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2021年5月3日月曜日

中国との対決に備え、装甲車両部隊の整備運用を再構築しつつある陸上自衛隊だが、輸送力確保など他部隊との協調連携が不足したまま突っ走っていないか検証が必要だ。

 


Japan Self-Defense Force tank armored vehicle

10式戦車(左)、90式戦車(右)と16式機動戦闘車両 January 12, 2020. KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images

 

ここがポイント

  • 日本は冷戦時にソ連に対抗すべく装甲部隊を大規模整備した

  • 中国の台頭で新しい課題が生まれ、日本は装甲車両を一新しつつ使用方法を変えようとしている


二次大戦期の日本装甲部隊はわずかな例を除き、連合軍戦車部隊の数量に圧倒され勝ち目は薄かった。


この経験とソ連の脅威から戦後の日本は戦車開発を進めた。1990年代には高性能装甲部隊を大規模整備するに至った。


だが、自衛隊は軌道修正を迫られている。


中国の脅威の台頭により陸上自衛隊は装甲車両、火砲集中投入を前提とする北部展開方針から迅速に南西部に展開可能な機動性部隊の必要に直面している。


このため、輸送力整備、新型装甲車両の開発、さらに陸上自衛隊戦車部隊そのものが変わろうとしている。


ソ連への守りだった


Japan Japanese Type 61 tank

61式戦車 November 18, 1985. US Defense Department


両大戦間の日本の戦車部隊は近代的かつ革新的な存在だった。だがドイツ及び連合国が工業力にものを言わせ新型戦車の数々を第二次大戦中に登場させ性能向上させたのに対し、日本の限られた工業力では対応できなかった。


さらに第二次大戦の日本軍の戦略は南方侵攻で、大規模戦車戦は想定されず、海軍や航空機の整備を優先した。


戦後の日本は西側技術や設計にアクセスが許され、戦車の重要性を改めて認識し、ソ連侵攻に備え高性能装甲部隊の整備に注力した。


冷戦時の日本戦車部隊は61式、74式の両主力戦車が中心で90mm砲105mm砲を各搭載した。当時としては高性能車両で大量整備した。


1990年に90式戦車が導入され、50トンの車体に120mm砲を搭載し、あらゆる点で第一線級戦車となった。モジュラー式複合材装甲、レーザー測距、火器管制コンピュータ、熱探知暗視機能、自動装てん装置を搭載し、ドイツのレパード2A4に匹敵する戦車となった。


当時の日本はソ連侵攻の主戦場を北海道と想定し、戦車多数を配備した。1976年時点で陸上自衛隊は戦車1,200両、火砲1,000門の大部分を北海道に常駐させていた。


軽量かつ高機動の追求


Japan Self-Defense Force Type 74 tank

74式主力戦車 August 24, 2017. Tomohiro Ohsumi/Getty Images


冷戦終結でロシア侵攻の脅威は事実上消滅し、自衛隊は戦車台数の削減を決め、1995年の900両が現在は570両程に減った。さらに300両まで削減する。


90式は61式。74式の更改用に導入され、他方で新型戦車10式、16式機動戦闘車両が開発された。


このうち2012年に導入された10式は74式と交代し、90式を補完する存在だ。


最大重量48トンの10式は90式より軽量で取り回しが容易で、車体サイズのため90式が北海道及び富士山周辺でのみ運用が制限されるのに対し、10式は関係法規に合致し全国で運用可能となった。



10式の装甲はモジュラー式セラミック複合材とナノ結晶鋼材を採用している。モジュラーは追加、取り外しが可能でミッションや損傷程度に応じ対応できる。主砲は120mm砲で自動装てん方式だ。10式で注目を浴びるが電子装備機能で、高性能指揮統制機能で近辺の自衛隊部隊との交信・情報共有が可能となった。


これに対し16式は10式戦車導入後に登場した。車輪走行方式だが、戦車砲塔を搭載し、軽戦車の機能があるため、近接交戦、反抗作戦、地上部隊への直接火力支援に投入できる。


105mmライフル砲が主装備で車重26トンの16式は日本各地に移動可能で航空自衛隊輸送機で輸送できる。


南西部脅威への対応


Japan Self-Defense Force Type 16 Maneuver Combat Vehicle

16式の実弾射撃 May 23, 2020. CHARLY TRIBALLEAU/POOL/AFP via Getty Images


軽戦車の導入は一見理に反するが、今後の自衛隊の戦力構造に適した装備で、日本南西部で中国の脅威に対応する。


「冷戦が過去となり今までと違う脅威が現れる中、日本は国防の考え方を変え、真の脅威への対応を追求している」と日本の安全保障に詳しいRANDコーポレーションのジェフリー・ホーマンが語る。


「成果がここ10年、15年で具体化し、中国の脅威を意識している」


脅威は空と海が主な舞台だが、日本が実効支配中の尖閣諸島を中国が狙っている。日本指導部は中国の尖閣侵攻はあっても本土侵攻の可能性は低いとみている。


「中国が日本本土に揚陸作戦を展開するとは見ておらず、重装備装甲部隊の整備は不要と考えている」「かわりに南西部島しょ部分の環境に適した形で陸上自衛隊を投入し戦闘対応させる必要がある」(ホーマン)



迅速展開能力が必要だが


中国が大型島しょ部を攻撃すれば戦車部隊が重要装備となる。このため陸上自衛隊は迅速展開部隊を整備し、揚陸作戦に特化した部隊も創設した。


同時に輸送が容易な装甲車両、火砲を取得して、対艦対空攻撃能力を重視する一方、V-22オスプレイを隊員輸送に役立てる。


とはいえ陸自には未解決の課題もある。海上輸送力の欠如だ。主な脅威が南西部にあるにもかかわらず、迅速展開部隊の半数は今も北海道にある。


16式は空輸可能だが、90式10式は海上輸送が必要だ。外縁部への展開では隊員・装備の大半は海上輸送で対応せざるを得ない。


この任務に対応するのが海上自衛隊のおおすみ級戦車揚陸艦三隻で、2024年までに新型揚陸艦3隻を導入する予定だが、それでも輸送能力は必要規模より低く、有事に投入可能な艦艇が著しく不足する危険な状態だ。


「即応対応部隊を他軍の空輸、海上輸送能力をよく考慮せず整備してしまった点に問題がある」とホーマンは指摘する。■


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Japan Rethinks Use of Tanks to Prepare for Potential Clash With China

Benjamin Brimelow 1 hour ago


2017年7月31日月曜日

★★米陸軍の考える次期主力戦車の姿


米陸軍は将来の戦闘を市街地戦が中心と見ており、取り回しの良い小型戦車を望んでいるようですが、結局あれもこれもと装備性能を追加すると重量級車両にあなってしまうのですね。エイブラムズが70トン超ですか、日本の10式は44トンということですから相当の差がありますね。艦艇や航空機と同様に今後の装備では発電容量がカギになるということでしょうか。

Vitaly V. Kuzmin - http://www.vitalykuzmin.net/?q=node/604

Milley’s Future Tank: Railguns, Robotics & Ultra-Light Armor ミリ―参謀総長の考える将来の戦車はレイルガン、ロボット工学、超軽量装甲を搭載


上写真 ロシアの新型T-14アルマータ戦車。モスクワの軍事パレードで。
NATIONAL PRESS CLUB: 戦車は時代遅れになるどころかこれからも必要だ。米国は1980年代からM1エイブラムズを稼働中だがどんな戦車が必要で、どれだけの時間の猶予がるのか。本日当地で陸軍参謀総長段階的改良でなく一気に技術革新を狙うと述べているが、新型戦車開発は長時間がかかると言いたいのだろう。
Sydney J. Freedberg Jr. photoマーク・ミリー大将
  1. 「機械化車両もかつての騎兵隊や恐竜と同じ道をたどるのか。そうは思わない。ただし自信が持てないのでこの問いを続ける」
  2. 「現在の戦車は堅牢かつ優秀だ」とM1を評した。「だが機械科歩兵部隊や戦車の基本となる新型地上車両プラットフォームが必要だ。今後25年ほどは各種車両に相当の役目が期待される」
  3. 「どんな技術が導入されるのか」とミリー大将は続けた。「まずアクティブ防御装備として電子ジャマー装置やミニミサイルで対戦車兵器を遮る。乗員数も自動砲塔の採用で減らす」となるとロシアの新型T-14アルマータと同じ発想だ。ミリー大将は米陸軍は同戦車をくわしく研究中という。「技術研究の中心は素材で、装甲そのものだ。大幅軽量化しても同じ装甲性能を実現する素材があれば画期的な技術突破口になる」
http://www.raytheon.com/capabilities/products/aps/レイセオンのQuick Kill アクティブ防御技術
  1. 「研究開発課題は他にもたくさんある」とミリー大将は述べた。たしかにそうだが陸軍や業界関係者と話すと「突破口」になる技術革新があと少しで実現すると見る向きは皆無だ。装甲材料で中程度の改良は研究中だが装甲重量を画期的に軽減する根本的な革新は見あたらない。
  2. すべての車両で重量が増える傾向だ。M1戦車が登場した1980年の重量は60トンで当時のソ連対戦車砲のほとんどに十分だったが、その後70トン近くに増えている。歩兵戦闘車両M2ブラッドレイは25トンだったが今や40トンで、BAEからは45トン型提案もある。ブラッドレイ後継車両の地上戦闘車両構想は84トンまで大型化したが予算不足の陸軍がキャンセルした。
M1エイブラムス戦車、イラクにて
  1. 陸軍は軽量車両に目を向けているが、記者が話した専門家は軽装甲を信用していない。かわりに以前なら異端といわれたトレードオフを検討している。たとえば空挺部隊用に空中投下可能な軽量戦車、あるいはブラッドレイ後継車両に現行の半分の歩兵搭載能力を与えることだ。
  2. 小型化すれば軽量化も実現し狭い市街地での取り回し性能も手に入る。ミリー大将含む陸軍上層部は将来の戦闘は市街地が舞台にすることが増えると見ているのでこれは重要な性能になる。モスルは究極の将来の小規模戦闘の姿と受け止められた。2004年のファルージャ、2008年のサドルシティでは戦車で奪回に成功したが歩兵部隊と特殊部隊との密接な連携がカギだったとミリー大将は述べた。
Army photoレーザーを搭載したストライカー。5キロワットで無人機を撃墜するのが目的だが大出力なら車両を走行不能にできる
  1. ミリー参謀総長は軽量防御を最上位の優先事項に上げるが、同時に二つの技術で装甲車両を革命的に変えるとする。一つがレイルガン含む電動兵器で電磁石で固体金属のかたまりを超音速に加速する。もう一つはレーザーで光速でエネルギーを放射する。「運動エネルギーに火薬を使う弾薬は5世紀にわたり使われている」とミリーは指摘するが、火力に別の選択肢も着実に実現しつつある。
ロッキードのATHENAレーザーで走行不能になった車両
  1. 今のところレーザー、レイルガンはともに防御兵器としての開発が主で無人機や巡航ミサイルを迅速かつ安価に撃墜する方法として注目されている。空軍特殊作戦軍団は150キロワット級レーザー砲をAC-130ガンシップに搭載し音をたてずに敵地上の車両の重要部品を焼きつぶそうとしている。今は大型機にしか搭載できない攻撃用レーザーが将来の大型地上車両に搭載される日が遠いとは限らない。
  2. もう一つの画期的な技術革新としてミリー大将があげるのが「ロボット工学の革命」だ。地上は空中や海より航行制御が困難とミリー大将は指摘したうえで、地上ロボットの登場は無人機や無人艇より遅れるが、「ゆくゆくは広範囲にロボットの導入が実現するはず」と述べた。小型で消耗品扱いの偵察ロボットが中心で、センサーまたは兵器を積み、歩兵隊の先陣を進む。ミリーは未来の戦車は運用人員を減らすため自動化を大幅に採用すると見るが選択的に完全無人自律運用にすることも視野に入るという。
  3. 「今後開発する各車両では無人有人運用の切り替えが当然となり指揮官はスイッチ一つでロボット車両にすることが可能となるでしょう」
  4. 将来の戦闘ロボット開発にはまだ多くの検討が必要だ。人工知能で戦車運用を任せられるほど発達すれば、戦闘はAIにさせて乗員は安全な本国に残れば生命の危険はなくなる。戦車内部に人間が不要となれはAIに目標を捕捉させて攻撃を任せられるのか。ペンタゴンの現在の方針では「絶対不可」であるが、ロボットが人間から「発射」命令(あるいは思考)を待つ間にそこまで慎重な態度を取らない敵勢力が先に攻撃するかもしれない。陸軍には検討すべき課題が山積しているが、国家の検討課題でもある。■