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2016年1月10日日曜日

機密漏洩を防ぐには秘匿扱いの拡大しかないのか

要は中国のハッキングへ効果的な対策がないということでしょう。もともとインターネットは情報の共有を目指しているので、確かに専門家の指摘どおり逆行する効果になるのかもしれませんが、当局としては打てる手がないのでしょうね。

「Defense News」の画像検索結果Fearful of Hacks, Pentagon Considers More Classified Programs

By Aaron Mehta 3:04 p.m. EST January 9, 2016

Frank Kendall
(Photo: JIM WATSON/AFP/Getty Images)

WASHINGTON —.ペンタゴンは昨年10月27日に長距離打撃爆撃機LRS-B事業の契約を交付しているが、機体の詳細性能はおろか主契約企業ノースロップ・グラマンの下請け企業名も非公開だ。空軍調達部門の責任者アーノルド・バンチ中将は詳細を秘匿するのは「情報管理であり保安対策のため」とその時点で発言していた。
  1. 今度は国防総省の調達部門トップ・フランク・ケンドール副長官が今後は秘匿扱いが当たり前になると指摘している。.
  2. ケンドールは「国防総省は関連情報の保護確立を強化する方向に向かう」と発言し、情報公開を制限し、極秘扱いとなる事業が増えるとの見込みを示した。その背景には米国の情報が盗まれると、米国自体がその結果として脅威を受ける恐れがある。
  3. 「敵に多くの情報が流れれば、それだけ攻撃の効果が増強されるのでこちら側の情報はいっそう保護が必要であるだけでなく、わが国が競争に負けないよう対策をすべてとる必要がある」とケンドールは発言している。
  4. 外国による米産業へのハッキング、それによる技術のs盗み取りは例に枚挙なく、なかでも最悪なのが2011年にロッキード・マーティンのデータが盗まれた事件で、中国はF-35のコピーそのもののJF-31を発表している。またく同社の米空軍向け三次元現地展開型長距離レーダー (3DELRR) のコピーも中国から登場している。。
  5. ペンタゴンはすでに保安手続きを産業界各社向けに強化しているが、その実施は迅速とは言いがたく、決定的な効果が生まれるかは不明だ。.
  6. 「効果が出てこないのならもっと厳しい対策で情報を守らないといけない」とケンドールは言う。
  7. その後ケンドールは契約下請け企業の弱点を懸念すると述べている。「最新の設計ツールを各社がリンクし、データベースが生まれるが外部侵入は比較的容易だ」
  8. これに対し専門家三名もペンタゴンの方向性は正しいとしながら、秘匿扱いをさらに増やすことが保安体制の強化になるのか疑問に感じている。
  9. 新しいアメリカの安全保障を考えるセンターのベン・フィッツジェラルドにいわせれば協力企業名や事業の詳細を秘匿扱いすることがハッキングの防止につながるのか疑問だとする。
  10. 「議論が真剣であることには疑う余地がないが、これが21世紀の保安体制として正しいのか。過去は秘密扱いにすればだれにも知られなかったが、現在はうわべを取り繕うだけの効果しかない」
  11. レベッカ・グラントは空軍勤務を経てIRISリサーチを主宰しているが、より多くの事業を秘匿圧かにすることで問題は解決しないとの見方で共通している。さらに財政負担の要素も付け加える。”
  12. 「、過剰に秘密扱いにすれば打ち合わせの実施でさえ困難になる。秘密対象の施設や出費が増えるとコスト上昇の要因になるが各事業はなるべく安上がりにしようとしているのが実態だ」
  13. スティーブン・ブライエンはレーガン政権時代にペンタゴンの技術政策を取りまとめていたが、「これは大問題だ。実施すれば一部の人員しか接することができず、問題になる」という。
  14. 「アクセス許可の発行だけでも時間がかかる。また関係者はアクセス許可を事前に取得する必要があり手続き上は悪夢となる」.
  15. 保安体制の課題としてフィッツジェラルドは関係企業の数が減っているため敵国もねらう対象が限定されていることにつながっていると指摘。
  16. LRS-Bが例となる。ペンタゴンはエンジンメーカー名を保安上の理由から公表していないが、軍用エンジンの在米メーカーは三社しかない。GEエイビエーションロールス=ロイスプラット&ホイットニーだ。
  17. このうちDefense NewsはGEエイビエーションはエンジン製造に当たっていないことを確認済みでロールスはもともと英国企業のため可能性は低い。そうなるとプラットが協力企業である顔脳性が高い。だがメーカーの数が少ないことからハッカーの側は広くネットを監視し、米国内でのエンジン供給体制として三社すべてにあたればよい。
  18. 「これでは保安体制が強化されるとはいいがたく、三社の保安措置を効果的にするためには口を閉ざし、『しゃべるな』というしか方法はない」とグラントは指摘し、問題の深さを言及した。
  19. 「どこからはじめたらよいのか。各企業も防衛部門の仕事をしていると口外できなくなるのか。まったくばかげた話だ」とグラントは述べ、「DoDが協力企業名を公表しないからといって機体設計の秘匿が万全になるわけでもあるまい。いささか見当はずれではないか。また悪い流れを作ることになると思う」■

2014年1月4日土曜日

このままでは米国製軍用機に未来はない

2014年最初の投稿は暗い内容です。これまでの軍用機開発生産の慣行は維持できない所まで来ているのでしょうね。コストを重視して管理した挙句がF-35のような西側国防体制を内部から崩壊させかねない機体しか出現していないのは嘆かわしいことですが、一方で記事が提言する産業基盤の維持という観点が出てきたのは歓迎すべきでしょう。日本はこの考え方でこれまでずっと高い価格を負担してきたのですがね。また単一国での本格開発は困難になってきたので、国際協力、共同開発がこれからの方向でしょうか。F-35の唯一の功績はこの体制づくりの基礎を作ったことと後世では記憶されるでしょうね。日本の産業基盤が役に立つ時代がやってきそうです。ご関心の向きはF-3、F-X、F/A-XXで検索して過去の記事を御覧ください。


Opinion: U.S. Military Aircraft Fly Toward A Waterfall

By Richard Aboulafia
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com December 30, 2013

1990年代の防衛産業合併ブームは冷戦終結による生産能力過剰の解決が目的だった。ただ完全に生産が終了したのはグラマンF-14とノースロップB-2だけで、大部分の機種は性能改修や輸出でラインを維持した。
  1. これからの苦境を予感させる動きが出てきた。9月にはボーイングがC-17ラインを2015年で閉鎖と発表。その一ヶ月後に韓国がボーイングF-15をF-X 3選定で落選としサイレントイーグルの将来がなくなり、同機ラインは2018年で閉鎖に追い込まれる。12月にはボーイングF/A-18E/FがブラジルのFX-2選定に漏れ、同社の国際営業で大きな敗退となった。一度は確実だった海軍によるスーパーホーネット36機追加発注がすぐに取消になっている。これで同機の最終号機納入は2016年となり、ボーイングは今年3月にも同機生産ラインを自社費用で維持すべきか決断する。
  2. ボーイングだけではない。ロッキード・マーティンも昨年でF-22全機を納入しており、F-16生産も2017年で終了する。ビーチクラフトのT-6最終機の引き渡しは2016年予定で、ベル・ボーイングV-22は追加受注がないと2020年で終わりそうだ。回転翼機の生産ラインは健在だが、2011年から18年の発注機数は半減している。
  3. これで米国に残るまともな固定翼軍用機生産ラインはわずか2つになる。両方ともロッキード・マーティンでF-35とC-130Jがそれ。ボーイングが生産を続けるのはKC-46とP-8だが後者は2020年ごろで終了する予定。
  4. 開発中の新型機はわずか。空軍のT-X次期練習機には既存機種を流用して開発をはやめるとはいえ2010年台には姿をあらわさない。長距離打撃爆撃機の開発は始まっ
  5. たが生産は早くても2025年開始だろう。
  6. C-130Jは空軍、特殊作戦司令部、海兵隊、輸出需要があり例外的に安定しているとはいえ、削減をかろうじて逃れたに過ぎない。わずか8年前に国防総省は同機の生産ラインを閉鎖しようとした。仮にこの通り実施していたら旧型C-130の機齢が40年を越える中で交替機材がなくなるところだった。.
  7. 米国はアジア重視の部隊再配備を実施中で、これまでにまして長距離戦略空輸能力が必要なのに唯一の戦略輸送機C-17の生産を止めようとしている。海軍内部にスーパーホーネット生産を継続したい向きがあるのもF-35Cの空母運用能力が実証されていないためだ。
  8. 国防予算の状況が厳しいことから、今後も1ないし2機種の継続が精一杯だろう。ただし、航空機開発の進め方を米国が変更する可能性が出てきた。現状では開発含む全体計画はいかにしたら早く実現できるかを目的にしている。各軍は予算さえ管理できれば報酬を与える仕組みを作っており、生産量を増やすことで単価を下げることに注力している。各企業にとっても売上を伸ばし利益を確保することが励みとなり、各議員には地元選挙区に雇用を持ってくることが目標となっている。
  9. たしかに理解できる理由付けではあるものの、各関係者は産業基盤の保存という観点を無視している。むしろ単価はわずかでも上げて各機の事業をより長く維持できるようにすべきである。年48機生産を10年間続ける代わりに36機生産を13年間続ければいいではないか。輸出需要を生産量増加の口実にするのではなく、国内需要の補完に使えばいい。
  10. 産業基盤を重視する考え方に今からでも切り替えれば、今後に良い結果を生むだろうが、とりあえず現時点では工場閉鎖や数千人単位の解雇が目に入るだけで、国防資産の消失につながる。冷戦後の軍用機生産の真の意味の精算が不気味に迫っている。■