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2016年8月29日月曜日

★★北朝鮮ミサイルはレイルガンで一気に無力となる

レイルガン技術がどこまで進んでいるかはちっともわからないのですが、第三相殺戦略に怯えるのは北朝鮮だけではありません。これまでの投資がパーになるので必死にプロパガンダ攻勢をかけてくるのはTHAADの比ではありません。韓国国内でも当然同調する動きが出るでしょうが、レイルガンは艦艇に搭載できるので(電力に余裕があるズムワルト級がまず第一候補)国防部長官が6時間も住民により移動を封じられるような醜態は避けられるのではないでしょうか。ともかく技術の進歩に注意が必要で、北朝鮮の大言壮語が一晩にして無意味となればそれは愉快なことですね。


The National Interest



How the Third Offset (Think Railguns) Could Nullify North Korea's Missiles

August 26, 2016


  1. 金正恩が核弾頭つきミサイル配備を急いでいる。移動式ミサイルを陸上海中双方で実用化しようとしている。短距離ミサイルも入れればほぼ毎週発射している状況で、短距離スカッド、中距離ノドン、中間ムスダン、大陸間テポドンの各種がある。
  2. だが今週水曜日の潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)は日本に向け300キロ飛翔し、あらためて金がミサイル各種の整備に尽力しているのを示した。SLBM発射を「最大の成功事例」と述べたのは誇張ではない。北朝鮮のミサイル技術の進展は想定以上の速さだ。
  3. だが成功は失敗への一歩かもしれない。金が危険な妄想でミサイル王になると悲惨な結末になる。一度上がったものは下がらざるをえない。外交態度を変えないと金は悪夢の未来2つにつきすすむ。
  4. まずミサイル多数配備に勇気づいた金が危険な一線を超え、挑発行為のつもりが誤算あるいは偶発で紛争に火をつけ自らの破滅を招く可能性がある。あるいは貧しい国家財政をすべてミサイルにつぎ込んだあげく、韓国と米国がさらに先に行っている事実に直面する可能性がある。
  5. 米韓同盟は技術面で先を進み、ミサイル防衛の多重構造をさらに強化しつつある。韓国には韓防空ミサイル防衛(KAMD)システムがあり、多国間で展開中の装備にはTHAAD終末高度広範囲防空システムがある。日本の潜水艦部隊は北朝鮮潜水艦が出港しミサイルを発射する前に全艦を追跡撃破する能力がある。
  6. だが将来に目を向ければ金がミサイルで世界を恫喝する可能性より北のミサイル装備が米韓の革新的技術で一気に陳腐化される可能性のほうが高い。金一族も一気に無力となる。
  7. ミサイルや物理的質量に立ちふさがるのがエネルギー兵器で電磁レイルガンはその一種だ。米国で研究で弾みがついており、最先端技術により米国の兵力投射能力は温存されそうだ。
  8. 国防副長官ロバート・ワークは技術優勢を模索する動きを「第三相殺」と名付けた。この名称は第二次大戦後の米国が技術力で脅威の高まりに対応したことの延長だ。ソ連通常兵力がヨーロッパで示した脅威に核兵器で対応したのが第一の相殺で、ソ連が核兵器で同等の兵力を装備すれば、米国は長距離精密誘導通常兵器でリードを維持したのが第二の相殺だ。
  9. ワークが以前理事長を務めた新アメリカ安全保障センター(CNAS)は著者がまとめた報告書を今秋発刊し、第三相殺に関与する米韓専門家の寄稿も含める。7月上旬に同じテーマで会合を開催し、北朝鮮外務省の関心を呼んだ。これまで北朝鮮のミサイル実験で失敗が続いた印象を打ち消そうと言うのか、北朝鮮は「米国の戦略を明らかな破綻に向かわせ、『第三戦略』などたわごとにすぎない』との声明を発表した。
  10. 北朝鮮は大言壮語そのものでプロパガンダ詩人を動員し、技術的な知識が不足し平壌がすすめる極秘事業を知らせないまま情報戦を国内外でしかけている。その結果、技術的に遅れているのを実感させられるのは北朝鮮の方だ。
  11. 著者の若き同僚Seongwon LeeがCNASでの六ヶ月研究員生活を韓国国際交流財団の支援でこのたび終了するが、電磁レイルガン研究をしてきた。この装備開発だけで北朝鮮のミサイル装備整備は破綻する。
  12. Leeの説明するようにレイルガンは弾頭を電磁反発力で発射するもので、化学爆発力は使わない。その速度により弾頭自体が通常ミサイル以上の威力を発揮する。弾頭に爆発物を装備する必要が無いためレイルガン技術は安全面、射程距離、費用面で大きな優位性を発揮する
  13. 長期的に見ればこの新技術により韓国の抑止力は北朝鮮核兵器に対して3つの側面で威力を発揮する。先制攻撃機能による抑止効果、迎撃効果および報復攻撃だ。
  14. まずレイルガン発射体の速度により誘導ミサイルが緊急発進したF-15から発射されるよりも迅速なタイミングを実現する。同時に高速攻撃手段が現状のキルチェーンに加わる。
  15. 二番目にミサイルとレイルガンの費用比較は逆転する。KAMDの一部となればレイルガンのコスト効果は現行ペイトリオットやTHAADより高くなる。そうなるとレイルガンはミサイルから王座を奪うだろう。
  16. 三番目に、レイルガンの有効射程は水上艦主砲の比ではなく、威力が増加し報復攻撃に新たな選択肢を加える。
  17. 単一技術で歴史が革命的変化することはそんなにあるものではないが、第三相殺には多くの技術が含まれレイルガンのように新技術開発で劇的な変化が生まれる。自動3DコピーやAIによる迅速な探知技術と並びレイルガンは予想外に早く出現するだろう。
  18. 一旦実用化されれば北朝鮮のミサイル装備の没落は明らかとなる。金は外交的解決の機会を棒に振ったことを後悔するだろうがすでに時遅しとなる。■
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著者パトリック・M・クローニン博士は新アメリカ安全保障センター(CNAS)(ワシントンDC)でアジア太平洋安全保障問題の上級顧問兼上級統括職を務める。

2016年2月22日月曜日

★レーザー、AIで優位性を目指す米空軍の最新開発状況



レーザーが実用化されたら軍事応用ではパラダイムチェンジにつながるかもしれませんし、人口知能の応用研究が相当進んでいることがこのような公開情報からもうかがえます。第三相殺戦略の一環でしょうが、一層技術の防衛が必要になりますね。このブログの筆者は依然としてレーザー搭載には発電容量の制約とセンサー、プロセッサーの必要性があり、一定の大きさの機体でないと実用上は役立たないとみており、戦闘機への搭載は懐疑的です。むしろBattle Planeを防御するのに戦闘機は有効でしょうが。
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The Air Force of the Future: Lasers on Fighter Jets, Planes That Think

By Lara Seligman, Defense News11:02 a.m. EST February 20, 2016
WASHINGTON — 高出力レーザーを発射する戦闘機、大量の情報をミリ秒単位で処理するロボット、考える能力を有する戦術航空機、これは米空軍が考える将来の戦闘の在り方を根本から変える技術革新の数例にすぎない。
  1. 新年度予算で米空軍は科学技術S&Tを再重視し、25億ドルを要求している。16年度は予算強制削減措置でS&Tは削減せざるを得ず、グローバルホークやB-2爆撃機で性能改修を先送りしているので増額要求は心強い。
  2. だがロシアや中国も必死に追いつこうとする中で米国が後塵を拝するのは許されないと空軍主任科学者グレッグ・ザカリアスはこう強調する。「技術進歩を大幅に続ける必要があり、のんびりしている余裕はない」
  3. 今後わずか五年以内に空軍は高出力レーザーの発射を戦闘機で実施する。「スターウォーズ」の技術がいよいよ実現する。
  4. 搭載機種はF-15が有望だ。F-22、F-16やF-35も想定がある。空軍研究所(AFRL)の「シールド」事業は航空戦闘軍団が支援し、高エネルギーレーザーを戦術機で2021年までに実戦化するのを目指す。
  5. 同事業は2015年2月に始まっており、半導体レーザーの最新技術を利用する。小型レーザー装置を組み合わせて10キロワット超の高出力を実現する。開発チームはレーザーは機体防御用だと強調する。
  6. レーザーを戦闘機に搭載できるまで小型にすれば、米空軍は戦闘の有効性とスピードで相当優位に立てる。レーザーの電源はジェットエンジンが発電し、従来型の兵装を搭載せずに機体を防御できる。
  7. 開発は複数企業間で競合させて進めていると空軍は説明。一方の企業がレーザーを開発し、他社がレーザー兵器システムとしてまとめる。ここには電源、冷却、システム制御コンピュータ、戦闘管理用コンピュータを飛行可能な規模にまとめる作業が必要だ。三社目はビーム制御システムを開発し、目標照準を実現し、四社目がシステム全体の統合を行う。
  8. このうちビーム制御の契約交付を3月に空軍は予定しており、統合作業分の契約は9月になるという。レーザー本体の契約は2017年に延期し、残りの契約企業が開発に十分な時間をあてられるようにするという。
  9. だがスターウォーズの世界が現実になる前にシールドチームは乗り越える課題がある。空軍は特殊部隊が運用するAC-130に搭載可能なレーザーウェポンシステムを2019年までに完成させようと着々と進行中だが、小型高速の機体に搭載するのは難易度がはるかに高い。
  10. 高速飛行中に正確に照準を合わせるのは振動のせいで相当困難だ。もうひとつがシステムの小型化で戦闘機の機体におさめなくてはいけない。またレーザーを有効に利用するため安定電源も課題だ。
  11. この解決のため空軍は他軍の知見を利用し、陸軍の高エネルギー機動レーザー実証事業(HEL MD)がその例だという。同事業は10キロワット級レーザーをオシュコシュ製軍用車両に取り付けたもので、海兵隊も同様にハンヴィー車両への搭載を行っている。
  12. AFRLは自律制御技術の開発も進めており、ロボット車両や航空機のみならず意思決定の補助やデータ解析に当たらせるという。
  13. 進行中のプロジェクトには人工知能でISR情報を各種手段からあつめたものを融合し有益なデータを迅速に取り出す機能がある。現在は空軍要員が何時間もかけ動画に目を凝らし、忍耐強く関係ある進展を把握し、指揮命令系統を順々に伝え指揮官の判断を仰いでいる。これが自律制御システムだとデータが即座に把握され人員は別の任務にまわすことができる。
  14. マシンがデータを精査し、重要な内容を区別してくれれば、負担軽減だけでなく人員にやてもらいたい仕事を割り当てられるはず、とAFRLは言う。
  15. ただし自律制御機能が開発されても人間の判断が不要になるわけではないとAFRLは強調する。むしろ空軍要員に知能の高い相棒を作り、ミッションの完遂をより効果的に進めるのが目的だ。AFRLチームは無人機を有人機と一緒に運用する技術の開発中だ。
  16. そこでAFRLは空軍テストパイロット養成課程と共同でこのチーム運用の有効性と実施可能性を実証している。有人F-16が無人F-16と編隊飛行し、無人機にはパイロットがコックピットで緊急時に備えたが、アルゴリズムだけで機体操縦を完了した。両機は有人機パイロットが指示するまで編隊を維持し、その後無人F-16は編隊から離れた後で復帰したという。
  17. だがAFRLがめざすのは自動飛行ジェット戦闘機だけではない。2022年に予定の演習では新技術は自動制御ではなく自律運航であることを証明し、自身で航法し、想定外の天候に対処し、地上からの指示なくても自分で航路を変更できる機能を示すという。■


2016年2月6日土曜日

カーター長官が公表した第三相殺戦略の技術要素を見る


第三相殺戦略で公表してもいい部分をカーター長官は発表しました。その推進役がSCO戦略戦力整備室です。

Robot Boats, Smart Guns & Super B-52s: Carter’s Strategic Capabilities Office

By COLIN CLARK and SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 05, 2016 at 4:00 AM

A US Air Force B-52 flies over the Pacific on a flight out of Guam. Bombers like this one challenged the Chinese air defense one earlier today.US Air Force B-52
WASHINGTON: 重武装機 arsenal plane、ハイパー高速発射弾、高速飛行マイクロドローンの群れ、...もっと多くの開発案件があるが、秘匿情報だ。ではこれらを開発しているのはどこか。戦略戦力整備室 Strategic Capabilities Office(SCO)で、アシュ・カーター国防長官が2017年度予算案の紹介で初めて公表したペンタゴンの新設組織だ。SCOはカーターが重視する第三の相殺戦略の源泉であり、ペンタゴンがめざすアメリカのグローバルパワー維持のためロシアや中国が追随できない技術を開発する部局である。
  1. カーターが同室を2012年に創設した目的は「既存のDOD、各種情報機関、民間部門に新しい役割を与えて画期的な技術を実用化することで敵対勢力へ対抗すること、重点はいかに早く実用化するかで、10年や15年ではなく早く第一線に投入する」としていた。
SecDef spoke at the Economic Club of Washington, D.C.Ash Carter previews 2017 budget at Washington Economic Club
  1. その後カーターは同室の仕事ぶりを評価し規模を拡大し、長期投資案件も任せたことで、名実ともに戦略的な能力整備を行う部署にした。
  2. SCOのとりまとめ役にカーターが選んだのはウィリアム・ローパーで、カーターが「優秀な物理学者」と称賛する人物だ。(カーターも理論物理学者である) ローパーは「ついでながらローズ奨学生だ」とする。(カーターも同様)
  3. では具体的な武器を見ていこう。
重武装機とは
  1. 重武装機というとB-52に何トンものセンサーや武装を施すように聞こえる。カーターはこう言っている。「古い機体(最新のB-52は1964年製造)を飛行発射台に変えて各種通常兵器を搭載する。重武装機は巨大な空中弾倉として、第五世代機へのネットワーク機として前方センサーや目標捕捉のため既存の各種システムの組み合わせで全く新しい機能を実現する」
  2. 本稿の記者の一人コリンは同機の詳細をつかもうとした。空軍の迅速戦力整備室(RCO)はこの件に参画していないと判明したが、普通に考えれば同室が絡むのが自然な流れだ。RCOは長距離打撃爆撃機(LRSB)案件と関連技術を取りまとめている。コリンはB-52改装の確証は取れなかったが、理屈の上では同機の選択はぴったりだ。
  3. 実現の暁にはノースロップ・グラマンの多機能高性能データリンク(MADL)または同様の装備で目標標的や脅威対象でF-35やF-22が集めて莫大な量のデータを処理するのではないか。ミサイルや各種精密兵器を搭載する兵倉庫もつくだろう。
A Navy patrol boat converted to operate unmanned as part of an Office of Naval Research experiment in autonomous "swarms."海軍の哨戒艇が無人艇に改造されたのは海軍研究所による自律型「大群」無人艇運用構想の一環だ。
  1. 構想の一部は前からある。単に見過ごさられてきただけだ。マッケンジー・イーグレンはアメリカ公共政策研究所でペンタゴン予算を検証したところSCO予算が2013年度から盛り込まれているのを発見した。同室が絡んだ案件としてカーター演説では重武装機含め三つの事例を紹介している。空中、水中を移動するマイクロドローンの大群とハイパー高速発射弾だ。
  2. さらに資料からイーグレンは「SCO予算が2014年の125百万ドルから2015年に175百万ドル、さらに2016年委530百万ドルへと急増している」のを見つけた。ここには海軍のシードラゴンや無人航空機用ペイロード案件が含まれ、「マイクロUAVで自律的に大群で運動する、またシーモブでは無人水上移動体を多数一度に協調的に運航する」のだという。
  3. カーターは政策スピーチでこのシーモブについてこう表現している。「海に関して自律推進舟艇の開発が完了しており、ネットワークで接続すればあらゆるミッションの実施が可能だ。艦船防御から接近偵察まで人員の生命を危険にさらすことはない。技術進歩によるところが大きい。たとえばマイクロドローンでは民間技術を応用して3-Dプリントで製作するし、小型艇も人工知能のアルゴリズムを応用して建造するが、火星着陸機でこの技術の原始的な応用がされていた」
弾丸でミサイル迎撃をする
  1. 本稿の共同執筆者シドニーはハイパー高速発射弾(HVP)についてこれまで調べてきた。カーター長官はハイテク案件を四つ紹介したがHVPは文字通り爆発的な効果をもたらす。精密誘導弾であり、陸軍の榴弾砲や海軍の艦載砲に応用してミサイルの撃破が可能になるという。
  2. 「このハイパー高速スマート弾を電磁レイルガンに応用すれば局地防衛に使えるはずだ」とカーターは述べている。「既存の砲門で発射が可能で、海軍の駆逐艦や陸軍のパラディン自力推進型榴弾砲に応用できる」(陸軍や海兵隊が多用するM777榴弾砲でも使える)
M109 Paladin howitzerM109 Paladin howitzer
  1. これはどんな意味を持つのか。スカッドを生産してどこかに向けて発射するのは迎撃弾を生産しスカッドを撃ち落とすよりはるかに簡単にできる。つまりロシアや中国、あるいはイランや北朝鮮は安上がりな攻撃兵器の連続発射でこちらの高価な防衛網を圧倒しつつ迎撃手段が玉切れになるのを待てばよい。
  2. そこでレーザー兵器に関心が集まっており、飛来するミサイルを一回数ドル程度の電力消費で破壊する可能性がある。同様に海軍が開発中の電磁レイルガンも一発25千ドルのハイパー高速発射弾をマッハ7で100マイル先まで飛ばすことができる。ただレーザーもレイルガンも開発は完了しておらず、就役中の艦船が有する発電容量以上の電源が必要になる。そこで海軍研究所とSCOはレイルガン用の発射弾としてHVPを再考し、既存の火砲でも発射できるようにする。これなら既に数百門が利用可能だ。
  3. 米陸軍砲兵隊は155 mmのエクスキャリバー精密誘導弾を広く使っており、メーカーのレイセオンが海軍用に開発中の改造弾は高速攻撃艇を撃破できる。BAEシステムズのスマート砲弾にはフィンとロケット動力もついており、有効射程を広げられる。
  4. 「火砲から精密弾を運用する技術はすでに実用化しており、今やどこまで改良を進めるかの問題だ」とクリス・キング退役陸軍大佐は言う。キングはBAEの兵器システムズ部門で開発業務を率いている。
BAE Systems imageBAE Hyper Velocity Projectile (HVP)
  1. HVPはBAEシステムズの製品だ。BAEはロケット推進弾を二型式開発した。そのうち長距離陸上攻撃弾Long-Range Land Attack Projectile (LRLAP) は重量230 lb.射程63カイリで現在はロッキード・マーティンが海軍のDDG-1000ズムワルト級新型駆逐艦用に製造中だ。同艦は155㎜艦砲を搭載する。一方、重量100 lb射程54-nmの各軍共通誘導発射弾Standard Guided Projectile (SGP)はBAE自社開発で共通サイズの小型弾を陸軍の155 mm榴弾砲や海軍の5インチ砲(127 mm)で使う。
  2. 「LRLAPとSGPはBAEシステムズ含む業界でロケット推進で火砲の利用の延長でめどがついたのを示しています」(キング)
  3. HVPにロケット推進機構はついていない。このためHVPは安価かつ小型(68ポンド)だが射程も短く艦砲からは50カイリが限界だ。LRLAPやSGPに比べるとHVPは大型弾頭の長距離発射には適していないし海上艦船や陸上部隊の砲撃には適していない。ただし小型であるので機動性は高く、これまでの迎撃手段では不可能なミサイル防衛対策に応用できる可能性は高い。
  4. HVPの中核をなす「飛翔体」には誘導装置と弾頭を入れて28ポンドしかない。この中核部分を標的の種類にあわせ各種構成する。水上艦から巡航ミサイルを迎撃する、あるいは各種手段から発射が可能で、電磁レイルガンからでも、伝統的な火薬応用の火砲からでも運用可能だ。
  5. 「もともとレイルガン用に想定したが、海軍とDoDは他の火砲からも運用可能と見ていた。飛翔用の構成部品だけ変えればよい」とキングは記者に語った。
  6. どこが変わるのか。まず砲口速度、制御性、精密度でスマート砲弾は地上の静止目標を相手にすれば要求水準は高くない。GPS座標でホーミングしアクティブシーカーは不要だ。だが艦船のような移動目標に対しては砲弾は標的位置の情報を更新し進路を調整する必要がある。小型で超音速のミサイルのような標的が一番難易度が高い。
  7. カーター長官はミサイル防衛用にHVPだけ改修するのではなく、火砲にも手を入れる必要があるとみる。「砲の手直しもある程度必要で高速発射体に対応させるほか、これまでと違う砲弾への対応も必要だ」とキングは記者に語った。ミサイルが同時に多数飛来する場合には短時間で多数の砲弾を発射する必要があるが、「自動装てん機構が必要になるだろう。また砲身の寿命延長対策も必要だろう」
Navy Mark 45 5-inch cannon firingNavy Mark 45 5-inch cannon firing
  1. 「HVPだけ開発して火砲はそのままというわけにいかない」とキングは言う。新型砲弾を従来型火砲で発射して水上目標や陸上を攻撃するため改良が必要だとキングは言う。
  2. 同時に射撃管制やセンサーも改修が必要だ。海軍ではイージス防空ミサイル防衛システムを駆逐艦、巡洋艦に搭載しているが、HVPをどう接続させるか検討しなくてはならない。陸軍でイージスに最も近いのは統合対空対ミサイル防衛戦闘指揮統制システム(IBCS)だがまだ開発段階だ。
  3. カーター一派はHVPを安上がりに既存火砲に新しい用途を生む手段だと話している。HVPをミサイル防衛に使えば確かに高性能迎撃ミサイルやレーザー兵器をゼロから開発するより安価である。だが実際にミサイルを撃破するまでにはシステム開発が相当の作業になるとキングは言う。DIUx
もっとある新技術分野
  1. カーターの演説ではそのほかの技術も言及されているので実際にスピーチを見てもらいたい。
  2. SCOはカーターの進めるその他の大型技術革新にどう関与するのか。DIUx(国防技術革新統合実験)の名称でカーターはシリコンバレーに弑さなオフィスを開設しており、民間ハイテク部門にペンタゴンとの共同事業を進めさせ、これまでの深い不信を乗り越え、軍とは関係ないと考える民間の姿勢を変えさせようとしている。
  3. 「SCOとDIUxで一部重複部分があるが、前者は既存技術の応用を中心にしているようで、DIUxは予算もなく、ハイテク企業とペンタゴンの橋渡し機能で民間新技術を国防に使うのが目的だ」とイーグレンは指摘する。イーグレンはペンタゴンの政策決定層に対してDIUxとSCOの業務をもっとよく機能させる興味をそそる案を提示している。
  4. 「二つの組織が共同して機能していけるかが課題です。今のところはうまくいっていないのではないでしょうか。理想を言えば、DIUxは全く革新的な技術を発掘し、SCOはそれを受け短時間で試験評価をし、調達できるか判断すべきでしょう。つまりDIUxからSCOへの連携が必要です」(イーグレン)■
これはカーター演説を一度読む必要がありそうですね。もちろん公表できない範囲の極秘技術がもっとありそうですが。


2016年1月28日木曜日

AIを搭載した軍事装備品はどんな役割を果たすのか 米第三相殺戦略の方向性



この問題は以前も取り上げましたが、少しずつ中身がわかってきた(感がする)ので再度あえて同じ話題で掲載します。人間を超えるマシンが出現する可能性はありますが、あくまでも判断決断は人間がしておきたいという心情は理解できます。米国が目指すのは限りなく人間をサポートするマシンなのでしょう。ロシア、中国が人体を改造しているとの確証はありませんが、倫理問題が騒がれない分だけ仕事はしやすいのでしょうね。

‘The Terminator Conundrum’: Pentagon Weighs Ethics of Pairing Deadly Force, AI

By Andrew Clevenger 11:56 a.m. EST January 23, 2016

VCJCS speaks at Brookings(Photo: Army Staff Sgt. Sean K. Harp)

WASHINGTON — 国防総省は第三相殺戦略に120億ないし150億ドルを2017年度予算に確保し、根本から流れを変える画期的技術の開発をめざすと統合参謀本部副議長が述べた。
  1. 主な分野にはエネルギー生産・貯蔵、強力な威力を発揮する兵器技術、ソフトウェアによる誘導制御があると空軍大将ポール・セルヴァがブルッキングス研究所主催の会場で語った。
  2. 「一部の資金投入は結果を生まないだろう。だが小規模の賭けを同時にして違いを見つつ、優位技術と判れば推進力となり、第三相殺の手段となりうる」
  3. 「ただし問題は『民間部門で開発中の技術で戦力効果を増進させる効果が得られるのか』という点で、初回の相殺戦略では戦術核兵器、第二回目ではステルス技術があったが、今度は何になるのか。また先の質問の答がイエスなら戦闘方法も変わることになる。 これに失敗すれば軍は現行能力を少しでも伸ばして優位性の確保に務めるだろう。」
  4. 威力甚大な兵器を生む技術に指向性エネルギーや超高速発射可能な動力砲構想があり、ミサイル防衛の経済効果をひっくり返す可能性があるとセルヴァ大将は発言。非常に高価な高性能手段で弾道ミサイル・巡航ミサイルを迎撃するのではなく安価な装備でミサイル防衛が可能になれば、敵側はさらに高性能な攻撃兵器へ資金投入を迫られるはずだ。
  5. 米国は「10セントの問題に10ドルの解決策をあてはめている。必要なのは10ドルの問題に10セントで対応することだ」
  6. 実用化寸前まで来ている新技術があるが、深刻な倫理問題を引き起こしかねないとセルヴァ大将は注意を引いた。国際社会は生物強化策や人体への機械部品埋め込みで合意可能な規範を打ち出す必要に迫られるだろうとした。
  7. さらに人工知能の問題があり、自ら学習していくマシンは予めセットした任務だけ実施するロボットとは全く異なる存在で、今後の課題になると警告。
  8. 「人工知能は戦闘行為をより早く実施するのに大いに役立つし、戦闘の行方がより正確に予想できるようになり、敵の情報を活用して戦場で重要決断を下すことも可能となる。だが私自身は現時点で機械に決定させたくない」
  9. 「武器に敵の特徴を学習するよう指示すると、敵の特徴から目標捕捉ができるようになる。これもこの時点でこれをよしとすればだが。敵を捕捉しても、攻撃実施は人間の判断すべきことだ」
  10. だが軍はまもなく無人自律型の攻撃兵器の投入をすべきか決断を迫られる。
  11. 「倫理上の問題があり、戦争法でも問題になる。『ターミネーター』問題と呼んでいる。致命的な被害を与える機械が人工知能を備えたらどうなるだろうか」と発言し、「自動機械の心が読めるだろうか、知能をもった機械を作る事ができる前提でいっているのだが」
  12. 一つ困難が予想されるのは自律型、学習型装備のテストで実用的かつ確実性で意図通りの作動が可能になるのかという点だ。.
  13. 「国防総省では機械を組み立てれば壊れるまでテストを繰り返す。人工知能を持った機械の場合はこれができない。ソフトウェアが学習した内容をこちらに伝える機能が必要だ」
  14. だが実験施設外で自ら学習する機械が望ましい結論に到達し、こちらが望む反応を示すと保証できるだろうか。
  15. 「それは技術部門が悩む問題だろう。機材製造は比較的簡単になるはずだ」.
  16. 国防総省は莫大なデータベースからのディープラーニングシステムとして、世界各地の大型データベースを串刺しで分類区別したいとセルヴァは述べた。その目標はヒトに助言を与えれるまでにマシンを教えることで実現すれば大きな成果となると本人は見ている。
  17. 「普段使うデータセットが巨大化し複雑化して何らかの整理のしくみがないとデータの山に飲み込まれそうだ」とし、「何らかのアルゴリズムを作り、マシンに学習させれば天気予報が一変するし、農作物の栽培方法も変わるだろう。戦場でも敵の探知方法が一変するはずだ」■

2016年1月23日土曜日

身体能力を大幅に強化した兵士が出現する可能性

前回取り上げた人体強化兵士の話題ですが、次第に内容が判明してきました。正規軍はともかくテロ集団がこの技術を使えばどどんな惨事が発生するか、考えるだに恐ろしいことになります。記事で言うような国際会議で議論したとしても平気で無視する勢力が出るはずですから大変なことになりそうです。

「breaking defense」の画像検索結果

‘The Terminator Conundrum:’ VCJCS Selva On Thinking Weapons

By Colin Clark on January 21, 2016 at 6:04 PM

Terminator army: Warner Bros.
Terminator army from Terminator 3: Rise of the Machines Credit: Warner Bros.

WASHINGTON: 統合参謀本部副議長がインテリジェント兵器や強化型兵士の使用について国際議論が必要だと主張している。

  1. 「どこで線を引くのか、また誰が先に一線を越えるのか」とポール・セルヴァ大将は発言。マイクロエレクトロニクスの人体埋め込みの可能性をさしている。「人間としてこの一線を越える日がくるのか。そしてその実施にはじめて踏み切るのはだれか。これはきわめて倫理的な疑問だ」
  2. ペンタゴンは強化装甲、人工知能、超小型センサー、インテリジェント装具の開発に懸命であり、記者はセルヴァ大将に米国も同じ方向に進むのかとたずねてみた。実用化すれば兵士の能力は向上し、より早く走り、より高くジャンプし、暗闇でも目視でき、電子情報を収集し、長期間覚醒したままでいられる。これに対しセルヴァはロシアや中国に対抗して技術面で「大胆な変革」が必要としつつ、米軍がこの技術を先に実用化すれば人間性を問う「深刻な結果」を招くと慎重な姿勢だ。
Gen. Paul Selva
Gen. Paul Selva

  1. この技術は倫理人道上のみならず法律上も問題となる。映画ターミネーターのスカイネットを思い起こしてもらいたい。自ら考える兵器が人の命令とは別に勝手に作動したらどうなるか。セルヴァ大将は国際社会でこの問題を議題にすべきで国際法で認められる範囲内で成文化すべきだという。「国内、国際双方で議論が必要だ。敵対勢力がこの技術を実施したらどうなるか」と懸念を表明し、国際社会での検討を提案している。戦争行為を規定するジュネーブ協定のことのように聞こえるが、詳しくは述べていない。
  2. スティーブン・ホーキング、イーロン・マスク他1000名もの科学者、専門家が昨年7月に書簡を出し、人工知能を応用した兵器の禁止を訴えている。
  3. 「もし軍事大国のひとつがAI兵器開発で先行すれば世界中での軍拡になるのは必至で、技術開発の行き着くところは自律兵器がカラシニコフ銃のように普及することになる」
  4. 近い将来に実現する技術により何が可能になるのか。「一番実現の可能性が高いのがマイクロエレクトロニクスや人工知能を通信機能に組み合わせて大脳皮質に埋め込むこと、3Dプリント技術 additive manufacturingだ」とセルヴァは指摘し、脳信号で直接作動できる装具についても話している。「すでに試作品が完成しており、その作動は驚くべきものだ」とブルッキングス研究所で聴衆に紹介している。
  5. セルヴァからはペンタゴンに専用予算があり、第三相殺戦略構想の技術革新に使っていると紹介。ただし予算規模はあきらかにしなかった。
  6. 会場での質問に対してセルヴァは長距離打撃爆撃機に搭載する「各システムを制御するシステム」に触れている。「これまでで最高に複雑な地対空システムに対抗するもの」とし、開発段階でLRSBで「若干の初期不良があった」と述べたが、もちろん詳細には触れていない。■


2015年12月22日火曜日

★★近未来の戦争形態>人体改造まで行う中ロに米技術戦略は勝てるのか



ちょっと重い話題です。陸上競技のドーピングなんて問題じゃない人体改造までロシア、中国が行っていることを米国はすでに把握している模様です。完全機械化された戦闘部隊に対し米側は人マシンの一体運用で対抗するということでしょうか。よくわかりません。ともかく今や米国でMoT技術経営を真剣に考えているのはDoD国防総省であることがよくわかります。


Will US Pursue ‘Enhanced Human Ops?’ DepSecDef Wonders

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on December 14, 2015 at 6:46 PM
WASHINGTONーーー 国防総省の第三相殺戦略ではロシアや中国が開発中のステルス戦闘機、サイバー兵器、精密ミサイルに対抗可能な優位性を新規に確立しようとする。研究は緒についており2017年度に150億ドルを予算要求する。見え始めたその実現方法は人工知能と関係するようだ。
  1. だが優位性が長く続く保証はないと国防副長官ボブ・ワークは警告する。人工知能やロボットの新時代が民間部門で幕を開けようとしているが、ソフトウェアに国境は無意味で、ロシアや中国がこちら側の技術を盗み取ることは可能とワークは言う。事実、相手側の倫理基準はずっと柔軟なので、技術を盗まれてもこちらが盗めにくい。
  2. 国防総省による相殺戦略の二段目は精密誘導兵器、ステルス、ネットワーク技術だった。1975年ごろの話で「ロシア、当時はソビエトが追随できないとわかっていた」とワークは言う。だが現在は「同じ仮定は成立しない」という。「今は大戦間の時期に似ている」と1919年から1939年までの時期をさし、ドイツが電撃戦を編み出し日本や米国は空母戦力を整備していたが、技術が普及するや最良の要素を組み合わせて整備できた側に優位性が移ったことを言及している。
  3. 少なくとも一分野では敵方が先を行っており、身体や頭脳の一部に手を加え人体の限界を引き上げようとしている。「敵性勢力はごく当たり前に人体機能の向上をめざしており、戦慄させられる」とワークは言う。「こちら側はそんなことをする前に長々と時間をかけ決断しなくてはならないし、実施しても気持ち良いものではないだろう」 米軍はむしろ装備の改修に注力し、ヘッズアップディスプレイ、身体装着型電子装置、改良型防弾着衣、おそらく外骨格型補強装置も間もなく加わるはずだが、人体そのものには手を入れていない。
Robert Workロバート・ワーク国防副長官
  1. 敵側がこちらと同じ技術水準を目指しても、目指す価値観は大幅にちがうものになるだろう。「中国はロボット工学と自律制御に相当の支出をしており、ロシアの参謀総長ゲラシモフは最近こう言っている。ロシア軍はロボット化した戦場で戦う準備を始めていると。また近未来では完全ロボット化部隊が編成され軍事作戦を独自に展開するだろうとも発言している」
  2. ロシア製のロボット戦車がさまよう光景はSFの悪夢と言ってよい。米軍では「強力な兵力投入を決めるのは人間の判断力のみと強く信じている」とワークも強調する。「ただし独裁国家で人体も機械の一部で不完全な部品と定義すると完全自動化部隊の編制に向かうのは自然ななりゆきだ」とワークは述べた。「ソ連時代に偵察攻撃部隊を編成した時の考え方そのものであり、当時から完全自動化を模索していた」
  3. 対照的に米側の相殺戦略は機械の力を借りて生身の人間の力を増大させるものであり、機械に人間の代わりをさせるものではない。
  4. コンピュータはデータの山の中から判別し、人間が対応できない速さで動く脅威への対応を可能としてくれる。だが重要判断を下すのはいつも人間の役割だ。機械のスピードと人間の洞察力を生物のように組み合わせれば人間、機械のどちらかだけに依存する敵に優位に立てるだろう。
Gen. Mark Milleyマーク・マイキー陸軍参謀総長
  1. 「今の世の中ではいつも迅速に追随してくるものがいるが、こちらが迅速に先を進んでいる限り問題はない」とワークは言う。「みんながこちらの排気管の後ろについてくるんだったら、それでいい」
  2. ただし現時点の相殺戦略では全員をこちらの排気管のうしろを追随させるに至っておらず、むしろ自動車そのものを論じている感がある。ワークも技術と戦術の将来を仮説的に考えているが、いずれも試験段階にすぎないと認める。
  3. 「2017年度予算で300億ドルも使えるとは期待しないでほしい」とワークは言う。「おそらく120,130、150億ドルくらいでウォーゲーム、実験、実証をするだろう」 その後の数年間で実証できた技術に予算がつくはずだ、ただし、本当に実証できれば。
  4. 「可能性のある技術はたくさんありますが、『加速化』しないと実戦に投入できない」と陸軍参謀総長マーク・マイリー大将がCNAS主催の会合でワークのあとをうけて発言している。陸軍は有人無人の組み合わせをAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターとグレイイーグル無人機で実施しているとマイリー大将は報告。情報科学が進歩すれば今よりも小型で配備が容易な指揮所や自走式トラック部隊が実現するだろう。
  5. 「現時点でも利用可能な技術もあり、近い将来に実用化する技術もある」とマイリー大将は指摘した。「たとえば現在のロボット技術には戦場でも利用可能なものがあり、軍用化に向けて加速できるものもある」
  6. だが「加速」は無料ではないし、兵員の人件費や戦闘即応体制の維持のように優先順位が高い対象もあるとマイリーは続けた。「近代化の課題は技術や構想ではない。課題は予算だ」とし、両手を擦り合わせた。「近代化予算、S&T(科学技術)項目のような予算は陸軍でもこの数年間冷遇されたままだ」
  7. こちらの技術水準に追い付こうとする敵だけが懸念材料ではない。アメリカが長年維持してきた優位性は人員の高い能力だがこのままリードが維持できる保証はない。
  8. 「この競争で人的資源の優位性が永続するとはとても言えない」とワークは発言。「出発点で大きなリードしているのは事実だが」
  9. 「いかなる敵勢力にも有効なイノベーションを軍組織内で維持したい」とワークは宣言する。「相当の間は維持できるだろう。だが相手方が『次世代の指導層に権限を与え、あえて誤りを許せばイノベーションも失敗も体験させられる』と言い始めたらどうなるか。本当にこれをこちらより巧みに実現したら問題だ」
  10. ワークは口にしなかったが、歴史上では専制国家の方が創造的かつ適応力に富み、実は民主国家より権限委譲が進んでいた事例が見つかる。帝政ドイツの発明に「潜入戦術」があり、近代地上戦術の基礎で第一次大戦のことだ。小規模の突撃部隊が敵の防衛線の合間を縫って侵入し、フランス・英国の塹壕戦のこう着状況を打破している。ただし戦闘の主導権を奪還するには遅すぎた。ナチドイツも同じ潜入戦術を戦車で実施し無線通信と航空支援を活用した。それが電撃戦で民主国家フランス、英国の時代遅れの指揮官を完全に出し抜いた。(電撃戦は、航空母艦の開発、レーダーその他の戦術や技術の発展とともに軍事革命と呼ばれる) まとめれば無慈悲に圧政を行う側が軍事上の主導権を握り革新的な進歩を奨励しているということだ。
  11. 中国とロシアはまだそこまで到達しておらず、たぶん両国とも永遠に行きつかないだろう。だがワークは人的要素だけを米国の優位性とせず人間性以外の要素の完全活用も相殺戦略では重要と考えている。
  12. 「これまで何度も何度も提起されている課題はヒトと機械の協調であり、戦場での一体化です。AIと自律化による全く新しいレベルがヒト機械一体化で実現し、それぞれ得意分野で能力を発揮できるようになるのです」■


2015年11月4日水曜日

★技術力で優越性を確保する第三の相殺戦略の具体策が2017年度予算で登場?

なるほど技術優位性を確保してもすぐに他国が追いついてくる状況なので短期間のリードを保ちつつ、つぎつぎに民間技術を応用したイノベーション効果を期待するというのが第三の相殺戦略の骨子のようですね。極秘開発案件もありなかなかその内容が見えてきませんが、再来年の予算から具体像が見えてくるはず、というのがワーク副長官の考え方のようです。米国の官庁でMoTを一番真剣に考えているのがペンタゴンなのかもしれませんね。

We’ll Unveil Third Offset Details In FY17 Budget, Except The Black Part: Bob Work

By Sydney J. Freedberg Jr. on November 03, 2015 at 2:43 PM

Robert Work
ロバート・ワーク国防副長官

WASHINGTON: 昨年の今ごろ、ペンタゴン上層部は公に第三相殺戦略を新しい考えとして吹聴していた。その後、相殺そのものがステルスモードに入り、閉じられたドアのうしろで構想に取り組むようになった。
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  1. 記者はボブ・ワーク副長官に昨日会見し、相殺戦略の現状はどうなっているのか尋ねてみた。ワークから構想の全体像が明らかになった。なんといっても構想はワークが考えだしたものであり、現在のアシュ・カーター長官のもとでも高い優先順位が付いていることに変わりはない。
  2. 「第三相殺の意義をそのままお伝えすることはできない」とワークはDefense Oneサミット会議の席上で記者に語った。「長官がこの場で間もなく話題にするはずで、2月の新年度予算にも盛り込む。技術と運用の両面で現在の優位性を維持する」
  3. ワークは詳しい内容を明かしたが、一部は秘匿情報のままだ。ステルス機は1970年代の第二番目の相殺で重要な存在だった。精密誘導兵器やコンピュータ化した指揮統制もその一部だったが、ワークはペンタゴンはステルスを話題にしたのは1989年以降だったという。
  4. ただし今回の秘中の秘は攻撃手段としてのサイバー、宇宙空間、電子戦になりそうだ。ワークはこのことを口にしていない。だが軍用ネットワークや民間の重要インフラストラクチャの防衛と並び、サイバー安全保障の三番目の重要要素は「サイバー防衛能力であり、こちら側への攻撃を抑止するもの」と述べた。サイバー空間での抑止力としてワークが言及した内容は不明確なままだ。宇宙空間でも極秘開発が進展しているのだろう。現政権は新規予算50億ドルで今後5年で宇宙空間での指揮統制技術開発を進める。
  5. ワークが口にしていない内容にレーザー兵器やレイルガンがある。ともに飛来するミサイル迎撃に使える可能性を秘め、無人機や有人機にも対応できるかもしれない。発射コストは現行ミサイル防衛システムの数分の一にすぎず、しかも玉切れの可能性がない。
  6. 軍はロボット工学の応用に大きく関心を示しており、自走式地上車両から機雷を対処するミニ潜航艇、さらに無人機まで応用が可能だろう。ロボットは生身の兵員を危険な状況で助けるだけでなく、第二次大戦後のアメリカではじめて数の上の優勢をもたらすかもしれない。
  7. 「相殺戦略」の語句そのものは1970年代に生み出されており、数の上で米軍がソ連にかなわない状態の中で数の劣勢を高い水準の性能や技術で「相殺」する構想だった。その後遡及してアイゼンハウアー時代の「ニュールック」に適用され、共産圏の数の優位性に対して通常兵力ではなく核兵器を侵略行為には躊躇なく投入すると警告した事例が応用例とされた。当時の米国の核兵器の貯蔵量はいかなる国を凌駕していた。だがソ連が核兵器で追いつくと、米国は通常誘導精密兵器での優位性を前面に立てた。これが第二の相殺戦略だ。これまでの相殺戦略と現在の構想には相当の違いがあるとワークは指摘しており、その違いとは特定の兵器にこだわることで誤りにつながるという点だ。
  8. 「第一、第二の相殺戦略では競争相手は一カ国だけだったが、今や心配すべき相手は四カ国ある」とワークは指摘する。ロシア、中国、イラン、北朝鮮だろう。「さらに国境を超えた地域内テロ活動も発生している」としイスラム国が念頭にあるが今後新しい流れに転移する可能性もある。
  9. 「ソ連とは一貫して長期間に渡る競争関係があった」とワークは続け、米国の軍産複合体に技術革新で優位性があったことを指摘した。ただし現在の軍用新技術は世界各地の民間企業が生み出している。
  10. そうなると数多くの敵国が技術革新の情報源にアクセスできることで、競争の内容が複雑化し、予測が立たず、冷戦時代よりも熾烈になる。「第一大戦と第二次大戦の間と同様で、無線通信の存在は皆が知っており、戦車の存在も誰もが知っており、飛行機についても同様だった」 ただし、ワークは「最初に実用化し、初期作戦状態に持って行った側が戦術でも有利になった」という。
  11. ここで「初期優位性」というのは他方が簡単に模倣できるからだ。日本の空母部隊が真珠湾を攻撃したがその後アメリカの空母部隊により粉砕されている(その背景には暗号解読もあったが)ミッドウェーまでは7ヶ月しか経っていない。ドイツはロシアの大部分を1941年に蹂躙したが、1944年までにロシアがドイツを電撃戦で撃破している。21世紀には新技術はすべての国が利用可能となり、このような逆転劇が当たり前になると、アメリカの独壇場だったステルス技術もうかうかしていられなくなる。
  12. 「競争は熾烈になっていきます。技術面での逆転は簡単に発生するでしょう」とワークは言う。「第三相殺では優位性を40年間も維持しようとは考えません。急速に追いついてくる相手が多いのです。そこで今考えているのは今後5年ないし10年程度の優位性を確保することであり、その優位性の実現のために作業を進めます」
  13. 問題になるのがペンタゴンが早い技術革新ではあてにならない点だ。そこでまず技術そのものではなく、軍が技術を導入する仕組みそのものを変えていく必要がある。
  14. これはワークも認めている点だ。カーター長官はシリコンバレーに調達事務所を開設し産軍複合体と情報産業の間の技術ギャップを埋めようとしている努力をワークは評価する。ペンタゴンは10百万ドルでパイロットプロジェクトとして情報各機関のベンチャーキャピタルIn-Q-Telとともに進めている。また調達・技術・補給活動を担当する副長官フランク・ケンドールも長期間R&D案を打ち出した。ワークによれば国防総省は「真剣にパラダイムを変えようとしており、今後競争状態が厳しくなる環境でも機敏に動けるようになるだろう」■