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2019年9月18日水曜日

T-Xは今日からT-7Aレッドホークになりました


Air Force announces newest Red Tail: ‘T-7A Red Hawk’
Secretary of the Air Force Public Affairs / Published September 16, 2019

NATIONAL HARBOR, Md. (AFNS) --
空軍の新型高等練習機T-Xに制式名称がついた。T-7Aレッドホークである。空軍長官代理マシュー・ドノバンが空軍協会主催の航空宇宙サイバー会議で916日発表した。
 壇上には「タスカギーエアメン」の一人チャールズ・マギー大佐が寄り添った。第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争を戦い抜き400個もの勲章を授与されたパイロットだ。
会場では同機の紹介ビデオの上映に続きドノバン長官代行は「みなさん、これが最新のレッドテイルです」と、T-7Aレッドホークの4分の一モデルを披露した。機体の尾翼は赤く塗装されていた。

 「レッドホークという名称はタスカギーエアメンとその代名詞赤く塗装した尾翼に敬意を払うものです」とドノバンは述べ、「同時にカーティスP-40ウォーホークにも敬意を示しています。同機は1938年に完成し、初のアフリカ系アメリカ人専用部隊として陸軍航空軍が編成した第99飛行隊の機材となりました
「タスカギーエアメンはその後リパブリックP-47サンダーボルト、ノースアメリカンP-51マスタングの尾翼をともに赤く塗装しました」
 T-7Aレッドホークはボーイング製で第5世代戦闘機パイロット養成に使い、高G機動飛行、情報センサー制御、高迎え角飛行、夜間運用ならびに空対空戦や対地攻撃の訓練に供される。

 「T-7Aは次世代機の基礎となる機材だ」とドノバンは述べ、「レッドホークにより次世代のパイロット養成に必要な高性能訓練が可能となる。データリンク、レーダーシミュレーション、スマート兵装、防御管理装備の他合成訓練の実行能力が手に入る」

高性能技術や性能とともにT-7Aには高性能シミュレーターもありシステムソフトウェアのアップデートはより早く、簡単に行える。機体設計はアクセスパネルが開き、整備要員の手が届きやすい構造となっている。

 T-7Aの特徴として尾翼を二枚持ち、主翼前縁部の基部は低速での取り回しを考慮し、第5世代機パイロット養成にはぴったりだ。エンジンは単発ながら現行のT-38Cタロンの双発エンジン合計より大きな出力を出す。     
T-38からF-35への距離は昼夜の違いほど大きい」と空軍参謀総長ディヴィッド・ゴールドフェイン大将は述べている。「しかしT-7Aの登場で距離は遥かに縮まる。ここが重要なポイントで同機で訓練を受けたパイロットは高性能機材に早く習熟できるからであり、脅威の進展に合わせパイロット養成も迅速に進める必要がある」
総額92億ドルの契約がボーイングに20189月に交付され、T-7Aを計351機、シミュレーター46基のほか関連地上装備を納入据え付ける内容だ。空軍教育訓練本部が共用中の機齢57年になるT-38Cタロンと交代する。
最初のT-7Aおよびシミュレーターがテキサスのサンアントニオ-ランドルフ共用基地に2023年に配備予定だ。その後養成過程の全基地がT-38Cから機種転換していく。基地にはコロンバス空軍基地(ミシシッピ)、ラフリンAFB,シェパードAFB(ともにテキサス)、ヴァンスAFB(オクラホマ)がある。■


2019年5月22日水曜日

米空軍向けT-Xの現況、2,600機の最大需要を皮算用するボーイングの考え方がわからない


コメントは下にあります。

Boeing Sees Market for 2,600 T-X, Derivative Aircraft

5/15/2019
​––JOHN A. TIRPAK


T-X 高性能練習機、2019年5月14日、ボーイングのセントルイス施設にて。Staff photo by John A. Tirpak.


ーイングはT-X高性能練習機の需要規模を最大2,600機と見ており、練習機にとどまらず軽攻撃機、軽戦闘機にも転用できると同社でT-X事業を統括するウィリアム・トーガソンが述べている。


内訳には「空軍がT-X競作時に求めていた最大475機があり、練習機仕様以外の米空軍用は含んでいません。60年も供用中T-38の分だけです」(トーガソン)
トーガソンはメディア向けにボーイングでT-Xを生産するセントルイス施設のツアーで説明し、参加メディアの旅費宿泊費は同社が負担している。
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ボーイングは空軍向けのT-X年間48機生産を準備中だが空軍が前倒し調達を求めてくれば、あるいは海外販売が成立すれば60機まで増産できるとトーガソンは説明。


具体的な導入国が出現すればボーイングあるいはSaabが対応すると説明し、Saabが同社のJAS-39グリペン戦闘機を運用中の諸国の発注に対応すると示唆した。SaabからはT-Xの部品製造をインディアナ州ウェストラファイエットで行うとの発表が先週あったばかりだ。生産分担で具体的な説明はなかったが、トーガソンはSaabがコックピットより後部の機体を製造し、ボーイングは主翼、尾翼、機体前方を担当すると概略説明をしていた。


トーガソンはT-Xの海外販売への期待に触れ、「他に競争相手がない」とし空軍がボーイング提案に対して「100億ドルの節約効果を産んだ」とコメントしたことを紹介。


ボーイングがT-Xコンペ用に製造した2機で空軍は飛行性能データを集めたが、2機は試作機ではないとする。そもそも試作機の仕様はなかったという。例として2機には空中給油装備はついていない。ただし搭載用のスペースは残してある。トーガソンは2機は技術生産開発用すなわち飛行可能でデータを提供しソフトウェア機能を実証しつつ空軍、ボーイングで共同でT-Xの性能を定義していく機材だという。一号機は競作で71回のフライトをこなし二号機は15回飛んだという。信頼性の証明として一日で四回飛んだこともあり、「空軍の使用条件を再現した」とトーガソンは説明。


ボーイングは初号機をランドルフ共用基地(テキサス)で2023年に運用し初期作戦能力獲得を2024年に想定している。空軍と機体は「お互いに学習いている」とし、つまり空軍はT-Xの潜在力を最大限活用する方策を探っているのだ。


T-Xはアルミ製の機体で複合材は機首に使っているだけだ。金属性機体は製造が簡単で修理も容易だが軽量素材の活用は要求内容に入っておらず設計段階から「考慮の必要はなかった」とし第一線戦闘機材の想定ではないことがわかる。それでもT-Xは8G以上に耐えられるという。


ボーイングは機体と並行して訓練用ソフトウェアも開発中だ。新型機の導入で飛行形態も変わる際にシミュレーターで発生する潜在問題をいかに排除するかが開発の狙いだ。機体搭載と同じソフトウェアがシミュレーターにも導入される。ボーイングは最小でもシミュレーター46式を製造し、空軍は120式までの導入を想定する。またデスクトップコンピューターと操縦装置でパイロットはT-Xのスイッチ操作と飛行を学ぶ「アプリ」もあるという。


実際にT-Xデスクトップシステムを児童に使わせてみたところ「iPhone同様に」直感的に制御できたという。「アプリ」方式だとオープンシステムアーキテクチャーの機材に機能を簡単に追加できる利点がある。T-Xで訓練を受けるパイロットはこの方式を自然に体得するはずとトーガソンは述べた。


T-Xでは整備性も設計で考慮した。高翼構造で容易に機体まわりを移動できるし、アクセスパネル開閉に特殊工具は不要だという。コリンズが製造する降着装置はF-16と共通で機首部分が前方に格納される点のみ異なる。


T-Xでは機内酸素供給系統を新規設計し他機種で見つかった問題の再発を予防するという。■


いつまでたってもT-Xというのは変だなと思っていましたが、採用したボーイング案を煮詰めて最終仕様の機体にするという作戦なのですね。その時点で制式名が発表になるのでしょう。それにしても破格の価格で空軍に売り込んだボーイングは海外向けや派生型で充分利益を確保するという魂胆なのでしょう。さすがですね。それにしてもどうやって2,600機になるのか内訳を聞きたいものです。

2019年3月13日水曜日

T-Xは軽攻撃機、アグレッサー機材にも転用したいとする米空軍ACC司令官

ひとつわからないのはT-XがいまもT-Xと呼ばれている点で、採択されればすぐにでも呼称がつくのですが、いまだにT-Xのままですね。軽攻撃機としては当方はスコーピオンに期待していましたが未だ鳴かず飛ばずですね。ボーイングT-Xがその任務もこなせるのか、これから注目しましょう。


US Air Force’s new trainer jet could become its next light-attack or aggressor aircraft 米空軍の新型練習機は軽攻撃機、アグレッサー機材に発展する可能性を秘めている


By: Valerie Insinna    


ボーイング-サーブのT-X提案が空軍のT-X競作で2018年9月に勝ち残った (John Parker/Boeing)



空軍のT-Xには練習機以外に、アグレッサー機材や軽攻撃ミッションにも転用の可能性があると航空戦闘軍団司令官が3月7日述べた。
T-X練習機の調達は供用50年に及ぶT-38の交替が主眼であり、これが最優先事項であるのは変わりはないが、空軍は別用途の検討もしており今後の調達に反映されようと、マイク・ホームズ大将が空軍協会シンポジウムで語った。
「同機の軽戦闘機型を想像してほしい。訓練で敵機役をさせてもいい」
「非公式レベルで別型式の要求性能を検討させている。いつ公式になるかはいろいろな要素次第だ」とし、予算が念頭にあると付け加えた。
では空軍はどんなT-X発展形を想定しているのだろうか。


軽攻撃機構想
空軍は軽攻撃機に転用する道筋を明らかにしていないが、上層部によればターボプロップ機材の性能を超える物が欲しいという。T-Xあるいは別の低コスト機に期待しているとホームズ大将は述べたが、2020年度っ国防予算の詳細が未公表のいまは詳細を話してくれなかった。
「同機やT-X競作の各機のサイズと飛行経費今後の実証の対象だ」
2017年の軽攻撃機試験第一ラウンドで空軍は軽戦闘機を試していた。テキストロンのスコーピオンだがターボプロップ機のA-29やAT-6を合格とし同機を避けた。
スコーピオンにはターボプロップ機にない性能として速力や操縦性さらに機内兵装庫がありプラグアンドプレイ式でセンサー搭載が可能だ。AT-6やA-29の有利な点はふたつで、購入価格が安く製造ラインがすでに存在していることで、スコーピオンは未だ採用国はない。
ボーイングのT-Xはこうした課題にそのまま答えていない。ひとつにはT-Xでは350機調達を前提に生産ライン立ち上げコストを想定し単価を引き下げている。
ホームズ大将はボーイングが同社のブラックダイヤモンド生産方式をT-X設計段階から使用していると説明。ブラックダイヤモンドとは大幅な生産コスト削減のため新しい製造技術を同社の民生部門から流用する。
「機体の共通化で量産効果が生まれ、単価が下がり供用を長く維持できるだろう」(ホームズ)
ただし非武装のT-Xは決して安い買い物にならず、各国に売り込むのなら負担可能な価格に抑える必要がある。


アグレッサー部隊用機材
米空軍は空戦訓練で敵機役となる「レッドエア」機材の新規調達を今年にも公募する予定だが、要求性能は高くなる見込みでアグレッサー機材に新型機が必要になりそうだ。
T-Xで各社が採用をめぐりしのぎを削っているころ、空軍はT-Xのアグレッサー機転用は真剣に見ていなかた。だが契約が交付されると、新型機で要求性能を実現できるか検討しはじめたとホームズは明かした。
航空戦闘軍団司令官はWar on the Rocksの1月記事で深掘りした意見を表明している。T-XはT-38タロン後継機の位置づけだがタロンを飛ばすのは1950年代の戦闘機を操縦するのと大差なく、同機で体得できるのは基礎戦術だけだとしていた。
T-Xは飛行性能とセンサー機能が充実し現在の第一線戦闘機に近く、ホームズ大将はF-15、F-16、 F-22、 F-35の操縦訓練にT-Xが活用できると期待する。
「敵機役として訓練に活用できる」のではないかと記していた。

「T-Xの低運航コストを活かせば敵機役として活躍の余地は伸びるのではないか。第四世代機の半分程度、第5世代機の5分の一という水準なのでパイロット訓練を増やすか、低コストで実施できるはず」とホームズは寄稿している。

2018年10月27日土曜日

低価格でT-X契約をもぎ取ったボーイングの勝算....

Aerospace Daily & Defense Report

Details Emerge On Costs, Rewards Of Boeing Low-Cost T-X Bid ボーイングがT-Xで提案した低コスト、見返り内容が判明

Oct 24, 2018Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report


Boeing


空軍T-X練習機契約獲得で決め手となったボーイングの低価格構造の詳細が新たに明らかになった。コストを重視しハイリスクながら報酬も手に入れる可能性がある。
「T-Xは総計2,600機の市場を開き、サポート支援でも需要がある」とボーイングCEOデニス・ムイレンバーグが第三四半期営業報告(10月24日)で見通しを語った。
ボーイングT-X事業の最大のパートナーかつサプライヤーのSaabからその前日に市場需要見通しでより詳細な情報が開示されていた。
米国だけでも高等ジェット練習機及び軽攻撃機として1.000機の需要があるとSaabCEOハカン・ブシュケが発言。最低でも同程度の需要がその他国全体であるとも述べた。
ボーイングとSaabの見通しが正しければT-Xはロッキード・マーティンにF-35契約が交付された事案以降では最大規模の事業になる可能性がある。
ムイレンバーグは「この事業が有望投資案件だとおわかりだと思う」と述べた。
ボーイングのT-X事業では低価格提示によるコスト超過のリスクが高いことを最初から見込んでいるようだ。同社はT-Xで米空軍がオプションすべて行使すれば合計475機を92億ドルで提供するとした。ただし空軍の要求は依然として351機のままだ。
ボーイングは8月末からたてつづけに大型契約三件を獲得しており、MQ-25(米海軍)、MH-139(米空軍)につづくものとなった。
市場アナリストを前にロッキード・マーティンCEOマリリン・ヒューソンは9月23日にボーイング提示価格で実施すれば事業赤字50億ドルになると説明していた。
ボーイングは6.91億ドルを第三四半期だけでT-X、MQ-25両契約の欠損分として計上と伝えられている。だがムイレンバーグは長期的に見ればその支出を上回る見返りがあるとの説明。
「現時点の契約内容を超えた製造規模になると見ており、今回の投資で2020年代はじめに生産開始となりその後数十年間に渡る生産となる」と述べた。
ボーイングは2011年にKC-46給油機契約を今回同様の状況で獲得し、エアバスを40億ドル下回る価格を提示した。米空軍は契約を固定価格制とした。同社は767生産でそれまで数十年の経験がありながらKC-46Aでは赤字が重なり35億ドル程度になっている。さらに1.77億ドルがここに加わるとの第三四半期発表が出た。
T-Xではリスク低減策として試作機は二機としたとムイレンバーグが述べ、2017年から試作機は合計71回のフライトを実施したと說明。

「予め投資することでリスクを減らしており、給油機案件とは大きく異なる」とムイレンバーグは說明。■

2018年10月2日火曜日

☆ボーイングT-Xの受注成功から見えてくる次の可能性とは

ボーイングのT-X選考採択は先に速報でお知らせしましたが、今回は少し詳しくそのインパクトを解説する記事をご紹介します。と言っても依然として新型機の性能は不明です。しかしこうやって見るとT-38って本当にコンパクトな機体だったんですね。というか現在の主要戦闘機が大型化してしまったのでしょう。では日本はこの機体(T-いくつになるんでしょう)に関心を寄せるでしょうか。


Boeing's T-X Win Is Really Much Bigger Than Just Building A Replacement For The T-38 ボーイングのT-X受注成功にはT-38後継機生産以上の意味がある

Boeing's big win has wide-ranging impacts that go far beyond the USAF's need for a new trainer alone. ボーイング案の採択はUSAFが求める新型練習機の枠を超えた影響を与えそう

BY TYLER ROGOWAYSEPTEMBER 28, 2018


THE AERO EXPERIENCE


んとも興奮を感じるニュースだ。長年待った挙げ句USAFが選定したジェット機は傑作とはいえ半世紀が経過したT-38タロンの後継機となる。ただボーイングが勝ち取ったT-X案には単なる新型機以上の意味がある。今回の選定結果から多様な影響が生まれ、ことにボーイングを根本から変える効果がある。
まずボーイングに祝辞を送りたい。同社は回転翼機、固定翼機、無人機と三連勝で、今回は固定翼有人機でも結果が出た。また競合したロッキードレオナルド両社も互角に戦い、それぞれの製品に多大な情熱を注ぎ込んできた。だがなんといってもノースロップの伝説とも言えるT-38タロンの足跡がどれだけ大きかったか思い知らされる。
USAF
原型YT-38の初飛行は60年ほど前だった
同機の原型は1959年4月に初飛行し、以後数万名のパイロットを養成しただけでなくサンダーバーズで曲芸飛行を展示し、U-2やB-2の乗員まで養成し、NASA宇宙飛行士の飛行時間確保にも役立っている。またアグレッサー役もこなし、標的がほしいF-22部隊に重要な機体になっている。

USAF
ティンダルAFB所属のT-38AがアグレッサーとしてF-22と飛行中


タロンの業績はそれだけではなく、別の成果も生んだ。USAF初の超音速練習機から歴史上で最も成功した機材が生まれた。F-5A/Bフリーダムファイターであり、F-5E/FタイガーIIである。
各機は輸出を通じて米航空戦力を世界に広げる役目を果たし、一部信頼に疑問が残る同盟国や高性能機導入の資金が不足する国にも輸出された。さらにF-5は海軍、海兵隊、空軍の敵機役となり、海軍戦闘機ウェポンスクールやUSAFウェポンズスクールで活躍している。事実、海軍や海兵隊向けに民間企業TacAirF-5をアグレッサーとして運用している。
USAF
空軍のF-5Eは敵機役として冷戦時に各地の航空隊を支援してきた


F-5を戦闘任務に投入している国がまだある。一部は新型エイビオニクスに改装され、第四世代機同様の性能を発揮している。F-5の直系の後継機を目ざしたF-20タイガーシャークは有望視されたが採用国は現れなかった。
USAF
ランドルフAFB所属のT-38C編隊


こうした中でノースロップ・グラマンが途中で放棄したT-X案を目にできなかったのは悲しい。同機はスケイルド・コンポジッツが設計製造し、実際に飛行していた。T-38の輝かしい成功を背景にノースロップ・グラマンは新型機をモデル400と呼び、ボーイングに代わり採用されたかもしれない。だがいろいろな理由でノースロップ・グラマンは途中で競合を降り、空軍はボーイング案を採択したのだ
SCALED COMPOSITES
ノースロップ・グラマンのT-X案はT-38をルーツとし数回の飛行を実施したが同社は競作から脱退した


そうなるとボーイングT-Xは今後が期待され、実際に展開するのは容易だろう。だがボーイングが採択されたことで同社は今後長年に渡り戦術ジェット機を製造することになりそうだ。もちろん、F-15やF/A-18の製造ラインの動向とは無関係である。
米海軍向けMQ-25無人給油機契約の獲得とあわせ、ボーイングのセントルイス工場に明るい将来が開けた。このことはボーイングが今後も戦術航空機製造に残ることを意味し、製造能力とともに設計能力で有力な競争相手に留まるだろう。わずか一二年前には同社の将来は大きく疑わしいとされていたのだが
BOEING


ロッキード・マーティンにとって受注失敗は大きな痛手だが競合があることは悪いことではない。同様に受注を逃した企業は多い。ロッキードには多数の受注案件があるのも事実だ。
多くの点で今回のT-X入札でボーイングが超積極的だった可能性がある。同社はなんとしてもこの案件に勝つ必要があったので至極当然とも言える。同社の国防部門にとり受注は死活的な意味があったのだ。今回の契約は固定価格制度のため利益が薄く、企業経営面でリスクがあるが、T-X受注には短期間の利益獲得以上の意味がある。
T-38の前例から新型機は相当の年数にわたり飛行する可能性がある。供用期間を通じ支援や開発関連の契約が止めどもなく生まれることになる。ボーイングはOEMメーカーなのでこうした契約の大部分を獲得する可能性が高いし、一部では競合相手が生まれないだろう。そこで同社が戦術ジェット機の製造に長期間携わる可能性があるわけだ。
ここに企業としての名誉もからむ。USAFの戦闘機パイロット全員で過去50年にわたり何が共通要素かわかるだろうか。
T-38タロンの操縦だ。
USAFのジェット戦闘機パイロットを生み出す機材を提供していると特別な意味が生まれる。ボーイングのT-Xは次世代のUSAF戦闘機パイロットとなる男女ガ同機の操縦からスタートし、その後戦闘機パイロットになる。USAFの方針決定をになう者もあらわれるだろう。
USAF
訓練飛行を終えたT-38Cタロン


ペンタゴン以外にも世界各国でジェット練習機需要があり、ボーイング機が最新かつ最高の機体になる可能性が生まれる。さらに海外受注では同機がさらに改良され大規模な補給支援体制を利用できるとふれこみ、スケールメリットも生まれる。そうなるとUSAF向け475機以外の大量の輸出需要にも言及しないといけない。
この機体は練習機にとどまらない。軽戦闘機にもなる。
BOEING
ボーイングT-Xがフルパワーで離陸中


T-38ではJ85ターボジェット双発で合計5,800lbを生んだ。ボーイングのT-XはGE-F404ターボファン単発だが出力はほぼ三倍の17,200lbだ。また尾翼は二枚構造でスラットを備え、前縁基部を広げた構造で低速域の取扱を大きくしながら機動性も高い。T-X契約の勝因となったのがこうした性能だったのは驚くに足らない。
USAFはT-Xを次世代アグレッサー機として注目しており、F-16に匹敵する性能がありながら運用コスト、取得コストをはるかに低く抑えられる。第5世代世代機の敵機役として通常型戦闘機では対抗できず空対空戦の基本訓練では無駄になり予算面でもそのまま続けられなくなる。民間請負業者がこの穴を埋めるだろうが、USAFには今日同様にアグレッサー部隊が必要であり、将来は拡充するとしても今よりも効率よく運用する必要がある。ここにT-Xが活躍する余地が生まれる。
BOEING
ボーイングがT-X提案を公表した際の写真

機体サイズが小さいT-Xは視界内距離で視認が難しくなる。JAS-39グリペン多任務戦闘機同様の設計と推力を備えた同機は手強い小型機になる。訓練用装備を搭載し実際に近い空対空戦の訓練をはるかに低い費用で実現できるはずだ。またジャミングポッドや訓練用ミサイルを搭載すればそのままで第四世代機の悪役を演じることができよう。小型AESAレーダーや電子戦装備あるいは赤外線探知追尾装置を搭載すればアグレッサー機材とともに低価格軽戦闘機にもなる。
ペンタゴンに軽戦闘機の仕様要求は今は存在しないが、将来はボーイングT-Xの輸出の可能性が出るはずで、F-5事例を踏襲するだろう。ロッキードが提示したT-X案のT-50/T-100がその例でF-50やFA-50を韓国航空宇宙工業が複数国に輸出している。
ROKAF
FA-50はT-50を原型とし、ロッキード・マーティンは今回のT-Xで提案したT-100の原型となった。軽戦闘機需要では大型機並の特徴を低価格で手に入ることが求められる

今日の航空戦闘で成功するために大事なのはセンサー類、通信装置や兵装であり、基本性能ではない。ボーイングのT-Xは十分な性能を小型かつ安価に実現する。だがなんといっても大規模な支援インフラが現に存在し、規模の経済の効果を訓練機型から得られる点が大きい。
ボーイングT-Xのような機材が生産されれば米国にとって戦略的恩恵も生まれる。F-16生産は縮小されサウスカロライナに移転されており、いつまで生産ラインが残るか不明だ。イーグルやスーパーホーネットのラインも2020年代後半に閉鎖されかねない。そうなると非ステルスかつそこまで複雑でなくコストも低い軽戦術機が生産されていればペンタゴンも基本性能を備えた戦術機が今後必要となった際にその恩恵を実感するだろう。
緊張が高まる事態でも軽戦闘機版を生産するか、訓練機生産を戦闘用機材の生産に切り替えれば戦闘機不足を補える。こうした柔軟性が新規出費なくして手に入るのだ。
BOEING


米海軍ではT-45ガショークの運用が長く続いており検討が必要だ。T-45はまだ期待寿命が残っており、耐用年数延長策も実施中だがT-45はボーイングT-Xと比較すれば性能面で見劣りがし、海軍は後継機の検討に入るだろう。
そうなると新型機を提供できるボーイングの立場は強くなり、あえて言わせてもらえればT-Xから海軍仕様が生まれれば検討対象になるはずだ。既存機種から派生型を作るのほうがはるかに経済的になる。
ボーイングはNAVAIRと良好な関係を既に築いており、空母運用機の条件を熟知しておりスーパーホーネットやグラウラーを生産中で今後はMQ-25が加わる。またマクダネル・ダグラスを吸収合併したことでT-45も今は自社製品だ。そこでボーイングがUSAF向けに練習機を数百機生産して海軍用の練習機も生産すると他社は対抗できないだろう。
USN
T-45はBAeのホーク練習機が原型でT-45の納入が続いた1990年代時点で数十年前の設計だった。同機は耐用年数が長いとはいえ、機種切り替えが必要になるのは当然だ。


海軍、海兵隊で敵機役を演じるF-5N、F-5Fがおよそ40機あるがこれも永遠に飛べるわけではない。スイス空軍を退役した機体に二度目の奉公をさせている。T-Xはここでも有望な選択肢になり、F-5を上回る性能を示すはずだ。
MILAN NYKODYM/WIKICOMMONS
SAAB JAS-39が雪に覆われた滑走路を離陸している


T-Xがスウェーデンの特殊ニーズすべてを満足できるというつもりはないが、航空戦闘や機体設計でのSAABの独特の視点は米国にも必要だ。USAFが将来の作戦要求内容をまとめる際には上層部の多くが意見を同じくするだろう。
今回の競合ではボーイング提案のみが完全新型機であり、そのため最新の内容だった。あきらかにUSAFは同機の可能性や今後の性能向上に期待している。つまり空軍はボーイング案を採択し他社の実証済み設計案を棄却したことでリスクも発生するがそれを上回る効果を期待しているのだ。
BOEING


現時点の予算環境を考慮すればこの決定には合理性がある。USAFは完全新型専用機を採用することで次世代練習機の今後の発展性に賭けているのだ。
国防予算が今以上に減ってもボーイングのT-Xには練習機以上の役割が期待できる。USAFの要求内容に沿って専用に設計された同機があることは国にとっては幸運だが、機体に今後の発展ができる余地があり各種ミッションをこなす力が備わることもプラスに働く。
そうなるとボーイング機の詳細を早く知りたいところで特に性能面の生数字に興味を惹かれる。今後、ボーイングとUSAFから情報が大量に出れば同機の性能等が解明されるはずなので期待したい。■
Author's Note: A huge thanks to The Aero Experience for sharing their awesome image seen at the top of this article with us. Make sure to check out their site here.  

Contact the author: Tyler@thedrive.com