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2021年9月2日木曜日

アフガニスタンと南朝鮮は同じではない。北朝鮮は注目を集めようとミサイル、核実験を行うだろうが、メディア等は過剰反応すべきではない。地政学的視点が今だから必要だ。

  

 

 

Afghanistan North Korea

Image Credit: KCNA/DPRK State Media.

 

イデン政権はアフガニスタン撤収を正当化しているが、各地の米同盟国に懸念を生じさせた。南朝鮮も例外でない。ただし、アフガニスタンのように現地国民が支援しない戦闘に米国は今後一切関わらないと主張すれば米国は完全に孤立してしまう。

 

アフガニスタンが朝鮮半島に与える影響は少ないと言ってい良いが、カブールの悲惨なイメージからヒステリーに近い反応が出ているのは確かだ。だが朝鮮民主主義人民共和国がタリバン勝利から得る恩恵は無に等しいようだ。

 

ピョンヤンは米国の屈辱を宣伝戦に利用しようとした。その一環で北朝鮮は避難民を発生させたのは米国で、しかも劣悪な扱いをしていると非難した。世界が目のあたりにした混乱状況について北朝鮮は「社会混乱と流血の対立の産物」と評し、「『人権』『民主主義』の隠れ蓑で侵攻介入した行為」の結果とした。今回の避難民は米国が戦闘を集結させたことで発生したのであり、あらたに戦闘を展開したわけではない。ピョンヤンも米国撤収を批判できなかった。

 

さらに北朝鮮はタリバン他急進イスラム勢力を一回も支援していない。無神論に立つ北朝鮮は各集団が反米の立場でも取り扱いに苦慮するはずだ。北朝鮮はハマス、ヒズボラと接触があるが、こうした勢力はむしろイランやシリアの庇護の下にある。

 

タリバン勢力の増進で米国には困った事態になっても、北朝鮮にはモデルとなりえない。北朝鮮の公式見解は朝鮮半島全体を代表するのは同国であり、再統一を同国主体で進めるというものである。北は南内部の反政府勢力を支援しておらず、朝鮮戦争勃発前でも同様だった。タリバンを連想させる勢力が南朝鮮にあったが、金日成が最高指導者の座に上る過程でこれを排除した。

 

近い将来をにらむと米国がROKから兵力を撤退する可能性はない。米軍のプレゼンスはピョンヤンにとって常に標的であり、特に金正恩の妹金与日の発言が激しい。カブール陥落の前から同女史は「半島の平和的解決には米国が侵略部隊、装備品を南朝鮮から撤収させることが必須条件だ」と発言していた。

 

たしかに米軍撤収議論は長くあり、国力の点で南が大きく北をリードする状況となっており、米国の財務状況の悪化が背景にある。とはいえアフガニスタン情勢で急にこの話題が浮上したわけではない。ROKとアフガニスタンの違いは大きい。断続的に事件があるものの、半島情勢は平穏である。米韓両国は相互防衛条約でつながっており、南朝鮮政府を当初発足させたのは米国だが、ワシントンの政策道具の座はとっくの昔に卒業している。両国政府、国民のきずなは堅固であり、朝鮮半島の持つ戦略価値は中央アジアよりはるかに高い。

 

さらにアフガンの混乱はピョンヤンの外交地位を強めるものではない。同国との交渉は漂流し、バイデン政権はアフガニスタンの後処理に気を取られる中、その他同盟国の懸念の火消しに追われ、当面北朝鮮との交渉を行う余裕はない。「今は北朝鮮より高い優先度の課題がある」とCNAのケン・ゴースも述べている。

 

2022年は米国で選挙の年であり、事態が急進展する余地は少ない。共和党が再び多数派となれば、政権の動きは鈍る。皮肉にもアフガニスタン後遺症は時間がたてば消えそうで、より深刻な問題の前に中央アジアは影を細めるだろう。

 

これまでも北朝鮮はミサイルや核実験でワシントンへ圧力をかけようとしていた。だが金正恩はドナルド・トランプとの三年前の会見以降は自制し、その後に対米会談が決裂しても同じ姿勢だった。

 

北朝鮮はCOVID-19のためほぼ鎖国状態にあるが、中国の食料エナジー支援でかろうじて経済を維持している。その中国も対米関係が悪化しているため、半島内の緊張を高めるのは得策ではないと考え、金正恩に分別ある行動を求めているようだ。

 

アフガン情勢を受けバイデン政権は短距離ミサイル発射など小規模な出来事に目をつむることになりかねない。だが米国到達も可能な兵器の開発テストとなればメディアは異常な関心を示し、米国の信用度が落ちたと騒ぎ立てかねない。このためバイデン政権は「怒りと火炎」の姿勢に転じ、予防戦争に進みかねない。そうなれば誰にとっても得にならない。

 

それでも南朝鮮の一部は気が休まらない。与党内には防衛体制強化を求める声がある。その一人Song Young-gil 議員は「アフガニスタンの危機を利用して自主防衛体制の実力、気概を強化すべきだ。そのため戦時統制権を回復すべきだ」とし、南朝鮮軍の指揮権に触れた。「韓米同盟は重要だが、自国は自分で守るという姿勢も重要だ」と述べた。

 

この姿勢は米韓両国にとって良い進展だ。こうした議論ができる良い進展だ。こうした議論ができること自体南朝鮮はアフガニスタンと違うことを示している。米国は二十年にわたり人的犠牲とともに数兆ドル相当をつぎこんだが、アフガン政府、軍ともに士気が低く米軍が正面に立たないとどこかへ行ってしまうのだった。ROKはまったくちがう。

 

アフガニスタン崩壊のショックの中、今回の事件を地政学のツナミのようにすべて飲み込むと取り扱う評論がある。だが、アフガニスタンはアフガニスタンの問題であり、それ以上二は広がらないことは明らかになってきた。確かに人道面で悲劇は続くが、ワシントンが世界各国で展開する軍事コミットメントに変化は皆無といってよい。南朝鮮もその一部だ。■

 

 

The Afghanistan Collapse: How Does North Korea See It?

ByDoug BandowPublished7 days ago

 

Doug Bandow, now a new 1945 Contributing Editor, is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.


2021年8月31日火曜日

米軍はカブール空港にどんな装備品を残してきたのか。タリバンが利用できないよう破壊、機能喪失させたというが....

  

A screengrab from a video show members of the Taliban inspecting abandoned former US State Department CH-46E Sea Knight helicopters in a hangar at Hamid Karzai International Airport following the final withdrawal of American troops on Aug. 31, 2021.

VIA TWITTER

 

 

軍はほぼ20年にわたるアフガニスタン作戦を完了し、同国を完全撤退した。予想通り、最後に米軍は各種武器装備品を破壊あるいは使用不能にした。

 

米中央軍(CENTCOM)司令フランク・マッケンジー海兵大将は記者会見で以下の装備品を「非軍事化」したうえでハミド・カルザイ国際空港に残していったことを認めた。

 

  • ロケット弾砲弾迫撃砲弾対抗装置(C-RAM)少なくとも二個装備
  • 航空機計73機(米軍、アフガニスタン軍所属機)
  • 耐地雷待ち伏せ攻撃防御(MRAP)装甲トラック70両
  • ハンビー27台

US ARMY

A Centurion C-RAM defense system.

 

 

マッケンジー大将は上記装備を具体的にどう使用不能にしたのかについて説明していない。またC-RAMの型名称についても述べていない。C-RAMはハミド・カルザイ国際空港で本日もISIS分派の攻撃を防いだ。説明では二個装備程度とあるが正式な数にも触れていない。

 

米軍で供用中のC-RAMは一式15百万ドルのセンチュリオンのみである。現地ではロケット攻撃の際にセンチュリオン特有の20mmヴァルカン機関砲の発射音が聞こえたとの報道もある。

 

ハミド・カルザイ国際空港に設置したといわれるセンチュリオンの映像画像がいっさいないことに興味を惹かれる。ニューヨークタイムズはC-RAMが米大使館敷地内に設置してあったが、撤収時に使用不能にされたと報じていた。

 

マッケンジー大将は航空機についても詳しい機種別情報に触れておらず、一部は修理不能な状態と述べたに過ぎない。今回の機材はアフガニスタン空軍機材の大部分と思われる。

 

最終撤収時に同空港に合った機材にはA-29スーパートゥカーノ軽攻撃機、C-130Hハーキュリーズ輸送機、UH-60ブラックホーク、Mi-17輸送ヘリコプターがあった。その他機材は長年に渡り放置されていたものもある。L-39武装型ジェット練習機もそのひとつで、ツイッターで同型機が3機残っているのがわかる。

 

アフガン空軍へ供与した米製機材をタリバンの手に渡さないため米国はどのような手段を取るかがこれまでわからなかったが、ネット上に流出した写真ではアフガン空軍のUH-60ブラックホークの窓が破れ、扉が破壊されているのがわかる。

 

タリバンはすでに旧アフガン空軍機材を他の基地で捕獲している。またアフガン空軍要員も数十機で国外逃亡している。

 

それでもA-29やUH-60をタリバンが利用するのに時間がかかるかは疑問のままだ。

 

また本日出てきた映像ではタリバンがブラックホークを操縦している。

 

マッケンジー大将が言及した73機に米国務省のCH-46シーナイトヘリコプター7機が含まれるのか不明だ。国務省は各機を飛行不能としたうえでカブール空港に放棄したと述べている。別の映像ではタリバンがシーナイトを検分しているのがわかる。一部に同機をCH-47チヌークと混同する傾向があるが、いずれにせよ近年になり大幅改修された機材がタリバンの勝利の象徴となったのを見るのは悲しい。

 

タリバンの電撃構成で相当数のハンビー等車両も奪われた。MRAPやピックアップトラックもここに入る。とはいえ米軍がそれ以上の車両放棄をしていないのは朗報だ。

 

米軍は同空港他で相当量の物資を破壊して最終撤収を完了している。マッケンジー大将は記者会見でこのことに触れた。米軍部隊はアフガン軍向け小火器軽火器多数を破壊している。

 

それでも米軍が一部装備品を現地に残すことが予想されていた。センチュリオンは一式でもC-17での輸送が必要な大きさだし、積み下ろしに数時間がかかる。そのため、カブール空港に残すことにしたのだろう。ただし、装備の重要機能は破壊し危険を最小限にしつつ撤収に当たったはずだ。

 

マッケンジー大将は空港運営に必要な装備として、支援車両等はそのままタリバンに残したと発言。依然同国に残る米国人数百名の脱出用に同空港の再開は重要な意味があり、その他国で脱出を希望する国民にも同様だ。ただし、タリバンが脱出を認めた場合に限られる。

 

総合すると、機能するかは別としてカブールに残した装備品の全体像がこれから出てきそうだ。■

 

Everything We Know That The US Military Left Behind At Kabul Airport


Here's What The U.S. Military Left Behind At Kabul Airport

Aircraft, vehicles, and at least two defense systems able to shoot down rockets and artillery shells are just some of what was not airlifted out.

BY JOSEPH TREVITHICK AUGUST 30, 2021


2021年8月28日土曜日

速報 米軍がアフガニスタンのISIS-Kに報復攻撃を実施

  • ISIS-K DRONE STRIKE

USAF

 

ハミド・カルザイ国際空港アビーゲートの自爆攻撃で米軍隊員13名および多数の民間人が殺害されたのをうけ、米中央軍は無人機によりISIS-Kの「パートナー」一名を殺害したと発表した。無人機攻撃が行われたのはナンガハール地方でバイデン大統領が襲撃事件に関与した者への懲罰を公約した翌日のことになった。

 

米中央軍の発表内容を伝える。

 

「米軍部隊がISIS-Kの襲撃立案者を水平線越えで対テロ攻撃した。無人機による空爆がアフガニスタンのナンガハール地方でおこなわれ、初期評価では標的は死亡していることが判明した。民間人の死傷は発生していない」

 

今回殺害した立案者が空港襲撃事件等の立案にも携わっていたのかは不明だし、別の首謀者がいたのかもしれない。また襲撃事件に関与したのが何人だったのかも不明だ。とはいえ、今回の攻撃はバイデンが公約したISIS-K対応で具体的な行動につながったものだ。

 

声明文では「地平線越え」の作戦だったとあり、攻撃に投入した機体はアフガニスタン国外から運用されたことがわかる。この戦術はアフガニスタン撤退後にバイデン政権が活用する構想だが、米国のアフガニスタン完全撤収前に実行されたことに注目する。一部にはテロ活動を引き起こすのではと実施に慎重な動きもあった。

 

攻撃対象が空港襲撃事件の首謀者ではなかった可能性もあるが、今後もこうした攻撃が続きそうだ。


 America Strikes Backs At ISIS-K In Afghanistan


U.S. Executes Revenge Drone Strike On ISIS-K "Planner" In Afghanistan (Updated)

The operation comes just a day after President Biden vowed to make the terror group pay for its heinous suicide bombing at Kabul's Airport.


BY TYLER ROGOWAY AUGUST 27, 2021

2021年8月27日金曜日

速報 カブール空港襲撃事件はISIS-Kの仕業。カブール空港撤収作戦の最終段階で保安体制に懸念。自衛隊の邦人等脱出にどんな影響が出る?

 Injured people being carried to a hospital after explosions outside Hamid Karzai International Airport in Kabul, Afghanistan, on August 26, 2021.

ハリド・カルザイ国際空港付近で発生した爆発の被害者が病院へ搬送された。August 26, 2021. ANADOLU AGENCY VIA GETTY IMAGES / SAYED KHODAIBERDI SADAT

  •  

8月26日ハミド・カルザイ国際空港襲撃事件で米軍に12名死亡15名負傷の被害が発生した。

 

ペンタゴンは自爆攻撃とし、アビー検問所の外側とすぐそばのバロンホテルで爆発が二回あった。

 

中央軍司令官の海兵隊フランク・マッケンジー大将は米軍隊員に死傷者が発生したと認め、「人員面の被害規模は調査中で全体を把握できていない」と述べた。

 

死亡した12名のうち11名は海兵隊員、一名は海軍所属で空港へ入ろうとする避難民の選別を行っているところで爆発が発生したとマッケンジーがペンタゴン記者団に中東からリモートで述べた。

 

襲撃ではISIS戦闘員一名も銃撃を加えたと同大将は述べ、ゲートでの爆発で「空港内の駐屯地への被害はなかった」とした。

 

マッケンジー大将は今回の襲撃を多重攻撃と表現した。「ISIS-Kの脅威が今回現実になってしまった。こうした襲撃は今後も続くとみている。考えられる対策をすべて取っている。タリバンが空港の外縁部警備にあたっており、必要な防護措置を取ると当方に連絡してきた」

 

マッケンジーは現時点の推測として自爆テロ要員はタリバン検問所を通過し米軍が空港に入ろうとする避難民をチェックする中に紛れ込んだとする。

 

タリバンは空港へ向かう群衆のチェックを行っているが、「チェックがうまくいく場合といかない場合がある」とし、米軍もチェック機能を改善していることを強調した。

 

マッケンジー大将は米軍が「ひきょうな」攻撃の主犯を探し出し、反応の「準備ができている」と述べた。

 

カブールに展開する米軍部隊には自衛能力があるとし、AH-64攻撃ヘリコプター、MQ-9無人機が同空港を拠点に飛行し、F-15やAC-130ガンシップが周辺部の警戒にあたり、対ロケット弾・迫撃砲弾装備も配備済みと述べた。またトラックによる襲撃も入口で阻止する体制にあり、タリバンには保安体制の強化や近隣道路の閉鎖を要請しているとも述べた。

 

また、航空機への射撃が発生したと認めた。「わが方の航空機に時折射撃が加えられているが被害は皆無だ。軍用機には自衛用装備があるが、チャーター機などが脆弱だ」

 

「切れ目なく航空機を離発着させることが最重要事項だ。一機で450名もの避難民が乗っており、ISISが狙っている」

 

今回の襲撃事件の数時間前に米大使館から残留米国人に緊急連絡があり、空港検問ゲートに近づかないよう求めていた。また英国からもゲート付近の群衆がイラク-シリア-コラサンのイスラム国(ISIS-K)の標的になっているとの警告も出ていた。

 

カブール撤収作戦は急速に最終段階に入りつつあり、8月26日時点で陸軍海兵隊部隊5千名近くが展開していた。カブール空港内には5千名近くの避難民が残っており、マッケンジー大将は「空港外へ退去させる」としている。

 

大規模空輸作戦で8月26日時点で計104千名の米国人等を移送させた。

 

まだ1千名の米国人が国内に残るが全員が国外脱出を希望しているわけではないとマッケンジーは述べた。

 

マッケンジー大将は米軍部隊によるカブール空港入り口での避難民選別作業を賞賛し,「避難民の息がかかるほど密で危険な作業だが着実にこなしている」とした。

 

ロイド・オースティン国防長官はツイッターで「テロリストは自爆したが、その瞬間も米軍隊員は他者の生命を救おうとしていた。その損失を悔やむ。負傷した隊員を救う。また深い悲しみにある隊員の家族を支える。だからと言って進行中の任務を放棄するわけにいかない」と述べた。


同日に空港敷地内で別の爆発もあったが、これは米軍による「制御爆発」で撤収の準備作業だったと国防関係者が同日遅く解説している。■


11 Marines, 1 Sailor Killed in Terrorist Attack at Kabul Airport

Service members were securing one of the last gates open for Afghans, Americans to escape.

By TARA COPP and ELIZABETH HOWE

AUGUST 26, 2021 03:44 PM ET


米軍の死傷者には言及があってもアフガニスタン人の被害に触れていないのが気になります。米軍はタリバンと意思疎通があり、役割分担をしている様子がわかります。さて、自衛隊機はカブールに到着しましたが、対象となる日本人等が一人も空港に到達できておらず空のままパキスタンに戻ったようです。現行法では空港外での自衛隊の活動はできないようです。一人も脱出させられないのであれば、作戦が失敗したことになり、揚げ足を取る向きが出てくるでしょう。むしろ、軍隊として機能できない制約を受けている自衛隊の地位を替えるべく憲法改正に向かわなければならないのですが。

2021年8月26日木曜日

米軍アフガニスタン撤収の混乱ぶりを見て、北朝鮮が南への工作強化を画策している。朝鮮半島からの米軍撤収が実現すれば北の思うつぼなのに、南朝鮮国民が感情に身を任せているのは工作活動の効果か。

 国はアフガニスタン撤収で拙速かつ十分な計画なしで展開するさまを世界に見せつけてしまった。同盟各国には今後の米国との関係に危惧を覚える動きも出ている。大韓民国(南朝鮮)も例外ではない。同国メディアは連日のように同盟関係を懐疑的にとらえており、北朝鮮への妥協こそ半島統一の道を信じる政治家とて変わりはない。


ピョンヤンの金正恩の視点はどうか。米韓同盟分断戦略が効を奏してきた。今回のアフガニスタン撤収は南朝鮮を対米同盟に懐疑的にさせる、あるいは妨害させる絶好の機会だ。米韓両国が半島の平和を維持すべく平和交渉で北朝鮮が新条件を飲む可能性は大きく減じている。


金正恩は朝鮮労働党(KWP)の政治局、中央軍事委員会を招集し状況を分析し、朝鮮半島への影響を検討しているはずだ。さらに党の宣伝工作部(PAD)、統一戦線部(UFD)、人民軍 (KPA)、政治総局(GPB)他を動員し、南朝鮮が韓米同盟に懐疑的になっている状況をどう利用するか作戦立案しているはずだ。


北朝鮮の宣伝工作、政治工作、情報操作、情報かく乱、特定対象工作の第一線を担うのがKWPのPADである。PADは情報工作多数を担当し、情報操作を行い、南朝鮮の世論工作も行う。特に南朝鮮一般社会を標的とする。この工作を統括するのがPAD海外宣伝局である。PADの下部祖域では防諜宣伝工作を展開し、北朝鮮国民を対象とする。国家保安省(MSS)がこうした国内工作を支援する。


UFDはサイバー部門を擁し、偽情報を南朝鮮国民に流し社会政治面の混乱を巻き起こしている。対象は南朝鮮国民以外に同国政府、政界にまで及ぶ。サイバー部門は南への心理戦も展開し、19か国のサーバーから140に及ぶウェブサイトを運営している。ウェブサイトの目的はサイバー戦で「南朝鮮国内の革命」を巻き起こし米軍撤収を実現させることにある。PADとも連携し南朝鮮を標的とするのは第101連絡センター、第26連絡センターの二部局だ。


第101連絡センターはピョンヤン中区のピョンヤン医大の正面にあり、情報操作を担当する。別の言い方をすれば偽情報であり、金日成、金正日、金正恩の三大最高指導者を扱う。第101連絡センターには南朝鮮の社会文化に通暁した専門家30名が在籍する。小説、詩歌を出版し、北朝鮮最高指導部の栄光を賛美し、KPA偵察総局(RGB)の第225情報部隊に配布させている。


第26連絡センターは最高指導者を賛美する映像作品を作り、最高指導者こそ半島統一の中心であると強調する。第26センターの作品は特に南朝鮮の大学生向けに反政府活動を支える意図がある。また救国の声放送が南朝鮮一般市民を対象としている。こうした手段を行使して米国へ疑惑を生じさせるのは実に簡単なことだ。第26センターは第225センターと共同で工作を進めることもある。第225は金日成大学の隣に本拠がある。


PADはRGBと共同で南朝鮮国内に反政府、反米の宣伝工作を浸透させている。RGBの第225情報隊は北朝鮮最精鋭の侵入部隊で南朝鮮のみならず他の国も狙う。各連絡センターと連携し、第101及び第26の成果物を南朝鮮に持ち込んでいる。米韓同盟にひびを入れるのが第225の潜入工作員の目的だ。


GPBはKPA内でのあらゆる政治活動を担当する。それだけでなく敵国工作部別名563部隊も統括する。KWPのUFDが平時には563部隊を指揮し、秘密工作活動を南朝鮮軍隊員向けに展開するほか、拉致工作、DMZ沿いでの宣伝放送、印刷物の配布を行っている。有事にはKPAの占領地国民が対象の工作でKPAへの支持者を掘り起こす。563部隊は危機が発生するたびに肥大する。


そして最も重要なのが金正恩がKPA参謀本部の作戦立案部門へ各活動を軍事作戦と統合し、南朝鮮の同盟関係への疑念を増大させるよう命じたことだ。こうした工作ですでに春夏の韓米図上演習へ反対機運が南朝鮮で拡大している。


米国のアフガニスタン撤収の混乱ぶりを見て、こうした動きに拍車がかかっている。中国が米国の台湾支援を妨害すべく台湾国民の対米信頼度を低下させる工作をしているが、北朝鮮も中国共産党、人民解放軍をまねた作戦を展開するのは疑う余地がない。


米韓同盟の弱体化を狙う金正恩体制は今後も戦術を展開し続け、アフガニスタン撤収で米国が見せる不手際を逐一注視していくはずだ。もっと重要なのはこの機会を利用して金正恩のほうが米大統領より指導者としての資質が上だとの宣伝工作が今後展開することだ。■


このような邪悪な組織を活用する北朝鮮の活動を看過できません。地上から消えてほしい政体の一つが北朝鮮です。反日活動も北朝鮮の息がかかっていないとは断言できないでしょう。防波堤としての韓国の意義が減じ、台湾の安全も危うくなっている今、日本がこのまま安閑としていられないのは事実です。

US Withdrawal from Afghanistan: The View From Pyongyang

Mon, 08/23/2021 - 11:42am

Robert Collins


タリバンは世界最強のイスラム原理主義戦闘員集団になった。アフガン向けに米国が提供した装備品を易々入手。ハンビーに乗り、AK-47をM16に切り替える戦闘員。多額の援助を提供した米国には苦々しい風景だ。

 


Taliban M16 Rifles

120118-N-XX151-646 CAMP FUJI, Japan (Jan. 18, 2012) 第七艦隊隷下の揚陸指揮統制艦USSブルーリッジ(LCC 19)配属の三等下士官ラルフ・ジャヴィアがM16ライフルを銃取り扱い資格更新のためキャンプフジで発射している。 (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Aaron M. Pineda/Released)


 

冷戦後半に長く続いた議論があった。ソ連製AK-47と米製M16のどちらが優れているのか。世界各地の戦闘員がAK-47をこぞって愛用したのは、手入れが少なくても過酷条件でも作動するからだった。M16は命中精度と射程が優れる。

 

タリバンが長年愛用してきたカラシニコフAK-47の代わりに捕獲したM16ライフルやM4カービン銃を使い始めている。いずれもアフガン陸軍が放棄した装備品だ。AKが1989年まで続いたアフガンソ連戦争にさかのぼる旧式装備なのも切り替えの理由だ。

 

捕獲された銃火器に一回も発射されたことがないものが多数あることからアフガン軍がいかに急速崩壊したことがうかがえる。

 

弾薬供給には心配がない

 

タリバンに米製小火器が普及してきたとの報道が出てきたが、バイデン政権がロシア製小火器弾薬の輸入を禁止したことが関係する。ロシア企業はAK-47弾薬以外にM16やM4用の弾薬まで製造している。

 

「ロシアはAR5.56NATO弾を毎年数百万発生産しており、米国市場にも流入している。ツーラ、ウルフ、レッドアーミーのブランドネームだ」と米海兵隊退役将校が匿名でロイターに解説している。「タリバンの味方はどんなパーツも提供できる」

 

ロシアが米国向け輸出を禁じられ、アフガニスタンへの供給が浮上し、タリバンから発注を受けるのではないか。

 

銃火器だけではない

 

M16やM4以外の装備品もタリバンは手に入れた。米製装備品の大量入手でタリバンは戦闘員集団から近代軍隊へ変身し、ヘルメット、暗視装置、ボディアーマー、カモフラージュ服、各種車両が使える。

 

タリバンが捕獲した装甲車両は2千両に及ぶとされ、航空機材は40機で、UH-60ブラックホークや偵察攻撃用ヘリコプターがあり、スキャンイーグル無人機もある。

 

「タリバン戦闘員が捕獲した米製装備で武装している様子が写っている。米国や同盟国に大きな脅威だ」と下院外交委員会の共和党重鎮議員マイケル・マッコールがロイターに電子メールを送ってきた。

 

米国は2002年から2017年にかけアフガン軍に総額280億ドルの兵器類を供与した。大部分がタリバンの手中に落ちた。

 

「高性能米国軍事装備品をアフガン陸軍から入手したタリバンは世界最強のイスラム原理主義戦闘集団になった」と政治評論家アダム・シュワーツがソーシャルメディア上で述べている。そこには新装備を手にしたタリバンが映っており、「ハンビー、M1117装甲保安車両、インターナショナルマックスプロなど米国納税者の負担で導入した装備品だ」

 

タリバンは高性能兵器を入手したが、入手そのものが戦闘員募集の良い広告となる。タリバン戦闘員がカブール市内を先週行進したが、特徴的な白旗を堂々とハンビー車上に掲げていた。この時の画像が世界をかけめぐり、強力なメッセージを送った。タリバンが世界有数の軍事大国を駆逐したのだ。■

 

The Taliban Are Ditching AK-47s for Captured U.S. M16 Rifles


ByPeter SuciuPublished1 day ago


Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He regularly writes about military small arms, and is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.

 


2021年8月25日水曜日

カブール撤収最終段階で装備品の破壊を想定する米軍。人員搬送を急ぐが、8月31日までの作戦完了は疑問。一方、タリバンはアフガン国民の空港移動を阻止。状況が流動的すぎる。

 自衛隊もいやおうなしにこうした状況に放り込まれます。今やどんな情報でも活用すべきでしょう。こうした記事が少しでも役に立てばいいのですが。

 

PHOTO © 2020 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION.

ハミド・カルザイ国際空港の衛星写真。アフガン空軍や米軍の機材はタリバンの手に落ちる前に破壊する案がある。

 

ミド・カルザイ国際空港に展開する米軍は撤収作戦の最終段階で本国に移動できない装備等は破壊することが判明した。ペンタゴン確認した。作戦終了期限が8月31日に迫っている。米軍部隊は梱包作業に入るが、避難民をどの程度搬送できるかが課題となる。タリバン側はアフガン国民の国外脱出を阻止すると公言している。

 

ペンタゴン報道官ジョン・カービーは米陸軍ハンク・テイラー少将(統合参謀本部で撤収作戦を指揮)とともにカブール撤収の最終段階について述べたが、情勢が極めて流動的だと強調した。カービーは予定通りなら米軍完全撤収は8月31日までに完了すると述べた。

 

「人員装備の撤収は各地の例と同じく展開する」「人員と合わせ装備品の撤収も重要だ。必要なら装備品はハミド・カルザイ空港で破壊処分する」(カービー報道官)

 

報道官は破壊処分の方法について詳しく述べなかったが、撤収期限は確実に近づいている。米軍は7月にバグラム基地で規模不詳だが弾薬類を処分しており、人員撤収を先に完了していた。

 

破壊対象になりそうな装備品には大型かつ高価なものがある。国務省は7機あるCH-46Eシーナイトヘリコプターは持ち帰らず現地で処分すると発表している。ニューヨークタイムズはロケット対抗迫撃砲(C-RAM)防衛装備は米大使館閉鎖時に敷地内で破壊したと報じている。走行できなくなった軽装甲車両も放置された。

 

ハミド・カルザイ国際空港内でアフガニスタン軍所属だった兵器装備品等の破壊命令が米軍部隊に下るかが注目される。米政府は空爆により各種兵装類、装備品を破壊し、タリバンの手に落ちるのを阻止するとの報道が出ている。

 

「こうした撤収作戦では想定外の事態も発生するが、極めて慎重に事を進める必要がある」とカービー報道官は空港での米軍園あ国軍への危険があることを認め、同時に避難民への脅威が差し迫っていることに触れた。「各段階を追って着実に進め安全安心をわが国のみならずその他国の人員に確保することが最上段に来る」

 

また部隊撤収や装備品搬送についてペンタゴンから逐一報告する予定はないとし、「情報の保全で脆弱性を予防するため」とした。

 

撤収の最終段階に疑問が集まるのは、米国人に合わせその他国さらにアフガン避難民の全員を予定通り撤収させるのは不可能だからだ。米軍は空輸能力を日々拡大しているが、避けられない事実としてのしかかっている。本日の記者会見でもテイラー少将から米政府はここ24時間で毎時1,000名を輸送しているが、まだ不足だと認めた。

 

米政府のみならず各国で大きな議論の対象になっているのは期限となっている8月31日を延長できるかだ。G7首脳陣から本日出たせいめいぶんでは「撤収作戦での軍事支援を終了させる一方的な日時設定を回避する」よう求めている。

 

下院軍事委員会のアダム・スミス委員長はハミド・カルザイ国際空港における緊急作戦を継続する緊急対応策があると記者会見で明らかにした。合わせてジョー・バイデン大統領は8月31日期限を遵守する姿勢との報道もある。もちろん緊急対応策があるといっても実施は全く別の話である。

 

その中核部分はカブールでの空輸能力にかかっており、妨害なく進められるか、あるいは最悪の状況はタリバンの意向に振り回されることだ。米政府関係者は米軍部隊がタリバンと衝突している事態は公然の秘密といsており、ワシントンポストは中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官がタリバン共同設立者アブドル・ガニ・バラダーと秘密会合を持ったことを伝えており、撤収期限問題も当然話し合われたはずだ。

 

タリバンは米軍部隊及び各国軍はすべて8月31日までの撤収を求めており、バーンズ-バラダー会談含む米側との交渉結果とは関係ないとする。

 

こうした状況の複雑さに加え、タリバンから本日発表があり、ハミド・カルザイ国際空港に向かうアフガン国民を阻止しているという。「カブール空港に通じる道路は閉鎖した。外国人は通行できるが、アフガン人は使用を許していない」とタリバン広報官ザビフラ・ムジャヒドが本日の記者会見で明らかにした。「医師、技術者等教育を受けた国民は国内で必要だ」

 

米政府や外国政府関連で協力したアフガン人でタリバンの報復を恐れるものがそのまま空港への移動を阻止されることになる。すでにその事態が発生しているとの報道もあるが、タリバンが正式な方針としていることが問題で米政府他各国政府が必要なアフガン人をどうやって国外脱出させるか考えなくてはならない。

 

カブール撤収作戦では米軍他各国軍の今後は不透明なことがわかる。撤収期限延長が実現しないと米軍部隊は期限前から梱包作業を開始する必要がある。撤収作戦は後戻りが効かず、空港内の各部隊のリスクは高いままだ。

 

撤収期限過ぎても米軍をカブールに駐留させることになればタリバンとの交戦をしながら、撤収作戦を続けることになる。保安状況が急激に悪化すれば、米軍部隊のリスクはさらに悪くなり、攻撃を受けつつ撤収を展開することになる。

 

その時点で空輸は装備品より人員に中心をおくことになるのは容易に想像できる。たとえば、ヘリコプター一機でC-17A輸送機の貨物スペースを占領してしまうが、人員なら数百名を運べる。地上支援体制に限界があるため、固定翼機やヘリコプターで空中給油能力がある機体は空中給油を受けている。カブールを最後に撤収するのは米陸軍のエリート部隊である第160特殊作戦航空連隊(SOAR)になりそうだ。

 

こうした状況のもと、各種装備品などは現地で破壊処分を迫られそうだ。

 

Update 3:20 PM EST:

 

ホワイトハウス声明ではジョー・バイデン大統領がG7首脳jとアフガニスタン情勢を協議したとある。声明では米軍の撤収作戦は予定通り8月31日期限のままとあるが、同時にバイデン大統領から「必要に応じ期限を調整する緊急策」を求める発言もあった。■

 

US Prepared To Destroy Equipment It Can't Airlift Out Of Kabul As Withdrawal Deadline Looms (Updated)

With the priority being placed on getting people out of the Talian-controlled country, getting even high-tech weapons out may not be possible in time.

BY JOSEPH TREVITHICK AUGUST 24, 2021