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2018年9月4日火曜日

日本の防衛力の要となる人員を人口減高齢化社会の日本で確保するには思考の転換が必要だ

日本でも遅ればせながら無人装備の開発に拍車がかかってきたのは良い傾向でしょう。日本の防衛力維持にどれだけの人員が必要なのか。不足するなら技術でカバーできるのか。いや、やはり一定の人員数が必要なのか。いずれにせよ日本が今までとは違う社会になっているからこそ新しい思考、過去の延長線を断ち切れるたくましい思考が必要なのですが。

How to Make Japan's Military Great Againこの方法で日本の軍事力は再興する

Can the Self-Defense Forces’ (SDF) force level and structure sufficiently cope with the increased defense capability?自衛隊の戦力水準、構造は防衛力増強のニーズに応えられるのか
August 25, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanSelf-Defense ForceChinaIndo-PacificU.S.-Japan Alliance
2017年12月15日、安倍晋三首相は共同通信編集者会議の席上でスピーチし、総選挙での勝利、アベノミクス、社会保障問題、北朝鮮、中国と多様な話題を取り上げた。その中で特に取り上げたのが防衛大綱(NDPG)の2018年内改訂で、日本の防衛装備調達を中期防(MTDP)として次の5年間に渡り定める内容となる。
スピーチで安倍首相が強調したのが改訂方針で「専守防衛を所与の条件としつつ国民の安全にとって真の意味で寄与する防衛能力を確認していきたい。既存装備をそのまま維持することはしない。日本を取り巻く安全保障環境の現実を重視する」とし、いよいよ今年は安全保障上で大きな変革の年になることを予感させた。
だが本質的な疑問はこの十年以上答えがないままでNDPG策定で解答が求められる。現在の自衛隊の戦力水準と構造で防衛能力の向上が十分可能だろうか。
2014年度防衛大綱、中期防での防衛力増強
現行の2014年版大綱では自衛隊の抑止力および即応力を数と質の両面で強調している。例として自衛隊は能力整備で海と空での優越性確保を重視しており、これを有効な抑止力ならびに即応体制の基本とし南西部における防衛力整備が含まれている。
この目標達成に向け2014年版NDPGおよびMTDPでは以下の主要対策を想定した。(A)駆逐艦を47隻体制(うちイージス駆逐艦6隻)から54隻(イージス駆逐艦8隻含む)に拡充 (B)潜水艦を16隻から22隻体制にする (C)戦闘機を260機から280機へ増強する (D)空輸飛行隊を1個飛行隊から3飛行隊へ増強する (E)水陸即応旅団1個の整備 を掲げていた。
2018年度執行が4月から始まったが現行MTDPで23あった調達項目のうち13で予算化され、駆逐艦5隻(うちイージス艦2隻)、潜水艦5隻、F-35A(23機)、水陸両用車両52台が対象だ。日本の防衛力整備は想定どおりに進んでおり、2018年版のNDPGとMTDPがこの12月に内容を更新する。
現在の自衛隊戦力構造はどうなっているのか
2017年3月31日時点で自衛隊の総人員は224,422名でうち6割が陸上自衛隊(GSDF)、19パーセントが海上自衛隊(MSDF)、また19パーセントが航空自衛隊(ASDF)、統合幕僚部(JSC)が2パーセントだった。充足率(実際の人数と必要人員数の比率)はGSDFが9割、MSDFで93パーセント、ASDFが92%、JSCが91パーセントで自衛隊全体としては91パーセントだった。各隊で人員不足とはいえ当面は十分と言える。では何が問題なのか。
深刻なのが一般隊員での不足がめだつことだ。MSDFの一般隊員には運用要員見習い、運用要員で構成されるが、幹部、上級隊員、一般隊員の各部門は2017年度で93-99パーセントの間だったが、一般隊員では69.5パーセントにとどまっていた。詳細は不明だが戦闘部隊での一般隊員が想定の7割程度になっていると想像できる。
自衛隊ではこの問題に長年に渡り対応策を模索してきた。これまでの防衛白書によれば充足比率は2008年から2017年の間に69から76パーセントの間を推移している。ただし艦船は100%の人員を確保してこそ所与の機能を発揮できることに留意する必要がある。
こうした状況で自衛隊は各隊を完全な形で機能する部隊にすべく考えられるすべての対策をとっている。2008年から海上自衛隊はソマリア沖海賊対策の国際協力に部隊派遣しており、現在も駆逐艦一隻が活動中だ。2011年5月19日の国会議事録によれば駆逐艦二隻を海外派遣するにあたってMSDFは各艦の人員充足率を最低でも9割とすると確約している。このため残る自衛艦で充足率が7割から8割に落ち込んでいる。つまり日本本土近くで活動する艦艇で人員が不足したままなので作業ロードが高くなっていることになる。
防衛力増強と隊員数の関係は
2015年以降にMSDFはいずも級ヘリコプター駆逐艦(乗員定数470名)二隻、あさひ級駆逐艦(同上230名)一隻、そうりゅう級潜水艦(同上65名)を就役させた。約1,430名の隊員が合計で必要だ。もちろん新規就役艦の裏には退役艦があることがわかる。ただ新規建造艦は大型化する傾向があり、いずも級が交代したしらね級ヘリコプター駆逐艦は乗員定数350名だったので単純に120名追加する必要がある。
今後就役する駆逐艦潜水艦はすでに予算手当がついていることに注意が必要だ。まや級イージス駆逐艦(350名)二隻、新型30DX水上艦(100名)二隻、そうりゅう級潜水艦(65名)3隻がある。これだけで995名が必要となる。
では海上自衛隊の隊員数は2014年から増えているのか。防衛白書を見るとそうではないとわかる。2014年度末の42,209名が2016年度末に42,136名に微増しているだけだ。そのため疑問は残ったままだ。海上自衛隊更に自衛隊全体は本当に機能できるのだろうか。
大幅な人口減がやってくる
2012年度を見ると自衛隊全体で平均毎年14千名が入隊し10千名が退官あるいは任期満了で去っている。このため毎年4千名が残り、自衛隊合計で224千名が227千名になった。ただし近年の経済回復傾向とあいまって出生率の低下傾向ならびに高学歴化のため自衛隊隊員募集の環境はきわめて厳しい。2017年度でいうと自衛隊は一般隊員として陸自に5,400名、海自1,100名、空自1,660名の募集目標を立てたがそれぞれ8割、6割、8割しか集めていない
更に大幅な人口減がやってくるのは確実であり、このため現在以上に隊員確保が困難になるのは避けられない。日本が超高齢社会に入っているとの指摘は出ており、人口減社会は現実のものだ。自衛隊入隊年齢の18歳から24歳人口のピークは1994年の17百万人だったが2016年度ではこれが6百万人35%減となった。2030年には適正年齢層は9百万人になりそうだ。
防衛省も各種対策を展開し、女性隊員の入隊を増やす(2016年度現在で6.1パーセント相当になった)ほか、今年10月より入隊可能年齢を延長する。だが日本には定年年齢の延長措置の検討が必要であり、元自衛官の再採用や女性隊員をさらに増やす必要もある。
今こそ自衛隊の人員構造を見直すべきだ
では将来の隊員不足に対応しつつ望ましい防衛力を自衛隊は確保できるのだろうか。スウェーデンがロシアの脅威に対応し徴兵制を復活させた。日本も同じ方法をとれないのか。答えは否である。理由は「憲法違反」だからだ。日本国憲法第18条では「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とあり、現行政府の解釈では徴兵制は「服従の強制」とされている。安倍総理も2016年3月の国会でこの見解を認めた。
新技術はどうか。超高齢化社会、人口減少社会の日本では無人装備の研究開発が必要だ。防衛装備庁が防衛技術戦略構想を2016年8月発表しており、まさしくこの方向で今後20年間進むと示されている。今後の有望案件は無人水上艇(USV)と無人水中機(UUV)でそれぞれ一ヶ月以上連続投入可能という想定だ。このうちUUVは対艦ミサイルと魚雷を搭載する。米国も同様の研究をしており、日米共同体制のうえで大きな意味を持つことになるかもしれない。
こうした技術の開発は相当の長期間が必要だし簡単に運用可能に進めない。そのため今利用できる高性能兵器装備の調達が早道だろう。イージス・アショアを二箇所に導入する決定で日本本土全体をカバーできるとともに弾道ミサイル防衛運用での海上自衛隊の負担を軽減できる。イージス・アショアは陸上自衛隊が運用し、最初の施設は2023年に運用開始となる。
中国の海空軍事力の整備に直面する日本だが自衛隊員の数が現在も将来も不足する中で独自の海空防衛力増強が必要だ。新防衛大綱ではこの課題に取り組み解決策の提示が求められる。陸自6海自2空自2という現行の人員配置は1980年代中頃から変わっていないことが毎年の防衛白書からわかる。これを今変えるべきで、自衛隊員の比率変更こそ政策の柱とすべきだ。
各種報道によれば日本では陸海空の枠を超えた隊員勤務を検討しているという。現在、海上自衛隊には481箇所、航空自衛隊には392箇所の基地施設がありそれぞれの人員で警備保安をしている。これが検討中の新体制なら陸上自衛隊に海自、空自の基地を警備させ、その分で浮いた隊員が重要任務に割り当てられる。これはよいスタートとなり今後は各隊の枠を超えた運用が必須となろう。その例として陸上輸送、ISR、ミサイル防衛、サイバー、宇宙、電子戦がある。
インド太平洋を睨む米戦略への影響は
中国の軍事力拡大に同対応するかで米国では議論が盛んになっている。おもに3つの考え方がある。(1)米国の軍事力増強 (2)米軍のアジア撤退 (3)中国周辺国の軍事力増強 である。では日本が自衛隊隊員の再調整に成功するかがここで大きな意味を有する。仮に人口構造変化への対応に日本が失敗した場合、日本は防衛力増強ができない事態に直面し安全保障面で米国依存をさらに強める結果となるかもしれない。だが米軍にも独自のミスマッチ問題が人員数とふえるばかりの需要の間にあり、インド太平洋地区では事故が複数発生している。日本が自衛隊隊員構成の調整に失敗した場合に米国はどう対応すべきだろうか。新防衛大綱は12月に発表され、米国の政策決定層が注視するのは確実だ。
Dr. Aki Nakai is an adjunct faculty in the Pardee School of Global Studies at Boston University and the Political Science Program at Lesley University. His research interests lie in the intersection of international security and politics of the Indo-Pacific region.
Image: Wikipedia

2015年8月24日月曜日

★変わる日本の防衛政策を米側はどう見ているか

参議院での審議も続いているようですが、法案の成立が待ち遠しい今日この頃です。以下の米海軍協会サイトの論文はなかなか要点をついていますが、デモ隊写真が新華社提供というのは考えさせられますね。
「USNI News」の画像検索結果

Essay: Understanding Japan’s Shifting Defense Policy

By: Kyle Mizokami
August 20, 2015 10:55 AM

Japan's Prime Minister Shinzo Abe reviews members of Japan Self-Defense Force (JSDF) Oct. 26, 2014. Reuters Photo
自衛隊を観閲する安倍首相。2014年10月26日。Reuters Photo

安倍内閣が国防政策ですすめる大きな変革の内容は米国政府、太平洋地区の米軍にも重要な意味がある。これまでの内向きな対応からより積極的かつ動的に二国間のみならず多国間関係を重視する新しいねらいが、日本国内で物議をかもしているとはいえ、各国からみればごく普通のものにすぎない。

  1. 安倍内閣の安全保障は日本を世界にもっと関与させる方向にもっていこうとし、米国との協同作戦能力を引き上げるものだ。日本が有する事実上の軍事力自衛隊は日本防衛で米国と同等に作戦が実施できる。
  2. 安倍首相は防衛法案2案を通過させようとしている。ひとつは国連平和維持活動に参加する各国の支援をするものだ。現状では紛争の一方に加担することになるとの理由で国連活動であろうと実施できない。
  3. 二番目の法案は現行法複数を改正し集団的安全保障を可能とするものでもっと重要な中身だ。日本が攻撃を受ける他国の救援に駆けつけることを許すもので、国連憲章第51条ですでに認められている概念だが、日本では憲法解釈上禁じられてきた。
  4. 集団的安全保障葉かねてから安倍の持論だったが、中国との関連で実施が急務となっている。日本専門家の一人は安倍政権は中国が日本と交戦しても日本がもっと世界に通じる主張を展開していかなければ米国は日本防衛をしてくれないと見ている。


Japanese ship Shimokita operates U.S Marine V-22 Osprey aircraft near San Diego Calif. in 2013. US Navy Photo
カリフォーニア州沖で米海兵隊MV-22を運用する輸送艦しもきた(2013年). US Navy Photo

防衛予算の行方

  1. 中国が国防予算を年率10パーセントも増やす中、日本は0.8パーセントと控えめな拡大を2018年にかけて続ける見込みだ。次年度防衛予算の要求は5.2兆円(419億ドル)だ。野党の反対姿勢、経済成長が不確かで財政赤字がGDPの233パーセントになっていることからこれ以上の予算拡大は見込めない。
  2. 日本は大規模防衛調達案件を三つ抱えており、大部分は米国原産の装備だが、米軍との共同作戦実施や相互運用を重視している。来年度予算では大型案件としてSH-60ヘリコプター17機、新型戦闘艦、105mm砲搭載8x8輪車両があり,後者は迅速展開部隊への火力支援を目的とするものだ。
  3. さらにいずも級ヘリコプター駆逐艦の二番艦建造、イージス駆逐艦2隻追加、ベル=ボーイングV-22オスプレイ17機、ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機42機の調達が控えている。また新型水陸両用車両の開発がうわさされており、米海兵隊から購入した中古車両52両の代替用となるといわれる。

A member of the Japan Maritime Self Defense Force works inside the combat operations center of the Ticonderoga-class guided-missile cruiser USS Antietam (CG 54) on Nov. 27, 2013. US Navy Photo
タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦USSアンティテタム(CG-54)の戦闘作戦室で訓練を受ける海上自衛隊員。2013年11月 US Navy Photo

日米演習から共同作戦へ
  1. 米軍と自衛隊は毎月共同作戦を実施しており、時には毎週となることもあるが、安倍政権はさらに協力を深化させている。今夏は陸海空自衛隊が米軍の各部隊と演習を実施中だ。
  2. 7月は航空自衛隊の機材がエルメンドーフ・リチャードソン共用基地でレッドフラッグ15-3に参加している。航空自衛隊はレッドフラッグ演習の常連だが、今年は三菱F-15J戦闘機6機、C-130輸送機3機、KC-767給油機2機、E-767AWACS1機を派遣している。
  3. 8月12日、陸上自衛隊第一空挺団の落下傘兵が米軍の同僚たる第25歩兵師団第四連隊とともにアークティック・アウロラ演習に参加した。日本の落下傘兵が米本土に降下したのは初。同日に自衛隊の特殊部隊員が米陸軍のブラックホークヘリコプターに搭乗中にUSNSレッド・クラウドへの着艦に失敗して負傷している。
  4. また8月後半に陸上自衛隊、海上自衛隊がドーン・ブリッツ演習Exercise Dawn Blitz にカリフォーニア州で参加する。ヘリコプター駆逐艦ひゅうが、イージス艦あしがら、揚陸艦くにさき、他規模不明の陸上自衛隊両用部隊隊員が米国主導の多国間演習に参加する。
  5. 米国以外にオーストラリア、フィリピンとも共同訓練を実施しており、今後インド、インドネシア、ベトナムとも同様の訓練を実施する合意ができている。


U.S. Navy and Japan Maritime Self-Defense Force (JMSDF) ships underway in formation as part of a photo exercise on the final day of Keen Sword 2011. US Navy Photo
共同演習Keen Sword 2011最終日に米海軍艦艇と航行する解除自衛隊艦艇。 US Navy Photo

南シナ海で共同作戦の展開へ

  1. 米国との訓練はこれまでもあったが、共同作戦はまだなかった。対中国戦略の一環として日本も中国の領有権主張を認めない各国と歩調を合わせている。
  2. 「航行の自由」パトロールを行う米軍構想に日本は関心を示しており、他にフィリピン軍も加わる見込みだ。南シナ海で活動を展開しても日本には損はない。もしこれで中国の膨張を食い止められれば日本の戦略目標が達成される。.
  3. 海上自衛隊艦船や航空機が南シナ海に展開すると挑発行為と見られるだろう。中国政府は日本が南シナ海でパトロールを展開することは「受け入れがたい」としており、南シナ海の9割は中国領海だと主張している。

相互運用のカギとなる装備品調達

E-2D Hawkeye from the Pioneers of Air Test and Evaluation Squadron (VX) 1 on Aug. 27, 2013. US Navy Photo
E-2D. US Navy Photo
  1. 米海軍の協調型交戦能力 Cooperative Engagement Capability 構想でセンサーデータを共有しネットワークを介してミサイルに標的情報を提供するべく装備を調達するのは自衛隊がこれまで以上に米軍と密接に作戦を展開する意図があることを示している。
  2. 自衛隊が米軍との共同作戦で重視するのがノースロップ・グラマンE-2Dホークアイ性能向上型4機だ。この早期警戒機の調達は総額17億ドルで国務省が6月に承認しており、今後はNAVAIR海軍航空本部が手続きを進める。
  3. E-2Dが搭載するAPY-9レーダーは日本・同盟国の海上部隊のレーダー探知範囲を拡大する以外に、弾道ミサイル探知にも水上艦より遠距離から対応でき、巡航ミサイルや航空機へはSM-3やSM-6をネットワーク化した艦船から発射する。
  4. また日本が計画中のイージス駆逐艦7号艦、8号艦はまもなく建造が始まり、協調型交戦能力および共通データリンク管理システムが搭載され、対空脅威、ミサイル脅威の情報を米艦・航空機と共有する。この協調型交戦能力により日本のイージス艦はセンサー搭載機材としてF-35、E-2Dと共有してデータを他艦に伝えることができる。日米の差は問わない。


Protestors against Japan's shift in defense policy. Xinhua Photo
防衛方針変更に反対するデモ隊 . 新華社.

日本国内の戸惑い、法案成立は確実


  1.  安倍政権による安全保障改革は大きな波紋を呼んでいる。第二次大戦終結後の日本は平和を何より優先する考えを採択し、紛争解決に軍事力を行使しても効果を生まないと考えるにいたっている。そのため安倍政権の目指す方向は大多数の日本人には平和を志向する姿勢の後退、再軍備への道と受け止められている。.
  2. それでも安倍政権や背後の自民党への政治対抗勢力が大きくないことから今後野党からのゆり戻しはないと見る。二院制をとる日本の議会下院が安全保障関連法案を7月に通過させており、上院は9月6日までに法案の採決を迫られている。仮に上院が法案を通過させなくても、下院は通過させて上院の否決を無効にできる。

結語

  1. 安倍首相が進める防衛政策の変更にはとくに変わった内容はない。日本では物議をかもしても、国連が各国の権利と認めるものを日本で実現するに過ぎない。日本社会で今回の変更に対する反対が着実に増えているが、法案は可決成立する可能性は十分ある。
  2. 一方で自衛隊は米軍の空軍海軍部隊との共同作戦体制に向かい、これまでと異なる次元に入ろうとしているが、両国部隊が戦場で切れ目のない統合運用におかれることになる。関心の的がインド太平洋に移ると日本は米国にとって一番価値があり有能な同盟国と映るはずだ。■


2015年5月6日水曜日

★オスプレイ>日本向け売却案の概要、17機で総額30億ドル



Pentagon Notifies Congress of Potential $3 Billion V-22 Osprey Sale to Japan

By: Sam LaGrone
May 5, 2015 5:33 PM
Japanese ship Shimokita operates U.S Marine V-22 Osprey aircraft near San Diego Calif. in 2013. US Navy Photo
サンディエゴ沖合で米海兵隊V-22を運用する海上自衛隊輸送艦しもきた、2013年 US Navy Photo

米議会へ日本向けV-22(ベル=ボーイング製)ティルトローター17機の販売(支援装備含み総額30億ドル)を5月5日に通知したと国防安全保障協力庁(DSCA)から発表が出た。

  1. DSCA(ディスカ)声明文では自衛隊地上部隊の活動範囲が広がり、米軍との共同作戦が一層強まると解説している。
  2. 「日本は輸送能力を強化して防衛、特殊作戦の用途への対応向上を目指している。今回提示のV-22BブロックCオスプレイ機の売却で陸上自衛隊の災害人道救援活動および揚陸作戦能力が大幅に強化される」(声明文)
  3. 「今回の売却で同盟国日本にも相応の負担を求めるとともに米軍との相互運用能力が高まる。日本にとって同機の部隊編入は容易に実施可能」(同上)
  4. 売却案には暗視ゴーグル、レーダー各種、予備部品、訓練機材が一式に含まれる。
  5. 日本がオスプレイ調達の検討に入ったのは2013年のことで中期防衛計画の改定で米海兵隊をモデルとした揚陸強襲能力の拡充を求める一環とFlight Globalが1月に報じていた。.
  6. 日本が二隻建造するいずも級ヘリコプター空母の一号艦が就役した。V-22の母艦としては理想的だ。米海兵隊はひゅうが級DDHで2013年にV-22運用試験を行っている。
  7. 有償軍事援助では国内向け調達と異なる手続きが必要となる。.米議会が売却案を承認し、日本側が販売条件を受け入れてはじめて企業側が最終的な販売条件を認め納期を決定する、というのが国務省による説明だ。
  8. ベル=ボーイング関係者はUSNI Newsの照会に対してコメントを出していない。■


2014年9月18日木曜日

★★日本も陸上配備イージス導入か。海自イージス艦も性能改修へ



イージスはヨーロッパ向けに陸上配備の整備計画も進んでおり、日本も導入したいというのが今回の背景でしょう。なお、いつもながら防衛省の使っている「護衛艦」は駆逐艦と訳しています。ちゃんとDDGとなっていますからね。



Report: Japan Interested in Aegis Ashore for Ballistic Missile Defense

By: Sam LaGrone
September 16, 2014 1:23 PM
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
テスト用のイージス陸上型の指令制御建家が太平洋ミサイル試射場内に設置されている。 Jan. 8, 2014. US Navy Photo


防衛省がロッキード・マーティンのイージス陸上型 Aegis Ashore 弾道ミサイル防衛装備調達に関心を示していると毎日新聞が報道している。

  1. 記事では平成27年度に防衛省は数千万円規模の研究費を要求する。イージス陸上型はロッキード・マーティンのSPY-1Dレーダーとレイセオンのスタンダードミサイル-3を組み合わせる。

  1. 防衛省は導入済みの艦船搭載SM-3に加え、地上発射型SM-3で弾道ミサイル防衛(BMD)の実効性を上げる意向、と記事は伝えている。

  1. USNI Newsはロッキード・マーティンと米ミサイル防衛庁(MDA)に問い合わせたが、同記事について双方から言及がなかった。

  1. 日本関連で実施中なのはレイセオンの陸軍・海軍共用レーダー監視BMDレーダ(AN/TPY-2) が唯一の事例とMDA報道官はUSNI Newsに述べている。

  1. 日本はこんごう級イージス搭載誘導ミサイル駆逐艦4隻にSM-3を搭載し、長距離弾道ミサイルに対応しているほか、ロッキード・マーティンのペイトリオット性能向上型 (PAC-3) 移動式地上発射迎撃ミサイルを極地防衛用に運営している。さらにイージス艦を2018年までに8隻に増強する予定と報じられている。
.
  1. 「大量のミサイルが同時に飛来すればPAC3では対応しきれないとの懸念がある」と記事は伝えている。

Japanese Aegis Destroyer JS Kongo (DDG-173) launches a SM-3 in 2007. U.S. Navy Photo
こんごう (DDG-173) のSM-3発射 (2007年)US Navy Photo

  1. ただし、こんごう級のイージスBMD装備は旧式化しており、BMD対応と防空戦を同時に実施できない欠陥がある。

  1. そこで一部艦船をベイスライン9仕様に改修し、BMDと対空対応(AAW)を同時に行えるようにする計画がある。

  1. イージス陸上型はベイスライン9で作動してもAAW装備は付随していないが、日米海軍艦艇で運用中のイージス装備が似通っていることから、将来的には能力拡大の余地があるとみられる。

  1. 「艦艇用イージス装備を流用することで、AAW以外に最終飛行段階や中間飛行段階防衛も可能だ」とジェフ・ウェストン海軍大佐Capt. Jeff Weston(陸上イージス計画主幹)が昨年行われたUSNI News取材で答えている。ウェストン大佐は米国向け陸上イージスはBMDを中心に対応する、とも述べている。

  1. ただし日本向けのイージス陸上型にAAW能力を追加し、BMDと同時に防空作戦を複数目標向けに行う可能性が出てくるだろう。■



2013年6月13日木曜日

新しい方向を示す日本の防衛力整備

 

Japan Plans More Aggressive Defense               

US Naval Institute, May. 26, 2013 - 10:50AM                             
               
       
Japan's ruling party guidance calls for boosting the amphibious capabilities of the Army's Western Infantry Regiment, here training alongside US Marines in California in February. (Capt. Esteban Vickers/US Marine Corps)
                                                     
           
70 年近く限定的な防衛能力の維持にとどめてきた日本が揚陸作戦能力、先制攻撃能力の整備に乗り出すべきであり、弾道ミサイル防衛能力も拡充すべきだというの が政権与党による政策提言の骨子だ。同提言は一般公表前にDefense Newsが入手したもので、宇宙配備の早期警戒システムの増強も求めている。同提言をとりまとめたのは石破茂、中谷元の防衛相経験者なので相当の重みのあ る内容だと政策研究院大学の道下徳成准教授は言う。
  1. 提言内容が政策に反映されると今後5年間の中期防衛計画の調達支出で高い優先順位を与えられることになる。防衛省は同計画を12月までに公表する予定だ。
  2. 時あたかも安倍政権が憲法第9条を改正し「国家主権の手段としての戦争」のための「戦力の維持」を禁じるというくだりを削除し総理大臣を最高指揮官とした「国防軍」を保有できるよう求めている。
  3. 自民党による政策提言では個別具体的な兵器名称を表現しておらず、2009年にまとめられた前回の提言内容から具体性を下げている。「当時は自民党は政権の座になかったので表現も直截的にできたのでしょう」と道下准教授は解説する。
  4. 前回の提言ではボーイングKC-46空中給油機の導入をもとに北朝鮮のサイルを発射前に攻撃することを堂々と主張していた。また最終段階高高度地域防衛 (THAAD)の配備も求めていた。
  5. それから4年たち自民党は昨年12月の総選挙で政権与党に返り咲いた。今回は言葉使いも一層慎重だ。
  6. 日本にとっての懸念材料である中国と北朝鮮を直接言及することを避けつつ同提言は防衛能力の整備をどこまで目指すべきかでは堂々と述べており、防衛当局は同提言に沿った防衛能力増強オプションを検討中と、消息筋は言う。
  7. 特 に関心を呼びそうで問題にもなりそうなのが先制攻撃に関する提言内容で、それによると日本は共用直接攻撃兵器Joint Direct Attack Munitions (JDAMs)、長距離空中給油能力をF-35向けに装備すること、海上部隊向けにF-35Bを導入すべきとしている。
  8. 今回の提言ではKC-46Aの言及はないが、航空自衛隊はF-2多用途戦闘機にJDAMの装備を進めており、19,500トンの22DDH計画ヘリコプター護衛艦はF-35B用に改装可能だ。
  9. 日 本がイージスSM-3ミサイル及びペイトリオット性能改修型-3(PAC-3)弾道ミサイル防衛システムを配備したのは2003年のことで石破防衛相(当 時)は日本から北朝鮮のミサイル基地攻撃も一定の条件のもとで実施が可能との見解を示している。ミサイルに燃料が注入され日本が標的ととの証拠が見つかれ ば日本としては防衛手段がないと道下准教授は指摘する。
  10. ただ日本は弾道ミサイル防衛を着々と整備中であり、北朝鮮の長距離ミサイル銀河Unhaおよび移動式中距離弾道ミサイルムスダンMusudanの迎撃を目指す中で、先制攻撃の実施は違憲判断となる可能性があるとも同准教授は指摘。
  11. ブ ラッド・グロサマンBrad Glosserman(戦略国際研究センターCenter for Strategic and International Studies (CSIS)の太平洋フォーラムを統括)は先制攻撃論が日本で高まることに懸念を示している。「CSISは先制攻撃問題を6年に渡り検討しており、この 数ヶ月で先制攻撃能力の整備を求める声が再び高まっていることに気づきました。先制攻撃能力が拡散すると安定性を損なう効果が生まれるので懸念を示さざる をえません」
  12. 日本が海兵隊を別個に整備することはおそらくないだろうが、水陸両用作戦能力の拡充の可能性は十分あり、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊が米海兵隊と合同演習をしていると指摘する向きがある。
  13. Global Strategies & Transformationのコンサルタントであるポール・ジアラPaul Giarraは今回の政策提言により陸上自衛隊の一個ないし二個連隊に高性能水陸両用車両を今後5年以内に導入する可能性が出てきたと見ており、現在想定 しているAAV-7A1Sより高性能のモデルとなる、またベルボーイングV-22オスプレイも想定されるという。
  14. 「自 衛隊に高性能装備を導入すべきと言うのが提言内容だと読み取りました。それ自体が大きな進展ですが、自民党は海兵隊創設までは求めていないようですね」と 解説したのはクリストファー・ヒューズ(英ウォーウィック大教授、国際政治・日本研究論)だ。日本が検討中のBMD能力増強策には現状ではこんごう級護衛 艦4隻、やや大型のあたご級2隻とPAC-3部隊が中心だが2009年版提言ではTHAAD他「高性能」版のPAC-3導入を主張していたが、今回の提言 書では陸上配備BMDの性能向上を推奨し、THAADあるいはイージス陸上型、またはPAC-3ミサイルセグメント性能向上型 (MSE)を国土防衛の最終手段として選ぶことがふさわしいとしている。
  15. ジアラによればPAC-3 MSEはイージス陸上型を代替できるという。日本はMSEに関心を示しているが、THAADは能力的に重複するほか過大な調達になる可能性があると指摘している。
  16. 日 本の防衛当局が脅威とみなしているのは巡航ミサイル一般なかんずく中国のDF-21D対艦弾道ミサイルだ。このため性能向上策のトップがSM-3ブロック IIAイージスシステムが利用可能となり次第導入することで、さらに有効射程が長いRIM-174対空ミサイルの導入も検討している。
  17. ヒュー ズ教授は政策提言は各方面からの批判に加え自民党内部のハト派の抵抗が予想されるという。また防衛省の審議会が来年1月に予定されているが優先順位が変わ る可能性があるという。さらに財務省が防衛予算増額に難色を示すと見る。「だが安倍政権が抵抗を封じ込めれば急展開するだろう」
  18. こういった日本の動きは中国が強硬に領土主張を展開する地域の各国が歓迎するだろう。
  19. 「日 本とフィリピンにはギクシャクした過去がありましたが、フィリピンは日本を強く支持しています。なぜなら日本はフィリピン沿岸警備隊の訓練をしていますし ね」とジアラは解説する。「韓国は日本への依存度は低いのですが、関係の緊張化は深くなっており、日本の動きに賛同する可能性は低いでしょう」
  20. 緊張をさらにあおったのが大阪の市長が日本占領下で慰安婦を強いられたのは軍事上の必要悪であったと発言したことで、これに対し韓国新聞各紙は原爆投下は日本の残虐行為に対する「神の復讐」だったと応酬している。
  21. アジア各国及び米国には日本の右派政治家は戦時中の日本軍には非がなかったと思っているのではないかと憂慮している。
  22. 「日本の行動がこのまま変わらくても日本への支持は静かに続くでしょう。ただし、戦時中の行いに何ら反省すべき点がないと思い謝罪も不要とする誘惑に日本側が打ち勝てるかが問題です」(ジアラ)
  23. 「戦 時中の行いで不当な非難を浴びていると日本では感じていますが、韓国、フィリピン、インドネシア等の感情は反対です。ドイツは過去を処理し、現在も向き 合っていますが、日本では問題を封殺してきたので今日では圧力が高くなっていますが、はけ口ができれば防衛力整備に対する各国の見方も変わるでしょう」 ■   

2012年9月9日日曜日

南西部防衛整備が必要になってきた自衛隊

Japan To Boost Isle Defense Capability Despite Cuts

By Reuters
aviationweek.com September 07, 2012

日本の来年度防衛予算は過去最大の削減を受ける予想だが、離島防衛に特化した装備の新規調達に乗り出すと防衛省が9月7日発表した。
  1. 離島防衛の課題が出た背景に日本と隣接する中国及び韓国との関係がそれぞれ小島の主権帰属を巡る対立で悪化していることがある。
  2. 防衛省発表では平成25年度予算の概算要求4.57兆円(580億ドル)は今年度より1.7%減。予算縮小は11年間連続となるが、とくに今回の削減幅は自衛隊58年間の歴史上最大だ。
  3. 予算減の原因として大きいのが公務員給与の一律カットで、これは大震災後の財政再建の一助として設定されている。
  4. その中で防衛省は25億円で装甲水陸両用車4両の導入に踏み切る。これは離島防衛を視野に入れている。
  5. 「日本の南西部には小島がたくさあんあり、各島に自衛官を駐留させるのは現実的ではありません」(防衛省関係者)
  6. 「敵対勢力が上陸した事態に対抗策を取れるよう防衛力を整備する必要があります」
  7. 二年前の防衛大綱改訂で日本は南西部での体制を強化を決めており、ここでは海洋上で中国と国境を接しているのだ。
  8. 日本は中国と日本では尖閣、中国では釣魚と呼称される島嶼部での対立を抱え、当該地は漁場として豊か、かつ大規模なガス田があるとされる海域に近い位置にある。
  9. また日韓関係も大きく悪化しているのは韓国の李明博大統領が先月に韓国大統領として初めて両国が主権を主張している両国間の島嶼、日本名竹島、韓国名独島に足を踏み入れたことがきっかけだ。
  10. 海上保安庁は巡視船7隻を来年度中に調達し、監視活動強化をめざす。一方、外務省は体外宣伝費用をほぼ倍増し、日本の主張を伝えることに10億円を投入する。
  11. 先月の記者会見で野田佳彦首相は日本国の領土、領海の保全を誓うとともに冷静に領土問題の解決に当たると説明している。
  12. あ わせて防衛予算では210億円がサイバー攻撃対策に計上されている。近年政府ならびに民間企業がハッキングの脅威にさらされることが増えている。防衛省は 定員100名近くのチームを新設し、「サイバー空間防衛隊」(仮称)としてサイバー攻撃に関する情報収集およびサイバー安全保障の研究活動に当たらせる。 ■

コメント  日本周辺を巡る利害・意見対立は年を追うごとに厳しくなってきています。当該国の民度、政治的主張はともかく、冷静に歴史的な事実を共有認識できるかが今後の 鍵でしょう。一方、実力の行使という事態にも備え、準備をしておくことは主権国家としては当然でしょう。その場合にこれまでは想定しなかった任務に当たる 自衛隊には必要な装備を整備させてあげたいものです。オスプレイも実はこの点で重要な意味を持ってくるのですが、依然感情的な反対論が目立ちます。まさ か、某国の支援を受けてはいないでしょうね。ロイターは冷静に当該国の使っている呼称を用いていますが、日本の記事だけにいずれも日本側を最初にあげています。