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2023年12月18日月曜日

英海軍にF-35Bで飛行隊が復活、ただし同型機の導入に関し疑問が残ったまま大きな決断を迫られそうだ

 


英海軍は空母2隻を建造ずみで、F-35Bを運用する想定で31機をすでに受領しており、74機までの調達を想定しています。ただし、ここに来て費用対効果を考え疑問が生じてきたようです。空母運用部隊は空軍との混成部隊あるいは米海兵隊の運用まで構想があるようですが、どうなるのでしょう。Warrior Maven記事からのご紹介です。


An F-35B from No. 617 Squadron conducting carrier qualifications on HMS <em>Queen Elizabeth</em>. <em>Crown Copyright</em>

An F-35B from No. 617 Squadron conducting carrier qualifications on HMS Queen Elizabeth. Crown Copyright





海軍のF-35B部隊は2番目の最前線部隊となったが、どの型式を追加購入すべきかという今後の計画は宙に浮いたままだ。


英国のF-35B統合打撃戦闘機が、英海軍の飛行隊によって初めて運用され、最終的には英国空軍の飛行隊と一緒に空母に搭載されることになる。イギリスが実際にF-35Bを何機購入するのかという疑問が続く中、このマイルストーンは長い間待ち望まれていたものであり、完全な運用能力(両飛行中隊が同時展開できるようになること)は2025年まで待たなければならない。

 イギリス海軍の809海軍航空隊(NAS)は本日、イギリス東部ノーフォークのマーハム空軍基地でF-35Bとともに再就役した。「不滅」をモットーに活動するこの部隊は、ライトニング部隊で2番目の最前線F-35B飛行隊である。イギリス空軍の「ダムバスターズ」こと第617飛行隊と同様、イギリス海軍とイギリス空軍によって共同運用され、最終的にはクイーン・エリザベス級空母2隻に短距離離陸・垂直着陸(STOVL)ジェット機を搭載する。

 F-35Bを飛行させる他の2つの英国部隊は、運用訓練のためにマーハム空軍基地にある第207飛行隊と、F-35Bの運用試験と評価を行うカリフォーニア州エドワーズ空軍基地に駐留する第17飛行隊が任務を担っている。米国を拠点とするF-35のテスト活動は、最近、オーストラリアと英国が参加し、連合作戦テストチーム(UOTT)は、ブロック4バージョンのテストと評価だけでなく、目視範囲を超える空対空ミサイル「メテオ」のような米国以外の兵器のテストと評価も行っている。

 809 NASは1941年に設立され、当初はフェアリー・フルマーを使用していたが、第二次世界大戦終結前にスーパーマリン・シーファイアーで再装備した。戦後、同飛行隊はデ・ハビランド・シーホーネットと同じ会社のシーヴェノムを飛行させた後、ブラックバーン・バッカニア空母攻撃機を受領した。同飛行隊は、フォークランド紛争で実戦投入されたSTOVLシーハリアーで復帰する前に、1978年に英国の正規空母運用の終了とともに解隊し、1982年12月以来、休眠状態にあった。

 2022年9月、英国国防省は809NASが「2023年第2四半期に立ち上がる予定」であり、2025年の完全運用能力(FOC)につながると発表した。しかし、このスケジュールの一部がずれたことが確認された。飛行隊の再就役は2023年末になるが、FOCは2025年と予測されている。

 FOCが達成されれば、英国のライトニング部隊は2個飛行隊を同時に運用配備できるようになる。これは重要な能力だが、大きなコストがかかり、F-35Bフリートの将来の規模について長年の懸念がある。

 今年5月1日現在、イギリスは31機のF-35Bを受領しているが、そのうちの1機は2021年に地中海での離陸事故で失われ、将来の発注で代替される予定だ。この31機は、「トランシェ1」と呼ばれる48機の初期発注の一部であり、2025年末までに最後の1機が引き渡される予定だ。

 英国国防省は、2015年の戦略的防衛・安全保障見直し(SDSR)で示されたF-35Bの138機保有を目標に掲げていた。しかし、それ以来、予算上の懸念で再考されたようだ。

 これまでのところ、英国国防省は27機のTranche 2を発注する計画を確認している。下院委員会向けに作成された報告書には、次のように記されている:「F-35フリートの最終的な規模、作戦展開、帰属に関する計画についてはあいまいなままであり、プログラムのコストと兵力増加率について継続的な懸念がある」。

 同じ報告書によれば、イギリス空軍の現在の戦闘機隊は「高い能力」を提供している。F-35Bは最高級の能力を備えているかもしれないが、部隊は全体的に兵力の深みを欠いており、消耗を想定した予備機材も不十分である。例えばロシアと戦う紛争の想定で問題となるだろう。約100機が就役しているマルチロール戦闘機タイフーンの初期バージョンを退役させる計画もあり、問題は悪化の一途をたどるだろう。


 国防委員会の報告書は、F-35の追加購入を確約することが、同委員会が「戦闘機不足」と表現する問題に対処する最善の方法である可能性を示唆している。第6世代戦闘機であるテンペストを待ったり、第4世代戦闘機であるタイフーンを買い足しするよりも、F-35なら今すぐにでも入手可能である。


 英国国防省は、現在想定されている74機以外にもF-35を購入する可能性があることに変わりはないが、決定はこの10年の半ば頃になりそうだと述べている。その後、同省は検討するとし、「...将来の作戦環境、敵対しそうな相手の能力、戦闘方法をどのように進化させるか、クイーン・エリザベス空母の耐用年数を通じて計画された戦力要素を維持するために必要な航空機の数。さらに、グローバル・コンバット・エア・プログラムの開発、有人航空機が付加的な能力や無人プラットフォームでどのように運用される可能性があるか、これらすべてがどのようにデジタルで接続される可能性があるか、といった要素も含まれる」。


 しかし、F-35の追加購入は、戦闘機数問題の一部を完成させるにすぎない。また、現在の納入率でも戦力の増強には問題がある。特に、機体を実際に飛行させるための整備員が不足しているのだ。

 F-35の買い増しに関する疑問は、必然的に統合打撃戦闘機の機種の問題につながる。これまでのところ、イギリスは2隻の空母から運用できるSTOVL型F-35Bバージョンにコミットしており、高速道路やその他の即席の滑走路からも運用できる可能性がある。トランシェ2もF-35Bで構成される。F-35Cを調達し、空母にカタパルトとアレスター・ギアを装備する以前の計画は、空母の建造中にコスト面から断念された。

 しかし、通常離着陸(CTOL)のF-35Aは、空母に配備できないことを除けば、一定の利点を提供する。決定的なのは、F-35Aは航続距離と積載量に優れていることだ。F-35Bの戦闘半径は約450海里であり、小型の武器格納庫には2000ポンド級の武器は搭載できないが、F-35Aの戦闘半径は約650海里であり、大型武器を搭載できる。


 もちろん、イギリス海軍はF-35Bが空母の運用に不可欠であることから、F-35AよりもF-35Bを常に支持しており、809NASが設立された今、それはおそらく強化されるだけだろう。

 しかし、F-35A型とF-35B型の混成部隊は、両機種が意味のある数で獲得されるのであれば、将来的にはまだ選択肢となりうる。

 英国王立サービス研究所のジャスティン・ブロンク上級研究員(航空戦力と技術担当)が言うように、「例えば、陸上ベースのF-35を2個飛行隊分購入するのであれば、A型を購入する意味がある。トランシェ2の)27機の上に16機を追加するのであれば、B型にこだわるのが理にかなっている」。


 一方、デビッド・デプトゥーラ元航空戦闘司令部計画・プログラム部長は、国防委員会で「率直に言って、現在からテンペストを導入するまでの間はF-35の購入を検討すべきだ」と述べた。

 全STOVLフリートでは、ジョイント・ライトニング・フォースをどのように運用するのがベストなのかという問題もある。

 ダン・ステンブリッジ少佐(退役)が国防委員会で語ったように、「この政治的な問題は、我々が英国で保有しているF-35は、陸上で運用できる空母搭載型航空システムなのか、それとも海上運用できる陸上搭載型システムなのかということだ。根本的に、それを決めないという選択をしている。そのため、これらのシステムを何に使うかをめぐって二重会計になってしまうのだ」。


 さらに、72機のF-35Bは、英国海軍が提供する約束をしている空母攻撃能力には十分かもしれないが、英国空軍に期待されている陸上ベースの能力を犠牲にすることになる。


 国際戦略研究所のニック・チャイルズ上級研究員(海軍・海上安全保障担当)は2020年9月、英国議会の国防委員会で、空母打撃に使える機材24機という野心を満たすには、F-35Bは48機よりも「かなり多い」数が必要だと考えていると述べた。訓練やその他の需要を考慮すると、60~70機という数字が妥当だろうとチャイルズ氏は主張する。そして、これは空母打撃のためだけであれば十分だろう。

 2021年にインド太平洋に展開するイギリス空母打撃群のためにF-35Bを追加提供したことがあるアメリカ海兵隊との共同作戦が、解決策の一部になるだろう。しかし、これは海兵隊が追加能力を持つことに依存しており、作戦環境でどのような作戦が実施されるにせよ、米政府がその参加を承認する必要がある。



 ライトニング・フォースの将来をめぐる英国の議論に長い影を落としているのは、コストだ。ロッキード・マーティンによると、2020年のF-35Bの単価は1億100万ドルで、この数字は2014年から2022年の間で32%削減されている。とはいえ、単価は依然として予測を上回っている。ブロック4 F-35の導入は、F-35ファミリーにまったく新しいレベルの能力と追加兵器を提供する。英国が適切なタイミングで発注すれば、その構成のF-35を手に入れることになる。同時に、ブロックIVの各機体のコストは、現在ラインオフしている機体に比べて大幅に上昇する。

さらに、機体単価は1つの要素に過ぎず、運用コストと比べるとあまり意味がない。特にF-35Bの維持費は、アメリカ政府も懸念している。



 英国政府が戦闘機隊の機数不足に対処するためには、近いうちに、F-35のユニークで幅広い先進的な能力を費用対効果分析で検討しなければならないだろう。同時に、F-35Aの検討は、ほぼ避けられないと思われる。

 JSFの通常型離着陸バージョンを艦隊に加えることは、イギリス海軍の支持を得られないだろう。しかし当面は、809海軍航空隊「不滅部隊」は、海軍航空の能力再生で目に見えるシンボルとなる。


Royal Navy Activates First F-35B Unit, Big Decisions On Type’s Future Loom

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED DEC 8, 2023 1:44 PM EST

THE WAR ZONE


2016年6月26日日曜日

★ブレグジット後の英国防衛政策はどうなるのか



なんといっても先週の大きな話題はBrexitで結構な差で離脱が決まりましたね。英国内ではまだ動揺が続いているようですが、英国はNATO脱退まで決めたわけではありません。それでも経済パフォーマンスが落ちることを前提に早くも国防力縮小の議論が発生しているようです。これを機会にロシアが勢力を伸ばすことは許容できませんので、欧州特に西欧の防衛面の結束はますます必要で、EUがだめでもNATOは一層重要性を増してくるでしょう。その中で日本のNATO加盟(NATOの改組が当然必要です)もそのうち議題に上るのではないでしょうか。週明けの金融界は大変でしょうが、経済論理より正当な扱いを受けていないと感じる政治感情の方が強いことが証明された事件で、これから世界は大きく変わるのではと見ています。

After the Brexit, What's Next for Defense?

Andrew Chuter12:10 p.m. EDT June 24, 2016
TOPSHOT-BRITAIN-EU-VOTE-BREXIT(Photo: LEON NEAL, AFP/Getty Images)

英国は未知の世界に突入した。国民投票でEU離脱が決まるとアナリスト、関係者それぞれが国防関連の影響を憂慮し始めた。
  1. 直近の影響は政治面ですでに現れており国防支持派の首相ディヴィッド・キャメロンが辞任を発表し10月までに退陣する。
  2. ジョージ・オズボーン蔵相も辞任と見られる。オズボーンは国防省の実績に不満を持ちながら戦略国防安全保障見直し strategic defence and security review, SDSR で今後五年間の国防支出増を昨年11月の認めた
  3. 欧州残留を希望したスコットランド自治政府も独自に国民投票を実施し連合王国残留の可否で民意を問う可能性が出てきた。
  4. スコットランドが分離独立すれば軍事作戦上で大きな影響が発生する。ファスレーンの原潜基地だけの問題ではない。与党スコットランド国民党の公約は英海軍の弾道ミサイル原潜、攻撃型原潜をスコットランドから追い出すことだ。
  5. だがEU離脱の影響は国防面でもっと緊急の課題を生むとの分析がある。
  1. 「離脱後に歳出見直しは必至な中で国防費が削減対象外というのは非現実的」とマルコム・チャーマーズ英シンクタンクRoyal United Services Instituteの副所長は述べる。
  2. 「財源が減れば政府は戦略の優先を従来のグローバルな役割から欧州同盟国と同じ水準に再調整を迫られるでしょう」
  3. 23日の投票後にチャーマーズが出したレポートでは短期的な支出削減の可能性は十分あるが、国防予算への長期的影響を左右するのは経済実績の悪化の程度次第としている。
  4. 元軍需調達大臣のピーター・ラフは保守党政権は歳出削減に及び腰となりNATO加盟国の防衛費2パーセント水準目標を達成できずに問題を再発させたくないはずと見る。この水準はオズボーン蔵相が昨年の支出見直しで了承している。
  5. 「緊縮予算は必至だったが蔵相が2パーセント公約を守ったのは極めて勇気のいる行為だった」と評価し、「保守党は懸命に国土防衛を継続しており、国会議員からの支援は強い。蔵相人事は見えないが支出削減に動かないだろう。削減が必要なのは事実だが次の首班人事次第でしょう」とラフは述べた。
  6. 予算編成の圧力の中で国防予算水準をどこにおくか疑問が出ている。
  7. 国家監査局による先週の報告では国防予算は256億ポンド(350億ドル)でSDSRでボーイングP-8哨戒機の調達も決まっている。
  8. これに対してチャーマースは政府はSDSR内容を見直し「EU離脱で生まれる新しい状況に国防安全保障政策全般を合わせる好機だ。政府は特にフランス、ドイツと密接に動くべきだ」と主張する。
  9. ラフは2015年度SDSRは現時点で負担不可能で予算調達できないと指摘する。「あくまで願望であり実現は無理」
  10. 「英国は軍事活動の中心をヨーロッパの安全確保に移すべき」とチャーマースは述べる。
  11. これに対し国防コンサルタントのハワード・ウィールドンは英国離脱の直近の影響は最小限と見る。
  12. 「長期的な影響は首相人事で今と同様の国防支出の考え方が続くかで大きく変わります。次期蔵相は国防省にSDSR2015の見直しを強く迫ると見ています」
  13. ウィールドンはEU離脱でP-8およびAH-64E攻撃ヘリコプターの調達契約発表がまもなく開催のファーンボロ航空ショーで取り消しにはならないと見る。
  1. 匿名条件の国防企業幹部は不確実ではあるものの中核事業は政府承認を受け前進するはずと語った。
  2. 「今の勢いを殺したくないです。ビジネスは予定通り進むと見ていますが、途中で変更が発生するかもしれません」
  3. 次期原子力潜水艦事業は総額300億ポンド以上と見られ、国会での審議を待つが、ヴァンガード級トライデントミサイル潜水艦四隻の後継艦は大問題だ。
  4. 上記企業幹部は国民投票結果で英国内及び海外から投資は減速すると見ている。
  5. 「英国向け投資案件は疑問視されるでしょう。英国企業も投資活動に慎重になり、状況がはっきりしするまではそのままとなり、結果として投資低迷が続くと思います」
  6. 「英国に投資しようと考える向きも政治面で不確実性を嫌うでしょう。企業活動でこれまでとは見方が変わります」
  7. ただし英国防産業は全般として「きわめて回復力が高く粘り強いので、問題を直視し新しい政治環境に挑戦していくでしょう」とする。
  8. 同幹部は英国離脱でもヨーロッパ各国とりわけフランスとの共同事業に大きな影響はないと見ている。
  9. 「国防産業の観点ではEUを高く評価していません。ヨーロッパ各国との国防関係協力事業はブリュッセルと無関係です。特にフランスと関係強化につながると楽観視しています」
  10. 「ヨーロッパの反応はこれからですが、ドイツの国防観はフランスと大きく違いますし、フランスは英国よりの考え方ですので、事業の協力関係は自然に続きますよ」
  11. ラフは対欧州協力関係で政治要素が入るのは必至と見る。
  12. 「そうなると英仏協力は一層難しくなりますね。英仏防衛条約が両国のトップによる政治取り決めで成立ずみですが難易度は高くなるでしょう。次期首相がキャメロンと同じ扱いをするかも不明です」
  13. パリではフランス防衛調達部門のトップが英国との強い関係を強調しつつ現時点で中長期的には不明と語っている。
  14. 「国防部門ではランカスター条約で取り決めた二国間協力が基礎で両国の高レベルがそれぞれ支持しています」とローラン・コレ・ビヨン防衛装備調達総局局長が語った。「今の時点ではブレグジットの影響が防衛部門にどう出てくるか不明ですが、短期的な影響は少ないとしても中長期的にはわかりません」
  15. カミユ・グランはシンクタンク戦略研究財団Fondation pour la Récherche Stratégiqueを主宰し短期的には若干の不確実性があるが心配すべきは先が見通せないことだという。「ヨーロッパの防衛に悪材料です」■