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2024年10月29日火曜日

総額3,480億ドル? コロンビア級潜水艦の悪夢 請負業者の挫折で大幅な遅れに直面 (The National Interest)

 


Columbia-Class

 

朽化したオハイオ級の後継艦となる米海軍のコロンビア級原子力弾道ミサイル潜水艦が、大幅な遅れに直面している。 


何が問題なのか 初号艦USSディストリクト・オブ・コロンビア(SSBN-826)の引き渡しは最大16カ月遅れる可能性があり、その到着は27年度ではなく2028年度にずれ込む。 

 遅延は請負業者の問題に起因している:ハンティントン・インガルス・インダストリーズは艦首部の納入で遅れ、ノースロップ・グラマンはタービン発電機の頓挫に直面している。 

 これらの遅れにより、海軍は既存のオハイオ級潜水艦の耐用年数の延長を余儀なくされる可能性があり、議員の間で懸念が高まっている。 

 総ライフサイクルコストは3480億ドル近くと見積もられており、このプログラムは効果的に管理されなければ、国防総省で最も費用のかかるもののひとつになる危険性がある。 

 米海軍の将来のコロンビア級原子力弾道ミサイル潜水艦(老朽化したオハイオ級に取って代わる予定)は、最終的に国の核三重構造の主要な構成要素となる。 計画されている12隻は、オハイオ級SSBNの24基のSLBM発射管と対照的に、16基のSLBM発射管を装備する。これは、建造、運用、メンテナンスのコストを削減するためである。さらに、新型弾道ミサイル潜水艦は、米英共同開発のコモン・ミサイル・コンパートメント(CMC)を利用する。これは、トライデントII D5大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するために設計されたものである。この共同作業によって、両国で数億ドルを節約できると報告されている。 

 紙の上では、コロンビア級は米海軍が核抑止の使命を果たすため必要だ。だが現実に戻ると、状況はかなり悲惨だ。 

 問題は、1号艦とあんるUSSディストリクト・オブ・コロンビア(SSBN-826)の引き渡しが16カ月も遅れていることだ。 

 以前、この潜水艦の引き渡しは、これまで予定されていた27年度ではなく、2028年度(FY28)になる可能性があると報じられた。 

 数ヶ月前、ブルームバーグによると、将来のSSBN-826の遅れは16ヶ月にもなる可能性があり、海軍の内部評価によると、艦首部分と発電機の納入における請負業者の遅れに起因している。 

 コロンビア級に影響を及ぼしているこの遅れは非常に深刻で、米海軍はオハイオ級を予想より長く就役させなければならなくなる可能性があると見られている。 

 当初の計画では、最初のオハイオ級SSBNは2027年に退役し、2040年まで毎年1隻ずつ退役することになっていた。 

 海軍関係者は、オハイオ級潜水艦のうち少なくとも5隻の耐用年数をそれぞれ2~3年延長し、2024年から2053年までの3年間を除くすべての期間、12隻以上の戦力を維持することは可能だと述べている。 

 というのも、下院軍事委員会の海軍小委員会は水曜日に公聴会を開き、2025年度の海軍の造船要求と、今月行われた海軍の艦船プログラムの見直しを検討したからだ。

請負業者の問題 - 遅延とさらなる遅延 ブルームバーグの報道によると、ジェネラル・ダイナミクスとハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)は、約1300億ドルのプログラムとなる12隻の設計と建造を担当し、各艦は6つの大きなブロックで組み立てられる。 

 建造中のいわゆる「スーパーモジュール」は、ジェネラル・ダイナミクス社による最終組み立ての前に、それぞれシステムや接続部を装備される。 

 理想的なのは、これによって生産をスピードアップすることだ。しかし、HIIは2025年5月に艦首をバージニア州ニューポートニュースのヤードからコネチカット州グロトンにあるジェネラル・ダイナミクス施設に出荷する予定だった。 現在は2026年6月、つまり13カ月遅れと見積もられている。 遅延理由は公表されていない。 HIIは声明で、「複雑な溶接順序でクラス初の難題を経験」し、「米国で建造された史上最大の潜水艦」の計画を修正する必要があったと述べた。 HIIはさらに、修正された計画は「成功裏に実行され、現在後続艦に組み込まれている」と述べている。 

 さらに、米海軍が2021年11月までに1番艦のタービン発電機を納入するよう契約したノースロップ・グラマンは、これらの部品が必要になるまでに数ヶ月の余裕を持たせる計画だった。だがタービン発電機の納入は2025年初頭と予測されており、スケジュールにさらなる影響が出ている。 各潜水艦には2基の発電機があり、推進力と電力を供給する。 

最終的な価値は? 潜水艦の建造は遅れるかもしれないが、最終的にはそれだけの価値がある。本誌に寄稿しているマヤ・カーリンも、コロンビア級は国防総省の開発プログラムの中で最もコストのかかるもののひとつになると警告している。クラス全体のライフサイクル価格は、12隻の潜水艦の開発・購入と2040年代初頭までの維持費の予測を含め、3480億ドル近くと見積もられているが、もしこの任務が果たせなければ、米海軍は時間とお金以上のものを失うことになるだろう。 ■


$348,000,000,000 Columbia-Class Submarine Nightmare

by Peter Suciu

October 26, 2024  


Author Experience and Expertise: Peter Suciu

Peter Suciu is a Michigan-based writer. He has contributed to more than four dozen magazines, newspapers, and websites with over 3,200 published pieces over a twenty-year career in journalism. He regularly writes about military hardware, firearms history, cybersecurity, politics, and international affairs. Peter is also a Contributing Writer for Forbes and Clearance Jobs. You can follow him on Twitter: @PeterSuciu.


https://nationalinterest.org/blog/buzz/348000000000-columbia-class-submarine-nightmare-210626


2024年4月5日金曜日

米海軍の建造計画が一様に遅れを生じている。コンステレーション級は就役が3年遅れる見込みなど。背景に深刻な米国の労働事情、産業構造問題がある。

 米海軍の進める建造計画がことごとく遅れを生じています。こちらは予算問題ではなく、人材まで含めた産業基盤の原因のようですが、日本や韓国に海軍が関心を示しているのはてっとり早い解決策を希求しているためでしょうが、米国の産業構造そのものに手を入れないと建造計画が絵に描いた餅になってしまいます。USNI News記事からです。


Rendering of USS Constellation (FFG-62). Fincantieri Image




海軍の新型誘導ミサイル・フリゲート艦の就役が最大3年遅れる可能性があることがUSNIニュースの取材で分かった。

 ウィスコンシン州のフィンカンチエリ・マリネット・マリーンで建造中のコンステレーション(FFG-62)は、当初の引き渡し目標2026年が3年遅れて、2029年まで艦隊に引き渡されない可能性がある。

 このプログラムの遅れは、カルロス・デル・トロ海軍長官が今年初めに命じた45日間の造船見直しの一環として明らかになった。フリゲート艦の遅れに加え、空母エンタープライズ(CVN-80)、コロンビア級弾道ミサイル原子力潜水艦の一号艦、ヴァージニア級攻撃型潜水艦の引き渡しの遅れも海軍が確認している。

 プログラムの遅れの要因として、海軍は設計の成熟度、サプライチェーン、熟練労働者の確保の難しさなどの問題を挙げている。

 海軍によると、将来のUSSディストリクト・オブ・コロンビア(SSBN-826)は、12ヶ月から16ヶ月の遅れに直面している。先月、USNI Newsは、海軍は、継続的なサプライヤーの問題により、同艦での1年の遅延の可能性を検討中と報じた。

 エンタープライズは1年半から1年半の遅れに直面し、ブロックIVヴァージニア級攻撃型潜水艦は3年の遅れを検討している。ブロックVヴァージニア級潜水艦は大型の新型ヴァージニア・ペイロード・モジュールを搭載するが、現在は予定より2年遅れている。オースタルUSAが昨年建造契約を獲得した海軍の新型海洋監視船T-AGOS(X)の遅れは、同プログラムがいつ新規建造を開始するかによる。

 アメリカ級強襲揚陸艦、サン・アントニオ級揚陸輸送ドック艦、アーレイ・バーク級駆逐艦、ジョン・ルイス級艦隊補給給油艦については、海軍の概要によれば、「契約は遅れている」が、「安定しており、プログラム主管の見積もりに沿っている」という。


コンステレーション級フリゲートFFG


デル・トロが45日間の造船見直しを発表する直前の1月、USNI Newsは、コンステレーション級フリゲート艦が、労働力の課題と設計の成熟度の問題のため、少なくとも1年遅れていると報じた。

 火曜日に行われた記者懇談会で、海軍海洋システム本部(NAVSEA)のジェームス・ダウニー中将は、フリゲート艦の詳細設計は、イタリアとフランス海軍に就役しているフィンカンティエリ・マリネット・マリーンのFREMMをベースにしているが、まだ完成していないと記者団に語った。ダウニーによれば、今年中に詳細設計を完了させるのが目標であり、官営度は80%に近づいているという。

 ダウニーは記者団に、「契約企業間で、契約の役割が数点変わりました。「設計を完了させることは、我々にとって非常に重要なことです。そのため、フィンカンティエリの設計部門と協力企業を、政府とのコラボレーション・センターで共同作業させることにしました」。

 2022年8月、海軍がフィンカンティエリに最初のフリゲートの建造開始を許可したとき、当時無人・小型戦闘艦のプログラム執行役員だったケーシー・モトン少将は、詳細設計は80%強が完了したと語っていた。

 マリネットでの建造の遅れの原因を尋ねられ、ダウニーは同造船所の仕事量の増加、雇用と維持の難しさ、そして現在同造船所で建造中の3つのプログラムの段階がまちまちであることを挙げた。同造船所は、サウジアラビアのマルチミッション水上戦闘艦と米海軍の新型フリゲート艦を建造する一方で、沿海域戦闘艦(LCS)の最終艦を仕上げつつある。

 ダウニーは、マリネットがこれら3つのプログラムを建造していることで、LCSのみを建造していた時と比べて、マリネットの人員削減は「大きく異なっている」と述べた。

 海軍は2020年、NAVSEAが開発した迅速な要求プロセスを用いて、フィンカンティエリ・マリネット・マリーンのFREMM設計を選定した。海軍はこのフリゲート艦の固定価格契約で同社に発注した。

 コンステレーション級(FFG-62)は、故ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)によるLCS計画への痛烈な批判の後に生まれた。マケインは一貫した不支持で、2016年にLCSを指名手配のポスターに載せたほどだが、海軍はLCSを削減し、代わりに誘導ミサイル・フリゲートを追求した。

 海軍関係者がUSNI Newsに語ったところによると、この設計は長年使用されている軍艦をベースにしていたが、設計代理店のギブス&コックスは、欧州海軍より厳しい生存性基準など、NAVSEAの要件を満たすためにFREMMの設計を大幅に変更した。

 ある時点で、コンステレーションの設計はオリジナルのFREMM設計と約85%の共通性を持っていたが、変更によって15%以下に低下したと、変更に詳しい人物はUSNI Newsに語った。

 こうした変更により、ウィスコンシン州の造船所では、すでに課題となっていた労働力問題がさらに深刻になり、ブルーカラー・ホワイトカラー双方で採用難に陥っている。労働力不足に対処するため、海軍はマリネットに5,000万ドルを支給する。同造船所はこの資金で、ブルーカラーとホワイトカラーの両方にボーナスを支給し、マリネットにとどまるようインセンティブを与えている。

 フィンカンティエリは現在、最初のフリゲート艦4隻の建造を請け負っている。先月発表された2025会計年度予算の説明文書によると、2隻目、3隻目、4隻目の納期は「検討中」とある。


コロンビア級SSBN

Stern section of the future District of Columbia headed to General Dynamic Electric Boat in 2024. GD Photo


 コロンビア級プログラムの初号艦は、2027年10月に引き渡される予定だった。12カ月から16カ月の遅れにより、引き渡し日は2028年10月、あるいは2029年初頭となる可能性が出てきた。

 海軍の調達担当ニコラス・ガーティンは、この遅れについて尋ねられ、「艦全体とすべてのモジュールの導入に関係している」と答えた。

 ダウニーは、空母と潜水艦で共有されるものも含めて、一部部品は遅れているが、搭載されている技術は問題になっていないと述べた。潜水艦の推進システムで新技術となる永久磁石モーターpermanent magnet motorsは、遅れの「原動力」になっていないという。

 核抑止力3本柱のうち、海の部分を再編成するこのプログラムは、オハイオ級潜水艦と1対1で置き換える必要があるため、極めて余裕が少ない中で運営されている。

 コロンビア級の心臓部は複雑な電気システムで、オハイオ級より静粛性を高めることを目指している。

 潜水艦の原子炉から出る蒸気を動力源とするタービンは、推進システムに機械的に接続されず、タービンから潜水艦内部の複雑な電気グリッドに電力を供給するため、艦内での機械的接続の数が減り、騒音が低減する。タービンの納入遅延が生産の課題になっているとUSNIニュースは報じたが、電気駆動システムの組み立ての進捗状況についてはほとんど語られていない。

 HIIのニューポート・ニューズ造船がヴァージニア州で建造している艦首部分の建造も遅れの原因となっている。コロンビア計画では、主契約者であるジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートが、コネチカット州グロトンにあるヤードと同州クオンセット・ポイントにある製造施設で艦体の中央部を組み立て、艦首部と艦尾部はニューポートニューズからニューイングランドに運搬され、そこで組み合わされる。しかし、ニューポートニューズはエレクトリック・ボートにセクションを供給するのが遅れている。

 海軍は、オハイオの耐用年数を最大5隻で延長し、運用に余裕を持たせる計画を立てた。短時間の延長で、各艦の耐用年数は3年延長される。昨年、海軍関係者は、耐用年数の延長を行うかどうかについて最終決定を下すまで数年が必要だと述べていた。■


Constellation Frigate Delivery Delayed 3 Years, Says Navy - USNI News

MALLORY SHELBOURNE AND SAM LAGRONE

APRIL 2, 2024 5:11 PM - UPDATED: APRIL 3, 2024 3:09 PM


2021年7月24日土曜日

米海軍の次期攻撃型潜水艦SSN(X)はハンターキラー性能を前面に出し、垂直発射管は搭載せず強力な艦となる。建造ではコロンビア級SSBNとの連携が重要となる。


Navy graphic

USSコロンビア原子力ミサイル潜水艦 (SSBN 826)の想像図


海軍の次世代攻撃型潜水艦は従来艦の特徴を引き継いで「頂点捕食者」をめざす。


海軍水中戦企画室長ビル・ヒューストン少将は「究極の頂点捕食者を海中で実現する」と海軍連盟のパネルディスカッションで述べた。


少将は新型艦のペイロードや速力はシーウルフ級並み、音響性能やセンサーはヴァージニア級と同等、稼働率や供用期間はコロンビア級艦並みと表現した。


「これが可能となるのはこれまでの各艦の実績があるためで、やり方も熟知しているからだ。各要素を一つの艦に盛り込む」


次世代攻撃型潜水艦はSSN(X)の呼称で、開発が緒についたばかりだ。


同艦の初期研究開発用予算として今年度は98百万ドルの要求となっている。2020年度長期建艦計画では34年度から毎年2隻で計42隻の調達を開始する。海軍は一隻あたり58億ドルと推定しているが議会予算局資料は62億ドル近くとしている。インフレーションを考慮してもヴァージニア級より相当の増加となる。ヴァージニア級は拡大ペイロードモジュール搭載艦で34.5億ドル、非搭載艦で28億ドルだ。



コロンビア級建造との関係


ヒューストンはコロンビア級潜水艦建造に産業界が取り組む環境の危うさに言及した。海軍は三号艦から12号艦に特に懸念しているとし、理由として同級の連続建造段階にあたり、建造が安定するものの、何らかの過誤が発生した場合には柔軟対応の余裕がないためとした。コロンビア級建造では意図的に時間間隔をあけて業界に学習効果を得る余裕を作っているとヒューストン少将は述べている。


海軍上層部からはコロンビア、ヴァージニア両級建造との関連に関する発言が出ている。建造部門に混乱が出れば、相互に影響が生まれる。さらにSSN(X)へも影響は必至だ。


海軍と企業側はコロンビア級の設計で最終段階の作業に入っており、同じチームで新型艦の実現に取り組むとヒューストンは述べている。さらに海軍はコロンビア級建造が落ち着く段階で即座にSSN(X)作業に入る予定だ。


「コロンビア級建造のピークが終わるとSSN(X)建造に本腰を入れる。その時点で設計およびRDT&Eが終わっているからだ」「頂点捕食者実現のためのRDT&Eには相当の時間が必要となるが、今後10年間は集中してSSN(X)の各種システム実現に取り組む」


ただし、SSN(X)の研究開発試験工程が予定通りに終了するのが条件で、遅延が生まれれば費用上昇は避けられなくなる。同様にコロンビア級でトラブルが生まれればSSN(X)にも影響は避けられない。


どんな性能の艦になるのか

現時点で米海軍の最新かつ最高水準の原子力推進攻撃型潜水艦はヴァージニア級だが、後継艦実現に向けた作業が続いており、敵のハイエンド潜水艦を打ち破るよう最適化される。

この結果生まれる新型艦は「高速で、相当の攻撃力を有し、ペイロードが増え、音響面でも優位性を確保する」ハンターキラーになるとヒューストン少将は述べた。

海軍が求める次期攻撃型潜水艦はシーウルフ級並みの性能となるようだ。もともとシーウルフ級は究極のハンターキラーとなるべく冷戦末期に企画されたが、建造費用の上昇により建造はわずか三隻で終了し、USSシーウルフに加え、USSコネチカット、USSジミー・カーターしかない。このため、各艦はおおむね特殊任務に投入されている。このうちジミー・カーターは特殊任務専用艦となっており、極秘作戦に使われている。

これに対しその後登場したヴァージニア級は公式には攻撃型潜水艦だが、事実は多用途艦だ。シーウルフより小型かつ低建造費の同級には垂直発射管セルがありトマホーク対地攻撃巡航ミサイルを発射するほか、沿海域での運用に最適化しており、情報収集のほか特殊作戦隊員の侵入、撤収が可能だ。

U.S. NAVY

ヴァージニア級が現時点で最新かつ最先端の原子力推進攻撃型潜水艦だが、後継艦は敵ハイエンド潜水艦を打破する性能を有する艦になる。


ハンターキラーに徹し、VLSは搭載しない

SSN(X)では従来型のハンターキラーへの回帰が明らかだ。速力、ステルス、魚雷発射管からの兵装運用で敵潜水艦、水上艦の撃破に中心をおいており、直発射管による対地攻撃は考慮されていない。

この基礎が2018年の議会予算局(CBO)報告で、SSN(X)は最大62本の魚雷を搭載するか、魚雷発射管から対艦ミサイル等を運用するとあり、UGM-84ハープーンのほか今後登場する対艦兵器を発射し、垂直発射管は不要としている。

U.S. NAVY

ロサンジェルス級USSコロンビアにマーク48高性能魚雷を搭載する。


中国やロシアが今までより強力な新型潜水艦を投入し米国の国益に重要な水域に進入する事態を想定すれば、こうしたハイエンド攻撃型潜水艦の整備は理にかなったものだ。

「本格的戦闘作戦に備える必要がある。敵の背後に回り、打撃を与える」とヒューストン少将はSSN(X)について言及している。「敵は自国水域内でも自由に活動できなくなる」

水中戦での質的優位性を維持する以外にSSN(X) は現行50隻の攻撃型潜水艦部隊を70隻に増やすことで決定的重要性の事業となる。Battle Force2045構想がこれを求めており、この実現のため海軍は新型艦建造に加え既存艦の供用期間を延長し、結果として改修や性能向上にも多大な予算を計上する必要に迫られる。

同時に海軍はSSN(X)で新技術も導入する検討に入っており、セイルは膨張式とし速力、操艦性、ステルス性で向上を目指す。

予算確保が課題だ

高度に洗練された設計となり、応分の価格がついて回るが、海軍にこれが実現できるだろうか。新型攻撃型潜水艦以外に海軍はコロンビア級に予算を確保する必要があり、ヴァージニア級建造も続ける一方で、供用中潜水艦の補修整備も行う。

同時に水中無人装備にも予算を計上する必要があり、ヒューストン少将は今後のSSNとともに運用する装備として期待している。少将によれば攻撃型潜水艦が小型・中型無人装備(UUVs)を統制し、大型UUVsは陸上施設から運用する。こうした装備の実現にも予算が必要だ。

シーウルフ級の過ちを繰り返さないことが肝要で、コロンビア級と共通性を持たせれば予算をうまく使えるかもしれない。

SSN(X)とコロンビア級は艦体形状を共通としつつ、SSN(X)は短縮化する可能性がある。ただし、SSN(X)は長期に及ぶ供用期間と保守管理工数を従来のSSNsより短縮化することで予算に見合った価値を実現するとヒューストン少将は述べた。

以上まとめると海軍が求める次世代攻撃型潜水艦はシーウルフ級並みのハイエンド性能を最新艦体に盛り込むものとなる。達成可能と思えるが、十分な隻数の実現に必要な予算の確保が課題だろう。■

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SSN(X) Will Be 'Ultimate Apex Predator'

By   JUSTIN KATZ

on July 21, 2021 at 5:52 PM


The Navy's Next Attack Submarine Will Be An “Apex Predator” According To Undersea Warfare Chief

BY THOMAS NEWDICK JULY 23, 2021



 


 

 

 

 


 

 


 

 


 

2021年3月17日水曜日

次期SSBNコロンビア級の技術的課題

 

 

 

 

中配備戦略抑止力の根本たる核弾道ミサイル潜水艦は見つかってはならず、探知されるす、姿を見せてはならない宿命だ。

 

この命題を維持するため潜水艦開発をいっそう複雑になっており、新型コロンビア級弾道ミサイル潜水艦はいまだかつてない静粛度を誇るステルス潜水艦となる。

 

コロンビア級はハイテクの駆使で探知を逃れる設定で、敵側が長距離高性能ソナー装備を使い探知能力を引き上げ、小型対潜無人潜水艇や航空機による潜水艦探知技術を進めているのを意識せざるを得ない。水面や浅海域レーザースキャナー技術も浮上しており、パトロール中の潜水艦の探知を目指していることにも注意が必要だ。

 

こうした中で海軍作戦部長マイケル・ギルディ大将のCNO NAVPLANで新型コロンビア級の運用開始を「時間通り」実現する必要を訴えるのは当然だろう。

 

 

一方で、水中無人潜水艇が急速な進展を示しており、静粛で小型かつ探知が困難なため、潜水艦艦長に新しい脅威となってきた。

 

中国は新型普級弾道ミサイル潜水艦の建造を進めており、JL-3長距離核ミサイルを搭載する。JL-3ミサイルにより中国は米本土をこれまでより広く射程に収め、米国への核攻撃がより現実味を帯びる。

 

こうした中、米海軍が高性能弾道ミサイル潜水艦の新型多数を必要とするのは当然だが、新型潜水艦はステルス性をこれまで以上に必要とし、海軍は新型水中戦技術をコロンビア級に統合する。

 

海軍の科学技術開発の成果がコロンビア級に搭載されるが、一部はブロックIIIヴァージニア級攻撃潜水艦から流用する。光ファイパー方式潜望鏡で、従来のように潜望鏡の下に立つことなく、艦の周囲を見ることができる。またフライ・バイ・ワイヤ航法は機械式の油圧機構と違い、高度の自動化で深度、速力等を制御できる。

 

コロンビア級に全く新しい静粛化技術が採用される可能性は高い。海軍兵装開発部門で話題に登っているのが電気推進技術だ。従来装備よりはるかに静粛で瞬時に機動性を実現できるが、艦内に高性能電子装備が多数搭載されるはずだ。指揮統制機能、自動航法システム、電動兵装、センサーのインターフェースが実現するはずだ。

 

探知を難しくする方法にミサイル発射管から運用する水中偵察機がある。海軍が開発中の各種無人機は潜水艦からの発進、回収を実現し、水中戦での情報収集に役立てる。無人ソナー・センサー装備としてリアルタイムで潜水艦本体に情報を伝えれば、コロンビア級潜水艦は探知されない位置に長くとどまることが可能となり、無人水中機を前方へ移動させハイリスク水域で敵潜水艦等を監視することになろう。■

 

 

Columbia-Class Submarine: The Most Stealth Submarine Ever Built?


January 17, 2021  Topic: Columbia-Class Stealth  Blog Brand: The Buzz  Tags: Columbia-class StealthColumbia-ClassU.S. NavyNavyMilitary

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


2020年11月8日日曜日

次期SSBNコロンビア級の建造にGO。二番艦はUSSウィスコンシンに。12隻建造で核抑止力の維持へ。

 

建造に入る次期弾道ミサイル潜水艦(SSBN)コロンビアの想像図。海軍は同艦含め12隻

を建造する。(Navy)

 海軍はジェネラルダイナミクス・エレクトリックボートにコロンビア級弾道ミサイル潜水艦一号艦の完全建造とともに二号艦USSウィスコンシンの事前調達費用を94.7億ドルで進める契約を交付した。

 

この発表でコロンビア級事業の初期段階が完結した。海軍はコロンビア級を最優先事項としている。12隻建造し、オハイオ級と交代する。一号艦コロンビアは2031年に哨戒航海を開始し海洋抑止力を維持する。

 

DoD契約情報は「コロンビア級一号艦二号艦のSSBN826、SSBN827の建造・試験以外に関連設計作業・技術支援が含まれる」とする。

2020年代後半に建造が本格化し、海軍は毎年一隻の調達を目指す。

 

「実施準備が整った。契約が成立し本格建造に移る」と海軍の研究開発調達責任者ジェイムズ・グーツが述べた。「設計と合わせ事業そのものが従来型の潜水艦以上の成熟度を示している。さらに完成度をあげ、先行建造から本格建造に移る。さらに毎年一隻の建造に移行する」

 

肝心なのは初号艦を予定通り建造することとグーツは続けた。「一号艦を完成するのは大仕事だが、初めてなので重要だ」「ただそれで終わりではない。事業を完結させ国の要求に応える必要がある」

 

二号艦も契約に盛り込まれた。海軍関係者は2024年予定のオプションが行使でき、本格建造費用について協議は不要ということだと解説した。

 

コロンビア事業は巨額規模となる。海軍試算で一隻あたり75億ドルになる。2026年になると毎年一隻のコロンビア級調達になるが、そのためFY21予算で200億ドルを計上していることで規模が想定できる。コロンビア級だけで海軍の建造費を38パーセント消化するが、海軍が中国の脅威を意識して整備が必要と判断しているからに他ならない。

 

1月にコロンビア級の予算規模について海軍作戦部長マイケル・ギルデイ大将は海軍力整備には予算増が必要と述べた。「海洋部門で優勢を維持したいなら、海軍作戦を分散実施するためには、前方で一定の規模で作戦展開するためにはもっと隻数が必要だし、そう、もっと予算が欲しい」

 

ジョー・コートニー下院議員(民、コネチカット)は選挙区にエレクトリリックボート(EB)社があり、今回の契約は潜水艦産業基盤の勝利と評価し、年間二隻のヴァージニア級建造にあらたにコロンビア級が加わることを歓迎した。「EBにとって大きな一歩となるだけでなく地域経済にも将来につながる大きな意味がある」と述べ、「長年にわたる建造技術の蓄積にさらに今後数十年間分の作業が加わり、雇用以外に好影響が生まれる」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

US Navy inks $9.4B contract for two Columbia-class nuclear missile submarines

By: David B. Larter 


2018年5月19日土曜日

北朝鮮を一隻で壊滅可能なオハイオ級ミサイル原潜の現況と今後

北朝鮮が本来の不良ぶりを堂々と示すようになり、米国も軍事オプションが現実になる事態を想定しているようですが、姿の見えないミサイル原潜とくにSSGNを使っての北朝鮮軍事目標の同時攻撃の可能性が増えるのではないでしょうか。SSBNも一次攻撃に投入可能と言うのはちょっと驚きですが。



The Navy Has 1 Nuclear Missile Submarine That Could Destroy North Korea 一隻で北朝鮮を壊滅可能な米海軍核ミサイル潜水艦



May 16, 2018


島、長崎への原爆投下から9年後に封切られた映画「ゴジラ」は深海から目覚めた怪物が日本を襲う筋書きだったが、火を噴く爬虫類よりも恐ろしい怪物がその後登場した。現実の野獣が同時に海中に登場しそれぞれ複数都市の破壊能力を秘めていた。米海軍用語で「ブーマー」と呼ぶ弾道ミサイル潜水艦部隊のことだ。

現在海中に潜むのはオハイオ級弾道ミサイル潜水艦14隻で米国の核兵器の半分以上を搭載している。

オハイオ級各艦は人類史上最大の破壊兵器を搭載している。各艦が24発のトライデントII潜水艦発射弾道ミサイル(SLBMs)を海中発射し最大7千マイル以上先の標的を攻撃できる。

トライデントIIが大気圏再突入すると速度は最大マッハ24で独立再突入体8つに分離し、各100から475キロトンの弾頭になる。オハイオ級潜水艦一隻が全弾発射すればわずか一分間で最高192発の核弾頭で24都市が地図の上から消えることになる。まさに黙示録級の悪夢の兵器だ。

このオハイオ級に一番近い存在がロシアが一隻だけ温存するタイフーン級潜水艦で、艦体は大きく24本の弾道ミサイル発射管を有する。中国、ロシア、インド、英国、フランスの各国が弾道ミサイル潜水艦複数を運用し搭載ミサイルはそれぞれ異なるが、先進国の主要都市なら数隻で完全に破壊できる。

一国をまるまる破壊可能なこのような怪物の存在はどう正当化できるのだろうか。

核抑止力理論では初回攻撃で地上配備ミサイルや各爆撃機部隊が消滅しても、音もたてずに深海を遊弋している弾道ミサイル潜水艦の追尾は極めて困難なため、潜水艦まで全滅するとは考えにくいとする。弾道ミサイル潜水艦による核報復攻撃は阻止されないため、まともな国家なら第一次攻撃や核兵器投入をためらうはずだ。少なくともそういう期待がある。

トライデント搭載のオハイオ級潜水艦はこれまで一回も怒りに任せた発射をしないことで任務を成功裏に進めてきたのだ。

オハイオ級の供用開始は1980年代で5型式あった弾道ミサイル潜水艦41隻の代替だった。潜航時18千トンとなった新型ブーマーは現在でも米海軍で最大規模の潜水艦だ。また世界で三番目に大きな艦体を誇る。USSヘンリー・M・ジャクソン除き各艦には州名がつくが、これは過去の大型水上戦闘艦の命名方式を踏襲したものだ。

核兵器の応酬となれば超低周波通信でブーマーに発射命令が入る。各艦のミサイルは事前に目標設定されているが、座標再入力で攻撃目標を迅速に変更できる。オハイオ級の最初の8隻はトライデントI C4弾道ミサイル発射の想定だったがこれは先のポセイドンSLBMの改良版だった。ただし今日ではブーマー全艦により高性能のトライデントII D5が搭載され、射程が5割伸びて命中率が極めて高く、第一攻撃手段としても軍事施設を正確に撃破できる。

オハイオ級は21インチ魚雷発射管4門でマーク48魚雷も発射できる。だがあくまでも自艦防御用であり、弾道ミサイル潜水艦の役目は敵艦撃破ではなく、可能な限り深く静かに潜航して敵探知を逃れることだ。原子炉によりほぼ無限大の潜航が可能で20ノット巡航潜航してもノイズはほぼ出ない。

各軍ではその時の状況に応じ活動を展開することが多いが、原子力弾道ミサイル潜水艦は通常通りの哨戒活動を一貫して行い通信連絡も最小限にとどめ可能な限りステルスに徹している。オハイオ級各艦には154名からなる士官、下士官の乗組員チームがゴールド、ブルーの名称で交代で艦を70日から90日に及ぶ潜航哨戒に出す。最長記録はUSSペンシルヴェイニアの140日だ。平均一か月を哨戒にあて、物資再補給には艦にある大型補給用ハッチ三か所を活用する。       

太平洋方面にはワシントン州バンゴーを母港の9隻、大西洋にはジョージア州キングスベイを拠点に5隻のブーマーがそれぞれ展開する。冷戦終結後の戦略兵器削減条約で米核戦力は縮小されたが、初期建造艦4隻は巡航ミサイル搭載艦に改装され通常型兵器で陸上水上の標的を攻撃することとなった。まずUSSオハイオが改装された。

他方で新START条約が2011年発効し、核兵器がさらに削減される。現行案ではオハイオ級は12隻とし、各艦にトライデントIIミサイル20発を搭載し、残るブーマーのうち2隻をオーバーホールすることとし合計240本のミサイルで弾頭1,090発を投入可能とする。これを聞いて心穏やかでなくなるタカ派も心配無用だ。これでも世界を数回破壊できる威力があるからだ。

オハイオ級は2020年代末まで供用され、それまでに追加音響ステルス改修を受けるが、最終的に後継艦コロンビア級に座を明け渡す。次期ミサイル原潜は単価40億-60億ドルとみられ、建造隻数は少なくなるが新型原子炉を採用し供用期間途中での高額なオーバーホールや燃料交換が不要となる。2085年までの供用が可能となる。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.