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2025年11月15日土曜日

ロシアの第6世代戦闘機MiG-41は(実存すれば)どれほど危険なのか?(Warrior Maven)

 How Dangerous is Russia's 6th-Gen MiG 41 Interceptor Fighter Jet? cover image


ロシアの謎のMiG-41:ステルス性、極超音速ミサイル迎撃能力、そしてゲームチェンジャーとなる可能性。だがこの先進戦闘機は本当に存在するのか?

テルス性、超高速、対衛星ミサイル装備。これらは謎のロシア製PAK DP MiG-41迎撃戦闘機の特徴の一部だ。敵戦闘機、偵察機、防空システム、地上部隊を破壊するために設計された第6世代プラットフォームである。高速戦闘機MiG-31の後継機として計画中のミコヤンMiG-41は、極超音速ミサイル迎撃も目的としている。これはあらゆる兵器システムにとって極めて困難な任務として知られている。

ロシアのニュースメディア「イズベスチヤ」によれば、MiG-41は多機能長距離迎撃ミサイルシステムを搭載し、成功率を高めるために「複数のサブミサイルを分散発射」することで極超音速ミサイルを迎撃するよう設計だという。 しかし、超音速兵器を空中で破壊するには、超音速で機動する兵器を継続的に追跡できるレーダーやEO/IR(電光/赤外線)目標追跡技術が必要となる。確かにこの主張は野心的だが、航空機が衛星やその他の空・地上センサーとネットワーク化されれば実現可能性はある。極超音速滑空体(HGV)がレーダーの視野範囲から別の範囲へ移行する速度を考慮すると、空対空極超音速迎撃ミサイルが成功するには、高速・長距離ネットワーク技術と標的捕捉技術が不可欠と思われる。極超音速兵器、特に滑空体や極超音速滑空体は、従来の「放物線状の」弾道ミサイル軌道とは異なり、予測不能な方法で機動する。

MiG-41は実在するのか?

しかし核心的な疑問は、この同機が既に存在するのかだ。もし存在するなら、いつ頃登場するのか?これらの疑問の答えは見極めが難しい。しかし近年、多数の報告が「開発は確かに開始された」と明言しており、想定される配備時期は2020年代後半から2030年代とされている。2021年1月、ミコヤンの親会社であるロステックは、PAK DPが開発段階に入ったと発表した。

MiG-41は生産されるのだろうか

ロシアは確かに新世代兵器や先端技術を開発・設計する能力で知られているが、近年ではそれらを「影響力のある規模」で生産することは困難であることが証明されている。ロシアの兵器生産における苦戦を最もよく示す例は、第5世代戦闘機Su-57だろう。ロシアはSu-57を影響力のある戦力として構築するにあたり、財政的・物流的・製造上の問題を抱えている。したがって、仮にSu-57が米空軍のF-22やF-35と互角に戦えたとしても、大国間戦争で脅威となるほどの十分な数が存在しない。スホーイは数年前から70機の新型Su-57を製造する契約を結んでいるが、実際に何機が製造されたかは不明だ。

Flight Globalの「World Air Forces 2024」ディレクトリで14機のSu-57が現役、さらに62機が発注済みと記載されている。ロシアの生産問題の背景には、サプライチェーン問題、予算難、単純な製造能力不足が関係しているとの見方が多い。

MiG-41は存在し得るか?

MiG-41に関連する二つの主要な方向性、あるいは焦点領域が存在するようだ。第一は純粋に技術的なものだ。極超音速ミサイル迎撃システムの成熟度はどれほどか?どの程度試験され、極超音速機を確実に迎撃するために、どのようなネットワーク、センサー、標的捕捉機能がシステムに統合されているのか。第二に、実用性の問題がある。つまり、技術が意図通りに機能した場合、大量生産が可能なのだろうか。ロシアの先進機に関する予算・製造問題はSu-57に限定されず、MiG-41にも影響を及ぼす可能性が高い。生産計画や変数は、実機・実証機・試作機が実際に「存在」し、公称の技術能力や性能パラメータを達成できてはじめて意味を持つ。■

How Dangerous is Russia's 6th-Gen MiG 41 Interceptor Fighter Jet?

Kris Osborn

https://warriormaven.com/news/air/how-dangerous-is-russia-s-6th-gen-mig-41-interceptor-fighter-jet

クリス・オズボーンは軍事近代化センター「ウォリアー・メイヴン」の代表を務める。国防総省では陸軍調達・兵站・技術担当次官補室において高度な専門知識を持つ専門家として勤務した経歴を持つ。オズボーンは全国ネットのテレビ局でアンカーおよびオンエア軍事専門家としても活動した。フォックスニュース、MSNBC、ミリタリーチャンネル、ヒストリーチャンネルに軍事専門家ゲストとして出演している。またコロンビア大学で比較文学の修士号を取得している。


2025年9月29日月曜日

空母アドミラル・クズネツォフの悲惨な行く末 ― ロシアに空母が不要な理由とは(National Security Journal)

 


さらばアドミラル・クズネツォフ:ロシアには空母が不要だった(National Security Journal)

Admiral Kuznetsov

アドミラル・クズネツォフ。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ。

要点と要約 – アドミラル・クズネツォフの不安定な状況は、戦略的な意味合いを持っている。ロシアには空母が不要なのだ。北極圏および太平洋における「要塞」としての任務(海上拒否、抑止力、北極海航路の安全確保)には、艦載機より潜水艦、陸上航空機、長距離ミサイルの方が適している。

-現代の22350フリゲート艦、沿岸バスティオン砲台、ヤセン級/ボレイ級潜水艦は、より安価で生存性の高い火力を提供する。一方、制裁と造船所の制限により空母の再建は非現実的である。


-航空戦力不足(CATOBAR戦闘機や固定翼AEW機なし)と黒海での教訓——安価なセンサーとスマート弾薬が大艦艇を痛撃する——がリスクを浮き彫りにする。

-代わりに静粛性潜水艦、22350型、弾薬庫、ISR/対潜戦に資金を投入せよ。クズネツォフの退役は衰退ではない。戦略は地図から始まり、予算で終わるという明快な現実だ。

ロシアの空母追求は終焉を迎えたようだ…

事故多発の空母アドミラル・クズネツォフは、7年に及ぶドックでの苦難(火災、沈没した浮きドック、クレーン崩壊、入札期限の度重なる遅延)を経て、ついに退役する見通しだ。

象徴性は明白だが、戦略的要点は厳しい:ロシアには空母など不要だ。地理的制約、戦略思想、産業基盤の限界、現代海戦の特性が相まって、大型空母は威信の浪費に過ぎず、ロシアの利益を実際に守る能力そのものを蝕むだろう。

まず地図を見よ。ロシア艦隊は世界の海を駆け巡り遠方の海上交通路(SLOC)を防衛したり遠征軍を護衛したりしない。北極圏と極東の要塞化した拠点から外へ攻め出すのだ。任務は海上封鎖、戦略的抑止、北方航路の保護であって、艦載機による兵力投射ではない。


失われた発電機

こうした戦域では、陸上基地航空機・潜水艦・長距離ミサイルが周辺海域を戦闘圏に変える。そこで重要なのは、移動飛行場からの戦闘機展開能力ではなく、火力密度・センサー到達距離・生存性である。空母は威信と巨大な標的をもたらすが、現地の戦力均衡を変えるものではない。

兵器構成も同様の物語を語る。現代のロシア水上戦闘艦艇——特に22350級フリゲート——はカリブルオニクスツィルコンミサイル用の汎用垂直発射装置を搭載する。小型コルベットは陸上攻撃・対艦一斉射撃で格上の戦力を発揮し、バスティオン沿岸砲台は超音速対艦ミサイルで主要航路を封鎖する。北方艦隊部隊は自国海域で極超音速ミサイル射撃すら実証済みだ。一斉射撃・分散配置・弾薬庫容量が支配的な戦場では、限られたルーブルを飛行甲板や脆弱な航空部隊ではなく、発射管と再装填に投じる方が抑止力向上に効果的だ。

潜水艦は中核であり続ける。ボレイA級弾道ミサイル潜水艦が核抑止力を担い、ヤセンM級攻撃型潜水艦が海上・陸上を問わずステルス性と生存性を兼ね備えた攻撃手段を提供する。

クレムリンが新たにボレイA級を就役させ、ヤセンM級の量産継続を公に強調したことは、そのトレードオフを明示している。空母計画に投じられるルーブルは、深層弾薬庫を備えた静粛性の高い艦艇——まさにNATO海軍にコストを課し、ノルウェー海や北太平洋における米国の作戦計画を複雑化するプラットフォーム——への投資を削ることを意味する。ロシアは実戦艦隊に注力するか、写真映えする艦艇を追いかけるかの二者択一を迫られている。両立は不可能だ。

産業基盤の現実が戦略的判断を後押しする。制裁により推進システム・電子機器・資金調達・保険へのアクセスが制限され、熟練労働力は有限である。造船所は既にフリゲート艦の納期遵守に苦戦している。

現代的な空母——あるいは信頼性のある中型甲板艦——の設計・動力・防護には、ロシアが現在大規模に保有していないサプライチェーンとシステム統合能力が求められる。クズネツォフ級の改修劇は不運な単発事例ではない。

これは衰退した産業基盤が精巧なプラットフォームと衝突し、公的な恥辱を招くという警告だった。戦略は選択の芸術であり、産業政策はその会計士である。両者は空母から遠ざかる方向を指し示している。

今後の展開は?

小型航空艦艇はどうだろうか?モスクワは既に、限定的な遠征作戦ニーズに向けたより合理的な「航空軽装備」路線を選択している:ヘリコプター強襲艦である。これは閉鎖海域における垂直攻撃、対潜戦、機雷対策、災害対応のため、回転翼機や無人システムを搭載可能だ。

このニッチは理にかなっている。カタパルトや新型固定翼戦闘機を必要とせず、米や中国の空母計画のような複雑な訓練・維持管理体制も不要だ。そして決定的に重要なのは、ロシアの主要戦域で重要な潜水艦・ミサイル・沿岸防衛への投資を食い荒らさない点である。

黒海での戦争が教訓を突きつける。地対艦ミサイルと群れをなす水上ドローンを装備した地域敵対勢力が、古典的な意味での制海権争いを一切行わずに、大規模な艦隊を分散・防御強化・適応を余儀なくさせた。

そのような環境下では、遅く高価な空母艦体は支配の象徴ではなく、破滅への招待状に過ぎない。安価なセンサーとスマート弾薬の帝国は、いかなる海軍が鋼鉄を増強するよりも速く拡大している。大型甲板艦が真価を発揮するのは、脅威圏を支配できる領域である。ロシアはNATOの航空・ミサイルネットワーク近傍の脅威圏を支配できず、今後も不可能だ。

戦闘機と航空機はどうなるのか?

航空団の問題も存在する。クズネツォフのSTOBAR方式は発射重量を制限し、固定翼早期警戒機の運用を不可能にした。他国がE-2を運用する領域で、同艦隊はヘリコプターに依存している。

Su-33は老朽化が進み、MiG-29Kの購入数は控えめで、カタパルト対応の艦載戦闘機はおろか、固定翼AEW機を短期間で導入する現実的な道筋は存在しない。本格的な空母航空団を再構築するには、艦艇だけでなく数十年にわたる産業基盤と訓練体制が必要だ。戦時予算と制裁下では、それは幻想に過ぎない。

威信論は今後も続くだろう。大国には空母が不可欠だ、中国は建造中だ、ロシアは国連安保理常任理事国でありながら唯一空母計画のない国であってはならない——といった主張だ。しかし戦略はコスプレではない。

中国の空母は、膨大な貿易ルートを保護し複数戦域に存在感を投射する海洋産業国家を支えている。

ロシアの比較優位性は異なる:隠蔽からの待ち伏せ、分散拠点からの火力、水中生存性と長距離打撃による抑止、安全地帯から運用する陸上航空戦力。ロシア海軍は米海軍を傷つけるために米海軍に似る必要はない。接近の代償を法外に高くすること――そして既にその手段を保有している。

ロシアが空母に別れを告げる時

ここでクズネツォフの話に戻る。同艦との別れは単なる財政・産業的現実の受け入れではなく、より明確な海軍のアイデンティティを暗黙裡に認める行為だ。

仮にモスクワが限られた資金と人材を、追加のヤセン級M型原子力潜水艦、22350型フリゲート艦の量産加速、ミサイル搭載量の増強、北極圏・太平洋における統合沿岸防衛、近代化された海上哨戒・対潜戦・無人航空機システムに振り向けるとしよう。

その場合、艦隊の教義——すなわち「阻止し、抑止し、時に奇襲する」という実戦構想——が達成される。その戦力は宣伝ポスターでは華やかに映らない。ロシアの地理的制約と、低コストセンサー時代の現実的応用を体現するものとなるだろう。

選択は明快だが厳しい。ロシアが戦わなければならない場所、つまり自国の近く、同盟国の ISR の傘の下、極超音速の砲火と群がるドローンのなかで戦うことができる海軍を構築するか、あるいは過ぎ去った時代の象徴となる浮遊物体を構築するか、そのどちらかである。

分散、ステルス、弾薬庫規模を重視する世界において、ロシアの最後の空母は衰退の前兆ではない。それは混乱の遺物であり、戦略は地図から始まり、予算で終わることを思い出させる上で主に有用である。■



Military Hardware: Tanks, Bombers, Submarines and More

Goodbye, Admiral Kuznetsov: Why Russia Doesn’t Need Aircraft Carriers

By

Andrew Latham

https://nationalsecurityjournal.org/goodbye-admiral-kuznetsov-why-russia-doesnt-need-aircraft-carriers/

著者について:アンドルー・レイサム博士

アンドルー・レイサムは、平和外交研究所のシニア・ワシントン・フェロー、ディフェンス・プライオリティの非居住フェロー、ミネソタ州セントポールにあるマカレスター大学の国際関係学および政治理論の教授を務めています。X: @aakatham で彼の投稿をフォローすることができます。彼は、ナショナル・セキュリティ・ジャーナルに毎日コラムを寄稿しています。


2022年1月13日木曜日

主張 ウクライナ問題をロシアの視点で見るとこうなる。NATO拡大がロシアの最大の懸念だ。

 

ウクライナをめぐりホワイトハウスが協議しているが、この問題はロシア側の視点と歴史から見る必要があると筆者はモスクワで何度も聞かされた。

立モスクワ国際関係研究所の招へいで2021年12月13日の週にモスクワを訪れ、米国が体験したヴィエトナム、イラク、アフガニスタンでの各戦役について、さらにジョー・バイデン政権の国防予算についてモスクワ軍備管理会議及びロシア政治学会で講演した。訪問のタイミングで米ロ関係が怪しくなっていた。ロシアがウクライナ国境地帯に数万名規模の部隊を集結させ、状況はロシアがクリミアを併合した2014年に似ていた。また12月はソ連邦崩壊30周年とも重なった。このため、各会合でウクライナ情勢が公式非公式問わず重くのしかかっていたのは当然といえよう。

 

筆者のプレゼンテーションはヴィエトナム、イラク、アフガニスタンで米国が成功を収められなかった理由に触れ、米軍の優位性があっても目指す目標に世論の支持を勝ち取れなかったと説明し、国内で支持を得られなかったことが後を引き、結果として大きな財務並びに人命の負担となった点に触れた。

 

ただしモスクワ滞在中にわかったのは2014年のようにウクライナ軍がロシア軍に敗退する可能性が低いことだ。ウクライナは緒戦で敗退しても戦闘意欲を失うことはない。この点についてニューヨークタイムズ報道ではウクライナイが民間人に訓練を開始しており、装備品を提供しロシア侵攻の場合に抵抗運動を開始する構えとある。ロシアの視点で見るとウクライナ侵攻が米国が体験したヴィエトナム、イラク、アフガニスタンと同様の状況になるのを懸念しているようだ。

 

モスクワで話を聞くとロシア国民でウクライナ侵攻を支持する声は少数派だとわかった。特に結果が出ないまま長期化するのを危惧している。

 

筆者は別の機会にロシア側専門家の反対意見にも触れた。ロシア側は米国が中国に焦点を当てすぎており、東欧でのロシア軍事活動のエスカレーションに対応する意欲も体制もできていないのではないかとみていた。専門家の一人がこう言っていた。米国の安全保障戦略は三つのCに振り回されている。チャイナ、コロナウィルス、気候変動のCだという。ただ筆者は米国の安全保障でこう説明した。民主党とバイデン政権は中国を重視しつつもその他の脅威を放置していない。事実、バイデン政権の国防支出はインフレを考慮するとトランプ政権を上回っている。またレーガン政権時の国防整備の最高水準を超えそうで、中国の3倍、ロシアの10倍以上の国防支出となる。

 

幸いにも筆者の訪ロ中にロシアはウクライナ侵攻に踏み切らなかった。プーチン=バイデンがウクライナをめぐり50分にわたる意見交換を行った。ロシア、米国は1月に直接会談しさらにこの問題を協議することで合意した。

 

この問題については歴史の面から、並びにロシアの視点でとらえる必要があると訪ロで痛感した。

 

まず、ロシアでは旧ソ連指導部がドイツ再統一を承認した際に米国からNATOに東欧各国の加盟はないと保証を受けたと主張している。実際に米政府関係者はNATOがロシア近くまで拡大することはないと確約しているようだ。旧ソ連最後の米大使だったジャック・マトロックはミハイル・ゴルバチョフに文書と口頭でドイツが再統一後にNATOに残ればNATOは東に延びることはないと確約していた。当時安全保障補佐官だったロバート・ゲイツ(後に国防長官になった)はNATOの東方拡大についてゴルバチョフ等への説明と違うと批判していた。

 

さらに旧ソ連指導部に確約したのは米政府関係者だけではなかった。ドイツ、フランス、英国の指導層も同じだった。この視点で支えとなるのが封じ込め政策の父ジョージ・ケナン含むかつて政府に奉職した専門家集団だ。ケナンは1997年に「NATO拡大は冷戦時の米国政策で決定的な過ちとなる。この決断はロシア外交を望ましくない方向へ進ませる結果となる」と批判していた。同じ意見は各界50名の専門家から出ており、ポール・ニッツェ、ジャック・マトロックはビル・クリントン大統領に公開書簡を送り、NATO拡大は歴史的な愚策と指摘していた。

 

にもかかわらず1999年、クリントンはNATOに新規加盟三か国を加えた。旧ワルシャワ条約機構のポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーだ。2004年にはさらに7カ国が加わった。うち三か国はバルト諸国で旧ソ連の一部だった。2008年にジョージ・W・ブッシュ大統領がジョージア、ウクライナの加盟を持ち出し、両国も旧ソ連の一部でロシアと国境でつながっている。プーチンはこれに対しジョージアを2008年、2014年と続けて侵攻し、クリミアをウクライナから奪いロシアに併合する反応を示した。

 

 

二番目に、ロシア側から聞かされたのはウクライナ=ロシア関係の理解が大事だという点だ。1922年から冷戦終結に至るまでウクライナはソ連邦の伊津部であった。実際にウクライナはソ連邦立上げの原メンバーでもある。当時はウクライナソビエト社会主義共和国と呼称され、ソ連邦共産党が統治していたい。公式言語はロシア語で、旧ソ連の指導者レオニド・ブレジネフ、ニキータ・フルシチョフの妻の生誕地でもある。

 

三番目に、プーチンが率いる今日のロシアはソ連時代より経済面で好転していることに留意する必要がある。訪ロ中にもモスクワが現在のパリに似てきた、80年代90年代に訪問した当時よりはるかに良好になっているのを実感した。

 

四番目に、米国としてはウクライナ、ジョージア両国のNATO加盟を阻止する立場にないが、両国加盟には28加盟国の賛同が必要で現時点で承認を得られる状態にない。バイデンは少なくともここ数年で実現する状況ではないとロシアに知らせるべきだ。

 

五番目に、ロシアは米国から大国にふさわしい取り扱いを受けていないと感じているようだ。ロシア側政治学者はフランシス・フクヤマがソ連崩壊で冷戦が終わったと宣言したのを冷笑し、逆に最近亡くなったロシア学者スティーブン・コーヘンがロシアを再興させたプーチンを評価しているのを引用していた。

 

バイデン政権にはロシアとこうした視点を忘れず、二国間協議に臨んでもらいたい。ヨーロッパの運命がかかっている。■

 

How Russia Views the Ukraine Crisis | The National Interest

by Lawrence J. Korb 

January 7, 2022  Topic: Russia  Region: Europe  

 

筆者ローレンス・コーブはアメリカ進歩研究所の主任研究員。レーガン政権で国防次官補を務めた。

 

Image: Reuters.