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2022年6月18日土曜日

空母福建の進水をホームズ教授はこう見る-----戦力としての同艦の意義より地政学上の影響に注意。カンボジアの軍港整備が要注意だ。

  

Fujian

Fujian, China’s 3rd aircraft carrier. Image Credit: Creative Commons.

 

週、中国は最新鋭の空母「003型」を進水させた。「福建」と命名された中国3番目の空母は、数年間の艤装工事を経て、2025年前後に戦力となる予定だ。福建は、ソビエト空母を改修した1号艦や、同じ基本設計をアップグレードして中国で建造した2号艦より大きい。003型はカタパルトを装備し(蒸気駆動ではなく電磁式と言われている)、艦首のスキージャンプで戦闘機を空へと舞い上がらせていた同型艦より重い航空機を扱える。

 中国の造船業者と人民解放軍海軍(PLAN)は、空母航空において米海軍と同等に飛躍すると主張してきた。福建には米国の最新空母フォード級に搭載された技術があり、同様に電磁式発艦・回収システムを採用している。また、その規模は、航空機、乗組員、物資・弾薬を満載した場合、8万〜10万トン級と、アメリカの超大型空母に匹敵する。戦闘力だけでなく、国家のプライドを保つためにも、大きさは重要だ。結局のところ、中国はアジアと世界の中心という自称にふさわしく、最大かつ最も多くを持たなければならないのである。

 

一騎当千の重要性

福建のデビューは、作戦上、戦略上、どのような意味を持つのか。中国の空母、戦術機、艦艇が、米国や同盟国の空母に技術的な面でやや及ばないことに変わりはない。情報専門家が敵対する軍隊の能力を把握するため綿密に調査している機密事項の外で、確かなことを言うのは難しい。しかし、不気味なタイプであっても、物事を正しく理解できる保証はない。平時の兵器システムはブラックボックスだ。ハイテクプラットフォームや兵器、センサーの外観をチェックできても、内部を覗き込み作動原理は確認できない。そのため、平時の航行や作戦、演習でのパフォーマンスを監視することで、能力を推測することになる。

 つまり、003型が戦闘でどの程度の能力を発揮するのか、大まかな目安を知るには時間がかかるということだ。福建を中心とした空母機動部隊が実戦でどのように、どの程度機能するかを知るには、PLA海軍自身がフラットトップ、航空団、護衛艦、支援艦を海上に連れ出さなければならない。戦闘艦は、他の工学システム同様に、仮説であり、工学に転写されたアイデアであり、実世界に送り出され、何がうまくいき、何がうまくいかないかを冷静に判断すべきものだ。その他仮説と同様に、中国の新型空母も実地試験で真価を見極めなければならない。

 

成功は決して予見できない。

フォード級空母、ズムワルト級駆逐艦、フリーダム級およびインディペンデンス級沿岸戦闘艦など、新型プラットフォームに新技術を多くの盛り込むとトラブルを招くというのが、過去20年間の米国海軍が得た厳しい教訓だ。中国の建造部門もこの論理から外れることはない。中国の厳しい報道統制のため、彼らの苦労が表沙汰にならないこともあるが。

 技術的な問題はさておき、「福建」は運用開始後、中国海軍にとって重要なマイルストーンになる。空母3隻を保有することで、中国海軍が常に1隻の空母を海上展開するか、または待機することになる。米海軍は、一隻を外国に駐留させるため、何隻の米軍艦艇を維持しなければならないかを予測するため、「駐留経費倍率」という厄介なラベルを使用している。この比率は、訓練、維持管理、大規模オーバーホールのリズムを考慮している。西海岸が拠点の空母が西太平洋に1隻駐留するため、約6隻という途方もない数字となる。しかし、前方展開する空母の場合、1.5になる。つまり、例えば横須賀に空母2隻を配備すれば、1隻は常にパトロールに従事し、米本土が母港の艦艇の助けは必要ない。これなら、はるかに管理しやすい数字だ。現状では、海軍は横須賀母港の部隊を本国よりの部隊で補い、プレゼンスを常に維持するようにしている。

 アメリカの基準から判断すると、中国海軍は、最初の空母001型遼寧をフルタイムの訓練任務にはりつけ、002型山東と003型福建で海上パトロールを交代させる余裕が生まれるだろう。中国共産党が最重要視する中国近隣海域に艦隊を「前方展開」する限り、このサイクルを維持できる。そこが最も可能性の高い戦場となる。もし、中国海軍が空母群を定期的に遠洋派遣するようになれば、駐留倍率の厳しさに直面することになる。そうなれば、中国共産党は、米海軍が世界各地で享受しているのと同じ特権を外国拠点で求めることになりかねない

 個人的には、福建が西太平洋でゲームチェンジャーになるとは思わない。潜在的な敵に占領された第一列島線という地政学的な課題に直面しているからだ。中国がこの連鎖を断ち切ることができない限り、海洋における中国の展望は限られたものにとどまる。ただし、第一列島線内で、福建機動部隊が何ができるかを考えてみてほしい。新たな能力が新たな戦略的展望を開く。例えば、北京はピカピカの新型空母を自国近海に留めておき、能力の劣る山東を遠征空母として、遠隔地に母港を置くこともできる。あるいは、中国共産党はすでに中国周辺を管理するのに十分な火力を持っているという論理で、福建を遠征空母にすることもできるだろう。

 

その他

遠征任務部隊はどこに拠点を置くのだろうか。最近、カンボジアと中国が、南シナ海の南部に隣接するカンボジアのリーム海軍基地を改良中というニュースが流れた。カンボジア政府関係者は中国艦船の受け入れを強く否定しているが、これはプノンペン側の単なる前フリかもしれない。タイ湾を拠点とする空母群が中国の海軍司令官に何をもたらすか考えてみてほしい。また、中国海軍の艦船に補給基地ができれば、南シナ海での北京の戦略的地位の向上にもつながる。

 要するに、中国の新型空母の出現とカンボジアにおける基地建設を、米国同盟国の情報アナリストが注意深く観察する必要がある。プノンペンや北京の言葉は無視して、真意を見極める必要がある。一つ重要な指標は、リームで行われている浚渫(しゅんせつ)、支援インフラ、その他の改善の度合いだ。整備された施設に喫水の深い軍艦を収容できるかが、アナリストの最大の関心事のはずだ。

 大規模港湾施設が整備されれば要注意だ。■

 

Fujian: China’s New Aircraft Carrier Is Important — But No Game-Changer

ByJames Holmes

 

A 1945 Contributing Editor, Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.” The views voiced here are his alone. Holmes also blogs at the Naval Diplomat


2020年10月20日火曜日

中国がカンボジアに海軍基地を確保する動き。札びらで横顔をたたく? アジア太平洋地区への影響は必至だ。

  


Google Map

 

国資金で建設した海上保安施設をカンボジア政府が撤去したが、これが中国人民解放軍海軍(PLAN)向け施設へ転用する動きと関連していると米政府が懸念を10月初旬表明した。

 

カンボジア政府の言い分は中国との「緊密な関係」は長年続いており、タイランド湾のリアム海軍基地の問題が浮上したのは昨年からにすぎず、もともと中国が同基地の30年間租借を求めていたというものだ。中国は軍関係者の常駐とともに兵器備蓄と艦艇の横づけ施設の利用を期待している。

 

シアヌークビル地方にある同基地は王立カンボジア海軍が運用中で敷地は190エーカー(約77万平方メートル)。2010年からカンボジア米国艦の訓練、演習の拠点として活用されてきた。

 

「カンボジア軍が築後わずか7年で米カンボジア関係の象徴たる保安施設を撤去する決定をしたのに失望」と在カンボジア米大使館の報道官チャド・ローデマイアーが声明文を発表した。「軍事プレゼンスが実現すれば米カンボジア関係の悪化は盛られず、さらにインド太平洋地区にも悪影響が生まれ不安定化は避けられない」

 

 

 

 

米国が建設した同施設の撤去処分は9月5日から10日の間とされる。対象の建屋はその他と移転され、中国はリアムに自由に出入りできるようになる。

 

問題の建物は海洋保安国家委員会の現場本部とされ、2012年に竣工し、米国資金で建設しオーストラリアが備品を納入していた。

 

PLANがリアムにプレゼンスを確保する動きは予定通り進行している。基地周辺には中国企業が土地を確保しており、こうした企業は中国政府と関係があるといわれる。表向きは民間開発事業でリゾート施設を造るとあるが、PLANが使わない保証はないし、中国企業に基地周辺を確保させ緩衝地帯にする狙いかもしれない。

 

さらに基地から北へ3マイル地点で埋め立て工事も進行しており、現時点で100エーカーの土地造成が完成しているが用途は不明だ。

 

タイランド湾に基地ができればPLANは南シナ海南方に新たな進出ができるだけでなく高度な戦略的意義を有するマラッカ海峡付近で有事となっても機動性が増える。マラッカ海峡を通過するタンカーが中国の原油輸入の8割を占めている。

 

カンボジアのフンセン首相は新規港湾施設は中国資金で建設だが、荷役施設はすべての国に開放すると発言していた。「仮に一国の海軍艦艇が同地へ寄港しても、その他国も全く同じことができる」「各国船舶へ貨物港への寄港を認める。ただしリアム海軍基地は軍港であり、事前許可が必要だ。あらゆる国の艦船による横付け、燃料補給、あるいは共同訓練を歓迎する」と述べていた。■

 

この記事は以下を再構成したものです。金で横面をたたく中国の強引さが今後の二国関係にどんな影響を及ぼすのか注目です。中国は自分も開発途上国だと言ってきますが、「上位」の途上国として「下位」途上国をいいように利用することに抵抗はないようですね。

 

Will the Chinese Navy Soon Build a Base in Cambodia?

October 15, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaChinese NavyCambodiaMilitary

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com

2019年3月21日木曜日

カンボジアでの中国開発は軍事基地建設が真の狙いではないか

ASEANは結束力も弱く、中国としては自国にたなびくカンボジア、ラオスあたりを借金漬けにして言うことを聞かせたいのでしょう。南シナ海は軍事化しないなどと平気で嘘を言える国ですから信用できませんが、本当にカンボジアに軍事拠点ができれば、大変なことになります。本当に中国はいろいろお騒がせなことをしてくれますね。


Is Cambodia’s Koh Kong project for Chinese tourists – or China’s military? カンボジア・コッコン開発は中国旅行者向け事業か中国の軍事利用が目的なのか

  • 中国企業Union Development Groupによる開発は順調なようだ
  • 滑走路が異常に長い空港、港湾浚渫工事を見ると中国の軍事拠点づくりではないかと疑う向きがある


Published: 7:03am, 5 Mar, 2019


A satellite image of the suspiciously long runway at the airport in Koh Kong. Photo: Handout
衛星画像に現れたコッコンの怪しい大型滑走路。Photo: Handout


国が海外で大金を気前良く使う自国旅行客向けに海外観光地の開発に関心を示すのは極めて普通のことで、カンボジア沿岸にカジノ、ゴルフ場、豪華リゾートの開発が進んでいる。


カンボジアはコッコン地方の一等地および全海岸線の2割に相当する部分で中国企業Union Development Group(UDG)に観光業のメッカの建設を許可し、賃貸料は年間百万ドルと破格の条件だ。


これは表向きの説明だ。今回の条件があまりにも虫がよく、中国には別の思惑があるのではないかとの見方が出ている。中国は軍事利用をねらっているのではないか。


こうした見方が広がってきたのは欧州宇宙機関が配信した衛星画像で建設中の滑走路が民間機向けに不要なほど長いと判明したためだ。


カンボジア側は大深度港湾開発は中国の軍事利用の意図と無関係と繰り返し説明しているが、滑走路が浮上して軍民両用の狙いがあるのではとの疑いが強まっている。


「滑走路は3,400メートルでプノンペン国際空港より長く、中国空軍の機材全部が運用可能」と戦略国際研究所のアジア海洋透明性確保事業の責任者グレゴリー・ポーリングが述べている。


「純然たる民間用ならこんなに場所に建設するのは妙だ。近くにあるのはコッコンカジノ・リゾートだけだ」(ポーリング) コッコンの建設工事はここ数ヶ月止まったままとの報道がある。


事業が軍事用途なのかについてポーリングは「火は見えないが煙はたくさん出ている」としつつ「東南アジアで中国の軍事力展開を受け入れる国がはカンボジアだ」と述べた。


Sceptical: US Vice-President Mike Pence is concerned the Koh Kong project has a military use. Photo: AFP
米副大統領マイク・ペンスはコッコン事業に軍事利用の狙いがあると疑う Photo: AFP


衛星画像から滑走路建設が見えるが、マイク・ペンス副大統領がカンボジア首相フン・センに軍事転用への懸念を伝える書簡が昨年11月に送っている。


滑走路はその後ほぼ完成しており、連邦航空局がボーイング787-900に推奨する2,800メートルを大幅に超えている。


UDGは民間企業とはいえ、事業は政府肝いりとの疑いが持たれている。元副首相で一帯一路構想を推進する张高丽Zhang Gaoliが同事業を初期段階から支援し、同社とカンボジア政府の合意形成を取り仕切っていた。また現地には中国共産党関係者が繰り返し視察しており、政治協商会議副議長王钦敏Wang Qinmin もその一人だ。


民間事業だが実態には疑念が強い。西側軍事専門家のひとりは「UDGは対象地区の商業価値について一貫した見方がないようだ。おそらく軍用も視野に入れている」と述べる。


カンボジア国防省報道官Chum Socheatに連絡を試みたが接触できず同国政府報道官Phay Siphanはカンボジア政府の監督の有無について「わからない」と答えた。


だがNaresuan大学の研究員ポール・チェンバースはフン・センが中国に海軍基地設置を認めようとしているとカンボジア政府高官がこっそり話してくれたと本誌に述べている。


チェンバースはコッコン事業を中国がラオス、スリランカで進める事業になぞらえた。スリランカは Hambantota港の使用権を中国に99年有効で貸与している。これは同国が同港湾建設で中国の貸付に返済不能となったためだ。


Controversial: the Chinese controlled port in Hambantota, Sri Lanka. Photo: AFP
スリランカのハムバントタ港は中国の支配におちた. Photo: AFP

「スリランカは中国依存度を高めすぎたあまり港湾を中国に手渡すはめになった。同じことがカンボジアでも起こりうる」(チェンバース)


カンボジアへの経済援助で2016年の中国は36パーセントを占め、海外投資では30パーセントだった。昨年に中国は5.58億ドル追加しコメ40万トンを輸入すると約束した。EUや米国が人権問題からカンボジアへ制裁措置を取る中、カンボジアは中国依存をさらに高めそうだ。


UDGの事業用地はカンボジアに契約終了の2108年に返還されるが、中国が恒久的所有権を主張すると見る向きもある。


スティムソンセンターの中国研究部門長Yun SunはUDG港湾施設には「軍事転用の余地がある」とし、「中国がジブチ、スリランカ、パキスタン、ビルマで行ってきた軍民両用型開発のパターンそのものだ」という。
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中国をめぐり紛糾は避けられない。


コッコン開発プロジェクトの場所は戦略的な位置にあり領土問題やマラッカ海峡経由のエネルギー輸入といった微妙な問題につながる南シナ海とちかく、台湾も無関係ではない。


港湾施設はタイで構想がある運河をはさみ、中国はマラッカ海峡を通らずにエネルギー資源の輸入が可能となる。さらに軍事基地として中国は南シナ海ににらみを効かせる。


Chinese Premier Li Keqiang hosts Cambodian Prime Minister Hun Sen at the Great Hall of the People in Beijing. Photo: AFP
中国首相李克強がカンボジア首相フン・センの北京訪問を人民大会堂で迎えた。 Photo: AFP


前出チェンバースはカンボジアが中国と軍事的つながりを強化しており、中国軍艦の寄港、両国部隊の軍事演習が増えているのは中国がカンボジアに軍事面で関心を見せている証拠だとする。


フン・センは軍事基地設置は同国憲法違反と発言していたが、チェンバースは中国に法治主義はあてはまらないという。


土地使用権の付与は法的に疑わしい。書類上の面積より三倍も大きく、しかも国立公園内にある。前述のSunは「フン・センは憲法違反を無理やり合憲といいくるめるのでは」


ジブチで中国が利用した抜け穴がある。コッコンには軍事基地はないと否定しながらフン・センに外国軍隊は国連ミッション除き置けないという。ジブチの中国基地は海賊対策のUN活動支援用という説明だが、UNは同基地に干渉できず、中国は自由に同基地を利用している。


チェンバースは中国からの投資や援助の増加でフン・センが「中国の路線に傾いている」と警句している。


「米国等が神経質になるのはカンボジア政府が意図的かつ無邪気に中国依存をどんどん強めており、気がつくとカンボジアが東南アジアで中国の軍事経済両面の中心地になることだ」(チェンバース)


このパターンだと軍事基地化が次の段階なのは明らか、とチェンバースは言い、実現すれば米中の地政学面の対立を激化させるという。


チェンバースによればカンボジア政府関係者は大部分がフン・センの中国服従路線を喜んで受け入れ利益を得ようとしており、反対勢力に流れを止める力はないという。■