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2021年8月9日月曜日

新興企業ハーミウスに大胆な資金投入で極超音速機の新技術実現をねらう米空軍の姿勢に注目。大人のお金の使い方だろう。

A concept image of the Hermeus Quarterhorse hypersonic aircraft.

ハーミウスのクォーターホース極超音速機の想像図. HERMEUS

 

  • 今回はターミナル1 ターミナル2共通記事です

空軍はベンチャーキャピタルファンド数社と60百万ドルをジョージアの新興企業に投じ、極超音速旅客機の軍用版の実現を狙う。

 

空軍はハーミウス Hermeus に7月30日に60百万ドルの契約を交付した。空軍で民生技術の軍事利用を実現すべく設立したAFWERXが仲介する事業としては最大規模になった。

 

空軍の研究開発トップ、ヘザー・プリングル少将は「極超音速機の推進システムには画期的な意義があり、前世紀に自動車がもたらしたように移動形態が大きく変わる」と述べた。

 

ハーミウスが製造するのは再利用可能な極超音速機で、従来の極超音速試験機はすべて使い捨てだったため大きく異なる機体となる。

 

空軍との契約によりハーミウスは技術開発を加速化しマッハ5飛行可能な旅客型の実現をめざす。完成すればニューヨーク=ロンドン間を90分で移動可能となる。

 

「当社の技術開発に資金を投じることで空軍が実用に耐える装備の実現を目指していることは明らか」と同社CEOにして設立者AJ・ピプリカが発言している。

 

今回の戦略的な資金投入合意によりハーミウスが軍とのつながりがさらに深まった。同社へは昨年1.5百万ドル相当の契約が空軍から交付されており、政府高官を世界各地に運ぶ研究がはじまっている。

 

ハーミウスは2018年に元ジェネレーション・オービットの技術者4名が設立し、まず無人実証機クォータホースの完成をめざしている。

 

今回の空軍からの契約金で同社はクォーターホースの試験飛行を18カ月後に実現できる見通しがついた。契約で同社はテスト要員を20201年中に50名にまで増やすことになっており、テスト日程を約1年短縮させる。

 

「人員投入を増やし加速化させつつ垂直統合も進めていく」とピプリカは語り、「これで内製化が進み、日程管理、コスト管理等を強化できる。全体ロードマップを大きく加速できる」としている。

 

今回の空軍契約の交付でハーミウスに今後3年間の戦略的目標が定まり、そのひとつにクォーターホース3機を完成させテスト飛行を開始することがある。テスト飛行には目標がふたつある。マッハ5飛行および機体を繰り返し飛行させることだ。

 

同社設立者でCOOのスカイラー・シュフォードは「機体を完成させエンジン技術のテストを全飛行域で行うのが目標だ」とする。

 

クォーターホースにはジェネラルエレクトリックJ85エンジン一基を搭載する。これはT-38練習機と同じエンジンでさらに高速域用のエンジンをハーミウスが開発中だ。

 

「エンジンと機体の一体化が社内でできることでシステム統合が迅速に進められる」と同社の内情に詳しい筋が開設する。

 

クォーターホースは「今後登場する機体へのつなぎの役目」とシュフォードは述べており、同社は「より大型の旅客機」の実現をめざしている。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


US Air Force, Venture Firms Make $60 Million Bet on Hypersonic Aircraft Startup

BY MARCUS WEISGERBER

GLOBAL BUSINESS EDITOR

AUGUST 5, 2021

 

参考:ハーミウスのウェブサイトhttps://www.hermeus.com/

 

2020年3月23日月曜日

SR-72登場の前に極超音速機の概念、歴史をおさらいしておく

SR-72ですが、いつ姿を表すのでしょうか。また極超音速機を爆撃機に転用する構想が実現するのでしょうか。いずれ明らかになるでしょう。その前に、極超音速機の系譜をたどってみましょう。

実ではないが、SR-72は成功作SR-71、さらにその先達の流れを汲んでいる可能性があり、完成すれば世界最速の機材になる。
青天の霹靂という表現がぴったりだったのは、ロッキード・マーティンのスカンクワークスがSR-71の後継機を発表したときのことだ。名機と呼ばれるマッハ3飛行のSR-71偵察機は計算尺で設計された機体ですでに退役している。
発表されたSR-72はマッハ6とSR-71の2倍で飛行し、空気取入口を通過する空流の速度がSR-71の速度と等しくなるほどの高速機だ。
そのSR-72の実証機材は2017年7月に完成していたと言われる。
Aviation Weekによればスカンクワークスは高温高出力域でターボジェットを運転する方法を開発し、まずマッハ2.5に加速する。ラムジェット-スクラムジェットがこの後を担当し、作動にはマッハ3以上が必要だ。ロッキード・マーティンは解決方法を得たというが、内容は述べていない。
ターボジェットはブレイド多数を回転して入ってくる空気を圧縮加熱してから点火しガスを排出する機構だ。ラムジェットはもともと高速なので空気自体が高温高圧になっており燃料と点火できる。スクラムジェットとは「超音速燃焼ラムジェット」の略で入ってくる気流が超音速で移動している。
極超音速中はソニックブームは発生しないが、機体前縁を通過する気流が高速となり溶鉱炉と同じ温度まで加熱される。
SR-71でも飛行中の空気との摩擦のため地上で機体パネルの接着が緩んでいても飛行中に膨張していた。
マッハ5超の極超音速飛行の可能性がこれまで70年に渡る研究の原動力であった。ナチが新兵器として実用化を狙っていた他、想像力を刺激してきた。

ジルバーフォーゲル構想 
オイゲン・ゼンガーは時速数千マイルの航空機構想に博士論文で初めて取り組んだ。1933年のことである。ロケットエンジンの冷却用に低温燃料を再循環させる画期的な発想に注目したのがヒトラー政権だった。ヴェルナー・フォン・ブラウンと並びゼンガーも第三帝国の軍事力整備を求められた。
フォン・ブラウンのV-2弾道ミサイルは超音速兵器となり、ロンドンやアントワープの市民に事前警告の余裕はなかった。ゼンガーのジルバーフォーゲル(銀鳥)が実現していればニューヨークやシカゴなども破壊されていたかもしれない。
この銀鳥は対蹠点爆撃機とも呼ばれ、奇抜な発想をひとつにまとめ、その後も長く記憶に残った。ドイツ航空省が試作機製作に踏み切れなかった理由もそこにあった。ナチのスペースプレーン最終形は全長91フィートのリフティングボディで推力100トンのロケットモーターに液体酸素と燃料を併用するというものだった。
全長2.5マイルの巨大モノレール軌道上のそりにロケットを載せ、パイロット1名のみ搭乗する爆撃機はマッハ2で離昇してから銀鳥自体のロケットを点火し高度70マイルでマッハ19に加速する。
どこかで聞いた話と思った方がいるのではないか。実はこの構想は1950年代のSF映画『地球最後の日』で採用された。
機体は高高度で加速してから大気圏に戻り、その後再び大気圏外に戻る。ゼンガーたちは銀鳥の飛翔距離を14千マイルと試算し、滑空しながら遠距離地点を爆撃できるとした。
ただその後出た計算結果を見ると、銀鳥が飛行すればスペースシャトル・コロンビアの事故と同じ運命に見舞われたはずだ。
銀鳥の任務は戦略爆撃とテロ活動の組み合わせだった。4トン爆弾一発で相当の威力があるが、米本土が突然爆撃を受けるとなれば心理的な影響も大きい。当時は標的にアルミ精錬所や航空機工場を想定していた。
だがゲーリングの航空省はゼンガー構想を相手にせず米本土攻撃には別の構想を優先した。ヨシフ・スターリンが同構想を戦後に検討し、NKVDにゼンガーたちの拉致を命じたが、失敗した。
極超音速飛行技術の出発点はヒトラー時代にあったのだ。

ライトスタッフ
米国でもマッハ5超の飛行実現にむけチャック・イェーガー少佐がまず音速の壁に挑んだ。
1950年代にX-15で極超音速飛行にむけ設計、素材、手順に取り組んだ。1960年代のX-15パイロットはマッハ6で宇宙空間に向け飛行していた。だがトム・ウルフがライトスタッフで叙情たっぷりに記述したようにX-15の有人飛行型式はマーキュリー、ジェミニ、アポロのカプセルに道を譲った。
ただ米空軍も半世紀前にX-20ダイナソアで極超音速飛行を実現する手前まで行った。銀鳥に加え、その後のスペースシャトルやSR-72につながる系譜である。タイタンミサイルで宇宙に打ち上げ、宇宙カプセルに似た軌道を飛行し、戦闘機の様に着陸するX-20は銀鳥の夢を実現するはずだったが、ロバート・マクナマラ国防長官により打ち切りとなった。
スペースシャトル開発はX-20の研究成果を利用した。今日ではそのスペースシャトルも引退しているが、極超音速飛行機で世界で最も知られている存在だ。シャトルはマッハ23で宇宙空間に飛び、帰還時には「翼のついたレンガ」のように降下飛行した。
シャトルの大気圏再突入時には超高温の処理が必要となり、SR-72も同様だろう。表面にわずかな亀裂があれば機体や乗員を喪失しかねない。
米国での最新の極超音速研究では迅速長距離打撃兵器体系として空中、海上、海中からペイロードを発射してからロケット推進で巡航速度まで加速する方法に焦点を当てている。
スペースXのファルコン1ロケットも極超音速ペイロード打ち上げ手段として予算を投入して実現したものだ。
そこで、SR-72の登場だ。ロッキード・マーティンが製造に成功すれば、全く違う飛行形態になる。通常の滑走路を離陸着陸し、弾丸より早く、しかも経済負担可能な範囲で飛行する技術は急速に世界に普及するだろう。V-22オスプレイの投入でイラクはロードアイラインド州ほどの移動範囲に縮小された。SR-72ならインド太平洋はカリフォーニア州の大きさに縮むのではないか。■

この記事は以下を再構成したものです。

The Air Force Might Be Getting a Mach 3 SR-72 Bomber

That would be amazing.
March 20, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: SR-72MilitaryTechnologyWorldU.S.SR-71 BlackbirdAir Force

2018年8月16日木曜日

軍用機への転用は? ボーイングが極超音速旅客機構想を発表。

Hypersonic airliner "may not be as hard as people think": Boeing CTO 

超音速旅客機は「みなさんが考えるほど困難ではない」とボーイングCTOが語る


Boeing

10 AUGUST, 2018
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: STEPHEN TRIMBLE
WASHINGTON DC

超音速旅客輸送はサイエンスフィクションとされることが多く、実現可能と見る向きは少ない。だがボーイングはその実現に向け動いており、しかも真剣だ。
「実際には考えられているほど実現は困難ではないかも」とボーイング最高技術責任者グレッグ・ヒスロップGreg Hyslopは、すかさず「難しいのは事実」といい添えた。
同社は極超音速旅客機構想を6月26日発表し、7月のファーンボロ航空ショーでも再度お披露目している。
超音速飛行の選択肢さえ2003年以来消えた業界で極超音速飛行を20-30年以内に実現させる提案は野心的と愚行の中間といえよう。
だがボーイングはスピード、素材、推進機関の組み合わせを見つけ、マッハ5で飛行可能な航空機は技術的に実現可能であり、商業的に利益を上げる事態が2040年頃に生まれると主張する。
さらに超音速飛行につきものの問題の解決方法も見つかったと同社は言う。M5.0程度で巡航する機体は高度90から95千フィートを飛ぶ。乗客は宇宙服を着用せず完全密閉された予圧客室に座る。そこで何らかの予圧が破られる事態が発生すれば大変なことになる。
「その事態は承知しており、対応を考えてみました」とボーイング上席技術研究員で極超音速技術の主任研究をつとめるケヴィン・ボウカットKevin Bowcuttが述べる。「全く新しい方法で客室内予圧を維持します」ボウカットはこれ以上詳しく説明してくれなかったが、減圧問題に技術的解決策があるとのことだ。
ボーイング構想の最高速度はマッハ5で極超音速の定義にあうが、それが理由ではない。ボーイングの解析では現在入手可能な機体構造、推進手段、燃料技術の限界はM5.0だという。
「現在使える技術や設計ツールで実現可能です。新規投資は不要です」(ボウカット)
一例がエンジンだ。M6.0機では超音速燃焼用のラムジェット(別名「スクラムジェット」のエンジンが必要だが、長年の研究開発にもかかわらず技術は成熟化していない。M5.0機ならその他の推進方法が使えるとボウカットは言う。
空気取り入れ式エンジンを搭載した歴代の有人機で最速機体はロッキード・マーティンSR-71Aでマッハ3.2をプラットアンドホイットニーJ58に基で実現した。同エンジンはターボラムジェットと呼ぶ特殊構造でM2まではターボジェットとして、その後は圧縮機からの空気をダクト誘導アフターバーナーへ送った。ラムジェットと構造が似た構造だ。
ボーイングの極超音速旅客機もターボラムジェット方式でJ58に手を入れたものを使うとボウカットは述べる。M2超で燃焼器の周囲に空気の一部を誘導するが、ボーイングでは高速度でエンジンコア周辺の空気の流れ全部をバイパスするのだろう。
ボウカットは極超音速機に詳しい。「X-51の父」と呼ばれる本人は1995年に同機を設計し、その後空軍研究開発本部が資金提供した。X-51ではJP-7燃料を使い、SR-71Aで使ったケロシン系の組成は同じだが燃焼系と冷却系の双方で用いる。ごく超音速旅客機はM5.0超の飛行は想定しないため、JP-7は不要とボウカットは述べる。標準ジェット-A燃料、液体メタンやそれらの複合燃料が民間機に使えそうだという。
またボーイングがM5.0を選んだのは機体構造材料の単純化のためだ。熱吸収式の特殊素材としてセラミック複合材やチタン合金が今日でも機体やエンジンに使われており表面温度は600°C (1,100°F)まで耐える。
M5.0だとM0.8程度で飛行する今日の旅客機の625%の速度となるとボウカットは説明。高速になればそれだけ困難な点があり、得られる成果も減る。たとえばM6.0機はボーイング構想より速力が2割しか伸びないが、チタンではなくニッケルが必要となりターボジェットではなく実証がまだのスクラムジェットが必要となる。
スピードが6倍になれば超音速旅客機の商業的価値も増える。
ヒスロップは極超音速飛行を超音速機のブリティッシュエアロスペース/エアロスパシアルのコンコードと比較する。コンコードは大西洋横断飛行を一日で二回こなし、クルーはそのまま乗務した。ただしブリティッシュ・エアウェイズエール・フランスともにこの利点を活用しなかった。これに対して極超音速旅客機は大西洋横断を一日四五回クルー交代なしで行えるという。機体の活用度を理由にエアラインは超音速飛行に超音速飛行より魅力を感じるはずという。
「これで経済面で意味が出る」とヒスロップは言う。「同じ機体を何回使えるかが経済性の鍵で高速飛行に可能性があり、大きな魅力の源になるかもしれません」■

コメント ボーイング発表の構造図では客室窓が見えますが極超音速機に窓が必要なのでしょうか。JALも出資して超音速機開発が進んでいると言われますが一気に極超音速機へ向かうのでしょうか。当然軍用機への転用も考えられますね。

2018年1月15日月曜日

★ボーイングが極超音速機コンセプトを公表、ロッキードSR-72に対抗

 

ボーイングが積極的に新技術を公開しています。立て続けに発表できるのはそれだけ多くの研究開発が背後にあるからでしょう。特に極超音速技術の開発はピッチが上がってきましたので注目です。まずBusiness Insiderの記事です。



Boeing unveils conceptual hypersonic jet design to replace the SR-71 Blackbird

ボーイングがSR-71ブラックバード後継機となる極超音速機設計案を公開
Boeing hypersonic concept SR-71Boeing
  • ボーイングがSR-71ブラックバード後継機を狙う極超音速機のコンセプトモデルを公開
  • マッハ5以上を狙う
  • この性能の機体はまだ製造実績がない


ボーイングがSR-71ブラックバードの後継機とされる新型極超音速機のコンセプトモデルを公表したとAviation Week Aerospace Dailyが伝えている。
コンセプトモデルはオーランドで開かれたAmerican Institute of Aeronautics and Astronauticsの科学技術フォーラム会場で展示された。
「このコンセプトと関連技術は極超音速ISR/攻撃機を想定しSR-71と同じミッションを想定しました」とボーイング広報サンドラ・アンガースがBusiness Insiderに伝えている。「SR-71後継機を目指しています」
「実証機に至る前のコンセプトモデルですが再利用可能な極超音速機の製造は未踏の分野」とアンガースは述べ、「当社は高度技術分野に常に挑戦し顧客からの発注に備えております」
アンガースは次世代機はマッハ5超となるとも述べている。ボーイングの極超音速分野の主任技術者ケヴィン・ボウカットはAviation Weekに極超音速機設計が着々と進んでいると述べている。
ボーイングは防衛産業最大手の一角であり、米国内で大きな政治影響力を誇る。
SR-71SR-71 Wikimedia Commons
Aviation Weekではボーイングが「F-16程度の大きさの単発実証機のフライトテストではじめ、その後双発でSR-71とほぼ同寸の実用機に移る二段構えの対応を想定している」と述べたと報じている。
ボーイングはすでに極超音速飛行を無人機X-43、X-51で実験を行っている。
このうちX-51は2013年にマッハ5.1を三分間維持し海中に没している。ただし、X-51はB-52母機から投下されブースターで加速してマッハ5.1を記録している。
これに対して今回のコンセプトモデルは自力で離着陸する想定で難易度が高い課題に挑戦する。
ロッキード・マーティンもSR-71後継機をSR-72として開発中で2020年にテスト開始を狙う。■
ではそのAviation Weekの記事を見てみましょう。


Boeing Unveils Hypersonic ‘Son-Of-Blackbird’ Contender

ボーイングが極超音速の「ブラックバード二代目」競合策を公開

Hypersonic vehicle design: Guy Norris


Jan 11, 2018Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report


極超音速技術の研究開発が米国で急速に進展する中、ボーイングが初の再利用可能マッハ5超実証機の設計案を発表し、将来の超高速攻撃偵察機へ道を拓こうとしている。
デルタ翼で後退角が大きなコンセプトモデルは二十年にわたるボーイングのX-43、X-51A極超音速実証機研究の流れをくむ。その他のボーイングの超高速飛行技術の実績も反映しており、マッハ3のXB-70実験爆撃機もそのひとつだ。ロッキード・マーティンが2013年にSR-72と同じくボーイングもSR-71ブラックバード偵察機の後継機を狙う構想を発表している。
「再利用可能極超音速機で一番実現性が高い形態はなにか。そこで独自に研究を開始しこの答えを探しました」とケヴィン・ボウカット(ボーイング極超音速技術主任研究者)は語る。コンセプトから実寸大開発に進めば、ボーイングは二段構えでテストを開始しF-16サイズの単発機をまず製造してから双発実用機に進み、107フィートのSR-71と同様になる。
ボウカットによれば尾翼二枚でウェイブライダー形状の仕様が極超音速機に進展しつつあり、「通常の形で離陸してマッハ1からマッハ5への加速は生半可ではありません。空気取り入れ効率は速度が上がるにつれ低下しますのでマッハ5ならエンジンは相当大きくしなければなりません。しかし空気取り入れ口もノズルも大きくなり、マッハ1突破だけでも困難になります」
だがボウカットは機体と推進系の設計に学際的設計最適化multidisciplinary design optimization (MDO)を取入れ、多様な分野の技術を同時採用することでボーイングは実用的な仕様を実現したと語る。MDOはX-51Aでも採用された。
X-51Aウェイブライダーは空気取り入れ式機で極超音速飛行を始めて持続した機体だ。
ボーイングは自社費用で極超音速飛行研究を開始したが、現在はDarpaの全域高性能エンジンAdvanced Full Range Engine (AFRE)構想と関連したタービンコンバインドサイクルturbine-based combined cycle(TBCC)飛行実証を進める米空軍研究開発本部(AFRL)の下で研究を続けている。ボーイングはエンジンパートナーにオービタルATKを選定し、オービタルは2017年に21.4百万ドルでAFRE研究契約を交付されている。ボーイングは2016年にAFRLのTBCC飛行実証機コンセプト作成を開始し、オービタルATKに作業を委託している。
機体仕様はTBCC推進系により大きく影響を受ける。TBCCでは従来型タービンエンジンにラムジェット/スクラムジェット(DMRJ)を組み合わせる。タービンエンジンでまずある程度のマッハ数にしてからDMRJに移行する。エンジンは空気取り入れ口とノズルを共有し、移行後はタービンは保護カバーに覆い着陸まじかで減速時に再始動する。取入れ口にはXB-70で採用した分離板が採用されているとボウカットは述べており、TBCCは推進方式の候補の一つに過ぎないとする。ノズルも分離されている。
「推進系で機体長が決まります」とトム・スミス(ボーイング極超音速機開発技術研究主任)も言う。ボーイングは設計原案の詳細を明らかにしていないが、取り入れ口が広く、ナセルが機体下についていることからTBCCエンジンのタービンとDMRJは並列搭載されているようだ。
取入れ口が内側を向くのは機首で生まれる衝撃波を吸収する狙いがある。機体前方のチャインが鋭角で大きなデルタ翼に繋がっていることからウェイブライダーとしての極超音速効果とともに離着陸時の低速時の揚力効果を期待する。ウェイブライダーとは衝撃波に波乗りし抗力が減る効果を期待することをさす。「チャインが主翼につながり良好な空気の渦が生まれます。低速時にこの渦に注意が必要です」(スミス)■


さすがAviation Weekは航空力学にも言及していますね。ビジネスマンにはそこまでの情報は必要ないということでしょうか。Business Insiderもコンパクトながら重要な情報はちゃんと伝えていますね。両誌とも今後もフォローしていきます。

2017年12月19日火曜日

★これが第六世代戦闘機の想定内容だ

 毎度、出し惜しみのような内容ですが、それだけ方向性がはっきりしていないのでしょう。そのため何回も同じような内容ですみません。
 もともと第五世代戦闘機とはロッキードが宣伝用に普及させたの表現ですが、F-22やF-35を超えた戦闘機という意味で第六世代なのですね。
 ステルスや兵装等を考えると将来の(有人)戦闘機は現在のコンセプトと変わるはずですが、米海軍は(空母運用もあり)現行サイズの機体を想定のようです。空軍も追随すれば結局同じサイズになりそうですが、まだわかりません。



Air Force Starts Experiments for 6th Gen Fighter

第六世代戦闘機実験を開始した米空軍

The Air Force has begun experimenting and conceptual planning for a 6th

generation fighter aircraft to emerge in coming years as a technological step

beyond the F-35,

空軍が第六世代戦闘機の概念作りを開始した。F-35を超えた技術進展の機体になりそうだ



Kris Osborn - Dec 16, 9:59 AM


  • 米空軍は第六世代戦闘機関連実験を開始しており、F-35を超えた技術進展が今後数年間で登場すると空軍関係者は述べている。
  • 「実験、開発企画、技術投資を開始した」とアーノルド・バンチ中将(空軍副長官(調達)付け軍代表)Gen. Arnold Bunch, Military Deputy, Office of the Assistant Secretary of the Air Force, AcquisitionがScout Warriorに今年はじめに話していた。
  • 第五世代F-35共用打撃戦闘機を超える性能が新型機の狙いで2030年代登場と見られるが、現在は概念構築の初期段階で、空軍は米海軍と共同作業し、必要な性能や技術内容を検討中だ。
  • バンチ中将は検討内容を詳しく述べないが航空優勢2030構想に言及しており、空軍が目指す将来機材に望まれる戦略要素が念頭にあるようだ。
  • 20年後の戦闘機に採用されそうな技術として、新世代ステルス技術、電子戦、高性能コンピュータ処理、自律運行性能、極超音速兵器、いわゆる「スマートスキン」(機体側部にセンサーを埋め込む)があると指摘するのがTeal グループの航空アナリスト、リチャード・アボウラフィア Richard Aboulafiaだ。新技術の一部は昨年のノースロップ・グラマンのスーパーボウルCMに登場している。
  • ノースロップ以外にも新型戦闘機事業競合の参加企業があるはずだが、現段階ではノースロップがコンセプト、技術、初期設計で先行しているといってよい。ボーイングも開発の初期段階にあるとDefense Newsは解説している。
  • 海軍の新型機は2035年までに退役するF/A-18スーパーホーネットの後継機と海軍関係者は2040年における空母航空戦力像を検討しており、現行のF-35CやEA-18Gグラウラーの次の機体を検討中と述べた。表面塗布やステルス、人工知能、機体操縦、センサー性能、通信データリンク等の技術は急速に進歩していると同関係者は指摘している。
  • 海軍は同時に空母運用型の無人機も開発する。ノースロップが歴史を作ったX-47B実証機は空母発着艦に成功した初の無人機だ。
  • アナリストの中には第六世代戦闘機開発ではセンサーデータの最大限共用、超音速巡航や機体そのものを電子センサーにする「スマートスキン」も模索すると見る向きがある。
  • アフターバーナーなしで超音速移動できれば、戦術上も有利になり、対象地点で滞空時間を増やせる。F-22ですでに実用化されている。
  • 最大限の接続性能とは衛星通信中継でのリアルタイム接続を意味する。極超音速兵器の開発ではスクラムジェット方式の効果実証が必要だが、初期試験では成功失敗が入り混じっている。
  • 空軍科学主任ジェフリー・ザカリアス博士Dr. Geoffrey ZachariasはScout Warriorに対し極超音速兵器の実用化は2020年代中に実現し、極超音速無人機は2030年代、再利用可能極超音速無人機の登場は2040年代と見ている。極超音速技術が将来の航空機設計で大きな意味を有しているのは確かなようだ。
  • スマートスキンでは機体にセンサーを埋め込み、機体をセンサーにし、パイロットに各種情報を表示する。一部はF-35でセンサー融合機能として実現しており、各種センサーの戦闘関連情報を収集、統合し、ディスプレイに表示している。さらにF-35ではノースロップの分散開口システムDistributed Aperture Systemで360度の戦闘空間が見られる。同システムのカメラは機体各所につけられ、抗力低減・レーダー探知性の低下で工夫されている
Northrop Grumman

  • スマートスキンに電子装置を分散配置すれば外部に装備搭載が不要となり,機体そのものが統合レンズの役割となる。これも抗力低下に貢献し飛行速度、操縦性が向上しながらセンサー性能を引き上げられる。
  • 第六世代戦闘機のステルス技術は防空性能の向上に対応可能となる。敵側の防空体制ではデジタル処理コンピューターの連携機能で広範な周波数対応が可能となり、ステルス機も遠距離から探知可能になりつつある。
  • 新型第六世代戦闘機にはレーザーや電子攻撃能力も備わるだろう。■



2017年9月30日土曜日

★★ロッキードが極超音速技術の完成に近づいている模様、SR-72との関連へ注目



Aerospace Daily & Defense Report

Amid SR-72 Rumors, Skunk Works Ramps Up Hypersonics

SR-72の噂と関連か、スカンクワークスの極超音速技術が加速中

Sep 27, 2017Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report

SR-72: Lockheed Martin
FORT WORTH, Texas—ロッキード・マーティンが極超音速技術開発を加速化しており、初の実証機を目撃したとの報告もあり、スカンクワークスが進めるSR-72高速機開発との連関が注目される。
  1. 「詳細は言えませんが、スカンクワークスのあるカリフォーニア州パームデールで超高速飛行実現の動きを倍増しています」とロッキード・マーティンで航空力学執行副社長オーランド・カバルホOrlando CarvalhoがSAE 国際航空技術学会で語っている。「端的に申し上げれば米国は極超音速革命まであと一歩まで来ています」
  2. Darpaと米空軍研究実験部門が共同で進める推進滑空兵器および極超音速空気取り入れ式兵器コンセプト研究に言及して、カバルホは「この十年で研究は大幅に進み、極超音速技術で状況が一変する意味があることが明らかになってきました。今後も研究テストを進め、極超音速飛行の実現にDarpaとのプロジェクト二件を活用します。国家安全保障ではスピードが肝心です」
  3. SR-72への言及はなかったが、同社が極超音速機として退役済みの高速SR-71ブラックバードの後継機を提案中であることは広く知られており、カバルホの前向きな発言はロブ・ワイスRob Weiss(ロッキード・マーティンの高性能開発事業体執行副社長兼総支配人)の発言に重なる。6月にワイスはAviation Weekに選択的に有人操縦となるSR-72の前身となる飛行研究用機体(FRV)が予定通り進行中と暗に述べていた。
  4. スカンクワークスはFRV開発を来年から始めるといわれ、初飛行予定は2020年だ。FRVはF-22ほどの機体サイズで推進力はフルスケールのコンバインドサイクルエンジン一基だ。しかし実証機に先立ち、ロッキードは各種技術の地上・飛行テスト中と見られる。
  5. Aviation Weekによればそのうち一つの実証では小型無人機を使い、米空軍パームデール基地の第42工場での飛行が目撃されている。同地にスカンクワークスも本拠を置いている。この機体は7月末某日早朝に着陸しT-38二機がエスコートしていたという。ロッキード・マーティンはこの目撃報告に対するコメントを拒否している。
  6. 同社はこれまでも次の段階としてフルスケール双発のSR-72を開発すると述べていた。SR-71より機体が長くなる同機は2020年代後半のフライトテスト開始を目指している。
  7. 「極超音速はステルスと似ています。根本を一変する技術となり、ブラックバードの二倍三倍の速力が各種機材で実現します」とカバルホは述べている。「作戦上の残存性と威力が究極の抑止力となります。保安上の理由により今回はスピードはマッハ5を超えるとだけ述べておきます」■