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2015年4月13日月曜日

ISIS空爆は長期化し空の塹壕戦になるのか 



高価な戦闘用航空機でこれも高価な弾薬類を投下してトラック一台を破壊する、という作戦が根本的におかしいのは明らかです。が、代替策がない、というのが偽らざるところなのでしょう。大規模な地上戦でCASが主体の作戦なら話は違ってくるのですが。面倒な相手を選んでしまったようですね。

Trench Warfare With Wings: Can ISIL Airstrikes Go Beyond Attrition?

By SYDNEY J. FREEDBERG JR. on April 09, 2015 at 2:25 PM

ISIL targets since February 4th - 31 March図1.2月4日以降の航空攻撃目標分類 戦闘員>車両他>橋梁
航空戦力といえば高速で目標だけを正確に攻撃するイメージだが、実態は空の塹壕戦の様相を呈することもある。今週初めにティクリット奪回に成功した直後に米中央軍CENTCOM から詳細なデータで空爆作戦が自称イスラム国(ISISあるいはISIL)にどう展開されているかが示された。その内容を精査してみたところ、8ヶ月におよぶ空爆は消耗戦であるのが明らかになった。
一回の空爆で目標はトラック一台を目標、ときには戦闘員一名単位で、イラク部隊の近接航空支援が中心だ。空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将はF-22はCASに投入していないと言う。
2月発表の成果と比べると、戦略目標としての敵指揮官や石油関連施設が減っている。石油関連施設は合計151箇所で空爆対象5,457箇所の3%未満に相当するだけだ。
ISISに戦略級の目標そのものが少ないと思われがちだが、空軍力に深い知識を持つBreaking Defense 寄稿陣のひとりデイビッド・デプチュラ David Deptula退役空軍中将は空軍力を有効に使うべきなのに米国は機会を無駄にしていると主張。
「たいていのひとはこんな罠にひっかかる。『ここは工業化が進んでいないな』、確かにプロエスティ(ルーマニア、1943年に米軍が空爆)よりも精製施設の規模は小さいが、シリア国内の油田が連中の資金源になっているのだ」
これは反乱鎮圧作戦ではない。放置すれば国家を成立しそうで複雑なしくみを有する敵に対する戦いだ、とデプチュラは言う。「空爆作戦の立案に携わった関係にはイラク・アフガニスタンでHVIs(高付加価値目標人物)を狩り出した経験がたかが10年あるだけだ。ISIS指導層を麻痺させ、指揮命令系統を使えなくしないといけない」
ISIL Infrastructure - 31 March図2. 攻撃対象のインフラ種類別 2月4日と3月31日の比較
ただしシリア国内の空爆は大部分がコバニ付近の前線に向けられており、ISIS指導層やその指揮命令系統は標的になっていないとデプチュラは指摘する。砂漠を横断するようなテロリスト集団の長い通信線を遮断していない。「ラッカ(ISISが首都と称するシリア国内の地点)とモスルを繋ぐ道はなぜいまでも通行可能なのか。双方の都市でまだ電気が供給されているのはなぜなのか」
では送電網の両端を攻撃すれば民間人にも被害が発生しないか。する、とデプチュラは認める。ただし、戦争の原則に反しない範囲なら許容できるという。「これまで付随的被害の回避に注意し、民間人の死傷を発生させないことに気を取られて、肝心なISISの壊滅は二の次だった」というのだ。事実、かつてのジュリオ・ドゥーエの空軍力理論を思わせる口調で敵領土内の一般市民を空爆対象にすればISISの統治下の住民も逃げ出すというのだ。
ISIL troop positions - 31 March図3. 航空攻撃を受けたISIL戦闘員の位置別比較 (戦闘配置場所、集合地点、チェックポイント、地下壕の順)
「モスル住民のうちISIS戦闘員は何人いるのか」とデプチュラは次の激戦地になりそうなモスルに焦点を合わせる。「どこかの段階で地元住民も立ち上がり、占拠してきた勢力を排除するはずだ」
これに対して地上戦の専門家はデプチュラの主張は疑わしいと考える。「たしかに発電施設ほかを使えなくできる」とディビッド・ジョンソンは言う。「だがそれだとモスル住民全員への宣戦布告になる」 150万人の住民には米国やイラク政府を憎むものがあり、成人男子なら全員が武器を入手できる国である。
「チクリット制圧にほぼ一ヶ月かかった」とジョンソンは言う。ジョンソンは陸軍参謀総長レイ・オディエルモの上級顧問をしていた。奪回したがイラク軍は市街地をほぼ全部破壊している。「モスルはもっと大きい都市で人口も多い」とジョンソンは警句を発する。市街地は高密度でISIS側は防御が楽であり、空爆対象は見つけにくい。ジョンソンはイラク軍(正規軍、米軍事顧問団、シーア派戦闘員とイラン人)に戦術技能が十分あり無傷でモスルを奪回できるとは見ていない。ただ米軍の航空戦力は精密攻撃で支援を提供するだろう。
ISIL vehicles & heavy weapons - 31 March
図4.  攻撃対象のISIL車両種類別 上から、戦車、装甲車両、銃火器、ハンビー(イラクから捕獲)、テクニカルズ(武装ピックアップトラック)、自殺攻撃車両、その他(航空機、ボート含む)
ISIS指導部を標的にした場合に米空軍力は同じ予算で得られる効果は大きくなるのか。たしかに一部を殺戮することは可能だろうが、とジョンソンは言う、ただ指導層はゲリラ戦の経験が深い。「アメリカの航空戦力を目のあたりにし、自分の身を守る対策を持っている」という。頭の鈍いものはもうとっくに空爆で命を落としており、その当時はもっと多くの米軍機が投入されており、米地上軍も大規模に展開していたので該当人物を見つけるのは容易だった。
「敵は分散作戦を展開しており、統制がとれている」が、中央集中の構造ではないとジョンソンは指摘する。敵指導部を対象にした古典的な「断頭型」の空爆はISISには当てはまらないという。「頭はひとつだけなのかまだわかりません。」.
空爆対象に値する重要拠点が判明しないと長期の消耗戦を覚悟しなくてはならないだろう。■
ISIL targets to date - pie chart - 31 March図5. 空爆で撃破したISILの装備種類別(建物施設、車両重装備、戦闘員がほぼ均等

注 2月4日以降の合計数はデータとして整合しない。なぜならCENTCOMが分類を途中で変更しており、とくに航空機を追加しながら「ISIS実効支配中の橋梁、道路」「その他装備」「訓練施設」を除外しているからだ。そこでCENTCOMと連絡してなるべく比較対象出来る数字をまとめてある。
Colin Clark contributed to this story.


2014年11月28日金曜日

米国の戦略:ISIL駆逐の先にはアサド政権の消滅


たぶん読者の皆さんには受けが悪いと知りつつ、この話題は継続していることもあり、あえて掲載します。

ISIL Is The Symptom, Syria’s al-Assad Is The Disease

By JAMES KITFIELD on November 21, 2014 at 11:33 AM
WASHINGTON: 敵の敵は誰か。これが米中央軍の作戦立案スタッフが最近直面した疑問だ。中央軍はコラサン集団Khorasan Groupというアルカイダ強硬派を狙い、同集団がシリアで合衆国、欧州を標的にしたテロ攻撃を計画しているとしていた。空爆によりアルヌスラ戦線 Al-Nusra Front (アルカイダのシリアにおける提携先)がコラサン分子を供給していることもあり、同時に攻撃対象となった。
  1. だが米軍はシリア国内の反乱勢力も怒らせてしまった。もともと合衆国の代理と期待されていた世俗勢力だが、戦闘ではアルヌスラとの戦術面で連携して共通の敵と戦っている相手がダマスカスのバシャ・アル・アサド政権だ。米軍空爆への報復としてアルヌスラ戦闘分子がイラク・レヴァントイスラム国家(ISIL)に合流している。ISILこそイラク、シリアでの合衆国の主たる敵だ。
  2. 両者は結託して合衆国が支援する反乱勢力自由シリア軍 Free Syrian Armyに攻勢をかけ、自由シリア軍はトルコ国境付近の北部へ追い詰められた。アルヌスラ戦線とISIS指導層が会見して共同戦線を形成したとの報道がある。
  3. 敵が合流し、味方が弱体化すれば、戦略再考の潮時といってよい。オバマ大統領の安全保障チームが先週だけで四回も会議をしたのは根本的な戦略がISISを「劣化敗退させる」目標と遊離していると認識している証だろう。複数筋が今回の作戦で段階的アプローチを採用したオバマ政権自体が混乱を巻き起こしている、最終段階でアサド政権崩壊に追い込むと公に認めていない点を指摘している。
  4. 自らの戦略を敵に隠すこと(時には同盟国へも)は民主主義国家においても成功を勝ち取る基本的条件である。
  5. 「政権内部ではシリア向け政策の最終目標はアサド追放との認識があるが、社会一般は混乱が発生しているのは玉石混交の同盟をつくったためと信じがちだ」と語るのはダフナ・ランドDafna Rand (最近まで国家安全保障会議勤務、現在は新アメリカ安全保障研究所Center for a New American Securityの研究部副部長)だ。ジョン・ケリー国務長官は域内同盟各国とともにイラン、ロシアとアサド放逐の可能性を協議していると伝えられる。
  6. ランドは「根本的な疑問はロシアとイランにアサド政権との関係を分断させるにはどうすべきかです。一方で、アサドが自国内で米軍がISIS目標の攻撃を行うのを看過しているとは思えません。米軍が空軍力を使って介入した他の事例を見れば、アサドのような暴君がのさばれる結果にならないのは明らかですからね」
  7. 公にしていないがISISを「劣化敗退させる」作戦の対象にアサドが含まれるのがオバマ政権の理解だ。
  8. 政治面では共和党上院議員ジョン・マケインが上院軍事委員会Senate Armed Services Committee (SASC)委員長として自由シリア軍部隊向け訓練、装備提供を加速化すべく激を飛ばすことでアサド政権と合衆国は対決に近づくはずだ。マケイン議員は9月16日のSASC公聴会でチャック・ヘイゲル国防長官と統合参謀本部議長マーティン・デンプシー大将に、もしアサド政権の空軍部隊が合衆国の支援するシリア反乱軍を攻撃したらどうするか尋ねている。
  9. デンプシーは「その決定は今後に任せたい」と回答。情報筋によれば統合参謀本部はすでにシリアの代理部隊を守り強化すべく米軍部隊の活用方法を検討中だという。ヘイゲル長官はマケインに「我が国が訓練した部隊が攻撃を受ければ、我が国はそれを助ける」と回答。ヘイゲルから国家安全保障担当補佐官スーザン・ライス宛に書簡数通が送られており、現在のシリア戦略を深く杞憂していると伝えたといわれる。また合衆国は「アサド政権への対処方法を厳しく見直すべきだ」としているという。
  10. ケリー国務長官もアサドから権力を奪わない戦略は非現実的と見ているといわれるが先のスイス交渉では二回続けてイランとロシアの説得に失敗し、アサド政権への支援が両国から続いている。これはまだ進行形だが、国務省はイラン核問題を慎重に協議中でロシアとはウクライナ分離推進派支援の可否を話し合っている最中なので、アサドへの最後通牒を持ち出して協議を危険にさらしたくないのだろう。
  11. ISIS作戦で重要な推進役となる地域内同盟各国からアサド放逐を戦略案の一部に入れるよう強力な圧力が合衆国にかかっている。トルコとサウジアラビアが殊に強く主張しており、アサドが入っていない結末では両国の支援が不確かになりかねない。
  12. 「オバマ政権はシリア国内にあらわれた病状に対応しているが、病気そのものつまりアサドには対応していない」と言い切るのはターキ・アル・ファイサルTurki Al Faisal(サウジアラビア前情報長官、ファイサル国王イスラム研究センター長)で先週ブルッキングス研究所の講演での席上のことだ。
  13. 「シリア情勢は戦術面では非常に複雑化しているが、戦略面では極めて明白だ。軍事論理ではバシャ・アル・アサドの退場に向かっている」と発言したのはクリストファー・ハーマー軍事研究所主席研究員Christopher Harmer, a senior analyst with the Institute for the Study of Warだ。地域内の主要同盟国サウジアラビアとペルシャ湾岸各国ヨルダン、トルコとイラク国内のスンニ派指導層はすべて同じ主張だ。「アサドが原因で過激派が力を付けた。アサドがダマスカスで権力を掌握したままではISIS打倒は困難だし、シリアに望ましい結果が生まれない」
  14. 軍事面ではイラクを当面の注力の対象とし、シリアはあとまわしとする合衆国の戦略にほころびの兆候が見られる。合衆国がアサド駆逐を公に目標としない限り、シリア代理勢力は5,000名から15,000名程度から増えず、実力のある反乱勢力にならないだろう。または反乱分子がISISと提携してしまい、共通の敵アサド放逐に回るかもしれない。合衆国が目標と責任感をあいまいにしたままだとロシア、イランがアサド政権支持を中止しないと見る専門家もある。
  15. 「オバマ政権は非常に細い外交ラインの上を歩もうとしていますが、内戦はいつも恐ろしいテロリスト集団が生み、ISISのような集団に勝つ方法はその内戦を止めるしかありません」と語るのはケネス・ポラック Kenneth Pollack 元CIA中東アナリストで現在はブルッキングス研究所主任研究員だ。「そしてロシアとイランにアサド支援を中止させるにはアサドに勝ち目がないことを明らかにすること、アサド自身が重荷であることを示すしかありません」■

2014年10月18日土曜日

ISISはジェット戦闘機を運用しているのか 米中央軍は否定するが....


ISISがミグ戦闘機を運用中との報道が出て、中央軍がすかさず記者会見でこれを否定していますが、ほっておけば本当にISISが限定的とはいえ空軍力を使う日がやってきそうです。状況がどんどん進展していく中、日本ものんびりと遠い世界のことと無関心ではいられませんね。

U.S. Central Command Casts Doubts On Claims ISIS Operating Captured MiGs

By: Dave Majumdar
Published: October 17, 2014 4:35 PM
Updated: October 17, 2014 4:35 PM
U.S. Central Command Commander General Lloyd J. Austin III on Oct. 17, 2014. Defense Department Photo
米中央軍司令官ロイド・オースティンIII大将、10月17日
Defense Department Photo

米中央軍はイラク・シリアイスラム国(ISISあるいはISIL)が軍用機を運用中とする証拠はないと発表。

  1. 「ISILがジェット機で地上作戦を支援しているとの報告は現場から入っていない。またこれを確認できない」と米陸軍ロイド・オースティン大将Gen. Lloyd Austinがペンタゴン記者会見で発言した。「パイロットが脱走しISILに加わったとの情報もない」

  1. シリア人権監視団Syrian Observatory on Human Rights (SOHR)はISISがソ連製戦闘機3機(ミコヤンMiG-21フィッシュベッドとMiG-23フロッガー)を入手したという。もしISISが独自に航空機を運用すれば、テロ集団で前例がない。

  1. SOHRによれば操縦士はイラク脱走者かISISが新たに訓練したものであるという。「イラク軍から脱走した将校がイスラム国に加わり、戦員を訓練し操縦できるようになった」とSOHRは報告している。

  1. 「訓練過程はアル・ジャラ al Jarrah 空軍基地で行われている。同基地はアレッポ Aleppo 東部にありシリア内のイスラム国で最重要基地と見られる」

  1. しかしテロリスト集団に軍用機の運用力はあるのか。軍用機を飛ばすには訓練を積んだ搭乗員以外に支援部隊や整備施設が必要だ。ISISは全て整備していないとみられる。

  1. まして最小限の支援インフラで新規に乗員訓練は容易ではない。ソ連時代の頑丈なハードウェアでもこれは変わらない。通常なら戦闘機パイロット養成は2年間かかる。しかしテロリスト集団が自殺攻撃に使う程度の訓練を施す可能性はあるが、ありえないだろう。

  1. それでもアルジャラ飛行場で航空機運用目撃されているとSOHRが公表している。

  1. 目撃談では戦闘機各機は低空飛行していたという。SOHR報告はイスラム国戦闘員がアレッポとアルラッカ al Raqqa で政府軍基地を占領し、機材を入手したとしている。「イスラム国が各機に搭載するミサイルまで取得しているかは不明」(SOHR報告)■


2014年7月12日土曜日

イラク軍はISILに勝てるのか---勝てないとイラクはどうなるのか


What if Iraqi Military Can't Defeat ISIL?

Jul. 9, 2014 - 03:45AM   |  
By JOHN T. BENNETT   |   Comments
Senate Armed Services Committee Holds Closed Heari
.カール・レヴィン上院議員によればイラク陸軍の能力評価が米国の取る最初の一歩でその後に追加行動を選択すべきだという。 (Mark Wilson / Getty Images)

合衆国にとって最悪のシナリオはこうだ。イラクの各民族が統合政権の樹立に失敗(あるいは放棄)、軍が崩壊する。
  1. ある上院議員はCongressWatchにほとんどの関係者はその可能性を「排除」していると告げた。ただし専門家はその可能性はあると言っている。

  1. 米軍上層部は「評価チーム」をイラクに送り、バラク・オバマ大統領と政府上層部に状況を正確に理解させようとしている。

  1. 政権内部と議員は派遣計6チームから解体状態のイラク軍の状況、軍再建の必要条件を聞こうと待ち受けている。

  1. ホワイトハウス関係者、議員、専門家からはイラク・レヴァント・イスラム国家 (ISIL)が占拠した地点を奪回するには二つ条件があるという。ISILはこの数週間でイラク西部北部各地を占拠している。

  1. 一つがイラク軍がISILの戦闘部隊を打破すること。ISILはイラク可国内で米軍部隊と、またシリア内線でも戦闘経験が豊かだ。

  1. もう一つは政治枠組みを変え、マリキ首相とシーア派優遇をあらため、残る主要民族集団スンニ派とクルド族への締め付けを改めることだ。

  1. 上院軍事委員会委員長カール・レヴィン議員(民、ミシガン)に記者団が8日にイラク派遣部隊を300人から780人に引き上げている米国はこれから大規模なイラク派兵に向かうのかと言う質問を浴びている。

  1. レヴィン委員長はこの問題に直接答えず、まずペンタゴンによるイラク軍事情勢評価結果を見てみたいと答えている。「今この段階で必要なのはイラク陸軍の戦闘能力を正しく評価すること」

  1. 米国の軍事評価は「イラク国内に団結して共通の敵とたたく意思があるのか」との問いへの答えとなるだろう。

  1. 「イラク軍がISILの動きを止める力があるのかどうかの評価が出るまで、下手に動くわけにいかない」

  1. では評価結果でイラク軍再建が無理でISILを打ち破り国境の外まで追い返す能力がないと判定されたらどうなるのか。

  1. 「その場合、政治指導者がイラクで共同戦線を張り、政権基盤を強くし、これまで同国政府がしてこなかったことをするかどうか、つまりスンニ派をもっと巻き込んで国を政治的に統一出来るかどうか、と言う点だな」(レヴィン)

  1. CongressWatchはレヴィン議員に米国の見直しにイラク軍がまだその任務ができる状態でなく、スンニ、シーア、クルド間の政治再建にも失敗した場合どうなるのかを尋ねてみた。「みんなその可能性は最初から除外しているよ」

  1. だが真の意味の挙国一致政権がイラクで生まれるかは微妙だ。カーネギー平和財団のマーワン・ムアシャーMarwan Muasher からイラクでそんな形の政権を作ること、社会を変えることには「苦痛が伴い、スピードは遅い」ものになると警鐘を鳴らしている。「イラク情勢は好転するよりも悪化する可能性が高いが、最終的には排他主義的政策ではちゃんとした社会を構築できません」

  1. ブルッキングス研究所のマイケル・オハントンMichael O’Hanlon 、ジョンズホプキンス大のエドワード・ジョセフ Edward Joseph はもう一歩先を行き、イラクを三つの自治区に分割しそれぞれの出身民族別にする構想を提唱している。そのいわんとする点は全民族を統合する政権は成立しえないという点だ。

  1. この二人は社説欄に共同投稿し、「連邦制でも機能しないだろう。合衆国と欧州がイラクで目指しているのはイラクの弱体化でもなければ分割した姿でもないが、そのどちらにでも結果を受け入れることは可能だ。それよりも大事な目標はISIL打倒である」

  1. イラク陸軍が問題だ。ISILの6月進攻ではたびたび武器を放棄し、戦線を離れている。

  1. 国際戦略研究所による直近の報告書ではイラク軍への期待は見られないと総括している。「イラク軍は引き続き兵站、情報収集能力を欠いている。政治が指揮命令系統に介入し、指揮官の職位が売買されているほか内部汚職が多数見られる。米軍から委譲受けた施設やシステムの維持ができておらず、他にも問題が多数ある状態だ」としている。■