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2024年5月9日木曜日

10万ドル払っているF/A-18の交換部品が3Dプリント技術で300ドルに。

 


積層製造AM技術つまり3Dプリンターの機能がどんどん進んでいるようです。今回のThe War Zone記事ではそこにコールドスプレイ技術が加わり、これまで高価になる一方だった装備品の価格が一気に下がる可能性が現実になってきました。艦上や前線基地で可能なメニューには限界もあるようですが、今までの常識が崩れ落ちそうです。


161013-N-OI810-093 WATERS SURROUNDING THE KOREAN PENINSULA (Oct. 13, 2016) Petty Officer 1st Class (AW/SW) John Diwa, from Dededo, Guam, installs inboard and outboard bearings on a main tire mount of an F/A-18F Super Hornet, assigned to the "Diamondbacks" of Strike Fighter Squadron (VFA) 102, in the hangar bay of the Navy's only forward-deployed aircraft carrier, USS Ronald Reagan (CVN 76), during Exercise Invincible Spirit. Invincible Spirit is a bilateral exercise conducted with the Republic of Korea Navy in the waters near the Korean Peninsula, consisting of routine carrier strike group (CSG) operations in support of maritime counter-special operating forces and integrated maritime operations. USS Ronald Reagan is on patrol with CSG 5 supporting security and stability in the Indo-Asia-Pacific region. (U.S. Navy photo by Petty Officer 3rd Class (SW/AW) Nathan Burke/Released)

U.S. Navy photo by Petty Officer 3rd Class (SW/AW) Nathan Burke

アディティブ・マニュファクチャリングとコールドスプレイ技術は、海軍の装備維持に革命をもたらし、数百万ドルを節約できそうだ

ワシントンD.C.近郊で開催されたSea Air Space会議で、海軍航空システム本部(NAVAIR)の積層造形(AM)チームのプログラムマネージャー、セオドア・グロンダは、F/A-18E/Fスーパーホーネットの交換用タイヤは非常に高価であると聴衆に語った。

どのくらい?グロンダによれば、交換には1本で6桁近い費用がかかるという。タイヤがホイールと一緒に交換されるためでもある。海軍は実際に、交換用のスーパーホーネットのタイヤをアセンブリーとして購入し、タイヤとホイールのリムがすでに互いに組み合わされている状態で受け取る。タイヤとホイールのアッセンブリーには、それぞれおよそ100,000ドルかかる。

SINGAPORE STRAIT (July 6, 2017) U.S. Navy Aviation Electrician's Mate 2nd Class Lucas Mclean, left, from Arvada, Colo., U.S. Navy Aviation Electronics Technician 1st Class Mathew Webber, middle, from Riverside, Calif., and U.S. Navy Aviation Machinist's Mate 2nd Class Ivan Avila, from Corona, Calif., replace the tires on an F/A-18F Super Hornet from, the “Black Knights” of Strike Fighter Squadron (VFA) 154, aboard the aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68), July 6, 2017, in the Singapore Strait. Nimitz is currently on deployment in the U.S. 7th Fleet area of operations. The U.S. Navy has patrolled the Indo-Asia Pacific routinely for more than 70 years promoting regional peace and security. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr)

SINGAPORE STRAIT (July 6, 2017) U.S. Navy Aviation Electrician's Mate 2nd Class Lucas Mclean, left, from Arvada, Colo., U.S. Navy Aviation Electronics Technician 1st Class Mathew Webber, middle, from Riverside, Calif., and U.S. Navy Aviation Machinist's Mate 2nd Class Ivan Avila, from Corona, Calif., replace the tires on an F/A-18F Super Hornet from, the “Black Knights” of Strike Fighter Squadron (VFA) 154, aboard the aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68), July 6, 2017, in the Singapore Strait. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr) U.S. Navy personnel replace the tires on an F/A-18F Super Hornet aboard the aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68), July 6, 2017. U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr

スーパーホーネットのような艦載機のホイールとタイヤが、で比較的短い寿命であることは間違いない。2019年以降、海軍のE/F部隊は、戦闘機の耐用時間を6,000時間から10,000時間に延ばす多段階の変更プログラムを順次実施している。その耐用年数の間に、スーパーホーネットは文字通り何千回もの着陸と離陸、空母からの拘束着艦とカタパルト発汗、地上基地からの離着陸の両方を行う。その過程で多くの車輪やタイヤを消費し、空母運用中は特に早く使い切る。

グロンダは、F/A-18E/Fはしばしば空母の甲板に激しく着艦するため、戦闘機の主脚ホイールのリムが楕円形になり、リムに取り付けられたタイヤが揺れると説明した。タイヤがぐらつくと、ホイールとタイヤのアセンブリは外され、廃棄されるという。

それは高くつく。「年間で166本のタイヤを廃棄していますが、1本あたり6桁の値段がします」とグロンダは聴衆に断言した。ボーイングによると、グッドイヤーミシュランがライノにゴムを供給している。本誌は各社にF/A-18/E/F用のタイヤ価格を尋ねたが、両社とも拒否した。メイン・ランディング・ギアのホイールは、ハネウェル・エアロスペース傘下のエアクラフト・ランディング・システムズが供給している。

仮に1アセンブリーあたり10万ドルと仮定すると、単純計算で、スーパーホーネットのホイールアセンブリー交換にかかる費用は年間1660万ドル程度になる。 

リムを修理してタイヤを再装着できれば、海軍のホイール/タイヤ代は大幅に下がるかもしれない。グロンダは、NAVAIRのAMチームが、固体コールドスプレー3Dプリンティング技術を使えばスーパーホーネットのリムを修理できる可能性に気づいたと説明した。

「リム修理で効果的な方法はありませんでした。これらのリムの80パーセントはコールドスプレー技術で修理可能であることに気付きました」。

コールドスプレイとは、標準的な3Dプリンティングに手を加えた付加製造プロセスである。簡単に言えば、小さな金属粒子をキャリアガス(通常は窒素またはヘリウム)と混合し、ノズルを通してマッハ2~3の速度まで加速させる。コールドスプレー修理では、粒子を部品に直接吹き付け、材料を追加して組み立て、強化するものだ。

Staff Sgt. Chynna Patterson, a 28th Maintenance Group additive manufacturing spray technician, and David Darling, the 28th MXG additive manufacturing site manager, wait for the VRC Raptor Cold Spray machine to heat up at Ellsworth Air Force Base, South Dakota, May 12, 2021.<em> U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Quentin K. Marx</em>

Staff Sgt. Chynna Patterson, a 28th Maintenance Group additive manufacturing spray technician, and David Darling, the 28th MXG additive manufacturing site manager, wait for the VRC Raptor Cold Spray machine to heat up at Ellsworth Air Force Base, South Dakota, May 12, 2021. U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Quentin K. Marx

「コールドスプレイ」という表現には少し語弊がある。使用される添加剤粒子は加熱されるが、融点の80%以下までしか加熱されないため、腐食しにくい。粒子は合体して固体になり、高強度で構造的に健全な結合を生む。一度塗布された新素材は、修理される部品の元の形状や公差に合うように修正される。このように、固体コールドスプレーは加法的であると同時に減法的なプロセスでもある。

空軍は2020年以降、積層造形にコールドスプレイ・プロセスを使用しており、航空機のヒンジから構造サポート、シャフト、着陸装置部品まで、あらゆるものを交換ではなく修理している。同軍は2021年、B-1Bのオーバーウイングフェアリングのスリップジョイントの修理に固体コールドスプレーを使用した。最近保管庫から引き出された退役ランサーの再生にこのプロセスが使われた可能性もある。   

NAVAIRは10年以上前から積層造形技術を応用し、2016年には初の飛行に不可欠な航空機部品であるV-22オスプレイのエンジンナセルの3Dプリントリンクとフィッティングアセンブリの製造に採用した。    

COVID-19の大流行によるサプライチェーンの問題により、海軍は2020年から積層造形への投資とその利用を加速せざるを得なくなった。現在、NAVAIRは、配備中の航空母艦を含む33カ所に96台の積層造形装置を導入している。

同司令部は、飛行に不可欠な部品の修理に各種3Dプリンターを使用している。2021年にNAVAIRは、Ultimaker S5 3Dプリンターを含む完全配備型3Dプリンティングシステムに、最高500万ドル相当の5年間のIDIQ契約を締結した。

この投資は、スーパーホーネットのタイヤ/ホイールアセンブリを含む、さまざまなプラットフォームや機器の種類で実を結ぶことになりそうだ。本誌の質問に対する電子メールでの回答で、グロンダはAMチームの「初期評価では、毎年(スクラップ/リサイクル)に出される166本の(ホイールリム/タイヤ)の80%以上が、このコールドスプレー技術で修理可能」と再確認されている。

さらに、コールドスプレイによる修理には2時間かかり、ホイール1本あたり300ドルかかるという。リムの修理とタイヤの再装着にかかる費用は、年間合計で約4万ドルになる。通例通りアセンブリーを交換するだけなら1,660万ドル(約16億円)かかるところを考えると、AM修理は何の問題もないように見える。現場や空母のような前方作戦拠点で採用される可能性があるAMは、さらに価値を高めている。

例えば、AMチームは最近、配備された航空母艦の光学着陸システムの新しいカプラ・フィッティングを迅速に提供した。カプラが摩耗しシステムは故障し、搭載航空機の一部が飛行できなくなっていた。連絡を受けてから、チームは3Dプリント用に小さな金具を再設計し、それをテストして承認を受け、カプラーのデータを電子的に艦船に送り、そこでプリントした。

とはいえ、海軍の戦闘機部隊がスーパーホーネットの修理を海上で行うことはない。グロンダによれば、コールドスプレイ・プロセスで使用される金属粉の環境要件のため、このような修理は現在のところ陸上の設備や整備施設でしか行えないという。

An F/A-18E/F Super Hornet from Strike Fighter Squadron (VFA) 103 takes off from <em>Nimitz</em> class aircraft carrier USS <em>George Washington</em>, December 8, 2023. <em>U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson</em>

An F/A-18E/F Super Hornet from Strike Fighter Squadron (VFA) 103 takes off from Nimitz class aircraft carrier USS George Washington, December 8, 2023. U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson

しかし、アディティブ・マニュファクチャリングと密接に関連した考え方は、NAVAIRと海軍全体でサプライチェーンの設計と展開を再考するよう促している、とグロンダは説明する。

「コールドスプレイは、供給システムにある品目を再評価するきっかけとなっています。これらの品目は、以前は修理/消費不可能とみなされていました。したがって、このプロセスを再評価することで、全体的な維持コストを削減し、その節約分を収穫し、より重要な国防総省の能力に再投資することができるのです」。

軍需品から部品、装備品に至るまで、国防総省が直面しているサプライチェーンの圧力は、予算の圧力や非効率性(単純なワッシャーの袋に9万ドルも支払う)と相まり、ハードウェアを修理し現地製造する、より革新的なアプローチを促進することが期待される。戦闘機1機種の年間1600万ドル以上の車輪/タイヤ代が5万ドル以下に削減できる可能性がある。■

Navy Pays $100K To Replace Each F/A-18 Tire, 3D Printed Repairs Cuts Cost To $300

BYERIC TEGLER|PUBLISHED MAY 7, 2024 4:06 PM EDT


2023年7月27日木曜日

3Dプリンタの応用例拡大で国防の最前線はどう変わるのだろうか。艦内での部品製造、建屋の作成、より堅固な地上走行車両の実現....まだまだ広がる積層技術の応用

 




世界に1つしかない部品の印刷から、現場での迅速な修理まで、積層造形技術が産業基盤を破壊しつつある。材料とプロセスにおける革新で新たな可能性を開き、同技術への関心が高まっている




動車、航空宇宙、ヘルスケアなどの市場で積層造形技術を採用するにつれて、その機会は増える一方である。グランド・ビュー・リサーチのデータによると、世界の積層造形産業は2030年までに761億6000万ドルに膨れ上がる可能性がある。これは年平均成長率で20.8%に相当し、製造業全体の成長率をはるかに上回る。

 軍にとって、積層造形は従来の製造方法を用いた製品の物理的弱点など、設計上の脆弱性に対処する能力となる。一方、連邦政府と業界団体は、長年のサプライチェーン問題を解決する可能性に賭けている。

 しかし、有望な進歩にもかかわらず、防衛分野には大きなハードルが残る。普及には、流通網のあらゆる階層のメーカーが投資を惜しまないことが必要となる。しかし大規模企業が採用の大半を占めているのが現状だ。

 積層造形技術は新興技術と見なされることが多いが、最も初期の軍事利用は、エンジニアがアディティブ技術の開発を始めた1980年代後半にさかのぼる。しかし、初期の用語の使い方はさまざまだった。業界のコメンテーターが "アディティブ・マニュファクチャリング"という用語を一般化したのは、2000年代に入ってからである。

 新しい技術、特に業界全体の標準が不在の技術の導入は、困難な作業だ。米軍の各部門は、世界で最も大規模かつ複雑な組織である。陸軍だけでも200万人以上の職員がいる。一貫した言語もなく、技術に関する知識も限られていたため、1980年代から1990年代にかけて業界で働いていた人の中には、積層造形の可能性を理解していた人はほとんどいなかった。その結果、国防部門での受け入れは、他の部門に遅れをとった。

 とはいえ、過去30年間にわたり、軍は研究開発機能への導入に一貫して取り組んできた。各部門が付加技術をプロセスに組み込む新方法を模索する中で、研究者やエンジニアは、付加製造がギャップを埋め、課題に対処できるスペースを特定した。当初は、この技術が従来の製造技術を補完する使用例が中心だった。例えば、ツーリングガイド、治具、固定具の印刷などだ。

 転機は、2016年初めに国防総省が軍での3Dプリンティングを模索する一連のワークショップを開始したときだった。これらの調査結果が軍がこの技術を広く活用するロードマップを提供した報告書へ発展した。

 現在では、陸軍研究所の先進製造実践コミュニティから海軍のAdditive Manufacturing Technical Interchangeに至るまで、軍の各組織が研究開発ポートフォリオに積層造形を取り入れている。過去10年間で、各組織は、基地や現場での生産活動を強化するために、積層造形への依存度を高めてきた。

 2022年11月、海軍は初めて艦船に金属3Dプリンターを設置した。ステンレス鋼をプリントするこの機械は、乗組員に工業レベルの製造能力を提供し、これまで利用できなかった部品のオンデマンド製造を可能にした。第三者業者への依存を減らすことで、この技術は艦船と乗組員の自給自足を可能にし、海軍がリードタイムの遅れや陳腐化の問題を克服するのに役立つ。

 軍で実験中の素材は金属だけではない。2015年以来、陸軍工兵隊、工兵研究開発センター、建設工学研究所のエンジニアたちは、建物や橋などの建設規模の構造物を印刷できる技術の開発に取り組んできた。

 今年で6年目を迎えるAdditive Constructionプログラムを通じ、コンクリートを印刷できる大型機械を5台以上開発してきた。これまでのところ、ガードシェルターやバリアなどの小規模な建造物に加え、512平方フィートのビル2棟の製作に成功している。この工法は、構造物の強度と安定性を向上させながら、人件費を節約し、計画時間を短縮できる。

 積層造形技術は、従来の製造方法の限界による問題も解決できる。2020年発表のジョイントレス船体プロジェクトは、まさにそれを目指している。

 アナリストは、ベトナム戦争以降、車両損失の約73%がアンダーボディの爆発によるものと推定している。実際、イラクとアフガニスタンに派遣された米軍兵士の死因のトップがこの種の事故だった。

 メーカーは複数部品を溶接して車体を製造しているため、車体下部に継ぎ目があり、こうした弱点が路側爆弾の被害を受けやすくしている。ジョイントレス・ハル・プロジェクトは、アディティブ・テクノロジーを使って継ぎ目のない戦闘用外板を印刷し、車体の弱点をなくす。これにより、地上車両の回復力が向上し、こうした攻撃によるダメージが軽減される。

 ジョイントレス・ハル・プロジェクトに取り組むエンジニアは、金属ハイブリッド製造システムを製造しており、うち1つは造形容積がほぼ30x20x12フィートで、ハイブリッド金属3Dプリンターとしては世界最大だ。積層造形技術の柔軟性のおかげで、この機械は大型金属部品の修理など、他の作業も実施可能だ。このため、鋳造のように金型で1つの製品しか製造できない方法に対して、積層造形は大きな優位性を持っている。

 幅広い応用が可能な積層造形は、米国のサプライヤーのペース、敏捷性、能力を著しく向上させ、昨今のサプライチェーン難に対する解毒剤となるだろう。しかし、そのためには、製造業者が大規模にアディティブ・マニュファクチャリングを導入する必要がある。

 パンデミック以前から、国防総省はサプライチェーンの脆弱性、特に半導体含むマイクロエレクトロニクスの脆弱性に取り組んでいた。COVID-19の蔓延につれ、ロックダウンや労働力不足が発生し、材料や完成品の生産が停止した。製品輸送に労働者が十分確保できないため、納期は遅れた。また、貨物を受け取るスタッフがいないため、船は港を詰まらせた。一方、地政学的な対立は状況を悪化させるばかりだった。

 ほとんどの産業部門がそうであるように、防衛産業も影響を受けた。艦艇や航空機の製造に使用する鉄鋼やアルミニウムから、ブレーキやギアなどの小さな部品に至るまで、外国製部品や材料に依存していたこのセクターは、突然持続不可能になった。

 航空宇宙産業協会によると、2020年には航空宇宙・防衛部門は87,000人以上の雇用を失ったという。同協会は、こうした損失の64%はサプライチェーン問題が原因で、中小企業がその重荷のほとんどを担っていると推定している。供給不足は、少量多品種部品を専門とする中小サプライヤーに特に大きな打撃を与えた。

 しかし、その影響は経済の健全性にとどまらない。国防製造において、インフレを引き起こし、利益を蝕む重要な材料、部品、製品の不足は、国家安全保障問題に発展する可能性がある。

 2022年5月、バイデン政権が複数の大手メーカーと提携してAMフォワードを立ち上げたのは、この課題を念頭に置いてのことだった。この多方面にわたるイニシアチブを通じて、政府は付加技術を活用し、国内生産を促進し、サプライチェーンの即応性を高める期待がある。

 米国応用科学技術研究機構(ASTRO)が支援するAMフォワードは、米国企業が取引を確保し、設備を購入し、労働者を訓練するのを支援することで、採用までのギャップを埋めるのを支援する。この任意プログラムは、大手メーカーと米国に拠点を置く中小企業とペアリングを行う。参加企業にGEエイビエーションハネウェルロッキード・マーチンレイセオンシーメンス・エナジーが含まれる。

 各社は、付加製造部品の一定割合を国内サプライヤーから調達することを約束し、これにより全米の製造現場における付加製造の導入を促進する。また参加企業は大学や高等専門学校向けプログラムや労働力開発など、訓練や教育にもリソースを提供する。

 AMフォワードは、もう1つの蔓延する問題にも取り組む。3Dプリンティングの人気が高まっているにもかかわらず、業界に付加製造技術と製品に関する一貫したガイドラインがないままだ。AMフォワードを通じ、米国標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)による研究は、優先順位の高い新しい標準を開発し配布することで、この状況を変えることを目指しています。

アジャイル、軽快、フレキシブルな積層造形技術の高度な能力は、製造業のあり方を変える可能性がある。ASTRO Americaのデータでは、鍛造や鋳造といった時間のかかる方法の代わりに積層造形技術を使用すれば、部品のリードタイムを90%も短縮できると推定されている。

 利点はそれだけではない。一般的に従来の製造方法よりも廃棄物がはるかに少ないこの技術は、材料費を90%削減し、エネルギー消費量を50%削減する可能性がある。

 積層造形が生産性を向上させ、コストを削減し、即応態勢を強化できるという明確な証拠があるにもかかわらず、防衛分野における積層造形技術の導入は比較的遅れている。多くのメーカーは、積層造形の大きな可能性を理解し始めたばかりである。サプライチェーンの混乱に最もさらされがちな小規模メーカーが可能性の理解で特に遅れている。

 幸いなことに、このコミュニティは成長しつつある。それに伴い、この分野の外で働く人々は、利用可能なリソースをより意識するようになっている。SME(製造業界の専門家の協会)は、付加技術ツールを使用する人々のためのイベント、トレーニング、認定を提供しており、国内製造業者のスキルアップに役立つ可能性がある。

 業界として、認識と採用を加速させる取り組みに投資し続けることが極めて重要だ。そうすることで、米国製造業の能力を向上し、イノベーションを先導し、軍を支援するシステムを強化できる。■


VIEWPOINT: Additive Technology Revolutionizes Defense Manufacturing

7/6/2023

By Larry R. Holmes Jr.



Larry (LJ) R. Holmes Jr. is the executive director of research and engineering at Harrisburg University of Science and Technology, where he leads the development and operation of an Advanced Manufacturing Research Institute. He also serves as the director of government relations at nScrypt in Orlando, Florida, and the chief of manufacturing at the Applied Science and Technology Research Organization of America.




2022年7月15日金曜日

リムパックで注目、金属対応3DプリンターがUSSワスプで実用テスト中。艦上で交換部品等の製造が可能となれば海上作戦に変化が生まれそう。

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  • A 3D printer conducts a diagnostic run aboard the Wasp-class amphibious assault ship USS Essex (LHD 2) on July 9, 2022. MASS COMMUNICATION SPECIALIST 3RD CLASS ISAAK MARTINEZ / U.S. NAVY

 

邦政府全般に3Dプリンターを導入するメリットは非常に大きいものがあるが、同技術が実用レベルに到達するまで時間がかかった。今回、米海軍が、信頼性の高い金属部品をプリントできる初の3Dプリンターを艦艇に搭載したことで、状況が変わりつつあるのかもしれない。

 

政府は、3Dプリンターに非常に長期間にわたり関心を示してきた。2015年、筆者はNextgovに説明記事を書き、専門家が3Dプリント技術に投資することで得られる多くの利点に触れた。しかし、初期のプリンターは物理オブジェクトを作成するのに使用する材料が原因で、用途が限定されていた。

 

初期の3Dプリンターは、プラスチックベース材料のみを長いスプールで供給し、溶かした後、クリエイターが望むオブジェクトにしていた。また、初期の3Dプリンターは、コンピューター支援設計の図面ファイルに対応し、高精度の作品を作ることができたが、プラスチック基材のため、用途は限られた。小型の燃焼機関や歯車、芸術作品のプリントはできたが、完成品を実際に使うと、溶けたり壊れてしまう。

 

政府での3Dプリンター活用で決め手となったのは、耐久性のある金属を扱えるようプリンターが改良されたことだ。アディティブ・マニュファクチャリング(積層製造)と呼ばれる3Dプリンターは、金属、複合繊維、コンクリートなど、あらゆる素材の製品をプリントできるようになった。

 

先日、筆者はアディティブ・マニュファクチャリング分野の専門家を招き座談会を開催した。各専門家は、3Dプリンターがここ数年で進歩を遂げたこと、行政サービスの新たな可能性を切り開いていることを説明した。

 

アディティブ・マニュファクチャリングの新しいリーダーの一人マークフォージドMarkforgedのトニー・ヒギンズTony Higginsは、「当社にはステンレス鋼、金属工具、銅をプリントするシステムがあります」と述べた。「当社の顧客は、機能的なツール、カスタム部品、治具固定具の作成に使用しています」。

 

複雑な建設作業分野の3Dプリントで米陸軍は、最大の推進者だ。「コンクリート、発泡体、その他種類の材料など、あらゆるものをプリントできるシステムがあります」と、米国陸軍技術者研究開発センター建設工学研究所の機械エンジニア、メガン・クライダーMegan Kreiderは述べた。同氏は最近、コンクリートなど重い材料でプリントした3D部品で橋をまるまる建設した。

 

「構造技術者を通さなければなりません。補強が必要な対象、プリント方法の概要を説明します。高度に学際的になっている」(クライダー)。その後、通常は現場でパーツをプリントし、組み合わせて構造物を形成する。

 

陸上では、軍用に構造物の3Dプリントで、大規模プロジェクトの時間とコストを削減できる。しかし、海上では、重要部品をオンデマンドでプリントできるかどうかが、任務を継続できる艦と修理のため帰港をせまられる艦との分かれ目になる。そのため、海軍は、単純な3Dプリントより進化したアディティブ・マニュファクチャリングへ大きな関心を寄せている。

 

昨年、カリフォーニア州モントレーにある海軍大学院にゼロックス製の液体金属プリンターが設置された。このマシンはElemX Liquid Metal Additive Manufacturingと呼ばれ製造テストや、海上での艦船支援用サプライチェーンの短縮化に使用されている。

 

陸上テストはうまくいったようで、海軍はワスプ級強襲揚陸艦USSエセックスにアディティブ・マニュファクチャリング3Dプリンターを搭載したと発表。このプリンタは、RIMPAC-2022でテスト中だ。エセックスは、洋上条件下で積層造形3Dプリンタの初期テストと評価に参加した最初の艦となった。

 

リムパックでエセックスの3Dプリンタは、海軍艦艇が作戦行動中に日常的に必要とする部品多数を印刷する任務を負う。ヒートシンク、ハウジング、ブリードエアバルブ、燃料アダプタ、バルブカバーなどを迅速に製造する。エセックスのプリンターは、最大10×10インチの金属部品を製造可能だ。

 

エセックスの航空機中間整備部(AIMD)担当のニコラス・バティスタ中佐Lt. Cmdr. Nicolas Batistaによると、「積層造形は優先事項となっており、艦隊全体の戦いの取り組みに大きな変化をもたらし、整備の強化で水上部隊強化に寄与することは明らかです」。

 

リムパック期間中にプリンターの性能が良好と証明されれば、海軍は活用を拡大する。バティスタ中佐は海軍報道発表で、「米太平洋艦隊海軍航空隊司令官と海軍航空システム司令官は、積層造形専用のAIMDワークセンターの設立も開始し、必要な航空機部品を3Dプリンタで製造する能力に向け努力中」と述べた。

 

3Dプリンターがリムパックで効果を発揮すれば、陸上からの支援や材料を必要とせず、乗員が公海上の艦上で複雑大型部品を製造する光景が見られそうだ。■

 

Heavy Metal on the High Seas - Nextgov

An amphibious assault ship is testing a shipboard 3D printer during RIMPAC exercises.

BY JOHN BREEDEN II

JULY 14, 2022 08:00 AM ET

 

John Breeden II is an award-winning journalist and reviewer with over 20 years of experience covering technology. He is the CEO of the Tech Writers Bureau, a group that creates technological thought leadership content for organizations of all sizes. Twitter: @LabGuys


 

2022年2月6日日曜日

3Dプリント技術で潜水艦用部品調達を狙う米海軍。コロンビア級SSBNの建造本格化で年間3隻建造体制となれば、サプライチェーンに負担が増えるための画期的解決策になるか。

  

攻撃型潜水艦USSシカゴがパールハーバーの中間整備施設で作業を受けている (Dave Amodo/U.S. Navy)

 

要不可欠なコロンビア級弾道ミサイル潜水艦建造計画で想定される最大リスクに産業基盤へのしわ寄せがある。

 

積層造形技術による製造方式、つまり3Dプリント技術がその解決方法になる。

 

 

米海軍は部品需要に対応できない供給業者は積層造形技術企業と組ませ、部品を24時間体制で供給させたいとしている。狙いは潜水艦の産業基盤で最も弱い鋳造、鍛造、艤装品にある。

 

戦略潜水艦整備室主管のマット・サーモンMatt Sermonはこの方法で対象企業、なかには唯一の製造業者となっている企業もあり、に現在の受注分をこなすのにさえプレッシャーを感じているところでさらなる増産を無理なく行うことにあると説明。

 

現在の産業基盤でヴァージニア級攻撃型潜水艦二隻を建造しているが、そこにコロンビア級SSBN一隻が加わり、稼働中の潜水艦整備作業も行うことになる。

 

ただ、ブロックVヴァージニア級一号艦の建造は始まっており、艦中央部にヴァージニア・ペイロード・モジュールを加えるため建造工数が約25%増える。またコロンビア級2号艦の発注は2024年で2026年から毎年一隻で建造となるので、建造元、供給業者の業務量が急増する。海軍はSSBN1隻、SSN2隻の毎年調達を「1プラス2」と呼ぶ。

 

部品発注量が減らないのであれば、「積層造形技術で部品を作れば、1プラス2となっても対応できる」とサーモンは言う。

 

海軍では潜水艦用各部品を認証している。サーモンはこれにかわり、高品質素材や工程を積層造形に使うべきとする。

 

だが、海軍は以前も同じ方法で苦労している。航空機関連で積層造影技術が提唱され、非重要部品のプリント許可を求めてきたが、海軍は許可しなかった。空母USSジョン・C・ステニス艦上に初の高度製造ラボを設置したが、レーザースキャンと積層製造ツールで打撃群艦艇用部品を製造したのであって、航空機用部品は手掛けていない。

 

潜水艦用の積層造影技術応用部品も航空機用と同様にリスクがあり、潜水艦、航空機ともに厳しい安全基準で乗員の安全を守っている。だがサーモンによれば、技術部門が議論に加わっており、技術保証が次の検討対象になるという。海軍海洋システムズ本部の技術兵站部が推進室に同行し、積層造影技術応用のベストプラクティスの現場を視察した。

 

「積層造影技術により元の素材を上回る結果が得られる」とし、「複雑かつ微細な製造だが、根本から状況を変える可能性を秘めている。非破壊検査のやり方を変える必要もある。出来上がりが悪いからではなく、製造法が全く異なるからで、根本の理解が必要となる」

 

プリント部品を潜水艦に応用する動きは昨年11月に海軍が供用中潜水艦に初めて搭載する方針を発表したことで始まったとサーモンは説明。

 

同推進室では対象部品を6から10点選定し、リスト作成では「トラブルの多い部品」で必要な時に入手困難となるのが常の部品を想定したという。

 

部品メーカーへの仕事がなくなるわけではない。むしろ、技術力があるメーカーが3Dプリント応用をサポートする、技術力が無いメーカーはこの限りではないとサーモンは発言。積層造影製造の技術力がないメーカーには実施可能な別業務を与えるという。

 

サーモンからは積層造影製造の利点が次のように説明された。まず、1プラス2時代で製造能力不足を解消できる。部品不足で建造や修理が滞る事態を回避できる。

 

長期的に同技術の応用部品で認証が下りれば、海軍は業界とともに次世代SSN(X)への応用を想定し、建造費用を削減しつつ、現在より優れた部品、残存性に優れた部品の実現へ道を開くとする。■

 

Navy looks to 3D printing for submarine parts to ease burden on strained industrial base

By Megan Eckstein

 Feb 5, 01:06 AM


2018年11月12日月曜日

米海軍潜水艦にアグレッサー部隊誕生。その他3Dプリンター技術などで将来の姿が変わる

Navy Creating Attack Sub Aggressor Unit to Train to Fight Against Russia, China 米海軍が攻撃潜水艦でアグレッサー部隊を創設しロシア、中国に勝つ訓練を開始する

November 8, 2018 4:00 AM • Updated: November 7, 2018 8:58 PM
ヴァージニア級高速攻撃潜水艦USSミズーリ(USS-780)。May 31, 2018. US Navy Photo

ARLINGTON, Va. — 米海軍潜水艦部隊にアグレッサー戦隊が生まれる。中国やロシアを想定した即戦力体制の効果をさらに引き上げるねらいがあると米海軍潜水艦部隊司令官が説明している。

チャールズ・リチャード中将中将は8月の就任式典で隷下部隊に「戦闘準備を進めよ」と述べ注目を浴びた。

中将は国家防衛戦略構想を反映しここ数ヶ月に渡り潜水艦部隊の構想を整備している。訓練、戦闘態勢の認定、新規手法の開発やハイエンド戦支援体制などだ。

構想は米潜水艦部隊及び支援組織に向けた司令官の施策方針と呼ばれ、攻撃潜水艦部隊の訓練体系の抜本的変革を目指すとリチャード中将が海軍潜水艦連盟の年次総会の隻上で披露した。

「高速攻撃潜水艦向け訓練期間を元に戻すことでハイエンド戦に対応できるようにする。戦術即応体制評価と呼んできた体制に戻し戦闘即応体制評価として戦闘に中心を置く」(リチャード中将)

「第一線配備への認証過程を見直し重複をなくし、適材適所を目指した。潜水艦部隊ですべてを競わせる。実戦同様に勝敗をはっきりさせる。敵対勢力がこちら以上の水準だと困る。敗者になれば帰港できないだけだ」

アグレッサー戦隊はこの延長でハイエンドの潜水艦対潜水艦の戦いで米海軍が勝利することを目的とする。リチャード中将は海軍航空部隊の「トップガン」からヒントを得たと認めている。

会場で海軍広報官サラ・セルフ-カイラー中佐が構想ではトップガンと違い訓練専用艦は配備しないとUSNI Newsに述べた。かわりに人員(規模未定)は専属とさせ、リチャード中将は現役退役の海軍要員と民間人の想定と述べている。

リチャード中将は新規部隊を「敵側部隊の戦術を再現し訓練、認証演習に投入し、海軍航空部隊から着想を得たアグレッサー戦隊として敵対勢力の能力で我が方部隊と対決させ最大限まで現実を再現した訓練とする。実戦時に発揮できる力を与えるのが目的」と述べた。

司令官の構想では同時に海中迅速戦力整備構想Undersea Rapid Capability Initiatives (URCI) と呼ぶ作戦構想、戦術、整備戦略その他の実現も進めるという。

「内容の性質上詳しくお話できないが、今後実現したい構想は26通りあり、トップが戦略抑止力であり、URCIに13個、作戦構想が11あり、その他海中戦の戦力増強につながる構想作業がある。さらに次世代兵器、複合ドメインセンサー、通信装備、航法支援装備、無人自律技術があります。一部では革命的な効果が生まれる」

迅速戦力実現のハードウェア面ではリチャード中将はデジタル戦整備室が全力で「人工知能、機械学習の海軍への応用、導入」を進めていると紹介。またDARPAが海軍研究本部と無人装備のプロトタイプ、高性能センサーの開発を進めている状況を紹介し、ここ数年で大きな進展があったと述べた。

さらに中将は付加製造(3Dプリンター製造技術)の艦艇導入に触れ、即応体制の引き上げならびに兵站上の負担軽減につながると述べた。「潜水艦上で海上整備修理体制の将来を先取りしている。付加製造の実証を積極的に行い各艦に迅速に導入する。まもなく3Dプリンターが全艦に搭載される」

中将はSUBSAFE基準は今後も守るとしつつプリンターは輸液な存在になると述べた。攻撃型潜水艦USSヴァージニア(SSN-774)の乗組員は自前で3Dプリンターを購入し「部品を自製し航海日数を維持できた。こうした問題解決方法は連日のように部隊内で見つかっている」■

コメント:空のトップガンが生まれたのは空中戦での実力低下を憂えてのことでしたが、水中戦でも同様なのでしょうか。専属艦はないということですが、かつてスウェーデンの通常型潜水艦を借り上げたように同盟国の潜水艦をアグレッサーにしてはどうでしょうか。海上自衛隊のそうりゅう級が最適かもしれません。日本側乗組員にとっても「赤」の戦術を体得できる機会になるのでは。