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2018年2月8日木曜日

米空軍の軽攻撃機実証はターボプロップ二機種に絞り込み、スコーピオンは落選

US Air Force kills combat demo for light attack aircraft

米空軍は軽攻撃機で比較検証対象を絞り込んだ 

次回実証ではA-29スーパートゥカーノとAT-6ウルヴァリンが対象に絞り込まれた。スコーピオンは選外となった。

By: Valerie Insinna    

空軍は軽攻撃機の次回実証の対象を二型式に絞り込んだ。ターボプロップ機が選ばれた。予定していた実戦実証はおこなわない。

次回実証は2018年5月から7月にかけデイヴィス-モンタン空軍基地(アリゾナ)でテキストロンエイビエーションAT-6ウルヴァリンとシエラネヴァダエンブラエルA-29スーパートゥカーノを対象とする。テキストロンのスコーピオンとL-3テクノロジーズAT-802Lは落選となった。
「実戦実証の代わりに各社と整備性、データネットワーク機能、センサー機能を試すこと年、最も有望な軽攻撃機候補のAT-6とA-29を対象にする」と空軍長官ヘザー・ウィルソンが発表した。「これにより迅速な調達に必要なデータを集める」
米空軍は軽攻撃機の飛行実証を行うと2016年に発表していた。その時点で航空戦闘軍団司令官マイク・ホームズ大将は安価な既存機種で近接航空支援の要求に答えられるかを試したいと希望を述べて中東を念頭にA-10やF-16で実施中のコストと比較したいと述べていた。
軽攻撃機数百機を調達すれば利点は多い、と推進派は述べる。保有機材が多ければ運用効果が上がり、パイロット訓練も毎年増やせるというのもその一つだ。
さらに低コストで取り扱いが楽な機体を導入すれば「相互運用効果があがる」と空軍参謀総長ディヴ・ゴールドフェイン大将が述べている。つまりF-35やF-15が高価すぎて導入できない各国との共同作戦の実施が視野に入るという。
初回の飛行実証を視察にホローマン空軍基地(ニューメキシコ)にやってきた空軍上層部は戦闘実証が次の段階と言っていた。ただし、中東に機材を持ち込まなくても軽攻撃機の調達に必要なデータは得られると言っている。
「導入決定に必要なデータは機体サポートや調達導入フィージビリティから十分得られます。現在、要求内容の文書化とともに調達戦略を練っています」(米空軍広報官エミリー・グラボウスキ大尉)
ネットワーク機能と協力国との相互運用性いが次回実証のカギになりそうだ。「空軍は迅速に構築できる安価なネットワークにより機体が部隊内で相互通信できるかとともに指揮命令系統との交信も検討する」と空軍は声明を発表した。
また次回実証では関係国も招くとあり、カナダ、オーストラリア、アラブ首長国連合、パラグアイを想定する。
次の段階の実証では補給面や整備上の要求水準も比較対象となり、その他兵装、センサー関係や訓練内容も重要だという。
ただし、空軍は次回実証の費用負担方法は未定としており、大日程も決めていない。
「次段階の実証の費用面を積算中ですが、関係各社と最終価格を詰める必要があります。その段階で現時点で残る予算を活用することになります」(グラボウスキ大尉)■
筆者が推していたスコーピオンが落選となり、がっかりです。近接航空支援で想定するのはイラクやアフガニスタンの地上戦やゲリラ戦でしょう。たしかに今回絞り込んだ二機種のいずれも効果を発揮しそうですね。しかしスコーピオンは薄幸の機体になってしまうのでしょうか。

2017年12月14日木曜日

AC-130ガンシップは活躍の場が今後もあるのか

Close Air Support Debate: We Go Inside an AC-130 to See if the Gunship is Still Relevant

近接航空支援を巡る議論あるが、AC-130を見ればガンシップは未だ有意義だとわかる



AC-130スペクター・ガンシップは近接航空支援で重要な役目を担い続けている

 By Tom Demerly
Dec 13 2017 - 0 Comments

  • 鈍足で防空装備特に携帯型SAMに脆弱な機体である。戦場環境が許せば驚くほど各種弾薬で正確に火砲支援を実現する。これがAC-130スペクターガンシップだ。
  • A-10の役割に疑問がつきF-35共用打撃戦闘機が台頭し、空軍は軽攻撃機実証を行い、武装つき遠隔操縦機(RPAs)も運用する中、AC-130スペクターは空軍が想定する各種作戦機材に適合するのだろうか。
  • まず「ガンシップ」が戦闘機材の一つになったのはヴィエトナム戦のことでプロジェクト・テイルチェイサーとしてミニガンをコンヴェアC-131B輸送機に搭載したことに始まる。ミニガンはGAU-2/A一丁だった。これはベルト駆動複数中弾倉を備えたガトリング銃で銃身の過熱を避けつつ高速発射が可能だった。
  • 興味深いのはこの1960年代のガンシップコンセプトが今日の軽攻撃機実験に類似していることだ。ヴィエトナム戦のガンシップでは既存装備と機材を使った。ガンシップはそもそもは非対称戦のゲリラ戦への対応策として構想された。この二つの要素は今日の軽攻撃機実験でも生きている。
  • プロジェクト・テイルチェイサーから有名なAC-47ガンシップが生まれた。同機こそ最初の「ガンシップ」と目されている。
  • コールサインを「パフ」(ヒット曲Puff the Magic Dragonから)としたAC-47が初出撃したのは1964年12月15日でその成功に続いたのがAC-119Gシャドウ、AC-119Kスティンガーでこのうち後者はターボプロップと補助ジェットエンジンを装備した唯一の機材だった。その後をうけてAC-130Aプロジェクト・ガンシップIIが1967年に始まりヴィエトナムにすぐ投入された。
  • ヴィエトナム戦以前にも機体に機銃を搭載し対地攻撃、対空攻撃にあたらせる構想があった。B-25ミッチェルは機首に8門の機関砲を搭載し対地攻撃に投入された。B-17空の要塞はブラウニングM2機銃18丁を搭載し空対空専門のガンシップYB-40に改装され、味方爆撃機編隊を敵戦闘機から守るのが目的だった。48回出撃し単発護衛戦闘機の航続力不足を補った。
  • ガンシップの脆弱性が痛感されたのは湾岸戦争時の1991年1月31日の早暁のイラク・カフジだった。AC-130Hスペクター(コールサイン「スピリット03」)が第16特殊作戦飛行隊からカフジ攻防戦で米海兵隊の支援にあたっていた。海兵隊からイラク軍の「ミサイル陣地」に空爆要請が入り、周囲が明るくなるとAC-130Hは地上から格好の標的になったが海兵隊の指示通りの場所に銃弾の雨を降らせた。だがイラクのSA-7「グレイル」携帯型対空ミサイルが「スピリット03」に命中した。同機はそのまま飛行したが洋上に墜落し乗員14名が死亡した。この事件で大型低速で低高度を飛ぶガンシップが最新式小型対空兵器に脆弱だと明らかになった。
  • ガンシップの投入はテロ対策戦で続いており、最新事例では地上情報収集との統合の必要性が明らかになった。2015年10月3日、AC-130Uがアフガニスタン・クンドゥズで精密航空攻撃に投入された。標的はクンドゥズ治療所でタリバン戦闘員が占拠していると思われていた。攻撃は30分間で国際援助団体国境なき医師団によれば「少なくとも42名が殺され、30名以上が重軽傷になった」とし、多くは非戦闘員だったと主張。この事件は政治的にも人道的にも悲惨だが、逆にAC-130ガンシップの威力を知らしめた。
  • イラクでのガンシップ運用の実態はよくわからない。わかっているのはAC-130がA-10とともに有名な空爆作戦に投入されISIS支配下の燃料トラック116両をシリアのアブカマルで破壊した事例だ。2015年11月15日のことだった。
  • その後もガンシップの成果はつづき、2017年11月に最新のAC-130Jゴーストライダー6機が引き渡されている。AC-130Jは大幅改修されており、30mm砲、105mm砲、AGM-176グリフィンミサイル、ヘルファイヤーミサイル、GBU-39小口径爆弾を運用する史上最強のガンシップになったとAir Froce Timesがまとめている。
  • 同紙はまた2016年10月の記事で新型AC-130Jゴーストライダーは軽量、高速、高性能と評し、空軍少佐ジャロッド・ビアーズが「旧式機より燃費が25から30パーセント改善され最高速度は365ノット(416マイル)でAC-130Uの300マイルより早い。航続距離も3,000マイルで高度も28戦フィートまで上昇可能とAC-130Uより3千フィート高く昇れる」という。

第一特殊作戦飛行集団第二分遣隊のAC-130J ゴーストライダー機内で105mm砲を操作するTech. Sgt. Jarred Huseman(左)とTech. Sgt. Oscar Garcia。Ghostrider gunship, “Angry Annie,” during a training mission over Eglin Range, Fla., Jan. 23, 2017年1月23日の訓練ミッション(フロリダ州エグリン演習地)にて。(U.S. Air Force photo by Senior Airman Jeff Parkinson)
  • さらにレーザー兵器をAC-130Uに搭載する構想がある。2017年4月の「National Defense」誌は「空軍はAC-130Uの化学レーザーとは別に高性能電気レーザーをテストする。機体振動の影響を受けずにビームを安定させられるかが課題だ。ただし民生品で光学安定機能がGoProカメラ、望遠レンズまで応用されており、AC-130U搭載のレーザー兵器でも早期に解決される。テストでは30mm砲の位置にレーザー兵器を搭載している。


将来のAC-130はレーザー兵器を安定して運用するだろう (Photo: USAF)

  • AC-130Uゴーストライダーにレーザー兵器を実戦導入する案はいまのところないが、試験結果で変わりそうだ。ただAC-130ガンシップ搭乗員の間で一つだけ絶対に確かなことがある。大型ガンシップが当面消えることはない。F-35や遠隔操縦機、軽攻撃機実証の結果にかかわらず。大型ガンシップは実力を発揮する機会があり、戦力を強めながら相当の間にわたり脆弱性をカバーしていくだろう。■


2017年7月21日金曜日

A-10後継機開発の行方は不明、混迷する米空軍の装備開発方針



A-10: USAF

米空軍が何を目指しているのかわかりにくくなっていますが、
敵対勢力は意外に伝統的な戦法をとり、旧式機でも数にものを言わすのであれば、高性能を持った機材でも数で劣勢ならかなわないのでは。しかも頼みの綱の技術優位も揺らいできており、明らかに思考が行き詰まってきているのではないでしょうか。

Aerospace Daily & Defense Report

Air Force Weighs Scrapping A-10 Replacement

A-10後継機検討はこれ以上進める意向のない米空軍

Jul 17, 2017Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

  1. 米空軍は近接航空支援の将来像を検討中だが上層部によればA-10ウォートホグの直系の後継機は生まれない可能性がある。
  2. 空軍はここ数年ずっと近接航空支援(CAS)の次期専用機材を検討していたが、現時点で作業は止まっている。専用機材としての「A-X」開発に向けた措置を取っているのか問われた空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドファイン大将は「まだない」と答えている。
  3. すると専用機材としてのCAS機は作らないのか。「多分ね」とゴールドフェイン大将は言う。
  4. 「単一任務機実現への障害が空軍内で高いとは思わない」と参謀総長は7月16日のAviaion Week取材で述べている。「しかし前線指揮官に多様な戦闘状況があり当方はそれを支援する立場で、ハイエンド、ローエンド、その中間と多様な中で空軍にとって最善の結果を予算以内で生む運用が求められているのだ」
  5. 取材は英ロイヤルインタナショナルエアタトゥー訪問から帰国する参謀総長に空軍C-40機内で行われた。
  6. 本人はアフガニスタンの航空部隊指揮官としてCASミッションでA-10だけでなく各種機材にいかに依存しているか直接目にしてきた。地上部隊防護でウォートホグが必ずしもいつも第一の選択にならず、東部山岳地帯ではMQ-9リーパーが山谷を縫って迅速に移動できる点で一番優れた機材だった。不安定な西部では状態が悪化すれば多用途F-15Eが効果を最大限に発揮し、北部なら長時間飛行性能と大量のペイロードでB-1Bが最高の選択だ。
  7. 「特定の単一装備ではなく各種システムのファミリーとして、なら21世紀の近接航空支援が検討できる。単一機能だけで完結するミッション想定は本当に数少ないのです」
  8. 空軍はウォートホグを2020年代中頃まで運用する予定だが、A-10で9個飛行隊すべて運用するには追加予算手当が必要だ。ただし空軍がA-10の後継機を実現できるかは予算状況が安定することが前提とゴールドフェイン大将は強調する。
  9. 強制予算削減や先行きの見えない中、特別決議が年ごとに更新され対応する状況では軍の計画立案能力が大幅に低下していると参謀総長は指摘する。
  10. 「こんな駆け引きをしている状況では先のことは読めません」といい、「無料で何も手に入りません」
  11. 決断を下す前にゴールドフェイン大将はCAS部隊に将来のミッション像で意見を聞くだろう。これまでの姿とは違ってくるためだ。A-10が真価を発揮できるのは完全に航空優勢が確立されたイラクやアフガニスタンのような場合だと専門家の意見は一致しているが、高性能対空装備特に地対空ミサイルの普及で非ステルス性で大柄なウォートホグを戦場で運用するのは危険が増えている。
  12. 「後継機種の話をする前に検討内容が全く新しい形の作戦運用につながることを確認しておきたいですね」とゴールドフェインは語った。■

2017年6月2日金曜日

★どうなるA-10の行方、大幅改修か、新型機投入か



米空軍は近い将来は第二次大戦後一貫して米空軍が享受してきた航空優勢は確保できない想定のようです。しかしCAS機材に航空優勢任務まで期待できないので、結局任務に特化した機材を複数準備するしかないのですね。この点で単一機能しか果たせない機種は整理するとした以前の空軍の考え方は根本的に間違っていることになります。(ただしA-10退役案は本心ではなかったと今頃になって弁明しているようですが) A-29などターボプロップ機はOA-Xという別のCAS構想なのでA-10とそのまま比較するのが間違っています。そうなると既存A-10の供用期間延長を図るか、新たに生産するしかないと思うのですが。F-35がCAS任務でA-10に匹敵する性能を出せないと空軍もあきらめているのでしょうかね。



Air Force Advances Future Plans for the A-10

A-10の今後の活用案の検討が進む

Visit Warrior Kris Osborn, SCOUT WARRIOR
Yesterday at 11:15 AM

http://www.scout.com/military/warrior/story/1661272-air-force-to-build-new-a-10-attack-aircraft


米空軍の進めるA-10後継機戦略からは新型機が生まれる可能性、既存機種の改修、さらにA-10改修の可能性も生まれそうだ。
  1. 空軍は「A-10」相当の機体に必要となる速度、威力、耐久性等の性能検討を開始し、米軍地上部隊に効果的な近接航空支援を提供する手段を引き続き実現しようとしている。
  2. 空軍は「要求性能原案」を作成中で、エイビオニクス、技術、兵装、装甲、技術冗長性がどこまで必要かを検討しているとScout Warriorに伝えている。
  3. A-10の中核技術や戦闘能力の多くはそのままとし、さらに伸ばすものもあると関係者は述べる。
  4. A-10ウォートホグはISIS相手にすぐれた攻撃性能を示しており、空軍が同機の退役を先延ばししたこともあり、空軍は長期視点からA-10と同様の機体の実現に本腰を入れている。
  5. ペンタゴン上層部から最短でも2022年までA-10を供用すると発表があったことを受け、空軍とDoDはA-10は当初想定より長期にわたり実戦投入可能とみている。
  6. グローバルな脅威内容を意識し、空軍がA-10を温存するのは理にかなっている。ISIS攻撃では原油輸送車列他の攻撃に威力を発揮しているが、それ以外に多彩な兵装を運用でき、レーザー誘導爆弾や精密兵器も含まれる。
  7. 30mm機関砲、チタン製装甲板、近接航空支援用に冗長性をもたせたA-10は機械化部隊の撃退にも有効だ。A-10には広範な種類のシナリオで他機でまねができないすきま任務をこなす能力がある。戦闘員鎮圧から地上部隊支援、大規模戦での火力提供、防護、地上部隊支援までだ。
  8. 空軍関係者はScount Warriorに対して現時点で三つのアプローチを明らかにした。一つが現行A-10の大規模性能改修と供用期間延長で、その他既存機種を調達する、全く新規の機体を近接航空支援用に開発することだという。
  9. 「要求性能原案をまとめているところです。完成すれば現状と比較し、A-10を継続使用した場合との比較、別機材で交替させた場合の比較、と検討を進めていきます」とジェイムズ・ホームズ中将(空軍参謀次長、戦略構想機体性能とりまとめ責任者)が昨年に報道陣に語っていた。
  10. ホームズ中将は空軍全体として長期間ハイエンド戦闘の際に「航空優勢」を確立、維持、保持する方策を模索していると述べている。近接航空支援用の後継機でもこの課題は無視できないという。
  11. そのため、空軍は近接航空支援機の「適正度」を図るため既存機種と新規開発機との間の違いも含め多方面からの検討を重視するはずだ。
  12. ホームズ中将は選定では機体価格と並び維持費用が極めて大きな要素になると述べている。
  13. 既存機種で検討対象に入っているのはレイセオンのT-XやエンブラエルA-29スーパーツカーノなどがある。
  14. 予算手当できれば空軍には大きな意味が生まれる。前空軍参謀総長のマーク・ウェルシュ大将はA-10退役案があったが空軍は実はそのまま退役させることは望んでいなかったと述べている。A-10退役案は純粋に予算が理由だったと空軍上層部は一貫して説明していた。ウェルシュ大将は「退役させたくない機種だ」と昨年3月に議会で発言していた。
  15. 空軍上層部からは多用途F-35が近接航空支援任務を引き継げるはずと述べていた。センサー技術と25mm銃と操縦性を武器にF-35が任務を実施できないはずはない。だが同時にA-10が他に比類のない戦場での実績を示しているからこそ何十年にわたり温存されているとの見方は全員が一致したところだ。■