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2022年10月25日火曜日

鹿屋基地に米空軍MQ-9リーパー部隊が展開中。1年間同基地からISR活動にあたる。

 






2022年7月21日、カリフォーニア州トゥエンティナインパームスの海兵隊航空地上戦闘センターで、第163攻撃飛行隊のクルーチーフがMQ-9リーパーをマーシャリングする。(Joseph Pagan/U.S. Air National Guard)

 

米当局によると、米空軍のMQ-9リーパー8機と隊員150人以上が1年にわたる南日本への派遣を開始しており、数週間以内に監視飛行を開始する。

第319遠征偵察飛行隊は日曜日に鹿屋基地で指揮権継承式を行い、任務を開始したと、米軍日本部報道官のトーマス・バーガー空軍大佐が月曜日に電話で語った。鹿屋は、九州の南端に近い海上自衛隊の基地である。

九州防衛局の広報担当者が月曜日に電話で語ったところによると、無人機は今月末以降に鹿屋から飛行を開始する予定だという。日本では、一部の政府関係者が身元を明かさずにメディアに発言することが慣例となっている。

「この戦略的立地とMQ-9の能力により、日米同盟は広大な地域を見渡し監視することができる」と、319部隊のアレクサンダー・ケリー中佐は、防衛省がオンライン公開した式典のビデオで、飛行士や地元関係者、海上自衛隊の隊員たちに語った。

新しく活動する部隊は、第二次世界大戦中の第319戦闘機隊の系譜を汲んでいる。1977年にフロリダ州ティンダル空軍基地の第319戦闘機迎撃飛行隊として不活性化された。第374作戦群司令官オウ・ジュン大佐は式典の別のビデオでこう述べた。

鹿屋への配備は、日米両国が相互の課題を克服するため技術を共有する機会になると、彼は言った。

「MQ-9はインド太平洋全域で日米の情報、監視、偵察の優先順位をサポートする」と述べた。

空軍によると、リーパーは偵察機だが、ヘルファイアミサイルやペイブウェイ・レーザー誘導爆弾などの武器を搭載することができる。

鹿屋市のウェブサイトに掲載された防衛省文書によると、鹿屋のリーパーは「監視仕様で、武器は搭載できない」とある。

鹿屋市の中西茂市長は7月、米軍関係者が関わる事故や犯罪の可能性に対する住民の懸念にもかかわらず、国防上の重要性を理由に無人機の配備に署名した。

鹿屋にはすでに、海上自衛隊のP-3Cオライオン海上偵察機やUH-60Jブラックホーク、SH-60Kシーホークヘリコプターが配備されている。海兵隊のKC-130タンカーやオスプレイなど米軍機が訓練で基地を訪れる。

リーパーはサンディエゴのジェネラル・アトミックス製で、兵装3000ポンドを搭載でき、2007年にアフガニスタンで、翌年にはイラクで初めて戦闘に参加した。中東やアフリカで数多くの任務に就いています。

空軍は2014年に三沢基地に偵察機RQ-4グローバルホークの配備を開始し、近年は東京西部の横田基地から飛行させている。海軍のMQ-4Cトライトン海上偵察機は昨年、三沢に配備され、今年は海兵隊岩国航空基地に展開している。■

 

Air Force Reaper drones to begin surveillance flights out of Japan within weeks | Stars and Stripes


By SETH ROBSON

STARS AND STRIPES • October 24, 2022

 

SETH ROBSON

Seth Robson is a Tokyo-based reporter who has been with Stars and Stripes since 2003. He has been stationed in Japan, South Korea and Germany, with frequent assignments to Iraq, Afghanistan, Haiti, Australia and the Philippines.


2022年7月3日日曜日

輸送機をミサイル攻撃機に変身させる米空軍のラピッドドラゴン構想に注目。

 


ラピッドドラゴンのビデオからの画面キャプチャー



距離攻撃ミサイルの空中発射でB-52はじめ古参機材に新たな意義が生まれたが、米空軍の「ラピッド・ドラゴン」プログラムは、このコンセプトを次のレベルへ引き上げる。「ラピッド・ドラゴン」は、重爆撃機や攻撃戦闘機だけに頼らず、輸送機もミサイル搭載機として戦いに参加できるようにする。太平洋で紛争が起これば、貨物機が強力な艦艇ハンターに変身する。


C-130ハーキュリーズやC-17グローブマスターのようなレーダー反射が大きい機体を、戦闘空域近くで飛ばし軍需品を搭載させるのは直感に反するように思えるかもしれないが、ラピッドドラゴンは大型機を戦闘投入する前提ではない。代わりに、AGM-158 JASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)のような射程1000マイル超のスタンドオフ兵器をパレット上で活用し、敵防空網が届かない地点から輸送機で展開する。空軍によると、これにより比較的低コストかつ低リスクで、大量の低観測性巡航ミサイルで敵空域に飽和攻撃させる道が開かれる。


ラピッド・ドラゴンの名称は、紀元950年頃の古代中国にあった "Ji Long Che"(直訳すると "快速龍車")という攻城兵器へのオマージュだ。この武器は弩級カタパルトで、一人が引き金を引くと、12本もの矢を遠距離に同時発射できた。

 

空軍研究本部はこう述べている。

「Rapid Dragonコンセプトは、米空軍の兵器運搬システムとして、ゲームを変える。パレット化した弾薬は、遠方の敵に強力な一斉射撃を約束する」。


皮肉なことに、ラピッド・ドラゴン兵器システムは、名前の由来となった国との紛争で最も価値を発揮しそうだ。JASSM巡航ミサイルのような低視認性・長距離弾薬により、貨物機は敵空域をミサイルで飽和させたり、敵艦隊を全滅させたり、広大な海域に機雷を敷設するのが可能となり、しかも中国の航空防衛システムの射程内に入らない。


Watch a C-5 Galaxy drop a Minuteman Intercontinental Ballistic Missile  during a test - The Aviationist

Air Mobile Feasibility Demonstrationプログラムでは、空中のC-5ギャラクシーからミニットマンI ICBMを発射する想定だった。 (U.S. Air Force photo)


ミサイルを輸送機に搭載するのは新しいコンセプトではない


民間機や貨物機を利用してミサイルを運搬・発射するコンセプトは以前からあったが、1970年代に注目された。1970年代初頭、戦略的軍備削減交渉に入る前に、ソ連に対する核優位性を取り戻そうとしたヘンリー・キッセンジャーの努力で、航空機動兵器実現可能性実証計画が生まれた。このタイトルは一見良さそうに見えるが、取り組みは決してそうではなかった。


1974年、わずか90日間で、このプログラムは、米国が実際に全長57フィート、87,000ポンドのLGM-30ミニットマン1核ICBMを、飛行中のC-5貨物機から、ほとんどどこからでも発射できると証明を狙った不活性ICBMの実射デモンストレーションで最高潮に達したが、この珍しい配備方法が可能なだけでなく、実現可能であると証明した後、米国はこの能力を棚上げする選択をした。


America really launched an ICBM from the back of a C-5 cargo plane -  Sandboxx

Air Mobile Feasibility Demonstrationプログラムでは、C-5ギャラクシーからミニットマンI ICBMを発射する想定だった。(U.S. Air Force photo)


米ソの軍事力拮抗の原動力として「相互確証破壊(Mutually Assured Destruction)」がよく挙げられるが、「航空機動実験計画」のようなコインの裏表のようなプログラムもある。このような計画や核搭載ミサイルSLAMは、ソ連が同技術を追求するのを防ぐため、あるいはソ連がその優位性を利用するのを防ぎ、核による先制攻撃を行うかもしれない懸念から、結局中止または無期限休止された。


貨物機を使うミサイル配備の構想は、1970年代後半、カーター政権が超音速重ペイロード爆撃機B-1B計画の中止を発表した後、再び浮上した。B-2の開発が機密扱いのため、米国には空からの兵器運搬能力に空白があるように見え、ボーイング社の747-200CにAGM-86空中発射巡航ミサイルを満載し、重武装機とする提案が生まれた。



ボーイング747CMCAは、空中発射巡航ミサイル70発以上を搭載する構想だった



B-52ストラトフォートレスが搭載可能な1,500マイル級のミサイルは20発程度だが、747CMCA(Cruise Missile Carrier Aircraft)提案は、72発を搭載するはずだった。同ミサイルは、あらかじめ目標データをプログラムし、機内のコマンドセンターで調整され、機体尾部付近のドアから1発ずつ連続発射される。





ラピッド・ドラゴンで貨物機が重武装機に変身するが、機体改修は不要

C-17AからのPalletized Munition Deployment Systemの標準的な貨物空輸の様子。デモ用に4パック構成で使用されている。


Rapid Dragon conducts palletized munition demonstration using production  long range cruise missile > ONE AFRL / TWO SERVICES > Newsラピッド・ドラゴン配備ボックスから発射される巡航ミサイル。 (U.S. Air Force)


747は広く運用され、生産ラインも稼働中だったため、この取り組みは有望かつ費用対効果に優れると思われた。747 CMCAはB-52の3倍近い本数の巡航ミサイルを搭載し、飛行時間あたりコストはほぼ1/3とされた。最終的にB-1Bランサーが復活し、B-2スピリットがその後に続いた。


Rapid Dragonコンセプトは、747 CMCAとまったく異なるものではない。CMCA計画と同様、ラピッド・ドラゴンは長距離空中発射巡航ミサイルを使用し、脆弱な重武装機を危険から遠ざける。巡航ミサイルも、ターゲットデータがインプットされた状態で持ち込まれるが、昨年末の飛行テストで実証されたように、ターゲットデータは飛行中に機内クルーが変更できる。


747CMCAのコンセプトが経済的に実現可能であったとしても、ラピッド・ドラゴンでは経済的効率性をさらに高める。


ラピッド・ドラゴンでは、特定の航空機を重武装機に専用改修するのではなく、C-130(ミサイル6発マガジン)またはC-17(ミサイル9発マガジン)各機に搭載できる「展開ボックス」と呼ぶパレット状の自己完結型弾薬を使用する。このモジュール式ボックスにより、配備する武器の種類と使用スペースに最大限のバリエーションを持たせ、製造コストを低く抑える。


展開ボックスは、他の空中投下用パレットと同様に積み込まれ、空中で展開するため、機体改修の必要がない。


展開の指示があれば、輸送機乗員は通常の空中投下と同じ作業を行い、パラシュートを展開し展開ボックスを安定させ、ミサイルを発射させる。準備が整うと、搭載するコントロールボックスから、AGM-158 JASSM巡航ミサイルが互いに衝突しないよう個別に放出され始める。各ミサイルは、小さな翼と制御面を展開し、エンジンを始動し、水平飛行経路に引き上げる。



illustration of airdropパレット化弾薬のCONOPS。ラピッド・ドラゴン実験では、パレット化兵器の空中投下部分に焦点が当てた。 (U.S. Air Force)


AGM-158 JASSMは、1,000ポンド弾頭を230マイル先の目標に運ぶ、全長14フィート、重量2,251ポンドの兵器として就役したが、2006年までに空軍は、同じ外寸で射程を575マイル伸ばしたJASSM-ERの試験を行った。


2021年には、AGM-158D JASSM-XRと呼ばれる巡航ミサイルの最新型の少量生産が開始された。XRは1,000マイル超の射程距離を誇り、ラピッドドラゴンのコンセプトを伸ばす。さらに、同ミサイルは1発200万ドル(約3億円)という低価格であり、探知されにくく、迎撃されにくい利点もある。


JASSM AGM -158


AGM-158シリーズには、AGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)も含まれ、ラピッドドラゴンは、広大な太平洋上で貨物機を本格的な艦船攻撃プラットフォームに変えることができる。実際、昨年12月、空軍は同プログラムの一環として、C-130からた巡航ミサイルを発射し「海上標的」に命中させたと発表している。


現在、ラピッド・ドラゴンはC-130用の6連装武器ボックスとC-17用の9連装武器ボックスに焦点を合わせているが、将来は、より多様な任務を可能にするため採用する武器の数と種類の双方を拡大する検討がすでに始まっている。これまで、MC-130J、EC-130SJ、C-17Aの3機種で実験に成功している。


装置全体を展開ボックス内に収めた結果、月曜日は施設間の貨物輸送、火曜日は敵空域をミサイルで制圧、水曜日は貨物輸送に戻るという運用が可能になった。


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C-130に搭載されたラピッドドラゴンのテスト(U.S. Air Force)


ラピッド・ドラゴンはコストも優れている


747 CMCAコンセプトのように、ラピッド・ドラゴンは、アメリカの爆撃機部隊のお株を奪うように見える。そのため、B-21レイダーとラピッド・ドラゴン双方の開発に、価値があるのかと疑問を持つ人もいるだろう。しかし、コストや大規模紛争での機体の利用可能性など、考慮すべき重要な点がある。


米空軍は現在、約75機のB-52を保有している。大型爆撃機としてB-52は、米国の戦力構造でさまざまな役割を担っており、特に米国の核三原則の空中部隊で目立つ部分となっている。


空軍は、州兵と空軍予備軍を含めると、400機以上のC-130各種と、さらに220機ほどのC-17を戦場に持ち込める。つまり、潜在的な敵は何百もの配備システムを相手にすることになり、一度に半ダース以上のミサイルを発射可能な運用手段多数が世界中に展開することになる。


編隊飛行するC-130 (U.S. Air Force photo)


B-52の飛行コストは1時間あたり7万ドル程度だが、C-130は1万ドル以下で、爆撃機では考えられない荒涼とした滑走路で運用できる。


もちろん、これらの弾薬はその他プラットフォームでも使用できるが、それこそがラピッド・ドラゴンの価値の一部だ。アメリカの既存の低運用コストの貨物機群を空爆に活用して、爆撃機や戦闘機を解放し、専用能力を必要とする別の高価値作戦に集中できるようになる。


もちろん、運用する兵器は単価100万ドル以上と決して安くないが、中国の極超音速対艦ミサイル・システムや軍艦を破壊するため使用すれば、コストが大きな価値を生む。


プラグ・アンド・プレイで可能になるのは

空軍ラピッドドラゴンのビデオからのスクリーンキャプチャ


ラピッド・ドラゴンは、敵空域内のターゲットに巡航ミサイルを発射する能力で米国を大幅に向上させるが、技術を同盟国と共有すれば、価値はさらに高まる。同盟国の能力拡大がこのプログラムで最も輝く場所の1つになるかもしれない。


C-130は世界で最も広く運用中の軍用機

で、1950年代の製造開始以来、63カ国に2,500機以上が納入されている。ラピッド・ドラゴンの配備ボックスは、事前プログラムしたり、その場で調整できるターゲットデータを使い「ロールオン・ロールオフ」できる設計なので、米国はこのシステムを同盟国に提供すれば、各国の輸送機が船舶攻撃機になる。


大規模な戦闘をコストから考える場合、低視認性の長距離巡航ミサイルを多種多様な航空機から敵の空域に大量配備できることは良いことだ。しかし、同じ能力を、ほとんど訓練を必要とせず、既存の航空機とインフラを活用しながら、地域内の同盟軍に迅速に提供する能力は、前代未聞である。中国との紛争で、日本のC-130がアメリカの空輸機と一緒に巡航ミサイルや無人機を配備することも可能となれば、戦闘用機体やミサイルや無人機の数がさらに増える


これらの兵器は、電子戦や敵の防空網制圧にも使用できる。大量の兵器を放出し防空システムの迎撃ミサイルを使い果たさせ、ラピッドドラゴンのミサイルに続くすべての同盟国の航空機に空域をより安全にすることができる。


このシステムでAGM-158C長距離対艦ミサイルを大量配備すれば、この能力はより顕著になる。同ミサイルの射程は、JASSM-ERの575マイルに匹敵する可能性がある。太平洋における中国海軍の存在は大きく、民兵や沿岸警備隊の艦船も考慮すると、米海軍を2対1以上で上回る。最新鋭の中国長距離防空システムは、約200マイル以上に対応できないため、射程500マイル以上のLRASMを満載したC-130は、太平洋の中国海軍に深刻な脅威となる。


LRASMは1個400万ドル弱と、JASSMシリーズより高価であるため、中国のアナリストは、ラピッドドラゴンは対艦戦の手段として持続可能でないとの見ている。しかし、中国の055型駆逐艦のような先進的な軍艦の建造コストと時間を考えれば、LRASMは費用対効果が高いと言えるかもしれない。


C-130 Hercules cargo aircraft successfully lands on USS Forrestal (CV-59).  November, 1963 [1200x930] : r/WarshipPorn

USSフォレスタルに海兵隊KC-130Fを着陸させたジェームズ・フラットレー (U.S. Navy photo)


そこで、伝説の海軍提督ジェームズ・フラットレーJames Flatleyが昨年筆者に語った内容に価値がある。提督はC-130を空母に着艦させた唯一の人物だが、単に着艦させただけでなく、実用的であると証明したのである。


フラットレーはC-130による空母への補給は当時は不要と思われ、海軍はその能力をポケットにしまっておいたのだ、と明言した。

興味深い話である。■

 

Rapid Dragon: Turning America's cargo planes in missile-packed arsenal ships - Sandboxx

Alex Hollings | June 28, 2022

 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.

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2022年6月24日金曜日

ウクライナ戦からこれからの空軍のあるべき姿を考察したエッセイをご紹介。

  

 

RuCrash

 

著者の一人は現役の米空軍大佐です。ウクライナ戦からこれからの空軍像を提唱していますので、このブログ読者にも参考になると思います。

 

クライナの空中戦の成功は、西側諸国で航空戦力のパラダイムを覆し、制空権より領空侵犯を重視する代替ビジョンを提供する。ロシアは世界最大かつ技術的に洗練された空軍を保有しているにもかかわらず、ウクライナで制空権を確立できなかった。西側諸国のアナリストは驚き、困惑した。しかし、困惑するのは軍事的近視眼の表れだ。


西側諸国の空軍は、イタリアのジュリオ・ドゥーエ元帥、米陸軍航空隊のビリー・ミッチェル准将、英空軍のヒュー・トレンチャード空軍大将らが示した道を今も踏襲している。航空兵力理論の創始者たちは、"command of the air"、今日のドクトリンでは "air supremacy "を獲得し、維持することを唱えた。ドゥーエは、「制空権を握るのは、自らが飛ぶ能力を保持しながら、敵の飛行を阻止すること」と提唱した。これは、アルフレッド・セイヤー・マハンAlfred Thayer Mahanの「海上の指揮(command of the sea)」を熟読しての理解で、決戦で敵艦隊を探し出し破壊することが目標だった。

 

 

一世紀経た今も、このビジョンは西側空軍のドクトリンと倫理観にしっかり根付いている。しかし、ウクライナでの空戦では、いずれの側も空を支配していないことから、制空権を獲得するより、制空権を否定する方が賢明な作戦目標となるのを示唆している。米空軍の指導層や国防アナリストは、米国が制空権を当然視することはできなくなっていると今日認識している。ウクライナ戦は、空軍が航空拒否をもっと活用すべきことを示している。

 

コーベットに航空戦力理論家として再注目

アメリカの航空戦力へのアプローチを再考する上で、識者はマハンと同時代のイギリスの海軍理論家ジュリアン・コーベット卿Sir Julian Corbettに注目すべきだ。コーベットは、海の完全支配を懐疑的にとらえ、「海戦でよくある状況は、どちらの側にも支配権がないこと」だと主張した。彼は海上指揮について絶対的ではなく相対的な解釈を主張し、時間または空間で区切られた「作業指揮」、今日の言葉で言えば「制海権」を要求した。同様に、ドゥーエ流の空の絶対的支配は望ましいものの、空軍は限定された制空権、あるいは一時的、 局地的な制空権で対応するかもしれない。

 

コーベットにとって、制海権の帰結は制海権だ。海軍が海を支配するほど強力でなくても、海を利用する相手側の能力を制限したり、否定するのは可能と主張した。コーベットはこの概念を "disputing command "と呼び、"fleet in being "と "minor counterattacks "という2つの主要方法を提示した。小規模な海軍が戦闘を回避しながらも、活動的かつ機動的であることにより、「在るがままの艦隊」として脅威を与え続ける能動的防衛を構想した。「敵の注意を絶えず引きつけることにより、敵が優勢でも支配力を行使できなくさせる」。 さらに、劣勢な海軍は、無防備な艦船を行動不能にするため、小規模な反撃やヒットアンドラン攻撃を行えるとした。

 

ウクライナ上空におけるコーベット理論の特別授業

コーベットの海軍領域における拒否戦略は、空域にも当てはまる。ウクライナは機動性と分散性を活かして、「存在する力」として防空体制を維持している。冷戦時代のソ連製移動式地対空ミサイルシステムを各種運用し、ウクライナの地上防衛軍はロシア軍機を寄せ付けず、脅威を与えてきた。長距離型のS-300ファミリー、中距離型のSA-11、短距離型のSA-8 Geckoシステムを使っている。コーベットのアドバイス通り、ウクライナの防空部隊は分散性と機動性を生かし、ミサイルを発射してすぐ発射地点から離れる「Shoot and Scoot」戦術をとっている。ある国防総省高官は、「ウクライナ軍は、短距離長距離双方の防空手段を非常に軽快に使い続けている」と結論づけた。

 

ウクライナの地対空ミサイルシステムは、無軌道車両に搭載され、一瞬で標的を捕捉できる。ウクライナ上空を飛行する危険性を考慮し、ロシアはレーダーターゲットを見つけるためスタンドオフセンサーに大きく依存し、ウクライナの機動装備を交戦する時間が長くなっている。射撃後、防衛側はレーダーを切り、荷物をまとめ森や建物など地上の散乱物に隠れるように走り去る。1991年の湾岸戦争では、米連合がイラクの移動型スカッドミサイルを狩ったが、制空権を握っていたにもかかわらず、1発も撃破できなかった。ウクライナ上空では、ロシア機が狩る側であり同時に狩られる側でもあり、発見と破壊のタスクをさらに複雑にしている。

 

その結果、ロシア軍機とウクライナ軍防空網の間で、命がけの「追いかけっこ」が展開されている。オープンソースの情報サイト「オリックス」によれば、開戦以来、ロシア軍96機が破壊され、うち少なくとも9機がスホイ Su-34、1機がSu-35(アメリカのF-15に相当)だった。ウクライナは合計250基のS-300発射装置で戦争を始めたが、11週間たっても、ロシアは少なくともオリックスが写真とビデオで確認した限りでは、24基しか破壊できていない。ウクライナ当局が損失に関する情報を慎重に管理しているのを考えると、限られた情報から結論を導き出すには注意が必要だ。しかし、最も良い証拠は、ロシアの行動そのものだろう。国防総省のある高官は、「ウクライナの防空が機能していることが分かる理由の一つは、ロシア軍がウクライナ領空に入ることを警戒し、入っても長居はしていないことがある」と述べている。

 

ロシアのジェット機や爆撃機がウクライナ領空に飛来するのは稀だが、レーダー探知を逃れるため低空飛行が一般的だ。しかし、この戦術をとると、ウクライナの対空砲や、アメリカが供与したスティンガーなど肩撃ちの携帯型防空システム数千基の射程範囲に入ることになり、別の問題が発生する。ウクライナ防衛隊は、ホームフィールドの優位性、特に地元の地形に関する深い知識を利用している。「我々は見慣れた土地に隠れているが、相手は見慣れない土地で露出している」、「私たちは罠を仕掛け、相手が最も危険な状態に反撃して、驚かせています」。

 

こうした言葉がウクライナの防空戦略を表現している。ロシア機をウクライナの防空トラップに誘い込むのだ。ウクライナ空軍報道官ユーリ・イフナットは、「ウクライナは自国の土地で活動しているため、空で効果的である」と述べている。ウクライナ空軍のユーリ・イナトYuri Ihnat報道官は、「ウクライナ空域に飛来する敵は、我々の防空システムのゾーンに飛び込んでいる」と述べている。ウクライナは制空権を確保できなくても、ロシアに制空権を渡していない。ウクライナが防空体制を維持する限り、ロシアの注意を引き続けられる。標的を定めて攻撃する脅威だけで、ロシア航空機の領空上空の活動を否定するのに十分だ。

 

 

航空戦の新時代

この点で、ウクライナの空戦は今後のルールになる可能性が高い。大国はもちろん、中堅国も米軍はじめ西側諸国の空軍が領空を支配・拒否する傾向が強まる、航空戦の将来像の一端を垣間見ているのだ。

 

高度で高機動の長距離地対空ミサイル、携帯型防空システム、滞空弾の世界的な普及に加え、ネットワーク化された無人システム、軍民両用ロボット、センサー、先端材料の進歩により、制空権争いに必要な能力がより多くの敵の手中に入るようになった。例えばイランは、戦闘用無人機、陸上攻撃用巡航ミサイル、精密誘導式短距離弾道ミサイルを、シリアのISIL、サウジの石油施設、イラクの米軍基地に投入し、成功を収めている。同様に、ナゴルノ・カラバフ紛争で、アゼルバイジャンは戦闘用ドローンに滞空弾を搭載し精密誘導砲の組み合わせでアルメニア軍を妨害し、イスラエル製のLORA弾道ミサイルを使用してアルメニアとカラバフを結ぶ橋を標的にした。このような事態を目の当たりにした中小国家は注目し、自らも同じ能力の獲得をめざすだろう。そして、従来型の有人戦闘機より低コストで効果的な精密攻撃能力を持つ空軍のロボット化の時代が到来する。

 

かつて空軍の開発と運用は、財政、組織、技術、科学のハードルによって、大国に限定されていた。しかし今日、コンピュータ・パワーのコスト低下とインターネットの世界的普及、の既存および新規技術の両用化により、安価かつ効果的なロボット航空戦力が、多数の国家に利用可能になってきた。

 

残念ながら、西側諸国は、敵の防衛力を深く攻撃するため、次世代戦闘機やステルス爆撃機など、高価で精巧な能力に固執しており、コスト曲線の間違った側にいる状況だ。ドゥーエ流の「弓矢を射る」戦略は、時間の経過で維持できなくなっている。歴代のアメリカ製戦闘機は、平均して前の機体より2.5倍以上の価格になっている。F-22ラプターは1機約250百万ドルで、65百万ドルだったF15イーグルよりほぼ400%増となった。

 

その結果、アメリカの戦闘機は高性能になったが、機数は減っている。40年近く前、元陸軍次官のノーマン・オーガスティンは、こう皮肉った。「2054年になると、国防予算で1機しか購入できなくなる。この航空機は、空軍と海軍が週3日半ずつ共有するが、閏年には海兵隊が1日余分に使えるようになる」。大国間紛争では、米国は長期間の消耗戦に勝つための優れた航空機の数を欠くことになる。

 

新しいパラダイムの模索

トーマス・クーンThomas Kuhnがその代表作『科学革命の構造』で述べたように、世界が変化すると、確立されていたパラダイム(基盤となる信念の集合)が、現実と一致しなくなる。この場合、パラダイムそのものに疑問が生じ、代替パラダイムを構築し、受け入れなければならない。有人機による制空権確保を絶対条件とする欧米の航空戦力のパラダイムが、通用しないことが多くなってきた。米空軍は、このパラダイムシフトに早急に対応しなければならない。

 

確かに、米空軍の上級幹部は何年も前から、米国が優位だった時代に享受してきた空の支配が終焉を迎えつつあると警告している。戦略・統合・要求担当副参謀長のS・クリントン・ハイノート中将 Lt. Gen. S. Clinton Hinoteは「完全かつ永続的な空の覇権という考えには大いに問題がある」と述べた。「その確立が実行可能と思えない。空軍は、ハイエンド戦で航空優勢が達成できないことを認め、代わりに「一時的な優勢な窓」、つまりコーベットの一時的かつ局所的な海の支配に相当する航空優勢を目指している。

 

これを達成するため、空軍は次世代航空優勢戦闘機プログラム(有人航空機、ドローン、その他の高度な機能の統合システム)へ投資を加速しようとしており、有人の第6世代航空機1機あたりのコストは数億ドルになると予想されている。目標は、高度な敵防空網に侵入し、敵地深くの空と地上目標を攻撃することで、制空権を獲得し、地上部隊へ近接航空支援を提供することだ。もちろん、コーベットは、敵の優れた質量に対抗する方法として、少数で、高価で、精巧な艦隊の投入は勧めていない。つまり、空軍はコーベットの教えを十分に理解していないのだ。

 

同様に、空軍の既存の作戦コンセプトや取得優先順位は、制空権の補完として、航空阻止の機能を見落としている。ハイノート中将は、空軍の課題を「いかにして紛争地域に侵入し、制空権効果を生み出すか」と定義している。しかし、紛争空域に侵入するのは課題の一部に過ぎず、最重要の課題ではないかもしれない。もう1つは、同様の優位性を敵に与えないようにすることだ。ハリー・ハレムとアイク・フライマンHarry Halem and Eyck Freymannは、「制空権がなければ、中国は台湾にほぼすべての軍事計画を実行できなくなる」と論じている。

 

空軍は、敵の A2/AD の「バブル」を破ろうと近視眼的に努力するのではなく、空における防御側の優位性を利用する方がよいだろう。空軍は、航空阻止戦略を採用することで、中国やロシアが迅速に領土を奪取し、既成事実とするのを困難かつ高価にしようとしている。これは、アメリカの航空兵力の考え方でパラダイムシフトを求めるものである。

 

速く変化しなければ敗退となる

米空軍は、2つの方法でこのパラダイム変化に対応する必要がある。まず、航空戦力の戦略とドクトリンの「開口部を開く」ことで、ロボット化した空軍と精密打撃能力の成長と普及を認識し、それに対応する。ここで空軍は、航空阻止を航空優勢任務と対等の立場に置かなければならない。そのため、無人化・自律化システムと、安価な小型無人機数千機を用いた大群戦術への移行をもっと迅速に行う必要がある。これは空軍が好む少数精鋭のハイエンド戦闘機や爆撃機からの移行を意味する。このため、戦闘機パイロットの文化や、空軍作戦は有人機が中心であるべきとする古い信念にいまだしがみついている空軍にとって、航空阻止戦略でより大きな変化が必要になる。

 

少数の大型で高価、かつ代替困難な有人機材ではなく、有人機と小型安価な無人機やミサイル多数を混合することが、航空阻止戦略に必要だ。この戦略で、敵の空爆やミサイル攻撃を受けても生き残り、空域を維持できるようにする。無人システムの価格が有人航空機の数分の一であり、高度な製造技術によってコストと生産速度がさらに削減できれば大量生産が可能となる。フランク・ケンドール空軍長官もこの現実を認め、「手頃な規模の空軍を持つには、低コストプラットフォームを導入しなければならない」と述べている。長官は、低コスト無人プラットフォームと、高価な有人飛行機を組み合わせ、一人のパイロットで無人機複数をコントロールする提案をしている。米空軍はさらに踏み込んで、無人システムに、忠実なウィングマン以上の役割を与える必要がある。

 

最後に、新しいパラダイムを受け入れるには、空軍の役割と任務に関するキーウェスト協定の見直しが必要だ。特に、ペイトリオットミサイルや高高度防衛ミサイルのようなシステムの所有権と同様に、どの軍が防空に責任を持つべきかを再考すべきだ。空軍が航空優勢と攻撃任務を優先し続ける理由の1つは、官僚的な政治で、他軍が航空防衛で主要な責任を負っていることだ。航空管制の将来における防空と拒否の中心性を考えると、空軍は領空拒否ではなく、地上部隊の防御に焦点を当てるべきだ。その代わり、空軍はコストと効果の計算の変化に無頓着なまま、長距離侵入任務を遂行するため少数かつ精巧な能力の機材を導入し続けることになる。ドゥーエのパラダイムに固執したい衝動は強いかもしれないが、航空戦の未来は領空拒否にある。■


In Denial About Denial: Why Ukraine's Air Success Should Worry the West - War on the Rocks

MAXIMILIAN K. BREMER AND KELLY A. GRIECO

JUNE 15, 2022

 

Maximilian K. Bremer is a U.S. Air Force colonel and the director of the Special Programs Division at Air Mobility Command. The opinions expressed here are his own and do not reflect the views of the Department of Defense and/or the U.S. Air Force.

Kelly A. Grieco (@ka_grieco) is a resident senior fellow with the New American Engagement Initiative at the Atlantic Council’s Scowcroft Center for Strategy and Security.


2022年4月2日土曜日

F-22のほぼ2割が2023年に供用を終了。米空軍2023年度予算要求の背景。NGADは順調に開発が進んでいる模様。

retire f-22ラプターの退役はまだ始まっていないが、残された時間は減りつつある。 (U.S. Air Force Photo by Staff Sgt. Kaylee Dubois)


ンタゴンは先週2023年度予算要求を発表し、ロッキード・マーティンF-22ラプター30機超の供用終了が目立つ。同機は現時点で最高性能の制空戦闘機と言われる。米国は同機生産を186機で終了し全機が引き渡し済みなので、今回の削減でラプターのほぼ2割が姿を消すことになる。


F-22は航空優勢確保に特化し生まれた機体で米国の競合相手が有する高性能戦闘機の打破をめざしたものだ。第5世代戦闘機としては最古の存在となっているが、高性能、センサー有効範囲、極めて低い視認性により今日の制空戦闘機のベンチマークとなっている。


F-22は航空戦闘で今も優位性をほこるものの、空軍は未来を展望し、あらたな制空戦闘機をシステムとして開発中だ。これが次世代制空(NGAD)事業だ。空軍は最古参のF-22計33機を用途廃止して今後8年で18億ドルを確保し、残る153機の性能改修に使う。これによりNGADに次ぐラプターの高性能を維持できる。


F-22 Raptor > Air Force > Fact Sheet Display

(U.S. Air Force photo)


F-22は世界最高峰のステルス性能を持ち、レーダー断面積(RCS)はF-35の0.0015平方メートルの10分の一とされる。F-22、F-35はともに低視認性で他国機の一歩先にあり、J-20は1980年代のF-117ナイトホーク(0.025平方メートル)程度とされ、ロシアのSu-57は0.5平方メートルとステルス性能が劣る。


言い換えれば、正面方向でのレーダーでF-22はビー玉程度、Su-57はiPad13台分の大きさに映るはずだ。


ただし、レーダー断面積は一定のままではない。F-22は正面方向でのRCSを最小限とする設計だが、角度によってはレーダー反射が増える。ただこれは、ステルス戦闘機全般で同じでF-22のみではない。とはいえ、レーダーをかいくぐり忍び込む性能でF-22がその他機種より優れていたのは事実だろう。


ステルスの威力が戦闘で実証されたのが2013年のことで、イランのF-4ファントム編隊が米MQ-1プレデターに嫌がらせをしている場面にF-22単機が接近した。F-22のケヴィン・「ショータイム」・サターフィールド中佐は探知されずに自機をイラン編隊に移動させ、相手の搭載兵装を確認したあと、機首を上げファントム編隊に並び、「もう帰投したほうがいいぜ」と告げたのだった。イランパイロットは新世代機につきまとわれていたことにはじめて気づきパニックとなった。


Yes, It's True, The F-22 Isn't In The Air Force Chief's Future Fighter Plans

(U.S. Air Force photo)


米ステルス戦闘機各機が世界最高峰の戦術機であるのは事実だが、運用経費も高いのは公然の事実だ。


F-16ファイティングファルコンは米空軍で広く使用され、第4世代で最大の成功作といわれるがフライト時間経費は$8,278で、ここに燃料費から保守整備人件費まで含む。


国防総省は2018年にF-35Aで毎時$28,455、F-22は $33,538と発表している。外部独立分析でこれを低すぎると見る向きもあるが、いずれにせよF-22が恐るべき水準の運行経費を必要とする機体であるのは確かだ。


ここまで経費が高くなった大きな理由に脆弱なレーダー波吸収塗料がある。ステルス機はレーダー波の反射だけではレーダー探知を逃れられない。そのため、機体をポリマー素材で被覆し、照射レーダー波の電磁エナジーの80%を吸収する。この素材によりステルス効果が増える一方で、熱による劣化に非常に弱い。超音速飛行で機体は高熱にさらされる。補修は手間がかかる作業でF-22はこの問題に終始悩まされてきた。


retire f-22 (U.S. Air Force photo by Christian Turner)


米空軍にはF-22を当初750機と大量導入し、さらに戦闘爆撃機型FB-22まで150機調達する構想もあった。だが、2006年に国防の優先事項が超大国相手の戦いから対テロ戦に移り、ステルスに頼る制空機能のみが売り物の戦闘機の出番が減ったため、F-22生産は186機で打ち切りとなり、生産設備等はF-35へ転用された。


とはいえF-22の186機の意味を理解する必要がある。戦闘機生産は段階を追って進展し、これをブロックと呼び、各ブロックで改良点や調整が行われる。ロッキード・マーティンはブロック20仕様の36機をまず納入したが、戦闘装備は完全ではなく、訓練用途に適合していた。その後、ブロック30、ブロック35で戦闘投入可能なF-22が製造された。


その後少なくとも4機喪失したが、残る機材も老朽化もすすみ、実戦投入可能な機体は更に少なくなった。ブロック20の訓練用ラプターを実戦対応仕様に改装する案もあったが、費用があまりにも高額になり合理性がないと判断された。


そこでブロック20機材を退役させ、浮いた経費で戦闘仕様機を改良する。ということは、戦闘仕様機材も訓練に投入して機体の摩耗疲労が増え、飛行時間も消費することになる。


F-22の設計寿命は8千時間で、近代化改修で倍増されたといわれるが、そもそも残る機数がここまで減ると各機に残る時間も減りそうだ。


そうなると、実弾を一回も発射しないまま退役するラプターが生まれそうだ。高額な予算を投じた機体なので失策に聞こえるが、実は勝利と言える。F-22のような高度装備品は競合相手への抑止効果をねらったもので、F-22の勝利とは第三次大戦で航空戦闘を展開することではなく、そもそも開戦を防ぐことにあるためだ。


訓練用F-22の退役によりラプターの供用そのものも終了に近づく。必要な訓練用フライト時間を残る機材にふりむけるためだ。だが同機供用が終わっても米国の航空優勢確保機材の今後には明るい未来がある。


米空軍でドッグファイトや航空優勢を確保する次の機材がNGADでラプターの優位性を引き継ぎ、一機種ではなく各種用途に応じた多様な機種構成となり、有人操縦のステルス戦闘機以外に無人機も生まれる。無人型機でセンサー有効範囲が広がり、モジュラー式のペイロードを採用し、有人機を護衛する無人機も生まれる。■


Why the Air Force wants to retire nearly 1/5 of its F-22 fleet - Sandboxx

Alex Hollings | April 1, 2022

 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.