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2024年1月17日水曜日

米海軍空母は "空母キラー "ASBMによる中国の攻撃に耐えられるか?

 ASBMがイエメンのフーシ派により初めて実戦投入されたのはちょっとした驚きでしたが、長年米海軍空母を撃破できると豪語している中共の『本家』ASBMの実力はいかほどなのでしょうか。Warrior Maven記事からのご紹介です。

DF-26「空母キラー」対艦ミサイル


1週間前、USSカール・ヴィンソンはフィリピン海軍との海軍演習を開始した。演習は、増大し続ける中国の脅威を前に、米国とフィリピンの関係を改善し、親密さを増す目的があった。2023年4月、フィリピンが自国内の軍事基地数カ所を米国に提供することで合意したと発表され、両国間の大きな進展の前兆が見出しで称賛されたのは、それほど昔のことではない。

もちろん中国は、この米国の努力に激怒した。

地政学的な癇癪に相当することだが、中国は南シナ海での領有権を主張するため、「黄山」と名付けられた570級フリゲート艦にアメリカとフィリピン海軍の艦船を監視させた。環球時報によれば、アメリカは「移動中の大型艦艇を標的にする中国軍の能力を恐れており、空母の生存能力が著しく低下される」と主張している。環球時報は中国政府が所有し、中国政府の公式見解を発表するために使用される。「移動中の大型艦艇を標的とする能力」とは、中国が大いに宣伝している対艦弾道ミサイル能力をさす。

『Business Insider』は2024年1月5日、中国が対艦ミサイルをテストするため、ジェラルド・R・フォード級航空母艦とアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦の巨大なレプリカを砂漠に建造したと報じた。

対艦ミサイル(AShM)は長い間存在しており、中国だけでなく、世界中のほとんどの軍隊が対艦ミサイル、あるいは二次的な対艦能力を持つ別の分類のミサイルを保有している。

AShMは巡航ミサイルと弾道ミサイルの2種類に分類される。

米国のトマホーク・ミサイルのような巡航ミサイルは、発射地点から数百マイル以内の地表の標的を攻撃できる。これらのミサイルは飛行中ジェットエンジンで推進され、発射の瞬間から目標に命中するまで誘導されるため、特に移動目標に対しては比較的正確な攻撃兵器となる。巡航ミサイルは地球の大気圏内を亜音速で飛行し、小型の弾頭を搭載できる。例えば、米国のトマホーク・ミサイルは約450kg(1000ポンド)の弾頭を搭載している。対艦ミサイルの大半は巡航ミサイルであり、これらの対艦ミサイルの多くは、レーダー探知を避けるために水面近くを飛ぶ「シースキミング」型である。

しかし弾道ミサイルは、発射地点から数千マイル、いや数万マイル離れた地表の標的を攻撃することができる。これらのミサイルは、最初は強力なロケットエンジン(飛行のブーストフェーズ)で動力を得て、燃料がなくなる前に大気圏外にミサイルを運び出し、次にミサイル自身の運動量で弾道(弧を描くような飛行経路)を描いて自由飛行フェーズに入り、終末フェーズで目標の近くで大気圏に再突入する。弾道ミサイルの強力なロケットエンジンは、ブースト段階で信じられないほどの高速に達することを可能にし、大気圏外、軌道下自由飛行の真空中の空気抵抗が劇的に減少することと、再突入時の重力の補助とが組み合わさっている。例えば、米国のミニットマンⅢはマッハ23に達し、最先端のF-22ラプターの最高速度はマッハ2.25に達する。弾道ミサイルは巡航ミサイルよりもはるかに大きな弾頭を搭載でき、複数の弾頭を搭載できることも多い。弾道ミサイルの驚異的な速度は、大きな爆発弾頭が与えるダメージに加え、着弾時に極度の運動エネルギーを発生させ、それだけで標的を壊滅させることができる。弾道ミサイルの大きな弱点は、事前に計算された軌道で飛行し、飛行中の誘導がないことである。対艦弾道ミサイルは特殊な装備であり、4カ国しか保有していない。

中国が対艦弾道ミサイルに自信を持っているのは、強力な対艦弾道ミサイルの能力によるものである。現在、米国は対艦弾道ミサイルを開発中ではあるが保有していないのに対し、中国はDF-21と新型のDF-26の2型式を運用している。

DF-21

DF-21は1991年に就役した。最大射程は約1400~1700km、600kgの弾頭(約1300~1400ポンド)を搭載可能で、最大速度はマッハ10。円形誤差は約300メートル。DF-21は、弾道ミサイルの飛行の終末段階で、目標に接近する際にわずかな軌道変更を可能にする機動再突入体(MARV)を装備する。

DF-26 

DF-26は2015年に就役した。最大射程は3000マイルを超え、最大1800kg(約4000ポンド)の弾頭を搭載し、最大速度はマッハ18。

しかし、これらのASBMは、中国が期待するほど米国の艦隊にとって脅威ではないのかもしれない。弾道ミサイルに対する米国の主要な防衛手段はイージス弾道ミサイル防衛システムであり、すでにほとんどの米海軍艦艇に搭載されているイージス戦闘システムの派生型である。イージス弾道ミサイル防衛システムは、飛来する弾道ミサイルを軌道上のさまざまな地点で破壊する迎撃ミサイルを発射する。イージス弾道ミサイル防衛システムは53回テストされ、約80%の迎撃成功率がある。

イージス艦レーダー

さらに重要なことは、これらのテストにおいて、イージス艦は通常、ミサイル発射から90秒から約4分の範囲内で、飛来するミサイルを識別し、迎撃ミサイルを発射することができることだ。最大射程距離4000マイル、最高速度マッハ18のDF-26は、標的を攻撃するのに約20分かかる。これはイージス艦に迎撃ミサイルを発射する十分な時間を与え、最初の迎撃ミサイルが目標を外した場合、おそらく2発目を発射するのに十分な時間を与える。確かにイージス艦は、このようなASBMを迎撃できる可能性のある唯一のシステムだが、保証はない。米国は紅海で、移動速度が遅く、射程距離の短い弾道ミサイルを破壊する能力を十分に実証中だ。フーシ派の弾道ミサイルは、おそらくイランのQiam-1ミサイルかスカッドの模造品であるBurkan-2タイプで、射程は500マイル、最高速度はマッハ5以下の超音速であろう。つまり、フーシのミサイルは発射から標的を攻撃するまでに最低8分はかかることになる。

さらに、国防総省は極超音速滑空体(HGV)の脅威に対抗する準備を進めている。HGVはマッハ5からマッハ10で移動する兵器で、弾道ミサイルにはない高機動性を持つ。2023年5月、ウクライナ軍は新しいペイトリオットSAMシステムを使ってロシアのHVGを破壊した。これは、米国の現在のミサイル防衛システムがHGVの脅威に対抗する能力を十二分に備えているという主張を裏付けるものである。米国はまた、イージスシステムを何度もアップグレードし、能力向上を約束しており、2025年までに第一弾が実現する可能性がある。

中国脅威委員会から

最後に、米海軍は、中国の対艦弾道ミサイルを無力化または破壊することができるかもしれない指向性エネルギー兵器(DEW)と電子戦(EW)能力の実戦配備を推進している。DEWシステムの利点は明白で、光は音速(マッハ1)の約87万4030倍の速さで進むため、理論的には高速で移動する弾道ミサイルを迎撃する能力が高まる。仮定だが、DEWは大気圏を離脱した弾道ミサイルを破壊するのに使うこともできる。アーレイ・バーク級駆逐艦の大部分は、すでにDEW/EW能力を搭載している。米海軍の駆逐艦の多くは、オプティカル・ダズリング・インターディクター・ネイビー(ODIN)と呼ばれるEW装置を装備している。しかし、ODINの運用能力についてはほとんど公表されておらず、中国のASBMを無効化または破壊する能力があるかどうかを確認する方法はない。

中国の対艦弾道ミサイル

おそらく、中国のASBM能力について最も正確な分析を行ったのは、米海軍大学校(NWC)の中国海事研究所(CMSI)で戦略を教えるアンドリュー・エリクソン教授であろう:「技術的な詳細へのアクセスや基本的な技術原則への理解が限られた聴衆を圧倒し、それによって、作戦上得られていない恭順を生み出そうとしている」。

中国のASBM能力は米海軍にとって脅威であるが、それは米国が現在の技術で防御できる部分的な能力を持っている脅威であり、米国が今後10年間に最先端技術を配備することで対抗できることが確実な脅威である。中国が米国との差し迫った戦争に勝つため対艦弾道ミサイルを当てにしているとしたら、厄介な驚きを味わうことになるかもしれない。■

China Threatens US: Carriers vs. DF-26 "Carrier-Killer" Anti-Ship Missile - Warrior Maven: Center for Military Modernization

By Logan Williams, Warrior Editorial Fellow

Williams is a Warrior Editorial Fellow and is a writer and researcher currently studying at the University of Connecticut. Williams’ work has been published in newspapers, magazines, and journals, such as:, Geopolitics Magazine, Modern Diplomacy, The Fletcher Forum of World Affairs, Democracy Paradox, Diario Las Américas, International Affairs Forum, Fair Observer, History Is Now Magazine, American Diplomacy, etc.


2021年11月9日火曜日

中国が米海軍空母などの艦艇実寸大ミサイル標的を砂漠に構築。弾道対艦ミサイルの精度を上げるためか。中国は真剣だ。

 

2021年10月20日の衛星画像で米空母を模した標的がタクラマカン砂漠に見つかった。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

国軍が米空母の形を模した標的をタクラマカン砂漠に構築しており、標的演習場を新たに構築したのが衛星画像で判明した。画像はMaxar社が提供した。

 

米空母の実寸大輪郭に加えアーレイ・バーク級駆逐艦の輪郭少なくとも二つが演習場に見つかった。場所は 新疆ウイグルのRuoqiang若羌にあり、中国がいわゆる空母キラーのDF-21D対艦弾道ミサイル試射に以前使った演習地に近い。

 

タクラマカン砂漠で見つかった米駆逐艦を模した標的。H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

空母標的は平面で空母のアイランドは構築されていないようで、航空機用エレベーター、兵装など詳細は省略されている。レーダーを使えば周りの砂漠からこの標的が浮き出るはずだ。

 

さらに標的二つがあり、空母標的より詳細に構築されている。柱数本があり、おそらく計器測定用だろう。レーダー反射をシミュレートするものかもしれない。

 

また同演習場内にはレイルが敷かれており、10月9日のMaxar衛星画像を見ると全長75メートルの標的に各種計装をつけて幅6メートルのレイル二本で移動させている様子がわかった。

 

同地区はこれまでも弾道ミサイル試験に使われていると地理空間情報提供企業AllSource Analysisが解説している。

 

「米艦艇を模した実物大標的に加え、レイル移動式の標的もあることから標的捕捉、照準のテスト用だろう」と同社は見ており、模型のすぐ近くに兵器が命中した形跡がないという。「艦艇を模した標的に各種センサーもついていることから、この演習場は今後各種試験に使う意図が見られる」

 

衛星画像履歴を見ると空母標的は2019年3月から4月の間に構築されていたことがわかる。その後、工事が続いたが2019年12月に解体された。その場所が今年9月再び工事が始まり10月初めにおおむね完成した。


Ruoqiang施設内に見つかった移動式標的のクローズアップ写真。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

 

人民解放軍ロケット軍(PLARF)は対艦弾道ミサイル数種類の開発を進めており、陸上配備型のCSS-5 Mod 5 (DF-21D) の射程は800カイリ超といわれる。同ミサイルは飛翔制御可能な再突入体(MaRV)で艦艇を狙う。大型のCSS-18 (DF-26)は射程2千カイリ。

 

「PLARFは2019年7月に初の実弾発射を南シナ海に向け実施し、DF-21D対艦弾道ミサイル6発をスプラトリー諸島北側に発射した」とペンタゴンは中国軍事力報告で述べている。また長距離対応の対艦弾道ミサイルが2016年に出現している。

 

「多任務対応のDF-26は通常弾頭を短時間で核弾頭に変更が可能で精密対地攻撃のほか、対艦攻撃に使え、中国本土から西太平洋、インド洋、南シナ海を標的に収める。2020年、PRCは南シナ海上を移動する標的に対艦弾道ミサイル数本を発射したが、公式にはこれを認めていない」(報告書)

 

2021年11月5日に Capella Space が開口合成レーダーで米空母の輪郭を模した標的を撮影した。H I Sutton Illustration for USNI News

 

陸上配備型ミサイルに加え、PLANのH-6爆撃機に大型対艦弾道ミサイルを搭載している。2018年に初めて視認されたのがCH-AS-X-13で空中発射ミサイルとして最大の大きさがあり、極超音速弾頭の装着も可能な大きさだ。

 

さらに055型レンハイ級大型駆逐艦からの発射も考えられる。同艦は誘導ミサイル巡洋艦とも区分され、対艦ミサイルの発射が可能とペンタゴン報告書は述べている。

 

中国は以前も砂漠地方に空母標的を構築している。2003年に空母の大きさに近いコンクリート板が敷設され標的にしていた。同移設はShuangchengziミサイル試射場にあり、何度もミサイルの命中を受け、都度修理を受けていた。今回の新施設はそこから600マイル離れた場所にあり、もっと進んだ施設になっている。標的は実際の艦艇に極めて近い大きさになっている。

    DoD Graphic

 

新施設にどのミサイルを使うのか不明だが、施設が巧妙に作られていることからPLAが米海軍部隊の中国本土接近を阻止する手段の開発を進めているのは明らかで、空母部隊がその狙いであることはあきらかだ。

 

ペンタゴンは恒例の報告書を先週公開しており、PLARFの主任務に西太平洋に展開する米空母部隊の活動を制約することがあると記述している。■

 

China Builds Missile Targets Shaped Like US Aircraft Carrier, Destroyers in Remote Desert - USNI News

By: H I Sutton and Sam LaGrone

November 7, 2021 11:12 AM • Updated: November 7, 2021 12:58 PM

2019年9月17日火曜日

イランへ臨戦態勢、しかしイランは米海軍艦艇を撃破する能力がある


Locked and Loaded: Could Iran Sink the U.S. Navy If War Breaks Out?
イランにはミサイル多数がある。それで艦船を沈められるのか Could they start sinking warships? 
September 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMilitaryTechnologyWorldMissiles

2009年、中国が移動式中距離弾道ミサイルDF-21Dを開発し900マイル先の艦船撃破を狙っていると明らかになった。この技術は当時出現したばかりだったが、米原子力空母の残存性が議論になった。というのはDF-21Dが空母運用の攻撃機材の戦闘半径より外から狙い撃ちできるためだった。このことから米海軍は対弾道ミサイル機能を駆逐艦、巡洋艦にSM-3ミサイルとして装備することを迫られた。
弾道ミサイルは弧を描く弾道で飛翔距離と速度を最大限に確保する。大気圏外に一旦移動してから考えられないほどの速力で標的に向かうこともある。DF-21はマッハ10までになる。ただし、10年前は対艦弾道ミサイルそのものが存在しておらず(ソ連が開発を試みたものの実用化できなかった)、というのも都市破壊用の弾道ミサイルはともかく移動中の小型標的を正確に狙う技術が未確立だったためだ。
とはいえ、わずか二年後にイランも対艦弾道ミサイル開発に成功したと発表してきた。イランは自国軍事技術を誇張したり虚偽の作り話をすることが多いが、2013年に流出した映像にはミサイルテストが成功した様子が写っていた。また2014年には米情報分析で同ミサイルの配備が確認されている。このミサイルにはハリジファルスKhalij Fars(「ペルシア湾」)の名称がつき、イラン国産開発短距離弾道ミサイルファテFateh-110の派生型だ。トラック搭載型のファテ-110は固形燃料を使用しているため短時間で発射可能だ。液体燃料ミサイルでは発射準備に数日かかる。
ペルシア湾の名称をつけたミサイルは電子光学赤外線シーカーで重量1,433ポンドの弾頭を移動する海軍艦船二名中させることができるというが、イランがシーカー部分を隠した写真しか公表していないため事実は確認不可能だ。イラン国内記事では2013年のテストでミサイルは移動中の艦艇目標に誤差8メートルで命中したとある。2014年のCSIS評価ではハリジ・ファルスミサイルの誤差は平均数十メートルで、革命防衛隊にすでに配備済みとある。
ただしファリジ・ファルスの射程はDF-21の四分の一程度の190マイルから220マイル程度であり、飛翔速度もさほど高くないマッハ3程度である。であれば、ファリジ・ファルスの迎撃は比較的容易だ。
中国のASBMでも同様だがファリジ・ファルスでも観測機材が別途必要で初期段階の目標方位を慣性誘導装置に送る必要がある。(GPS誘導も導入している可能性がある) 米水上艦艇の移動速度は30ノット程度なので空母はミサイルの「標的ボックス」内に入ると電子光学誘導によりミサイルの降下段階では進路変更しても限界があるだろう。空母部隊の艦艇は同ミサイルの発射状況を把握でき、退避行動で標的ボックス外に出ようとするだろう。そうなるとイランも複数のミサイルを発射し標的にしようとするはずだ。
ただし、ペルシア湾とは実は狭い海域でホルムズ海峡の35マイルが一番狭い部分で最大でも220マイルしかない。そうなると移動発射台を攻撃範囲に対応して多数配備することは困難ではない。ミサイルの最大速度が毎分38マイルのため早期警戒に使える時間も限られ、迎撃ミサイルの対応も困難になる。
広い太平洋と違い、ペルシア湾内で艦船の位置をつきとめ標的情報を得るのは容易になる。イラン海軍および革命防衛隊海軍は各種の偵察機材を運用しており、モーターボートから半潜水式舟艇、米製CH-53SH-3ヘリコプター、無人機、バヴァール-2ホバークラフト、地上配備探知レーダーを投入するはずだ。
2014年にイランは高速(マッハ4)の対放射線仕様のハリジファルスをホルムズ-1-2として陸上、海上運用型として展開しており、おそらく世界初の対レーダー弾道ミサイルである。対放射線ミサイルは艦艇が有する強力なレーダーという利点を逆に不利な条件にしてしまう。レーダー誘導からホーミングするためだ。そこで艦艇はレーダーを切り、ロックを解除するがその他の脅威に身をさらすことになる。
ホルムズミサイルは長距離のゾルファガーと同じ発射装置を共有できる。これにより対艦ミサイル部隊は短時間で多数の発射が可能となり防衛体制を飽和できる。さらに1991年の湾岸線の教訓から航空優勢状態が確立していてもトラック搭載弾道ミサイルの位置を突き止めることは恐ろしく困難であることがわかっている。
20188月にイランはファテモビン{輝かしき制服者)をファテ-110の派生型として赤外線シーカーを最終段階の誘導方式に使うと発表し、レーダー探知を逃れると主張したが、外観上それを裏付ける兆候は見られない。モビンのシーカーは明らかに対艦と対地攻撃両用だ。
201810月には革命防衛隊航空宇宙軍の司令官アミール・アリ・ハジゼダからイランが射程700キロの新型ASBMを開発したと主張した。これだとオマン湾も射程に入る。米水上艦艇にはイージス防空システムから大きな効果を受けており、ハリジファルスより高性能のミサイルにも対応可能だ。さらに米空母は常に支援用艦艇と同時に運用される。
ただし革命防衛隊の短距離ASBMはペルシア湾内の一部方面に展開しているのでその位置を探知する機会は多数生まれる。さらにASBM攻撃は水面ギリギリを飛翔する対艦巡航ミサイルとことなる飛翔経路を取ることで、多数のミサイルを同時発射する飽和攻撃で、各種ミサイルを取り混ぜて発射すれば防衛側を圧倒する可能性もある。
ペルシア湾内を通行する民間商用船舶の存在が重要であることから、イランはASBM改良に注力しながら世界にその能力を喧伝して通常兵器による抑止効果を保ちつつサウジアラビア、イスラエル、米国との緊張を高めていくのだろう。
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared earlier in the year.


2019年7月6日土曜日

中国のミサイル発射は対艦弾道ミサイルの初の発射だった

China's Reported Anti-Ship Ballistic Missile Test In The South China Sea Is A Big Deal

The test fits within a larger trend of increasingly provocative Chinese efforts to assert their authority in the disputed region.

IMAGINECHINA VIA AP IMAGES

国が少なくとも一発の対艦弾道ミサイル発射テストを実施し、各国の思惑が交錯する南シナ海にしたとの報道が出た。真実なら中国軍がこの地区を標的にミサイル発射した初の事例であり、それ以上に中国の過激なまでの太平洋での権力拡大をさらにエスカレートさせることになりそうだ。
NBCニュースが、匿名米関係者の談として最初に報道したのが2019年7月1日のことだった。NBCの取材源はミサイルの種類を言及せず、最終的にどんな標的に命中したかも触れていない。中国政府、米国政府いずれも試射の事実を公式に認めていないが、先週末に実施したようだ。中国は航空関係者向けにNOTAMを南シナ海で二地点を対象に発出して、ミサイル発射と軍事演習について注意喚起していた。NOTAMの有効期限は6月30日から7月1日を有効期限としていた。
NOTAMのひとつが海南島からパラセル諸島まで広範な海域を指定していた。北にはスプラトリー諸島があり、中国が実効支配するウッディ島も範囲に含まれていた。この位置関係から中国軍はミサイルを本土から発射し、ミサイルが飛翔に失敗しても海中落下するよう設定したようだ。
人民解放軍のロケット軍(PLARF)には機動性を備え空母など大型艦を十分標的にできると言われる弾道ミサイルがすくなくとも二種類ある。DF-21D中距離弾道ミサイル(MRBM)とDF-26中間距離弾道ミサイル(IRBM)だ。
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2018年4月に民間衛星画像の解析からこれまで知られていなかった基地が海南島にあるとの指摘があり、今回のNBC報道や公表ずみNOTAMの内容とも合致する。DF-21ないしDF-26は海南島から発射すればスプラトリー諸島まで十分到達可能だ。中国は短距離射程の対艦ミサイルを別に開発中だがこれでは中国本土から発射しても南シナ海への到達は不可能だ。
中国がDF-21DあるいはDF-26をスプラトリー諸島付近に本当に発射したのであれはPLARFが海上目標にミサイルを初めて発射したことになる。中国はゴビ砂漠に空母大の目標をつくりミサイルを発射している。
今回の試射が単純にミサイルを中国本土から発射して南シナ海まで到達させられる能力を示すものであった可能性はある。これでも重要なデータが入手でき今後より実践的な標的を狙うのではないか。
GOOGLE EARTH VIA THE FEDERATION OF AMERICAN SCIENTISTS
ゴビ砂漠に作られた空母大の標的には大型ミサイル数発の命中した跡が認められる。
今回の試射は2019年1月にPLARFのDF-26部隊が短時間でゴビ砂漠及びチベット高原に展開し米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦USSマッキャンベルがスプラトリー諸島を通過した際に対応したことの延長線上に有るようだ。その時点で中国は敵艦艇には安全な場所から弾道ミサイルで対応する能力が有ることを示したかったのだ。実際には弾道ミサイルは一発も発射していないが。
今回のミサイル発射は同様に米海軍と海上自衛隊が南シナ海で2019年6月に実施した戦闘演習に対抗したものであった可能性もある。今回はニミッツ級空母USSロナルド・レーガン打撃群に日本の「ヘリコプター駆逐艦」JSいずもが加わった。
2018年に日本側はいずも級は当初から空母能力を想定して建造したことを初めて認め、F-35B共用打撃戦闘機の運用に対応させると発表した。中国は日本の防衛力整備に一貫して批判的で現行憲法の改正で自衛隊が現状を超えた軍事活動を実施することにも強く反対している。
JMSDF
USSロナルド・レーガンがJSいずもと南シナ海で2019年6月に共同訓練を展開した。

2019年3月にフィリピンに寄港した米海軍強襲揚陸艦USSワスプは、異例なまでのF-35で兵力搭載していた。ワスプはその後スカボロー礁沖合に進出し、中国とフィリピンが領有権を争う場所だ。
スカボロー礁は中国が目指す「戦略三角形」の一部で中国の領有権主張にとり重要だ。残りはウッディ島が北に位置し、スプラトリー諸島が南にある。中国は2014年から南シナ海で大規模な造成工事を展開し人工拠点づくりを続けてきた。
同時に中国は地対空ミサイルや沿岸部に対艦ミサイル他軍事装備を各拠点に持ち込んでおり、広い意味の接近阻止領域拒否体制を構築している。
GOOGLE MAPS
中国の南シナ海における「戦略三角形」、すなわちパラセル諸島のウッディ島(北西)、スカボロー礁(南東)、スプラトリー諸島(南)を示す地図.
南シナ海の標的に対艦弾道ミサイルを本土から発射できれば中国に新しい防御体制が生まれる。更に内陸部に移動させれば敵の一次攻撃から逃れる可能性も増える。
対艦弾道ミサイルが対艦巡航ミサイルによる防衛網に加われば、敵側に防御が困難となる。弾道ミサイルの探知発見は迎撃にまして困難で低空飛行する空気吸い込み式巡航ミサイルへの対応と大きく異なる。
中国が大型艦を想定した標的に命中させる技術を実証した事自体に大きな意味があるが、信頼性は別の話だ。同様に人民解放軍に艦艇を発見するセンサーと通信ネットワークがありPLARFが数百数千マイルの彼方からミサイルの照準をあわせられるのかも不明だ。
とはいえ2019年6月のミサイル試験は今年早々のDF-26演習とともにPLAがこの能力開発を依然進めていることを如実に示している。中国が空中発射式弾道ミサイル開発に関心を示しているとの報道もあり、実現すれば弾力的運用につながり、南シナ海での領有権をはばかることなく中国は主張していくだろう
DOD
スプラトリー諸島に点在する中国の人工防衛拠点

さらに中国軍が戦力を同地域近辺で整備するのと並行して海洋警備活動を強化していることに注意が必要で、中国が主張する海域を遥かに超えた場所で公船、民間船舶がパトロールを展開している。2018年9月には052C旅游II級駆逐艦蘭州が米海軍アーレイ・バーク級駆逐艦USSデカターとスプラトリー諸島で衝突寸前になった。
米中両国は貿易戦争で動きが取れない状態だが、台湾を巡っても両国の緊張が高まっている。G-20サミットが日本で開催されたがドナルド・トランプ大統領と習近平主席は関税追加を棚上げし交渉を再開することで合意した。トランプは中国通信家電大手のフウァエイへの制裁緩和にさえ言及し、二国間の貿易問題での緊張案件となっていただけに意義深い。
だがPLARFが南シナ海へミサイル発射したとすると、経済面で緊張が緩和しようが、南シナ海で広がる自国権益を撤回するつもりが中国にないことが明確だ。■
Contact the author: joe@thedrive.com

2017年3月15日水曜日

★北朝鮮は対艦弾道ミサイルを開発ずみ



今この瞬間で北朝鮮のASBMが脅威にはならないようですが、注目すべきはイランと北朝鮮の技術移転です。イランから一方向の技術供与があるだけでなく北朝鮮からどんな技術が提供されているのか、核技術なのか生物化学兵器なのか。どちらにせよこんな危険が現実になる前に北朝鮮は地図から抹消するのがいいでしょう。


North may be developing an anti-ship missile

Mar 14,2017
  1. イランの技術支援を受け北朝鮮が対艦弾道ミサイル (ASBMs) を開発中との話が複数筋から入ってきた。
  2. 韓国国防省関係者は北朝鮮は標的捕捉技術を実用化ずみで、スカッドERミサイルで昨年9月と今年2月に実験していると3月12日に明かした。
  3. ASBMは移動目標の最新位置を探知し、飛翔の調整が可能で予め設定した目標を狙う通常のミサイルとは異なる。今のところこの技術を有するのは中国とイランだけと言われる。
  4. 北朝鮮が技術をイランから入手した可能性があると現地筋が述べ、両国は1990年代から軍事開発面で関係強化している。
  5. イスラエルのバルイラン大ベギン=サダト戦略研究センター主任研究員ダン・ショハムは中央日報の電子メール取材で北朝鮮がファテ-100を2012年頃に入手していると指摘。同ミサイルはイラン最新のASBMである。
  6. 現時点で北朝鮮ASBMが脅威にならないのは同国に位置捕捉用の衛星がないためだ。
  7. 北朝鮮のミサイル開発では北朝鮮動向を専門にするウェブサイト38 Northが詳しいが、プンゲリ核実験場の衛星画像から第六回目の核実験が近づいていると伝えている。
  8. 同ウェブサイトは大規模なトンネル掘削工事が続いていると指摘し、距離は800メートルになっているという。第六回目実験の日程で考えられるのは8月16日で金日成生誕記念日だ。
  9. 北朝鮮は主要記念日に軍事力を誇示する傾向がある。■