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2022年7月24日日曜日

米国防総省がBWBに再注目。将来のタンカー、輸送機として主流になる予感。

 民間航空で革新的な技術がなかなか登場していないのは現状のモデルで利益をどこまで最大化できるかに必死になっているためです。そのため、今でも機体はチューブに主翼をつけるという点では全然進歩がありません。やはり革新的な技術は軍用途にしか期待できないのでしょうか。しかし、今回の米空軍は軍民両用を最初からうたっており、近い将来のエアポートに現れる機体形状が大幅に変わる可能性もゼロではありません。(ターミナル1.2共通記事)



Boeing

 

国防総省は、将来のタンカーや輸送機向けに、BWBへ再び注目している。

 

 

国防総省は、2026年までのフルサイズ実証機を製造・飛行を視野に、混合翼機(Blended Wing BodyBWB)の設計案を求めている。同省は、設計コンセプトから始め、高効率性の実現に焦点を当てる。同プロジェクトは、将来の空中給油機や輸送機に影響を与える可能性があり、米空軍は過去にステルスタイプ含むBWB設計を検討していた。

 今回の情報提供要請(RFI)は、米軍が新しい民生技術を迅速に利用できるよう設立された国防革新ユニット Defense Innovation Unitのウェブサイトに掲載されている。RFIは、民間企業にデジタル設計概念(CoD)の提供を求めている。「ボーイング767やエアバスA330含む民間・軍用機より最低30%空気力学的効率が高い先進的な航空機構成」の実物大プロトタイプにつながるものとある。

 

 

昨年、エネルギー・施設・環境担当の空軍次官補(SAF/IE)が発表した、2種類の混合翼機コンセプトを示すインフォグラフィック。新RFIで実寸大実証機として同登場する可能性がある。U.S. Air Force

 

 

上記旅客機2機種は、KC-46AペガサスとA330多用途タンカー輸送機(MRTT)の原型で、とくに前者は空軍のKC-Xタンカー要件で後者に勝ったことが注目すべき点だ。しかし、KC-46は問題や遅延が相次ぎ、運用に限界があるため、A330 MRTTが後続のタンカー購入の候補に残っている。

 このことは、DIUが研究対象とするBWB機が、KC-46よりもはるかに高度な航空機、おそらくステルス特性を持つ航空機が想定の将来型KC-Zタンカーとして検討される可能性を示唆しているのか。

 

 

ロッキード・マーチン社によるハイブリッド翼KC-Zコンセプトの模型。Lockheed Martin. Joseph Trevithick

 

KC-Yは、空軍が計画するKC-46の購入終了とKC-Zの間の「ギャップを埋める」タンカーとなる。KC-46を追加購入するか、ロッキード・マーチンがLMXTとして売り込み中のA330 MRTTへ変更することがある。

 今年4月、空軍参謀長チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア大将は、KC-46がKC-Yの選択肢になる可能性を示唆した。フランク・ケンドール空軍長官が、KC-YとKC-Xの両方について「競争の可能性は下がった」と発言したわずか1カ月後だった。

 

 

 

2021年2月22日、メリーランド州アンドリュース統合基地での空中給油運用調査で、KC-46Aペガサスとの接続準備をする米空軍参謀長チャールズ・Q・ブラウン・Jr.大将。U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Chris Drzazgowski

 

Air Force Magazine取材に対し、空軍研究本部(AFRL)の広報担当者は、新しいDIU RFIは「KC-Yプログラムと無関係」と確認したが、KC-Zと関係があるかについては明言を避けた。

 RFIでは、BWBの空力構成と「2030年のエンジン技術の予測」を組み合わせ、期待通りの効率化が達成されると想定し、「現行技術から少なくとも60%のミッション燃料消費の削減」を実現するとしている。この点で、同プロジェクトは、高レベルの効率を実現する(そして短距離離陸能力を提供する)エキゾチックな推進システムの可能性を探求してきた、これまでの取り組みを思い起こさせるものがある。ガスタービンを使い電動ファンのアレイに電力供給するAFRLの分散型推進コンセプトがあった。

 

 

AFRLの分散型推進コンセプトの模型 Courtesy Guy Norris

 

こうした利点により、現在稼働中の貨物機やタンカーと比較し、航続距離、滞空時間、積み下ろし能力を大幅に向上させるはずだ。特にタンカーについては、アジア太平洋地域シナリオを想定し、遠大な距離で燃料補給する能力が重要な指標となり、高効率の BWB設計が優位性を発揮するだろう。

 

 

2021年2月1日、グアムのアンダーセン空軍基地に着陸するアイオワ州空軍第185空中給油隊所属の米空軍KC-135ストラトタンカー。KC-135はアジア太平洋地域で活動する航空機への空中給油支援に重要な役割を担っている。U.S. Air Force photo by Airman Kaitlyn Preston

 

効率改善は、化石燃料への依存度を減らす国防総省の大きな目標に合致する。「国防総省は石油ベースエナジーの最大の連邦政府消費者で、全体消費の77パーセントを占めている」とRFIは述べている。「大半は、世界規模の作戦を支援する航空機の燃料に起因する」。

 国防総省の燃料依存と、米軍を脆弱にする可能性について懸念が高まっており、将来の作戦と有事はアジア太平洋地域に集中する可能性が高いとの予想にも重なる。同戦域は距離が長く、長距離の出撃の要求が高まる一方、燃料ロジスティックスの要求とサプライチェーンでリスクが増大する。高効率の輸送機やタンカーは、これに対処する手段となる。

 一方、効率的な輸送機技術の実証プログラムも進行中です。昨年8月に発表されたNASA契約では、ボーイング、レイセオン・テクノロジーズジェネラル・エレクトリックブレンド・ウィング・エアクラフトROHRの各社が「Future Subsonic Demonstrator Risk Reduction Activities」プログラムを支援している。これは、持続可能性、環境、騒音低減、効率、コストなど厳しい目標を満たす亜音速輸送機(BWBコンセプトも含む)の技術を特定するのを目的とするものだ。

 全体として、BWB設計の効率と持続可能性での高い優先順位は、今回のRFIが、通常この種の募集で出てくるAFRLや空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)ではなく、空軍運用エナジー室Air Force Operational Energy Officeが主催している事実にも反映されている。

 

 

 

風洞でのX-48混合翼機2%モデルの空力試験。U.S. Air Force

 

 

空力効率を大幅に向上させるだけでなく、「システム統合と将来のアップグレードを可能にする」モジュラー・オープン・システム・アプローチ(MOSA)を取り入れた設計が求められている。タンカー任務に適応することを指しているのかもしれないが、将来的に他のミッションも引き受ける計画の可能性もある。

 設計では、「各種ミッションに特化したシステムの組み込み」を考慮する必要があり、電子戦コンポーネントとJADC2(Joint All Domain Command & Control)アーキテクチャの想定システムという2例が挙げられている。KC-135を通信ハブとする現在の計画や、ブラウン大将の過去発言に沿ったもので、将来のタンカーが「さらなる自己防衛」能力と通信ノードの役割を果たす装置となるよう望んでいると同大将は述べている。

 

 

 

2021年8月7日、ユタ州空軍がコリンズ・エアロスペースと共同で、ユタ州ソルトレイクシティのローランド・R・ライト空軍州兵基地において、JADC2(統合全領域指揮統制)およびABMS(先進戦闘管理)を支援する先進通信、ミッションコンピューティング、センサー技術のデモンストレーションをKC-135で成功させた。 U.S. Air National Guard photo by Tech. Sergeant Danny Whitlock

 

新RFIはタンカーの役割に言及していないが、AFLCMCが先月開始した先進空中給油システム(AAR FoS)プログラムと類似点が多数ある。

 AAR FoSのRFIでは、無人航空機への給油を最適化し、電子戦プラットフォームとしても機能する未来型タンカーを想定している。

 Defense Innovation Unitの公募がエキゾチックなBWBデザインを核とするのに対し、AAR FoSでは進化的なアプローチとし、まず現行タンカー群(KC-46A、KC-135R/T)に新機能を追加し、その後「新型タンカーの全体要件を策定する 」。

 各 RFI は異なるが、重複もあり、最終的には各要素を組み合わせた新世代タンカーや輸送機が生まれると考えられている。

 

 

 

ロッキード・マーティンのBWB軍用輸送機コンセプトの特徴を示すインフォグラフィック。NASA

 

 RFIでは、現在の設計コンセプトに沿い、企業が「デジタルエンジニアリングツールとプロセス」を使用し、設計、開発、テスト、検証、妥当性確認、および後続のプロトタイプ構築、実飛行、および生産の可能性があるシステムの認証を行うと定めている。フルスケール実証機は、2026年までに飛行する予想だ。

 意外なことに、RFIはステルス性や低観測性に言及していない。しかし、全翼機形状のBWBは、従来機と比較して、低観測性の設計コンセプトに近くなる。同時に、この種の設計は、貨物や燃料の運搬の内部空間で利点を提供する。

 

 

初期のブレンデッドウイングボディデザインがNASAのN3-Xコンセプトだった。翼を機体にシームレスに溶け込ませ、空力的で、燃料消費、騒音、排出ガスの削減をめざした。NASA

 

また、空軍のKC-Zでは、低観測性を縮小するか、あるいは完全に削除している可能性もある。ブラウン大将は今年初め、次世代航空優勢(NGAD)戦闘航空システムには「必要な場所に行ける航続距離がある」と述べ、危険な場所に同行するステルス「護衛」タンカーの必要性は減ると指摘していた。

 また、空軍が目的別に設計された無人機での能動的防衛を真剣に検討し始めたため、将来のタンカー(または輸送機)にステルス性を組み込む優先度が低くなった可能性もある。

 タンカーなど、脆弱な高価値資産航空機(HVAA)の近接護衛を行うミサイル搭載無人機に関する研究や提案はいくつかあり、AAR FoS プログラムでは特に「オフボード自律協調プラットフォーム」を想定している。こうした無人機は、戦闘機含む各種航空機を護衛し、電子攻撃や敵防空網の抑制、情報・監視・偵察(ISR)などの任務もこなすことが期待される。

 しかし、BWBは低視認性であり、貨物機やタンカーとして以外に特殊作戦部隊の輸送も検討されたことがある。

 また、今回のRFIには実物大試作機製作の可能性が含まれているが、ボーイングX-48プログラムでサブスケール実証機をテストしており、2007年に初飛行させていた。

 将来のタンカーの基礎となるBWB設計の実用性について、The War Zoneは、退役空軍軍人で、C-135ファミリーについて幅広く執筆しているロバート S ホプキンス3世 Robert S Hopkins IIIに話を聞いた。

 ホプキンスは、BWBタンカー開発には重大な問題があると指摘している。まず、ブームとレシーバーの比率だ。これはタンカー全体のサイズに依存する。大型機用の中央ブームと、戦闘機サイズのレシーバー用の機外ブームの合計3台のブームを、長い翼幅に沿わせる。「AIを使えば簡単だろう」((ホプキンス)。

 そして、タンカーの機数は永遠の課題だ。空軍がタンカーと輸送機の「スプリット・デューティー」を行うBWBを100機購入したとしても、現在のタンカー不足を十分に解消できない。「タンカー需要は現在、460本のブーム(MPRSポッドは別)で満たされているため、タンカー購入総計は同じかそれ以上にする必要がある」とホプキンスは指摘する。

 空軍の将来のタンカー要件はこれまでも詳しく議論されており、KC-YとZの各要件が想定されたが、空軍が大型貨物輸送機、C-5M ギャラクシーとC-17A グローブマスターIIIの各後継機をどこまで検討し始めているかは明らかではない。

 

 

2021年9月14日、横田基地のフライトラインで、カリフォーニア州トラビス空軍基地第60航空機動飛行隊所属のC-5Mスーパーギャラクシー。Yasuo Osakabe

 

冷戦時代のC-5は、空軍最大の機体で、非常に大きく重い貨物を輸送する比類ない能力を実現している。C-5Mは、エンジン改良を含む大幅性能改修で、2040年代まで運用される。2040年代以降は、ギャラクシー代替機として、容量が大きく効率的なBWBタイプが考えられる。

 2015年に生産終了し、最後の1機が輸出された主力輸送機C-17については、空軍は耐用年数を延長するか決定していない。同機は、機械化部隊を含む戦闘部隊を戦闘地域まで長距離迅速移動させる上で第一選択肢で、平和維持活動や人道支援ミッションの輸送にも優れる。

 

 

2013年9月12日、カリフォーニア州ロングビーチで行われた米空軍向けC-17納入20周年を祝う式典で、フライトラインに置かれる米空軍最後のC-17AグローブマスターIII(P-223)。U.S. Air Force photo/ Senior Airman Dennis Sloan

 

空軍がC-17の大規模近代化を断念した場合、活動する空域が今後ますます厳しくなることを考慮し、ステルス性の高いBWBエアリフターが後継として検討されるかもしれない。

 RFIはBWBで軍事的用途のほかに、二重用途の商業化計画にも言及しており、潜在的な商業的用途が考慮される。長距離飛行、効率、大量貨物を輸送する能力を併せ持つ航空機は、貨物や旅客の民間輸送に利用できそうだ。以前から、大手企業はBWBと全翼機の潜在的な利点に注目している。

 

 

エアバスは、将来の旅客機開発を目的として、2020年にBWBスケールモデルの技術実証機「MAVERIC(Model Aircraft for Validation and Experimentation of Robust Innovative Controls)」を公開した。Airbus

 

BWB航空機が軍用および民生双方に適用できる利点を多数提供するのは明らかだ。RFIへの回答は8月2日期限となっており、空軍が将来の混合翼航空機に期待する任務や、近代化計画にどこまで適合するかが順次明らかになる期待がある。■

 

 

Air Force Wants Blended Wing-Body Aircraft Demonstrator Flying By 2026

BYTHOMAS NEWDICKJUL 22, 2022 

6:58 PM

THE WAR ZONE

 




2020年3月20日金曜日

C-17をミサイル運用機に転用する柔軟な思考はどこから生まれるのか

限られた資源の中でどうしたら戦力を最大化できるか、を考えると過去の延長線上に答えはなく、全く新しい発想が必要ですね。今回の事例は目的(兵装搭載量の少ないステルス戦闘機を補う兵力を最前線に実現する)から考えた結果で、この発想は「ブレイクスルー思考」につながります。ご関心の向きは日本企画計画学会のウェブサイトhttp://www.bttnet.com/jps/index.htm
をご参照ください。
国は将来戦への対応を模索している。そのひとつが輸送機に攻撃能力を付与する構想だ。
米空軍は「戦闘用途機材」の定義を見直し、弾薬多数を投入する方法を検討中だ。その中で輸送機を転用する案が浮上している。
空軍が「実験を企画中で上層部が重武装機構想の進捗で説明を受けた」とAir Force Magazineが2019年11月に伝えていた。
同構想は2016年に初めて検討された。「複数エンジン」搭載の重武装機は大量の「ネットワーク対応可能で半自律型兵器」を搭載し、他装備が把握した標的に発進させると空軍は構想を映像で発表していた。
ペンタゴンの戦略戦力整備室が重武装機構想を打ち出した。構想では「最古参機材をあらゆる種類の通常兵装の空中発射台に変える」とあった。アッシュ・カーター国防長官(当時)は「重武装機は大型空中弾倉の役目となり、第5世代機向けの前方センサーであり標的捕捉手段にもなる」と2016年に述べていた。
対象機にB-52を転用するとの見方が強かった。1960年代製のB-52は「旧式」かつ「エンジン複数」を搭載機材にあてはまるためだ。
重武装機構想の前に空軍はハイエンド戦を想定しB-52に長距離兵器の発射機能を想定したことがある。重武装機構想はB-52の運用概念の延長線上で同機のセンサー、通信機能、ハードポイント、兵装庫だけ手直しすればよい。
ただ記事では輸送機の改装でこの役目がこなせると指摘していた。だがC-17だと大幅改装をしないと兵装発射ができない。またC-17は電子対抗措置も脆弱だ。
「C-17は大規模作戦の開始時に高い需要となる」とマイク・ガンジンガー(ミッチェル航空宇宙研究所アナリスト)は述べる。「そのような機材を部隊展開用でなく攻撃に投入するのでは理屈に合わない」
だが空軍が重武装機取得に向かうことは理屈にあう。F-22やF-35が機内搭載できる兵装は少量だからだ。
F-22の標準装備は空対空ミサイル4本と1,000ポンド爆弾二発だ。F-35では空対空ミサイルはわずか2本で2,000ポンド爆弾二発を機内に搭載する。これに対し、ロシアや中国の戦闘機はステルスを気にしなければミサイル、爆弾を10発以上搭載できる。
米戦闘機部隊は敵勢力より少ない兵装で戦闘に臨むことになる。そこで重武装機が前線後方からミサイル多数を発射できれば、兵装量の不足を補う効果が生まれる。
重武装機構想発表の直後に米空軍の戦闘形式に詳しいブライアン・ラスリーは「奇抜だが全く新しい構想だ」とThe Daily Beastに述べた。「だが戦闘機が不足気味でしかも搭載兵装量が少ないところに敵が戦闘力を高めている中、ペンタゴンはなりふりかまわず新構想を試さざるを得ないと考えているのだろう。鈍足で非ステルスの大型爆撃機で高速ステルス戦闘機を支援するということか」
結局、爆撃機でなくてもよいのだ。■

この記事は以下を再構成しています。

Missile Plane: How the C-17 Cargo Plane Could Be Modified to Carry Deadly Weapons

It would be a powerful weapon.
by David Axe 
March 19, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: C-17Arsenal PlaneMilitaryTechnologyAir Force


2018年11月17日土曜日

気になるボーイングのロングビーチ工場売却。C-17生産再開は可能性なし

Boeing Is Selling Off Its Historic C-17 Production Line Facility In Long Beach ボーイングがC-17生産にも使った歴史あるロングビーチ工場を売却

The property could be attractive to space launch and other aerospace firms, but there are also proposals to completely transform the area. 宇宙打ち上げ始め航空宇宙企業に魅力ある物件になるがその他にも再開発構想がある

BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 7, 2018
USAF


ーイングがカリフォーニア州ロングビーチの生産施設売却に動いている。同施設はC-17AグローブマスターIII輸送機を製造した場所で、売却が実現すれば同社は南カリフォーニアでの軍用機連続生産を終了するとともに米空軍で高まる同機の生産再開の芽もつまれることになる。敷地はヴァージン・オービットスペースXのような宇宙打ち上げ企業にも魅力となるだろうし、その他の再開発構想もある。
ボーイング(本社シカゴ)は同施設売却を2018年11月5日に公示した。ロングビーチ空港に隣接する4百万平方フィート(約37万平方メートル)の敷地内に組立工場(110万平方フィート、約10万平方メートル)がありC-17を280機あまり米空軍やその他国向けに生産した場所だ。今の所売却希望価格は不明だ。
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C-17からステルス舟艇とともに投下する特殊部隊チームWATCH THIS SPECIAL OPS TEAM TOSS THEIR STEALTHY BOATS AND THEMSELVES OUT OF A C-17By Tyler RogowayPosted in THE WAR ZONE


マクダネル・ダグラスがC-17を開発し同地で生産を1991年開始した。ボーイングが同社を1997年に買収し、グローブマスターIII生産施設を引き継いだ。
ロングビーチ施設には第二次大戦前まで遡る長い歴史があり、ダグラスは戦時中にボーイングB-17爆撃機後期型を同地で受託生産した。戦後も機体生産が続き、1980年代にはマクダネル・ダグラスMD-80旅客機が同工場で生産された。
USAF
米空軍のC-17.


ボーイングは今後も南カリフォーニアでC-17関連の整備その他支援を行うが、ロングビーチ工場はグローブマスターIII最終号機が完成した2015年以降は未利用のままだった。米空軍が空輸能力拡充を必要とし同機の生産再開が話題に上っていたがこれで事実上雲散霧消してしまう。
RANDコーポレーションによる2012年の詳細検討では数年間の空白後はC-17生産再開は80億ドル近くになると結論づけ燃料消費改良型150機を新規生産する想定だった。RANDはボーイングはロングビーチ以外で生産すると仮定していた。2008年時点で同社はグローブマスターIII生産終了後に別の機種生産にロングビーチ工場は使うのは効率が悪いと判断していたようだ。
BOEING
2010年のコンセプトでは燃料消費改良型C-17(C-17FE)をC-17原型と比較していた。


ボーイングは購入希望の第一回締切を2018年12月初旬に設定とロサンジェルス・タイムズが伝えており、広大な敷地に関心を示す向きが誰かまだわからない。
宇宙打ち上げ企業が関心を示すのは大型ハンガーの他作業スペースがあるからだが、2012年にボーイングは旧マクダネル・ダグラス施設のダグラスパークを不動産デベロッパーに売却した実績がある
GOOGLE EARTH
ロングビーチ空港。C-17を生産ていた施設が左に見える。衛星画像は 2015年撮影で生産工場横にC-17一機が見える。


大富豪リチャード・ブランソンの多国籍企業ヴァージン・グループ傘下のヴァージン・オービットが同上地点に本社を構える。同社は小型衛星を軌道に乗せるべく空中発射方式ロケット(呼称ローンチャーワン)を開発中で改装したボーイング747旅客機(呼称コスミック・ガール)を母機に使う。
2018年10月24日、ヴァージン・オービットはローンチャーワンをコスミック・ガールに初めて搭載し、11月後半に初の発射を目指す。作業はロングビーチ空港で行った。
ヴァージン・オービットが空港隣接の敷地を拠点にほしいというのは十分理解できるし、大規模の航空関連施設も事業にぴったりだ。ブランソンには購入希望出て維持できる資金が十分ある。
だがスペースX(本社は近隣のカリフォーニア州ホーソン)も関心を寄せるはずだ。
不動産デベロッパーが企業向け集合オフィス用地に転換する可能性もある。グーグルがハワード・ヒューズが巨大飛行艇「スプルース・グース」の格納庫だったロサンジェルス施設を購入し、現在、事業所用に変える作業を進めている。
HOLLIDAY FENOGLIO FOWLER
ヒューズ航空機がスプルース・グース飛行艇を製造したハンガーがグーグルの「ハンガー」事務棟に改装されるとこうなる。


ロング・ビーチ市も同敷地を購入して都市再開発プロジェクト「グローブマスター・コリド」にしたいとする。これは商用公的施設の複合体で公園他レクリエーション空間も同時に確保する構想だ。
「ボーイングと地域社会にとって最適の選択肢を検討しているところです」とボーイング広報C.J.ノーザムが2018年6月に報道陣に語っている。「詳細は今お話できませんが」
はたしてこの物件が今後も航空宇宙産業に関連して使われるのか、それとも名前だけ残すことになるのか興味あるところだ。いずれにせよボーイングに同工場でC-17生産再開の予定がないことは確かだ。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2015年12月1日火曜日

ボーイングがC-17生産を終了しました





Boeing Ends C-17 Production in California

Nov 30, 2015 Guy Norris | AviationWeek.com

カタール首長国空軍向けのC-17最終号機がロングビーチ(カリフォーニア州)から移動飛行に入るところ。 Greg Norris/AW&ST

LOS ANGELES – ボーイングはC-17生産を終了し、ロングビーチでの航空機生産70年の歴史に幕が下りた。最終号機はカタール空軍向け納入に備え、同社のサンアントニオ事業所へ11月29日出発した。

最終号機はカタール向け4機の一部で別に一機は完成したものの買い手がない状態でテキサスで保存される。C-17の生産は279機で終了している。このうち、試作機、構造試験用機材、未納入の5機等を除くとボーイングは271機を販売しており、うち223機が米空軍向けだった。

カタール仕様のC-17 はボーイングが販売先未定のまま製造した10機「White Tales]の一部。残る機材では一機がカナダへ、またアラブ首長国連邦が追加で2機を受領し合計8機の部隊とする。さらにオーストラリアも2機を追加し、最終8機目を9月に受領している。その他の発注元には英国、クウェート、ならびに12ヶ国からなる戦略輸送能力コンソーシアム(NATO)がある。

ボーイングは引き続き同機を運用する各国向けの支援、保守管理、性能改修業務をC-17グローブマスターIII国際維持管理事業 Globemaster III Integrated Sustainment Program (GISP) として提供するが、生産にあたってきたロングビーチ工場の今後の活用方針は未定だ。ボーイングF/A-18やロッキード・マーティンのF-35の大部分がカリフォーニア州で生産されているとはいえ、C-17が同州内で量産された最後の固定翼機となっている。そのため、最終納入をもって70年に渡るロングビーチでの完成機生産の歴史に幕が降ろされたとともに、カリフォーニア州内での固定翼機の完全生産の一世紀に渡る歴史も同時に終わったことになる。■