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2018年5月8日火曜日

今度はタイフーン戦闘機ほぼ全機が稼働できない状態。大丈夫か、ドイツの国防体制


ヨーロッパで経済がうまく行っている最右翼のドイツがこの状態ではNATOも機能しませんね。国防費のGNP比引き上げを執拗に迫るトランプ政権にたいしてドイツの新たな連立政権は自壊してしまうかもしれません。ここでも左翼が足を引っ張るということでしょうか。日本も他山の石とすべきでしょう。

Germany has a 'massive problem' that has reportedly knocked almost all of its Eurofighter Typhoon fighter jets out of commission ドイツの「大規模問題」でユーロファイター・タイフーン戦闘機ほぼ全機が供用不能状態に

May. 4, 2018, 6:23 PM
German Air Force Eurofighter Typhoon takes-off during the air policing scramble in Amari air base, Estonia, March 2, 2017. REUTERS/Ints Kalninsエストニア・アマリ基地を離陸するドイツのユーロファイター・タイフーン March 2, 2017.Thomson Reuters
  • ドイツ軍のユーロファイター・タイフーンの大部分が戦闘投入不可能の状態と伝えられる
  • ドイツ軍装備が稼働できなくなる事例はこの他にも発生している
  • ドイツ国防軍にはこの問題が付きまとっており、同国政府では国防予算増額で問題解決すべきかの議論が巻き起こっている



ドイツ空軍が解決を迫られる「大規模問題」のため128機あるユーロファイター・タイフーン戦闘機のうち戦闘投入可能なのは4機しかないとドイツのスピーゲルが5月2日に伝えている。
ドイツ技術陣は同機搭載のDASS防衛システム(防御用の警告装備)で冷却液が主翼端ポッドから漏れているのが見つかったことを危惧している。ポッドにはセンサーが内蔵されており、このの問題は半年前にはじめて見つかっていた。
問題の核心は特定部品「グリースニップル」で冷却機能そのものを司るものだ。技術陣は不良ポッドを交換したとスピーゲルが伝えているが、同部分のメーカーはオーナーが変わり、再認証が必要なため供給が間に合わないのだという。
この装備がないと同機はミッション実施が不可能だ。記事によればタイフーンでミッション出撃可能なのは10機しかないという。
ドイツ空軍のユーロファイター稼働率問題に輪をかけているのが空戦ミサイルの不足だ。このため空対空戦に投入可能なのは4機しかないとスピーゲルは報道している。
German air force Eurofighter Typhoonドイツ空軍所属ユーロファイター・タイフーンがアラスカのエイルソン空軍基地をタキシーしている。June 11, 2012.Tech Sgt. Michael Holzworth
この記事がドイツ国内の論争に火をつけた。
国防相報道官ホルガー・ニューマン大佐は自衛装備用の部品問題はあるものの空軍は要求に応じた行動は可能と述べるとともに部品問題は早期解決できるとしている。
「あと数週間数か月でこの問題は制御可能となるよう希望している」と大佐は述べながらユーロファイターで何機が稼働状態にあるのか言及を拒んだ。国防省からは供給問題で戦闘機の稼働状況に悪影響が生まれるとだけ発言があり、それ以上の説明はない。
この問題に詳しい筋によればルフトヴァッフェで稼働状態にあるユーロファイターは10機しかないとの記事を否定しつつ、各地で供用中の機体が少なくとも14機あると説明。
Germany German troops soldiers Bundeswehrドイツ陸軍部隊が空軍のエアバスA400M機にヤーゲル空軍基地で搭乗中。December 10, 2015.REUTERS/Fabian Bimmer
同機の即応状態についてのドイツ政府説明も誤解を招くものとスピーゲルにある。
ルフトヴァッフェはユーロファイター全機を飛行可能と判定しており、自衛装備が機能しない機体もここに含めていると記事は指摘。
各機は訓練用途には投入可能だがNATO作戦へは投入不可能だ。東ヨーロッパ上空の警備活動が最近展開されている。
ドイツは自国装備のユーロファイター82機をNATOの高度即応部隊(HRF)ならびに低速応部隊(FLR)に登録している。
各部隊はNATO指揮下に入る部隊でこのうちHRFの戦闘機は戦闘開始日から90日間稼働可能となる。FLRは91日から180日にかけ稼働する概念だ。
だがスピーゲルによれば現時点で作戦要請がないためドイツは現状でもNATOの求める義務を果たしていると言い訳できるとある。
「現時点ではミッションがないため装備の大部分が即応態勢にあると言える」と内部筋がスピーゲルに語っている。
装備品の不足とハードウェア問題
ドイツ軍の即応体制をめぐる問題はユーロファイターだけではない。別の機種でも問題が発生している
German air force Tornado fighter jet Ursula von der Leyenドイツ国防相ウルスラ・フォン・デアレイエンがトーネード戦闘機の前に立った。ドイツ-デンマーク国境近くのヤーゲル空軍基地を2016年8月17日に訪問した。REUTERS/Fabian Bimmer
スピーゲルが目にした報告書ではトーネード戦闘機がNATO作戦に加わることができないとあり、NATO制式敵味方識別装置の不足のためだという。
その他ドイツ空軍へ16機納入されたA400M輸送機のうち稼働可能機材な2月時点で5機しかなかった。海軍では6隻の潜水艦のうち戦闘可能な艦は一隻もなかった。フリゲート艦15隻で完全に戦闘可能なのは9隻のみだ。陸軍では戦車244両のうち稼働可能は95両しかない。
原因にドイツの国防予算が冷戦終結後に一貫して削減されてきたことがある。
ドイツ政府は2011年に非対称戦対応に本腰を入れるため部隊を削減した。以後ドイツ軍は規模縮小し、将校21千名分が欠員のままでこれも即応態勢に影を落としている。ロシアのウクライナ介入で通常戦に関心が集まり、この傾向に歯止めがかかったがそれでも廃棄した装備品の再補充が完了していない。

「ドイツは孤立する」

Germany German army soldiers troops Bundeswehr Angela Merkelドイツ軍隊員を訪問したアンヘラ・メルケル首相December 7, 2015.REUTERS/Fabian Bimmer

ドイツ国防予算は新たに誕生したアンヘラ・メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の保守連立政権で真っ先に論争の種となった。
CDUの連立相手社会民主党(SDP)出身の蔵相オラフ・ショルツが提出した2018年度の国防予算では国防省要求の半額しか予算計上しておらず、かわりに国内対策や負債追加防止策に予算を増やしている。
これに対し国防相ウルスラ・フォン・デアレイエンおよび開発相ゲール・ミューラーは書面で予算案に抗議している。フォン・デレイエン国防相はこれまでの海外展開に主眼を置く姿勢からドイツ軍の中心を国内海外の治安安全保障に移したいとの意向だ。
予算めぐる意見の衝突はCDUとSDP間の国防戦略観の違いを反映している。

「ドイツは国内問題に気をとられ孤立しつつある。SPD内の左翼がこの動きの原因だ」とドイツ外交協議会のアナリスト、クリスチャン・モーリングでDefense Newsにこう語ってくれた。■

2017年5月22日月曜日

★ドイツもF-35導入に動くのか



ドイツというと強力な経済力が思い起こされますが、国防に関しては状況は厳しいようです。米国が求めるような国防費の大幅増を阻む国内事情があるのでしょう。エアバスの構想が構想どまりのため、F-35採用は確実と思われますが、国政選挙が終わるまで動けないということでしょうか。それにしてもロシアのサイバー攻撃による他国選挙への介入は現実の問題なのですね。

AF-6, Flt 141, LtCol George "Boxer" Schwartz, Radar, LCL, 28 MarDARIN RUSSELL—2013 DARIN RUSSELL LOCKHEED MARTIN

Germany Might Join the F-35 Program ドイツがF-35導入に動く可能性

Officials in Berlin ask for more information on the Joint Strike Fighter as they try to replace their aging Tornado multi-role jets. ドイツ政府が供用打撃戦闘機の詳細情報開示を要望し、老朽化してきたトーネード多用途戦闘機の後継機選定に入っている



ドイツ空軍がロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の追加情報を請求していることが明らかになった。旧式化してきたパナヴィア製トーネード多用途戦闘機の更新用候補のひとつとして2035年までの導入を目指す。
  1. 2017年5月にルフトヴァフェは米軍にJSF機密データの開示を要請したとロイターが伝えている。公文書ではドイツ政府・軍関係者は現時点では特定機種に絞り込んでいないと明言している。
  2. ただしドイツ国防相は「F-35含む機種の導入可能性を今年後半に検討する」としており、そのため「F-35の先端技術特にセンサー類の性能について秘匿情報の開示をもとめ、その他情報制御関連、作戦関連情報を求める」とある。
  3. ドイツがF-35採用に動けば、NATO加盟国でJSF導入を決めているベルギー、カナダ、デンマーク、イタリア、オランダ、ノルウェー、トルコ、英国に加わることになる。
  4. ドイツが同盟各国と共通装備を導入すれば補給面の問題が解決され、作戦能力が向上する。ロッキード・マーティンはオランダ、イタリアと共同して同機運用の支援拠点作りを進めている。  
  5. 2015年10月にオランダ政府はエンジンの試験・整備施設設置を100百万ドルで進める決定をしており、自国機材に加えイタリア空軍機にも開放する。イタリアは欧州唯一の最終組み立て点検施設FACOを稼働中で、イタリア向けF-35Bとオランダ向けF-35Aの最終組み立てを行う。将来は他のヨーロッパ各国向け機材の生産も実施する。  
  6. 地域内協力では政治面にも影響が出ている。ドイツが更新しようとしているトーネードとは英独伊が1960年代に始めた共同開発の産物だ。ドイツはその後ユーロファイター・タイフーン事業でも開発生産両面で関与している。ドイツは登記上は両機種を産んだ多国籍企業の本社所在地だ。
  7. 過去の経緯からドイツが第五世代戦闘機をエアバスに求めようとするのは当然だろう。ドイツはエアバスに出資しており、ユーロファイターもエアバス傘下にある。アルベルト・ギュティエレス(ユーロファイター社長、当時)は2015年にFlightGlobalに対して無人機部隊を将来の戦闘機部隊の中心にする構想を述べていた。2017年にエアバス・ディフェンスアンドスペースのCEOダーク・ホークは構想は次世代兵器システム(NGWS)として検討が進んでいるとドイツ国内誌 Handelsblattに述べている。「現在のところは設計前検討段階で機体の姿を研究中」とホークは述べ、「はるかに先進的な新技術」を採用すると語っていた。
  8. その時点でエアバスはフランスとドイツ両国にNGWSの推進役を期待していた。だが両国間で事業の進め方で対立が生まれる可能性が出てきた。ドイツは新型機を2025年にも稼働させ85機残るトーネードと交代させたいとする。これに対しフランスでもミラージュ2000の旧式化が進んでいるが、2040年まで待ち最新鋭機材を運用したいとの考えだ。
  9. ドイツにはこの日程は受け入れがたい。ルフトヴァッフェはトーネード(1998年生産終了)の更新を今すぐにも始めたいところだ。ダーシュピーゲル誌が稼働可能なのは66機しかなく、ドイツ国外で運用できるのは38機しかないと暴露した。タイフーンも同様に109機導入済みだが「展開可能」区分されたのは42機しかない。翌年にドイチェヴェレ放送は状況はさらに悪化しているとする報告書を入手している。
  10. トルコのインチリック空軍基地からISIS戦闘員の偵察用にトーネード6機の運用を2016年1月に開始した直後に苦しい状況に直面した。ドイツ紙ダスビルドは翌月に改修済みのコックピット内照明が強すぎ、夜間飛行できないと伝えた。テロリストは夜間に移動し探知を逃れようとする。2016年11月には2機がエルビルに緊急着陸した。イラク内のクルド人自治区の首都である。飛行中に緊急事態に遭遇したためだ。その後の点検で機体はトルコへ戻れる状態と判定したが燃料タンクの欠陥はそのままだった。同分遣隊は2017年2月にイラク、シリアでソーティー750回2,300時間の飛行を達成している。
  11. 対ISIS作戦のような遠征作戦の実施の必要もあるが、本国近隣地での脅威でも対応が必要になってきた。ロシアはクリミア併合(2014年)をきっかけにNATOに一層厳しい姿勢を示しており、ドイツは国防方針見直しに迫られている。二十年間にわたりドイツ国防軍はゆっくりと縮小してきたがソ連崩壊(1991年)のあとでヨーロッパ内での軍事衝突の危険は減少していたのも事実だ。
  12. ドイツ国防予算は2017年に370億ユーロに増え、2020年までに390億ユーロになる見込みだ。NATO加盟国に求められるGDP2%相当の負担をめざすとドイツは再確認しているがすぐには実現できないとしている。予算以外に隊員募集に苦しみ、装備近代化のペースも冷戦終結後遅くなっている。ドイツがF-35導入の負担に耐えられるかがトーネード更新時の検討事項になる。消息筋が追加情報の請求にあたりJSF機体価格の低下動向を注視しているとロイターに伝えている。
  13. 将来の部隊編成構想で政界で意見が一致していない。ドイツは人道救済・平和維持活動で貢献しており、2017年時点でコソヴォ、イラク、レバノン、マリ、ソマリアの各地に展開している。「難民対策だけで300億400億ユーロを支出しているのは軍事介入策がうまくいかなったからだ」とドイツ外相シグマー・ガブリエルは述べ、国防予算増は「安定化効果に直結すべき」との考えだ。
  14. ロシア含む敵対勢力に対応できる十分な防衛体制を維持し、とくにNATOが実施中のバルト地方航空警戒態勢活動に参加するなかでトーネードの機材更新はドイツの即応体制維持に待ったなしである。米国や同盟各国は議論の種となったJSFに多大な投資をしており、2017年4月に米空軍はF-35の8機を英国に派遣し、JSF事業に批判的な筋とともにロシアにメッセージを送っている。その中で突如としてエストニア、ブルガリアにも機材を展開したことがこの見方を裏付けている。
  15. F-35やエアバスのNGWS構想のような第五世代戦闘機はルフトヴァッフェに必要な機材であり、とくにロシアが長距離対空レーダー、地対空ミサイル、高性能戦闘機を配備する中でその性能がドイツに必要だ。ただし2017年9月の国政選挙で優先順位付けそのものが変わる可能性がある。選挙戦ではロシアによる影響と干渉が懸念されている。
  16. トーネード後継機がF-35になるのか別の機材になるのかを考える際にベルリンはヨーロッパやその他で軍にを求める役割を明確に定義する必要がある。■