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2016年9月20日火曜日

★B-21の名称はレイダーに決定、有人運用が基本となる

ドゥーリットル爆撃隊の生存者はついに一人になり、命名式に参加できたようです。レイダーとは空軍にとって、米国人にとって特別の意味があるようです。

Air Force Wants to Keep ‘Man in the Loop’ with B-21 Raider

Image via U.S. Air ForceImage via U.S. Air Force
POSTED BY: HOPE HODGE SECK SEPTEMBER 19, 2016


B-21が選択的に有人操縦機になるとの観測は誤りだったようだ。

空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが新型機の呼称をレイダー Raider と発表したのと同日に空軍グローバルストライク軍団司令官が同機にはパイロットを無期限に登場させると発言している。

「有人機として運用する」とロビン・ランド大将は空軍協会年次大会の席上で19日発言した。

ランド大将は単価550百万ドルの長距離戦略爆撃機は無人運用の支援機材と運用するとも発言したが、レイダーの無人運行も将来的には可能性があるものの、有人運用の利点を強調した。「ヒトが介在している方がいい。パイロットとして女性もいいね。とくにこの機は核運用もしますから」

一方で空軍迅速戦力整備室のランドール・ウォルデンは将来の変更の可能性は残してあると発言。「無人機運用の基本的な要求内容はすでに出ている。問題は実現するタイミングです」

同機は老朽化進むB-52やB-1の交替が期待され、空軍は初期作戦能力獲得を2020年代中頃と見ている。

名称のレイダーは第二次大戦中のドーリットル東京爆撃隊にちなむもの。ジェイムズ・ドーリットル中佐以下の各機は1942年に東京他で工場、軍事施設攻撃を真珠湾攻撃の後で実施した。■


2016年1月23日土曜日

身体能力を大幅に強化した兵士が出現する可能性

前回取り上げた人体強化兵士の話題ですが、次第に内容が判明してきました。正規軍はともかくテロ集団がこの技術を使えばどどんな惨事が発生するか、考えるだに恐ろしいことになります。記事で言うような国際会議で議論したとしても平気で無視する勢力が出るはずですから大変なことになりそうです。

「breaking defense」の画像検索結果

‘The Terminator Conundrum:’ VCJCS Selva On Thinking Weapons

By Colin Clark on January 21, 2016 at 6:04 PM

Terminator army: Warner Bros.
Terminator army from Terminator 3: Rise of the Machines Credit: Warner Bros.

WASHINGTON: 統合参謀本部副議長がインテリジェント兵器や強化型兵士の使用について国際議論が必要だと主張している。

  1. 「どこで線を引くのか、また誰が先に一線を越えるのか」とポール・セルヴァ大将は発言。マイクロエレクトロニクスの人体埋め込みの可能性をさしている。「人間としてこの一線を越える日がくるのか。そしてその実施にはじめて踏み切るのはだれか。これはきわめて倫理的な疑問だ」
  2. ペンタゴンは強化装甲、人工知能、超小型センサー、インテリジェント装具の開発に懸命であり、記者はセルヴァ大将に米国も同じ方向に進むのかとたずねてみた。実用化すれば兵士の能力は向上し、より早く走り、より高くジャンプし、暗闇でも目視でき、電子情報を収集し、長期間覚醒したままでいられる。これに対しセルヴァはロシアや中国に対抗して技術面で「大胆な変革」が必要としつつ、米軍がこの技術を先に実用化すれば人間性を問う「深刻な結果」を招くと慎重な姿勢だ。
Gen. Paul Selva
Gen. Paul Selva

  1. この技術は倫理人道上のみならず法律上も問題となる。映画ターミネーターのスカイネットを思い起こしてもらいたい。自ら考える兵器が人の命令とは別に勝手に作動したらどうなるか。セルヴァ大将は国際社会でこの問題を議題にすべきで国際法で認められる範囲内で成文化すべきだという。「国内、国際双方で議論が必要だ。敵対勢力がこの技術を実施したらどうなるか」と懸念を表明し、国際社会での検討を提案している。戦争行為を規定するジュネーブ協定のことのように聞こえるが、詳しくは述べていない。
  2. スティーブン・ホーキング、イーロン・マスク他1000名もの科学者、専門家が昨年7月に書簡を出し、人工知能を応用した兵器の禁止を訴えている。
  3. 「もし軍事大国のひとつがAI兵器開発で先行すれば世界中での軍拡になるのは必至で、技術開発の行き着くところは自律兵器がカラシニコフ銃のように普及することになる」
  4. 近い将来に実現する技術により何が可能になるのか。「一番実現の可能性が高いのがマイクロエレクトロニクスや人工知能を通信機能に組み合わせて大脳皮質に埋め込むこと、3Dプリント技術 additive manufacturingだ」とセルヴァは指摘し、脳信号で直接作動できる装具についても話している。「すでに試作品が完成しており、その作動は驚くべきものだ」とブルッキングス研究所で聴衆に紹介している。
  5. セルヴァからはペンタゴンに専用予算があり、第三相殺戦略構想の技術革新に使っていると紹介。ただし予算規模はあきらかにしなかった。
  6. 会場での質問に対してセルヴァは長距離打撃爆撃機に搭載する「各システムを制御するシステム」に触れている。「これまでで最高に複雑な地対空システムに対抗するもの」とし、開発段階でLRSBで「若干の初期不良があった」と述べたが、もちろん詳細には触れていない。■


2015年9月13日日曜日

★ここまでわかったLRSB、でもまだ大部分は秘匿のまま





USAF's Secret Bomber: What We Do And Don’t Know

Air Force hints at a solid plan to procure a new stealthy bomber, but details remain shrouded in secrecy
Sep 10, 2015Amy Butler | Aviation Week & Space Technology
総額800億ドルともいわれる新型爆撃機の選定結果発表が近づく中で知らされていることが知らされていないことより少ないのはやむを得ないのだろうか。
  1. 長距離打撃爆撃機(LRSB)と呼ばれる同機に要求される航続距離、ペイロード、最高速度については知らされていない。また同機が軍の他装備とネットワークでどこまで結ばれるのかも知らされていない。エンジンの数も知らされていない。また重量30,000-lb.の大型貫通爆弾を運用できるのかも知らされていない。なお、B-2はこの運用が可能だ。こういった点が設計を決定してくる。つまり同機がどんな外観になるのか誰もわからないままで、わかっているのはステルス性の機体となり、B-2に似た三角翼になるのか、もっと変わった形になるのかもしれないという点だけだ。
  2. わかっているのは新型ステルス技術が応用され、F-35を超えたステルス性能、残存性、生産のしやすさ、保守点検の容易さが実現することだ。また最新鋭の推進力、防御能力、通信技術に加え製造技術でも全米から最良の部分が集められることだ。
  3. 空軍によるブリーフィング(9月1日)では内容が慎重に統制されていたため、結局のところ同機の調達手順でわかったことはごくわずかだ。というよりも空軍が開示したい情報だけだ。関係者からは迅速戦力実現室(RCO)が関与し、通常の調達部門ではないとの説明は出ていた。ただし空軍によるブリーフィングではRCOの活用は従来型の調達部門を低く見ていることではないとの説明があった。鍵となる技術(その内容はまだ公開されていない)の選定、開発、統合のなため必要なのだという。
  4. RCOは2ワシントンの防空体制を向上させることを目的に003年に発足した。RCOでは指揮命令系統も従来と異なり、室長は参謀総長、空軍長官、調達部門長含む委員会の直属となる。ただし委員会を束ねるのは調達トップのケンドール副長官だ。つまり長官官房(OSD)が同機事業に異例の影響力を与えていることになる。
  5. RCOは極秘技術の理解度が高く、迅速に技術を実用化する経験も豊富だ。業務内容は多くが秘匿内容だが、LRSBの統括部門として最適だとブリーフィングで空軍関係者も述べている。業績にはX-37宇宙機がある。同機は極秘ペイロードを宇宙空間にすでに運搬するミッションを実施している。
  6. ただしRCOの指名はひとつ妥協のだったのかもしれない。2010年に次世代爆撃機事業が取り止めになり、ロバート・ゲイツ国防長官(当時)が2011年に秘密メモを配信して始まったのがLRSB事業だ。ゲイツ長官は空軍がKC-135、HH-60Gでともに後継機種選定につまづいているのを不満に思い、イラク・アフガニスタンで情報収集機材の配備が遅れていることにも苛立っていた。新型爆撃機を成功させるためにもこんな結果しか出せない従来の仕組みに頼るのはいやだとRCOが生まれた。OSDが後ろから支えてLRSBのフライアウェイ価格を2010年ドル価格で550百万ドルと設定したのは前例のない話だ。
  7. 空軍はノースロップ・グラマン、ボーイング=ロッキード・マーティンの双方に資金を提供してリスク低減策として推進手段の統合、アンテナ設計を始めさせた。ステルス機では通信アンテナを機外に装着できない。両チームとも初期設計審査段階を終えたか、実施中と見られ、これまで考えられていたより先行している。空軍からは具体的な発表がないが、言わんとするメッセージは明白だ。空軍は新型爆撃機調達の過程は順調で、B-2やF-35の轍は踏まないと言おうとしてる。国防支出で不信感を抱く議会に爆撃機案件を売り込もうというわけだ。
  8. ここまではぼんやりとわかってきたが、LRSBの大きな謎はその機体形状だ。ペンタゴンは一貫して同機を秘密扱いとしてきたが、同じペンタゴン内部に、安上がりな機体でいいのではとの声がある。次世代爆撃機では対照的に高価で高い水準を希求していたが、敵防空網を突破すれば独立して動く発想で、機体は非常に複雑かつリスクが高くなった。LRSBの最終選定発表を控えたペンタゴンは現実に合わせていく必要がある。
  9. 高度に防衛体制が整った目標の攻撃を世界上いかなる場所でも行うためにLRSBは必要だと関係者は言う。ステルス巡航ミサイルでも目標を狙えるが、て防空網施設や地下深くに構築された指揮命令所や核関連施設の破壊は頭の痛い課題だ。これらの攻撃には高度に精密な貫徹兵器が必要だが、打ちっぱなしミサイルでは難しい。また1980年代の技術製品であるB-2も20機弱しかなく、敵の防空体制が比較にならないほど強力になった今では見劣りがする。
  10. 9月1日のブリーフィングで調達業務の一端が垣間見られたが空軍が言うように健全な管理だといえる。最終選考後には経費プラス報奨金方式の契約とし、政府が一部リスクを負担するものの報奨金により契約企業が具体的な成果を上げないのに利益をむさぼることを防ぐ。空軍は初期の5ロットは固定価格制で19機から21機を調達する。うち4ロットは固定価格で打第5ロットは上限価格以内とする。その後第六ロット以降を再交渉する。この方式だと選定に残った企業にはコストダウンのプレッシャーが大きくなる。超過分は自社負担となるためだ。
  11. ただし選考の重点項目は何なのか発表はされていない。
  12. 開発段階ではテスト機材(機数未公表)を通例どおり導入する。通常兵器運用から開始するのは核兵器運用には配線、機体強度が必要となるためだ。ただし空軍としては核兵器の初期作戦能力獲得を遅らせるわけにも行かず、2020年代中ごろを目標に時間をかけて核運用の認証を目指す。このため規模は不明だがLRSBの一部が第一線からはずされ核運用テストにまわされる。
  13. 戦略軍団司令官セシル・ヘイニー海軍大将Adm. Cecil Haneyは核運用型は2030年までにほしいとする。「LRSBには期待している。特に核運用ではLRSBを念頭に置いた運用コンセプトを作成中だ」と語っている。
  14. 選定結果次第で米航空宇宙産業に大きな地殻変動が発生すると見るアナリストが多い中、ノースロップが敗れた場合は企業存続のため大幅なリストラ策で分社にいたるのではないかと見る向きもある。
  15. もっと可能性があるのが、敗退してもペンタゴンの大手受注企業として残ることで、まだ大口案件は残っているからだ。たとえばT-38高速ジェット練習機の後継機調達や新型偵察機の案件がある。「一時的に影響はあるでしょうが、もともと愛国的な企業が多いので敗退した側にも企業経営上は打撃は最小にとどまるでしょう」と見るのはレベッカ・グラント(爆撃機事業を支持するIRIS独立研究所の社長)だ。
  16. ロッキード・マーティンもボーイングも単独で爆撃機事業に手を上げることもできたはずだが、二社が手を結んだのはこれまでのライバルを超えて何とかしてノースロップに勝とうという意向が働いたためだろう。
  17. カリフォーニアで成立した立法措置により新型爆撃機の大部分は同州内で製造されることになる。ノースロップ・グラマンは早速政界に働きかけどちらが受注しても同じ内容の税制優遇策を得られるよう手を回している。同州法案が成立し、パームデールで生産するロッキードが有利になるよう420百万ドルを同州が拠出する内容とわかってノースロップは驚かされた。これだけの規模の優遇策があれば結果は明白だからだ。だが土壇場になってどちらが受注しても同じ条件になることとなり、ノースロップも自社パームデール施設がロッキードから滑走路を挟んだ位置にあるので安心できるようになった。
  18. 落とし穴がないわけではない。空軍は最近やっと同機を10年間運用した場合の費用規模を知ったようだ。議会にはこれまで331億ドルとこの二年間いい続けていた。だがこの積算は二重に間違っていたという。最新の見積もりは584億ドルとしてから417億ドルといい始めた。「まことに遺憾ながら人的ミスで誤った見積もりを発表してしまった。内部で数字を誤ったことと手順面でもミスがあった」とジェイムズ長官が8月24日の記者会見で述べている。「事業管理では外部からのチェックとバランスをはかり、金額を点検しているが、この種類の事業ではよくあること」
  19. この誤りで新型爆撃機に対する疑問が一気に増えている。「『チェックとバランス』で86億ドルも増えるとは。この違いは単なる誤差なのか、あるいは実際の性能に影響が出るのか。そもそも空軍はコスト上昇に備えてりいるのか。開発を始めるためには予算全額を確保する必要があり86億ドルは決して小額ではない。ただし空軍からはこうした疑問への回答はまだない。
  20. ゲイツ長官が決めた単価550百万ドルの生産型での上限は前例がなく、逆に言えば空軍が自信をもっていることのあらわれだ。目標の実現に失敗するぞ、と見る向きもあるが、前出グラントは「正しく管理すれば、それ以下でも実現可能」と見ている。「下手をすれば単価は三倍になるが、それ以下でも実施可能でしょう」
  21. これから10年間の米国核戦力整備で同機が最大規模の事業になりそうだ。核兵器の運用には米政府支出の55%が費やされており、その規模は2,980億ドルにのぼる。これはエネルギー省の予算も含み、核体系の維持管理と改修費用も含む、と会計検査院がまとめている。250億ドルがB-52とB-2の性能改修に、350億ドルがオハイオ級潜水艦の後継艦建造に回る。それでもLRSBはこれをはるかにうわまわる420億ドルが10年間に投じられる。
  22. ペンタゴンは爆撃機が必須と考える。議会で反対票を投じそうな動きがあり、ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)(上院軍事委員会委員長)とジャック・リード議員(民、ロード・アイランド)は空軍から出た費用試算の誤りの説明を求めている。そのほかにも異議を唱える向きがあるが、空軍は反論を準備した。RAND研究所が開戦後20日すると「敵陣突破するステルス爆撃機のコストは消耗品のミサイルより安くなり」これが以後30日間続くとの分析結果を出している。
  23. 現時点の爆撃機の機材構成は1950年代設計のB-52が76機、70年代のB-1が66機、80年代のB-2が20機ある。
  24. このうちB-2が防空体制で守りを固める各国へ圧力をかける切り札で、想定はイラン、北朝鮮、ロシア、中国だ。だが機数が足りないと爆撃機推進派が主張する。「B-2は高性能だが、戦闘計画の想定に対して不足している」とグラントは言う。「B-2の規模ではアジア、ヨーロッパ他での緊急事態へは抑止力効果が足りない」とグラントは述べ、新型爆撃機の必要を主張する。さらに設計案の絞込みが遅れていることを憂慮する。「新型爆撃機の生産を数年前からはじめているべきだったのです。遅れるだけリスクがましています」 会計検査院は2015年から20年までにB-52は敵防空網の突破能力を失い、スタンドオフ巡航ミサイルの発射しかできなくなると評価している。
  25. 空軍が選考結果を発表すれば、敗退した側が異議を唱え、数ヶ月にわたる選考手順が審査されることになり、新型機の設計工程が待たされる可能瀬が大いにある。■

2015年4月10日金曜日

☆ 米空軍の主力機が大型機に統一される日が来る?



第六世代戦闘機の開発に乗り出そうというところで、冷水をかけるような報告書ですが、大きなインパクトが出そうです。戦闘機命のヒエラルキーに支配された空軍の成り立ちが変わってしまうかもしれませんが、やはり価値観の違いを理由に黙殺されてしまうのでしょうか。なお報告書の著者は米空軍出身(ただし戦闘機パイロットではない)でRAND研究所でも仕事をしていた人とのことです。


Should Future Fighter Be Like A Bomber? Groundbreaking CSBA Study

By COLIN CLARK on April 08, 2015 at 3:46 PM

WASHINGTON: 米空軍の次世代主力機は小型戦闘機ではなくステルス長距離爆撃機に近い機体になるかもしれない。
  1. これは予算戦略評価センター Center for Budgetary and Strategic Assessmentsがこのたび発表する報告書 TRENDS IN AIR-TO-AIR COMBAT: IMPLICATIONS FOR FUTURE AIR SUPERIORITYの結論部分であり、このたびBreaking Defenseは同センターとは無関係の筋から写しを入手した。
  2. 報告書の主な所見は以下のとおり。「包括的結論として電子センサー、通信、誘導兵器で相当な技術進歩が過去数十年で発生しているので航空戦闘の形態がすでに根本的に変化している可能性があることへ注意喚起する」
  3. 上記結語は報告作成者ジョン・スティリオン John Stillion が世界各地で1965年以降の「1,450件以上の勝利実績」を集めたデータベースを精査して得たものだ。
  4. スティリオンの研究では敵機を探知、待ちぶせ、攻撃し、かつ防空体制をスピードと操縦性で出し抜く航空機の製造は、航続距離、速度、性能それぞれ物理的な限界に近づいているという。
  5. 「電子センサーに加え、物理的な痕跡の削減、RF(電波)・IR(赤外線)対抗装置の重要度が高くなっていること、絶対有利なSA(状況認識)を可能とするLOS(見通し線)内のネットワーク構築も同様に重要になる中で、高速飛行性能や操縦性の戦術価値が減っていくと大型戦闘航空機の生存性が高くなり、場合によっては従来の戦闘機よりも優れた特性を示す可能性がある」とまとめている。
  6. 言い換えれば、ミサイルに対して優越性を発揮できる戦闘機は少なく、ステルスや電子戦の助けがあってもこれは覆させられないということだ。
  7. 一方で1965年以降の航空戦闘データベースからは長距離ミサイルの台頭の一方、ドッグファイトが急速に減っていることがわかる。1991年の湾岸戦争で米軍が撃墜した33機で操縦性がかぎになったのは4件のみだ。その25年後に長距離探知センサーとミサイルの性能は向上の一途で、これまで重要視されてきた飛行速度、推力重量比、旋回半径は今や重要性を失っており、将来はさらに失うだろう。
  8. そこで報告書の結論では速度があっても将来の機体を救えない。なぜなら高速になればエンジン排熱も大きくなり、前縁部など機体表面が発する余熱も大きくなる。すると将来は赤外線探知追跡装置(IRST)への依存が高まるだろう。なぜならデジタル式無線周波数メモリーDigital Radio Frequency Memory (DRFM) を使うジャマーにより捜索レーダーが妨害されると敵は熱源をIRSTセンサーで捜索し、高速で飛行する機体ほど探知が容易になる。
  9. この考察は第六世代機といわれる次世代戦闘機開発を目指すペンタゴンにどんな意味があるのだろうか。
  10. スティリオンによればペンタゴンには従来の戦闘機の概念から「過激なまでの」脱却が必要で、センサー性能をさらに引き上げ、物理的な痕跡を制御し、ネットワーク化で優秀なSAを実現しつつ、超長距離兵器で敵に発見される前に交戦する機体を模索すべきだという。
  11. 「2035年以降に制空権を確保するためには広範かつ客観的にしかも想像力豊かに考える必要がある。現在の機体を発展させるよりも常識にとらわれない形状の機体をめざすことになるかもしれないし、ならないかもしれない。大事なのは評価を客観的に行うこと」と報告書作成者は記者に電子メールで伝えてきた。
  12. ペンタゴンは国防優勢確保構想Defense Dominance Initiative および関連した航空機性能革新構想Air Innovation Initiative(DARPAが主導)により次期主力戦闘機F-X及び搭載エンジンの開発を行う。スティリオンの研究内容はDARPAおよびフランク・ケンドール(ペンタゴンで調達部門を統括)が目を通すはずでどんな実験が必要か検討するはずだ。
  13. 報告書を読んだ業界筋は「スティリオンは良い指摘をしている。戦略の見直しが必要だ。第六世代機ではスーパーF-22を作ってどうするのか。F-22よりわずかに性能が向上してもコストは莫大だろう。太平洋での作戦範囲を考えると航続距離は短い。であれば逆に大型機に焦点を合わせたほうがいいのではないか」
  14. 大型機なら大きな開口部(レーダー、赤外線)で遠距離から敵を探知できるし、大型ミサイルを搭載して敵を事前に攻撃できる。
  15. 「一番説得力があると思ったのは」と業界筋は話した。「将来の米空軍の攻撃力となる大型機、長距離機、大ペイロードでステルスの機体一種類を開発すべきという点だね。機体を共通化すればミッションに応じてペイロードを変更できる」
  16. この業界筋は機体を一種類にすれば攻撃型、空対空ミサイル運用型、核運用型、制空権確保用に指向性エネルギー兵器を搭載した型、早期警戒用機材、地上監視ミッション用機材と必要に応じて準備できる。
  17. これをつきつめると将来の米空軍は400機を「中核機材」として兵力投射用に整備すれば十分、と上記業界筋は言う。
  18. 「新型機の一部は無人機にし滞空性能を更に伸ばす。この機体を「戦機」 “Battleplane”と呼んでもいいかもしれない。これはジュリオ・ドゥーエが1920年代に夢見ていた機体だ。 大陸間横断飛行ができる飛行距離があれば地球上どこでも攻撃可能となり、同時に制空権も確保できる。敵に近い基地防衛のため何百機もの短距離戦闘機を配備する必要はなくなる。大型機は遠隔基地から運用し、機種統一で兵站面、開発・調達、人員配置の各要素でどれだけの節減になるだろうか」と同上業界筋は見る。
  19. 賢明な方なら長距離打撃爆撃機 (LRSB)事業の選定業者がこの報告書が想定する新型機製造に一番近い位置にあることに気づくはずである。長距離性能と大きな兵装運用能力が鍵だ。ただこれで確定ではなく、多分、という意味だが。
  20. ではペンタゴンがこれまで75年の道のりを大胆に捨てて新しい方向に行く可能性がどれだけあるだろうか。
  21. 「歴史を見れば、可能性はない」と同上業界筋は言う。「空軍上層部は基本的に戦闘機パイロット出身者で『爆撃機』を制空権確立ミッションに使うと言ったらどんな反応を示すでしょうか」
  22. 構想の実現にはペンタゴン上層部および空軍内部の価値観を変える必要がある。ただし予算が枯渇し、ロシアや中国が台頭し強引さを強めれば、将来構想を真剣に考える条件が整う。
  23. この報告書は今後長きに渡り引用元になり、貴重な成果が含まれており、当時のペンタゴンに変革に踏み出す勇気があったのか思い返す材料になろう。航空戦闘の意味を理解したいのであれば本報告書は必読だ。


2015年4月3日金曜日

★大変悩ましい次期長距離爆撃機開発企業の選定(米空軍)



一方が採択されれば他方は業界に生き残れないとは厳しい状況です。極秘予算の話も後半に出てきますがなんとか高度技術を散逸させない配慮が求められます。日本の産業政策をあれだけ批判していた米国が自ら防衛産業の基盤維持を図る政策を展開せざるを得ないとはなんとも皮肉な話です。LRS-Bという呼び方がLRSBに変わっていることに注目です。2020年というのはもうすぐですが、予算上は大変な時期になりそうです。

Tough Choices For DoD On Long Range Strike Bomber

By COLIN CLARKon April 02, 2015 at 4:30 AM

An artist's concept for a stealthy future Long-Range Strike Bomber.ノースロップ・グラマンのLRSB概念図
WASHINGTON:  でペンタゴンはあと数ヶ月で長距離打撃爆撃機(LRSB)の契約企業を選定するが、興味深い結果になるだろう。ボーイング=ロッキード・マーティンが選定されるとロッキードが高性能ステルス機の設計をほぼ独占することになる。逆の場合だとノースロップ・グラマンがステルス爆撃機を独占する。
  1. 結果は米国の産業基盤にも重大な影響を与えるが、問題が山積していた空中給油機選定の比ではない。
  2. 「この十年間で新型戦闘航空機の開発契約は皆無だったが、これからの十年も同様だろう」とリチャード・アボウラフィア( Teal Group の航空宇宙分野主任アナリスト)がフォーブス誌で解説している。「言い換えればLRS-Bに絡むは大手三社のうち、次の戦闘航空機開発に生き残れるのは二社だけだ。ロッキード・マーティンはF-35のおかげで心配の必要はない。残る二社は今回受注できなければ業界に残れなくなる。つまり2030年ごろに就役予定の次世代戦闘機開発の競合に参入できない。」
lockheed boeing long range strike bomberロッキード=ボーイングのLRSB概念図
  1. ボーイング主導のチームの主張はボーイングがこれまで大型機多数を予定通りに生産しており納得の行く価格で実現した実績を基にしている。ただしKC-46では困難に直面しているが。
  2. 「ボーイングは大量の大型機生産でずばぬけた実績を持っています」とアボウラフィアは記者に語った。「ただし同社もつまづくことがあります」とウェッジテイルの例とやや規模は小さいがKC-46の例を示唆した。両機種とも民間商用機を軍用に改装して、軍用機を完全新設計した場合に発生する諸問題を回避するはずだった。
  3. もしボーイングチームが敗退すれば、米国は「重要な生産能力を失い」、雇用も喪失する。「反対にロッキード・マーティン=ボーイング案が採用となれば、ノースロップ・グラマンが軍用機から撤退しそれもつらい結果になる」
  4. ペンタゴン調達部門のトップ、フランク・ケンドールからは産業基盤の配慮は選定で大きな要素にならないと発言があった。採用企業はあくまでも提案内容により選定規程に従って決まるという。ケンドール副長官が設計チームの選定を今後も守るべき大切な存在と表現していることから意味深長ながらもあきらかに意図を伝えようとしている。
  5. 空軍は機体単価550百万ドルで100機調達にこだわっているが、これとは別に研究開発段階で200億ドルが必要であり、これを見るとボーイングに有利に働く。というのは機体生産では技術の革新性よりも現場の生産活動が重要に働くからだ。
  6. またボーイング、ロッキード組には議会からの支援も期待できる。というのは両社とも規模が大きな企業で倒産させるわけにいかないからだ。しかし両社は予算縮小の影響を受けやすい。2020年に予算不足が発生したらロッキードはF-35を諦めてLRSBに集中できるだろうか。ボーイングがKC-46で譲歩するだろうか。ともに実現の可能性は薄く、新型爆撃機だけに専念できるのはノースロップ・グラマンである。
  7. ノースロップのステルス機設計技術を維持してロッキードだけに独占させないためにもアボウラフィアは「設計能力を温存させてきた秘密予算の世界が存在してきた」と指摘する。ノースロップが契約受注に失敗すれば同社が爆撃機を組み立てることはないが、ペンタゴンとしては同社の高度技能を有し情報に通じた従業員を高度の秘匿事業に関与させたいと願うだろう。こういった事業は予算書には姿を見せない。
  8. アボウラフィアもB-2の製造、保守管理を通じて得た同社の技術水準が重要と考える。
Over the Pacific太平洋上空を飛行するB-2
  1. それでもアボウラフィアでさえどちらが受注するのか直感でもデータでも答えられないという。
  2. ボーイングが受注の場合はロッキードが重要な設計工程を受持つが知的財産をボーイングと共有することは皆無と言ってよい。ボーイング=ロッキードチームには航空機生産で信用実績があり、ロビースト多数を送り、豊富な資金で議会に影響を与え、予算危機が今後発生しても事業の温存を図るだろう。
  3. もしノースロップが受注すれば、米国にはステルス機設計能力を有する企業が二社となる。
  4. 宇宙分野は技術や産業基盤の議論とずれるが、高性能技術の要求で共通要素がある。ボーイングが自社では十分な技術的知見を有しない高性能情報集衛星の受注に成功したが、結果として事業費の超過日程も大幅に狂う損失が数年にわたりつづき、事業が終了された事例(将来画像アーキテクチャ事業)がある。選定委員会が正しい判断を下すことを祈ろう。■


2015年2月1日日曜日

スーパーボウルで次世代爆撃機CMを流すノースロップの狙い





Northrop Ad To Run During Super Bowl: Hints At Next-Gen Bomber

By COLIN CLARKon January 31, 2015 at 2:59 PM
 21世紀有数の大型案件となる長距離打撃爆撃機をめぐりノースロップ・グラマンは、ボーイング/ロッキード・マーティン合同チームと競っている。同社は第六世代戦闘機の設計チームを社内に立ち上げ、空軍、海軍に売り込もうとしている。(CMは次のリンクで見られます)
WikimediaNorthrop XB-35あ
ペンタゴンが2月2日(月)に提出する予算案では次期爆撃機事業が大きな目玉となる見込みだ。ノースロップ・グラマンは全米最高の視聴率となるスーパーボウルで新作コマーシャルを放映する。最後に登場する機体は布をかけられているが、明らかにLRSBあるいは次世代戦闘機のいずれか、あるいは両方のヒントだろう。
CMでは同社の無尾翼の全翼機旧作YB-35がまず登場する。、次にB-2があらわれ、その後、空母無人発着艦をやってのけたX-47Bが紹介される。
140817-N-CE233ATLANTIC OCEAN (August 17, 2014) – The Navy’s unmanned X-47B conducts flight operations aboard the aircraft carrier USS Theodore Roosevelt (CVN 71). The aircraft completed a series of tests demonstrating its ability to operate safely anNorthrop X-47 carrier landing
LRSBは厳しく秘密が守られなかなか実態がわからないが、任意で有人操縦可能となるといわれ、高度のステルス性を実現し、高性能センサーを搭載し、無人機を発進、操作可能となるという。
ノースロップは素晴らしい性能を誇り素晴らしく高価な現行のB-2を生産している。B-2は全21機が生産された。
では新規事業の規模はどれくらいか。国防予算の専門家トッド・ハリソンTodd Harrisonによると調査開発費用だけで250億ドルがかかるという。空軍は計100機調達する意向だが、2010年度のドル換算で単価は5.5億ドルになる。ハリソンはインフレを考慮した現時点の価値で6億ドルになると指摘。
ハリソンはF-35がフル生産に達する2020年頃にLRSB事業も相当の規模になると見ており、同時に次世代ミサイル原潜もテンポを早め、KC-46給油機もフル生産に入る他、次世代空軍練習機T-Xも相当数の調達に入っているはずだと見る。
そうなると空軍内部で予算の争奪となる他、他軍とも予算をめぐる緊張が高まるだろう。民間防衛産業各社も当然競争は激化する。ノースロップは先手をうち、納税者に同社の姿勢を見せることで全体が縮小傾向の国防予算で大きなパイを獲得することを正当化しようとしているのであろう。
スーパーボウルで国防産業がCMを放映した前例があるのか不明だが、ノースロップの大胆な一手は同社にとって次期爆撃機や次世代戦闘機案件の落札がどれだけ死活的かを示すものだろう。なお、B-2パイロットがLRSBをどう見ているかは下の記事を参照されたい。