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2022年8月21日日曜日

米空軍次期空中給油機KC-Zは開発を前倒しへ。つなぎのKC-Yは選定見送りとなる公算も。

 



KC-135ストラトタンカーの後継機がKC-Zだ (U.S. Air National Guard/Tech. Sgt. Amber Monio)




米空軍は次世代タンカーKC-Zをシステム・ファミリーと想定し、タンカー機だけでなく「生存性、接続性、あるいは効率性など、他技術も取り込みたい」と、プログラム担当者のポール・ワウPaul Waughは述べた


空軍は、未来的な次世代タンカー開発を予定より早く開始する可能性があると、プログラム担当者が述べている。

 空軍の機動性・訓練機プログラム担当官ポール・ワウは先週、記者団に対し、飛躍的な進歩を遂げるKC-Zタンカーの開発は2030年代に行われる予定だったが、KC-Yタンカーの競争の可能性が低くなったため、KC-Z開発の前倒しを計画している、と述べた。

 ワウによれば、空軍はKC-Z開発を30年代まで待つ代わりに、来年から「代替案事前分析」作業を開始し、2024年に正式な代替案分析(AOA)を開始する。

 AOAは、KC-Zタンカー機だけでなく、「生存性、接続性、効率性など、他の技術も含めたKC-Zシステム・ファミリーの計画策定を支援する」とワウは述べた。

 一方、ボーイングKC-46タンカーを179機購入後に導入する予定のKC-Y タンカー(「ブリッジタンカー」)についても、プログラムオフィスは今秋に最終要件内容を受け取る予定になっています。この1年間、プログラム・オフィスはボーイング・エアバス両社に意見を求めてきた。

 スケジュールが順調に進めば、空軍は来春にKC-Yの取得戦略を決定できるとワウは言う。この戦略は、航空宇宙産業界に立ちはだかる疑問の答えとなる。空軍は、KC-46とLMXT(ロッキード・マーチン社と共同開発したエアバスA330多目的タンカー輸送機のアメリカ版)間の競争を模索するのか、それとも単にKC-46を購入し続けるのか?

 フランク・ケンドール空軍長官は、最終決定はしていないものの、要求事項に関する初期作業で次のタンカーの必要性が証明されなかったため、KC-Y競争の見通しは小さくなった繰り返し述べている。

 「競争は大歓迎だ。コスト削減で最良の手段です。しかし、実際に需要がなければならない」とケンドール長官は4月に連邦議会議員に語った。

 「そして、できる限り透明で正直でありたい。1年前と比べれば、競合を行うかは確実ではありません」と述べた。「そして、この件で誤解してもらいたくない」。■


With KC-Y tanker competition in doubt, next-gen KC-Z study to start ahead of schedule in 2024 - Breaking Defense


By   VALERIE INSINNA

on August 19, 2022 at 10:32 AM


2022年7月24日日曜日

米国防総省がBWBに再注目。将来のタンカー、輸送機として主流になる予感。

 民間航空で革新的な技術がなかなか登場していないのは現状のモデルで利益をどこまで最大化できるかに必死になっているためです。そのため、今でも機体はチューブに主翼をつけるという点では全然進歩がありません。やはり革新的な技術は軍用途にしか期待できないのでしょうか。しかし、今回の米空軍は軍民両用を最初からうたっており、近い将来のエアポートに現れる機体形状が大幅に変わる可能性もゼロではありません。(ターミナル1.2共通記事)



Boeing

 

国防総省は、将来のタンカーや輸送機向けに、BWBへ再び注目している。

 

 

国防総省は、2026年までのフルサイズ実証機を製造・飛行を視野に、混合翼機(Blended Wing BodyBWB)の設計案を求めている。同省は、設計コンセプトから始め、高効率性の実現に焦点を当てる。同プロジェクトは、将来の空中給油機や輸送機に影響を与える可能性があり、米空軍は過去にステルスタイプ含むBWB設計を検討していた。

 今回の情報提供要請(RFI)は、米軍が新しい民生技術を迅速に利用できるよう設立された国防革新ユニット Defense Innovation Unitのウェブサイトに掲載されている。RFIは、民間企業にデジタル設計概念(CoD)の提供を求めている。「ボーイング767やエアバスA330含む民間・軍用機より最低30%空気力学的効率が高い先進的な航空機構成」の実物大プロトタイプにつながるものとある。

 

 

昨年、エネルギー・施設・環境担当の空軍次官補(SAF/IE)が発表した、2種類の混合翼機コンセプトを示すインフォグラフィック。新RFIで実寸大実証機として同登場する可能性がある。U.S. Air Force

 

 

上記旅客機2機種は、KC-46AペガサスとA330多用途タンカー輸送機(MRTT)の原型で、とくに前者は空軍のKC-Xタンカー要件で後者に勝ったことが注目すべき点だ。しかし、KC-46は問題や遅延が相次ぎ、運用に限界があるため、A330 MRTTが後続のタンカー購入の候補に残っている。

 このことは、DIUが研究対象とするBWB機が、KC-46よりもはるかに高度な航空機、おそらくステルス特性を持つ航空機が想定の将来型KC-Zタンカーとして検討される可能性を示唆しているのか。

 

 

ロッキード・マーチン社によるハイブリッド翼KC-Zコンセプトの模型。Lockheed Martin. Joseph Trevithick

 

KC-Yは、空軍が計画するKC-46の購入終了とKC-Zの間の「ギャップを埋める」タンカーとなる。KC-46を追加購入するか、ロッキード・マーチンがLMXTとして売り込み中のA330 MRTTへ変更することがある。

 今年4月、空軍参謀長チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア大将は、KC-46がKC-Yの選択肢になる可能性を示唆した。フランク・ケンドール空軍長官が、KC-YとKC-Xの両方について「競争の可能性は下がった」と発言したわずか1カ月後だった。

 

 

 

2021年2月22日、メリーランド州アンドリュース統合基地での空中給油運用調査で、KC-46Aペガサスとの接続準備をする米空軍参謀長チャールズ・Q・ブラウン・Jr.大将。U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Chris Drzazgowski

 

Air Force Magazine取材に対し、空軍研究本部(AFRL)の広報担当者は、新しいDIU RFIは「KC-Yプログラムと無関係」と確認したが、KC-Zと関係があるかについては明言を避けた。

 RFIでは、BWBの空力構成と「2030年のエンジン技術の予測」を組み合わせ、期待通りの効率化が達成されると想定し、「現行技術から少なくとも60%のミッション燃料消費の削減」を実現するとしている。この点で、同プロジェクトは、高レベルの効率を実現する(そして短距離離陸能力を提供する)エキゾチックな推進システムの可能性を探求してきた、これまでの取り組みを思い起こさせるものがある。ガスタービンを使い電動ファンのアレイに電力供給するAFRLの分散型推進コンセプトがあった。

 

 

AFRLの分散型推進コンセプトの模型 Courtesy Guy Norris

 

こうした利点により、現在稼働中の貨物機やタンカーと比較し、航続距離、滞空時間、積み下ろし能力を大幅に向上させるはずだ。特にタンカーについては、アジア太平洋地域シナリオを想定し、遠大な距離で燃料補給する能力が重要な指標となり、高効率の BWB設計が優位性を発揮するだろう。

 

 

2021年2月1日、グアムのアンダーセン空軍基地に着陸するアイオワ州空軍第185空中給油隊所属の米空軍KC-135ストラトタンカー。KC-135はアジア太平洋地域で活動する航空機への空中給油支援に重要な役割を担っている。U.S. Air Force photo by Airman Kaitlyn Preston

 

効率改善は、化石燃料への依存度を減らす国防総省の大きな目標に合致する。「国防総省は石油ベースエナジーの最大の連邦政府消費者で、全体消費の77パーセントを占めている」とRFIは述べている。「大半は、世界規模の作戦を支援する航空機の燃料に起因する」。

 国防総省の燃料依存と、米軍を脆弱にする可能性について懸念が高まっており、将来の作戦と有事はアジア太平洋地域に集中する可能性が高いとの予想にも重なる。同戦域は距離が長く、長距離の出撃の要求が高まる一方、燃料ロジスティックスの要求とサプライチェーンでリスクが増大する。高効率の輸送機やタンカーは、これに対処する手段となる。

 一方、効率的な輸送機技術の実証プログラムも進行中です。昨年8月に発表されたNASA契約では、ボーイング、レイセオン・テクノロジーズジェネラル・エレクトリックブレンド・ウィング・エアクラフトROHRの各社が「Future Subsonic Demonstrator Risk Reduction Activities」プログラムを支援している。これは、持続可能性、環境、騒音低減、効率、コストなど厳しい目標を満たす亜音速輸送機(BWBコンセプトも含む)の技術を特定するのを目的とするものだ。

 全体として、BWB設計の効率と持続可能性での高い優先順位は、今回のRFIが、通常この種の募集で出てくるAFRLや空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)ではなく、空軍運用エナジー室Air Force Operational Energy Officeが主催している事実にも反映されている。

 

 

 

風洞でのX-48混合翼機2%モデルの空力試験。U.S. Air Force

 

 

空力効率を大幅に向上させるだけでなく、「システム統合と将来のアップグレードを可能にする」モジュラー・オープン・システム・アプローチ(MOSA)を取り入れた設計が求められている。タンカー任務に適応することを指しているのかもしれないが、将来的に他のミッションも引き受ける計画の可能性もある。

 設計では、「各種ミッションに特化したシステムの組み込み」を考慮する必要があり、電子戦コンポーネントとJADC2(Joint All Domain Command & Control)アーキテクチャの想定システムという2例が挙げられている。KC-135を通信ハブとする現在の計画や、ブラウン大将の過去発言に沿ったもので、将来のタンカーが「さらなる自己防衛」能力と通信ノードの役割を果たす装置となるよう望んでいると同大将は述べている。

 

 

 

2021年8月7日、ユタ州空軍がコリンズ・エアロスペースと共同で、ユタ州ソルトレイクシティのローランド・R・ライト空軍州兵基地において、JADC2(統合全領域指揮統制)およびABMS(先進戦闘管理)を支援する先進通信、ミッションコンピューティング、センサー技術のデモンストレーションをKC-135で成功させた。 U.S. Air National Guard photo by Tech. Sergeant Danny Whitlock

 

新RFIはタンカーの役割に言及していないが、AFLCMCが先月開始した先進空中給油システム(AAR FoS)プログラムと類似点が多数ある。

 AAR FoSのRFIでは、無人航空機への給油を最適化し、電子戦プラットフォームとしても機能する未来型タンカーを想定している。

 Defense Innovation Unitの公募がエキゾチックなBWBデザインを核とするのに対し、AAR FoSでは進化的なアプローチとし、まず現行タンカー群(KC-46A、KC-135R/T)に新機能を追加し、その後「新型タンカーの全体要件を策定する 」。

 各 RFI は異なるが、重複もあり、最終的には各要素を組み合わせた新世代タンカーや輸送機が生まれると考えられている。

 

 

 

ロッキード・マーティンのBWB軍用輸送機コンセプトの特徴を示すインフォグラフィック。NASA

 

 RFIでは、現在の設計コンセプトに沿い、企業が「デジタルエンジニアリングツールとプロセス」を使用し、設計、開発、テスト、検証、妥当性確認、および後続のプロトタイプ構築、実飛行、および生産の可能性があるシステムの認証を行うと定めている。フルスケール実証機は、2026年までに飛行する予想だ。

 意外なことに、RFIはステルス性や低観測性に言及していない。しかし、全翼機形状のBWBは、従来機と比較して、低観測性の設計コンセプトに近くなる。同時に、この種の設計は、貨物や燃料の運搬の内部空間で利点を提供する。

 

 

初期のブレンデッドウイングボディデザインがNASAのN3-Xコンセプトだった。翼を機体にシームレスに溶け込ませ、空力的で、燃料消費、騒音、排出ガスの削減をめざした。NASA

 

また、空軍のKC-Zでは、低観測性を縮小するか、あるいは完全に削除している可能性もある。ブラウン大将は今年初め、次世代航空優勢(NGAD)戦闘航空システムには「必要な場所に行ける航続距離がある」と述べ、危険な場所に同行するステルス「護衛」タンカーの必要性は減ると指摘していた。

 また、空軍が目的別に設計された無人機での能動的防衛を真剣に検討し始めたため、将来のタンカー(または輸送機)にステルス性を組み込む優先度が低くなった可能性もある。

 タンカーなど、脆弱な高価値資産航空機(HVAA)の近接護衛を行うミサイル搭載無人機に関する研究や提案はいくつかあり、AAR FoS プログラムでは特に「オフボード自律協調プラットフォーム」を想定している。こうした無人機は、戦闘機含む各種航空機を護衛し、電子攻撃や敵防空網の抑制、情報・監視・偵察(ISR)などの任務もこなすことが期待される。

 しかし、BWBは低視認性であり、貨物機やタンカーとして以外に特殊作戦部隊の輸送も検討されたことがある。

 また、今回のRFIには実物大試作機製作の可能性が含まれているが、ボーイングX-48プログラムでサブスケール実証機をテストしており、2007年に初飛行させていた。

 将来のタンカーの基礎となるBWB設計の実用性について、The War Zoneは、退役空軍軍人で、C-135ファミリーについて幅広く執筆しているロバート S ホプキンス3世 Robert S Hopkins IIIに話を聞いた。

 ホプキンスは、BWBタンカー開発には重大な問題があると指摘している。まず、ブームとレシーバーの比率だ。これはタンカー全体のサイズに依存する。大型機用の中央ブームと、戦闘機サイズのレシーバー用の機外ブームの合計3台のブームを、長い翼幅に沿わせる。「AIを使えば簡単だろう」((ホプキンス)。

 そして、タンカーの機数は永遠の課題だ。空軍がタンカーと輸送機の「スプリット・デューティー」を行うBWBを100機購入したとしても、現在のタンカー不足を十分に解消できない。「タンカー需要は現在、460本のブーム(MPRSポッドは別)で満たされているため、タンカー購入総計は同じかそれ以上にする必要がある」とホプキンスは指摘する。

 空軍の将来のタンカー要件はこれまでも詳しく議論されており、KC-YとZの各要件が想定されたが、空軍が大型貨物輸送機、C-5M ギャラクシーとC-17A グローブマスターIIIの各後継機をどこまで検討し始めているかは明らかではない。

 

 

2021年9月14日、横田基地のフライトラインで、カリフォーニア州トラビス空軍基地第60航空機動飛行隊所属のC-5Mスーパーギャラクシー。Yasuo Osakabe

 

冷戦時代のC-5は、空軍最大の機体で、非常に大きく重い貨物を輸送する比類ない能力を実現している。C-5Mは、エンジン改良を含む大幅性能改修で、2040年代まで運用される。2040年代以降は、ギャラクシー代替機として、容量が大きく効率的なBWBタイプが考えられる。

 2015年に生産終了し、最後の1機が輸出された主力輸送機C-17については、空軍は耐用年数を延長するか決定していない。同機は、機械化部隊を含む戦闘部隊を戦闘地域まで長距離迅速移動させる上で第一選択肢で、平和維持活動や人道支援ミッションの輸送にも優れる。

 

 

2013年9月12日、カリフォーニア州ロングビーチで行われた米空軍向けC-17納入20周年を祝う式典で、フライトラインに置かれる米空軍最後のC-17AグローブマスターIII(P-223)。U.S. Air Force photo/ Senior Airman Dennis Sloan

 

空軍がC-17の大規模近代化を断念した場合、活動する空域が今後ますます厳しくなることを考慮し、ステルス性の高いBWBエアリフターが後継として検討されるかもしれない。

 RFIはBWBで軍事的用途のほかに、二重用途の商業化計画にも言及しており、潜在的な商業的用途が考慮される。長距離飛行、効率、大量貨物を輸送する能力を併せ持つ航空機は、貨物や旅客の民間輸送に利用できそうだ。以前から、大手企業はBWBと全翼機の潜在的な利点に注目している。

 

 

エアバスは、将来の旅客機開発を目的として、2020年にBWBスケールモデルの技術実証機「MAVERIC(Model Aircraft for Validation and Experimentation of Robust Innovative Controls)」を公開した。Airbus

 

BWB航空機が軍用および民生双方に適用できる利点を多数提供するのは明らかだ。RFIへの回答は8月2日期限となっており、空軍が将来の混合翼航空機に期待する任務や、近代化計画にどこまで適合するかが順次明らかになる期待がある。■

 

 

Air Force Wants Blended Wing-Body Aircraft Demonstrator Flying By 2026

BYTHOMAS NEWDICKJUL 22, 2022 

6:58 PM

THE WAR ZONE

 




2021年2月7日日曜日

非ステルス空中給油機のジレンマはステルス、非ステルス機を両用する米空軍の悩み。だが根本的な解決方法が実はあるのではないか。

 空軍が将来の空中給油機の残存性を高める構想を練っている。

米国は巨額の費用をステルス戦闘機、ステルス爆撃機、ステルス巡航ミサイル、さらにステルススパイ機に投入してきた。給油機もステルスにしたらやりすぎだろうか。

 

ステルス給油機構想は決して突飛なものではない。21世紀航空戦の主役といわれるF-35やF-22のステルス機の航続距離が短いことがその理由だ。

 

F-35の600から800マイルの航続距離はその他戦闘機と比べさほど劣るものではない。だが、F-35がステルス性を最大限にする場合は主翼下に追加タンクを搭載できない。

 

 

もう一つの問題は空基地あるいは航空母艦が敵弾道ミサイルの射程内に入っていることだ。第二次大戦からアフガニスタンまでの戦績は高性能戦闘機といえども地上あるいは艦上では無力な存在だと実証すている。とくに大国を相手の戦闘ではミサイルの雨が基地に降るはずで、攻撃後に投入可能な機体はわずかしかないだろう。

 

幸い米軍機材には空中給油が利用できる。だが民間旅客機を原型とした給油機が敵戦闘機に撃墜されるリスクは超長距離空対空ミサイルがロシアR-37のように射程が250マイルにもなり高まるばかりだ。中国も給油機、レーダー搭載機材等の支援機材の撃破を狙ってくると予想される。給油機を倒せば、太平洋の戦いは勝ったも同様だ。

 

ステルス戦闘機を敵領空に侵入させるとジレンマが生まれる。今日の地対空ミサイルには機動性の劣る機材を250マイル先から狙えるS-400のような装備がある。つまり、通常型給油機は敵防空体制のはるか後方にとどまる必要がある。しかし、その位置でもレーダー探知され敵戦闘機の標的になる。

 

レーダー断面積の少ない給油機が問題解決になる。ただし、ステルス戦闘機並みのレーダー断面積は不要だ。

 

米空軍は新型KC-46Aペガサス給油機を179機導入しようとしており、400機あるKC-135、KC-10の両機種を順次退役させるというのが、航空機動軍団の当初案で、その後に別の通常型給油機をKC-Yとして2024年頃から導入し、最終的にステルス給油機KC-Zを調達するとしていた。

 

ところが2016年にKC-46改修型の調達をふやすため、KC-Yは断念し、KC-Zを早期実現したいと空軍は方針を変えた。早期とは2035年以降の想定だ。

 

そんな中で空軍研究本部が2018年に発表したのが奇抜な形状の「発展型空中給油機」構想だった。(下写真)

 

他方、ロッキードも独自にスターウォーズに登場しそうな形状のステルス給油機構想を発表しを示した。(下写真)

 

 

設計提案は完全な全翼機ではなく、ブレンデッド・ウィング・ボディ形状だった。ハイブリッド・ウィング・ボディとも呼ばれる。

 

全翼機の主翼形状は揚力の確保に極めて有効で、機体にレーダー波を反射する鋭角がないためレーダー断面積を低くできる。だが、給油機は貨物機としても現場急行を求められることが多いので、機体には貨物収納スペースが必要となる。これがKC-ZにC=貨物がつく理由だ。そのため純然たる全翼機設計は採用されず、ハイブリッド形状になった。

 

ステルス貨物機の利点は特殊部隊の敵地侵入ができることだ。特殊部隊部門は長年に渡りこの実現を求め、接近阻止の傘の中にある前線拠点への物資補給を敵の長距離対空ミサイルに撃破されずにできないものか考えてきた。ただし、ステルス輸送機は全翼機のステルス性能よりステルス性能が劣る。

 

ステルス給油機の課題が購入可能な機体価格の実現だ。ステルス戦闘機、ステルス爆撃機はレーダー吸収剤(RAM)を塗布し、運航コストが高くなり、整備もステルス戦闘機が小型だから負担に耐えられる。給油機ははるかに大きく、飛行時間も年間数千時間になるので、コスト効果に優れたRAMがないとB-2爆撃機の時間あたり169千ドルという運行コストの再来になる。

 

空軍が考える将来の給油機は残存性を高めるため、アクティブ防御装備を搭載し、敵ミサイルの撃破を想定する。これはレーザーの利用を意味する。別構想では次世代レーダージャマー機材で認知知能機能を運用し敵レーダーを使用不能にするとある。また自律運行能力を高め搭乗員を減らしながら給油のスピードを高める構想もある。

 

航空機動軍団には海軍のMQ-25が実現した技術をKC-Zに応用する別の機体構想もあり、小型ステルス自律飛行機材の運用も想定する。ステルス無人給油機が大型通常型給油機の「母機」から給油を受け、制空権が確立できない空域に飛び、味方ステルス戦闘機に給油する構想もある。ただし、この給油の連鎖も非ステルス母機が敵の標的になれば破綻する。そこで、「各種システムのシステム」でステルス、非ステルス双方の給油機各機を混合運用する構想が出ている。

 

だがもっと簡単で安価な方法もある。短距離しか飛べない戦闘機のかわりに長距離B-21ステルス爆撃機を第6世代侵攻制空戦闘機として運用し、スダンドオフミサイルや長距離無人ステルスUCAVの活用も有益だろう。■

 

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Unstealthy Tankers are Harming the F-35 Stealth Fighter

February 3, 2021  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-22F-35MilitaryTechnologyStealth

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article first appeared last year and is being republished due to reader interest.

Image: Wikipedia.


2020年6月7日日曜日

給油機の脆弱性を解決するステルス新型給油機構想で有効な策はどれか



国はステルス戦闘機、ステルス爆撃機、ステルスミサイル、ステルススパイ無人機に巨額予算を投じ整備してきた。ステルス給油機となるとやりすぎだろうか。

ステルス給油機構想は奇想天外と呼べない。F-35、F-22のステルス戦闘機の航続距離が短いためだ。

F-35の戦闘行動半径600から800マイルは通常型戦闘機のスーパーホーネットやF-16に比べ悪くない。だが非ステルス機は燃料増槽を付け飛ぶが、F-35にステルス性能を損なう外部タンクは搭載できない。

ステルス、非ステルス戦闘機の航続距離が短く問題となるのは空母や航空基地が敵の弾道/巡航ミサイルの射程内に入る場合だ。高性能戦闘機が脆弱性を露呈するのは地上(あるいは艦上)であり、超大国間戦闘となれば、ミサイルの雨が前方基地に降るのは必至で、地上で機体が損傷を受けるのは簡単に想像できよう。

幸い米軍戦闘機は空中給油が使える。だが給油機は遠く離れた地点にとどまる必要があるし、超長距離空対空ミサイルによる撃墜リスクも増えてきた。ロシアのR-37の有効射程は250マイルだ。ロシア、中国のステルス機が給油機やレーダー機材を標的にするはずだ。給油機を排除すれば、太平洋戦域で戦闘機の有効性を否定できる。

敵防空網の突破を狙うステルス戦闘機でこのジレンマは深刻だ。敵防空圏から数百マイル離れた地点で通常型給油機を待機させても、レーダー探知され敵戦闘機の餌食になる。

そこで給油機でもレーダー断面積を減らせば問題が解決される。とはいえ、ステルス戦闘機並みの低視認性は必要ない。

米空軍は新型KC-46Aペガサス給油機(原型ボーイング767)の179機調達を進め、KC-135、KC-10給油機合計400機は順次退役させる。航空機動軍団の当初案は通常型に近い給油機KC-Yを2024年ごろ、その後ステルス給油機KC-Zを取得するものだった。

だが空軍はKC-Yのかわりに性能向上型KC-46を取得し、KC-Zの調達開始を2035年に前倒しすることとした。

KC-Z提案は数案あり、各案ともに相当奇抜な機体形状を示してる。ロッキードは他社よりステルス性能を重視する姿勢を示していた。同社は高バイパス比ターボファンを主翼上に搭載し、レーダー断面積を減らすねらいも示した。

ただし、提案は完全な全翼機形状ではなく、「ブレンデッドウィンボディ」に近く、「ハイブリッドウィングボディ」形状で、純粋な全翼機形状ではないが、胴体部分を大きく確保することができる。

全翼機だと主翼曲面形状で揚力発生が有利となり、「無限面」特徴でレーダー波を反射する鋭角がないためレーダー断面積が低くなる。ただし、給油機は貨物輸送にも投入されるので、ステルス給油機でも貨物搭載部分を確保する必要があるし、貨物取扱用の扉も必要だ。純粋な全翼機形状ではこの機能が確保できずハイブリッドとなったわけだ。

ステルス輸送機として特殊部隊を敵後方に送り込む役目も期待できる。また敵の長距離対空ミサイル射程内の前方基地へ物資補給にも使える。ただし、貨物輸送にも投入可能なステルス給油機では空中給油専用の全翼機形状なみのステルス性能は期待できない。

ステルス給油機運用を経済的に実現する際でレーダー波吸収剤(RAM)の表面処理が障害となる。戦闘機のRAMは運航経費を大幅に増やし、整備面でも負担だ。給油機の場合は年間飛行時間が長く、経費負担増になるのは必至だ。そのため経済合理性の高いRAMが必要とされる。B-2ステルス爆撃機では毎時169千ドルの経費が発生している。

空軍には将来の給油機で生存性を高める着想があり、アクティブ防御手段として飛来するミサイルを撃破するためレーザー利用も提案されている。次世代レーダー妨害装置では認知知能技術の応用で敵レーダー周波数に合わせ、給油機の所在を判別できなくする。また次世代給油機に自動化を広く採用し、乗員数を減らし給油スピードを高める構想もある。

ただし、航空機動軍団には海軍の艦載無人給油機MQ-25を参考に小型無人かつ自律運航の機体を使う抜本的に新しい構想もある。

ステルス無人給油機は「分散型」給油構想にぴったりで、無人機多数が大型の通常型給油機「母機」から給油を受けてから制空権を未確保の空域に移動してステルス戦闘機向けの給油を行う。ただし、この構想は非ステルス母機が敵に排除されれば破綻する。そのためステルス、非ステルスの給油機多数を多層構造にする提案がある。

もっと単純かつ安価な解決策がでてきた。短距離運用の制約がある戦闘機のかわりに、長距離性能を有するB-21ステルス爆撃機あるいは将来登場する侵攻制空戦闘機を投入し、スタンドオフミサイルの利用を増やす、長距離無人UCAVステルス戦闘機材を投入することである。■

この記事は以下を再構成したものです。

June 6, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: KC-ZStealthStealth TankerTankersU.S. Air ForceF-22F-35