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2020年3月15日日曜日

戦闘機像に大きな転機がやってくる:忠実なるウィングマンの導入時期を決めたACC

ローバー次官補提唱のiPhone方式の計画的陳腐化が一番実現しやすいのが無人機の分野でしょう。F-35のように40年供用を前提としたビジネスモデルではとても対応できません。いよいよ有人戦闘機が終焉を迎えるのか、スカイボーグが急発展するのか、それとも筆者が支持する大型戦闘航空機の登場につながるのか、2020年代は大きな転換点になりそうです。

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F-16ブロック25/30の後継機が低コスト消耗品扱いの無人機になる可能性がある。その例がクレイトスXQ-58ヴァルキリーだ。Credit: Kratos

空軍は最先端技術に明るい民間専門家を招き、パイロットや隊員向けに技術革新の最新知識を普及させている。だが2月28日の航空戦シンポジウム会場にやってきたイーロン・マスクには別の考えがあった
スペースX、テスラを立ち上げてきた本人が空軍協会の会場に到着すると空軍の戦術航空戦力の中心とされてきた戦闘機に対し、「ジェット戦闘機の時代は終わった」と述べ、聴衆を挑発した。進行役のジョン・トンプソン中将は即座に話題を切り替えた。
その後、マスクはAviation Weekにツイッターで返答し、真意は戦闘機は今後も残るが、パイロットが搭乗する必要はないと言いたかったのだとした。「競争相手は無人戦闘航空機で、人員で遠隔操縦されても、自律運航能力で操縦性が補強できる」。
マスクの航空戦力に関する意見は多少加減して聞くべきだろう。本人の企業群は宇宙空間への進出、自動車産業、鉱物採掘にあたっている。マスク自身に航空業界での経歴はない。
空軍上位関係者にはマスクと異なる見解がある。ウィル・ローパー空軍次官補(調達、技術、兵站)は将来の空軍力に自律運航機材を多数配備し、有人機を補完させるべきと主張している。航空戦闘軍団(ACC)司令のジェイムズ・ホームズ大将は無人戦闘機材の編入を2025年から27年とはじめて日程表で示した。
当面は旧式化進むF-15C/DをボーイングF-15EXやロッキード・マーティンF-35Aで更改することに空軍は集中する。一方で空軍研究本部(AFRL)は低価格「消耗品」扱いの新型機材で実験を開始した。
第一弾がクレイトスXQ-58Aヴァルキリーで、2019年3月に初飛行した。空軍はXQ-58Aまたは類似機材に人工知能の「頭脳」を搭載し、いわゆる「スカイボーグ」として飛行させる予定で、飛行を重ねるたびに機体制御を学習させる。こうした機能はマスクの描く将来機材と近いが、直ちにF-15Cの代替になるには技術が早熟なためF-15EX導入の決定に至った。
ホームズ大将は次段階の機材が5ないし8年で登場すると述べる。この年数はXQ-58Aやスカイボーグのような機材の技術成熟期間と一致する。空軍はF-16ブロック25、30数百機の更新が必要となる。
「新型機として低コストかつ忠実に行動するウィングマンとして従来と全く異なる機材が登場する」(ホームズ大将)  
ホームズ大将はローパー次官補と2月に会見し、導入可能な価格かつ高性能機を3から5年間隔で小ロットで連続生産する方法づくりを打ち合わせた。空軍は広大な太平洋地区を念頭に基本要求性能(航続距離やペイロード等)の明確化に取り組んでいる。 
「戦闘機開発に応用してきた計算式はヨーロッパ環境ならまだ有効だ」とホームズは述べる。「だが太平洋では機能しない。距離感が違いすぎる。そのためNGAD他新規企画では、従来の戦闘機形態と異なる機材が出てくるはずだ」
航空戦シンポジウムの展示コーナーにヒントがあった。従来型機材のF-35やF-15に混じり新規コンセプトが展示されていた。ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズ(GA-ASI)は「ディフェンダー」を公開し、プレデターCアヴェンジャーの改良型として空対空ミサイル、赤外線探査追尾センサーを搭載する。ディフェンダーの任務は支援機材の給油機や偵察機を敵から守ることで、爆撃機や戦闘機に敵地侵攻させることと同社は説明。 

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GA-ASIが提案するディフェンダーは空中給油機護衛用のジェット推進、ミサイル搭載の無人機。Credit: U.S. Air Force
クレイトスはXQ-58に引き続きとりくんでいる。AFRLは当初テストフライト用に5機分の予算を計上し、三回目の飛行で墜落したものの、テスト目標は三回目飛行で全数達成したと同社は述べている。AFRLはXQ-58の「任務遂行機材化」を加速中で、ペイロード増加で搭載兵装の強化を目指す。まず4月にF-35とF-22間の通信中継機能を実証する。
クレイトスはXQ-58の12機製造を開始しており、2021年第一四半期にラインオフする。各機は政府各機関の予算で各種実証に投入されるという。
XQ-58によりまったく新規の機種、「忠実なるウィングマン」が米国に生まれ、ヨーロッパでは「遠隔キャリア」となる。XQ-58やボーイングの空軍力チーム化システムAirpower Teaming System (ATS) で重要となるのが航続距離だ。両機種は無給油で3千カイリとF-35の約3倍の距離を飛べる。ATSと異なりXQ-58では着陸用の滑走路は不要で、パラシュートで回収する。
ACCが求めてきた次世代戦闘機の姿から見れば両機種は注目に足りない存在になるが、方法論そのものが変わりつつあるとホームズ大将は述べている。
「航空戦闘軍団は戦闘機ロードマップを作ってきた。30年後の戦闘機はどうあるべきか、と言った具合だ」「だが今は性能ロードマップで従来は戦闘機でこなしてきたミッションをどう実現するかを考えている」
空軍資材軍団(AFMC)も戦闘機の調達方法を抜本的に変えようとし、昨年10月に高性能機材事業実施室Advanced Aircraft Program Executive Officeを立ち上げた。次世代戦闘機の調達手順を再定義するのが目的だ。現代の戦闘機では開発に10年以上をかけ、数十年を要する事例もある。だが次世代戦闘機で空軍が望むのは数機種の少数生産で、開発サイクルも5年未満に抑えることだ。
配備期間も最小に抑える。供用期間が短く退役するからだ。この方法だと実施企業も開発段階で十分な利益を実現できる。現状では開発期間は赤字で配備中に利益を確保するのが通常だ。このため供用期間が短いと利益も十分出ない。
空軍はこの調達での契約形式を検討中とAFMC司令アーノルド・バンチ大将が述べている。
「業界はこの方式にどう対応するか検討中だ。各社経営陣がこの話題を口にしているが対応は各社別だ」とバンチ大将は言う。「各社が検討するのは、費用試算の方式であり、財務計画や、議会へどうはたらきかけるか だろう」■
この記事は以下から再構成しています。

U.S. Air Force Plots Fleet Insertion Path For ‘Loyal Wingman’

Steve Trimble Lee Hudson March 06, 2020

2019年11月11日月曜日

新型戦闘機開発のあり方を根本から変えようとする米空軍にはiPhoneが念頭にあるようです

Aviation Week & Space Technology

USAF Sees Five-Year Window To Invent A New Fighter Aircraft Industry 今後五年間で戦闘機産業の再構築を狙うUSAF

Oct 29, 2019Steve Trimble and Lee Hudson | Aviation Week & Space Technology

るでアップルiPhone各種を製造するように高性能戦闘機各種を迅速に製造したいとする米空軍だが、極秘の次世代航空優勢(NGAD)事業での立案方法を変えることが第一の関門となる。
これまで3年をかけて空軍はロッキード・マーティンF-22の後継機種を2030年までに実現する方法を検討してきた。当初は侵攻制空戦闘機として構想された機種は次世代F-X戦闘機として各種の新技術を搭載するものとして適応サイクルエンジンから高性能兵装や新型センサーを搭載する構想だった。
その後、2年間の期間延長が認められ代替策検討をしてきたが、2018年央に結論の目処がつくと、空軍はアプローチを変更することにした。新戦略ではNGAD事業に計上した132億ドルのほぼ半分を使う。F-Xをゼロから開発するのではなく、現行のロッキードF-35A、ボーイングF-15EXなど既存機種の改修を含めることにした。.
「新しい方法を試す好機と言える。第5世代機向けの生産が佳境に入っており、第4世代機にも多額の予算で近代化改修が進んでいるからだ」と話すのは空軍で調達、技術、補給活動を総括するウィル・ローパー次官補だ。
「つまり新方法を五カ年に渡り試す好機で、Xプレーン一機種二機種の製造と1000機規模の大量生産の中間で新機材を準備できるかを試したい」とローパーは新NGAD戦略についてAviation Week取材で答えている。
ローパー発言から極秘NGAD事業で大きな転換が昨年に発生していたことが伺える。米空軍には五カ年予算執行の形で民間産業界に新しいビジネスモデルを示したいとの意向があり、敵側も同等の技術を有する前提の航空戦の新時代には最適の方法と言える。 
この動きを支えるのが新設された高性能機材事業統括室Program Executive Office for Advanced Aircraft である。同室は10月2日に発足したばかりだ。同室をまとめるのはデイル・ホワイト大佐で以前はノースロップ・グラマンB-21爆撃機開発を迅速戦力開発室で担当していた。
ローパーが思い描くNGAD像は従来の機材調達方法と大きく異なり、単一の主契約企業に機材のライフサイクル全部にわたり責任を負わせ初回契約交付から実践能力の付与まで最低でも10年、15年にわたり契約義務を負うとするものだ。
ローパーが考える理想的なNGADの姿はこれまでの西側戦闘機開発と一線を画すもので、むしろ家電製品の開発に似ている。アップル製品では数年で陳腐化するよう設定されたiPhoneを顧客が購入し、その後は高性能版の新型に買い替えているではないかとローパーは指摘する。戦闘機事業に置き換えると、3,500時間の飛行時間で空軍は機材を10年間程度で更新している。
「次の機種の準備ができれば旧式機材は第一線から退けたい。iPhoneと似ている。新型があるのに旧型iPhoneを手元においておく理由はないはず」
今後五年間で空軍はデジタル技術でハードウェアに対応し、ソフトウェアに対しては共通OS方式でNGAD機材ファミリーに対応したいとする。
めざすところは新規企業の参入を促しながら、既存メーカーの特化設計部門たるロッキードのスカンクワークスやボーイングのファントムワークス、ノースロップ・グラマンのスケールドコンポジッツの実力を併用していくことにある。

「月間数機程度の製造能力がある企業が参入してくるのでは。今後製造の機会が頻繁に生まれるからだ。そうなればクールな設計や抜きん出た性能の機材が実現するだろう」とローパーは見ている。■

2019年3月23日土曜日

米空軍のAIウィングマン構想の名称がスカイボーグになった

Defense Newsが伝えるAIについての記事です。忠実なるウィングマンやヴァルキリーなどの機体はあくまでもハードウェア主体の装備で、操縦制御や作戦実施をし、有人機とやりとりするAIをスカイボーグと呼ぶことにしたようです。Sky +Cyborg ということでしょうか。新語辞典でもまだカバーしていない言葉を皆さんと共有しましたね。


Introducing Skyborg, your new AI wingman

これからのウィングマン、スカイボーグ登場

By: Valerie Insinna 3 days ago

XQ-58Aヴァルキリー長距離亜音速実証機が2019年3月5日にアリゾナ州ユマで初飛行に成功した。 (DoD)

「お前ならいつでも俺のウィングマンにしてやるぜ」、『トップガン』のアイスマンのせりふは人工知能版のマーヴェリックにむけられそうだ。
空軍研究開発本部AFRLがこれをスカイボーグ Skyborg 事業で実現させようとしている。
ウィル・ローパー空軍次官補(調達・技術・兵站担当)が想定するAIウィングマンのスカイボーグはパイロットと訓練で学習して技を磨き、パイロットのニーズに応え生身の人間では処理が困難な脅威に真正面から取り組む存在になる。
開発はまだ初期段階でAFRLは学界とAIの構築作業中だ。だがローパーによれば実現に向けた予算は確保済みで空軍はスカイボーグを無人機のボーイングQF-16、クレイトスのXQ-58ヴァルキリーやBQM標的機に統合する。ただし、今後の話だ。
「実験で終わらせるつもりはない。正式な事業にしたい」とローバーは報道陣に3月13日語った。「数年以内に実用に耐えるか本格的実証でみてみたい。もっとはやく実施させたい」
ローパーはスカイボーグをR2-D2になぞらえた。スターウォーズでルーク・スカイウォーカーがX-Wing機を操縦する際の助手だ。またワトソンの名もあげた。IBM開発のAIでクイズ番組でチャンピオンよりすぐれた回答をした。
スカイボーグを低コストで消耗品扱いのヴァルキリーに統合すれば、パイロットは敵機だらけの空域に無人機を送り込み、自分は危険から距離を置ける。AIは脅威へ人間より迅速反応できる。
あるいはアップルのSiriのようにコックピットでパイロットの指示に音声対応させるのも可能とローバーは言う。
「初期段階では映画のようなすごい光景は期待できませんが、これまでの常識を一変させますよ」
実証内容は未定だ。スカイボーグについてローパーはシミュレーターで生身のパイロットと訓練させたいとする。またAIを無人機に搭載し飛行中に各種物体をどこまで認識できデータをパイロットに伝えられるかを見たいという。
とはいえローバーも生身のパイロットが消えるとは見ていない。
「パイロットはむしろ重要になります。機体操縦だけでなくパイロットに求められる範囲が増えます。操縦しながら無人機部隊の司令塔になればパイロットは仕事に熱中するはず」という。
スカイボーグの進展で解決すべき課題が空軍で増えるとローパーは見る。
その一つがどこまでの責任をAIウィングマンに期待していいのか。どんなミッションを与えるべきかだ。兵装運用の決定を自律的にさせていいのか。稼働期間を通じたシステムの学習に変更を許していいのか。
「ひとつずつ答えをだしていきたい」とローパーは述べ、スカイボーグのテスト結果からペンタゴンも自律運用をどこまでの容認できるかわかるので答えが出ない問題ではないという。
「戦闘投入し二律背反する事態を解決できるAIは現時点では存在しない」とし、「実現すれば、技術の進歩に政策面で追いつくのが難しくなり、政策がなければ現場でバラバラな決断してしまう」
もう一つの課題にスカイボーグ事業が本格化したら空軍内のどの部署が統括するのかという点がある。機体のソフトウェアは通常は該当機種の担当部署が受け持つ。だがスカイボーグがQF-16に搭載されてQF-16担当にまかせると空軍がデータを別用途に使おうとすれば不都合になるというのだ。
こうした課題を空軍は中国との競争を念頭に解決しリスク低減の必要がある。中国も人工知能を最重要分野にしている。
「将来は凄い世界になります。今までにない技術が登場しますので既存の調達のしくみでは対応困難な初期段階を乗り越える必要があります」「第一線使用を開始すれば全く新しい機会が生まれるでしょう」■