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2019年3月16日土曜日

2020年度予算にF-15Xが正式に盛り込まれた。その他F-5の22機調達が目を引く


8 F-15Xs For USAF And 22 F-5s For Navy In 2020 Budget Request

2020年予算にF-15Xの8機と海軍用F-5の22機の要求

The F-15X is officially real and the Navy and Marines are set to get a fresh influx of badly needed aggressor airframes.

F-15Xが公式に実現し、海軍海兵隊には必要だったアグレッサー機材調達が実現

BY TYLER ROGOWAYMARCH 12, 2019
ンタゴンが次年度予算案を本日公開し、大枠だけがわかった。重要な内容はF-15X調達が公式になったこと、F-5E/Fの22機調達の2つだ。
F-15X調達は予想通りでその存在を昨年7月に初めて報じていた。今回は初回調達規模が明らかになり、F-15EX(単座型)8機を2020年中に概算11.174億ドルで導入する。予算には初期導入8機分以外にイーグル輸出仕様にない装備の統合開発経費の他、調達業務立ち上げと予備部品サポート分も含む。
同機の単価はUSAFがボーイングと確定契約を結ぶまで不明で上記金額は変更の余地がある。
USAF
整備場でF-15Cの主翼を取り外している。F-15C/D部隊の老朽化が進んでおり、今後も飛行可能に保つためには相当の予算が必要となる。

F-15X調達の追加はF-35のみを導入するとしてきたUSAF関係者の従来の言い分と異なる。その意味は明白だ。「F-35のみ」としてきたDoD路線は終わった。価格面ならびに各種機種を組み合わせた戦力構造で即応体制を引き上げると空軍は公言している。
これでバランスの取れた戦力構造に向けた調達が生まれる余地ができた。
USAF幹部が現実対応として考えてきた内容が二十年近く採用されないまま戦闘機調達と部隊編成されてきた。USAFは2020年にF-35を48機調達し、戦術戦闘機の柱として今後もその地位を守る。
F-15XとF-35の同時調達を企画する空軍だがF-15C/Dを運用中の部隊にF-35の導入予定はなく、予算案は議会承認が必要だ。F-35に特殊利権を有する議員がすんなりと承認しないのではないか。すでにF-15Xの小規模導入に反対の意向を示す議員も現れている。
話題を海軍に移すと、今回の予算要求に22機のF-5E/FタイガーIIがあるのが目を引く。機体はスイス空軍から購入し、敵機役を演じる支援任務にあてる。F-5N/F44機が海軍二個飛行隊、海兵隊一個飛行隊で供用中だがこれもスイス空軍の余剰機材だった。それも十年近く前のことで現有機材は老朽化が進む一方で需要は増加している。
USN
F-5N

一部需要は民間業者委託で埋めてきたが、海軍は現有F-5の全機退役は将来避けられないと機材補強を迫られてきた。F-5はアグレッサーとして運航経費とともに実績を実証ずみなので別機種に交替すれば経費は大きく増加してしまう。
このためペンタゴンがF-5を新たに22機スイス空軍から入手し、ノースロップ・グラマンのセントオーガスティン施設で再整備し今後もアグレッサー任務の継続を図るのはしごく当然のことだ。
民間業者TacAirが海軍の「第四世代」敵機契約を改修型F-5で獲得していることからF-5が民間企業でも引っ張りだこになるのは間違いない。
言い換えれば海軍はスイスのタイガーII機材が入手できるうちに手を付けたことになる。
再整備後の機材を海軍がどう運用するか不明だが、既存F-5部隊を補強し、飛行時間の節約効果をで供用期間を伸ばす狙いがあるのか、新規のアグレッサー部隊を編成するのだろう。以下の予算説明でこれ以上のことはわからない。
海軍省はF-5E/F機材をスイス政府より調達しUSNおよびUSMCの訓練用敵機機能をサポートする。F-5は敏捷かつ高度の操縦性があり信頼性の高い超音速戦闘機で高度の空力特性とエンジン性能、低運航経費を特徴とする。
海兵隊は先にF-5を20機余り追加し米国各地の訓練基地に分散配備することで空対空訓練需要の増加に対応したいとしていた。
USN

これまでハリヤーが空対空防御戦でこの任務についており、AV-8B+はAIM-120AMRAAMの運用が可能となっていた。海兵隊の旧型ホーネット部隊は対テログローバル戦争で対地ミッションにに酷使され、老朽化したホーネットでは空対空戦能力は見劣りがしていた。
F-35B/Cには高性能センサー融合とステルス能力がつくが、パイロット訓練に敵役の機材がどうしても必要だ。USMCに残る後期型ホーネットには高性能のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーが搭載され空対空戦訓練では敵機役機材に需要が増えている。その背景にはペンタゴンが大国間武力衝突に再び焦点を当てており、空対空戦訓練に以前より高い優先順位がついていることがある。このため供用中機材とあわせ委託業者の機体で対応する。
以上を念頭にスイス空軍の余剰F-5の調達は予算上で合理的選択となる。
今回対象の機材に予備部品等をつけても総額は39百万ドルとF-35C一機の三分の一以下だ。機体単価は1.8百万ドルということだ。ただし米本国に回送するとそれなりの費用がかかる。前回のスイスF-5各機は海軍海兵隊のKC-130Tに搭載され大西洋横断した。
各機がエイビオニクスの大幅改修を受け構造補強も施されるかは興味深い点だ。海軍はTacAirと同様に既成品を使うオープン・アーキテクチャアを採用し新型センサーやレーダーを搭載するのではないか。海軍のアグレッサーF-5部隊が新型レーダーやIRSTを搭載しており、ヘルメット搭載画像装置をつけ今後も長く供用に耐えるはずだ。
以上の調達について今後詳しく見ていく。ペンタゴンの2020年度希望リストは未公開だが今後お伝えする内容は続々と出てくるはずだ。■
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2018年10月2日火曜日

☆ボーイングT-Xの受注成功から見えてくる次の可能性とは

ボーイングのT-X選考採択は先に速報でお知らせしましたが、今回は少し詳しくそのインパクトを解説する記事をご紹介します。と言っても依然として新型機の性能は不明です。しかしこうやって見るとT-38って本当にコンパクトな機体だったんですね。というか現在の主要戦闘機が大型化してしまったのでしょう。では日本はこの機体(T-いくつになるんでしょう)に関心を寄せるでしょうか。


Boeing's T-X Win Is Really Much Bigger Than Just Building A Replacement For The T-38 ボーイングのT-X受注成功にはT-38後継機生産以上の意味がある

Boeing's big win has wide-ranging impacts that go far beyond the USAF's need for a new trainer alone. ボーイング案の採択はUSAFが求める新型練習機の枠を超えた影響を与えそう

BY TYLER ROGOWAYSEPTEMBER 28, 2018


THE AERO EXPERIENCE


んとも興奮を感じるニュースだ。長年待った挙げ句USAFが選定したジェット機は傑作とはいえ半世紀が経過したT-38タロンの後継機となる。ただボーイングが勝ち取ったT-X案には単なる新型機以上の意味がある。今回の選定結果から多様な影響が生まれ、ことにボーイングを根本から変える効果がある。
まずボーイングに祝辞を送りたい。同社は回転翼機、固定翼機、無人機と三連勝で、今回は固定翼有人機でも結果が出た。また競合したロッキードレオナルド両社も互角に戦い、それぞれの製品に多大な情熱を注ぎ込んできた。だがなんといってもノースロップの伝説とも言えるT-38タロンの足跡がどれだけ大きかったか思い知らされる。
USAF
原型YT-38の初飛行は60年ほど前だった
同機の原型は1959年4月に初飛行し、以後数万名のパイロットを養成しただけでなくサンダーバーズで曲芸飛行を展示し、U-2やB-2の乗員まで養成し、NASA宇宙飛行士の飛行時間確保にも役立っている。またアグレッサー役もこなし、標的がほしいF-22部隊に重要な機体になっている。

USAF
ティンダルAFB所属のT-38AがアグレッサーとしてF-22と飛行中


タロンの業績はそれだけではなく、別の成果も生んだ。USAF初の超音速練習機から歴史上で最も成功した機材が生まれた。F-5A/Bフリーダムファイターであり、F-5E/FタイガーIIである。
各機は輸出を通じて米航空戦力を世界に広げる役目を果たし、一部信頼に疑問が残る同盟国や高性能機導入の資金が不足する国にも輸出された。さらにF-5は海軍、海兵隊、空軍の敵機役となり、海軍戦闘機ウェポンスクールやUSAFウェポンズスクールで活躍している。事実、海軍や海兵隊向けに民間企業TacAirF-5をアグレッサーとして運用している。
USAF
空軍のF-5Eは敵機役として冷戦時に各地の航空隊を支援してきた


F-5を戦闘任務に投入している国がまだある。一部は新型エイビオニクスに改装され、第四世代機同様の性能を発揮している。F-5の直系の後継機を目ざしたF-20タイガーシャークは有望視されたが採用国は現れなかった。
USAF
ランドルフAFB所属のT-38C編隊


こうした中でノースロップ・グラマンが途中で放棄したT-X案を目にできなかったのは悲しい。同機はスケイルド・コンポジッツが設計製造し、実際に飛行していた。T-38の輝かしい成功を背景にノースロップ・グラマンは新型機をモデル400と呼び、ボーイングに代わり採用されたかもしれない。だがいろいろな理由でノースロップ・グラマンは途中で競合を降り、空軍はボーイング案を採択したのだ
SCALED COMPOSITES
ノースロップ・グラマンのT-X案はT-38をルーツとし数回の飛行を実施したが同社は競作から脱退した


そうなるとボーイングT-Xは今後が期待され、実際に展開するのは容易だろう。だがボーイングが採択されたことで同社は今後長年に渡り戦術ジェット機を製造することになりそうだ。もちろん、F-15やF/A-18の製造ラインの動向とは無関係である。
米海軍向けMQ-25無人給油機契約の獲得とあわせ、ボーイングのセントルイス工場に明るい将来が開けた。このことはボーイングが今後も戦術航空機製造に残ることを意味し、製造能力とともに設計能力で有力な競争相手に留まるだろう。わずか一二年前には同社の将来は大きく疑わしいとされていたのだが
BOEING


ロッキード・マーティンにとって受注失敗は大きな痛手だが競合があることは悪いことではない。同様に受注を逃した企業は多い。ロッキードには多数の受注案件があるのも事実だ。
多くの点で今回のT-X入札でボーイングが超積極的だった可能性がある。同社はなんとしてもこの案件に勝つ必要があったので至極当然とも言える。同社の国防部門にとり受注は死活的な意味があったのだ。今回の契約は固定価格制度のため利益が薄く、企業経営面でリスクがあるが、T-X受注には短期間の利益獲得以上の意味がある。
T-38の前例から新型機は相当の年数にわたり飛行する可能性がある。供用期間を通じ支援や開発関連の契約が止めどもなく生まれることになる。ボーイングはOEMメーカーなのでこうした契約の大部分を獲得する可能性が高いし、一部では競合相手が生まれないだろう。そこで同社が戦術ジェット機の製造に長期間携わる可能性があるわけだ。
ここに企業としての名誉もからむ。USAFの戦闘機パイロット全員で過去50年にわたり何が共通要素かわかるだろうか。
T-38タロンの操縦だ。
USAFのジェット戦闘機パイロットを生み出す機材を提供していると特別な意味が生まれる。ボーイングのT-Xは次世代のUSAF戦闘機パイロットとなる男女ガ同機の操縦からスタートし、その後戦闘機パイロットになる。USAFの方針決定をになう者もあらわれるだろう。
USAF
訓練飛行を終えたT-38Cタロン


ペンタゴン以外にも世界各国でジェット練習機需要があり、ボーイング機が最新かつ最高の機体になる可能性が生まれる。さらに海外受注では同機がさらに改良され大規模な補給支援体制を利用できるとふれこみ、スケールメリットも生まれる。そうなるとUSAF向け475機以外の大量の輸出需要にも言及しないといけない。
この機体は練習機にとどまらない。軽戦闘機にもなる。
BOEING
ボーイングT-Xがフルパワーで離陸中


T-38ではJ85ターボジェット双発で合計5,800lbを生んだ。ボーイングのT-XはGE-F404ターボファン単発だが出力はほぼ三倍の17,200lbだ。また尾翼は二枚構造でスラットを備え、前縁基部を広げた構造で低速域の取扱を大きくしながら機動性も高い。T-X契約の勝因となったのがこうした性能だったのは驚くに足らない。
USAFはT-Xを次世代アグレッサー機として注目しており、F-16に匹敵する性能がありながら運用コスト、取得コストをはるかに低く抑えられる。第5世代世代機の敵機役として通常型戦闘機では対抗できず空対空戦の基本訓練では無駄になり予算面でもそのまま続けられなくなる。民間請負業者がこの穴を埋めるだろうが、USAFには今日同様にアグレッサー部隊が必要であり、将来は拡充するとしても今よりも効率よく運用する必要がある。ここにT-Xが活躍する余地が生まれる。
BOEING
ボーイングがT-X提案を公表した際の写真

機体サイズが小さいT-Xは視界内距離で視認が難しくなる。JAS-39グリペン多任務戦闘機同様の設計と推力を備えた同機は手強い小型機になる。訓練用装備を搭載し実際に近い空対空戦の訓練をはるかに低い費用で実現できるはずだ。またジャミングポッドや訓練用ミサイルを搭載すればそのままで第四世代機の悪役を演じることができよう。小型AESAレーダーや電子戦装備あるいは赤外線探知追尾装置を搭載すればアグレッサー機材とともに低価格軽戦闘機にもなる。
ペンタゴンに軽戦闘機の仕様要求は今は存在しないが、将来はボーイングT-Xの輸出の可能性が出るはずで、F-5事例を踏襲するだろう。ロッキードが提示したT-X案のT-50/T-100がその例でF-50やFA-50を韓国航空宇宙工業が複数国に輸出している。
ROKAF
FA-50はT-50を原型とし、ロッキード・マーティンは今回のT-Xで提案したT-100の原型となった。軽戦闘機需要では大型機並の特徴を低価格で手に入ることが求められる

今日の航空戦闘で成功するために大事なのはセンサー類、通信装置や兵装であり、基本性能ではない。ボーイングのT-Xは十分な性能を小型かつ安価に実現する。だがなんといっても大規模な支援インフラが現に存在し、規模の経済の効果を訓練機型から得られる点が大きい。
ボーイングT-Xのような機材が生産されれば米国にとって戦略的恩恵も生まれる。F-16生産は縮小されサウスカロライナに移転されており、いつまで生産ラインが残るか不明だ。イーグルやスーパーホーネットのラインも2020年代後半に閉鎖されかねない。そうなると非ステルスかつそこまで複雑でなくコストも低い軽戦術機が生産されていればペンタゴンも基本性能を備えた戦術機が今後必要となった際にその恩恵を実感するだろう。
緊張が高まる事態でも軽戦闘機版を生産するか、訓練機生産を戦闘用機材の生産に切り替えれば戦闘機不足を補える。こうした柔軟性が新規出費なくして手に入るのだ。
BOEING


米海軍ではT-45ガショークの運用が長く続いており検討が必要だ。T-45はまだ期待寿命が残っており、耐用年数延長策も実施中だがT-45はボーイングT-Xと比較すれば性能面で見劣りがし、海軍は後継機の検討に入るだろう。
そうなると新型機を提供できるボーイングの立場は強くなり、あえて言わせてもらえればT-Xから海軍仕様が生まれれば検討対象になるはずだ。既存機種から派生型を作るのほうがはるかに経済的になる。
ボーイングはNAVAIRと良好な関係を既に築いており、空母運用機の条件を熟知しておりスーパーホーネットやグラウラーを生産中で今後はMQ-25が加わる。またマクダネル・ダグラスを吸収合併したことでT-45も今は自社製品だ。そこでボーイングがUSAF向けに練習機を数百機生産して海軍用の練習機も生産すると他社は対抗できないだろう。
USN
T-45はBAeのホーク練習機が原型でT-45の納入が続いた1990年代時点で数十年前の設計だった。同機は耐用年数が長いとはいえ、機種切り替えが必要になるのは当然だ。


海軍、海兵隊で敵機役を演じるF-5N、F-5Fがおよそ40機あるがこれも永遠に飛べるわけではない。スイス空軍を退役した機体に二度目の奉公をさせている。T-Xはここでも有望な選択肢になり、F-5を上回る性能を示すはずだ。
MILAN NYKODYM/WIKICOMMONS
SAAB JAS-39が雪に覆われた滑走路を離陸している


T-Xがスウェーデンの特殊ニーズすべてを満足できるというつもりはないが、航空戦闘や機体設計でのSAABの独特の視点は米国にも必要だ。USAFが将来の作戦要求内容をまとめる際には上層部の多くが意見を同じくするだろう。
今回の競合ではボーイング提案のみが完全新型機であり、そのため最新の内容だった。あきらかにUSAFは同機の可能性や今後の性能向上に期待している。つまり空軍はボーイング案を採択し他社の実証済み設計案を棄却したことでリスクも発生するがそれを上回る効果を期待しているのだ。
BOEING


現時点の予算環境を考慮すればこの決定には合理性がある。USAFは完全新型専用機を採用することで次世代練習機の今後の発展性に賭けているのだ。
国防予算が今以上に減ってもボーイングのT-Xには練習機以上の役割が期待できる。USAFの要求内容に沿って専用に設計された同機があることは国にとっては幸運だが、機体に今後の発展ができる余地があり各種ミッションをこなす力が備わることもプラスに働く。
そうなるとボーイング機の詳細を早く知りたいところで特に性能面の生数字に興味を惹かれる。今後、ボーイングとUSAFから情報が大量に出れば同機の性能等が解明されるはずなので期待したい。■
Author's Note: A huge thanks to The Aero Experience for sharing their awesome image seen at the top of this article with us. Make sure to check out their site here.  

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2017年5月23日火曜日

ヴィエトナムがF-5再生を実施?


観測記事に過ぎないのですが、機数確保だけが目的ならあり得る話です。ただし、高温多湿の環境に何十年も放置されていた機材をつなぎ合わせても完成は少数機にしかならず、実効性の弱い発想ではないでしょうか。ハノイの空軍博物館にはF-5も展示されていましたね。


Is Vietnam Really Planning on Bringing Back 50-Year-Old American Fighter Planes? ヴィエトナムは真剣に50年前の米製戦闘機の再整備を検討しているのか


The National InterestMichael Peck May 21, 2017


ヴィエトナムは南ヴィエトナムから捕獲した機齢50年の米製F-5を本当に再生しようとしているのか。それともロシア製機材の購入に向かわせるためのロシアの策略なのか。ハノイが西側機材導入に前向きとの観測がある。
  1. 問題の機材は1975年に北ヴィエトナムが南を制圧した際に捕獲したF-5だ。北はこの他に大量の米製戦車、火砲、銃砲(M-16が百万丁あった)も入手し、1970年代中頃のヴィエトナム軍は世界有数の重装備となった。そこにF-5Aフリーダムファイター87機、F-5EタイガーII27機があった。ノースロップ製の軽量戦闘機は低価格で米国が冷戦時に第三世界に輸出を進めていた。
  2. ヴィエトナムは機体評価用にF-5を数機ソ連圏に送り、ソ連パイロットはタイガーIIの性能に感銘を受けたといわれる。一方で残りの機材は1978年のカンボジア侵攻時にハノイが利用した。ヴィエトナム空軍の主力はもちろんソ連製機材だが、パイロットはF-5を好んだといわれる。特にコックピットと機体取り回しが楽というのが理由だった。しかし、交換部品不足から機材を使いまわし使用可能なF-5Eは減った。
  3. ながらくヴィエトナムのF-5は全機飛行できない状態と思われていたが今週になりロシアのスプートニクニュースが「タイガー戦闘機の復活がヴィエトナム航空界にどんな意味を持つのか」との記事を配信し、「ヴィエトナムのメディア」筋がF-5の再稼働を検討中だと記事で伝えた。
  4. 西側アナリスト陣にとってこの記事は驚きだ。「F-5は全機修理不可能だと思っていました」と東南アジア安全保障を専門とするザカリー・アブザ(米国家戦争大学校)は述べている。「先月もヴィエトナム訪問しましたがだれもこの可能性を話ていません」
  5. 一番興味をひかれる点はスプートニク記事は単なる報道でなく、ロシア軍専門家筋の分析を伝えていることだ。ロシアのマカール・アクセネンコはイスラエル企業が機材再整備を行うのと見ている。タイのF-5で実績があるためだ。ヴィエトナムの場合は「短期間で安価に戦力予備機材を確保する」狙いがあるという。
  6. ただし記事では再整備したF-5はあくまでも緊急手段であり、ヴィエトナムは新機材が必要と指摘する。同国はロシアSu-27、Su-30を約40機運用しているが隣接する中国と比較すればいかにも小規模だ。
  7. アブザは「ヴィエトナムは練習機、戦闘機を導入する意向を公表している」とし、「価格、性能、信頼性や親和性からスホイの追加導入が一番よいはずですが、かなり時間をかけて検討中なのでモスクワもいらいらしはじめているはずです」と述べる。
  8. 確かにここ数年間でヴィエトナムが欧米軍用機の導入に前向きになっているとの記事が数回にわたり出ている。2016年5月にバラク・オバマ大統領がヴィエトナム向け武器禁輸の解除を発表した。
  9. 「ヴィエトナムは最大のロシア製武器購入国に入り、最近こそ規模が伸びていませんが、モスクワとしては路線変更は歓迎できないのは間違いないでしょう」
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: F-5E Tiger II. Wikimedia Commons/Creative Commons/Peng Chen