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2023年10月12日木曜日

防衛白書で注目すべきは敵地攻撃兵器よりも中国の軍民一体の軍事技術開発能力や情報収納力である。防衛費増額は装備品の調達もさることながら、隊員の生活環境の改善もお願いしたいところです。

 

日本が「2023年防衛白書」に、中国の脅威増大と新型「カウンターストライク」兵器の取得を明記

上自衛隊は、情報収集と、トマホーク・ミサイル、高性能無人偵察機、改良型12式地対艦ミサイルのような兵器を大幅に増強している。急速に進化する中国の脅威に対抗するためだ。

浜田靖一前防衛大臣が「2023年度防衛白書」で引用しているように、中国の脅威が高まっていると明記されていても、誰も驚いていない。「中国は、核戦力やミサイル戦力を含む軍事力を質的にも量的にも急速に強化しており、東シナ海や南シナ海において、力による一方的な現状変更とそのような試みを継続し、増幅させている」。

防衛白書はまた、急速に進化中の攻撃対抗能力の証拠として、性能改修版12式地対艦ミサイルやトマホーク・ミサイルのようなスタンドオフ兵器の取得を明記している。

「日本がミサイル攻撃を受けた場合、ミサイル防衛網によって飛んでくるミサイルを防ぎながら、相手国に効果的な反撃を行い、それ以上の攻撃を防ぐことができる能力。これにより、相手の攻撃の意欲をそぎ、武力攻撃そのものを抑止する」と、白書は述べている。

具体的な取り組みとして、高度な指揮統制技術と情報収集技術によって、これらの兵器の目標捕捉と照準合わせを支援することが挙げられる。その一環で日本は、人民解放軍がAIや高度な監視技術を駆使して日本を脅かすなど、中国の脅威が増大していることを挙げている。

防衛白書は、監視技術と情報収集の大規模な強化を求めているだけでなく、日本が「反撃能力」を迅速に開発・獲得する重要性も挙げている。

白書は「迅速かつ正確な意思決定のための指揮統制機能と情報関連機能の強化」を求めている。

白書によれば、インテリジェンス領域における日本の進歩と近代化の努力には、「日本上空で送信される軍事通信電波、電子兵器、その他の電波の収集、処理、分析」が含まれる。白書はさらに、このような改良・拡大された分析に人工衛星、警戒機、偵察機、軍艦からのデータも含まれると明記している。

中国によるAIの使用は、日本の2022年度版防衛白書でも「インテリジェント化された戦争」と呼ばれており、兵器システム、監視資産、データ処理速度と能力のすべてが大幅改善されているとあった。

「中国の軍事動向は、中国の国防政策や軍事情勢に関する不十分な透明性と相まって、日本を含む地域や国際社会にとって重大な懸念事項となっており、この傾向は近年ますます強まっている」とある。

AIで可能となる「インテリジェント化された戦争」には、当然ながら、兵器システムや技術プログラムの広い範囲に影響を与える可能性がある。特に中国では、予算や技術交流に関して、文民と軍事の隔たりは一切ない。例えば、衛星データはより迅速に処理され、送信され、軍艦、ロケット、そして核兵器でさえも、改良された標的情報を受信し、整理することができる。

重要なのは、中国のAIが、「センサーからシューター」までの時間短縮、進路修正弾薬の進歩、マルチドメイン攻撃接続の実現、AIを活用した高速情報処理といった領域で米国にどの程度匹敵するかということだ。中国がこれらを重視していることはよく知られており、文書化もされているが、重要なのは、戦闘の「意思決定」サイクルの短縮に関して、PLAがどの程度進んでいるかということだ。

確かに、人民解放軍・海軍は拡大中で、核兵器に加え、J-31やJ-20のような第5世代航空機が急速に出現している。しかし、こうした懸念と並行して、中国のAIの利用拡大や、日本の報告書が中国の「民軍融合」と呼ぶ「軍民双方向の資源移転の加速」など、日本の報告書に明記されているその他重要分野もある。■

Japan Report Cites New "CounterStrike" Tomahawk & Type-12 Missiles to Deter China - Warrior Maven: Center for Military Modernization

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION

ORIGINAL:OCT 8, 2023

2021年8月1日日曜日

令和3年版防衛白書で自由で開かれたインド太平洋構想を打ち上げた安部前首相の功績が改めて注目される。台湾めぐり、西側の空気に変化。一つの中国原則に固執する中国へ日米は真剣対応する必要なし。

AP


 


 

本は安部前首相が提唱した積極的貢献策を継続し、域内平和と安定に役立てるとする菅首相の姿勢を最新の防衛白書で確認した。

 

「力が正義となる」動きを食い止めようと白書は広範な外交努力でルールに基づく秩序を守る日本の姿勢を強調している。2016年版白書で登場した「自由で開かれたインド太平洋」の実現をめざす三本柱に法の支配、経済面の繁栄、平和安定を掲げている。

 

最新版白書はワシントン、キャンベラが好意的に受け止めているが、北京は予想通り非難してきた。特に台湾に関するくだりで「台湾が日本の安全保障とともに国際社会の安定に重要」と明確に表現したことで反発を招いている。習近平は「国家再統一」を繰り返しており、米インド太平洋軍は今後六年以内に武力衝突が発生すると警告し日本にも警戒心が生まれていた。

 

台湾海峡から域内全体にかけての軍事力バランスが中国に優位に推移していることから白書では日本は「これまで以上の危機感を持って状況を注視すべきだ」としている。日本は台湾と友好関係を維持しているが、同国への大っぴらな支援は避けてきた。2021年版白書ではこの方針で変化が進みつつあるとしている。台湾支持派で知られる麻生太郎副総理が中国が台湾侵攻に踏み切れば「日米で台湾防衛に協力すべき」と発言したことが大きい。同発言は撤回されたものの、日米両国は「一つの中国」原則を形式的に口にしているに過ぎない。一方で東京の空気はワシントン同様にこれまで以上の台湾支持に傾いており、麻生以外に岸信夫防衛相含む政策決定層が台湾への共感を強めている。

 

白書では中国が日本へ向けた強い主張を向ける背景に軍事力増強を取り上げている。日本は尖閣諸島をめぐり東シナ海でまさにこの実例に直面している。白書は「中国は力により既成事実を一方的に変更しようとしており、尖閣諸島周辺海域が重大な懸念事項となっている」とした。典型的なグレイゾーン戦術として中国沿岸警備隊艦艇が日本領海侵入を繰り返している。白書は中国の海上警備法改正特に武器使用の許可へ懸念を表明している。

 

白書では安全保障上のその他懸念事項も列挙し、北朝鮮が核戦力整備を止めていないこともあるが、自然災害に関連して環境面の課題にも触れている。

 

白書は言葉を並べただけではない。日本が域内外交と安全保障でこれまで以上に前向きな役割を果たすのを支援すべく、日本の防衛技術の最新動向に触れており、特に宇宙、サイバー空間や電磁スペクトラムの新しいドメインに触れている。その背景に9年連続で増額となった防衛予算がある。

 

状況を一変する防衛技術に人工知能、極超音速兵器、量子コンピュータや5Gがあり、日本は各国と共同開発を進めている。白書では日本版トマホークと呼ばれるスタンドオフミサイルを攻撃手段として取り上げている。ただし、国内および国際法秩序の枠組みの中で先制攻撃には投入しないと明記している。

 

また白書は域内安全保障は「一国のみで対処できない」と認識している。防衛力と合わせ外交力を適正に活用することが域内各国を支援する日本の動きにカギとなる。米国との長年に及ぶ同盟関係では着々と強化が進んでおり、軍事力に加え外部への影響力、さらに米国も自由で開かれたインド太平洋原則を採択して日本を外交面で支援している。

 

オーストラリアも同原則を事実上支援する側で、同国政府は日本と「特別な戦略的パートナーシップ」の強化を進めている。在オーストラリア日本大使山上信吾は東シナ海問題でのオーストラリア支援を求めた。インドも日本が域内秩序の維持で頼りにする国で、四か国による安全保障対話を通じ提携関係の構築をめざす。

 

最新版白書への批判がさっそく北京から出ており、外交チャンネル、報道機関を利用し台湾に関する記述を問題視している。批判はさらに白書のデザインにも及び、表紙を騎乗侍にしたのは「好戦的」で軍国主義復活を匂わせるとまで主張。

 

とはいえ、域内での戦略競合状況が進み、日本は安全保障環境の悪化が進むと認識しており、白書は積極外交、国内防衛力整備、同盟国友邦国との協力強化を通じ国益を堅持しつつ法に基づく秩序を域内で実現していくとする菅政権の決意を明確に示している。■

 

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Japan Signals More Robust Security Posture in New Defence White Paper

By Thomas Wilkins & Daisuke Akimoto

July 30, 2021

 

2016年8月5日金曜日

防衛白書への中国の反応は「人民海上戦」への呼びかけ



 

Japan Warns China Over 'Territorial Aggression'

Agence France-Presse 11:01 a.m. EDT August 2, 2016

Pacific Partnership action(Photo: Petty Officer 2nd Class Jonathan Husman, U.S. Navy)
TOKYO —意図せぬ軍事衝突の引き金を引くリスクを中国が増やしているとの防衛情勢を日本が評価する一方で中国政府からは「海上人民戦争」の準備を進めよとの発言が出ている。
  1. 日本がこのたび公表した防衛白書では中国について「自己主張を強める傾向が続く」とし、その行動は「意図しない結果を招く危険な振る舞いがある」とする。
  2. 中国が南シナ海で広範な領海主張をし、人工島を建設し、軍事作戦の構えまで見せる中で域内各国との対立が深まるのは国際社会も看過できない。
  3. 中国政府は国連制度の一部たる仲裁法廷で自らの主張を却下され、、法廷判断を尊重するよう圧力を受けている。
  4. 白書では中国は「自国の一方的な要求を求めるばかりで妥協の余地を示していない」とし、「既成事実で現状を無理やり変えようとしている」と表現。そのうえで中国に判決に従うよう求めるが、当の中国は茶番だと結果を拒絶している。
  5. 中国国営メディア新華社は常万全国防相が「人民海上戦」の準備を急ぎ、海上脅威へ対抗し、主権を守れと発言したと伝えている。
  6. 国家主権の擁護と領土防衛のため軍、警察、人民を総動員すべきだと同国防相は浙江省視察中に発言している。ただし脅威の出どころについては通信社は解説していない。
  7. 米国が問題の海域で海軍哨戒活動を今後も続けると公言し、航行の自由原則を掲げるのも中国の神経を逆なでしている。
  8. 白書では東シナ海での中国の活動が増加していることに日本も警戒心をあらわにしている。両国は尖閣諸島をめぐる主権主張で対立しており、中国は釣魚諸島と呼称している。
  9. 「尖閣諸島近海での中国活動が強化されており、軍用機が同諸島付近を南方に飛行している事例がある」
  10. 平成27年度の中国機への航空自衛隊スクランブルは571回を数え、前年度から107回増加と白書は指摘。
  11. 防衛白書に対し中国国営CCTVは中国政府が「厳重なる」抗議を申し入れたと報道している。
  12. 新華社は白書を酷評し、日本は「中国の国防や中国の規範、東、南の両シナ海での合法的な海洋活動に無責任な論評を与えている」と非難した。
  13. 先月には日本軍用機が中国機に火器管制レーダーをロックオンしたと両国が対立した。
  14. 防衛白書は北朝鮮の核開発にも触れて、「核兵器の小型化と弾頭開発を実現」している可能性があると指摘。
  15. 1月に第四回目の核実験に踏み切った北朝鮮は核弾頭小型化でミサイル搭載が可能となったと主張しており、米本土を狙う大陸間弾道弾の燃焼エンジンのテストにも成功したとしている。■

2014年8月7日木曜日

海軍協会がH26防衛白書のポイントを紹介しています


新しい防衛白書を米海軍協会が早速紹介しています。忙しくて邦字新聞を見る暇がなかった方(当方含む)はご一読ください。(紹介の仕方が相当違うのではないかと思います)なお、本ブログでは護衛艦を駆逐艦、各自衛隊を各軍と表記しています。原文を尊重してDestroyer, Servicesからの訳語です。ご承知おきください。



Japan’s ‘Increasingly Severe’ Security Environment

By: Kyle Mizokami
Published: August 6, 2014 11:26 AM
Updated: August 6, 2014 11:26 AM

防衛省がこのたび公表した防衛白書では日本の安全保障を取り巻く環境は「厳しさを増している」と表現している。白書では 中国、ロシア、北朝鮮で潜在的な脅威とし、サイバー攻撃、海上挑発行為、核兵器を取り上げている。

同時に「動的防衛力」“dynamic defense”の各論として組織改編とともに5か年中の防衛装備の整備を概括している。自衛隊 Japanese Self Defense Forces (JSDF) の組織構造面での改編は冷戦終結後最大規模とし、人員増せずに新規能力の整備と既存能力の温存を図るとする。

新しい防衛方針の核心部分は陸海空の各部隊を「動的防衛隊」 “dynamic defense force”に再編することだ。これは高度機動力があり、日本各地での活動展開を可能とし、とくに尖閣諸島など辺境部で駐屯地の開設が困難な地点の防衛を視野にいれている。また米軍を参考に自衛隊も「共同運用」を拡大していく。

「動的防衛」の基本任務は島しょ部分への侵攻の阻止、特殊部隊あるいはゲリラの攻撃を封じ込めること、災害救難や非戦闘員緊急避難があげられている。とくに後者では韓国有事の際に日本国民を撤退させる想定だ。
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防衛予算は微増と見込み、現在の換算レートでは平成26年度予算は約469億ドル前年度比2.2%増となっている。このうち18.8億ドルは日本に駐留する米軍部隊の支援部分である。

海洋兵力



中国が海軍力整備を続ける中で海上自衛隊も増強を図っている。このうち新型P-1長距離哨戒機を23機導入し、P-3Cオライオンと交代させる。
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駆逐艦(護衛艦)は現行48隻を54隻に増強し、総トン数は52千トン増加させる。あたご級イージス駆逐艦の既存2隻でBMDソフトウェアを更新し、あらたに2隻を建造してBMD対応艦を8隻にする。各艦にSM-3ブロックIIA迎撃ミサイルを搭載する。潜水艦は22隻に増強。護衛隊は14へ増強し、潜水艦部隊は6になる。

興味を引くのは米海軍の沿海戦闘艦に類似した新型駆逐艦構想でモジュラー式の性能変更が可能としている点だ。この新型駆逐艦はさらに小型で曳航式ソナーを備える点が異なる。掃海装備をモジュラー化して搭載でき、現行の掃海艇が25%削減され18隻になることにも対応する。海上自衛隊は人員増が難しい中、駆逐艦を増強しつつ掃海能力を維持しようとしている。

航空戦力


航空自衛隊の改編では尖閣諸島で中国の領空侵犯に対処するため、那覇基地のF-15J配備数を倍増する。また同地区の空中早期警戒体制も1飛行隊を追加して2隊体制とする。このうち603飛行隊は那覇基地常駐とする。AWACs4機を追加導入する。
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戦闘機部隊も増強する。唯一残る偵察飛行隊は解隊する。F-15Jでは26機に性能改修を施す。F-35共用打撃戦闘機(JSF)の最初の28機の前払い金を支出する。F-35は三沢基地に配属される。

高性能無人機(UAVs)も導入する。このうち長時間滞空無人航空機調達事業はノースロップ・グラマンのグローバルホーク3機の導入になるのは確実だ。UAV運用は三軍が共同で行う。

陸上兵力


陸上自衛隊も装備の更新を受ける。まずペイトリオット部隊にはペイトリオットPAC-3性能改修型が配備され、北朝鮮と中国の弾道ミサイルへの拠点防衛能力を向上させる。


陸上自衛隊は機動性を重視していく。西部方面隊に水陸両用部隊を編成しようとしており、長崎県に配備される新部隊は琉球、尖閣双方の防衛を担当する。兵員3,000名と水陸両方強襲車両52両が配備される。V-22オスプレイ17機が即応展開を可能とするだろう。

陸上自衛隊の常設部隊の半数を「迅速配備編成」とし、師団単位で迅速な移動を可能にし国内の有事に備える他、周辺部への対応もさせる。この迅速展開部隊に3師団と7旅団を対象とする。このため戦車を整理し、300両を残すが、新型機動戦闘車両を配備する。

東シナ海での中国の活動強化に呼応して陸上自衛隊は琉球諸島全般に沿岸監視部隊を配備し、中国の軍事活動を監視する。移動式対空レーダーを遠隔の島しょ部に配置し、新型対艦ミサイル部隊9を整備し、沖縄に移動すれば宮古海峡の外国船舶通航を阻止できる。

サイバー対応

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白書ではサイバー防衛隊(Cyber Defense Group, CDG)を創設し、指揮通信システム隊C4 Systems Commandに編入するとしている。サイバー戦の重要性が高まってきたこともあり、CDGは防衛相から階層二つ下に編成される。同隊は防衛省及び各軍のネットワークを24時間監視し、一層高度になってきたサイバー攻撃の被害を予防する。CDGは各軍のサイバー戦部隊とも連携する。


興味を引くのは白書が安倍政権による集団自衛権の変更について多くを語っていない点だ。とくに米国との絡みでの言及がない。白書執筆の時点が方針変更の前だったことがその理由だろう。■