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2021年9月26日日曜日

フランスに同情する国が皆無なのはなぜか。因果応報と冷たく突き放すヨーロッパ各国だが、AUKUSは単純にフランス設計では要求水準を満たせないと判断したのではないか。

 

French President Emmanuel Macron at the Elysee Palace in Paris, Sept. 20, 2021. AP / GONZALO FUENTES

 


  • フランスの強引な営業手法にいら立地を隠せない欧州諸国は多い。


フランスがAUKUSに怒りを隠せない。だがEU加盟国から同情の念はほとんど表明されていない。その理由としてフランスが武器輸出で荒っぽい手法を展開してきたのを他国が不快に感じていることがある。フランスは武器輸出は国家主権上で不可欠な要素と考えており、フェアプレイも重要だ。

サウジのジャーナリスト、ハマル・カショギがイスタンブールのサウジ領事館で2018年10月に殺害されると、エマニュエル。マクロン大統領の手元に極秘情報が届き、サウジアラビアがイエメンでフランス製武器をどう活用しているかの説明があった。半年後にドイツなどヨーロッパ諸国がサウジ向け武器販売を停止したが、マクロンはフランスに同じ措置を求めるのは「人気取り政治」と一蹴した。

「武器販売とカショギ殺害に何の関係があるのか。イエメンの事態とのつながりは理解できるとしてもカショギ氏殺害とは何ら関係がない」「『武器輸出停止』を叫ぶのは典型的な扇動政治で、カショギ事件は無関係だ」(マクロン)

イエメン内戦では130千名が死亡しており、16百万名以上が十分な食料を得られない状況だ。イエメンでサウジ主導の連合軍とフーシ戦闘員の戦いで国民が苦しむ中でフランスのサウジアラビア向け武器輸出は続いている。2018年のフランス武器輸出は50%増加した。

昨年にフランスの武器輸出は大幅減となった中でサウジアラビア向けが国内防衛産業の維持に大きく貢献した。サウジは704百万ユーロ相当のフランス製武器を購入し、最上位国となった。また、不振とは言うもののフランスの武器輸出は2016年比で44%増となり、武器輸出上位5か国の中で目立つ存在だった。

防衛産業を擁する国は輸出で維持しているのが大部分だ。その中でフランスは防衛産業幹部のみならず大統領含む政治家が積極的に輸出案件制約に駆け回っている。フランス防衛産業では国営、民間資本の関係なく、フランス政治家がセールスマンとなり他国の競合相手を蹴落とそうとなりふりかまわぬ動きを示している。米国等でも公職につくものが自国の武器輸出を売り込むことはあるが、フランスほどの熱の入れようは見られない。

フランスは自国をグローバル大国とみなし、だからこそ同盟他国を差し置いてまで強硬な売り込み交渉をしても許されると考えているのはあきらかだ。フローレンス・パルリ国防相は「武器輸出は国家主権によるビジネスモデルだ」とまで2018年に発言していたほどだ。

スイスの戦闘機選定の事例を見てみよう。2012年に同国はサーブ・グリペンの老朽化から次期戦闘機調達に動いた。スウェーデン製の同機は機体価格に見合った性能があり、ダッソー・ラファール揶揄路ファイター・タイフーンを破った経緯がある。だが土壇場で機密文書が表に出てグリペンの性能に疑義を思わせる内容のためメディアが大騒ぎとなった。不思議なのは文書は英語で書かれていたことでスイスの公用語ではない。今年スイスは新たにF-35の導入に傾いた。

当時のフランソワ・オランド大統領はその他政治家より堂々とフランス武器産業を支援していた。2013年のパリ航空ショーでオランドはダッソーアビアシオンのCEOセルジ・ダッソーが演台に上るのを助け、「国家がダッソーをこうやって助けるんだ」と漏らしていた。

このため自国政治家が強引な手段を用いない国は競合で不利な立場になった。フランスは周囲のEU加盟国から恨まれた。防衛装備品に関する限り、フランスの好意度はEUで低く、それには別の理由もあった。EU条約の抜け道を利用してフランス企業の成約を実現していたのだ。これは346条のことでEU加盟国政府は自国内企業からの調達を優先できるとあり、ただし、純然たる安全保障上の利害の絡む場合との限定がついている。各国は自国にとって都合の良い解釈をしている。

フランスもかなり自由な解釈をしている。欧州議会の調査部門は昨年10月に報告書を出し、「欧州委員会及びCJEU17で第346条TFEUで具体的な理由が必要であり、事例ごとに検討するとあるにもかかわらず、実際には加盟国多数が同条項をEU法規から武器類は自動的に適用外としてよいと解釈している」としていた。言い換えると加盟国は同条を利用して他の欧州企業の負担で自国防衛産業製品を採用していることになる。2019年に欧州議会から出た報告書では「加盟国は例外規定を厳密に適用すべきであり、とくに346条の濫用は避けるべきである」とあった。だが濫用は続いており、取り扱いを厳密にして対応する国は商戦に負けているのが現状だ。

こうしてみるとフランスがAUKUSに火が出る勢いで反発したのにもかかわらず、各国からの同情が皆無に近い理由がわかる。友人が傷つくのを見るのは誰でも忍びないが、その友人が自国利益を優先し、他者を足蹴にしても構わないのであれば、同情は生まれない。英米豪へ抗議でフランスが他国に支援してもらいたいのなら、自らの友人の取り扱いの仕方を再考するべきだ。防衛装備品輸出がその際に中心となる。■

きれいごとばかり表面に出てくる裏でドロドロした利害がうずめく、欧州とはなんと理解しにくい相手なんでしょうか。ヨーロッパに深入りするなとベンジャミン・フランクリンが遺訓を残したのもうなづけますね。


Why France Is Getting No Sympathy for Its Lost Sub Deal

Its European neighbors have long bristled at Paris’ self-dealing and aggressive sales tactics.

BY ELISABETH BRAW

SENIOR FELLOW, AEI

SEPTEMBER 21, 2021


2013年6月27日木曜日

アジア軍拡が武器取引の「爆発」を誘発する

Asia Driving 'Explosion' In Global Arms Trade: Study

By Reuters

aviationweek.com June 25, 2013

アジア各国の軍備拡大がこのまま続けば2021年に米国の防衛支出を上回る勢いで、武器取引の「爆発状態」に火を注いでいるとの研究結果が出た。

全 世界の武器取引規模は2008年から2012年で30%増735億ドルで、経済不況にもかかわらず成長が続く背景に中国の輸出急増、インドはじめとする各 国の旺盛な需要、があり2020年までに倍増の勢いだ、と国防安全保障専門のコンサルタント機関 IHS Jane’s が発表した。

「予算は東に中心を移しており、世界の武器取引は競争状態になっている。これは世界最大の取引規模で爆発状態である」と同社幹部は国防調達案件合計34千事例を分析してまとめている。

米国が国防支出で最大の地位を保っていたが、予算削減ならびにアフガニスタン撤退で、2021年の世界シェアは30パーセントとなり、アジア合計の31%より低くなる。

アジア太平洋地区の国防支出は35%増加し5,010億ドルに今後8年間で成長する。一方、米国の国防支出は28%減4,720億ドルになる。

「西 側防衛大手メーカーには輸出か規模縮小かの選択しか残されていません。ただし、後者では自らの存続を絶つ可能性も出てきます。一方で東側の需要は諸刃の剣 で、米国の軍事的地位を危うくする結果を生むでしょう」(Guy Anderson, senior principal analyst at IHS Jane’s)

中国の軍事支増加に近隣諸国は警戒しており、日本はじめ無人島嶼をめぐる緊張を深めている。

日 本はインドや韓国と並び防衛装備メーカー各社が熱く期待する市場であり、ロッキード・マーティンボーイングBAEシステムズの各社が戦闘機他装備品を 販売し、予算削減での本国業務の縮小を補完できないかと期待する。ただし、売り込みには対象国の防衛産業への投資が必要となることがある。たとえばイン ドはフランスのダッソーエイビエーションと120億ドルで126機のラファール購入を取り決めたが、50%の工程はインド国内企業に与える希望だ。

中国の国防予算は2021年までに64%増加し2,070億ドルになる見込み。インドは同時期に54%増、インドネシアは113%増の予測だ。

各国とも自国の産業基盤整備をねらっており、戦闘機、航空母艦の国産化をすすめれば、10年以内に西側装備と遜色ない製品輸出が可能となるかもしれず、これが現在の支出ブームの結果とIHS Jane’sは分析している。■