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2017年7月9日日曜日

米本土ミサイル防衛のシミュレーションをノースロップ・グラマンが公開



We Ran a Simulated ICBM Attack on the United States to Find Out: Could We Stop One?

米本土へのICBM攻撃シミュレーションを視察して:攻撃阻止は可能なのか


Jul 06 2017
By Tom Demerly

 

  1. ノースロップ・グラマン社の弾道ミサイル防衛技術実証の実情を見る機会を得た。
  2. 将来のいつか、外交手段で解決できなくなったとの想定だ。米海軍艦船が某敵対国家の潜水艦と衝突した。米空軍偵察監視機材が国際空域ぎりぎりの地点で攻撃を受ける。ならず者国家は弾道ミサイルテストを続ける。
  3. 宇宙軍団の監視衛星がミサイル発射を探知したのは現地時間0234時、標準時1734GMT、サンフランシスコは日曜日午前10:34のことだった。
  4. 早期警戒監視の画面が無音で赤く点滅する。赤い円弧が囲む。速度、高度などデータが自動表示される。海上配備レーダーから情報が入る。もっと多くのデータが利用可能となる。軌道、加速度、最高高度、再突入地点、大気圏内減速が判明する。そこからミサイルの推定命中地点を割り出す。
ミサイル発射の瞬間 (credit: Northrop Grumman)

  1. 記者は椅子に座りICBMが米本土西海岸に向かう様子を見ていた。ミサイルは最高地点に達し、攻撃の最終段階に入る。変化が早い。見ていて汗が出た。実にリアルだ。ミサイルが目標に向かい高度を下げると減速するが、それでも相当の高速だ。
  2. 米本土がならず者国家が発射したICBMの攻撃下にある。米本土が攻撃を受けるのは第二次大戦後初の事態となる。迎撃戦が始まった。
  3. 情報機関の分析官は脅威の推定損害規模は中程度だとわかっているが、なすすべがない。弾頭は小さいようで、現在の標準から見て粗削りだ。機能しないかもしれない。誘導システムは精密ではないかもしれない。弾頭が太平洋上に落ちる、あるいはカリフォーニア州の山脈部分に落下するかもしれないし、サンフランシスコのマーケットストリートと六番街の金融地区交差点上空で爆発するかもしれない。放射性物質が市内に拡散するかは爆発高度により変わる。あるいは不発かもしれない。
  4. だがそれが今回の攻撃の主要ポイントではない。大事なのはならず者国家が米政府に意思を明確に伝えていることだ。そちらに到達できるぞ。攻撃の意思があるぞ。もはや安全ではないぞ。
  5. 本誌The Aviationistはノースロップグラマン社の厳重な保安体制施設で米本土の弾道ミサイル防衛の現状と将来の姿を知る機会を得た。そこで見たのはアジア大陸の某所から打ち上げられたICBMを迎撃するという背筋の凍る思いの演習だった。(編集部注 ノースロップ・グラマン社要請で敵性国家の国名を具体的に示さないことで了承した。
  6. ノースロップ・グラマンのケン・トドロフ(グローバル防空ミサイル防衛部長)が本誌に語った。「これは文字通りロケット科学の世界です」
  7. トドロフはICBM発射シミュレーションを統括し、ノースロップ・グラマン製造の弾道ミサイル防衛システムズを使った。同社の地上配備中間軌道防衛(GMD)システムへ新規技術が投入されている。一部はまだ運用が始まっていないが、ICBM防衛には不可欠の技術要素だ。脅威を与えるならず者国家が太平洋地区の国だとすればノースロップ・グラマンの新技術は単に重要だけでなく本国防衛に不可欠だ。
  8. GMDのような装備がなければわが西海岸は歴史上はじめてICBM核攻撃にさらされる。
  9. 各種センサーからのデータが洪水のように入り、ICBMの追尾状況がわかる。部屋全体ほどの幅がある大型画面でミサイルを追尾する。個別画面でも同じ状況がわかる。不気味なほど静かだ。
ICBMによる米西海岸攻撃シミュレーションの画面 (credit: TheAviationist.)

  1. 「地上配備迎撃ミサイル発射。アラスカ、フォート・グリーリーから」とシステム操作員が告げる。上昇中の迎撃ミサイルの軌跡が画面に現れる。弧を描き加速しているのがわかり、飛来するICBMの降下軌道に重なっていく。
  2. 「地上配備迎撃ミサイル発射、カリフォーニア、ヴァンデンバーグ空軍基地」と二番目の軌跡が画面に現れた。米西海岸からの発射だ。米ミサイル二発が今空中にあり、ノースロップ・グラマンの新技術により迎撃データと標的情報が混合され中間段階での迎撃データを出していく。
  3. いろいろな線が音もなく合流し明るい照明の「Y」字形が画面にあらわれる。別の画面ではICBMが下降に入る弧を描き、迎撃ミサイルも弧を作り迎撃に向かう。
  4. 「大気圏外で弾丸に命中させるようなものです」とトドロフが説明する。ミサイル三本の軌跡が巨大画面で合流する。今命中させようとしている発射体は時速1万マイルだが大きさはゴミ箱くらいだ。
  5. ICBMの飛翔には四段階ある。発射打ち上げ段階が迎撃上で一番難しいが、発射地点を探知できる。上昇段階はイージス戦闘システムで探知されやすくRIM-156やRIM-174スタンダードミサイルを艦船あるいは地上施設から発射して対応する。三番目が「中間段階」でICBMを大気圏外でTHAADミサイルあるいは現在開発中の別装備で迎撃する。
  6. 目の前の巨大ディスプレイでいろいろな線が合流してきた。
  7. 太平洋東側のカリフォーニア州上空の大きな「Y」字がはっきりしてきた。音はまったくなく、三本のミサイルを示す記号が消える。迎撃が成功した。ノースロップ・グラマンの新技術を使って太平洋上空でICBMを破壊し、米本土は無傷だった。
ミサイル発射シミュレーションでICBMの追尾の詳細画面 (credit: The Aviationist)

  1. その後、地上配備中間軌道迎撃(GMD)による2017年5月30日の弾道ミサイル迎撃実証実験の成功例の実際の映像を観た。地上配備迎撃ミサイルはヴァンデンバーグ空軍基地(カリフォーニア)から発射され、「対ミサイル」ミサイルは大気圏外命中発射体が搭載されていた。迎撃に成功し、模擬ICBM(太平洋ケジェリン礁から発射)を破壊した。再突入段階の高高度で直撃した。この実証は弾道ミサイル防衛システムの成功例とされている。
  2. ノースロップ・グラマンのミサイル防衛体制への貢献度は大きい。2017年初めにケン・トドロフは報道陣に「議会各位には脅威が増大する中で本土防衛を実現する難題がのしかかっている。国防予算が減少気味の現在、本土を現実の脅威、増大する脅威から守る手段となる『槍先』の整備に最高優先度をつけるのが重要ではないでしょうか」と述べていた。
  3. 現実の見出しから太平洋地区から発射されるICBM脅威は現実になったのがわかる。ミサイル防衛体制の整備は米国の最優先課題と言ってよい。■
Note: The Aviationist.com wishes to thank Lauren A. Green, Manager, Branding and External Communications for Northrop Grumman Mission Systems and the entire team at Northrop Grumman for their kind assistance with this article.

2016年6月21日火曜日

オーランド大量殺人事件後にISIS作戦をどう進めるべきか



 The Global War on ISIS After Orlando

Image: “An Iraqi School of Infantry instructor instructs an Iraqi soldier from 2nd Brigade, 7th Iraqi Army Division on how to fire a Pulemyot Kalashnikov Machine Gun (PKM) in the Iraqi School of Infantry at Al Asad, Iraq, March 19. (U.S. Marine Corps photo by Cpl. Shane S. Keller)”
“An Iraqi School of Infantry instructor instructs an Iraqi soldier from 2nd Brigade, 7th Iraqi Army Division on how to fire a Pulemyot Kalashnikov Machine Gun (PKM) in the Iraqi School of Infantry at Al Asad, Iraq, March 19. (U.S. Marine Corps photo by Cpl. Shane S. Keller)”


今こそ戦いを熾烈かつ賢く進めるべき時だ。

June 16, 2016

フロリダ州オーランドで6月12日発生した悲劇を受けて、米国は全世界でISIS打倒を進める総合戦略の重圧をかけるべきだが、今後発生する攻撃をすべて確実に予防できないのは確かである。ISISは成功事例を新たな戦闘員の勧誘に利用してきた実績があり、英雄的行為と持ち上げ関心を引く傾向でも知られている。アメリカは封じ込め戦略あるいは無視を決め込む戦略ではISISの崩壊は期待できず、今回の事態を受けてこちら側の力を結集して強力な敵の脅威に国家として挑むべきなのである。
ISISが米国で能力以上の成果を上げている、あるいは犯人オマール・マティーンはISIS戦闘員以上に精神を病んでいるという向きがあり、イラクやシリアで米軍はじめ連合軍が着実に成果を示していることからISISが早期に崩壊すると見る向きもある。いずれも説得力はない。マティーン容疑者が米国史上最悪の単独犯だとしても別の犯行が簡単に繰り返されるはずで、射撃訓練を受けAR-15のような武器を入手すればいいだけの話だ。マティーンは精神を病んでいたのだろうが、同時にISISに刺激を受けた勢力に動かされ、憎悪の教えをそのまま受け止め、イスラム教を曲解して大量殺人を正当化したといえる。おそらく同様の事件は再発するだろう。

イラク軍、米および連合国の空軍力、クルド人戦闘部隊、スンニ派部族やシーア派はイラクで40パーセント、シリアでも20パーセントの領土をISISから奪回している。ISISはこの二国での収入源の半分を失っただろう。だがラッカ、モスルの二大都市はまだISISの手にある。また一昨年からISISはシナイ半島からリビアまで活動範囲を広げ、拠点をアゼルバイジャンからアフガニスタンにまで設け、さらに東南アジアも視野に入れ、ナイジェリアではボコハラム運動と連携している。打倒は可能だろうが、簡単ではないし完全に消滅しないだろう。

オバマ大統領の主導で66カ国の有志連合がISIS対抗勢力として生まれ次の五つの戦略方針を2014年以来維持している。
--軍事作戦
-- 外国人戦闘員対策
--財政対策
--逆宣伝活動
--地域内安定の実現

イラクとシリアで成果も生まれており、両国への外国人戦闘員の流入は今年は大幅に減っている。ただし一部がリビアに流れているのは残念だ。だがリビアでも新しく生まれた連立政権がISISをスルトから放逐しつつあるとの朗報がある。
つまり一部作戦で停滞が見られるものの再強化に時間を使っているといえる。国別状況は以下の通りだ。

イラク 政府軍が突破口を開きつつあるが、平和回復には時間がかかり、最大の懸念はモスルをISISから奪還しても有効に統治できるかだ。イラク政府には米国の力を増強して平和と安定を実現できる勢力を作る必要があり、ISISに似た集団の出現は早期に刈り取る必要がある。このため援助を拡大し、米国の支援内容を強化する必要があるが、イラクが石油でどれけ収入を得られるかにかかってくる。ただし原油価格の低下傾向がどこまで続くかも考慮すべき要素だ。

シリア 当地の政治戦略は完璧とは言えない。平和交渉は停滞し、アサド大統領が盛り返しているのはロシアの支援があるからだ。こちら側は政治目標の水準をを下げるべきだ。連合のしくみで少数集団の保護を図るのが成功のめやすとして妥当だろう。クルド人のみならずアラブ中道集団も援助していくべきである。また援助対象の基準を緩和しつつ米軍による訓練や装備提供を増強する。安全地帯を爆撃するシリア政府軍機への報復行動は有効策だろう。

リビア 連立政権がこれから生まれる想定の中、西側は大幅な援助とリビア軍向け訓練の体制を今から準備しておくべきで、ISISが占拠したままの中部沿岸地方を奪還する。

ナイジェリア ムハマドゥ・ブハリ大統領の汚職対策が効果を示しつつある中、今こそ米国の援助を拡大すべきで、ナイジェリアの要請が前提だが、小規模顧問団を送り、同国陸軍のボコハラム戦を手助けすべきだ。

アフガニスタン オバマ大統領は米軍削減をこれ以上行うべきではない。現地指揮官には柔軟に指揮命令権限を与えタリバンへの空爆を進めるべきだ。

米本土 ISISは三つの頭を持つ怪物だ。胴体はイラク・シリアにあり、その周辺各地がある一方で、グローバルネットワークで各地を結んでいる。このネットワーク対策を国内外で強化すべきだ。このネットワークから国内襲撃事件が発生するからだ。このためFBIは疑わしい国内テロリストや武器の所在を的確に捜査すべきだ。海外でもISISのグローバルネットワークを容赦なく遮断する。ここで米国が対ISISグローバル連合でリーダーシップを迅速に発揮する必要ある。スマートフォンの暗号化技術のため捜査が困難になっているが、ネットワーク監視を強化し執拗に捜査すれば司法機能と情報機関の融合につながり、容疑者へ迅速に対応し犯行の未然防止が可能なはずだ。ニューヨーク、ロンドン、また最近パリでこの方法の実施が見られるが、まだ一般化されていない。実施のためには一層強いリーダーシップがアメリカに必要になるだろう。

各対策は大規模にならず、組み合わせて実施しても同様だが、米側は人員数千名規模を追加する必要があり、少なくとも数十億ドルの年間追加予算が必要となる。ISISの三つの頭をそれぞれ攻撃し徹底的に撃つべきだ。これまでのISIS対策はそこそこの成果しか出ていないが、今こそ大幅に活動を強化し次の大惨事を招く攻撃を事前に防止すべき時なのだ。

本記事の著者ジョン・アレンとマイケル・オハンロンはともにブルッキングス研究所の上席研究員。