 総合するとヘリテージ財団の評価は米軍の現時点の姿を「最低限水準」で「弱体化」に向かいつつあるとしており昨年版から変化はない。つまり、現状の部隊戦力で大規模地域戦闘が一つ発生するなら対応は可能だが、「それ以上になると苦しく」なり大規模戦闘が二つ同時進行で発生すると「装備不足」は否めないとする。
  10. ヘリテージ採点では米陸軍・海兵隊は「弱体」としながら米海軍は「必要ぎりぎり」としている。
  11. 同時に米核戦力も「最低限」としたのは旧式化著しい装備に依存しているためで潜在敵国の「野心的な」戦力整備に比べると「著しい」違いがあるとする。ヘリテージはロシア、中国、イラン、北朝鮮の事例をあげ、とくに北朝鮮のミサイル試射のペースが急であると指摘している。■

2017年3月25日土曜日

★米空軍がF-15C/D型の早期退役を検討中



予算がないからと機種を整理していけば、その先はどうなるかわかっていても背に腹は変えられない事情が米空軍にあるのでしょうか。F-15はまだまだ供用に耐える機種であり、「空飛ぶミサイルトラック」に改装する構想もあるのに行く末に黄色信号ですね。もっともA-10の事例のように議会が強硬な反対論を展開することもあり(マクサリー議員は退役空軍大佐でA-10パイロットのようです)、空軍もわざと議論を巻き起こしてちゃっかり予算を確保したいと考えているのではないでしょうか。本家の米空軍がこんな状態では先が心配ですね。航空自衛隊は結局最後までイーグルを運用するのではないかと思いますが。

Are the F-15 Eagle's days numbered? Top generals say maybe

By: Stephen Losey, March 22, 2017 (Photo Credit: Senior Airman John Hughel/Air Force)
米空軍はF-15C型およびD型を退役させ任務をF-16に引き継がせる検討に入っている。
  1. 下院軍事委員会即応体制小委員会の聴聞会が今週水曜日に開かれ、委員長ジョー・ウィルソン議員(共、サウスカロライナ)がスコット・ライス中将(州軍航空隊総監)にF-15C型D型計236機を退役させ予算節約する案を質した。ライス中将は検討中と認めた。
  2. 同聴聞会でマーサ・マクサリー議員(共、アリゾナ)から同案は初めて聞いたとして、スコット・ウェスト少将(空軍運用部長兼参謀次長)に同戦闘機退役案が既定方針なのかを問いただした。
  3. ウェスト少将は正式決定ではないとしながら限られた予算を最大限に活用する案を空軍が検討中と認め、ミッション実現のため機種数を最小限にしたいと発言。ウェスト、ライスともにF-15の一部退役は「正式決定前」とした。なお、F-15Eストライクイーグルは検討対象ではない。
  4. ライス中将からはレーダー改修を行えばF-16でF-15の代わりは務まるとの発言があり、空軍は2019年度業務を計画中だが、F-15C型D型の退役方針は今年中は決まらないとライス中将は発言。そうなると同機退役は最短で2020年となる。
  5. だが空対空任務を主眼におくF-15C型D型を退役させ、空対地任務中心のF-16を使う案には疑問が寄せられた。F-15C型D型の就役開始は1979年でAIM-9サイドワインダーおよびAIM-120AMRAAM空対空ミサイルを最大8発搭載する。これに対してF-16は空対空ミサイルあるいは空対地ミサイルを最大6発搭載する。両機種がM-61A1多銃身20ミリ砲を装備するが、F-15では940発なのにF-16は500発だ。
  6. 「性能の違いは明らかだ」とウィルソン委員長は指摘。
  7. F-15イーグルの任務をF-16に任せて航空優勢確保で支障が生まれないのかを尋ねられライス中将は問題なしと答えている。「機種構成変更でリスクがないわけではないが、F-16に新能力を付与すれば性能面で十分対応できる。即応体制や本土防衛体制で変更が生じるが、対応は可能」と述べている。
  8. これに対してマクサリー議員はF-22登場までF-15Cが最優秀の空対空戦闘機であったと指摘。これに対しF-16は各種任務を低費用でこなせるが、レーダーを換装してもF-15Cと同等の空対空性能は実現しないと主張した。また現在でさえパイロット不足に悩む空軍で機種変更したら即応体制の維持が懸念されると表明した。「今でも即応体制に危うさがあり機種変更で再訓練をする間に危機が生まれれば短期でも即応体制が犠牲になる。戦闘機飛行隊が55個まで削減されている中、機種変更には慎重に望むべきだ」
  9. ウェスト少将は機種変更の際には一時的に「オフライン」状態が発生するが、中国やロシアへの優越性が減っているのも事実だとし、機種近代化は早く行ったほうが良いと述べた。
  10. 空軍報道官アン・ステファネックはその後F-15C型D型の退役案は決定事項ではないと述べ、これまでもA-10退役を複数年度で提案したものの同機はまだ運用中と指摘した。「将来の戦力構成は機会あるごとに検討しています。予算案に盛り込まないかぎり、案は案であり、検討にすぎません。選択肢の一つであり実行に移すわけではありません」■