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2023年7月21日金曜日

米空軍特殊作戦司令部が注目する新明和US-2他「滑走路非依存型」機体。



軍特殊作戦司令部(AFSOC)の求める技術内容は長いリストになっている。

 同司令部は、秘密裏に、迅速に、長距離にわたってコマンドを輸送し、他の航空機が通常入れない場所に侵入する任務を負う。当然、これらすべてのカテゴリー、特に後者の滑走路のない場所への人員輸送を向上させたいと考えている。

 しかし、地球のほぼ4分の3が滑走路として機能し、固定翼機が着水できたらどうだろう。インド太平洋全体が滑走路になる、とSOCOMの調達担当幹部ジェームズ・スミスが記者団に語った。

 それが、MC-130J輸送機にポンツーンを取り付けたフロート機に改造するアイデアであり、同司令部が2年以上研究してきたコンセプトである。

 SOCOMの固定翼機プログラム責任者ケン・キューブラー空軍大佐は言う:「その技術の一部を推進し続けているが、本当に難しいエンジニアリング問題だ」。

 SOCOMは、水力およびサブスケールの試験を実施し、さまざまな海象状態でどのような性能を発揮するかを研究しており、重要な設計審査に向かっている、と同氏は述べた。

 さらに、同司令部は、保守やサポート、装備の必要性、訓練など、「システム・オブ・システムズ・アプローチ全体を使って、どうすれば可能になるのか」と検討している。

 同司令部は、複数組織と協力し研究やテストを実施している。「全能力の実証実験を行うには、2年から3年かかると見ている」。

 キューブラーは、その場つなぎの解決策として、海上自衛隊が使用中の新明和US-2固定翼水陸両用機の取得を検討するかと尋ねられた。

 これに対し、キューブラーは何も除外されていないと述べた。プログラム実行本部は、フロート機の能力について日本と協議中で、特に運用と訓練のコンセプトを検討中であると言う。

 「我々はこれらの能力について世界中を見ている。滑走路に依存しない水陸両用能力を持つため、さまざまな案を検討する中で、取得戦略のすべては未決です」と彼は言った。

 新明和US-2は滑走路にも着陸でき、主に捜索救助任務に使用される。乗組員11人と20人の乗客、または12人分の担架を運ぶことができる。ロールス・ロイスAE2100エンジンで駆動し、翼幅は108フィート(約2.5メートル)、時速約300マイル(約850キロ)で航行する。最大9フィートの海面でも運航可能で、陸上では一般的な民間旅客機の約4分の1の離着陸距離で済むため、日本の地方で厳しい滑走路でも実用に耐える。

 製造元の新明和工業の情報によれば、航続距離は2,980マイルで、これは一般的な捜索救助用ヘリコプターの約5.5倍の距離だ。

 日本は現在8機を保有しており、さらに6機を製造する予定である。同社によると、この航空機はこれまでに1,000人以上の命を救ってきたという。新明和工業は積極的に輸出の機会をうかがっているが、航空機の海外バイヤーはまだ見つかっていない。

 スターズ・アンド・ストライプスによれば、退任前のエリック・ヒル元AFSOC副司令官は2022年4月、海兵隊岩国航空基地を訪れ、US-2をチェックし、乗員訓練を見学した。水陸両用機は「信じられないようなプラットフォームだ」。

 「着水できる飛行機は新しいコンセプトではないが、水陸両用飛行の経験を持つ飛行士はほとんどいない」とヒルは同紙に語った。「パートナーから教訓を得ることで、今後独自の戦術や技術を構築する際に予測すべき項目が学べる」。

 今回の訪問の目的は、SOCOMが独自の水陸両用飛行プログラムを模索する中で、事実を収集することだと彼は言う。「我々は、同盟国と提携し、彼らから学び、彼らが水上機の2番目のバリエーションに取り組んでいるのを見て、共有できる多くの教育内容があると思う」とヒルは付け加えた。

 スミスは、特にUS-2について言及するわけではないが、新技術の開発に関しては、すべての国がSOCOMとの提携に必要なものを持っているわけではないと述べた。

 「私たちは常に、私が『ゴルディロックス・パートナーシップ』と呼ぶものを追い求めている。

 まず、日本は自国の特殊作戦部隊に多額の投資をしているが、すべての国がそうではないとスミスは指摘する。

 潜在的パートナーはまた、先端技術を生産できる強固な産業基盤を持っていなければならない。日本はそれに当てはまる。

 最後に、SOCOMが共有する情報を保護するために、強力なサイバーセキュリティ・プロトコルを備えていなければならない、と言う。

 「3つの条件すべてを満たす国が見つかれば、該当国との協力に興味を持つ」と彼は語った。

 一方、キューブラーは、国防高等研究計画局DARPAと共同開発中の、「滑走路非依存性」を要求事項の最上位に据えた別の新プログラムの詳細についても語った。

 DARPAは3月、SPRINT(Speed and Runway Independent Technologies)と呼ばれるXプレーンの実証プロジェクトを明らかにした。同局の戦術技術室は、次世代の航空モビリティ・プラットフォームのため、スピードと滑走路非依存性を実証するXプレーンの設計、製造、認証、飛行の提案を募集している、と同局の声明は述べている。

 発表によると、滑走路非依存性とは、「損傷した滑走路、高速道路/車道、乾燥した未整備の畑、駐車場など、未整備の路面で操作したりホバリングする能力を想定している」のだという。

 3月9日に発表された広範な政府機関の発表では、航空機が乗員付きか、非乗員付きか、あるいはオプションで操縦付きかについて言及していない。また、従来型エンジンかハイブリッドエンジンかについても触れておらず、「すべての飛行モード、および飛行モード間の移行時に動力を生成・配分する能力を実証する」とだけ記されている。

 しかし、発表では、航空機は拡張性があり、400から450ノットで巡航し、15,000から30,000フィートの高度で飛行すると明記されている。ペイロードは5,000ポンドで、長さ30フィート、幅8フィートの貨物室には小型車両やパレット2.5個を搭載できる。滞空時間の初期要件は、1時間半と200海里である。

 今回の発表では滑走路非依存性が強調されたが、AFSOCが新型Xプレーンに求める最重要の能力は高速性だ、とキューブラーは言う。「高速の定義?プログラムが提供できるものなら何でもいい」と彼は言う。

「もし400ノットと言ったら、明日は450ノット、明後日は500ノットを要求する。プロジェクトは3段階に分け、第1段階でプロポーザルを募集する。選ばれた事業者は、コンセプトを洗練させるため1500万ドルを共有する。第2段階では、リスク軽減作業と航空認証の承認のため7500万ドルのダウンセレクトが行われ、その後、航空機の製造と飛行のためにさらにダウンセレクトが行われる。この金額は公表されていない。

 「SPRINTの目標は、契約締結から42カ月以内に実証機の初飛行に到達すること」。

 この投稿に添えられたアーティスト・コンセプトには、複数企業が開発中の次世代自律型ハイブリッド電気コミューター機によく似た機体が描かれていた。

 SOCOMの回転翼担当プログラム・エグゼクティブ・オフィサー、ジェフリー・ダウナーによると、既存の航空機メーカーや新興企業の多くが、いわゆる「空飛ぶクルマ」、つまり電動式または電気ハイブリッド式の滑走路非依存型垂直離着陸機を提供しており、特殊作戦任務に完璧に適合するように見えるかもしれないが、今のところ印象に残るものはないという。

 PEOは、新興企業のコミューター機を調査したが、どれも特殊作戦任務に必要な要件を満たさないとわかった。

 「調査した範囲では、電動機はすべて現行ヘリコプターの任務を果たせません」。

 特殊作戦用ヘリコプターは長時間ホバリングする必要があるが、新型の電動機ではそれができない、と言う。また、ダウンウォッシュ量も問題であり、乗員を素早く乗り降りさせる能力も必要だという。

 PEOロータリーウィングはまた、2024年にDARPAと共同で、高速化を目的としたハイブリッド電気航空機を検討するプログラムを開始する。

 「我々の研究では、速度向上が25%から100%可能であると示されている。90ノットから170ノット、180ノットになるかもしれない。あるいは航続距離が25%から75%伸びるかもしれない。それは非常に大きなことだ」と彼は付け加えた。■


Air Force Special Ops Wants Runway Independence, More Speed

7/14/2023

By Stew Magnuson


2022年9月22日木曜日

水陸両用版C-130MACの実機実証は2023年に。US-2導入も匂わせるAFSOC。他方で中国はAG-600の開発を続けているが....

 

AFSOC

 

 

 

広大な海域で中国と戦う可能性から、水陸両用版C-130が現実となる可能性が出てきた

 

 

軍特殊作戦司令部(AFSOC)のトップは、特殊作戦用のMC-130JコマンドーIIマルチミッション戦術輸送機の水陸両用版が来年に飛行すると、火曜日に述べた。

 ジェームズ・スライフ中将 Lt. Gen. James Slifeは、メリーランド州ナショナルハーバーで開催された航空宇宙軍協会(AFA)の航空・宇宙・サイバー会議で、「議会での23(2023年度)予算プロセスの結果を待っている」と記者団に述べた。「来年に飛行実証が行われると予想している」。

 

デジタル・プルービング・グラウンドでのMC-130JコマンドーII水陸両用改造型の予想図。 (AFSOC photo)

 

これは、昨年のスライフ中将発言と異なる。Defense Newsによると、スライフ中将は昨年9月、メディア懇談会で「来年12月31日までに実証を実施すると確信を持って言える」と述べていた。スライフ中将は、飛行デモは単機で行われる可能性が高く、機体性能のデジタル技術モデルを検証することが目的と強調していた。

 本誌はAFSOCに連絡を取り、何が変わったのか説明を求めており、追加情報があれば記事を更新する。とはいえ、同機のユニークな能力は、飛行試験段階への移行を目指しており、その正当性は月日を追うごとに明らかになってきている。

 中国の脅威へ懸念が高まる中、米軍特殊作戦司令部(SOCOM)は、潜在的な紛争地域の僻地部分に人員や機材を移動させる方法を模索している。離着水できると多くの利点がある。MC-130は、短距離で離着陸できる性能のため、魅力的なプラットフォームになっている。

 

2020年10月27日、フロリダ州ハールバートフィールドで行われたアジャイルフラッグ21-1で、第9特殊作戦飛行隊に所属するMC-130JコマンドーIIがタキシングした。 (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Joseph Pick)

 

中国との紛争では、従来型の航空・海上輸送では到達できない遠方へ米軍部隊を分散して活動させることになりそうだ。海兵隊司令官デイヴィッド・バーガー大将David Bergerのフォースデザイン2030コンセプトでは、中国兵器が届く範囲に部隊を事前配置するのを基本としている。月曜日には、ケネス・ウィルスバック空軍大将が、中国が補給線を遮断してくる想定で、地域全体に物資をあらかじめ配置しておくことと語った。

 水上での離着陸は、こうした問題や懸念に対処できる可能性がある。MC-130Jには、数十年にわたる進化と、航法、通信、生存能力の強化のための巨額の資金が投入されている。そのため、例えば、C-130を浮き輪に乗せて飛行艇にすれば明らかにトレードオフとなるが、MC-130でそのような機体を実現すると、非常に高価で時間がかかると考えられる。

新型地形追従型レーダー「サイレントナイト」を搭載したMC-130J。MC-130Jは、高度に改良された絶大な能力を持つ機体だ。 (Lockheed Martin)

 

スライフ中将は、MC-130J Commando II Amphibious Capability(MAC)と名付けられた機体について、「すべてのモデリングとシミュレーションを行い、一般的な設計レイアウトに落ち着きました」と述べている。「選択した設計が安定したものであり、運用可能であると確認するため、波動タンク・モデリングを進めている」。

 AFSOCは、空軍研究本部(AFRL)の戦略的開発計画・実験(SDPE)部門と協力し、「プラットフォームの海上の特殊作戦のサポートを改善するために」MACを開発していると、AFSOCは2021年9月のメディアリリースで述べていた。

 「MAC能力の開発は、各種努力の集大成です」と、AFSOC科学・システム・技術・イノベーション(SST&I)副部長のジョン・トランタム中佐 Lt. Col. Josh Tranthamは当時述べていた。「この能力により、空軍は侵入、脱出、人員回収の配置とアクセスを増やすことができ、さらに将来の競争と紛争で強化されたロジスティック能力を提供できます」。

 しかし、この能力の恩恵を受けるのはAFSOCだけではない、とトランタム中佐は述べている。

 「MACは、各軍や同盟国、パートナー国の様々なC-130プラットフォームで使用できると考えています。さらに、その他革新的なツールと水陸両用機の運用を拡大することで、将来の戦場において、戦略的な競争相手に複雑なジレンマを提供することになるでしょう」。

 

MACコンフィギュレーションの1つの動作のレンダリング。(AFSOC)

 

AFSOCによると、波動水槽テストに加え、AFSOCと民間部門パートナーは、「デジタルプルービンググラウンド」(DPG)として知られる仮想環境のデジタル設計、仮想現実モデリング(VR)、コンピュータ支援設計(CAD)でMAC試作機をテストしており、デジタルシミュレーション、テスト、高速プロトタイピングと物理プロトタイプテスト用の高度製造利用の道を開いている、という。

 スライフ中将は、モデリングとシミュレーションは「すべて順調」と語った。「それは、デジタル設計の素晴らしさであり、C-130のデジタルモデルでこれらすべてを行っている」と続けた。「これまでの波動水槽テストでは、選択した設計案は、予想どおりの性能を発揮している」。

 Signal Magazineによると、空軍はC-130に「水陸両用の改造」を行っていると、スライフ中将は今月初め、AFAのWarfighters in Actionで発言していたとある。「浮き輪ではありません。水陸双方で着陸する能力を持つことになります。

 「双胴船、ポンツーン、または機体底面の船体追加と一連のテストのすべて検討した。そして、抗力、重量、海面性能のトレードオフを最適化するデザインに落ち着きました」。

 

 

ロッキードからは相当前に水陸両用型C-130コンセプトが出ていた。Lockheed

C-130をフロートに乗せるアイデアは、このロッキード・マーチンのレンダリングに見られるように、何年も前からあった。Lockheed Martin

 

MACが海上の特殊作戦にもたらす効果を楽しみにする一方で、スライフ中将はMACにできること、できないことを現実的に考えている。例えば、MACは即座に運用できない、と火曜日に述べた。

 「水陸両用能力は現場で取り付け可能だが、特定の出撃のために装着して離陸するようなことはない」とスライフ中将は述べている。「少し時間がかかるだろう」とスライフ中将は言う。「設置するためデポに行く必要はない。部隊レベルのメンテナンスでこの機能を インストールすできるだろう」。

 MACの限界とスライフ中将の水陸両用機への関心にもかかわらず、彼はAFSOCがC-130のキットを超える新しい航空機調達プログラムをすぐに求めることはないだろうと述べた。

 「資源に限定がなければ水陸両用機の開発をすぐ進めれられる。しかし、現実の世界は違う。優秀な水陸両用機はすでに存在しているが、近い将来に新型機開発を進めることはない。既存機体をリースする可能性はある」。

 今年初め、アジア太平洋地域で行われたコープノース演習で、パイロットたちは日本の新明和US-2水陸両用機を検分した。

 

グアムのアンダーセン空軍基地近くのテニアン島沖で行われたコープノース22演習で海に浮かぶ日本の新明和US-2 U.S. Air Force/Senior Airman Joseph P. LeVeille

 

 昨年11月、AFSOC代表団が岩国基地を訪れ、飛行艇と運用コンセプトを詳しく学んだ。その際、海上自衛隊がAFSOCのエリック・ヒル少将Maj. Gen. Eric Hillや第353特殊作戦部隊指揮官に説明を行い、「日米の鉄壁のパートナーシップをさらに強化する」ものと評され、水陸両用機型C-130ハーキュリーズに注目が集まる中、世界でも数少ない水陸両用機に触れることができた。

 スライフ中将が新規設計の水陸両用機の実現に消極的であるのとは対照的に、中国はすでに水陸両用機を開発している。

 クンロンと呼ばれるAG600飛行艇は、2017年に初飛行した。およそ737サイズの機体は、広東省の珠海空港から短期間飛行した。今年初めに更新版が処女飛行を行ったとOverDefense.comは報じている。

 AG600は、中国本土から数百マイル離れた中国の治外法権をサポートする能力のため設計されている。同機は、南シナ海で物議をかもしながらも、増え続けている人工島の支援に使用される予定だ。

 

 

中国の2021年から2025年までの最新5カ年計画では、AG600を「重要プログラム」と位置づけている。救助機が緊急に必要であり、特に南シナ海の遠大な拠点に対応できる装備が戦略的に必要だからだ。しかし、いつものように、このような能力を持つことの軍事的意味合いが中国の説明から漏れている。

 米軍が分散作戦に重点を置くようになれば、水陸両用型C-130はより優先されよう。しかし、それと関係なく、計画通りに進めば、1年以内にC-130フロートプレーンをついに目にすることができるはずだ。■

 

C-130 Seaplane Should Fly In 2023 Says Air Force Special Ops Commander

BYHOWARD ALTMAN| PUBLISHED SEP 21, 2022

THE WAR ZONE

Contact the author: howard@thewarzone.com


2022年5月20日金曜日

アジア太平洋戦域の貨物輸送にDARPAがハイブリッド輸送機コンセプトを発表---リバティ・リフター構想からどんな機体が生まれるのか

 ekranoplan Liberty Lifter

 

アジア太平洋地域の沿岸域での作戦に最適化した新型ハイブリッド輸送機コンセプトがDARPAから発表された。

 

国防総省がめざす水上輸送機構想は、ボートと飛行機の中間に位置する「エクラノプラン」、地面効果翼(WIG)の原理を応用する。地上効果を利用して水面を高速で滑走するエクラノプランは、これまで旧ソ連を中心に限られた地域で軍事利用されただけだったが、米軍で採用されれば、革新的な一歩となる。

 

 

 国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)は、エクラノプランのコンセプトを応用した長距離・低コストのXプレーンをめざすリバティ・リフター・プロジェクトを立ち上げた。DARPAは、同機で海上での戦略的・戦術的揚力を実証することを期待し、「作戦用のロジスティクス能力の飛躍を実証する」としている。

 メディアリリースでDARPAはこう説明している。「想定の機体は、大型貨物の高速で柔軟な戦略的輸送と、水面離着陸能力を兼ね備える。機体構造では、水面近くでの高度な制御飛行と、中高度飛行の両方が可能となる。さらに、同機は低コスト設計と製造の理念に基づき建造される」。

 現在、プログラムは初期段階にあり、DARPAの戦術技術室のプログラムマネージャー、アレクサンダー・ワランAlexander Walanによれば、「水上飛行機の航続距離、ペイロード、その他のパラメータ」を再定義するという。

 しかし、ワランは、プログラムの目標について、「長期にわたる海上作戦において、戦闘部隊に新しい能力を提供するXプレーンの実証機になる」と自信たっぷりに語る。

 

リバティリフターのコンセプト図のひとつ DARPA

 

 コンセプトアートと合わせ公開したビデオで、このXプレーンの姿がわかるが、機体はコンセプト図にある双胴形式の貨物機より相当小さいものになる。

 このデザインは、直線翼を、コックピットをつけた2つの箱型胴体と結合させ、小さなカナード前翼を備えている。動力装置は、主翼に沿って取り付けた10個のプロペラユニットとして描かれているが、各ユニットが共通の動力装置を使用しているかは不明。さらに、別のコンセプト図では、プロペラはプッシャー配置になっており、さらに別のコンセプトでは前方に向いている。胴体には、わずかに傾斜した尾翼があり、その上に水平安定板が装着されている。

 

DARPAが公開したビデオでリバティリフターが装甲車両を海岸に発進させ強襲攻撃を加える DARPA

 

 

 映像でわかる重要な点は、上方に開く機首扉から海岸に車両を走行させる荷揚げプロセスだ。

 リバティリフターが水面を滑走するだけでなく、高度1万フィートまでの「中高度」でも飛行可能であることは、同機が、エクラノプランの利点と従来型の固定翼機の優れた性能特性および柔軟性を組み合わせたハイブリッド機であることを示している。

 水上を滑走することで、エクランオープンは貨物を迅速かつ効率的に移動させる。ただし、低空飛行で機動性に乏しいため、水面上の各種物体に衝突し、ダメージを受ける危険がある。DARPAによると、エクラノプランの定義は、水上(または陸上)の飛行距離が翼幅以下としている。

 リバティリフターのコンセプトは、エクラノプランのように、滑走路に依存せず、必要に応じ水上を低空飛行することだ。

 また、通常のエクラノプランの場合、波が高いと運航に支障をきたす。離陸が穏やかな海域に限られるのは、従来型の飛行艇にも共通する欠点だ。

 DARPAによれば、リバティリフタープログラムで取り組む主な課題の1つは、荒れた海域での運用方法。「低速で高揚力を生み出し、離着陸時の波の衝撃負荷を軽減し、波の力を吸収する革新的な設計ソリューション」を実現することだ。

 「高度なセンサーと制御機能」が、大きな波を回避し、離着陸手順の間に空力/流体力学の相互作用を処理するため開発される。

 こうした各種技術の融合は、DARPAがリバティリフターを輸送機だけでなく貨物船にも拡張する構想で考えているためだろう。しかし、従来型の輸送機と異なり、リバティリフターは水上から離着水が可能である。また、貨物船と対照的に、リバティリフターは、エクラノプランの機能で、より速く、より高い生存率で積載物を輸送できる。

 DARPAが指摘するように、「現在の海上輸送は大量のペイロードを輸送する上では非常に効率的だが、脅威に対して脆弱で、港湾施設を必要とし、輸送時間が長くなる」。米空軍の輸送機は、貨物を迅速に輸送できるものの、滑走路の制約を受け、また非常に脆弱という欠点がある。また、米国防総省が重視する海上作戦の支援もできない。

 リバティリフターは滑走路に依存しないだけでなく、陸上での整備を大幅に減らし、「数週間、海上で連続運用できる」想定だ。

 この考え方は、明らかにアジア太平洋地域における中国との将来の紛争の可能性に基づくものだ。 中国との紛争では、海上輸送が主体となり、貨物や人員の移動は長距離に及び、通常の飛行施設は中国の長距離攻撃により緒戦から脅かされる。

 こうした懸念のため、米軍全体が想定する戦い方が大きく変化し、特にアジア太平洋の海上における航空輸送は、この新しい考え方の応用になる。

 ここ数カ月、米特殊作戦司令部(SOCOM)は、特殊作戦部隊の支援用に沿岸部で運用する水陸両用C-130ハーキュリーズの変種、MC-130J Amphibious Capability(MAC)を発表した。同機は、リバティリフターと同じ課題に答える想定だが、DARPAは幅広い要求を満たすため、より根本的なアプローチを考えているようだ。

 

MC-130J MACの構想. U.S. Special Operations Command

 

 

 米空軍は日本の新明和US-2水陸両用機の導入に公式な関心を示していないものの、米空軍がアジア太平洋でのコープ・ノース演習で、同機とともに訓練を行ったことも注目される。US-2は、現在も供用中の数少ない水陸両用機であり、沿岸部での特殊作戦任務にも適しているようだ。

 

新明和US-2がコープノース22演習でティニアン島沖合に展開した。2022年2月 U.S. Air Force/Senior Airman Joseph P. LeVeille

 

 

 リバティリフター・プロジェクトから量産機が誕生するとしたら、DARPAは「精巧で軽量なコンセプトよりも、低コストかつ製造が容易な設計を優先する」としている。手頃な材料を使えば、「大量に」購入できるはずだ。

 リバティリフターから派生した航空機がコープ・ノース演習に参加するまでは数年先になりそうだ。

 しかし、DARPAが海上空輸の概念全体の見直しに入ったのは、アジア太平洋地域で互角の戦力を有する敵との紛争を国防総省が真剣に受け止めているためだ。■

 

 

Cargo Hauling Ekranoplan X-Plane Being Developed By DARPA | The Drive

BY

THOMAS NEWDICK

MAY 19, 2022 2:27 PM

THE WAR ZONE


2021年4月18日日曜日

南シナ海での運用をにらんで水上機飛行艇のリバイバルがやってくる(?) 米海軍が中国新型大型飛行艇AG600を意識。しかし、技術は日本が握っている。

 Coast Guard HU-16E amphibious aircraft

沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロス水陸両用機がマサチューセッツ・オーティス空軍基地に配備されていた US Navy


年の3月で米軍から水上機が姿を消し38年になった。沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロスが最後の水上機だった。


第二次大戦で水上機は海軍の勝利に大きな役割を演じた。冷戦時初期にも投入構想があったが、優位性は消えていた。ところが中国が大型水上機を開発していることで水上機の有用性に注目が改めて集まっている。


2020年7月に中国はAG600水上機クンロンの海上運用テスト開始を発表した。


AG600は世界最大の水上機で山東省の空港を離陸し、青島沖合に着水し、4分間水上移動した後、離水し無事帰還した。


米軍では水上機を過去の遺物とみなしていたが、同機の登場で一気に関心が集まった。


かつては必須装備だった

Consolidated PBY-5A Catalina flying boat

コンソリデーテッドPBY-5Aカタリナ US Navy



水上機はかつては米海軍で必須装備だった。空母が支配の座に就くより前に、水上機母艦が長距離航空作戦に必要な艦種とされた。水上機母艦は大型クレーンで水上機を吊り上げ、機体の補給整備を行った。米海軍初の空母USSラングレーは元は給炭艦で水上機母艦に改装されてから1920年代末に空母になった。


その後、水上機は艦艇が発進させるようになり、長距離型は対潜戦、捜索救難、海上制圧や偵察任務のような重要な役目に投入された。本艦隊から数百マイル先で敵部隊を探知できる能力が特に重宝された。


その中で最も米国で記憶に残る機体がPBYカタリナ飛行艇だ。コンソリデーテッド航空機が製造し、海軍が1936年に制式採用した同機はミッドウェイで日本艦隊の位置をつきとめ、海上を漂う搭乗員や水平数千名を救助したほか、枢軸国潜水艦20隻以上を沈めた。


英国に供与されたカタリナに米人パイロットが登場し、ドイツ戦艦ビスマルクを発見したのは1941年5月で、米国の参戦7カ月前のことだった。


冷戦時の運用構想

Navy seaplane tender Salisbury Sound Martin P5M-1 Marlin

水上機補給艦USSサリズベリーサウンドがマーティンP5M-1をクレーンで釣り上げている。1957年サンディエゴ。US Navy


水上機の役割は第二次大戦終結を契機に弱体化した。枢軸側潜水艦が姿を消し脅威は減り、太平洋で獲得した各地の基地から米海軍は長距離地上運用機材を飛ばした。しかし、海軍は水上機を直ちに放棄しなかった。冷戦初期には水上機打撃部隊の創設を狙っていた。


コンヴェアR3Yトレイドウィンドは輸送飛行艇で1956年に採用が決まり、航続距離は2千マイルを超え、100名あるいは貨物24トンを運べた。空中給油型ではグラマンF9Fクーガー4機へ同時給油できた。だが、同機にはエンジンで問題があり、1958年には11機全機が退役している。


Convair R3Y-2 Tradewind refueling Grumman F9F-8 Cougar

コンヴェアR3Y-2トレイドウィンドがグラマンF9F-8クーガー四機に同時に給油している。1956年9月. US Navy


同じコンヴェアによるF2Yシーダートは野心的なねらいのデルタ翼水上戦闘機だった。超音速飛行可能で20mm機関砲4門あるいはロケット弾を搭載するシーダートは1953年に初飛行したが、死亡事故の発生で1957年に開発中止となった。


より鮮明な印象を与えたのがマーティンP6Mシーマスターだ。核兵器運用を当初構想された同機は大型ジェット飛行艇で亜音速飛行で1,000マイルを超える航続距離を有していた。


だがポラリス潜水艦発射式弾道ミサイルの開発によりシーマスターには機雷敷設が新たな任務となった。


結局、弾道ミサイル潜水艦と大型空母の登場で水上機打撃部隊構想は意味を失い、シーマスターは1959年に開発中止となった。


AG600の登場

AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


米国で水上機はすべて姿を消したが、一方で今でも運用している国がある。


ロシアはターボプロップのベリエフBe-12にかわり、ジェット推進式のBe-200ESの導入を進めている。


日本には長期にわたる輝かしい水上機運用の伝統があり、最高峰の性能を有する新明和US-2を供用しており、AG600の登場までは世界最大の飛行艇だった。


AG600は中国航空工業(AVIC)が製造している。中国人民解放軍空軍のステルス機等のメーカーだ。


AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


AG600開発は2009年に始まり、機体製造は2014年スタートした。存在が公表されたのは2016年で、初飛行は2017年だった。機体開発は2022年までに終了し軍に引き渡すとしている。


同機は全長120フィート翼幅127フィートで、50名を乗せ、最高速度310マイルで航続距離は2,800マイルである。


AG600は多用途機となり、捜索救難、輸送、森林消火に投入を想定する。AG600は南シナ海で特に有益な機体となり、中国が造成した各地の人工島をつなぐ機能が期待される。


水上機のリバイバルが来る?

Japan amphibious aircraft seaplane Iwakuni

海上自衛隊の水陸両用機US-1Aが岩国基地へ着水の準備に入った。2013年1月。US Marine Corps/Cpl. Vanessa Jimenez


中国がAG600開発を進める中、米国もインド太平洋を重視し、多数の島しょがあることから水上機のメリットに再度注目している。


水上機なら陸上基地や滑走路が破壊されても何ら心配ないからだ。


飛行艇は大量の兵員さらに一定の軽車両なら直接沿岸に送ることができる。これは島しょ部への展開や増派の際に効果を発揮する。


空中給油機に転用すれば、水上機により空母艦載機の運用範囲がひろがり、空母搭載の給油機を廃し、その分多くの攻撃機材を搭載できる。水上機自体も艦艇や潜水艦から給油を受ければ、運用範囲を拡大できる。


ただし、よい話ばかりではない。水上機はどうしても陸上機や艦載機の飛行性能には追い付かない。また水上機の供用期間は陸上機より短くなる。さらに水上機の性能をフルに活用するには水上機母艦が必要となるが、現時点で海軍にはこの用途の艦艇は皆無だ。


インド太平洋での作戦運用という課題に関心が集まる中、中国が改めて飛行艇を重視する姿勢を示していることで、水上機運用の戦術面での意義の検討が重要になってきたといえよう。■


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