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2017年12月23日土曜日

ボーイングがエンブラエル買収を交渉中、実現すると軍用機分野でどんな影響が生まれるのか

年末になり大ニュースがとびこんできました。ボーイングがエンブラエルの吸収合併をねらっているというもの。狙いは民間機市場でエアバスに対抗するものですが、エンブラエルも軍用機を製造しているため別の影響も発生しそうです。ブラジル政府が合併の可否を握っているようなので要注意ですね。


Here’s how a Boeing takeover of Embraer could play out

ボーイングのボンバルディア買収で生まれる効果とは


エンブラエルKC-390のロールアウト、2014年10月21日。(Nelson Almeida/AFP via Getty Images)

 By: Valerie Insinna    

ーイングがブラジルの航空宇宙企業エンブラエル買収に乗り出した。両社が12月21日に確認した。
実現すればボーイングは新規にスーパートゥカーノ、KC-390輸送機など軍用機数種類を入手することになる。アナリストにはボーイングの軍用機事業でメリットを疑う向きもあるが製品構成に意外な効果が生まれそうだ。
両社はエンブラエルの株式評価額37億ドルに上乗せする形で交渉中とウォールストリートジャーナルが12月21日に特報で伝えており、交渉に詳しい筋の話としてブラジル政府の承認を待つ段階だという。
ボーイング、エンブラエル両社は「将来の合同に向け協議中だが内容は検討段階」とWSJ記事の後で発表。「ブラジル政府による承認次第であり、両社それぞれの役員会及びエンブラエル株主の承認が必要」
承認は簡単に下りないと見られる。ブラジル大統領ミシェル・テメルMichel Temerは本件を知ってエンブラエルがボーイングの完全支配に入るのは承認できないと語った。
成立すればエンブラエルへの効果の方が高くなりそうなのはボーイングの世界規模の営業力が活用できるようになるため、とブライオン・キャラン Byron Callan(キャピタルアルファパートナーズ)は見るが、ボーイングにも十分うまみがある。「製品群が相当拡大し他社にない内容がうまれます」
テメル大統領が心変わりしてもボーイングは金額で合意できなければ交渉を降りることもありうるとリチャード・アボウラフィア Richard Aboulafia(Teal グループ)が見ている。
Embraer, Boeing Hope KC-390 Will Have Long Payout
Embraer, Boeing Hope KC-390 Will Have Long Payout
「国防分野で一番興味を惹かれるのはボーイングがKC-390軍用輸送機を米国内外で販売することです。その意義は大きい」(アボウラフィア)
エンブラエルはKC-390のローンチカスタマーにブラジルを確保したがその後の買い手がない。ボーイングとエンブラエルは2016年に共同で同機の海外販売で合意形成したが、ボーイングは表に立っていない。
「ボーイングは同機を真剣に米国内で販売するつもりがあるのだろうか」とキャランはいぶかしる。「ボーイングの世界的営業力を考えれば世界を舞台にC-130Jへ十分競争できるのではないか」
KC-390の米軍採用は簡単ではない。米軍がロッキード・マーティンC-130ハーキュリーズを長年調達していることもあり、特殊作戦軍団に採用されれば道が開けるとアボウラフィアは見る。「大きなお墨付きになる」
企業買収が成功すればKC-390利用者はボーイングの世界規模の保守管理機能が利用可能となりこれも大きなセールスポイントになるとアボウラフィアは指摘。
Embraer expecting first international KC-390 sale in 2017
Embraer expecting first international KC-390 sale in 2017
ただしアボウラフィア、キャランともにエンブラエルの他の軍用機にチャンスがあるかで見方が違う。
「ブラジルの国防需要を考えるとボーイングの狙いは戦闘機だろう」とアボウラフィアは見ており、「しかしブラジルはスーパーホーネットは断りグリペンに注目している」
エンブラエルはブラジルでSaabグリペンE戦闘機用最終組立ラインを立ち上げようとしている。
エンブラエルはSaabとE-99他ビジネスジェット機に搭載用の早期警戒指揮統制システム エリアイErieyeでも提携しておりボーイングを交えれば可能性がさらに開ける。ボーイングはSaabと米空軍向けT-X練習機事業でも提携している。
「点を結べば別の可能性が生まれませんか。ボーイングにSaabを買収するつもりがあるか不明ですが、Saabへ出資するとどうなりますか。ブラジルにグリペンEの組立ラインを建設してその先はどうなりますか」とキャランは言う。
一方でエンブラエルのスーパートゥカーノにも新しい可能性が生まれそうだ。米空軍が低コスト攻撃機OA-Xの購入を検討中とキャランは指摘する。
スーパートゥカーノはA-29として米国内で営業展開中でエンブラエルとシエラネヴァダコーポレーションとの提携で8月にはホローマン空軍基地(ニューメキシコ)で各種実証を行っている。
A-29はOA-X選定で採用が有望視されており、すでに米空軍はアフガニスタンやレバノンでの運用に採用している。
アボウラフィアは同機が数百機販売されてもボーイングの最終利益への影響はわずかだと指摘し「ボーイングがどうしてこの機体にかかわるのか理解に苦しむ」とする。
合意形成になればこの数か月で二回目のボーイングによる大型買収となる。10月にオーロラフライトサイエンシズ買収を発表している。

エンブラエル買収はボーイングに民間機市場の最大のライバルたるエアバスへ対抗策となる。エアバスはボンバルディアCシリーズで提携関係を最近発表したばかりだ。■

2017年6月24日土曜日

パリ航空ショー:エンブラエルの輸送給油機KC-390がデビュー




Source: IHS Markit/Patrick Allen

Paris Air Show 2017: Embraer's KC-390 makes Paris Air Show debut エンブラエルKC-390がパリ航空ショーデビュー

 Peter Felstead, Le Bourget - IHS Jane's Defence Weekly
22 June 2017
  
  1. エンブラエルKC-390空中給油輸送機がパリ航空ショーでデビューし、試作二号機が毎日飛行展示を行っている。
  2. 報道陣に会場で同機の開発状況を説明したエンブラエル幹部のポール・ガスタオ・シルヴァによれば飛行試験用2機の累計飛行時間は1,000時間を超えており、テスト飛行で「設計の正しさが証明できた」という。
  3. ブラジル空軍 (Força Aérea Brasileira: FAB)が28機を発注しており、来年から引き渡しを開始するとシルヴァは述べた。FAB向け二号機、三号機も生産段階にあるという。KC-390のテスト用三号機、四号機は地上/静止試験に投入中だ。
  4. シルヴァによればKC-390は今年後半に「初期作戦水準通過」をし、来年に「完全作戦水準通過」になるという。ただしFABのKC-390部隊がそのまま稼働可能となるわけではない。来年にFABに引き渡すのは二機で、三号機は2019年になるとシルヴァは説明し、その段階で「最終軍用水準」になるというからだ。ブラジルの予算問題二よりエンブラエルは当初より控えめな納入工期に変更している。
  5. KC-390開発は2009年にFAB契約を受けて始まった。2015年に試作機が初飛行し、同年から飛行テストが始まっていた。■

KC-390の諸元
エンジン:International Aero Engines V2500ターボファン双発
最高速度:470 kt (870 km/h)
最大貨物搭載量:26トン