(The National Interest記事を基に作成しました)
生産終了から約10年、ボーイングが再びC-17 グローブマスターIIIの製造を検討中だが、それは決して簡単な話ではない――そして、費用も莫大だ。C-17の生産再開構想は魅力的だが、現実は厳しい。
今月開催されたパリ航空ショーで、ボーイング・グローバル・サービス部門の副社長トゥルビョーン・ショーグレンは、C-17への国際的な関心が高まっていることを認めた。しかし、ボーイングには生産能力がなく、後継機の計画も存在しない。
「現時点でこの航空機に代わる新しい計画は存在していません。そのため、アメリカ空軍および国際的な運用国と連携し、延命および近代化プログラムを実施しています」と(ショーグレン)。
世界的な需要増——しかし障害も多い
アメリカ空軍は現在も223機のC-17を運用中で、イギリス、オーストラリア、カナダ、インド、カタール、UAE、クウェート、NATO加盟国などの同盟国でも現役で使用されている。その高い搭載能力(約45トン)と、荒れた短い滑走路(1,000m以下)での運用能力は、他機にはない特長だ。
日本を含む複数国が購入を希望しているが、生産が終了しているため手に入らない。M1エイブラムス戦車を空輸できる戦略輸送機はC-17のみであり、エアバスA400M、エンブラエルC-390、川崎C-2などの競合機ではその任務をこなせない。
ロングビーチ工場という壁
最大の障害は生産拠点だ。ボーイングは以前、カリフォルニア州ロングビーチにあったC-17の生産工場を閉鎖しており、その土地は現在売却中。新たに工場を建設するには、時間と数十億ドル単位のコストがかかる。
RANDコーポレーションによる2013年の試算では、生産を再開して150機を製造すると**約80億ドル(約1兆円)**が必要だとされている。
現在の見込み需要が「数十機」規模であることを考えると、投資回収(ROI)は見込めず、ボーイングにはリスクの高い賭けとなる。
同盟国にとっての戦略的価値
インド太平洋の緊張が高まるなか、日本がC-17に興味を持つのは当然だ。災害対応や戦略的移動力、抑止力の観点から、長距離輸送能力は不可欠だが、アメリカも手放す余裕がない今、どこからも調達できないのが現実だ。
ボーイングはセントルイスでF-15EXを生産中であり、第6世代戦闘機「F-47」への転換も視野に入ってきた。C-17の再生産ラインに資源を振り分ける余地は小さいのかもしれない。
代替機なき時代へ
後継機の計画が存在しない今、C-17の運用寿命は2070年まで延長される見込みだが、それまでの数十年を現有機体でしのげるかは不透明だ。
ボーイングは既存機の延命とサポートに注力しているが、世界の戦略空輸ニーズにそれだけで対応しきれるのか――注目が集まっている。