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2017年12月17日日曜日

★★潜水艦が一隻も使えないのはドイツ連邦軍の問題の氷山の一角だ

  • 几帳面がドイツでこうなっているとは意外な気もしますが、国防省の官僚的体質が災いのもとなのでしょうか。ドイツの安全保障に対する価値観にはやはり大戦中のトラウマがあるのでしょうか。日本はこの数年で意識がかわりつつあるのですがね。ドイツ国民に軍事アレルギーや防衛で主導的な立場を忌避する傾向があるのでしょうか。

 

Germany Does Not Have One Working Submarine

ドイツに作戦投入可能な潜水艦が一隻もない事態
December 16, 2017


  • 今年10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなった。
  • ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っている。
  • 紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっている。
  • だがドイツ海軍に作戦投入可能な潜水艦が一隻もない。
  • Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめた。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模もに小さい。212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びた。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度だ。
  • ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定だが再配備に公試数か月が必要だ。
  • U-32は2017年7月にノルウェー回航中にバッテリーが使えなくなった。修理用船台が空かず、U-34が次の順番を待つ中で修理のめどがつかない。
  • U-33は2018年2月まで整備中でその後公試に三四か月かかる。U-35の姉妹艦U-36は2017年10月に就役し、作戦投入可能は2018年5月だ。
  • なぜここまで時間がかかるのか。冷戦終結後のドイツ海軍は経費節減策で予備部品の大量保管を放棄し、部品は都度調達するか、非稼働中の艦から取り外してきた。遅延が重なる結果がここから生まれている。
  • ドイツ国防次官ハンス-ペーター・バルテルス Hans-Peter Bartels は以下発言している。「海軍には大変な災難だ。Uボートは最強戦力手段なのに数か月にわたり一隻も稼働できない状況ははじめて」で潜水艦乗員が運用経験が得られない。
  • 2018年なかごろに三隻が作戦投入可能となり、その後11月に4隻目が加わる予定だ。ただし6隻が稼働可能になっても全艦投入できない。バルテルスによれば訓練を積んだ乗員は三隻分しかない。
  • ドイツ国防軍は2011年から完全志願制に移行し、人員確保に苦労しており、若年層に魅力的に見えるようにフレックス勤務、居住環境の改善や育児施設まで充実してきた。女性隊員がUボート勤務できるとまで宣伝していたが、現状ではその活躍の場はない。
  • U-35とU-36は212A型でも最新設計だがダーシュピーゲルが最初の就航時に半ば悲喜劇ともいえる事態が発生していたとすっぱ抜いた。
  • 建造業者ティッセンクルップが212A型初期の建造で契約問題を引き起こしドイツ海軍は不満を感じている。U-35では海上公試でスクリューが「奇妙な...擦れて削るような音」を立てたのは中央線がずれていたためで、音響静粛性が台無しになった。初回の任務投入ではレーダーが連続故障し、業を煮やし民生用レーダーを取り外してきたほどだ。母港では25トンのクレーンで通信用マストがつぶれた。海上でカリスト通信ブイが繰り返し使用不能となった
  • U-36は2015年就役したが実際は部品多数を一時的に取り付けたで内輪では「臓器提供艦」と呼ばれるのは部品多数をU-35に提供しているからだ。
  • 低稼働率は国防軍の他部門でも悩みだ。ドイツ陸軍のレオパルド2戦車244両で戦闘投入可能なのは96両だけで89両は部品待ち、7両はR&Dに投入中、53両は整備改修が必要な状況だ。A400M輸送機は14機あるが一機も稼働できない状況が発生したこともあり、2017年2月には国防相ウルスラ・フォン・デアレイエン Ursula von der Leyenの搭乗中に故障している。トーネード攻撃機93機中で戦闘投入可能なのは30機しかないと2015年に暴露されている。
  • ドゥムレセ、バルテルス両名は報道陣に予備部品をその都度確保する方針は段階的に解消すると述べている。ティッセンクルップへの新規保守管理契約で予備部品供給の「成熟化」に「数年」かけてU-35やU-36の間違いを繰り返さないという。フォン・デアレイエン国防相も国防装備の即応体制の向上は2014年以来の優先事項と言うが、あきらかに改善は待ったなしだ。
  • ドイツが冷戦終結後に国防予算の比重を減らしたのは第二次大戦のナチドイツ時代の苦い記憶のためだろう。しかし、今や莫大な富を享受できる地位についたドイツはヨーロッパ連合で大きな地位を占め、モスクワが東ヨーロッパに軍事力を使いかねない状況ではヨーロッパ防衛貢献を一層求められている。そのドイツには軍事力拡大の前に予備部品や人員面の拡充が必要であり、航空機、艦船、装甲戦闘車量といった装備品の多数を戦闘投入な状態に維持する必要がある。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: A submarine at the German shipyard Howaldtswerke-Deutsche Werft GmbH in Kiel. Reuters/Fabian Bimmer.

2017年12月16日土曜日

ドイツ制服組はF-35に期待し、国防省はヨーロッパ製品第一を掲げる

ヨーロッパが自信をつけすぎたのか、米国が信用を無くしているのかわかりませんが、
空軍将官の見方と官僚の価値観がことなっているということでしょうか。
EUの頭でっかちな官僚主義(EU指令)を思い起こすものもありますね。
末尾で出てくるB61核爆弾はNATOが共同運用することになっている核抑止力ですね。
実際には米国が運用のカギを握っており、ここも考えると米製装備が圧倒的に有利なはず
なのですが。

U.S. still sees prospects for German fighter jet sales 

ドイツ次期戦闘機選定に期待する米側の思惑

Tornado - RIAT 2009 (3794714860)
By Tim Felce (Airwolfhound) (Tornado – RIAT 2009) [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons
http://alert5.com/2017/12/15/americans-still-believe-theres-a-chance-to-replace-german-tornados-with-u-s-fighters/#KZILdzB5XmbT2YHy.99 で詳細を読む

BERLIN, Dec 14 (Reuters) -
  • ドイツ国防省がトーネード(85機)の後継機種にユーロファイター・タイフーンを検討と発表したが米軍関係者は米戦闘機売却の可能性に依然として期待する。
  • 国防省は12月11日に空軍参謀総長カール・ミュルナー中将Air Force Chief of Staff Lieutenant General Karl Muellnerの談話から距離を置いた。参謀総長はステルス性能、長距離攻撃能力からロッキード・マーティンF-35が望ましいと以前発言していた。
  • 同省は参謀総長の見解に合意せず、第一義的にヨーロッパ製装備を検討し、米製戦闘機三機種は二次的な選択肢に過ぎないとした。また総合的な判断で決定すると述べた。
  • ワシントンは来年3月31日までにドイツが発出したF-35、並びにボーイングのF-15、F/A-18E/F各機の情報開示請求への回答を迫られる。なお、ドイツはユーロファイターへも同様の請求をしている。
  • 同省はトーネード後継機候補の評価結果を伝えるとも述べている。トーネードは2030年ごろ退役予定で、「2020年代の調達を前提で提案を募りたい」としている。
  • 米軍関係者の一人は選定手続きは実質上もう始まっていると見ている。「米国は米国製装備が十分競争力ある対象だと自信を持っている」という。
  • 米国法体系により米政府は海外における選定競合では米国製品をすべて平等に扱う義務がある。
  • ロッキードはドイツ国内でロビー活動を大々的に展開しており、F-35シミュレーター体験を国防省関係者や議会関係者にさせているほか、ドイツ空軍の要求内容に同社製品は十分応える「実証済み性能」があると述べている。
  • 同社はまたベルリン上空を飛ぶF-35の合成大判写真を展示している。「当社は開かれて公平な競争を期待します」と同社広報は述べている。「F-35がNATO空軍力に最適の選択であり信頼できる抑止力効果を将来にも実現する」と見ている。ボーイングからはコメントは出ていない。
  • 米政府はドイツ側にボーイング各機の戦闘能力を先月開示し、ロッキード製品については7月に先行実施していた。
  • ドイツでユーロファイターの代理店となるエアバスは書簡についてコメントを拒否している。
  • ユーロファイター事業は英国もBAEシステムズが、イタリアはレオナルドを通じて参加しており、ドイツ軍に機体の更なる開発でどこまで能力を増強できるかの情報を提示済みだという。
  • ドイツがNATO貢献で重視するのがドイツ西方の基地に厳重保管中の米核兵器B61爆弾の運用能力だ。
  • ユーロファイターでは核爆弾運用に改装と運用証明が必要となり、ワシントンが素直に首を振るとは思えない。F-15はすでに証明取得済みで、F-35は2020年代初頭にこの能力を獲得する見込みだ。■



2017年10月2日月曜日

★ドイツがF-15(F/A-18)導入の構えを示し、思わず経済効果を期待するセントルイス地元紙報道をご覧ください。



さすが地元紙ですね。ちゃっかりボーイング受注で予測される経済効果にそろばんをはじいています。そういえばこれまでドイツがF-35に食指を動かさなかった理由があるのでしょう。ユーロファイター・タイフーンが運用に面倒な機材になっている分だけしっかり稼働するF-15などが魅力的に見えるのでしょうか。F-15やF/A-18E/Fにもまだまだチャンスがあるということですね。それにしてもヨーロッパは結構面倒な市場ですね。

Germany asks for Boeing fighter data as weighs order options

発注検討中のドイツがボーイングに戦闘機データ開示を請求
By Andrea Shalal Reuters
Sep 29, 2017
Boeing-made F-15 fighter
ボーイングF-15はセントルイス製だ。ボーイングの防衛部門に陽光の兆しが見えてきたのか。(Boeing Corp. photo)






  1. BERLIN •ドイツ政府が米軍にボーイング製戦闘機二機種の機密情報開示を請求した。ドイツはトーネード後継機を検討中で成約となればカナダ、英国との紛糾で動きが取れない同社に大きな商機となる。
  2. ドイツ国防省の企画計画部の書簡はロイターによればボーイングのF-15とF/A-18E/Fをトーネード後継機として想定している。ともにセントルイスが生産拠点だ。
  3. 機密情報の開示は11月にも行われる見込みで、同様に7月には米側がF-35戦闘機の情報開示を行っている。
  4. 同省によれば同様にヨーロッパの大手エアバスにもユーロファイター・タイフーンの情報開示を求めている。
  5. この案件はボーイングにとってはカナダ、英国と揉めている同社にとっては大きな追い風になる。同社の訴えで米国政府はボンバルディア製Cシリーズに220パーセント関税をかけるようになった。
  6. ボーイングは米国政府と連携しドイツが請求中の情報開示に向け作業を開始している。
  7. ドイツは2018年中にトーネード後継機の決定をする予定で、7月にフランスと共同で戦闘機を生産する構想を発表している。だがこの新型機が稼働開始するのは2025年以降と見られ、それまでトーネード戦闘機は用途廃止を迎えてしまう。
  8. 内部に詳しい筋によればドイツは二段構えで既存機種をトーネード後継機として導入する一方でフランスと共同で新型ヨーロッパ製戦闘機をユーロファイター後継機として調達する方針だという。
  9. 専門家によればトーネード後継機発注の規模は数百億ドル規模になるが、ドイツはまだ導入機数と導入予定を決定していない。
  10. 書簡は正式な情報開示請求の形で価格とともに米国製戦闘機三機種の調達可能背について9月末時点の情報を求めている。
  11. 英国からボーイングに今週に将来の防衛契約で暗雲となる通告が届いている。これはカナダのボンバルディアとの貿易問題に端を発しており、米国による関税適用により英国の北アイルランドで4,200名分の雇用が危機に瀕していることを特記している。北アイルランドではCシリーズの炭素繊維主翼の生産が実施されている。
  12. カナダ首相ジャスティン・トルドー Justin Trudeau からも紛糾が解決しない限りボーイングF/A-18スーパーホーネット18機の調達は凍結すると発言があった。
  13. そこでドイツが米国製戦闘機導入に動けばエアバス労働組合からの強い反対は必至で、ドイツ国防省が米国製ヘリコプター二機種を大型ヘリコプター調達の選定対象としたことで同労組からは疑義が出ている。
  14. 英国、オランダ、ノルウェー、トルコ、イタリアといったドイツの主要同盟国でNATO加盟国はすでにF-35導入で現行機の交替を予定しており、ほかにもスイス、ベルギー、フィンランドからも第五世代機への関心が表明されているのはロシアとの緊張が今までになく高まっている中の傾向だ。
  15. 軍事筋によれば米製戦闘機を導入すればユーロファイターの技術問題に直面するドイツにとって理にかなった選択になるという。■

2017年4月5日水曜日

世界一高価になったCH-53Kの機体単価の内訳


装備が高額になって米国だけで維持ができなくなってきた事例ですね。海兵隊が言う費用分担に加え、共同保有やリースなどの方式も今後あらわれるかもしれません。日本は掃海用MH-53Eを引退させたばかりで当面同機には需要がないでしょう。しかし今やロッキードの一部となったシコースキー(今後発音に近いこの呼称とします)は日本にも話を持ってくるかもしれません。スーパースタリオンは日本でかなり不評だったようなのでどうなりますかね。今度はキング・スタリオンですからね。


Total cost of CH-53K is $131 million per helicopter: Here's the breakdown 

CH-53Kの単価が131百万ドルになる理由

By: Jeff Schogol, April 3, 2017 (Photo Credit: Lockheed Martin.)

  1. もしCH-53キング・スタリオンが新車なら本体価格87.1百万ドルに諸税、登録費用などが加わり131百万ドルになると言う話だ。
  2. 米海兵隊は2029年までにCH-53Kを200機導入し、老朽化してきたCH-53Eスーパースタリオンと交代させる。CH-53Eで稼働率が深刻な問題になっている。
  3. ニキ・ツォンガス下院議員(民、マサチューセッツ)がCH-53Kの単価が87.1百万ドルから122百万ドルに膨れ上がっていると指摘している。同機はロッキード・マーティン子会社のシコースキーが製造する。
  4. 「ここまでコストが膨れるのは深刻な経費増だ」とツォンガス議員は3月10日に下院軍事委員会戦術航空陸上部隊小委員会の聴聞会で発言した。「今後にさらなる価格上昇がないとしても一機2006年価格で122百万ドルというのはF-35よりはるかに高い機体になる」
  5. 海兵隊はこれに対しCH-53K機体単価は上昇しておらず、よくあることだが初号機はエンジニアリングや工具費用が入るのでどうしても高くなると弁明。
  6. 「なんでも最初はうまくいかないものです」とヘンリー・ヴァンダーボート大佐が海軍連盟の年次海空宇宙シンポジウムで発言している。
  7. 「時が経てば熟達し、製造工程でも改良が生産が続くのと同時に実現します。素材の変更も生産中によくありますし、全て組み合わせればコストは生産とともに下がります」
  8. だが87.1百万ドルの数字には付随コスト開発コストは入っていないとヴァンダーボート大佐は指摘。大佐は海兵隊海軍向け大型ヘリコプター開発責任者だ。
  9. CH-53K事業費には192億ドルが調達関連で計上されており、付随装置としてエンジンカバーなどがあり、その他労務費、予備部品他の経費が入っているとヴァンダーボート中佐は説明。そこに69億ドルを研究開発費として加えると261億ドルになる。ここから単価131百万ドルが生まれたという。
  10. 単価は海外向け販売で下がるとヴァンダーボート大佐は説明。ドイツが41機導入の可能性があるという。
  11. 「生産量が25パーセント増えれば、製造単価は下がります」(ヴァンダーポート)
  12. ドイツ軍など海外でCH-53K導入が実現すれば、海兵隊は各国と機体維持費用を分担できると大佐は述べた。■