ラベル AFRL の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル AFRL の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023年4月4日火曜日

次世代の航空優勢にこの変形技術応用の「変態」空対空ミサイルが威力を発揮する---米空軍研究本部が進める画期的な技術


USAF


高機動脅威への対抗手段として、米空軍は先端部が連結構造のミサイルを構想している



メリカ空軍は、空対空戦闘で命中する可能性を高める斬新なコンセプトを模索している。機首が曲がる空対空ミサイルを使用し、ターゲットが回避する前に仕留める構想だ。空軍はこれを、「次世代制空権プログラム」で開発中の第6世代ステルス機など、現在および将来の戦闘機で高機動性の脅威と戦う新たな手段に位置づけている。

 空軍研究本部AFRLは、今週コロラド州アウロラで開催された2023年航空宇宙軍協会の戦争シンポジウムで、「Missile Utility Transformation via Articulated Nose Technology(MUTANT)」と呼ぶプロジェクトを紹介した。AFRLによると、MUTANTは過去6年間の関連技術の研究を活用しており、コアコンセプトは1950年代までさかのぼる研究と実験を活用しているという。


機首部分が連結構造のミサイルのグラフィック。 USAF



「より効果的なミサイルは、少ない重量でより長い射程、操縦性(g-capability)、敏捷性(機体の反応性)を持つ傾向がある。ミサイルの制御作動システムcontrol actuation systems(CAS)は、3指標すべてに影響し、したがって効果的にターゲットに接近する能力にも影響する」と、AFRLのMUTANTに関するウェブページは説明しています。「各CAS、またはデュアルカナードやフィンなどCASの組み合わせがミサイルの全体性能に明確かつ強い影響を与える」。

「長射程CAS(フィンのみ)は、操縦性と敏捷性に劣る傾向がある」とある。「(カナード、翼、推力偏向など)操縦性と敏捷性に優れたCASは、抗力や追加重量で射程が低下する傾向がある」。

 イスラエルのラファエル・パイソン5は、高度な機動性を実現するため、複雑な制御面を採用した空対空ミサイルだ。

 MUTANTは、基本的な計算を覆すことを目指す。伝統的な制御面という点では、AFRLが取り組むミサイルの概念設計では、尾翼しかない。前述のように、これでミサイルの抵抗を減らし、射程距離を延ばすのに役立つ。

 一般的に、これで操縦性と敏捷性が犠牲になる。しかし、MUTANTコンセプトでは、ミサイル本体の前方部分にコンフォーマルセクションを追加し、フロントエンド全体を中心軸から離し関節運動可能にした。

 従来の空対空ミサイルでは、誘導システムが計算した迎撃地点から目標が離れ始めると、コースを変更する必要があった。MUTANTでは、この「コース修正」を、ミサイルの前部が物理的に動くことで実現し、脅威にさらに近づける発想だ。

 ノーズ部分が動くことで、空対空ミサイル弾頭の力をターゲットに集中できる。また、ミサイルのシーカー(マルチモード設計の場合は複数のシーカー)が確実にロックされるようにすることもできるかもしれない。マルチモードシーカーを搭載したミサイル、特にイメージング赤外線とアクティブレーダーを組み合わせたものでは、こうした要素を複雑な方法で設置していることが多く、特定の交戦シナリオでセンサーの視野に影響を与える可能性がある。

 AFRLは、「歴史的に、変形技術のサイズ、重量、パワー(要件)は、ミサイルシステムレベルの利益を妨げてきた」 と述べ、「MUTANTは、変形兵器に有利なようにスケールを考慮している」と述べている。

 これをミサイルサイズで実現するために、「AFRLはコンパクトな電磁モーター、ベアリング、ギア、構造物からなる電子制御の作動システムを開発した」。とMUTANTの公式サイトにある。「慎重な設計で、航空機本体への部品配線の円形パススルーを実現した」。

 MUTANTの連結部品は、AFRLによれば、短距離・垂直離着陸が可能なF-35Bで採用した連結排気ノズルと、大まかに言えば似ているという。

 技術的なハードルは、材料工学の領域にも及ぶ。空対空ミサイルに採用されるため、高速飛行に伴う高温やその他に耐えられる関節構造が必要だ。さらに、飛行中の急激な方向転換の影響に耐えることができるフロントエンドが求められる。

 このような要求を念頭に、AFRLは「金属製の内部骨格にエラストマーを充填した複合構造」の開発に取り組んでいる。MUTANTのウェブサイトによると、最終設計は摂氏900度、華氏1,652度を超える温度に部品がさらされる可能性があり、超音速ミサイルに使用を想定しているという。


AFRLのグラフィックで、MUTANTの構造体がさまざまな速度で耐える必要がある高温の概要を説明しています。USAF



MUTANTコンセプトは、実際のミサイルにする前に、試験で実証の必要がある。AFRLは実験室やロケットソリで、システムの各種コンポーネントの地上試験を何度も行っている。初期プロトタイプは、AGM-114ヘルファイア空対地ミサイルをベースにしている。

 AFRLによると、2024年度末までにもう1回地上試験を実施しプロトタイプの「操縦における二重関節とフィン制御を完成させる」予定という。ウェブサイトでは、「ヘルファイアは研究目的で使用されており、必ずしも意図した用途ではない」と、多関節システムの利用を強調している。


試験前と試験中のロケットソリに乗った「ミュータント」ヘルファイアの合成画像。USAF


AFRLは、この開発が、将来の空中戦のビジョンで重要になると見ている。

 「次世代航空支配(NGAD)には、有人・無人航空機、それらの武器システム、それらの間の通信の幅広い進歩が必要です」と、AFRLはMUTANTのウェブページで述べている。「ACAS(関節制御作動システム)技術は、限られたコストで、より長い距離で高度に機動的なターゲットや脅威を迎撃することにより、将来のNGAD要件を満たすのが目的」。

 空軍のNGAD構想は、乗員搭乗型・非搭乗型を問わず、先進的な新型機の開発をはじめ、新しい武器、センサー、ネットワーキング、戦闘管理機能、先進ジェットエンジンなど、多方面にわたる取り組みだ。各システムすべてが最終的に協調的なエコシステムとして機能し、中国やロシアのようなほぼ互角戦力を有すの相手に対しても、こちらの航空戦力が質的優位性を維持できることが期待されている。


ロッキード・マーティンが2022年公開した、進化した第6世代ステルス戦闘機のレンダリング。 Lockheed Martin


MUTANTに関しては、米軍全体が、高度な戦闘機、ドローン、ミサイルなど、機動性の高い空中の脅威に直面する未来を想定していることから、このプロジェクトが実現した。パイロットの身体的制約を考慮する必要がない非搭乗プラットフォームは、特に極端な操縦を可能にする可能性がある。そのため、既存のミサイルシステムでは有効でなくなる可能性があるのだ。

 こうした将来の高度な空中脅威の多くは、超音速または極超音速で飛行しながら、操縦する可能性がある。高機動性の極超音速ミサイルの迎撃は、米軍で特に重要な課題で、MUTANTが価値を発揮できる可能性のある分野のひとつだ。

 MUTANTプロジェクトがどう進展し、その技術が最終的に既存の空対空ミサイルや将来の空対空ミサイルに反映されるのか、興味深いところだ。■


USAF Testing 'Mutant' Missiles That Twist In Mid-Air To Hit Their Targets

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED MAR 9, 2023 1:48 PM

THE WAR ZONE


2022年7月12日火曜日

米空軍が空中発射レーザーポッドの実機試験をまもなく開始か。LANCEを扱うAFRLの動向に注目。

 F-16_SHIELD_LASER_POD

LOCKHEED MARTIN


米空軍はポッド型防御用レーザー兵器を取得しており、初の空中テストを始める。

 

 

空軍は、航空機に搭載可能なポッド型高エナジー・レーザー兵器を受領した。このニュースは、ロッキード・マーチンが開発したもので、テスト作業のために空軍に引き渡されたと今日、発表が出た。この取り組みは、敵のミサイルやその他のターゲットと交戦できるレーザー武装した戦闘機の実現という、大きな枠組みの中で行われている。

 

ロッキード・マーチンが、今年2月に空軍に高エナジーレーザー兵器「LANCE」を納入していたことが、本日付のBreaking Defenseで確認された。LANCEとは、"Laser Advancements for Next-generation Compact Environments"「次世代のコンパクト環境のためのレーザー」の略だ。空、宇宙、サイバースペース領域における新技術の開発・統合を担う空軍研究本部(AFRL)に納入された。

 

ロッキードのタイラー・グリフィンTyler Griffinは、以前記者団に対し、LANCEは「ロッキード・マーチンでこれまで製造した同出力クラスで、最も小さく、最も軽い、高エナジー・レーザー」であると述べている。

 

グリフィンによるとLANCEは、ロッキードが陸軍向けに製造した指向性エナジー兵器の「6分の1の大きさ」とある。このレーザーは、Robust Electric Laser Initiativeプログラムの一部で、60キロワット級出力だった。LANCEの出力は不明だが、100キロワット以下と言われている。

 

 

ロッキードは、指向性エナジー兵器で武装した未来の移動戦術車コンセプト含む地上ベースのレーザーでの経験をLANCEに活かしている。Lockheed Martin

 

LANCEでは小型軽量化に加え、電源出力要件を下げており、戦闘機用レーザー、特にポッド搭載可能なレーザーにとって重要な要素だ。

 

防衛任務に成功すれば、LANCEは、次に地上や敵機から発射された対空ミサイルを狙う場合より遠距離で敵機やドローンを攻撃するなど、より攻撃的なレーザー兵器の開発に進展する可能性がある。

 

LANCEは2017年11月交付の契約に基づき開発されたもので、空軍の幅広い防衛高エナジーレーザー実証機(SHiELD)プログラムの一部だ。

 

SHiELDは、ロッキード・マーチン、ボーイングノースロップ・グラマンの共同事業である。ロッキード・マーチンがLANCEレーザー兵器の実機を提供し、ボーイングがポッド製造、ノースロップ・グラマンがレーザーをターゲットに照射維持するビーム制御システムを担当する。

 

 

2021年3月、テネシー州アーノルド空軍基地の4フィート遷音速風洞で、指向性エナジーシステムのタレットを見るエンジニア。U.S. Air Force/Jill Pickett

 

AFRLで指向性エナジー部門のディレクター代理をつとめるケント・ウッドKent Woodは、Breaking Defenseに対して、各種SHiELDサブシステムは 「これまでに納入された中で最もコンパクトで高性能のレーザー兵器技術の結晶」 と述べている。

 

また、ウッドの声明では、AFRLによるテスト作業は初期段階とあり、「任務実用性分析とウォーゲーム研究」が進行中とある。「今後のテストやデモンストレーションの具体的なターゲットは、研究の結果で決定される」と述べた。

 

一方、ロッキードのグリフィンは、プログラムの次の段階では、LANCEを熱システムと統合し、加熱と冷却を管理すると説明。

 

LANCEが飛行試験、さらに空中発射試験に進み、どの機体に搭載されるかは現段階では不明だ。しかし、グリフィンは、「各種潜在的なアプリケーションとプラットフォームをデモンストレーションとテスト用に検討中」と述べている。

 

ロッキード・マーチンのコンセプトアートでは、F-16戦闘機に搭載されたポッドが描かれていた。また、SHiELDは当初、高リスク環境における戦闘機の能動的防御の可能性の証明に中心をおくが、関係者は、大型機材や戦闘支援機にも同じ技術を適応させる可能性があると話している。

 

ボーイングは2019年、試作前のポッド型ただし内部サブシステムなしを空軍のF-15戦闘機に搭載して飛行させた。一方、地上テストでは、デモンストレーション・レーザー兵器システム(DLWS)と呼ばれるレーザーが、2019年にニューメキシコ州のホワイト・サンズ・ミサイル発射場上空で空中発射ミサイル複数の撃墜に成功している。

 

完全なSHiELDシステムの最初のテストプラットフォームに関する決定は、飛行実証予算が確保された後に行われると思われる。LANCEとSHiELDがどのように実際のプログラムに発展し得るかについて正式な移行計画もまだない。

 

現状では、作業スケジュールも不明で、AFRLはBreaking Defenseに対して、空中試験がいつ行われる可能性があるかは未決定と伝えている。

 

2017年後半、AFRLは2021年までに戦術戦闘機でレーザーをテストすると述べていた。その後、2020年にロッキード・マーティンは、2025年までに戦術戦闘機でレーザーの1つを飛ばす予定だと述べた。空軍は昨年、ポッド型レーザー兵器の飛行試験開始予定を2年早め2023年にすると発表したが、技術面で問題にぶつかっている。この遅れは、技術的な困難とCOVID-19パンデミック関連での作業の遅れの両方が原因とされる。

 

昨年2月、AFRLはSHiELD用のボーイング製ポッドの納品が間近で、LANCEを含む残りのコンポーネントを2021年7月までに入手したい旨を発表していた。過去にAFRLは、敵の超音速ミサイルを撃墜する指向性エナジーレーザーの技術的課題を「途方もない」と表現していたが、今回の遅延の理由は明らかではない。

 

一方、空軍のパイロットは仮想現実の戦場環境で、ポッド搭載の空中レーザー兵器を使う模擬任務の飛行を行っている。このウォーゲームは、兵器システム開発に使用可能な仮想テスト環境を開発する空軍の幅広い取り組みの一部だ。

 

SHiELDは、ポッド型レーザー防衛システムの可能性を示すのが目的で、最終的には赤外線フレアやチャフなどの消耗品対策や電子戦システムの補助となり得るコンセプトを示唆している。

 

しかし、レーザー防衛システムには欠点もある。大気の状態に影響を受け、指向性エナジービームの範囲と威力に悪影響を及ぼす可能性がある。また、レーザーは一度に1つの目標にしか照射できないため、既存のデコイなどの対抗策に取って代わるのではなく、むしろ補完する存在になるだろう。レーザー兵器が将来の戦場に何をもたらすかについて詳しい調査がある。

 

しかし、最終的に成熟した高エナジーレーザー兵器は、ミサイルからの機体防御以外の、各種役割に使用される可能性がある。目視距離で敵機に交戦したり、巡航ミサイルを叩き落したり、あるいは地上の目標物を攻撃するなど、攻撃兵器になる可能性もある。

 

基礎技術の問題がどこまで解決されているかは不明だが、今年初めにLANCEが納入されていたことが、戦闘機用レーザー兵器の実現に向けた大きな一歩であることは明らかだ。■

 

First Laser Weapon For A Fighter Delivered To The Air Force

BYTHOMAS NEWDICKJUL 11, 2022 3:15 PM

THE WAR ZONE

 



2022年1月24日月曜日

地球規模で貨物人員を迅速に送り届けるロケット貨物輸送構想を米空軍は真剣に検討している。このためスペースXと契約が成立。

  

2021年5月5日、スペースXは試作型ロケット、スターシップの高高度テスト飛行および着陸回収に成功した。空軍研究本部は同ロケット含む再利用可能な商用ロケットで世界各地への貨物輸送が実現できると見ている。 (SpaceX)

 

空軍研究本部(AFRL)がスペースXと5か年契約を結び、宇宙打ち上げ手段を地点間輸送に活用した場合の制約条件ならびに実現可能性を検討する。

 

 

契約は102百万ドル相当で、AFRLは再利用可能ロケットでの貨物輸送ミッションのデータを入手し、民生仕様が国防総省用途に応用できるか検討する。民間の技術成熟化を待って政府が利用するのがねらいとAFRLは説明している。

 

米空軍2022年度予算要求ではAFRLヴァンガード計画として画期的技術で新しい輸送手段の実現を目指すとあった。

 

AFRLは、解析、素材研究、風洞検査装置の開発で民間企業に契約を交付してきたが、今回のスペースX向け契約は打ち上げ機企業で初の交付となった。AFRLはその他の打ち上げ手段提供企業との契約も検討する。

 

AFRLでは次の四分野を重視している。民生軌道打ち上げ着陸装備からデータを集める、米輸送本部規格コンテナの取り扱い可能な貨物搭載スペースを確保しつつ迅速な積み下ろしが実施できるか、各種地形に対応する着陸装置を研究する、大重量貨物の打ち上げ着陸の一連の作業を実証することだ。

 

着陸時の仕様及び輸送本部(TRANSCOM)規格コンテナの互換性、さらに貨物積み下ろし手順は重要要素となる。国防総省は地点間輸送をめざしており、民生輸送業務より広範な応用が想定されるからだ。民間企業は既存施設を使っての貨物運送に主眼を置くが、軍では未整備地点も使う物資補給や人道援助の搬送を目指す。

 

そのため、AFRLは上空通過問題を回避すべく特異な飛翔軌道を含む幅広い可能性を模索し、未整備地への着陸も想定するほか、医療品含む各種貨物を人口稠密地近くに送り込む想定もある。

 

AFRLは商用技術を利用するため、通常の開発日程でお決まりのマイルストーンは適用されない。

 

AFRLは独自装備を開発せず、スペースXのデータを集め、最終的に大型貨物輸送能力を実証する。

 

このようにAFRLがロケット貨物便構想を追求しているが、TRANSCOMも独自に民間企業と連携し、同技術の可能性を求めている。2020年に輸送本部は共同研究位開発契約cooperative research and development agreements (CRADAs)をスペースXおよびxArcとかわしている。xArcは宇宙アーキテクチャ技術企業だ。また先月にブルーオリジンともCRADA契約を結んだ。

 

CRADAはTRANSCOMが別個に締結しているが、AFRL事業にも参考になりそうだ。

 

米宇宙軍はAFRLの動きを注視しており、とくに経済性と実現可能性を重視する。宇宙軍の宇宙システムズ本部のジェイソン・コサーン准将は昨年6月に記者団に宇宙貨物輸送手段が民間部門で実現する様子に関心を寄せており、宇宙軍への導入にもつながると述べていた。■

 

AFRL partners with SpaceX to explore Rocket Cargo potential

By Courtney Albon

 Jan 21, 05:29 AM


2021年12月31日金曜日

期待高まる新技術、太陽光電力を無線に変換し地上送信する実証実験にAFRLが成功。軌道上太陽光発電施設の構築は2025年予定。実現すれば米軍の作戦活動に大きな変化が生まれる。

AFRL


KIRTLAND AIR FORCE BASE, N.M. (AFRL) – 

空軍研究本部(AFRL)がノースロップ・グラマンと開発中の宇宙太陽光発電段階的実証研究プロジェクトSpace Solar Power Incremental Demonstrations and Research (SSPIDR)の一部となるアラクネー宇宙機Arachne flight experimentの構成部品でエンドツーエンド実証実験に成功した。

 

新型構造部品「サンドイッチタイル」の地上実証で太陽光を無線周波数(RF)への変換に成功した。大規模太陽光発電を宇宙空間で行う道が開いた。


AFRLはノースロップ・グラマンに100百万ドル超の契約を2018年に交付し、試作型宇宙太陽光発電システムの中核構造部品の実証用ペイロード製作を求めた。サンドイッチタイルとはアラクネーのペイロードで重要な部材となり、今後の大規模実用システム製造の基礎となる。

 

サンドイッチタイルは二層構造で、まず高性能太陽光電池(PV)で太陽エナジーを集め、電力として第二層へ伝える。この第二層に配置したコンポネントで太陽光をRFへ変換し、送信する。


「太陽光をRFへ変換するのに成功し、軽量で拡大可能な宇宙構造物に一歩近づきブロック構造でアラクネーを実現する」とノースロップ・グラマン副社長ジェイ・パテルJay Patelが述べている。「世界各地に展開する米軍部隊に戦略的優位性を約束する機能の実現を今後も支援していきます」


関係者がノースロップ・グラマン社施設に集まり、大きな一歩となった今回の実証を見守った。


「SSPIDRプロジェクト室は今回の基本性能実証に大きく感動しています」とSSPIDRプロジェクト副主幹メロデイ・マーティネスMelody Martinezが感想を述べている。「太陽光エナジーをRFエナジーに変換できたことの意味は大きく、宇宙配備太陽光発電が大規模地表ビームで送信可能となります」


地上実証ではシミュレーターを使い、タイルのPV側が輝き太陽光-RF変換が進行中だとわかった。参列者はリアルタイムのRF出力データをモニターでフレキシブルプラスチック防護の後ろから確認した。 RFエナジーがピークに達すると太陽光RF変換が成功したとわかり喝采を上げた。


「SSPIDRで重要な場面に立ち会えて気分が高揚した。ノースロップ・グラマンのこれまでの奮闘が成果を生んだ」とアラクネー技術主任カイル・グレイクマンKyle Gleichmanが感想を述べている。「今後は中核となるペイロード打ち上げが控えており、さらなる一歩に踏み込みたい。軌道上でこの技術を早期に実現し、ニーズに答えたい」

 

アラクネー用のタイル機能実験に成功し、一平方メートルブロックを製造するめどがついた。これまでの太陽光-RF変換実験でもこの規模は未実施だ。アラクネー打ち上げは2025年の予定。■

 

AFRLとは

空軍研究本部(AFRL)は空軍省の第一線科学研究開発拠点で、導入可能な戦闘技術を空、宇宙、サイバー空間で開拓、開発、統合で重要な役割を果たしている。技術9分野で世界各地で40超の各種業務に11,500名が従事しており、AFRLが取り扱う科学技術分野は基礎研究から高度研究さらに技術開発へと多様にわたる。詳しくは以下へ。www.afresearchlab.com



AFRL, Northrop Grumman demonstrate solar to radio frequency conversion > Air Force Research Laboratory > News

AFRL, Northrop Grumman demonstrate solar to radio frequency conversion

 

  • Published Dec. 21, 2021

  • By Rachel Delaney

  • Air Force Research Laboratory


これはすごい。日本もオーストラリアで同様の実験を進めていますが、やはり安全保障がからむと真剣度、予算投入規模がちがうのでしょうか。軍事行動のエナジー供給で心配がなくなれば、兵たん活動が伸びる脆弱性から解放されるなど、大きな意味があります。民生用にも無限かつ安価な宇宙からの供給が実現すれば、今後増えるエナジー需要に応えるとともにいよいよ石油文明が終焉を迎えそうですね。

 

2020年6月6日土曜日

AFRL:無人戦闘機対有人戦闘機の模擬空戦が来年7月に実施される

空軍が開発中の新型無人機は空対空戦で有人機を撃破する能力が目標で、無人機対有人機の模擬空戦が2021年7月に予定されている。
ペンタゴンの統合人工知能センターを率いるジャック・シャナハン中将は空軍研究本部(AFRL)が現行戦闘機に匹敵する画期的な無人機開発に取り掛かっていると明らかにした。▶「来年の初飛行に向け奮闘中で....マシンがヒトに勝つだろう」とシャナハン中将は6月4日開催のミッチェル研究所の航空宇宙研究イベントで語った。「そのとおりになればすごいことになる」
AFRLはAI応用の無人戦闘機開発を2018年開始し、18ヶ月以内の完成を目指している。Inside Defenseは2018年5月に機械学習技術をF-16のような最先端と言えない機材に導入し、F-35やF-22に対決させる構想を紹介していた。▶「最優秀パイロットには数千時間の経験値がある。さらにその能力を強化するシステムがあり、数百万時間相当の訓練効果を与えるシステムがあったらどうなるか。ヒトが考えるよりも早く決定できるシステムで戦術自動操縦を実現したらどうなるか」(AFRL)
目論見通りなら空軍のその他AI応用システムにも導入できそうだ。スカイボーグ・ウィングマン無人機構想がその頂点で、整備から戦闘立案に至るまでAIと機械学習アルゴリズムが広く導入できる。
今回のAFRLの事業には今年初めに巻き起こった自律飛行無人機が有人機に勝てるとのイーロン・マスク発言でまき起こった論争を思わせるものがある。▶「無人戦闘機は遠隔操縦されるが自律運航性能で機体制御を拡張する」「F-35は対抗できないだろう」(マスク)
ただし、シャナハン中将はこうした先進技術で全部解決にはならないと釘をさしている。自動運転技術の開発で得られた教訓に軍は注意を払うべきだという。▶数十億ドル規模の投資をしているものの「レベル4の完全自動運転車はまだ走っていない」とし、「自動車業界から軍は数十年分相当の経験を活用できる」と発言した。■

この記事は以下を再構成したものです。

Air Force to Test Fighter Drone Against Human Pilot

Air Force to Test Fighter Drone Against Human Pilot

June 4, 2020 | By Rachel S. Cohen


2019年5月6日月曜日

戦闘機搭載ポッドの実現に近づいてきたレーザー兵器の最新テスト結果

本ブログではエネルギーの代わりにエナジーを訳語として採用しています。先回のレイセオン製に続きロッキードもレーザーで大きな存在感を示しています。



The Air Force Just Shot Down Multiple Missiles With A Laser Destined For Fighter Aircraft

米空軍がレーザーでミサイル複数撃破に成功。戦闘機へ搭載予定

The service wants this game-changing capability to be hanging off the wings of fighter jets by the early 2020s.

2020年代初頭にも戦闘機主翼下に戦闘を一変させる装備を導入する


空軍からレーザーで空中発射ミサイル数発の撃破に成功したと発表が出た。今回は地上配備型を投入したが戦闘機等に搭載し空中での脅威排除が期待されている。空軍発表では装備をポッドにおさめ2021年に飛行テストし、2020年代中に実戦配備したいとある。
空軍実験本部(AFRL) は2019年4月23日に米陸軍ホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で契約企業ロッキード・マーティンと今回の試射を行ったと発表。ロッキード・マーティンは指向性エナジー兵器開発契約を2017年に交付され、自機防衛高出力エナジーレーザー実証事業Self-Protect High Energy Laser Demonstrator (SHiELD)の高性能技術実証Advanced Technology Demonstration (ATD) にあたってきた。この内レーザー部分は次世代小型化レーザー発展事業Laser Advancements for Next-generation Compact Environments (LANCE)としてSHiELDの一部として進められてきた。戦闘機に搭載可能なポッドにすべておさめる装備は同じSHiELDでもSHiELDタレット研究航空効果SHiELD Turret Research in Aero Effects (STRAFE) と、レーザーポッド研究開発 Laser Pod Research & Development (LPRD) として別事業扱いされてきた。
「テスト成功は大きな一歩で指向性エナジー装備と防御策がこれで先に進みます」とAFRL所長空軍少将ウィリアム・クーリーは声明文を発表。「敵ミサイルを光速で撃破する技術で厳しい空域でも航空作戦の展開が可能となります」
ただしテスト内容に不明な点が多い。まず基本条件が不明でレーザー操作員がミサイルの飛来方向等を事前に知っていたのか、高度や飛来のタイミング、天候条件は把握していたのかわからない。空軍は投入したミサイルの種類を明らかにしておらず現実的な脅威対象を模したのだろうか。とはいえレーザーで目標捕捉、追尾、交戦、破壊の一連の作業ができたのはSHiELD開発で大きな一歩だろう。
空軍が複数目標に対応できる装備を導入するということは低出力段階は完了したことになる。2016年時点では空軍は高出力テスト第二段階で代替レーザー発射装置の運用は想定していなかった。ただし大日程が変更となった可能性はある。
空軍は 飛来する空対空ミサイルをSHiELDで撃破したいとする。同時に地対空ミサイル対応も高リスク防空体制の内部での作戦実施には必要だ。空軍は同装備を大型で低速飛行の戦闘機材や支援機材にも応用できるとし、爆撃機、給油機、輸送機のほか高性能レーダー他センサーを用いるミサイルの技術進歩にも対応出来ると見ている。

LOCKHEED MARTIN
An artist's conception of a future fight jet shooting down a threat with a laser.

今回のテストがSHiELDの全体テスト工程でどの部分に相当するかも全く不明だ。AFRLがテストを三段階にわけていたとする2016年の資料を The War Zoneは情報公開法で入手した。
入手資料には検閲部分も多いものの第一段階で低出力地上テスト、低出力飛行テストを代替レーザー装置でおこなうとあり、現在がこの段階と思われる。下に地上発射テストに関する資料を掲載した。ただし空軍は第一段階の飛行テストの詳細説明すべてを検閲で消した。

USAF VIA FOIA

地上テストは予定通りの進展だが、代替レーザー装置による飛行テストはまだ先なのかもしれない。ロッキードと空軍がテストに使う機材も不明だが、同社は改造ダッソー・ファルコン10ビジネスジェットにターレットレーザーを搭載し空中適応型空中視覚ビーム制御Aero-Adaptive, Aero-Optic Beam Control (ABC)に使っていた。
AFRLはABCを国防高等研究プロジェクト庁 (DARPA)とともに進め、この実験で高度焦点合わせ安定化技術の有効性を確認している。AFRLによればこれまでの指向性エナジー兵器開発事業はABCのようにSHiELDにも継承されており、ビーム焦点を自動安定化させる制御能力が必要とされるとしている。
SHiELDでは出力変調であらゆる条件で敵装備を無力化させる効果の実現が必要だ。レーザーの有効範囲と出力はその他指向性エナジー兵器と同様に大気状態に大きく依存し、雲や煙でビームが分断されてしまう。
それを念頭に、SHiELDの第一段階ではレーザー以外に「飛行中にポッドでのビーム制御、出力確保、冷却、システム制御」が重要とロッキード・マーティンの契約内容にあるが、LPRDポッドやSTRAFEタレットの製造メーカーは不明だ。

USAF VIA FOIA

空軍では現時点の主な課題はロッキード・マーティンが代替レーザー装置をどこまで小型化しポッドに収めることだとする。
半導体レーザー技術は大きく進展を示している。ロッキード・マーティンがSHiELD契約交付を受けた2017年当時では同社は60キロワットレーザーを米陸軍の地上配備テスト用に納入していた。同年に陸軍のAH-64アパッチ・ガンシップヘリコプターがレイセオン製の半導体レーザーポッドで目標をホワイトサンズで破壊に成功した。米海軍も独自にレーザー兵器を艦載用に開発し、各軍でのレーザー兵器テストは広く行われている。
さらに空軍はSHiELDの成功にむけ動いている。ポッド搭載レーザー防御装備が軍用機に導入されれば革命的な出来事になる。高温燃焼式のフレアやレーダー波撹乱用のチャフは搭載量が限られるが、レーザー兵器は事実上無限に使えると言って良い。.
とはいえSHiELDに限界がないわけではない。タレット式レーザーでは一度に一つの標的に対応するだけだが大気状況による効果減少リスクがある。今後登場するレーザーミサイル防御システムは機体防御装備の一環としてその他の手段と併用されるはずだ。電子戦ジャマー、曳航式おとり、直撃迎撃体が想定されている。
ではSHiELDや派生装備は視界内空戦で攻撃手段に使えないのか。あるいは対地攻撃にはどうか。防御用ポッドで発射するレーザー兵器は今後の攻撃用装備の基礎にもなりそうだ。
2018年10月、高出力エナジーレーザーや高出力高周波指向性エナジー兵器で「空中からの精密攻撃」ミッションや防御任務をSHiELDと別の提案をAFRLが公募した。また空軍特殊作戦軍団 (AFSOC) は攻撃用レーザーをAC-130ゴーストライダー・ガンシップに2022年までに導入するとしていたが、この日程は先送りになったようだ。

全て予定通りなら空軍はあと二年もすればポッド式 SHiELDシステムの試作型を戦闘機で実証する。今回のホワイトサンズでの最新テストを見ると事業は予定通り進展しており、戦場のあり方を一変しそうな技術が実用化に近づいているようだ。■