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2020年7月9日木曜日

メタマテリアルで非ステルス機がステルスになる? 中国の言い分はどこまで本当なのか

ウスチャイナ・モーニング・ポスト紙が中国が旧型機をステルスに変える技術実験に取り組んでいると昨年伝えている。記事では「何層にも織り込んだ微小構造を集積回路のようにした『メタマテリアル』を使う。無線波をメタマテリアル表面で反射させ、多重像を作る、あるいはレーダー反射を最小にし、機体の探知を避ける」とあった。

このメタマテリアルは南東大学のミリ波国家中核研究所で開発され、瀋陽(遼寧省)で試験中だ。サウスチャイナ・モーニング・ポストはメタマテリアルを導入した機種を確認できていないが、瀋陽航空機がJ-11、J-15を生産しており、ともにステルス性能がない旧型機だ。

国家中核研究所ではメタマテリアル以外にもレーダー探知回避に有効な技術を模索している。同紙記事では「多重像錯覚装置」をチームが検討したとある。これは「機体の一部をレーダー上で金属ではなくプラスチックとして表示させ、1機を3機に見せる」ねらいがあるという。

非ステルス機をステルスに変える技術が実用化されれば中国空軍力に朗報となる。中国のステルス機J-20は20機たらず、その他機種が合計1,500機ある。記事にあるようにJ-20も中国が言うようなステルス性能はないのかもしれない。2月には「中国は予定より早くステルス高性能機の第一線配備に踏み切ったのは域内の安全保障情勢が悪化しているためもあるが、予定していたW-15エンジンがテスト中に爆発した事故も影響している。中国はこの問題を単独で解決できず、初期生産型のJ-20はWS-10Bエンジンを搭載している。同エンジンは既存のJ-10、J-11戦闘機に採用されたものの改修型。WS-10Bの性能ではJ-20はアフターバーナーでやっと超音速が出せる程度で、その速度域ではステルス性能はない」と記事にある。

メタマテリアルを中国の非ステルス機材の解決策に採用すれば別の問題が出る。ステルス技術の初期段階で関係者が述べたように、ステルスでいちばん重要な要素は「形状と素材」に尽きる。Wired誌が取り上げているが、ステルスを生む要素には「存在を消す化学品、高性能かつ格納式のセンサーや通信装置、特殊設計の探知しにくいエンジン空気取入口、レーダー波を反射しにくい塗料、熱特徴を減らす冷却装置」がある。素材ではメタマテリアルがある程度までならレーダー波吸収素材(RAM)と同等の効果がありそうだが、その他の非ステルス特性の解決策になるのか不明だ。たとえば低性能エンジンを搭載するその他機材でもメタマテリアルで排気熱を隠す効果が生まれるのか。西安電子科技大の応用物理研究所長Han Yipingはその効果に疑いを感じ、信頼性を十分確保しようとすれば他の点で犠牲が生まれるとサウスチャイナ・モーニング・ポスト取材に語っている。

Hanによればメタマテリアルには欠点があるという。まず、現在のメタマテリアルが効果を発揮するのは特定の無線帯域のみだという。ただし、どの帯域かはHanは述べていない。同時にメタマテリアルは大量生産が極度にまで困難だ。

メタマテリアル研究に取り組むのは中国だけではない。フィナンシャル・タイムズには「メタマテリアルがはじめて一般の関心を呼んだのは2006年だった。英国インペリアルカレッジのジョン・ペンドリーが論文2点を発表し、ハリー・ポッター式の透明化装置を特別開発の素材で実現できると主張した」と伝えている。その後、企業多数が民生用途で開発し、衛星アンテナやセンサーの軽量化・小型化をめざした。その他企業も太陽光パネルやレーダーを無人機に一体化させるべく開発中とFT記事が伝えている。

当然ながらこの技術に軍も注目しており、米陸軍では「カメレオンのように背景にあわせ変化する」技術の実現をめざしている。だがどこまで実用化に近づいているのか不明だ。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 8, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaJ-20MilitaryTechnologyWorldStealth
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: Reuters

2019年1月24日木曜日

旧型機もステルス化する技術があると主張する中国に信憑性は?

なんでも大げさな表現が好きな中国のことですからわれわれはいつもあちらの言い分は割引して聞いているわけですが、中国国内でさえ信憑性を疑われるのはいかがのものでしょう。ただしステルスとは別にメタマテリアルにはいろいろな可能性が生まれそうですので注目しましょう。


Forget China's J-20 or J-31 Stealth Fighters: What If Beijing Could Make Older Fighters Stealth? 

J-20やJ-31ステルス戦闘機以外に旧型機のステルス化技術が中国にあるのか

January 23, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaJ-20MilitaryTechnologyWorldStealth
年のことSouth China Morning Post が中国が旧型機材もステルスにできる新技術を実験中との記事を伝えた。同紙は「『メタマテリアル』の多層構造で無線信号が表面反射されレーダー映像が極限まで消えることで飛行中の機体は見えなくなる」としていた。
このメタマテリアルを開発したの南東大学のミリ波研究国家重要実験室で現在は瀋陽でテスト中とある。記事ではテスト機材の種類に触れていないが瀋陽航空機はJ-11、J-15の開発元でともに非ステルス機だ。
記事によれば同研究所ではメタマテリアル以外の研究もしており、「ゴースト錯覚装置」に触れていた。これは「機体一部をレーダー上ではプラスチック同様に見せ一機を三機のように写すもの」だという。
あくまでも理論上の話だが非ステルス機がステルスになるのなら中国空軍力には朗報だ。記事では中国のステルス戦闘機J-20は20機しかなく、通常型機材は1,500機とある。だがそのJ-20も実はステルス性能は宣伝どおりではない可能性がある。昨年2月に「中国は初のステルス戦闘機配備を予定を前倒しでつなぎのエンジンを搭載している」と伝えられ、搭載予定のW-15エンジンが飛行中に爆発したため初期機材はWS-10Bを搭載した。J-10やJ-11に搭載のエンジンを改良したが推力重量比の不足でJ-20はアフターバーナー無しでは超音速加速ができず、同機は高速ではステルス性を犠牲にする。
ここから中国の非ステルス機のメタマテリアル導入での問題が見えてくる。ステルス性能とは機体の各種特性で実現するものだ。そのうち4つ大切なのが「形状、形状、形状、素材」だとステルス開発者が述べている。その他の要因は「形跡を消す化学素材、高性能で被探知不可能なセンサー、無線交信装置、特別設計のエンジン空気取り入れ口形状、特殊塗装、冷却装置で熱特徴を消すことだという。メタマテリアルはある程度レーダー吸収効果のある素材(RAM)の役目をするが、それで機体全部がステルスになるのか不明だ。旧型機が低性能エンジンを搭載したままでもメタマテリアルが熱特徴を消せるだろうかと、西安電子科技大学の応用物理研究所長Han Yipingは同紙に述べ、高い信頼性を得るためには性能を犠牲にする必要があると指摘。
Hanはさらにメタマテリアルの欠点も指摘知る。まず、現在のメタマテリアルは一定の無線周波数帯にのみ有効であるという。ただし具体的な数値は述べていない。またメタマテリアルの大量製造は極めて困難であるというが、記事は「中国国内報道dによればメタマテリアル大量製造のめどがついた」としていた。国家重点実験室の発表を疑うのはHan以外の科学界に多い。「共通見解として今回の発表はまだ解決スべき点が多いというところでしょう」
メタマテリアルは中国以外でも開発中だ。Financial Timesによれば「メタマテリアルが2006年に初めて注目されたのはインペリアル・カレッジのジョン・ペンドリ発表の論文で特別な素材を使いハリー・ポッターなみの透明装置の製造が可能と述べたことだ」。その後、各社が民生用途の開発を開始し、そのうちの一社Krymetaは自動車や列車、ヨットに搭載可能なアンテナでインターネット接続が可能な製品を発表した。その他、太陽電池パネルやレーダーを軽量化し無人機への搭載を目指す会社があるとFTは伝えていた。
当然ながらこの技術に各国の軍が関心を寄せている。そのうち米陸軍は「ウェアラブルのカモフラージュでカメレオンのように周囲に溶けこむ」装備を実現したいとする。ここにメタマテリアルを使うのだろうが、どこまで実現可能か不明だ。■
Zachary Keck ( @ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: Creative Commons.