ラベル ドローン対策 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ドローン対策 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年9月30日火曜日

AI はドローンの脅威を悪夢に変えるが、同時に有効な防衛を実現する可能性もある(Breaking Defense)―ロッキード・マーティン提供の記事です

 

ドローン対策は手ごわい課題だが次世代の防衛力はAI で強化されそうだ

Lockheed Martin CUAS

画像提供:ロッキード・マーティン

事基地の治安部隊チームの一員として、潜在的な航空脅威を監視しているところを想像してほしい。レーダー画面には、民間航空機、鳥の群れ、民間および商業用ドローンなど、さまざまな物体が映し出されている。小型航空機のようなものが、フェンスラインに向かい進路を変えている。

これは脅威だろうか?コースを外れた配送用ドローンか?夕日を撮影している愛好家のドローン操縦者か?それとも、AI で訓練された陽動作戦で、真の脅威は別の方向から接近しているのか?

ドローンは、軍や国土安全保障部隊にとって手強い課題となっている。AI 誘導ドローンは、その動きを隠す高度な戦術や、防衛体制を圧倒する大群による攻撃を調整するなど、悪夢の存在となる可能性がある。

良いニュースは?AI は、卓越したドローン防衛力を強化するのに特に適している。その理由は次のとおり。

学習アルゴリズムはドローンの検知・追跡に極めて優れている:雑音や障害物が多いレーダー環境では、ドローンがセンサーの隙間をすり抜ける可能性がある。しかしAIは特定の環境下でノイズから信号を分離するよう訓練できる。

例えば軍事基地周辺のAIシステムは、地域の地形・構造物・気象パターンまで学習し、ドローンの異常を驚異的な精度で識別・追跡する専門家となる。

AIは人間よりはるかに速く防御兵器とドローン標的をマッチングできる:ドローンを検知後、対UASシステムは意図を最適に判断し、対策計画を立案する必要がある。しかしこれは多くの複雑な要因に依存する。ドローンは爆発物を搭載しているか?サイバー攻撃や電子攻撃に脆弱か?レーザーで安全に撃墜可能か?

指揮センターのオペレーターが、数十のサッカー場ほどの距離からこれらの判断を下すには貴重な時間がかかる。しかしAIアルゴリズムは、様々なドローン脅威を瞬時に認識・評価し、その弱点と能力を分析して安全と主権を維持する最適な手段を迅速に見つけ提案するよう訓練可能だ。また、政策や交戦規則に基づいて訓練され、規制に最も適合する対応策を判断し、複雑なデータ環境下でオペレーターを支援できる。

ドローンの大群を撃退するには、AIが唯一の手段となるかもしれない。大規模な群れが襲来した場合、人間のオペレーターはすぐに圧倒されてしまう。堅牢な安全プロトコルによって管理された、よく訓練された AI システムが防衛を引き継ぎ、強力な攻撃をかわすためにドローンの優先順位を迅速に決定し、対処することができる。このような防衛には、攻撃と防御の戦術を多層的に組み合わせる必要があり、AI を搭載したシステムだけが実現できる。

画像提供:ロッキード・マーティン社

インテリジェントな対 UAS ネットワークの構築

ロッキード・マーティンの対 UAS システム「Sanctum™」は、世界中で実施されている合同演習において、AI を駆使したその能力の高さを実証しています。精密な追跡と標的の特定から、ドローンの脅威を実際に排除するまで、Sanctum は、スマートで多層的な防衛の威力を実証しています。

Sanctum は、多層防御システムと、雑然とした環境の中でドローンを検出し、確実に追跡し、その脅威のレベルを識別するように訓練された中核的な AI ミッション管理システムを組み合わせて、各配備に合わせてカスタマイズされています。その後、システムは、ドローンを迅速かつ安全に排除するための理想的な武器と標的の組み合わせを推奨します。

Sanctum の AI は学習アルゴリズムです。Sanctum が 1 つの場所で認識した情報は、あらゆる場所のシステムにトレーニングとして反映されます。Sanctum が新たな脅威を追跡したり、異なる UAS の挙動を認識したりすると、その更新情報がネットワーク全体で共有されます。これにより、各ノードの知能が向上し、Sanctum を装備した防御システムが脅威に先んじることを可能にするのです。

このソフトウェアは、紅海などでドローンや巡航ミサイルの脅威に対抗しているイージス戦闘システムと同じ、ロッキード・マーティンが設計した防空・ミサイル防衛技術を基盤としています。センサーやセンサーフュージョンから、自動化された武器と標的の組み合わせ、精密な迎撃に至るまで、これらの技術はベータテストだけでなく、実戦でもその性能が実証されています。

当社は、この AI ミッション管理ブレインを、民間および防衛技術業界全体から集めた最高性能のセンサーおよびエフェクターと組み合わせています。Sanctum のオープンアーキテクチャは、ベンダーロックインがなく、ロッキード・マーティンの技術を使用する必要がないことを意味します。各防御ネットワークは、ソフトウェアからセンサー、射撃装置に至るまで、ミッションのニーズに合わせて構築されています。また、新しいイノベーションが登場すると、Sanctum は新しい技術を容易に統合することができます。

その結果、それぞれのユニークな場所を守るためにカスタム設計され、入念に訓練されたシステムが実現します。これにより、基地や周辺地域の安全を危険にさらすことなく、ドローンを発見し、その動きを阻止する可能性が高まり、より効果的なセキュリティが提供されます。

Sanctum は、急速に進化するドローンの脅威に対して、オペレーターに決定的な優位性をもたらします。■

AI will make drone threats a nightmare – it could also save us

Drones present a formidable challenge for security forces. AI is uniquely suited to powering next-gen defenses.

By Paul Lemmo - Lockheed Martin on September 29, 2025 2:19 pm

https://breakingdefense.com/2025/09/ai-will-make-drone-threats-a-nightmare-it-could-also-save-us/


presented by

ポール・レモは、ロッキード・マーティンの統合戦争システムおよびセンサー部門の副社長兼ゼネラルマネージャー。




デンマークを悩ます謎のドローンへの対応でフリゲート艦、レーダー、部隊が急行(TWZ)―欧米がドローン対策に大わらわの中、日本もうかうかしていられません。脅威や技術の進歩に迅速に対応する必要があります

 

デンマークを悩ます謎のドローンへの対応でフリゲート艦、レーダー、部隊が急行(TWZ)―欧米がドローン対策に大わらわの中、日本もうかうかしていられません

EUサミットが開かれるデンマークの首都に軍事資産が展開中だ。北欧地域でドローン侵入が続いている。

The German air defense frigate Hamburg is among several assets deployed to protect Copenhagen during a wave of mystery drones over Europe.

(写真提供:EUNAVFOR MED IRINI OPERATION/Anadolu Agency via Getty Images)

ルト海地域とスカンジナビアでドローン目撃情報が相次ぐ中、欧州諸国はコペンハーゲンの警備を強化している。対ドローンシステム、高度なレーダー、ドイツのフリゲート艦、フランスのヘリコプターおよび部隊の展開は、今週デンマークの首都で開催される欧州連合(EU)会合を保護することを目的としている。

軍事施設や民間空港上空での目撃情報を受け、デンマークは民間ドローンの空域使用を本日より1週間禁止した。先週、ドローンの侵入により空港六ヶ所を閉鎖せざるを得なかった。ノルウェー当局は日曜日に飛行経路変更を発表。空港上空に正体不明のドローンが確認されたためだ。

デンマーク政府はドローンを「ハイブリッド攻撃」の一環と位置付けているが、ロイター通信によれば、当局は責任の所在を明確に断定するまでに至っていない。ただしメッテ・フレデリクセン首相は「欧州の安全保障に対する脅威を主として及ぼす国」としてロシアを名指しし、モスクワの可能性を示唆した。クレムリンは関与を否定している。

これらの侵入の背後に誰がいるかに関わらず、NATOはドローンによる潜在的な脅威を深刻に受け止めている。

スウェーデンのウルフ・クリステルソン首相は月曜朝、Xで「スウェーデン政府は、今週コペンハーゲンで開催されるサミットに関連し、デンマークに対し軍事的な対ドローン能力による支援をスウェーデン軍に命じることを決定した」と述べた。「具体的には、対ドローン能力(いわゆる対UAS)を備えた部隊の派遣を伴う。この部隊はデンマーク軍が指揮を執り、今週開催されるサミットに関連するデンマーク警察の作戦支援に貢献する」と述べた。

さらにクリステルソン首相は「スウェーデンは一定期間、デンマークに対し高性能レーダーシステムを数基貸与する」と付け加えた。「世界最高峰のレーダーシステムの一つだ。世界に誇れるスウェーデン技術である。レーダーシステムは既に昨日送付済みだ」。

本誌がコペンハーゲンに配備される対ドローン・レーダーシステムの詳細を問い合わせたところ、スウェーデン国防省はコメントを控えた。

ドイツは対空フリゲート艦ザクセン級FGS「ハンブルク」をコペンハーゲンに派遣したと、デンマーク国防省が日曜日発表した。

同省は声明で「同艦は、コペンハーゲンで開催予定のEUサミットに関連し、デンマークの空域監視強化に貢献する」と説明。「ドイツフリゲート艦はNATOのバルティック・センティ活動の一環で同盟東部戦線におけるNATOのプレゼンス強化を目的としている」と述べた。

NATOは月曜朝、ハンブルクの寄港はドローン侵入への対応としてバルト海監視活動を強化する同盟全体の取り組みの一環だと説明した。この作戦は今年初めに、破壊工作とみられる海底ケーブル切断事件が相次いだことを受けて開始され、現在拡大中である。

「NATO常設海上グループ1に配属されたフリゲート艦「ハンブルク」(F220)は昨日コペンハーゲンに寄港し、強化されたバルト哨戒活動の継続を支援する」とNATO報道官のアーロ・エイブラハムソン中佐は月曜朝に本誌に語った。「デンマーク近海でバルト哨戒活動を行う『ハンブルク』の存在は、同盟内の結束と確固たる姿勢を示すメッセージとなる」。

エイブラハムソン中佐はさらに「デンマークでの最近のドローン事件を受け、NATOはバルト・センティ作戦下でデンマークを含むバルト海地域において、新たなマルチドメイン資産を用いた警戒活動を強化している」と説明。「該当の資産には複数の情報収集・監視・偵察プラットフォームと防空フリゲートが含まれる。こうした措置は、警戒活動強化の柔軟性と機動性を示しており、[重要水中インフラ] CUIの保護のみに留まらない任務拡大を可能にしている」とし、「同盟国を保護・防衛するため断固たる行動を取るという同盟国の決意を具体的に示す事例でもある」と述べた。

ドイツはハンブルクの展開に加え、デンマークに対し「レーダー・光学・音響技術を活用した探知システムを用いた小型無人航空機システム(C-sUAS)対策能力」も提供しているとAP通信が報じた

フランス国防省は声明で、「デンマーク領空における未確認ドローンの飛行が急増していることに対応し」同国に「要員35名、フェネックヘリコプター1機、および実戦配備型対ドローン装備」を配備したと発表。ドローンは「深刻な脅威」であると付言した。

デンマーク軍はコペンハーゲン空港にXENTA-C対ドローンレーダーシステムを設置した。これらの資産はドローンの検知や場合によっては撃墜も可能だが、さらなる無人航空機が確認された場合、NATO当局が具体的にどう対応するかは不明だ。例えばNATO報道官エイブラハムソンは、ハンブルクがどのような交戦規則の下で活動しているかについてコメントを控えた。

欧州がコペンハーゲン上空の防衛を強化する中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATO空域を守る対ドローン「シールド」の構築を訴えている。

「ウクライナはポーランド及び全てのパートナー国に対し、ロシアの航空脅威に対する共同の完全信頼性のあるシールド構築を提案する」とゼレンスキー大統領は月曜日、ワルシャワ安全保障フォーラムへのビデオリンクによる演説で述べた。「これは実現可能です。ウクライナはあらゆる種類のロシア製ドローンやミサイルに対抗でき、地域で共同行動を取れば十分な兵器と生産能力を確保できます」。

今月初めに十数機のロシア製ドローンがポーランド領空に侵入し、一部が撃墜されたことを受け、ゼレンスキー大統領はウクライナ軍と技術者がポーランド側のドローン対策訓練を支援すると表明した。

NATO当局者はロシアを直接非難することを躊躇しているが、ゼレンスキー大統領は日曜日、モスクワが欧州諸国を標的とするドローンの発射・制御に石油タンカーを利用していると非難した。ウクライナ大統領は情報報告を引用し、モスクワに対するより厳しい制裁を求めた。

NATO空域の防衛に対する懸念の高まりは、前述のポーランドへのドローン侵入後に始まり、3機のロシアMiG-31フォックスハウンド迎撃機によるエストニア領空への侵入でさらに強まった。最近の正体不明ドローン目撃情報は不安を煽っている。

本誌以前からドローン侵入を報じてきた軍事施設重要インフラ上空での侵入が米国で発生していた時期に、多くの人はこれを問題視していなかった。2023年のラングレー空軍基地ライト・パターソン空軍基地ピカティニー兵器廠での事例が、この問題を主流に押し上げた。欧州の軍事基地や重要インフラ上空でのドローン目撃は過去数年にわたり散発的に発生しており、深刻な懸念を招く事例もあった。例えば昨年末には英国内の複数米軍基地での事例を本誌がスクープした。しかしポーランドでのドローン侵入事件を契機に、この問題は急激に深刻化しているようだ。

さらに昨年末にはニュージャージー地域で数千件に及ぶドローン目撃が相次ぎ、広くパニックを引き起こした。とはいえ、こうした事例の大半は誤認で、本格的な調査対象となったのはわずか100件程度だった。欧州での目撃事例のうち、どれほどが誤ってドローンと分類されているかは現時点で不明だが、多くのケースで同様の状況が起きているようだ。連邦政府や軍によるこうした脅威への認識不足が慢性化していることが、混乱に拍車をかけている。

最近、本誌は米北方軍が基地のドローン防衛を支援するため即応部隊(QRF)を創設したことを報じた。当初はコロラド州ピーターソン宇宙軍基地から1チームが展開する。しかしこの構想は、小型ドローン脅威への対応で米国がいかに遅れているかを如実に示している。QRFは最初の侵入から現場到着までに最大24時間を要するからだ。同様の準備不足は欧州の同盟国にも存在する。

現在のドローン波の中で、コペンハーゲンに対ドローン装備を寄せ集めて急遽配備する動きは、この事実の申告ぶりをさらに証明している。■


Frigate, Radars, Troops Rushed To Copenhagen To Defend Against Mystery Drones

Military assets are being sent to the Danish capital to protect European Union officials as drone incursions in the Nordic region continue.

Howard Altman

Published Sep 29, 2025 2:56 PM EDT

https://www.twz.com/air/frigate-radars-troops-rushed-to-copenhagen-to-defend-against-mystery-drones

ハワード・アルトマン

シニアスタッフライター

ハワードは『The War Zone』のシニアスタッフライターであり、『Military Times』の元シニアマネージングエディターである。それ以前は『Tampa Bay Times』のシニアライターとして軍事問題を担当した。ハワードの作品は『Yahoo News』『RealClearDefense』『Air Force Times』など様々な媒体に掲載されている


2025年4月25日金曜日

MQ-1Cグレイ・イーグルがヘルファイアミサイルでドローンを撃墜するテストに成功(The War Zone) ― 安価なドローンを高価なミサイルで毎回撃破するのでは計算があわないので、代替策の模索が続いています

 The MQ-1C Gray Eagle Unmanned Aircraft System (UAS) addresses the need for a long-endurance, armed (up to four HELLFIRE missiles), UAS that offers greater range, altitude, and payload flexibility.  

U.S. Army


MQ-1Cグレイ・イーグルをドローン狩りに使用するのは新たな展開で、同機用に新たなキネティック兵器とレーザー兵器の開発計画がある

MQ-1Cグレイ・イーグル無人航空システム(UAS)が搭載レーダーを使いAGM-114Lロングボウ・ヘルファイアミサイルの実射試験でドローンを撃墜したとジェネラル・アトミクス・エアロノティカル・システムズ(GA-ASI)が本誌に確認した。動的・非動的解決策を組み合わせた多様な対ドローンシステム(C-UAS)の開発が活発化している中、グレイ・イーグルがヘルファイアミサイルでドローンを撃墜した手法は、新たな興味深い進展だ。

 GA-ASIの広報担当者、C・マーク・ブリンクリーは本誌に対し、「グレイ・イーグルからロングボウ・ヘルファイア実弾を発射し、小型UASを撃墜した」と述べた。グレイ・イーグルにヘルファイアミサイルを装備することは、GA-ASIがこのプラットフォームで現在追求しているC-UAS対策の選択肢のひとつ。

ユタ州ダグウェイ試験場で運用されるヘルファイア装備のMQ-1Cグレイイーグル。米国陸軍

「さらに、当社が資金提供した昨年実施したグレイイーグルSTOL(短距離離着陸)からのポッド式ミニガン実射デモは、対UAS作戦で興味深くコスト効果の高い動的オプションを提供します」とブリンクリーは付け加えました。「UASは、7.62mm弾の直撃に耐えられる設計ではなく、ミニガンはこれまで検討されてこなかった武装監視オプションになる可能性があります」。これは、GA-ASIの米陸軍ユマ試験場で実射試験が行われたモハベデモ機搭載のディロン・エアロDAP-6ミニガンポッドを指している。


 モハベデモ機は現在、遠隔地や過酷な環境の粗末な滑走路から運用可能なMQ-1CのグレイイーグルSTOLバージョンへと発展し、多様な遠征型・分散型作戦支援に重点を置いた構成を採用している。ジェネラル・アトミクスはグレイイーグルSTOLの航空母艦や大型甲板両用強襲艦での実験における能力を強調している。

ジェネラル・アトミクスのブリンクリーによれば同社は「グレイ・イーグル STOL用の新たなキネティックオプションを数ヶ月以内に公表する計画で、これによりC-UAS対応のコストをさらに削減しつつ、精度と柔軟性を向上させる」と述べた。これは前述のロングボウ・ヘルファイアを指すかどうかは不明だが、コスト削減の言及は、レーザー誘導ロケットのような低コストオプションの可能性がある。

 敵対的なドローンを撃墜するための動的・非動的手段に加え、GA-ASIは機載センサーを適応させ、敵UASを検知・追跡し、最初に攻撃する能力を付与している。

 「当社は、小型UASの目標捕捉と追跡のために、リンクスとイーグルアイレーダーシステムを使用した数多くの飛行試験を実施しました」とブリンクリーは認めた。

 イーグルアイ合成開口レーダーは、地上目標を50マイル、海上目標を124マイルまで探知・追跡可能だが、空中脅威に対する能力は現時点では不明だ。ただし、イーグルアイ用に開発中の新しいアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)アンテナと関連ソフトウェアにより、その範囲が拡大され、多モード性能が向上する見込みだ。

GA-ASIのグラフィックに示される、MQ-9Bシリーズドローンに搭載されたイーグルアイレーダー。GA-ASI


これらの飛行試験は、GA-ASIの独自レーダーを空対空モードで活用し、特に重要な下方向探知モードを含む探知と機載兵器の照準支援を提供した点で特に重要だ。

 一方でGA-ASIはC-UASミッション向けのドローン搭載ポッド型レーザーの開発も継続している。同社は、現在コンセプト段階にあるポッド式レーザーを、先月コロラド州オーロラで開催された空軍協会(AFA)の2025年戦争シンポジウムで、MQ-9B SkyGuardianドローンに搭載されたグラフィックで披露し、今月メリーランド州ナショナルハーバーで開催されたシー・エア・スペース会議でも再び展示した。GA-ASIは、このポッドを主に撃ちっ放し攻撃ドローンに対する艦隊防衛用に提案しているようだ。

 ブリンクリーは、同社にはこの用途向けに「非常に成熟したレーザー技術」があると述べている。ただし、一般に空中レーザーは当初の想定より実現がはるかに困難であり、技術的な理由から関連プログラム多数が中止されている。

 現時点での注目点は、C-UASミッション向けにグレイ・イーグルドローンに搭載されたロングボウ・ヘルファイアのライブファイア試験でだ。ドローン脅威を無力化する新たな手法の急速な普及傾向を考慮すると、グレイ・イーグルとロッキード・マーティンのAGM-114Lロングボウ・ヘルファイアをこの用途に組み合わせることは、非常に理にかなっている。

 ロングボウ・ヘルファイア(他のヘルファイア変種とは異なり、レーザー誘導ではなくミリ波レーダー誘導を採用)をドローン撃墜に用いた前例は既に存在する。

 AGM-114ヘルファイアは空対地兵器として開発され、主にその用途で用いられてきたが、ロングボウの派生型にはドローンに対する対空防衛役割がある。特にイスラエルは、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプターを対空防衛任務に長年運用しており、シリア国境付近でヒズボラのドローンを撃墜した事例が有名だ。

 昨年10月、米陸軍は中東に展開中のAH-64Dロングボウ・アパッチヘリコプターが敵の空中ドローンを検知・破壊する訓練を行う動画を公開した。同地域では、特に撃ちっ放し攻撃弾薬や「カミカゼドローン」からのドローン脅威が最近急増している。

 陸軍の動画には、ロングボウ・ヘルファイアの変種または改良型が映っており、そのミリ波レーダーシーカーの初期誘導は、アパッチのAN/APG-78ロングボウマスト搭載レーダーシステムから提供されている。同じレーダーは、低空飛行ヘリコプター含む空中目標の探知と追跡が可能で、空中ドローンにも対応している。

AH-64がレッドサンズ演習中に目標ドローンに向けてヘルファイアを発射する様子。CENTCOMのスクリーンショット

 ロングボウ・ヘルファイアは、地上を含む他のプラットフォームから発射された場合でも空中脅威に対処する能力を実証している。米海軍はフリーダム級沿海域戦闘艦(LCS)にAGM-114Lを装備し、ドローンに対抗する緊急プログラムを実施した。LCSは当初、小型ボートの群れから防衛するため、レーダー誘導型ヘルファイアを装備していた。

 米軍はにはAGM-114Lの大量在庫があるが、このミサイルの生産は終了している。ロッキード・マーティンの新開発ミサイルAGM-179A ジョイント・エア・トゥ・グラウンド・ミサイル(JAGM)は、レーザーとミリ波レーダーの二重モード誘導システムを搭載し、ヘルファイアの他の後継として米軍に導入されている。このミサイルは、空対空役割を含むロングボウバージョンを置き換える可能性もある。

 この点で、米空軍がMQ-9リーパー無人機(UAV)にAIM-9Xサイドワインダー赤外線誘導空対空ミサイルを統合し、2017年の演習で初の空対空撃墜に成功した点を想起すべきだ。その後間もなく、同軍は無人機の一部に対し、空中脅威に対抗する能力を付与する計画を発表した。これにより、無人機は重要な自己防衛能力を獲得し、MQ-1C向けの無人機探知・撃墜技術開発と補完的な役割を果たす可能性がある。

AIM-9Xサイドワインダー空対空ミサイルを搭載したMQ-9。米国海軍

 グレイ・イーグル C-UASの実弾射撃実験において、UAS目標がどのように検出・追跡されたかは明確ではないが、GA-ASIが製造する前述のリンクスまたはイーグルアイレーダーシステムが使用された可能性がある。別シナリオではドローン脅威の検出に、レーダーが用いられ、将来的にグレイ・イーグルにレーザー兵器が使用される場合、マルチスペクトル標的システム(MTS)が識別とレーザー照準に活用される可能性がある。

 いずれにせよ、グレイ・イーグルとロングボウ・ヘルファイアのドローン撃墜組み合わせの潜在力は魅力的だ。

 C-UASシステムは主に地上ベースのため、柔軟性と応答性が必然的に制限される。

 一方、グレイ・イーグルのようなドローンは、必要に応じて反ドローン能力を提供するために再配置可能だ。ドローンは前線基地に配備され、地上部隊に非常に近い位置で運用できる。脅威の接近に応じ比較的迅速に発進可能で、特にグレイ・イーグルのSTOLバージョンにこれが当てはまる。グレイ・イーグルSTOLの短距離離着陸能力は、モハベ実証機から移植されたもので、その性能仕様には、情報収集・監視・偵察(ISR)任務時の離陸滑走距離400フィート、または12発のヘルファイアミサイルを搭載した場合の1,000フィートが含まれる。

GA-ASIのモハベ実証機は、2023年8月1日、カリフォルニア州エルミラージュ近郊の未舗装滑走路で離着陸試験を実施した。GA-ASI

 さらに、ヘルファイアミサイルを搭載したグレイイーグル無人機(またはこれらと他の武器の組み合わせ)は、多くの伝統的なC-UASシステムと異なり、単一任務プラットフォームではない。ドローン迎撃に加え、グレイ・イーグルは地上部隊の武装護衛を提供し、センサーによる監視を行う。滞空持続時間は特に重要で、24時間以上任務に就くことが可能だ。この持続性は、C-UASシナリオでの監視や、特定の区域を通過するドローンのスクリーニングに理想的で、戦闘航空哨戒(CAP)役割を果たすことができる。

 戦闘機はドローン迎撃任務を成功裏に遂行できるが、コストが高く、給油支援なしでは短時間しか任務に就くことができない。他方でグレイ・イーグルが対応できないシナリオでも、戦闘機はドローンを撃墜可能だ。ただし、低密度脅威や特定目標領域上空での点防御任務においては、MQ-1Cが極めて価値ある選択肢となる。

 ロングボウ・ヘルファイアは、低性能ドローンに対処するハイエンドなソリューションとして依然として存在している。過去にも議論したように、基本型のAGM-114の単価は約215,000ドルで、レーダー誘導型のロングボウモデルはさらに高額だ。それでも、これは一般的な空対空ミサイルよりもはるかに安価で、例えば、主力ミサイルAIM-120 Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile(AMRAAM)の単価は1発あたり約100万ドルだ。

 これらの要因が、グレイ・イーグル向けのさらに安価なキネティックC-UASオプションへの関心が高まっている要因と考えられる。

 例えば、レーザー誘導式ロケットのAdvanced Precision Kill Weapon System II(APKWS II)は、ヘルファイアよりさらに安価で、1発あたり約25,000~30,000ドルだ。APKWS IIのようなロケットベースの武器は、グレイ・イーグルに効果器の弾薬庫を大幅に拡大する可能性を提供するが、レーザー誘導の特性上、一度に1機のドローンしか攻撃できない。さらにMQ-1CがAPKWS IIを運用する位置に到達することは、特に複数の目標に対して迅速に対応する場合、戦闘機よりも困難だ。F-16は紅海上でドローンに対してAPKWS IIを効果的に運用している。赤外線シーカーを活用して擬似的な発射後追尾能力を備えた新しいAPKWS IIモデルが開発中で、これにより、交戦が簡素化され、実行にかかる時間が短縮される。

 コストと効果器の搭載量の問題を克服する上で、さらに重要なのはレーザー兵器で、例えば、ジェネラル・アトミクスが現在開発中のポッド型設計のようなレーザー兵器が、この困難な技術をマスターできれば、大きな役割を果たす可能性がある。

 GA-ASIのグレイ・イーグル/ロングボウ・ヘルファイア C-UAS試験にはまだ多くの疑問が残るが、同ドローンがUAS脅威に対する有効な対抗手段として、特に低高度領域でますます認識されていることを示している。■


MQ-1C Gray Eagle Is Shooting Down Drones With Hellfire Missiles In Tests

Using the MQ-1C as a drone-hunter is a new development, and there are plans for new kinetic and laser weapons for the Gray Eagle.

Thomas Newdick

Published Apr 18, 2025 6:04 PM EDT


https://www.twz.com/air/mq-1c-gray-eagle-is-shooting-down-drones-with-hellfire-missiles-in-tests