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2020年12月31日木曜日

これでよくわかる 自衛隊の対艦ミサイル整備の道筋。中国海軍の防御能力を上回る新型ミサイルを順次投入し、抑止能力を高める。日本の軍事力整備を恐れる隣国は完全な誤解。

  イマイチわかりにくかった自衛隊の対艦ミサイル整備の全体像がよくわかります。

 

 

衛省は令和3年度予算で超音速対艦ミサイルASM-3Aの調達費用を計上したと2020年12月25日に発表した。一方でASM-3改を大量配備し、中国の海上兵力拡張に対抗する。同省は新型重要装備品選定結果の一部でさりげなくASM-3Aに触れている。

 

ASM-3 anti-ship missile on JASDF F-2 Fighter

岐阜基地所属のF-2戦闘機がASM-3を2発搭載している。February 2020. Picture by local photographer Takeru Sugiyama.

 

XASM-3 まず航空自衛隊のF-2戦闘機搭載を想定したXASM-3ミサイルの開発が2010年度に始まった。XASM-3は空中発射式対艦ミサイル(ASM)で固体ロケットブースターとラムジェットエンジンを採用しマッハ3超で飛翔するとした。射程200キロ(108カイリ)だった。

 

 

防衛省が発表したASM-3 (改)の運用構想では射程距離の拡大によりF-2は敵防空手段の有効範囲外からミサイル発射できるとする。

 

ASM-3(改) ただし、新鋭中国水上艦で防空性能の高まったため、ASM-3調達は中断し、ASM-3(改)開発を決めASM−3の有効射程を延長するとした。

 防衛省は三菱重工業にASM-3(改)の開発契約を89億円で2020年に交付した。ASM-3 (改)開発は令和2年度から7年度の予定。

 開発の経費と期間を下げるためASM-3と同じ本体とし、重量軽減で射程距離の延長を狙う。

 

 

ASM-3 anti-ship missile on JASDF F-2 Fighter

航空自衛隊岐阜基地のF-2に搭載されたXASM-3。February 2020. Picture by local photographer Takeru Sugiyama.

 

ASM-3A 今回発表のあったASM-3AはASM-3 (改)開発の知見を反映するとあるが詳細は不明だ。とはいえASM-3(改)の開発が今年はじまったばかりであり、有効射程は更に伸びると見られる。

  ASM-3 (改) 開発は ASM-3A 生産と並行で進むに。このためASM-3Aは中国対策のつなぎと考えてよい。

 

対艦ミサイル三種類を運用する航空自衛隊 航空自衛隊は対艦ミサイル新型三種類を運用する。

  • F-35に共用打撃ミサイル(JSM)

  • 改修版F-15J/DJ に長距離対艦ミサイル(LRASM)

  • F-2に長射程ASM-3A


 

ASM-3の試射.防衛装備庁.

 

各種ミサイルを運用する意味 自衛隊が各種対艦ミサイルを運用する理由として各ミサイルの特徴を活かした運用で敵防空体制を突破できることがある。たとえばJSMは海面すれすれを飛翔し敵レーダーでの探知が難しいものの、有効射程はミッションで異なるが100から300カイリと長くない。LRASMは432カイリと長射程だが飛翔は亜音速だ。ASM-3Aはマッハ3程度で敵防空網を突破するが有効射程がLRASMより短い。

 ただし、2種類あるいは全部を投入すれば、敵側は各ミサイルの特徴に応じた対応に追われ、防御態勢を強固にする必要にかられる。

 さらに陸上自衛隊向けに新型長射程ミサイル(2000キロ級といわれる)を防衛装備庁が開発中で極超音速対艦ミサイルあるいは高速滑空弾(HVGP) と呼ばれ、極超音速で高高度を飛翔する性能が加われば、対艦ミサイルが各種揃い、敵艦撃破の可能性が高まる。自衛隊は今後の中国海軍力の成長を念頭に対策を着実に打っている。■


この記事は以下を再構成したものです。日本にいながら防衛装備の開発状況が全体としてわからないのはおかいいですね。2021年は外国報道も使いわかりやすい情報提供に心がけたいです。


Japan to Field New ASM-3A Long Range Supersonic Anti-Ship Missile

Yoshihiro Inaba  30 Dec 2020

Story by Yoshihiro Inaba with additional reporting by Xavier Vavasseur


2019年3月14日木曜日

JSM導入で大きく変わる日本の戦略戦術地図

JSM導入のニュースは昨日にお伝えしていますが、相当の関心を集めています。さらに詳しい分析が出ましたので追加でご紹介します。この通りならすごい装備品で大いに楽しみですが「平和主義」の皆さんが騒ぎ立てそうです。必要な情報は開示して「左巻き」の人でさえ文句が言えない形にしてスムーズな導入になるよう祈るばかりです


Japan Buying Joint Strike Missiles For Its F-35As Is A Much Bigger Deal Than It Sounds 日本が導入する共用打撃ミサイルのF-35A運用にはもっと大きな意味がある


It's the first land attack capable cruise missile Japan has bought, opening the door to a whole new set of tactical and strategic possibilities.

日本初の対地攻撃巡航ミサイルで全く新しい戦術戦略面の可能性を開く

BY TYLER ROGOWAYMARCH 13, 2019

U.S. AIR FORCE PHOTO BY CHRISTOP—U.S. AIR FORCE

ルウェイのコングスバーグ・ディフェンス&エアロスペースと日本防衛省が共用打撃ミサイル(JSM)の大量導入につながる契約を調印したと発表があった。巡航ミサイルJSMはF-35A機内に収まり、同時に対艦ミサイルを超えた軍事力を実現し、日本の軍事戦略の変貌の象徴にもなる。
JSMは海軍打撃ミサイル(NSM)が原型でレイセオンと共同開発したものだ。JSMは最大350マイルの射程で低高度の飛翔でその半分の射程を突破できる。500lb弾頭を搭載しGPS、INS、地形マッピング含む誘導装置を駆使し、GPSを遮断する環境も想定する。
JSMには画像化赤外線(IIR)シーカーがつき、高度に精密な最終ホーミング機能を備える。コングスバーグ・ディフェンスでは目標捕捉と最終ホーミング機能は次のように作動すると述べている。
「JSMには高度な目標捕捉のため自律型目標認識Autonomous Target Recognition (ATR) で赤外線画像シーカーを使用する。高性能の認識アルゴリズムにより標的艦船を識別し、非対象艦船の攻撃は回避できる。「白」と「赤」標的の識別は100パーセント可能だ。JSMのミッション計画システムには国家データベースを使い、標的対象のデータベースを備える。標的ライブラリのサブセットをJSMにダウンロードし発射する。データベース内の各標的には命中点に対応する弾頭信管特徴も準備する他、ミサイルの最終進入戦術といった識別上の特徴を整備する。発射に先立ち、最終戦術や命中点を点検あるいは修正も機内で可能だ。コングスバーグは利用国向けにソフトウェア一式を提供し標的ライブラリの整備方法を訓練する。」
RAYTHEON
JSMをF-35A機内に装着するとこうなる。

双方向データリンクでやりとりを終始行い、発射後は機体から進捗状況が把握でき、途中でミッション放棄したり別標的へ再照準も可能だ。
JSMは柔軟制御を念頭に開発され複雑地形でも飛翔経路を調整して途中での迎撃を避ける設計だ。F-35兵装庫での運用以外に他の戦術機材でも運用できる。
つまり柔軟性豊かで夢のような兵器が実現するわけだ。だが同ミサイルが対艦巡航ミサイルだけでなく陸上標的攻撃にも利用できることにもっと興味を引かれる。
言い方を変えよう。日本は高性能対地巡航ミサイルを最新鋭高性能機材から発射できるようになる。
USAF
エドワーズAFBのF-16CがJSMを主翼下に搭載している

日本は対地攻撃巡航ミサイルを配備してこなかった。憲法第九条違反と真剣に主張する向きがある。だが第九条解釈は日本国内で急速に変化している。これまでの受け身で内向きかつ自衛中心の姿勢から外に目を開き、対外的に積極な見方が強くなってきた。
その最大の象徴がいずも級空母を空母として運用する防衛省の姿勢で、もはや「ヘリコプター搭載駆逐艦」でなく、F-35B42機を飛行運用する。第二次大戦後の日本は固定翼機搭載の空母は就役させてこなかった。
RAYTHEON

日本にとって島しょ部防衛が一貫して懸念事項だった。対応策のひとつにスタンドオフミサイル攻撃で敵の水上部隊を狙うことがあり、一貫して高い優先順位がついてきた。だがこれまで巡航ミサイルの運用は海に限れれてきた。北朝鮮、中国、さらにロシアの脅威に対してスタンドオフ攻撃による陸上標的攻撃能力の必要性が痛感されているのは、接近阻止領域拒否として長距離防空体制の整備が進んできたためでもある。
JSMは発射機となるF-35Aと防空体制を突破する。日本が導入予定のF-35A105機でJSMと組合せて1,000マイル先の目標を空中給油無しで攻撃する能力がうまれ、うち750マイルをJSMはステルス低空突破する。2つの装備の組み合わせは理論上は日本領土から北京、香港、北朝鮮全土の攻撃が可能となるが、正確に言えば機体の戦闘行動半径600マイル以内で沿岸から150マイル以内の地点が標的になる。
JSMが最大効果を発揮するのが難易度が最高地点にある標的への攻撃で、「ブラウンウォーター」とも呼ばれる海と陸が交じる複雑な沿海地方がこれにあたる。ただし対艦攻撃だけに限ればF-35Aからのミサイル発射は相当有利になる。敵部隊まで探知されずに突破しピンポイントで艦船を攻撃すべく、高性能センサーやデータリンクで外部情報を利用する。そこでJSMを発射し艦船を撃破し、防空能力の高い駆逐艦巡洋艦さらに空母搭載機材も攻撃対象になる。
JSMは日本が導入するF-35Bにも搭載され、いずも級空母で供用される予定だ。そF-35Bでは機内兵装搭載力が限られるため外部搭載される。ただしF-35Bでも戦闘行動半径が450マイルあり、A型同様のセンサー融合機能がある。JSMによりB型の生存性が高まり、いずも級空母とF-35Bの組合せで全く異質の対艦攻撃能力とスタンドオフ対地攻撃能力が自衛隊部隊に生まれる。特にピンポイント攻撃で内陸部のレーダー施設を攻撃することが想定される。
同ミサイルは日本が運用中の他機種にも搭載されるはずで、とくに対艦攻撃ミッションが主な任務の三菱F-2がその最右翼だ。日本はASM-3対艦ミサイルを開発中だがJSMが最適の組み合わせになろう。
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F-2がなんやら重そうなまま帰ってきたり

超音速対艦ミサイルASM-3開発は後半にさしかかっており、F-2搭載を想定する。JSMより射程は短いがJSMのステルス亜音速性能とシナジー効果が期待される。
HUNINI/WIKICOMMONS
ASM-3.

また四発機のP-1哨戒機はAGM-84ハープーンが搭載されているが同機もJSM運用の候補になる。長距離飛行が得意の同機に複雑な地理環境の目標攻撃能力を付与し、同時に港湾内の艦船や陸上標的の攻撃能力も追加される。
RONNIE MACDONALD/WIKICOMMONS
P-1.

F-15JもJSM搭載で候補だ。日本がF-15へのスタンドオフ対地攻撃ミサイル導入に前向きであると前にも指摘したが、JSMで運用に柔軟性が生まれ、装備も共有化できる。F-15ではさらに長距離射程の兵装も使え、F-15の攻撃能力を高める効果も期待できる。
しかしなんと言っても日本が対地巡航ミサイル調達に踏み切るとのニュースは同国の戦略姿勢の変化を如実に示す象徴であり、今後の変化を占う材料だ。このあとにもっと航続距離の長いミサイルを導入するのか、空中発射式JASSM-ERが来るのか。多任務可能なブロックIVの戦術トマホーク・ミサイルをMK41垂直発射管を搭載した駆逐艦からあるいはイージス・アショアミサイル防衛施設で運用するのかで調達内容も変わってくる。VLS運用可能なJSMもある。日本が国産で対地巡航ミサイルを開発中という記事もあった
JSM導入を決断した日本ではこれらの実現可能性が以前より高まっている。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com