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2025年2月25日火曜日

B-52がロシアとベラルーシの国境近くを飛行したことの意味(The War Zone)


ロシアによるウクライナへの全面侵攻から3周年の日、B-52がバルト海地域で注目すべき威力を発揮した


メリカ空軍のB-52Hストラトフォートレス爆撃機が、本日、エストニアの首都タリン上空を飛行し、ロシア国境からおよそ50マイル以内まで接近した。 B-52は以前、バルト三国の建国記念日であるエストニア独立記念日を記念してタリン上空に姿を現していたが、同地域におけるより広範な地政学的動向は、今回の飛行に別の意味を与えている。


戦略爆撃機はタリン上空で、4機のF-35Aステルス戦闘機と1組のF/A-18ホーネット編隊に加わった。 F-35は、エストニアのエマリ空軍基地から現在バルト海航空警備任務を行っているオランダ空軍の戦闘機である可能性が高い。 一方、F/A-18はフィンランド空軍所属だった。


B-52 escorted by F-35s and F/A-18s

フィンランド空軍


予定されていたこととはいえ、B-52の飛行はソーシャルメディア上で多くの憶測を呼んだ。特に、ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始して3年目の日だったからだ。なお、タリンの上空飛行は以前にもエストニアの独立記念日に行われたことがあり、その際にもB-52が飛来している。


一方、ドナルド・トランプ大統領が就任して以来、米露関係、そしてワシントンとNATOの関係がリセットされつつある中で、このような飛行が行われたことは、全く見過ごすことはできない。


ノースダコタ州マイノット空軍基地の第5爆撃航空団に所属するB-52は、定期的な爆撃機任務部隊(BTF)派遣の一環として、現在イギリスのフェアフォード空軍基地に展開している2機のうちの1機だ。


このような配備は、特にウクライナへの本格侵攻とそれに続く東西の緊張以来、かなり重要な地域であるバルト海とその周辺での任務を定期的に伴う。


B-52は本日未明、タリン上空を飛行した後、サンクトペテルブルクに向かって東進を続けた オンライン飛行追跡ウェブサイトから公開されているデータによると、爆撃機は南下する前にロシアとエストニアの国境の約50マイル以内まで到達した。


エストニアのタリンとその周辺でのB-52の飛行活動。すぐ東にロシア国境がある。 flightradar24.com


B-52はラトビアとリトアニアを通過し、いわゆるスウォーキ・ギャップSuwalki Gapを経由してポーランド領空に入った。 オンライン飛行追跡データによると、爆撃機はベラルーシ国境から約10マイル以内まで到達した。米国の爆撃機がこの地域を通過するのは初めてではないことは注目に値する。


flightradar24.comのスクリーンショットB-52がスウォーキ・ギャップを通過したルート。flightradar24.comのスクリーンショットB-52が今日通過したルートの拡大図。


スウォーキ・ギャップは、ベラルーシと激しく軍事化されたロシアの飛び地カリーニングラード間の最短の陸路で、その距離はおよそ40マイルである。そのため、ここはNATOとロシアにとってチョークポイントであり、戦略的・軍事的に非常に重要な地域となっている。 この地域で紛争が勃発した場合、ロシアがスウォーキ・ギャップを支配すれば、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国はEUの他の国々から切り離され、カリーニングラードへの陸橋ができることになる。


繰り返しになるが、これらの特定の地域におけるB-52の飛行の象徴的な性質は無視しがたい。


特にバルト三国にとって、今日のB-52の出撃は、好戦的なロシアがますます強気になっている中で、各国の独立の継続に対する米国のコミットメントを思い起こさせるものと映るかもしれない。


今のところ、米国防総省は今回の飛行について公式声明を出していない。しかし、2023年、エストニア独立記念日にB-52のペアがタリン上空を飛行した際、在ヨーロッパ米空軍・アフリカ空軍・NATO連合空軍司令官のジェームズ・ヘッカー米空軍大将は次のように述べた:「米国とエストニアは緊密な同盟国であり、民主主義、人権、法の支配に対する共通のコミットメントに基づく強力なパートナーシップを共有している。われわれは、エストニアとバルト三国のすべての同盟国の自由と主権に揺るぎなくコミットし、われわれが共有する安全保障に対するあらゆる脅威を抑止し、防御する」。


このようなコミットメントは、少なくともトランプ政権からのメッセージに限って言えば、現在、不足している。


ここ数週間、トランプ大統領はウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を「独裁者」と決めつけ、ロシアとの戦争を始めたのはウクライナ側だと非難した。 同時に、ワシントンとモスクワの関係を正常化させようとする動きも急になっている。


バンス副大統領は今月初め、ミュンヘン安全保障会議で演説し、欧州の指導者たちが言論の自由を抑圧し、不法移民を止められず、最も基本的な価値観 "を裏切っていると非難した。


一方、ピート・ヘグセス米国防長官は、「米国はもはや欧州の安全保障の主要な保証者ではない」と述べた。これは、防衛をNATO同盟国に大きく依存しているバルト三国にとって特に気になる言葉だろう。


もちろん伝統的に、ヨーロッパにおけるNATO態勢は、核兵器搭載可能なB-52と定期的なBTFの派遣によって強化された核抑止力によって支えられてきた。米国の外交政策の優先順位が全般的に再編成され、NATOに対するワシントンの期待も変化する中で、現在、その保証が疑問視されている。


そう考えると、今回のような武力示威は、ロシアだけでなく、バルト3国、さらに、最近のトランプ政権の欧州向けメッセージに間違いなく警戒感を抱いているはずのNATO加盟国にとっても、強力なシグナルとなる。■


B-52 Flies Close To Border Of Russia And Belarus

On the third anniversary of Russia’s full-scale invasion of Ukraine, a B-52 conducted a notable show of force in the Baltic region.

Thomas Newdick


https://www.twz.com/air/b-52-flies-close-to-border-of-russia-and-belarus


2023年10月26日木曜日

米韓日合同演習にB-52Hが参加。マニアの性で主翼両端を白く塗った姿が気になり、米空軍に聞いてみた。(The War Zone)

翼端を白く塗ったB-52が韓国を訪問し、日本との初の地域演習に参加した

空軍のB-52H爆撃機が最近、珍しく韓国を訪れ、初の米韓日3カ国の航空演習に参加した。本誌はその後、これが何を意味するのかを探るために連絡を取り、ルイジアナ州バークスデール空軍基地の第2爆撃航空団から回答を得た。

問題のB-52H(製造番号60-0021)は、10月17日に韓国の清州国際空港に着陸し、その後2023年ソウル国際航空宇宙防衛博覧会(ADEX)に参加した。B-52が同国に着陸したのは30年ぶりで、今年初めに両国が初めて発表した北朝鮮抑止を主目的とする米韓戦略協力の新たなレベルを反映している。

10月22日、60-0021は米空軍、航空自衛隊、韓国空軍のF-16Cヴァイパー、F-2、F-15Kスラム・イーグルと一緒に飛行し、日米韓3カ国による初の正式な航空演習を行った。韓国来訪と同様、この集団的武力誇示もまた、北朝鮮に向けられたものであるように見えた。中国やロシアを含む地域の競争相手にも、同盟国三国の結束ぶりを示すものであった。


三国演習の写真で非常に目立っていた60-0021の白い翼端について、第2爆撃航空団の広報は次のように詳細を伝えている:

「ご質問にお答えしますと、[B-52]の主翼端はPDM(プログラム・デポ・メンテナンス)で機体を剥離・塗装する際にマスキングされます。この工程では剥離剤が使用されるため、グラスファイバーのコーティングを劣化させないよう、翼端を覆っています。主翼端の交換はPDM中に1回だけ行われ、この機はまだ交換されていません」。

本誌は古いB-52の写真を見返してみたが、多くは色が薄かったり、そうでなければ変色した翼端を示していた。

プログラム・デポ・メンテナンス(Programmed Depot Maintenance)は、大規模なオーバーホールと同時に、航空機に重要なアップグレードや改造を施す機会も提供する。空軍のB-52のPDMは、オクラホマ州のティンカー空軍基地で行われる。

2021年現在、空軍に残る76機のB-52は、通常4年ごとに数ヶ月に及ぶPDMプロセスを受ける。もちろん、この日程は、常に一定数の爆撃機が現役でいられるように、時期をずらして行われる。

B-52にとって、デポレベルのメンテナンスは今後数年でさらに重要なものになりそうだ。空軍は最終決定を下していないが、同爆撃機は将来のPDMサイクルの一環で、ロールス・ロイスF130ジェットエンジンの新しいセットを受け取ることになりそうだ。B-52の再エンジン化プログラムは、何年も(実際には何十年も)かけて進められてきたアップグレード作業で、各機は性能と燃費を大幅に向上させることになる。

空軍のB-52全機は、今後数年のうちに、より高性能なアクティブ電気走査アレイ・レーダーを新たに導入する予定だ。これも非常に重要なアップグレードプログラムで、PDMプロセスに追加される可能性がある。

少なくとも2050年まで飛び続ける予定のB-52では、他にもさまざまなアップグレードや改修が予定されている。最終的には、B-52Jとして再指定される機体は、明らかに異なる外見になると予想される。

今後は白い翼端のB-52はますます増えていくと予想される。

編集部注:BUFFの白い翼端を指摘してくれたマシュー・ヘイデンに感謝する!

Here's Why Some B-52s Have White Wing Tips | The Drive

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED OCT 24, 2023 7:55 PM EDT

THE WAR ZONE


2018年3月9日金曜日

B-52の攻撃能力はここまで引き上げられ2040年代まで供用される

エンジン換装の話もあるのですが別プロジェクトのためまず兵装関係の改修を行うのですね。ここまで頑丈な機体を作った1950年代の設計の冗長性が大きな効果を生んでいますね。

 

Meet the 'New' B-52 Bomber: How This Old Plane Can Drop Even More Bombs 「新しい」B-52爆撃機はもっと多くの爆弾を搭載する



March 6, 2018

空軍が歴史的機材になったB-52爆撃機で大幅な兵装搭載能力アップを機内兵装庫の改修で実現し、攻撃力を引き上げる。
1760機内兵装庫改修事業(IWBU)でB-52各機は最新「Jシリーズ」爆弾を8発まで搭載でき、さらに主翼下のパイロン各6点も活用する。これで攻撃力アップのみならずこれまで以上の種類の新鋭兵装を運用できるようになる。
IWBUはデジタルインターフェースと回転式発射装置で兵装ペイロードを増やすのが狙いだ。
「B-52の1760機内兵装庫改修で機内にJシリーズ(スマート)兵器運用能力が生まれ、共通戦略回転式発射機も近代化され機内ソフトウェアもアップグレードする」と空軍広報官エミリー・グラボウスキ少佐がWarrior Mavenに語ってくれた。
B-52はこれまでもJDAM兵装を機外に搭載していたがIWBUで機内に最新精密誘導方式の共用直接攻撃弾や共用空対地スタンドオフミサイル他の運用が可能となる。
空軍兵装開発部門はIWBUでB-52の兵装搭載能力は66パーセント伸びるとWarrior Mavenに語ってくれた。
空軍開発部門の説明では機内搭載兵装庫能力のアップで爆弾を機内に移して燃料消費率が改善される。抗力が減るためだ。
今回の改修は空軍の近代化改修では大掛かりな規模だが、B-52がかつての「絨毯爆撃」はもはや行わない事実は周知の事実だ。近代戦では戦闘員掃討戦であれ大規模機械化交戦であれ精密度が求められる。今回の改修はさらに大型の精密誘導兵器やスマート兵器の搭載につながるとグラボウスキ少佐が説明してくれた。
もちろんB-52は今でも必要なら絨毯爆撃できるのだが、現在の環境では長距離センサーや誘導兵器あるいはレーザーで今まで以上のスタンドオフ精密攻撃が可能だ。
またB-52の機体寸法を考えると同機の活躍場所は米空軍が航空優勢が確保済みの空域となるはずだ。ロシア防空体制が長距離を有効範囲に収め精度を高めつつあり、高高度飛行爆撃機にはさらに危険な状態になっている。
指揮統制技術、有人無人機の同時運用、人工知能の進展ぶりを考えるとB-52にも無人機の統制機能が導入されることが十分ありうる。
IWBUの初回機能アップで機内兵装庫でレーザー誘導JDAMが発射できるようになる。二回目改修が2022年予定で共用空対地スタンドオフミサイル(JASSM)、JASSM射程延長型(ER)やミニチュア空中発射デコイ(MALD)の運用能力が実現する。MALD-JのJはジャマーでB-52で運用可能となれば敵レーダーの妨害機能も実現する。
供用中のB-52の76機にデジタルデータリンク、移動地図画面、次世代エイビオニクス、新型通信装置を搭載し多様な兵装を機内搭載しながら今後登場する新型ハイテク兵器の運用を可能にしていくと空軍関係者は述べている。
B-52の機体構造と頑健性は極めて強固と評価されており、2040年代以降も飛行可能なため空軍は最新かつ高性能のエイビオニクス、兵装、技術を惜しみなく投入すると空軍兵器開発部門がWarrior Mavenに説明してくれた。■
This article originally appeared on Warrior Maven.

Image: U.S. Air Force

2018年2月15日木曜日

米空軍:B-21調達に伴い、B-1BとB-2は早期退役、B-52は当面供用継続

USAF's Controversial New Plan To Retire B-2 And B-1 Bombers Early Is A Good One 米空軍のB-2とB-1早期退役方針は物議をかもしても健全な案だ

The flying service is making the right sacrifices to ensure the B-21 Raider gets fielded in large numbers while making the B-52 all it can be.

空軍はB-21レイダーを大量調達しながらB-52の供用を確実にするべく代償を覚悟している

BY TYLER ROGOWAYFEBRUARY 12, 2018
TYLER ROGOWAY/AUTHOR

者の皆さんが航空機マニアだったり軍事技術に関心のある方なら米空軍が打ち出したB-1B「ボーン」とB-2A「スピリット」を予定より早く退役させる新方針には心穏やかでなくなるはずだ。爆撃機はとかく関心を集めやすく、愛着を感じる機体が多い。だが現実は厳しく、B-21レイダーが2020年代に第一線配備となれば、爆撃機四型式を維持する余裕がないと空軍は説明し、三型式の運用も困難だ。
2017年2月11日のAviation Week記事はUSAFが爆撃機の将来ロードマップを作成し、B-1BとB-2Aを2030年代中頃までに全廃する予定と報じた。このことにB-2運用部隊が目くじらを立てた。そもそも今世紀中頃までの運用を前提に各種改修を受けていたためだ。

USAF
現行の爆撃機三機種、B-52,B-1、B-2体制は1997年から続いている

ただしこの方針の背後にUSAFで最重要機材のB-21レイダーがあるのはまちがいない。同機は爆撃機と分類されるが、実態はステルスで高高度飛行可能な多任務かつ高度に柔軟な運用が可能な機体で長距離を飛び、給油機の助けなく敵地に飛ぶ機体である。また危険地帯を飛んでも安全に帰還し翌日また飛び立てる機体だ。同機こそ将来の戦闘作戦に絶対不可欠な機体で米国と拮抗する力を持つ大国との武力衝突をトランプ政権が新国防戦略に盛り込んだ今は重要さを増す一方の機体だ。
USAFは最低100機を整備したいとするが、空軍内外にもっと多数を求める声が強まっている。

NORTHROP GRUMMAN
B-21 レイダーの想像図

USAF原案ではB-1Bは2040年まで、B-52もほぼ同じ頃まで運用するとしていたが、B-52のほうがB-1Bよりも明るい未来がある。B-1Bは核運用能力がなく運行経費が著しく高い機体で稼働率も低い。B-2は2058年まで稼働してB-21と数十年間共存するはずだった。
ところが新方針でB-2を先に退役させることになる。2032年以前になるのは確実で、ロードマップ原案より15年程度早まる。B-1Bも2036年以前に退役することになった。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

B-2で稼働中な機体は20機弱で常時作戦投入可能なのは数機にすぎない。B-1Bは60機あるが、B-21生産が2020年代中頃に始まれば、一対一の形で旧型機と交代するはずで、まずB-21を80機運用体制にもっていき、B-1BとB-2Aは2036年に姿を消す。
新方針ではB-52Hの75機には手を触れず、2050年まで運用する。そうなると就役期間が100年を超える機体になる可能性が生まれる。新ロードマップでは2040年時点の爆撃機部隊を合計175機と想定し、B-52とB-21のみの編成とする。
B-2をここまで早く引退させるのは過酷な対策に見えるかもしれないが、20機弱という動機部隊は運行経費が著しく高価で保守管理も難題だ。確かに同機ならではの効果を提供してきたのは事実だが。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

だが同時にB-2の存在が今や当たり前に感じられながら運行経費の高さは他機種でできない効果で正当化されている。だがB-21の登場ですべてが変わる。ノースロップ・グラマンが製造するのはいわばB-2の「2.0」版で、これまでB-2の製造、維持で得た知見を投入しB-21はB-2を一気に抜き去る性能の存在になる。いいかえればB-21でUSAFははるかに高い性能を実現しながら、B-2を支援して得た知見やインフラまでの活用を狙っている。
B-1Bは非常に高性能かつ柔軟運用可能な機体になったが、たえずUSAFの爆撃機編成で存在意義が難しい機体であった。1990年代に核運用能力が取り除かれると同機の存在そのものが問われた。対テロ戦で戦術爆撃機として成功し、スナイパー目標捕捉ポッドを機内エイビオニクスに接続して近接航空支援能力を新しく獲得した。だがこうした通常戦能力があっても空軍内でB-1Bが特別の存在になったわけではない。

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B-1Bにスナイパー目標捕ポッドがついた
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爆撃機を四型式250機配備すれば支援体制が大規模になり、各種機材の運用経費は負担範囲を超えるだろう。新プランでも爆撃機総数は157機から175機の範囲となり、B-21製造が100機を超えればさらに増える。それでも機種が三型式から二型式になれば十分対応可能だろう。
そうなるとB-2とB-1の生き残りは困難だ。この二機種廃止で以下の長所三つが生まれる。
まずB-21を最低でも100機配備するには長期間が必要でその間同機を守る必要がある。USAFにおける爆撃機運用実績を見るとB-52からB-2までペンタゴンの死のスパイラルに注意が必要だと分かる。
B-21開発は順調に進展中で予算以内に収まっているようだが、秘密のベールに隠されているため確かなことはわからない。とはいえ、USAFにこの機体が将来必要となるのは確実であり、他機種より優先されるべき機体だ。そこで同機実現に向け現実的な資金投入に努め機体が完成後戦力化まで支援を緩めるべきではない。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

二番目に新プランでB-52H用の改修予算が生まれる。とくにエンジン換装で同機運航の信頼性と経済性の実現に繋がりながら、ペイロードや航続距離を増やす性能向上が手に入る。AESAレーダーと今後登場する長距離スタンドオフ(LRSO)ステルス巡航ミサイルを搭載すれば核・非核両用でBUFFは今後も武器運搬トラックとして数十年間供用に耐えるだろう。
その他の改修にレーザーやアクティブミサイル防御装置があり、生存性が高まる。またスタンドオフジャミング用ペイロードも搭載するだろう。こうしてB-21を補佐する能力が実現し、B-21が敵攻撃をかいくぐる攻撃・偵察ミッションを行う。
最後に新プランでB-21の核運用能力が遅延することなく実現し、B-2Aの敵地侵入核攻撃任務を引き継ぐ。核ミッションを早期に実施し、無人機になるB-21運用をUSAFは公式文書で思い描いている。
新ロードマップはペンタゴンが発表した新核戦争対応検討とも符合し、現時点より多くの核兵器運用手段を求めている。B61-12新型核爆弾を搭載すればB-21の大編隊は一回の出撃で多数地点を目標にし、かつ柔軟に途中で呼び戻すことも可能となる。

USAF


こうした三点以外に今回発表された「爆撃機方向性」では現状のUSAF各機材の運用の裏側が見えてくる。
Air Force Magazineによれば、飛行時間当たりの整備に要する時間は以下の通りだ。
  • B-1B:74 時間 
  • B-2A:45時間、ただしステルス機体表面の整備時間を含めず実際はもっと多い
  • B-52H:62時間 

だが重要なのは機体の稼働性(飛行可能な機体であること)とミッション実行率(戦闘システム全部が機能する状態で飛行できる機体)で差は大きい。
  • B-52Hは稼働率で平均80%をここ5年間維持
  • B-1B と B-2Aは稼働率平均50%
  • B-1Bのミッション実行率は平均40% 
  • B-2Aのミッション実行率は平均35% 
  • B-52Hのミッション実行率は平均60% 

飛行時間当たりの経費は以下の通り。
  • B-1Bと B-52H は平均 70千ドル
  • B-2の平均は110-150千ドルでUSAF機材中最も高価な運航コストの機体だ

B-52HとB-1Bの選択は単純に数字の面からあきらかで、B-52が新エンジン換装他改修を受ければさらに性能が上がる。B-2の場合はもともと生産数が少ないことで当時は最高水準の性能だったがそれ以前にステルス爆撃機そのものが存在していなかった。だがそれでも数字は数字であり、B-2の機材としての総合性能は低いと言わざるを得ない。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

B-21は成熟技術を中心に半成熟技術による部品やサブシステムを採用しリスクを下げつつ同時に長期供用期間を実現する。B-21の将来の活躍を過去の事例から考えようとする向きが多いが、前身の機体の運命を回避すべく作られた機体は今まで存在していない。事業の進め方や従来の調達方法と異なるが、そもそも同機の要求性能は15年以上前に凍結されており、追加要求や変更で高価格化になる道を閉ざしているのだ。
B-2ではこのような形で設計が大きく変わり、機体価格は大幅に上昇したが、一回も使わない性能内容に大金を払ったのだ。B-21ではこれを教訓とし目標水準の実現に直結する性能に焦点を当て、コスト面でもB-2の恐ろしい経過を繰り返さないようにしている.まだ同機の成功が保証されたわけではないが今後の予想をするのには十分だ。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

そうなるとほろ苦いが同時に重要なニュースとなりB-21の狙いが実現に向かうだろう。もしUSAFがハイエンドのB-21だけで爆撃機部隊を編成すれば、悲惨な結果になる。逆に今回の空軍の選択はハイローミックスの爆撃機編成で評価されるべきだ。
大事なことはB-2やB-1退役の前にB-21の優秀な性能を実現することだが、開発段階で困難な課題に直面しても大日程表の日付をいじる余裕はない。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

結局、USAFはこれまで使ってきた機種の一部を犠牲にする必要があるのであり、欲しかったステルス爆撃機部隊が最後には実現するだろうが、30年前と違い成熟技術で信頼性を高く、より高い戦力を実現するはずだ。
同様にB-52Hも長年素晴らしい働きを示しており、史上最高の機種になりそうだ。過去何年も合理的な判断が出来てこなかった空軍としては実に合理的な判断だと言える。厳しい選択でも論理的に正しい選択をUSAF上層部が下せることを示している。
この新プラン発表後や2019年度予算でB-21の広報キャンペーンが始まりそうだ。予算手続きは始まっており、レイダーの姿を目にできそうだ。■

2013年7月3日水曜日

米空軍 B-52を2030年代末まで運用する

B-52s to receive communications upgrade
USAF websiteより
Posted 6/28/2013  by Mike W. Ray
72nd Air Base Wing Public Affairs

6/28/2013 ティンカー空軍基地、オクラホマ州---長年にわたり供用中のB-52ストラトフォートレス爆撃機部隊の通信機材更新が7月より当地で開始される。

戦闘ネットワーク通信技術システム Combat Network Communications Technology,CONECT により乗員は情報の送受信を衛星経由で行えるようになり、ミッションプランの変更や目標の再設定が飛行中に可能となる。さらにパイロットは僚機との通信に加え地上部隊との交信も双方向で可能となる。現状ではミッション情報をフライト前に毎回アップロードしている。

その他の性能向上内容として最新鋭のコンピュータ・ネットワークに各自のワークステーションでアクセスできる他、デジタル式機内通話にノイズキャンセル機能を加え乗員はヘッドセットで会話ができる。

CONECT改修は総額76百万ドルでボーイングが実施し、ティンカー空軍基地でCONECTキットの生産、保守部品、維持管理を行なう。キットは低率初期生産分8セットでロット1とし生産の基盤を作り実用テストの後で本格生産に移る。最終的にB-52H全機にCONECTが搭載される。

7月に定期点検でティンカー空軍基地に到着する機体がCONECT搭載一号機となる。定期点検の標準工期は9ヶ月で終了は来年4月。

1961年から62年にかけ納入されたB-52Hは計画的改修で運航されてきた。たとえばGPSを航法システムに1980年代末に搭載している。

空軍は技術検討の結果から同機を最低でも今後25年間は運航できると考えている。■