2020年7月28日火曜日

強襲揚陸艦が小型空母になる----いずも級改装は正しい方向のようだ

国がこれまでにない形の強襲揚陸艦の建造に向かいそうだ。電磁カタパルトで高性能固定翼機を運用し、米F-35Bへ対抗する。

証拠の裏付けもある観測記事として中国共産党の環球時報が伝えている。新型艦は076型とされ、供用中の075型に続く。中国は075型二号艦を建造中で揚陸作戦能力を拡充中だ。

「中国軍の装備品調達ウェブサイト weain.mil.cn の調達要求公告から人民解放軍海軍(PLAN)が新型強襲揚陸艦の建造に向かいそうだとフォーブスが報じている」(環球時報)

米フォード級空母に採用された電磁カタパルトを使い、固定翼機運用が可能な新型強襲揚陸艦になるのか。

環球時報は強襲揚陸艦でF-35Bを運用する米国を意識している。新しい脅威環境で強襲揚陸艦は小型かつ機動性の高い空母として認識されるようになっており、航空攻撃兵力を投射しつつ上陸作戦を展開する装備の位置づけになった。

米強襲揚陸作戦は新しい脅威環境に対応する形へ明確に軌道修正されている。ワスプ級アメリカ級の強襲揚陸艦にオスプレイやF-35Bの搭載を進める米海軍は強襲揚陸艦から攻撃偵察型の小型無人装備を運用する作戦を開発中だ。この構想で大型艦は指揮統制任務を受け持ち、揚陸作戦は安全な距離をとった地点で展開する。無人舟艇が敵の沿岸で脆弱な地点をあぶりだす、あるいは直接攻撃を加える。また揚陸艦にレーザー他攻撃手段の搭載も進めている。

無人舟艇やF-35はデータ中継にも投入し、水平線越しの敵識別に使える。新技術高性能技術を遠距離で分散投入することで脆弱性を下げる狙いがある。艦艇の密集配置が敵攻撃に脆弱になるのは当然だ。

無人装備の利用構想が中国にもあるのは驚くにあたらない。環球時報は中国の攻撃型無人機GJ-11と同様の装備が076型に搭載されると伝えている。

小型高軌道空母型艦艇は空母を狙う対艦ミサイルで射程が延長傾向にあることにも対応できそうだ。中国の目指す戦略は米海軍の機動修正と方向が同じだ。

「076型は最新鋭の中型空母に近づくだろう」と環球時報はまとめている。■

この記事は以下から再構成したものです

July 25, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: Amphibious AssaultChinaChinese NavyF-35BMilitaryDefense



Kris Osborn is the new Defense Editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University. This article first appeared earlier this year.

2020年7月27日月曜日

歴史に残る機体(27)ダグラスA-3スカイウォーリアー(ホエール)

歴史に残る機体27
1972年5月10日、ジェット時代でも最も熾烈な空戦がハノイ、ハイフォン上空で展開した。海軍のF-4Jファントム編隊とヴィエトナムのMiG編隊がミサイル攻撃の応酬を繰り広げる中、空には対空射撃とSA-2地対空ミサイルが猛烈な攻撃を展開した。

24時間で双方の十数機が撃墜された。リック・モーガン著の A-3 Skywarrior Units of the Vietnam War がファントムパイロットのカート・ドセ大尉が遭遇した状況を次のように伝えている。

「SA-2ミサイルが下方から出現し、ブースターを分離していた。私は機首を押し下げ逆Gでミサイルの標的をチェックしたところSAM二発も方向を下げた。つまりこちらが標的だったのだ。7Gで機首を上げたが遅すぎた。こちらに狙いを定めマッハ2で向かってくる。こちらに命中するだけでなくボールペアリングの弾頭部がコックピットを貫通するだろう。
「ミサイルの小型カナード翼が最終調整するのが見え、死ぬ覚悟を決めたが、不発だった。最初のSA-2はキャノピーの5フィート下を通過し、二発目は機首の20フィート前だった。私は右にロールしSAM二発がまっすぐ飛翔するのを見ていた」

ドセは無事空母に帰還した。事後報告で無事生還できたのはEKA-3Bスカイウォリアー電子戦機のジャミングのおかげと知る。

ハノイ周辺にはファンソンミサイル誘導レーダー多数が配備され、EKA-3Bのシステム操作員はミサイル信管へ爆破信号を伝える周波数にジャミングをかけた。無事帰還できたドセは同機搭乗員に感謝の念を込め自分が残していたウォッカ半ケースを贈ったのだった。


ダグラスA-3スカイウォリアー別名「ホエール」は空母運用機材では最大の大きさを誇った。当初は核兵器による戦略爆撃任務を想定したが、これは長続きしなかった。A-3は各種型式が生まれ、米海軍への貢献を長く続けた。爆撃機として生まれ、給油機にもなったが今回は偵察任務や電子戦機材としての側面に触れる。

スカイウォリアーでは給油機として海軍各機をヴィエトナム上空で支援した貢献のほうが爆撃機任務より大きい。ヴィエトナムの地対空ミサイルに狙われる海軍パイロットに電子戦支援は喉から手が出るほど必要だった。そこで1967年に給油型34機をEKA-3B型に改装し、ALT-27ジャミング装置を機体下の「カヌー」に格納した。これで敵通信を妨害しヴィエトナム軍のMiG戦闘機への地上誘導を混乱させた。またALQ-92ジャミングポッドも機体の左右に追加し、長距離低帯域探知レーダーを無効にした。空中給油装置も残したためEKA-3Bの空虚重量は22トンになった。

両方の任務をこなす同機はVAQ-130、VAQ-131に配備され、分遣隊として空母各艦に散らばった。ジェット機へ給油し、沖合20マイルで周回コースを飛びながら、敵ミサイル誘導レーダーや通信を妨害し、敵の迎撃を無効にすることで攻撃部隊の任務を助けた。

ヴィエトナムでは1972年から1973年にかけ空母5隻がEKA-3B三個飛行隊を運用し1975年にEA-6Bブラウラーが登場するまで任務を続けた。

写真偵察機、アグレッサー、VIP輸送機として
ダグラスはRA-3B写真偵察型も30機製造した。高解像度カメラ12台を与圧爆弾倉に納め、写真撮影用にフラッシュ弾も投下した。VAP-61、VAP-62の各飛行隊に配備され、2,100マイルという長い航続距離を生かし地図作成任務にも投入された。

1966年からグアムに配備されたVAP-61に危険な夜間ミッションが命じられ、赤外線カメラでホーチミンルートを撮影することになった。北ヴィエトナムによる南ヴィエトナム内のヴィエトコン支援用のジャングル補給路だ。任務では1,500フィートの超低空飛行を時速400マイルの低速で行う必要があったが、途中の高い山を縫うように飛び短距離防空火器に撃墜されることもあった。

RA-3Bは爆弾破片を受け燃料が漏れた状態で帰還することもあった。戦闘中喪失は4機でうち2機が対空火砲によるものだ。パイロット自らで機体を黒スプレー塗装し、夜間カモフラージュ効果を狙うものが現れた。

RA-3Bの8機はその後ERA-3Bに改装されALT-27、ALT-40、ALQ-76のジャマーを搭載した。VAQ-33、VAQ-34に配備され電子アグレッサー機として、敵の電子戦機役で訓練に投入された。このミッションでいきなり緊張が高まったのは1972年12月のことで英軍ファントム機が空母アークロイヤルを発艦し、誤ってスパローミサイルをERA-3Bのエンジン一基に命中させた。弾頭が実弾でなかったのが不幸中の幸いだった。スカイウォリアーのパイロットは片発のままプエルトリコに何とか着陸させた。

ダグラスではTA-12B訓練機も12機製造し、爆撃訓練機となった。(別呼称A3D-2)訓練生12名が機内に座った。うち6機は高速VIP輸送機として内装を改装され、5-6名を乗せ、当時の海軍作戦部長のお気に入りの移動手段となった。ただし、海軍はVIP機材として議会や米空軍の目に触れないように制式名称のVA-3Bは一部にしかつけなかった。

電子スパイ機、レーダーハンターとして
供用期間が最長となったのが24機のEA-3Bで艦隊航空偵察飛行隊VQ-1(日本配備ののちグアムへ移動)とVQ-2(スペイン・ロタ)の機材だった。EKA-3Bと異なり、EA-3Bにジャミング機能はなく、電磁センサー(ESM)で敵の通信装備、センサー発信情報を識別し、位置を突き止めるのが任務だった。4名の専門員が加わり、乗員は7名になった。

VQ-1はヴィエトナム領空付近に進出し搭載センサーでヴィエトナムの防空体制を調べることがよくあった。

またA-4スカイホークと組んでSAM狩りもよくおこなった。スカイホークのパイロットだったゲアリー・エイロンが次のように当時の戦術を説明している。

「EA-3BはSA-2の標的追跡レーダーのパルス反復周波数に耳を傾けるのだった。うまく捕捉すればこちらはホエールの飛行方向に向けロックオンしシュライクを敵陣地に向け発射した」

長距離電子スパイ機としてEA-3は1980年代通じ共用されたが、高事故率の悪評があり、1987年の事故では乗員7名全員が死亡している。

1990年にVQ-2のEA-3二機がサウジアラビアのジェッダに展開した。1991年の湾岸戦争で、ホエールはイラクのレーダー、ミサイル陣地の標的捕捉に従事した。同年の9月27日に同機は米海軍での供用を終了し、S-3ヴァイキング多用途機が後を継いだ。

民間でスカイウォリアーはエイビオニクスのテスト機になり、さらに20年間飛行した。最後のフライトは2011年6月でペンサコーラの海軍航空博物館への移動飛行でスカイウォーリアー搭乗員協会が資金をねん出した。

核攻撃を想定し大型機となったA-3はジャミング用途や給油機として運用され、数百名の海軍航空要員の命を救い、同時に今日までつながる空中給油や電子戦の基礎を作ったのだった。■

この記事は以下を再構成したものです。空軍も同機をもとにB-66デストロイヤーとして供用していますね。いつかそのエピソードが出てくるでしょう。

But changed roles to a long-range electronic spy jet that remained in service throughout the 1980s.



Sébastien Roblin writes on the technical, historical and political aspects of international security and conflict for publications including The National Interest, NBC News, Forbes.com and War is Boring. He holds a Master’s degree from Georgetown University and served with the Peace Corps in China. You can follow his articles on Twitter. This article first appeared earlier this year.

Image: Wikipedia.

2020年7月26日日曜日

米陸軍野砲射程が70キロまで伸びる。戦闘の様相はこう変わる

陸軍の超長距離砲兵隊が敵の補給ラインを先に寸断し兵力集積地点にも砲撃を終えてから地上戦を展開すれば、敵部隊の排除は容易になるはずだ

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2011%3Anewsml_GM1E79S131I01&share=true

さらに、敵の届かない地点からスタンドオフ砲撃すれば米軍部隊は安全かつ自信を持って敵軍を駆逐できるのではないか。

との想定で陸軍は155mm砲を改良し有効射程を従来の二倍の70kmに延ばす。

この事業は射程延長砲撃戦力 Extended Range Cannon Artillery (ERCA)と呼ばれ、迅速な実現をめざし進められてきた。陸軍技術部門は威力を高め残存性を高くした新型155mm砲の開発試験に動いている。

ERCAは米陸軍次世代装備本部Army Futures Commandが試験中で、62km先への着弾を実現しながら必要な精度は維持した成果を上げている。最新のM777迫撃砲ではGPS誘導方式のエクスキャリバー砲弾を運用し、最大射程は30から40kmとなる。この射程を二倍に延ばすERCAでは戦術戦略両面の要求を実現する狙いがある。狙いは敵を「アウトレンジ」することだと陸軍関係者が語ってくれた。

従来型装備に対しERCAは30フィートの砲弾を発射し、遠距離を狙う。

「ERCAでは約30フィートで58口径砲弾を運用します。内部容積が増えているため推進剤や砲尾を変えられます。初速は砲身長に依存します」とジョン・ラファティ准将(長距離精密火力機能横断チーム長)が今年初めのTNI取材に答えていた。

ラファティ准将からは砲弾の背後に強力な推進剤があり、スライド式尾栓は長距離砲用に改良したとの説明もある。

「砲の後部は強靭な鉄鋼で封印します。火薬系列は電子点火方式で薬室は拡大しており、砲身を長くしたことで初速はずっと高くなります」

ERCAは既存155mm用砲弾も運用しながら、精密誘導技術を応用した新効果を上げる。陸軍はエクスキャリバー砲弾のメーカー、レイセオンと飛翔修正可能な砲弾の開発をめざしている。これが実現すれば発射後に修正を加え普通なら攻撃不可能な標的も狙える。この原理を「弾道変更技術」と呼び、橋の下に隠れる敵や山の背後にいる敵を攻撃する。

「勾配を隠れ蓑にする敵は砲兵隊には難題です。弾道の最終部分が逆勾配に邪魔されるからです。荒地での運用なら弾道を修正して攻撃効果を引き上げます。業界と協力しこうした狙いの実現をめざしています」(ラファティ准将)

長距離かつ強力な火砲となると特別な技術が必要となり長砲身から生まれる「爆風の過剰圧」を処理するとラファティ准将は説明してくれた。

「砲身の端にあるマズルブレーキは、煙と爆風を分散させ、爆風の過圧処理に役立ちます。砲弾が所定位置にロックされると、砲尾がロック位置に回転し、砲尾後端が密閉されます。 ERCAには、戦車砲のようなスライデド尾栓があります。上方にスライドする鋼鉄ブロックが発射管を密閉し、チャンバー圧力が生まれます。それ以外の場合は、抵抗が最少となるため、ラウンドは後方に出てきます。スライディングブロックのブリーチはより堅牢かつ大きな爆発に対応できます。チャンバー圧力が高いほど、爆発は大きくなります」■

この記事は以下を再構成したものです。火砲の構造に詳しい方に説明の不備をご指摘いただきたいです。

The U.S. Army's New Artillery Can Kill from 40 Miles Away

Meet the ERCA.

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University

2020年7月25日土曜日

海自を追い越したPLANへ日本はこう対抗する

国は海軍力整備を加速し、日本は追いつく側になった。

長年の友人であり共著者のトシ・ヨシハラが共産中国の戦略思考家・実行者が日本の海軍力をどう見ているかを紹介するレポートを発表した。見通しは暗い。人民解放軍海軍(PLAN)はここ十年で海上自衛隊(JMSDF)を多くの面で追い越した。日本は真剣に追いつく必要がある。米国も手助けすべきだ。

ヨシハラはレポートの題名を「太陽に挑む巨龍」とし、第二次大戦の太平洋方面を扱った軍事歴史家ロナルド・スペクターの「太陽に挑む鷲」を意識している。スペクターが80年前の日本の台頭に苦慮する米国を描いたのに対し今回のレポートは中国の台頭に苦慮する日本を描く。当時の日本帝国は太平洋の反対側の敵と対峙し、この敵は経済規模がはるかに大きく、日本の勢力圏周辺部のフィリピンに拠点を置いていた。今日の民主国家日本に立ちふさがるのは日本の経済規模を上回る規模に成長して10年が経過した敵だ。長距離精密攻撃手段が登場してきたこの時代に両国は狭い区域を占拠し合っている。

PLANとJMSDFを艦艇だけで比較すれば結論を誤る。1941年の日本帝国海軍の機動部隊は今日の空母打撃軍に相当し、悪天候の中で遠距離を航行し真珠湾攻撃を敢行した。燃料その他補給品のため機動部隊は攻撃が継続できなかった。中国から見れば真珠湾は横須賀あるいは佐世保だが容易に到達可能だ。PLAロケット軍は日本国内の基地や艦艇をボタン一つで攻撃できる。

日中の海軍力の比較では沿岸配備ミサイルや航空機も勘定に入れる必要がある。その結果、日本はさらに不利となる。

ヨシハラはPLANは驚くべき速度で成長してきた存在として描く。20年前の西側にはPLANを嘲笑する傾向が強く、中国が外洋海軍を構築するのに長期間が必要とみていた。そもそも実現不可能な構想とみる向きもあった。だが中国の海軍力整備が現実とわかると懐疑派は今度はPLANが対艦弾道ミサイルや最新鋭誘導ミサイル駆逐艦さらに空母を建造できるはずがないと言い始めた。だが中国技術陣はこうした見方をひとつずつ否定していった。

過去の海洋対決での挑戦者の実績を調べると、ゼロから域内海軍力の整備を始めると15年かかっているのがわかる。外洋海軍の整備が完了するにはさらに15年かかっている。合計30年だ。共産中国の指導部はPLANを世界に通用する兵力に育てる決定を25年前に下した。こうしてみると世界史の通例通りの展開だ。

歴史の教訓はそこまでだ。ヨシハラは一次資料を調査し、中国にある海洋紛争を宿命とみる見方が、戦略的目標を推進する過剰自信と表裏一体だと発見した。「中国の視点では、日中間の海軍対決は運命の定め」とし、同時にヨシハラは中国専門家に勝利の確信が共通し、PLAはJMSDFに楽勝すると考えていると見出した。

著作物に見られる宿命論と虚栄心をごっちゃにする見方が中国共産党上層部の考え方そのものだったらどうなるか。数量面で有利な状況に加え、エリートのみならず一般の風潮は強硬策に走りやすくなるだろう。PLAに有利な状況になれば、危機が来た、好機が来たと習金平が判断すれば攻撃命令をちゅうちょなく下すだろう。

中国著作物に別のパターンもある。中国の戦略思想家に興味深い側面があり、危機が現実になれば米国は日本への条約義務を回避するとみている。「中国が仮定する作戦勝利は米国の介入がないことが条件」(ヨシハラ)で、言い換えれば、中国戦略では将来の海上対決で中国が相手にするのは孤立無援の日本となる。一対一の対決に米国の海軍、海兵隊、空軍が不在なら中国の作戦展開や戦術は容易になる。

この仮定が誤りである可能性が高い。だが誤った仮定をもとに行動に入り失敗になった事例は多い。

戦力が願望に追いつきつつあるのが中国の現在だ。このためPLAは攻撃作戦に目が移りやすくなっている。「決定的交戦こそ中国の戦闘勝利を目指す戦略の核心部分」とヨシハラは記している。海上では従来の「積極防衛」戦略を攻撃的な姿勢に変えてきた。ただその場合、PLANは開戦時に弱い立場になる。そうなると中国は戦略的防御に身を任すしかない。強力な敵を粉砕し戦略的攻勢をかけ、その後の勝利に至るまでは。

ただし中国軍事戦略の立案者はずっと前から防御策から攻勢に移る策を想定してきた。2004年白書は攻撃的性格を示し、軍事課題への対応策を述べ、PLAに「制海権制空権双方」の獲得に向けた戦力の準備を命じていた。制海制空はマハン流の言い方だ。中国の海軍戦略家はアルフレッド・セイヤー・マハン大佐の「制海権」概念を忠実に信奉している。海洋支配を確立するためには敵部隊を敗退させるかほぼ永久に海域から追い出す必要がある。つまるところ勝利側が海空を支配し思いの通りにするのだ。

5年前に初めて発表された海洋戦略関連文書で中国は積極防衛は意味がないばかりか軍事行動の「本質」でもあると記していた。かなり強い表現だ。だがPLAとその前身の紅軍は日本との戦いや国内内戦を経て大規模だが不釣り合いな組織に肥大していたのが事実だ。PLAが緒戦で攻勢に出て勝利を収める可能性が高いと判断すれば、これまでの戦闘方法を捨てることが意味を持ってくる。習得するなら早いほうがいい。

ではどうしたらよいのか。事態はそこまで進んでいるがヨシハラは希望はあるとする。まず、地理条件が日本に有利だ。日本が第一列島線の北側で弧を描く形になっていることで西太平洋の交通を制することが可能だ。日本が海空地の兵力を適正配置すればPLAの艦船航空機を封じ込めつつ輸出入に依存する中国の生命線たる海上交通も止められる。日本は数の上で不利だが中国に相当の苦痛を与えることができる。この能力が抑止力になる。

次にPLANに中国の威信をかけることが習金平の誤りにつながる。習は海軍に中国の再興をめざす「中国の夢」を重ねる。それはよいとしても、中国の夢を追求して大打撃を受ければどうなるか。日本帝国海軍は清朝の北洋艦隊を日清戦争(1894-95年)で撃破した。手痛い歴史の記憶だが北洋艦隊の後継者たるPLAN水上艦部隊がこれも明治時代の後を引き継いだJMSDFに敗退したらどうなるか。

敗退あるいは勝利するとしても相当の代償を払えば習は国民の前で威信を失う。周辺国にも同様だ。中国の夢にハッピーエンドはなくなる。習は自身の政治生命を考え、行動を控えるだろう。日本が創造力あふれた戦略や軍事力整備に走れば習金平は一層不安に駆られるはずだ。

海上戦闘で日本は「損害を与える」ことを希求すべきだ。PLANを撃破し、中国指導部に恥辱を与えることこそ目標だ。

日本の指導層は米国指導部と協力し両国の戦力を一貫維持すべきだ。両国は海上防衛へ「自己投資」する姿を共産中国の指導部にも見せつけるべきだ。目標を共有するとの文書を公表するのはよいとしても両国の課題はほかにある。厳しい状況でも両国が一緒に対応すると各国に信じさせるのもそのひとつだ。たとえば、統合部隊を編成し、指揮命令系統を統合し、両国の人員が同じ艦艇や航空機を運用すれば有事でも相手国を放置はないと示せよう。

日米同盟の課題の一部は軍事力そのものである。ヨシハラが記しているが、中国専門家にはJMSDFはバランスが劣ると見る傾向があり、このため日本独力では戦力に限界があるとする。これはある程度正しい。創設期以来のJMSDFは日本に母港を置く第七艦隊に不足する戦力を補完してきた。水中戦や掃海任務が例だ。さらにJMSDFは米空母や揚陸艦の護衛部隊としての兵力編成になっている。日本が「大金を払って」自国艦艇を米海軍作戦の穴を埋める存在にしているとまで豪語する中国評論家もいる。揚陸戦、兵站補給、有効射程さらに空母の欠如を指摘する向きもある。

そこでヨシハラは以下提言する。「日本には戦力バランスの変更が必要だ」とし、「小型、安価かつ多数の装備」を海上展開すべきとする。たとえば重武装ミサイル艦艇をイージス駆逐艦や軽空母のような「優雅な装備」と並行整備する。バランスを変更し、隻数を増やした部隊構成なら中国が望む一対一の対決となっても弾力的運用できる。中国も手が出せなくなる。だがここでも日米の政府首脳に仕事が残る。戦火を開けば日米両国が中国軍を撃破する事態になると中国に理解させることだ。
日米両国に政治面で意見を異にする余裕はない。龍には太陽・鷲の連合軍が立ち向かうと知らせよう。

最後だが、急ぐ必要がある。今後は中国に有利な状況となりそうだ。日米両国がこの勢いを削ごうとすれば決意だけでは足りない。物資資源も投入すべきだ。これで有利な状況に戻せる。無為に時間を過ごす余裕はもうないのだ。■

この記事は以下は再構成したものです。


July 24, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Unfortunately, this has been the case for a while now.


James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific. The views voiced here are his alone.
This first appeared earlier in 2020 and is being reposted due to reader interest.

2020年7月24日金曜日

主張 技術だけで戦闘の構図は変えられない。有望な新技術はこれだ。

資金が潤沢で、未来志向の考え方の軍組織なら戦闘の様相を一変しそうな技術に投資する余裕があるが、当然とはいえ新技術すべてが期待通りの効果を上げるわけではない。
2018年4月、S・ラジャラトナム国際研究スクールの客員研究員リチャード・ビツィンガー Richard Bitzinger がエイシアタイムズ紙上に寄稿し、画期的軍事技術の概念そのものを批判した。驚異的なまでの威力の装備以外の要素のほうが影響力があるというのだ。例として2017年11月に筆者が発表した中国のJ-16Dが敵レーダーを妨害し防空網を突破する性能を有するとの記事を取り上げた。

ビツィンガーが筆者も同意できる点を取り上げていると素直に認める。軍事史を通じ、経験則や物資面の要素ならびに組織力が技術面での優位性を上回る効果を示している。

ただし筆者にJ-16Dを革新的兵器とする意図はない。戦闘の様相を一変させる装備とは性能であれ、効率であれ、過去からの延長線を一気に突破した存在のことであり、従来の装備品と一線を画する存在だ。

筆者はJ-16Dを中国がめざす米装備品の一部性能を模し特殊機能を実現する一例とみており、中国側のいうようなイージス艦への「悪夢」にはならないと自信を持って言える。ロシアのメディアもSu-24がUSSドナルド・クック上空を通過飛行した2014年に同じような言い方をしていた。ただし、中国がその方向に向け技術開発中であることに要注意だ。

ビツィンガーと大きく意見が異なるのは「戦闘の様相を一変させる」問題で、ビツィンガーはこれに大いに懐疑的で、技術そのもので軍事対決の構図が変わることはめったにない、技術に戦術、教義や物資面の支援があってこそだとする。

確かにそうだ。F-35ステルス戦闘機、V-2弾道ミサイルや戦闘員の即席爆発装置(IED)も突き詰めれば金属の塊に過ぎない。戦闘の様相を一変させるのは技術そのものではなく、技術要素を運用可能なシステムに洗練させ、性能を発揮できるよう配備することだ。例として対ゲリラ戦でIEDは画期的な兵器かもしれないが、F-35は違う。装備を有効に活用するための作戦構想がその上にある。

技術要素のフル活用には数年どころか数十年かかることがある。ただし、いったん活用できれば文字通り「構図を一変させる」効果が猛烈な速度で生まれる。

戦艦と空母が好例だ。20世紀初頭に強力な装甲を施し巨大な主砲を備えた戦艦は海軍力の究極の存在と思われていた。空母は1910年代に登場したが即席仕立てで搭載機材も布張り複葉機だった。空母が初めて実戦投入された1918年に7機が発進したが着艦できたのは1機のみだった。浮かぶ飛行場に脆弱な機体多数がちっぽけな爆弾を抱える構図は戦艦に真剣に挑戦する存在には映らず冷笑を買ったはずだ。

だがその後二十年で英国、日本、米国が空母運用の経験を積み、戦術を編み出し空母の性能をフル活用しはじめた。機材も速力、航続距離、ペイロードいずれも進歩した。日本が第二次大戦緒戦で戦艦巡洋戦艦五隻を空から攻撃し排除したが空母は一隻も沈めていない。航空機を搭載し、遠方の敵艦を壊滅させる能力を有する空母に対し戦艦はわずか15マイルしかその威力を発揮できなかった。

未来志向で潤沢な資源がある軍組織が画期的な効果を生みそうな装備に予算を投入しても、もちろんのことすべての技術が期待通りの効果を生むわけではない。発展を続け実用上の意味をうむものがあるが、あまりにもニッチな効果しかあげなかったり、低性能のままで終わる装備品もある。中にはさらに上の技術や対抗措置で簡単に圧倒されてる技術要素もある。米海軍は空母開発と並行し、航空機搭載可能な硬式飛行船二機も試験運用したが、ともに墜落してしまった。

「適正」技術開発に成功した軍組織がかならずしもその正しい稼働方法を編み出す保証はない。フランス、ドイツ、ソ連、英国の各国が機械化部隊を大戦間に編成した。しかし、ずっと後に整備を開始したドイツが偶然というべき下達で電撃戦戦術を唯一開発し、西欧を席巻したのは事実だ。英仏両国は戦車を無意味に分散させて戦力を制限してしまい、設計構想でも誤りがあった。ソ連は優秀性能の戦車を設計したがその稼働の前に革新的な発想を有する将官多数を処刑していた。

「新規手段」が旧来の秩序の中でしばしば冷遇され、新しい投入方法を試されて真価を発揮すること、あるいは必要に迫られ新しく活用されてきたことに注目すべきだ。軍も人間が作った組織であり事なかれ主義や特定の活用方法にのめりこむことがある一方で、新規の手法に抵抗を示す。パットンも戦車が騎兵部隊に代わる存在になると当初は見ていなかった。技術から生まれる劇的なほどの初期の優位性は短命に終わる。ただし戦場を一変させる奇襲効果が迅速かつ圧倒的な効果を生めば話は別だ。ドイツ機械化部隊がフランスを席巻した1940年の事例がここにあてはまる。

ビツィンガーは中国の中距離弾道ミサイルDF-21D「東風」を西側が不安視しているとする。同ミサイルの最終誘導シーカーは最大900マイル先を航行する艦艇を沈める性能があるといわれる。ビツィンガーは不安感はPLAがDF-21を真の「空母キラー」にするには標的補足以外に戦術や技術で課題が多数あることを失念していると考えている。懐疑的にさせているも一つの要素はDF-21Dが移動目標を相手に試射された事例が公式にはないことだ。

とはいえ空母に搭載された軍用機が急速に発展したように対艦弾道ミサイル技術が必要な支援戦術や支援にあたる情報収集監視偵察技術、監視機材、衛星、潜水艦とともに成熟度を高める可能性もある。東風が優秀な対艦兵器になれば、アジア太平洋全域が前例のない海上全体にわたる接近阻止バブルに覆われ、空母兵力は深刻な事態に直面するだろう。

そこで21世紀の戦闘の様相を一変しかねない技術で以下を選んでおきたい。

無人機の戦い:長期的にはジェット戦闘機、潜水艦、戦車は無人戦闘装備に発展しそうだ。短期的には低性能ながら多数の無人装備で高性能装備を飽和圧倒する事態が生まれそうだ。防御は攻撃より高価につくことが経験則でわかっているが、消耗品扱いの無人装備が将来の戦闘に投入される事態が発生してもおかしくない。カギを握るのは生産費用が十分に下がるかどうかだ。
サイバー・電子戦: 安全と思われたコンピュータネットワークが破られたとのニュースがない日はない。各国の軍部がコンピュータネットワーク依存を深めている。弾道ミサイル迎撃手段のような戦術レベルでも同様で、イージスミサイル防衛装備やF-35のセンサーやALIS補給ネットワークも同様だ。中国やロシアが通信活動やセンサー、データリンクを寸断し米軍活動を妨害するジャマーを開発し、電磁機能で送信元の探知と攻撃を狙っている。
ステルス機はどうか:ステルスジェット機は敵の領空に侵入し遠距離から探知されずに活動できると広く信じられ、21世紀の戦闘形式を形成したといわれる。たしかに、ステルスジェット機はテストを繰り返し効果を引き上げているが、最新の防空網や装備品を相手に性能を試したことはない。
ミサイルの拡散と領域拒否戦略: 巡航ミサイルの普及で海上艦艇には海面が危険な場になっている。GPS誘導のロケット弾で陸上部隊にも空爆同様の攻撃手段が手に入った。短距離から中距離の弾道ミサイルが従来型の戦略兵器に匹敵する威力を上げるようになり、航空優勢の維持が困難になっている。ここでも中国やロシアが空母から航空基地に至る軍事拠点を迅速かつ精密な攻撃の脅威にさらしている。

こうした技術の中には限定的効果しかないものや、これ以上の発展はのぞめないものもある。だがその他は未経験の効果を生み、既存ルールを破る効果もある。そう、技術自体が戦闘の様相を一変させることはない。だが強力な軍事力に組み込まれ、運用戦術や教義が生み出され、試行されれば実戦で威力を生む存在になる。歴史では迅速とはいかなくても戦闘の構図が変わった例がみられる。

組織内の維持勢力に抵抗し時代を先取りする思考の知恵を引き継けば戦闘の様相を一変させることは可能だ。これは健全かつ不可欠な動きだ。このため必要なのは競合相手を悪の存在だと警句をいいふらすことでも恐怖をあおることでもない。ただし、技術、経済、社会、軍組織の進化にあわせ既存の関係や「ルール」、さらにハードソフト両面の国力がどう変化するかを考え、先取りで企画計画していく必要がある。■

この記事は以下を再構成したものです。

What New Technologies Will Change Warfare Forever?

July 22, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWorldF-22V-2ChinaRussia



Sébastien Roblin holds a master’s degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared two years ago.