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2025年8月25日月曜日

イスラエルがKC-46ペガサスの追加調達で空中給油機部隊の強化を図る(TWZ) ―ライジングライオン作戦で給油機能力不足を痛感したためですが、これでイスラエルの地域内空軍運用能力が高まります



The Israeli Ministry of Defense has said it will seek to buy two more Boeing KC-46A Pegasus tankers from the United States, as it invests in its fleet of inflight refueling tankers, heavily utilized in the recent campaign against Iran, as well as for other long-range combat missions. While Israel has already committed to buying four KC-46s, it currently relies on a dwindling fleet of veteran Boeing 707 tankers. The 12-day war against Iran earlier this year, in particular, led to questions about Israeli Air Force (IAF) aerial refueling capacity and the U.S. government was forced to deny that it had provided additional tanker support for the operation.

イスラエル国防省

イランへの長距離空爆作戦で老朽化した707給油機に依存していたことから、イスラエルはKC-46調達を加速する

スラエル国防省は、最近のイランに対する作戦やその他の長距離戦闘任務、国内任務で多用されている空中給油機隊の強化策として、米国からボーイング KC-46A ペガサス給油機 2 機を追加購入する方針を明らかにした。KC-46ではイスラエルは既に4機購入を決定しているが、現在は老朽化したボーイング707給油機(12機)に依存している。今年初めのイランとの12日間戦争では、イスラエル空軍(IAF)の空中給油能力に疑問が投げかけられ、米国政府は作戦に追加の給油機支援を提供した事実を否定せざるを得なかった。

「5機目と6機目のKC-46は、IDFの遠距離戦略部隊としてのIAFを強化し、大規模な部隊を遠方の戦場に展開する能力を向上させる」と、イスラエル国防省アミール・バラム少将は今週初めに述べた。

ボーイングのレンダリング画像には、イスラエル空軍のKC-46が先進型F-15の給油を行う様子が描かれている。Boeing

バラム少将は、追加の装甲車両とファーストパーソンビュー(FPV)ドローン含む再装備計画を発表した。KC-46の調達計画は、イスラエルの防衛調達大臣委員会が承認すれば進められる。推定5億ドルの給油機契約は、米国の財政援助で資金調達される。

イスラエル国防省は、「新機はイスラエルのシステムを搭載し、イスラエル空軍の運用要件に適合するように改造される」と付け加えた。

2020 年、米国務省は、イスラエルへの KC-46A 8 機の販売を承認し、その総額は 24 億米ドルと推定されている。

米国安全保障協力局(DSCA)は当時、「米国はイスラエルの安全保障に全力を尽くしており、イスラエルが強力かつ即応性の高い自衛能力の開発と維持を支援することは、米国の国益にとって極めて重要だ」と述べた。「今回の販売案は、これらの目標と一致している」と付け加えた。

1 年後にイスラエルは KC-46 の初回発注計画を正式承認した。イスラエルは、米空軍がすでにボーイングに発注しているロットから、最初の 2 機の KC-46 を納入できるかどうかについても問い合わせたと報じられている。これにより、イスラエル空軍は、通常より早く機体を入手することができる。

2022 年に米国国防総省は、イスラエル向け KC-46 の最初の 4 機について、9 億3000 万ドルの契約をボーイングに交付した。納入は 2026 年末までの予定。

KC-46の米国での運用における問題が広く報じられている中、イスラエルの調達スケジュールがどの程度影響を受けたかは不明だが、購入を増やす決定はプログラムへの信頼のあらわれで、ボーイングが同機の海外販売拡大を目指す上で好材料となる。

最初のイスラエル空軍用KC-46が納入される頃には、重要なリモートビジョンシステム(RVS)の次世代バージョンが搭載される。このシステムは、完成まで非常に困難を極めたことで知られている。皮肉なことに、KC-46が置き換えるイスラエルの707は、現地で開発されたRVSを使用しており、これが非常に有効であることが証明されている。

707 Re’emのRVSの眺め。IDFスクリーンショット

一方、IAFが707隊の後継機を急務としていることは疑いようがない。これらの機体は現地で「Re’em」(ヘブライ語で「オリックス」の意味)と呼ばれている。

現在のRe’em機は1979年に初めて就役し、当時の最新型である707-300型機で以前の707-100型機を置き換えた。これらの機体は民間航空会社から購入され、現地で空中給油用に改造された。改造はイスラエル航空宇宙産業(IAI)が担当した。2010年代には追加の機体が調達され、給油機としてアップグレードされたが、中で最古参の機体は退役ずみだ。

空中給油に加え、IAFの707は指揮統制拠点および通信ノードとしての重要な役割を果たしている。機体は衛星通信システムを搭載し、F-15やF-16などの適切に装備された戦術機や遠方の指揮センターとの、重要な安全な視界外通信を提供している。これは長距離攻撃作戦で極めて重要な機能だ。KC-46に「イスラエル製システムを搭載し、イスラエル空軍の運用要件に適合させる」という記述は、同様のC2および通信システムの改修を指している可能性が高い。

現在、イスラエルは707給油機を7機以下しか保有していないとされており、昨年末のネバティム空軍基地の衛星画像で5機が確認されている。

2024年12月時点でのネバティム空軍基地の飛行ラインに並ぶイスラエル空軍の707給油機5機。Google Earth

これにより、Re’emはイスラエル空軍にとってこれまで以上に価値の高い機体となっている。

イランの核開発計画に対する作戦「Operation Rising Lion」では、約2,000マイルの往復飛行が実施されたほか、IAFは2023年10月7日のハマスからの攻撃以降、地域内の標的に対長距離攻撃を実施してきた。これにはイエメンのフーシ派標的に対する空襲も含まれる。

これらの作戦を支援する給油能力の需要、およびその他の任務や定期訓練活動により、米空軍がイスラエルを支援している可能性が浮上した

イランとの12日間の戦争後、米国防総省は、紛争中にIAFに対しそのような支援を提供した事実はないと明言した。

米空軍の発言者は、本誌の問い合わせに対し、次のように回答した:

「米空軍は、中央軍管区(CENTCOM)の責任区域内で同盟国やパートナーと共に訓練作戦を定期的に実施している。イスラエル空軍は、これらの演習や作戦に様々なレベルで定期的に参加しているが、米軍の空中給油機はIAFへの空中給油を実施していない。」

F-35I戦闘機へ給油作戦中のイスラエル空軍707給油機。イスラエル空軍

12日間戦争中に米国が実際に給油支援を行ったとの主張は今も残る。ただし、米空軍の否定がその通りなら、IAFが広範な地域で高強度の作戦を継続しながら重大な効果を上げた能力は、驚くべきものとなる。

一方、米国軍がイスラエルに給油能力を提供できる能力は、計画があれば無比であることは疑いようがない。KC-46の引き渡しが続く中、ペガサスが「ブリッジ・タンカー」要件の下で追加注文が見込まれており、同機は米国空軍の給油機部隊の柱として重要な存在になっている。

KC-46の注文拡大に動き出したことで、老朽化が進む707の退役プロセスが加速し、空中給油能力の近代化がイスラエル空軍で急務となってきた。■



Israel Wants More KC-46 Pegasus Tankers To Boost Overworked Aerial Refueling Fleet

Israel is stepping up its procurement of KC-46s after a campaign of long-range strikes on Iran that relied heavily on its geriatric 707 tankers.

Thomas Newdick

Aug 24, 2025 12:41 PM EDT

Israel Wants More KC-46 Pegasus Tankers To Boost Overworked Aerial Refueling Fleet

トーマス・ニューディック

スタッフライター

トーマスは、軍事航空宇宙分野と紛争に関する報道で20年以上の経験を持つ防衛分野のライター兼編集者だ。数多くの書籍を執筆し、多くの書籍の編集を手がけ、世界有数の航空専門誌に記事を寄稿している。2020年に『The War Zone』に参加する前は、『AirForces Monthly』の編集長を務めていた。


2025年8月1日金曜日

米空軍はKC-46の追加購入により、タンカー競合を回避する決定を下した(Defense One)

 A U.S. Air Force KC-46 takes on gas over the Atlantic Ocean in 2020.

2020年、大西洋上空で給油を受ける米空軍のKC-46。USAF/ ピーター・ボリス




空軍は、次回購入で固定価格から移行するべきか検討中。


空軍のタンカー計画について不透明な状態が続いていたが、空軍は新たな競合を開始せず、KC-46をさらに購入する決定をした。

 老朽化したKC-135の後継機として75機のタンカーを暫定的に購入するため、ボーイングとエアバスの間でコンペが行われるのではないかという憶測に終止符が打たれた。その代わりに空軍は、長期的なタンカー需要が判明するまでの "つなぎ "として、問題を抱えながらも生産中のKC-46を追加購入することになる。

 「空軍はKC-46延長プログラムの取得戦略を承認した。その取得戦略では、最大75機のKC-46の追加が承認されている。価格設定や管理など、詳細については明らかに検討する必要があるが、KC-135の後継機導入の一環として、最大75機のKC-46の取得戦略が承認された」と、空軍参謀総長のデビッド・オールヴィン大将は、ロイヤル国際エアタトゥーの会場で本誌に語った。

 ボーイングKC-46にこだわるという決定は予算の圧力に起因したものだろう。新規契約は、ボーイングが現在の188機分のタンカー納入を終えた後に結ばれる。

 戦略が承認されたとはいえ、契約形式やコストなどの詳細についてはまだ詰める必要があると空軍は強調している。ボーイングは固定価格契約の下でKC-46を製造しており、その結果同社は数十億ドルの損失を被っている。空軍が現在の契約方式を変更すれば、タンカーの必要な修正やアップグレードなど、プログラムの一部を実費上乗せ方式に移行させることができる。

 KC-46を追加購入するという決定は、2026年の予算要求に「タンカー生産延長」プログラム用の資金が含まれていたことから可能性が高まっていた。予算書によれば、このプログラムではKC-46を「最も手頃な要求ベース」として使用する。

 20年間にわたり空軍は3本柱の計画でタンカーフリートの構築を計画していた:商用改造タンカーを購入し、「ブリッジ・バイ」となる別の商用改造タンカーのコンペを開始し、最終的に次世代機を製造するとし、計画の最初のステップはKC-46である。

 そして2023年、軍当局は計画の第二段階であるブリッジ・タンカーの購入を160機から75機に削減し、"次世代空中給油システム"と呼ばれる次世代タンカー計画を加速させると発表した。

 空軍はかつて、2030年代末までにステルス性のある新型タンカーの実戦配備を望んでいたが、2026年の予算要求でNGASの資金を1300万ドルまで削減し、代わりに第6世代戦闘機プログラムであるF-47に注力を注いでいるため、そのスケジュールは可能性が低くなっている。

 オールヴィンは、NGASはひとつのプラットフォームではなく、むしろ新型タンカーを含むか含まないかのシステム・ファミリーであると強調した。そして、2026年のNGAS予算ラインの資金の一部は、現在のタンカーを生存しやすくする方法を検討するために使われると述べた。

 一方、空軍はKC-46プログラムでの問題を解決し続けている。KC-46プログラムは、多くの「カテゴリー1」の欠陥-墜落や人命の損失を引き起こす可能性のある問題-や納入の中断に悩まされている。

 オールヴィン大将は、ボーイングの欠陥に対する進展には「満足」しており、タンカーは現在も「非常によく」機能していると述べた。これは、6月にイランの核開発拠点を攻撃したB-2への給油をKC-46が支援した「ミッドナイト・ハンマー作戦」における役割に言及したものだ。

「完全に危機を脱したとは言わないが、欠陥の除去は順調に進んでおり、同機は作戦運用上非常にうまく機能している」とオールヴィンは語った。■




Air Force will buy more KC-46s, skip competition

The service is mulling whether to move away from fixed-priced on the next buy.

BY AUDREY DECKER

STAFF WRITER

JULY 20, 2025

https://www.defenseone.com/policy/2025/07/air-force-will-buy-more-kc-46s-skip-competition/406850/?oref=d1-homepage-top-story



2025年1月8日水曜日

今まで極秘だったイスラエルの707タンカーの内部が明らかになった(The War Zone)―KC-46でいまだに実用化できていないRVSをイスラエルが先に運用しているとは。


イスラエル空軍は、めったに見ることのできない707タンカーの給油補助装置リモート・ビジョン・システムの姿を公表した

The Israel Defense Forces (IDF) have provided an even better look at the previously highly secretive remote vision system that is central to the operation of the Israeli Air Force’s critical Boeing 707 tanker fleet. TWZ has previously looked at this system — used by the boom operator to see what is happening at the rear of the aircraft while connecting the boom with the receiving aircraft — but the actual operator interface has, as far as we know, never been seen in such detail.  

IDF screencap


スラエル国防軍(IDF)が、イスラエル空軍のボーイング707タンカーでこれまで極秘だったリモートビジョンシステムをさらに詳しく紹介している。本誌は以前にも、ブームオペレーターがブームと受信機を接続する際に、航空機の後方で何が起こっているかを確認するために使用するこのシステムを紹介したことがあるが、実際のオペレーター・インターフェースをこれほど詳細に見られることはなかった。

新しい画像は、707タンカー(現地ではオリックスを意味するヘブライ語のRe'emという名で知られている)をフィーチャーしたIDFの公式ビデオの一部で、60周年に合わせて公開された。映像には、貨物倉の燃料タンクやブームなどの詳細が映し出されている。内部タンクは取り外すこともでき、旅客機スタイルの客席を含む輸送機として再構成できる。 しかし、最も興味深いのは、リモート・ビジョン・システム(RVS)インターフェースを備えたブーム・オペレーターの位置だ。

イスラエルの707タンカーの貨物室の燃料タンク。. IDF screencap


これには左右のコントロールスティックと足で操作する通信システムが含まれ、ブーマーの両手はコンソールの操作に自由に使える。ブーマーのスクリーンは比較的大きく、周囲にアナログ計器が配置されている。

イスラエルの707タンカーの機内にあるRVSコンソール。.IDF screencap IDF screencap


本誌は2024年9月、イエメンのフーシ派の標的への長距離攻撃ミッションの一部を映したビデオで、リモートビジョンシステムの画面を見たことがある。 

2024年9月に公開されたビデオでIDFが提供したレエムのRVSの様子。. IDF screencap


同年7月、707がイスラエル空軍のイエメン長距離空襲を支援した後、イスラエル空軍はRVSのカメラ映像そのものを公開していた。 

 全体として、イスラエルの707に使用されたコンソールは、現在アメリカ空軍のKC-46ペガサスに使用されている技術と魅力的な比較をすることができる。KC-46での技術は、複雑なリモート・ビジョン・システム(RVS)が同機プログラムの問題の原因であることが証明されているため、悪評に近くなっている。



707タンカーの尾翼についたイスラエルのRVS用カメラ。IDF screencap

IDFのビデオで見ることができるように、KC-46と同様に、イスラエルの707のブームオペレーターはメインキャビンのステーションから作業を行い、機体後部のカメラの映像がRVSにフィードされる。KC-46との主な違いは、KC-46では2D/3Dのハイブリッド・システムを採用して、オペレーターは特殊なメガネをかける必要があるが、707のRVSにはモニターが1つしかない。

KC-46Aのメインキャビンでブームオペレーターが専用メガネをかけてワークステーションに座っている。 U.S. Air Force


イスラエルのRVSに関する以前の報道で述べたように、この初期のコンセプトが何十年もの間、非常に重要な役割を果たし続けている一方で、米空軍はいまだにKC-46に搭載されるシステムの改訂を待っているというのは、驚き以外の何物でもない:

「KC-46に採用された米国版がいまだに遅延に陥っているのに対して、イスラエルは困難もなく機能すると思われるリモートビジョンシステムを開発し、何年も前に実戦配備している。 何年も前に導入されたこの古いイスラエル製システムの歯がゆさがどの程度だったのか、いまだに正確には分かっていない。一方、最新のリモートビジョンシステムも開発されており、エアバスA330マルチロールタンカー輸送機(MRTT)に導入されている」。



2023年3月20日、ネバダ州ネリス空軍基地で行われたレッドフラッグ-ネリス23-2のミッションのために離陸するイスラエル、ネバティム空軍基地の120飛行隊所属のイスラエル空軍707。 U.S. Air Force

皮肉なことに、707はKC-46に取って代わられることになる。イスラエルはKC-46を当初8機発注しており、次世代RVSの搭載はほぼ確実視されている。イスラエルはKC-46を補完するために、しばらくの間707の運用を継続することを決定するかもしれないが、これらは現在では老朽化したプラットフォームで、すでに退役している機体もある。



F-15戦闘機に給油するイスラエルのKC-46のレンダリング。. Boeing


IAFの707レエム・フリートに関しては、1979年に運用が開始され、それまでの707-100に代わって当時の新型機707-300が導入された。これらの機体は民間航空会社から購入された後、現地で空中給油用に改造された。改造はイスラエル航空宇宙産業(IAI)が行った。2010年代には、追加機体も購入され、タンカーにアップグレードされた。

イスラエル空軍が長距離攻撃を行うために不可欠な空中給油に加え、707は指揮統制局や通信ノードとしても重要な役割を担っている。 F-15やF-16のよう戦術機や、遠く離れた司令部と、重要で安全な見通し外通信を行うために、この航空機は衛星通信スイートを搭載している。これは長距離攻撃作戦においても非常に重要である。

ハツェリム基地上空でF15戦闘機への給油を実演するイスラエル空軍のボーイング707タンカー。 JACK GUEZ/AFP via Getty Images

現在、イスラエルで就航中の707タンカーは7隻に満たないと言われており、各機はこれまで以上に貴重なものとなっている。イスラエルがこの不朽の航空機を段階的に廃止する方向に向かうにつれ、その運用や、1980年代初頭以来イスラエル空軍の長距離攻撃能力を支えてきたRVSの繊細な技術について、より多くが明らかになるかもしれない。■

Our Best Look So Far Inside Israel’s Once Secretive 707 Tankers

The Israeli Air Force provided unprecedented access to the rarely seen Remote Vision System refueling aid used in its 707 tankers.

Thomas Newdick

https://www.twz.com/air/our-best-look-so-far-inside-israelis-once-secretive-707-tankers



2018年11月19日月曜日

F-35導入の遅れを想定した米空軍の対応策とは、その他米航空戦力整備の最新案から読める情報とは



The Air Force Has a Plan if the F-35 Doesn't Work Out As Planned F-35事業が予定通り進展しない場合に備える米空軍の構想


November 16, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35MilitaryTechnologyWorldWarF-18. F/A-18




F-35が予定どおり戦力化しない場合に備えペンタゴンはF-15E、F-16、F-18の再調達を想定しているのか。


米議会調査部(CRS)によれば、ペンタゴンが出した航空戦力整備長期計画の背後にこの可能性が見えるという。


国防総省はアメリカの航空戦力を30年俯瞰で想定する構想案を毎年更新している。通常は総論で曖昧な内容に留まる事が多い。


今回は違う。「2018年4月発表の最新の三十年構想では詳細内容が豊富で、事業中止、耐用年数延長、新規事業に触れている」とCRSのジェレマイア・ガートラーが述べる。「一部は直接的、一部は間接的だ」


ガートラーは航空戦力整備構想で判明するパターンに注目している。とくにF-35に関する件だ。空軍はF-15Eストライクイーグル、F-16で耐用年数を延長しながらF-15C制空戦闘機は退役させようとしている。


「F-15EとF-16で共通要素は何か」とがートラーが問いかける。「ともにF-35ライトニングIIが後継機の予定だが、新構想ではF-35が予定通り就役ができない場合を想定し空軍が既存機種で耐用年数を延長して穴埋めをねらっているとわかる。F-35調達機数は変更がなく、空軍は1,763機だが予定通りに投入できない事態を想定し、空軍は旧型機の改修をめざす」


さらにA-10ウォートホッグは2030年代まで飛行継続し、ここでもガートラーはF-35調達の遅れを最初から空軍が想定していると見る。同様に海軍はF-18スーパーホーネットで耐用年数延長を目指しており、旧式のA型からD型は退役させる内容だ。つまり海軍はF-35のトラブルに備える構えだ。


ガートラーは今回の航空戦力整備で以下興味深い点がみつかったと指摘。


第六世代戦闘機で動きが来年発生。海軍と空軍は2019年に第六世代機の性能諸元を決定したいとする。「本格生産は数十年先になり、現在は概念形成の作業が中心。海軍は来年中に検討を完了させるとする。次のステップは提案内容の作成だ」(ガートラー)


KC-46の調達拡大。空軍は当初想定の179機を超えたKC-46ペガサス給油機の調達を希望。「今回の構想で空軍は既存規模では不足とし当初予定以上の機数を導入しつつ既存のKC-135でも改修を行う意向だとわかる。以前はKC-135を全機退役させる予定だったが空軍は供用年数を延長したいとする」


新型長距離給油機構想:航空戦力整備構想ではKC-46投入でKC-10を退役させる予定とわかる。ガートラーはこれを空軍が新型長距離給油機構想を断念する動きと解釈する。「空軍が給油機近代化を始めた段階でまずKC-Xとしてエアバス、ボーイングを競わせ179機導入でKC-135と交代させる構想だった。その次がKC-YでKC-X採択機材をやはり179機導入し、三番目のKC-Zは完全新型の大型機でKC-10の52機の後継機とするはずだった。今回の企画案ではKC-Zが消えている。KC-46は勢いを強めている現役機となっており同機の将来は一層有望に写る」


AWACSは飛行を継続。E-3セントリー空中早期警戒統制機材7機の退役構想は棚上げになった。空軍はC-130供用を続けるがC-130Jは追加調達しない。海軍はC-130数機を調達する。


新型VIP機材。「もう一つ予想外の動きが空軍であり、ボーイング757原型のC-32VIP輸送機を退役させる」とがートラーは指摘。「757生産が終わり14年となり新型機が必要だ」


ポセイドン追加調達。中国との対立深刻化を受けて海軍がP-8ポセイドン哨戒機の調達への動きを示している。「現時点の地政学面の変化を考えれば、追加調達が必要だ」と航空戦力整備構想に記述がある。


海軍向け新型練習機:「もう一つ新規事業としてこれまで予算化されておらず今回の30年計画に盛り込まれたのがT-44の後継機だ。海軍が民生ビーチクラフト・キングエアを原型に訓練に投入している機体だ。」とガートラーは指摘。「陸軍にも同様の動きがある」


新型海軍向けヘリコプター:艦艇建造計画見直しに伴い、海軍はヘリコプター多数を必要とする。「2030年になると新型艦の就役が増えるともっと多数のヘリコプターが必要となる」(ガートラー)。通常は調達前倒しで生産ライン維持を図るが「海軍は完全新型機として2030年代中頃の調達を狙い次世代の垂直離着陸技術の導入を期待する。陸軍と共同で進める新型機がここで絡むのだろう。海軍が新型機を2030年代中頃に運用開始するなら今後三四年のうちに事業開始になるはずだ」


ベテランのCH-47チヌークは今後も飛行を継続する。「陸軍の次世代垂直離着陸機にはまだ大型機版がなく、陸軍はチヌークの改修で耐用年数を15から20年伸ばしておきたいと考えている」(ガートラー)


中古ブラックホークヘリコプターを販売。ガートラーはUH-60ブラックホークヘリコプターの一部を陸軍が民間に払い下げると見ている。航空戦力整備案では陸軍はメーカーのシコースキーにブラックホークを送り再整備させるとある。「構想案では米軍用の再整備と入っておらず、シコースキーは旧型機を再生し別の相手に販売するのではないか。だが米政府が中古機材を市場に放出する準備に入っている」

だがCRSのガートラーは構想案そのものが全体として予算増額をねらうペンタゴンの策である可能性を警告する。「提言は国防予算上限を改定すべく二年おきに議会と約束している内容の延長である。軍としては上限拡大を狙い、これだけの支出で何が手に入るかを議会へ示す必要がある。つまり予算手当がついていない要求リストを別の形で示しているだけである」というのだ。■


Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .

2018年3月16日金曜日

KC-46の米空軍向け納入が再度遅延の模様。

相変わらず深刻なKC-46の開発の遅れですが、肝心のボーイングに深刻な危機感が見られないのはひょっとして米空軍向けに損失を計上してもその後の輸出で取り戻せると見ているためではないでしょうね。今のところKC-46を発注しているのは日本だけなので機体単価が急上昇することのないよう目を光らせておきたいところです。Aviation Weekの記事です。


Boeing


Aerospace Daily & Defense Report

Boeing’s KC-46 Tanker Delayed Again 

ボーイングKC-46給油機の納入予定が再度遅延か

Mar 6, 2018Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report





ーイングのKC-46引渡し開始は2018年遅くになると米空軍は見ており、契約上の納入期限を同社が守れるか疑わしくなってきた。不履行だと大幅な違反金が発生する。
ボーイングの大日程では一号機納入を2018年第二四半期に予定するが、共同日程管理リスク見直しをかけて空軍は2018年末と見るのが現実的としている。空軍広報官エミリー・グラボウスキ大尉が語った。
「今後もボーイングと開発日程を無理のない形にしていき、事業推進を迅速化していきます」とし、「遅延で納税者負担が増えることはありません」と付け加えた。
契約上はボーイングは完全な形の給油機計18機を10月までに空軍に納入することになっている。この納期を守れないと同社は税引前29億ドル、税引き後19億ドルの追加負担を迫られ、ただでさえ同社はこれまで同事業に相当の負担をしているところにさらに支出が増ええる。固定価格契約のためコスト追加分はそのままボーイング負担となるためだ。つまりコスト増は政府ではなく同社が全額負担する。
進展を遅らせている理由は以前と同じで、耐空証明取得とフライトテストだとグラボウスキ大尉は指摘。
FAAは昨年767-2Cの給油機型に型式証明を発行したがボーイングは767-2CをKC-46に変換する肝心の軍用空中給油追加装備の型式証明を交付されていない。
またボーイングは重要問題をまだ解決していない。同機の硬式給油ブームが給油を受ける機体の表面を削る傾向がある。ステルス機の場合深刻な影響を与えかねない。低視認性ステルス塗料が損傷を受けるためでB-2爆撃機、F-22とF-35戦闘機が該当する。
政府と産業界が一緒にフライトテストデータからこの危険の発生頻度と深刻度を国際基準と比較しているところとグラボウスキは以前Aviation Weekに述べていた。データから空中給油時に遠隔カメラが必要になるのか今月中に判断する。
この問題は「カテゴリーI問題」とされ最も深刻な区分とされている。
その他二つの問題があるがこちらはカテゴリーII区分だとグラボウスキは述べている。一つはKC-46搭載の高周波(HF)無線装置で機体表皮をアンテナとして使うが放電現象や火花が発生していることだ。
空軍としては無線機能は必ず作動させたいが給油中の無線使用を厳しく禁じ火花から火災の発生を避ける必要が生まれる。
このことによるリスクは「受容範囲内」とされるがシステムが仕様を満たしていないとグラボウスキは指摘。空軍としてはボーイングが長期間かけてもリスクを完全解決することを望んでいる。
空軍は同時にボーイングにソフトウェア小規模改修も望んでおり、給油後にブームを相手機から外す際に燃料が一部流れるままになるすでに把握されている問題の解決を期待する。

「米空軍とKC-46日程のリスク評価を一緒に検討し、納入予定も検討しました」とボーイング広報のチック・ラメイが述べている。「新型機開発にリスクはつきものですが、当社は空軍と協力してリスクをつぶしていきKC-46テストを完了し、画期的な性能を誇る同機計18機の迅速な納入につとめます」■