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2020年10月10日土曜日

イスラエルがストライクイーグルあらためラアムを重用している理由

 https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2013%3Anewsml_GM1E96S076O01&share=true

いつも思うのですが国情が違うとはいえ、イスラエルの防衛政策は日本にも大いに参考となります。日本もF-15の供用期間延長のため改修を行いますが、これまでの迎撃機として以外に長距離攻撃能力も付与するようでイスラエルの動向に似通ってきます。

F-15Iはイスラエル国防軍専用モデルとして生まれ、数々の実績を残してきた。イスラエルで同機への愛着が今も根強いのは数多くの戦役に投入され勝利してきたからだ。

イスラエルの戦闘機といえばF-15イーグルがまず浮かぶ。イスラエルにF-15が初めて到着したのは1976年のことで、以後一貫して供用され、しかも一機も戦闘で喪失していない。1998年にイスラエル空軍は新型導入を発表し、空対空戦用、空対地戦に対応させるとした。ラアム(雷)は長距離攻撃の中心で、新型F-35Iアディール戦闘機を補完しつつイスラエルの航空優勢を今後も維持していく。

 

マクダネルダグラス(現ボーイング)F-15イーグルの初期型は純然たる空対空戦闘機で、大型の機体に双発エンジン、単座仕様としバブルキャノピーで良好な視野を確保し、強力なAPG-63レーダーを搭載し、AIM-7スパローレーダー誘導ミサイル4発、赤外線誘導のAIM-9サイドワインダーミサイル4発、M61ガトリング砲一門を搭載した。プラット&ホイットニーF100エンジン二基により圧倒的な出力重量比を誇り、垂直上昇を楽々行えた。

 

 

F-15は大型で余裕ある設計のため、当初から多任務型の想定があり、出力、航続距離、対地攻撃兵装の搭載能力を活用しようとした。ここからF-15Eストライクイーグルが生まれ、米空軍では1989年に供用開始し、1991年の湾岸戦争に早速投入された。

 

湾岸戦争でのストライクイーグルの戦果にイスラエルが関心を示した。湾岸戦争はイスラエルの想定通りに進展せず、独裁者サダム・フセイン率いるイラクが発射したスカッドミサイルで攻撃を受け、報復攻撃を控えるようにとの米国の圧力をイスラエルは受け入れたが、仮に報復攻撃に踏み切っていても長距離攻撃能力を有する機材がなく、スカッドミサイルの発射地点をイラク西部で探る偵察機もなかった。サダム・フセインはクウェート撤退を余儀なくされたが、権力を維持し、イスラエルにとって脅威のままだった。脅威を抑止し、あるいは必要なら排除するため長距離戦闘機が必要だった。

 

ストライクイーグルが解決策となった。コンフォーマル燃料タンクにより長距離地点の攻撃が可能となる。さらに空対空戦、対地攻撃をともに実施する能力があり、一機で両方をこなせるのはイスラエル空軍にとっても非常に有益だ。

 

イスラエルは1994年5月にF-15Iラアムを選定し、まず21機(ピースフォックスVと呼ばれた)を導入するとした。さらに4機を追加導入(ピースフォックスVI)するオプションをつけた。発注規模は1995年に25機に増え、イスラエル空軍ではF-15はそれまで15年の供用実績があり、イスラエル技術陣には改良点の着想がたくさんあった。イスラエル航空宇宙工業はボーイング(マクダネルダグラスを吸収合併)と共同でエイビオニクスを大々的に改良した。

 

F-15Iはイスラエル国産技術多数を採用している。まず、イスラエル製の中央演算装置、GPS/慣性誘導装置、エルビット製のディスプレイと画像ヘルメット(DASH)がある。機体にはF-15E仕様の電子戦装置が盛り込まれた。

 

F-15Iは先に供用中のF-15Aと同じ兵装を搭載し、当初はAIM-9Lサイドワインダー、パイソン赤外線誘導短距離ミサイルを搭載したが、パイソンはその後全廃された。また旧式AIM-7スパロー、新型AIM-120AMRAAMレーダー誘導中距離ミサイルも搭載した。

F-15Iは燃料兵装を18千ポンドまで搭載できる。当初イスラエル空軍はロックアイ・クラスター爆弾26発またはマーベリック対地ミサイル6発を搭載するとしていた。現在のF-15Iはぺイヴウェイ・レーザー誘導爆弾、共用直接攻撃弾(JDAM)衛星誘導爆弾、BLU-109「バンカーバスター」爆弾、SPICE精密誘導爆弾、AGM-88HARM対レーダーミサイルも運用する。

 

このF-15I初号機は1997年にイスラエルに到着し、その後毎月一機のペースで納入され1999年に発注全機が納入された。その後25年間にわたり供用中だが、対テロ作戦、2006年のレバノン戦争、ガザ紛争、防衛の柱作戦、キャストレッド作戦に投入された。F-15Iはイラン核施設攻撃の作戦立案段階でも深く関与しており、イランが2015年に核合意に調印したことで実施が見送られた。

 

F-35Iアディール導入後もイスラエルのF-15への熱狂ぶりが覚める兆候がない。イスラエル空軍では今でも同機は「戦略機材」と呼ぶ。

 

2016年にイスラエルは今後もF-15Iを活用すべく改修を進めると発表し、電子スキャンアレイレーダーはじめ高性能エイビオニクスを搭載する。2018年、イスラエル空軍はF-15IあるいはF-35のどちらを調達すべきか検討した結果、F-15Iのほうが優れていると結論した。イスラエルがF-15Iをさらに追加調達すれば、同機は今世紀のかなりの長さで供用されることになる。1970年代の原設計機材として相当の評価となる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

F-15I: The Israeli Version of the Famous Strike Eagle

 

October 9, 2020  Topic: History  Region: Middle East  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-15IF-15MilitaryIsrael

by Kyle Mizokami

 

Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he co-founded the defense and security blog Japan Security Watch.

This first appeared earlier this year and is being republished due to reader interest.

Image: Reuters


2020年8月2日日曜日

イスラエルはF-15に磨きをかけ、ここまでの高性能機材を実現した

スラエル空軍(IAF)にはF-15イーグルのイメージがぴったりだ。同国向けF-15A初号機は1976年に到着し、現在も第一線で供用中、しかも一機も喪失していない。1988年にイスラエル空軍は同機の新型式を導入し、空対空、空対地両面対応とした。これがラアムRa’am(雷鳴)で長距離攻撃機の主力で、新たに導入されたF-35Iアディルを補完し、イスラエルの航空優勢体制を確保し、今後も維持しそうだ。

マクダネルダグラス(現ボーイング)のF-15イーグルの登場当時は純然たる空対空戦闘機だった。大型単座戦闘機の同機はバブルキャノピーで良好な視界を確保し、強力なAPG-63レーダー、AIM-7スパローレーダー誘導ミサイル4発とAIM-9サイドワインダー赤外線誘導ミサイル4発さらにM61ガトリング銃を搭載。プラットアンドホイットニーF100エンジン双発で圧倒的な推力重量比を誇り、簡単に垂直上昇できた。

開発陣はF-15の多任務機型を想定して、大出力、長距離航続力、多数の空対地兵器搭載能力を生かそうとした。ここからF-15Eストライクイーグルが生まれ、米空軍で1989年から供用開始し、直後に1991年の湾岸戦争に投入された。

湾岸戦争でのストライクイーグルの活躍ぶりにイスラエルも注目した。湾岸戦争ではイスラエルもサダム・フセイン率いるイラクが発射したスカッドミサイルの攻撃を受けたが、イスラエルは報復攻撃を控えるようにとの米国の圧力へ渋々従った。とはいえ仮に報復攻撃に踏み切っていてもイラク西部でスカッド狩りに投入可能な長距離攻撃機や偵察機材は欠如していた。戦闘終結後もサダム・フセインは統治の座に残り、クウェートから軍は撤退させられたがイラクは依然としてイスラエルにとって脅威のままだった。一方で、イランが核兵器開発の初期段階にあった。イスラエルを脅かす勢力への抑止手段として長距離戦闘機が必要なのは明白だった。

F-15Eのコンフォーマル燃料タンクで長距離地点への攻撃が可能となる。空対地空対空双方への対応能力によりF-15Eは援護機材を必要としない。ここで思い出すべきは1981年のイラク原子炉攻撃で、IAFのF-15は援護機として攻撃部隊F-16と飛んだが、空中給油他支援機材の必要性が痛感された。一機ですべてこなせるというのは魅力だった。

イスラエルはF-15Iラアムを1994年5月に選定し、21機をまず購入することとした。初期機材は4機のオプション購入(ピースフォックスVI)がつき、1995年に購入規模は25機に増えた。その時点でF-15はイスラエル空軍で15年の供用実績があったが、イスラエル技術陣には機体改修の各種構想があった。イスラエル航空宇宙工業がボーイングと共同してエイビオニクスを大改修した。

F-15Iにはイスラエル独自の特徴が見られる。まずイスラエル製のメインコンピュータ。GPS/慣性航法システム、エルビット製のディスプレイ表示ヘルメット(DASH)がある。機体にはF-15E用の高度の電子戦装備が搭載されていたが、イスラエルはエリスラ製SPS-2110統合電子戦装備に取り換えている。

F-15IはF-15Aの装備品すべてを運用できる。ラアムは当初AIM-9Lサイドワインダーとパイソン赤外線誘導方式短距離ミサイルを搭載していたが、その後パイソンに絞られた。また旧式AIM-7スパローと新型AIM-120AMRAAMレーダー誘導方式中距離ミサイルを併用した。

F-15Iの双発エンジンと大型機体では燃料、弾薬合わせ18千ポンドの運用が可能となった。IAFは当初はクラスター爆弾ロックアイ36発あるいは空対地ミサイルのマーヴェリック6発を運用した。現在はレーザー誘導爆弾ぺイヴウェイ、衛星誘導爆弾の共用直接攻撃弾(JDAM)、「バンカーバスター」爆弾BLU-109、精密誘導爆弾SPICE、対レーダーミサイルAGM-88HARMも運用する。

F-15Iの初号機は1997年にイスラエルに到着し、その後毎月一機のペースで1999年まで納入された。供用期間は25年に及び、対テロ作戦以外に、2006年のレバノン戦、ガザ戦、国防の柱作戦、キャストレッド作戦にも投入された。F-15Iはイラン核施設攻撃作戦にも投入予定だったが、2015年にイランが西側と核合意に至ったため作戦は実施されていない。

IAFはF-35IアディルAdirを導入したが、F-15への期待に変化はない。IAFは同機を「戦略機材」と呼ぶ。イスラエルに足りなかった戦力を今後も長きにわたり補う機材の位置づけだ。

2016年にイスラエルは改修計画を発表しているので、F-15Iは今後も供用を続けるのは確実だ。改修ではレーダーを電子スキャンアレイ方式に換装し、エイビオニクスを一新する。2018年にIAFはF-15IとF-35を比較検討し、前者が優れていると判断した。イスラエルがF-15の追加調達に向かえば、今世紀の大部分にわたる供用となるのは確実だ。1970年代初期に初飛行した機体として、これは高評価である。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 15, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-15lF-15MilitaryIsrael


Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he co-founded the defense and security blog Japan Security Watch.