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2021年9月21日火曜日

747を巡航ミサイル母機にする冷戦時の構想を現在実現したら。爆撃機の運行経費と比較すれば、重武装機として活躍の余地があるのでは。

 

ーイングは冷戦時に747に空中発射式巡航ミサイル72発を搭載し、長距離重武装機に改装し、スタンドオフ攻撃に投入する企画書を作成した。同機は747巡航ミサイル搭載機(CMCA)と称し、既存重爆撃機で各型ミサイルを運用するよりずっと費用対効果が高い機体になるはずだった。

747CMCAは結局構想段階の域を出ず、レーガン政権はB-1を復活させ、B-2も直後に供用開始した。だが民間機を貨物人員輸送以外の任務に投入する構想を再考していいのではないか。

747 に巡航ミサイルを多数搭載する?

1977年6月30日、ジミー・カーター大統領から発表があり、B-1開発を打ち切り、同事業の予算超過とともにミサイル技術の進展を理由にあげた。レーガン政権が同機事業を復活させ、現在も供用中のB-1Bランサーとなった。ノースロップ・グラマンのB-2スピリットも80年代に戦力化され、米国の戦略爆撃戦力は世界最上位となった。

だが米国では大ペイロード機材で長距離性能を発揮し、敵標的を攻撃する構想があった。既存民間機を改装し、当時開発されたばかりのAGM-86空中発射式巡航ミサイルを搭載すれば経済合理性からみて順当とされ、ボーイング747が候補機に上がった。

ボーイング7471969年初飛行し、もともとは空軍向け輸送機競合でロッキードC-5に敗退したものを民間航空用に作り直したものだ。それが「ジャンボ」ジェットの誕生の背景で、ジャンボとはよく言ったものだ。747は当時として圧倒的な存在感のある大きさで、全長225フィート、垂直尾翼は六階建てビルの高さに相当した。

同機開発は16カ月と比較的短期で進んでが、その作業規模は莫大なものだった。約5万名が747事業に携わった。技術図面75千点で部品点数6百万をカバーし、配線は全長171マイルに至った。風洞実験は合計15千時間にわたり、フライトテストも1,500時間に及んだ。

大規模事業だが同時に賭けでもあった。ボーイングは開発費用の捻出に苦しみ、20億ドル(現在の価値で149億ドル)を借り入れて完成させた。だが失敗すれば、同社は大変な事態になるところだった。

それを念頭に747CMCA構想が生まれた。ボーイングは空軍が同機の航続距離6千マイル、ペイロード77千ポンド性能に注目しているとわかっており、1980年にCMCAを提案した。

 

747 CMCA構想とは

ボーイングは747-200C一機を選び、機内内装を取り外し大型ペイロードを搭載するとした。同型は機首が開閉し貨物を出し入れする構造だった。

747CMCAAGM-86巡航ミサイルを搭載する構想だったが、同ミサイルはB-52への搭載が先に決まっており、有効射程1,500マイルの性能を生かし、ソ連の地対空ミサイルの射程外から発射し、爆撃機の安全を高める想定だった。

だがB-52では巡航ミサイル20発から21発を搭載するのに対し、747CMCCAなら72発も搭載できるはずだった。

Patent drawing of the 747 CMCA

 

ミサイルは747胴体内の回転式発射機9基に搭載する構想だった。各発射機に8発を装填する。機体後部の側面に発射孔を作り、そこからミサイルを発射する構想で、回転発射機を後部へ移動させるとした。一回で発射できるミサイルは一発に限られるが、ボーイングは短時間で連続発射させる構想だった。

 

ミサイルには衛星データリンクで標的情報を与える。一方、747は空中待機し、機内の指揮統制要員が標的情報を中継する。

これにより、747CMCAB-52三機分の巡航ミサイルを運用し、747でのミサイル運用は大幅な費用節約につながるはずだった。

爆撃機より安価になる

Artist’s rendering of a 747 CMCA firing cruise missiles

B-1Bランサーが747CMCAの実現を不要とする同規模のペイロードを実現し、ジェネラルエレクトリックF101-GE-102アフターバーナー付きエンジンにより同爆撃機は高速飛行とに高い操縦性に加え、強力な攻撃能力を実現した。ただし飛行時間当たり経費は61,000ドルと非常に高価な運用となった。ただしB-52のほうが高く、70千ドルになり、B-2では何と130,159ドルが必要だ。これに対し、747改装案の時間当たり経費は25千ドル程度だった。

米爆撃機各型の運航経費がここまで高いのは、機体数と関係がある。空軍はB-1B62機、B-5276機、B-220機運用する。各型の機数がここまで少ないため、部品単価が非常に高くなり、上昇し続けている。これに対し7471,500機製造され、部品製造体制や保守点検インフラは既存のものを世界各地で利用できる。つまり、747原型なら機体価格のみならず運航経費でも大きな経済効果が期待できる。

2014年にタイラー・ロゴウェイが指摘していたが、747で巡航ミサイル72発を運用していれば、20年続いたアフガニスタン戦で重宝されていただろう。運航経費が低く長時間滞空でき、巨大なペイロードを活用できたはずだ。制空権が確立済みの空域で747CMCAは航空支援の大きな効果を実現していたはずで、その他イラク、シリアでも活躍していただろう。さらにJDAM各種の運用にも改装されていれば、同機で対応可能となる標的数は72どころか数百か所に増えていたはずだ。しかも専用爆撃機の数分の一の費用で実現していたはずだ。

CMCA構想が復活する?

B-1BB-2ともに期待の新型ステルス爆撃機B-21レイダーの導入を持って退役する。B-21ではさらに高度のステルス性能でありながら、B-2同様のグローバル攻撃能力を実現する。ただし、一点大きな落とし穴がある。B-21B-2より小型な機体で、ペイロードは30千ポンドに限定される。B-240千ポンド、B-1B75千ポンドだ。

B-21では新技術の採用と機体が一新されることもありB-2より運航経費は下がる見込みだが、ステルス機の運用経費は高くなりがちだ。空軍が非ステルス機のF-15EX導入に走ったのは、F-35より供用期間が三倍でありながら時間当たり運航経費は半分になるためだ。ノースロップ、空軍ともにB-21は予定より早く進展している、大きな障害はない、と主張しているが、同機の飛行時間当たり運用経費がいくらになるのか興味を呼ぶ点である。

米国はもはやアフガニスタンやイラクで航空戦闘は展開しておらず、大国間戦への対応に移ろうとしている。前回の冷戦と同様に米中両国の対立が直ちに武力衝突に展開する可能性は低い。今回の冷戦で戦争への移行を防ぐのは相互破壊が保証された状態ではなく、経済崩壊が確実に発生することだ。

米中両国の経済は複雑にからみあっており、世界第一位第二位の経済大国が開戦となり核爆弾を使えば、世界の商取引は苦境に陥る。両国が戦闘状態になれば、両国は外交力、資源を有しているので、世界各地が戦場になる可能性がある。戦争回避が可能かは定かではないが、冷戦モデルを投入すれば、核の冬の到来を防止できるのは明らかだ。

米特殊作戦部隊が従来より広く世界各地に拡散しているため、同盟国協力国部隊による対テロ作戦の支援では従来に増して経済性の高い航空支援がとくに開発途上国で必要となる。特殊作戦司令部には武装上空監視事業があり、このニーズに対応すべく、民間機を改装した重武装機を投入しようとしている。

アフリカのように広大な対象地において各地で航空支援を行おうとすると「距離の暴力」に直面する。747改装で長距離順応ミサイルや短距離弾を搭載すれば大陸規模の航続距離を前提とするミッションを実現できるし、空中給油で距離はさらに延長できる。言い換えれば21世紀版の747武装機構想は戦場を制覇する可能性が十分あることになる。

747の生産は来年にも終了する予定となっているが、中古機を改装すればはるかに安価に構想を実現できる。同様にその他民間機も改装し、経済的に同じ機能を実現できるはずだ。

 

America's plan to build 747 arsenal ships packed with cruise missiles

Alex Hollings | September 19, 2021

 


 

2020年6月17日水曜日

重武装機構想を巡り意見がまとまらない米空軍




palletized munitions exiting aircraft今年1月にユタ試験場でMC-130JからのCleaver弾薬投下実験は成功した。Credit: U.S. Air Force



空軍の短期優先事項として「重武装機」が急浮上しているが、機材選定で結論がまとまらず、このままだと指揮命令系統やノースロップ・グラマンB-21事業にも影響が出てくる恐れがある。

  • 空軍研究本部が新型Cleaver弾薬の実証実験に成功
  • 「重武装機」試作作業の予算を検討中

ロッキードC-130、ボーイングC-17の母機から新型長距離弾を発射する案を空軍戦闘統合能力実現事業 (AFWIC) 室が短期解決策として提示している。

一方、空軍グローバル打撃軍団 (AFGSC)はミッションに最適化させた新型機の開発を主張している。

空軍協会のシンクタンク、ミッチェル研究所はともに支持しない。このたびAviation Weekは公表前の同研究所による資料を入手した。次期航空宇宙コンセプト性能評価部長のマーク・ガンジンガー退役大佐が編纂し、費用対効果が一番高いのはB-21の調達増と主張している。

B-21の最低100機調達では長距離打撃手段が不足するとの見解で関係部署すべてが一致している。B-21はノースロップB-2(20機)とロックウェルB-1B(62機)と交代し、ボーイングB-52(75機)と併用する。

「爆撃機部隊の規模をどこまで拡大しても、統合軍が必要する規模に達しないことはわかっている」とクリントン・ハイノート少将(AFWIC
副司令)は述べている。

空軍最新の爆撃機必要機数は最低220機の推定とAFGSC司令官ティモシー・レイ大将は4月に報道陣に語っていた。

ミッチェル研究所による分析では空軍の爆撃機数はB-2とB-1B退役に伴い、2032年に120機程度まで縮小となる。

元爆撃機パイロットのガンジンガーはB-21の発注規模は2040年までに120機と予測。75機のB-52とあわせても空軍が求める最小規模に30機不足する。この差を埋める策として現行輸送機に長距離弾を搭載する、新型機を開発する、あるいはB-21を追加発注するの各案があり、意見がまとまらないまま内部議論が続いている。

根底に費用対効果と能力のふたつがある。ステルス爆撃機のB-21Aは重武装機より高価格だが、敵目標に接近できるので攻撃には安価な無動力兵器が使える。反面、B-21Aは開発初期段階にあり、ノースロップがまとまった機数の納入に10年以上かかる恐れもある。

重武装機構想は1970年代以降、各種が検討されてきた。ジミー・カーター政権時代にロックウェルB-1Aが候補となり、国防総省は巡航ミサイル母機としてボーイング747改装案を検討した。

同構想が30年後に再浮上した。2006年に議会予算局がボーイングC-17に超音速巡航ミサイルを搭載する案を検討したが、敵地侵攻が可能な爆撃機より低効果の上、C-17の追加発注で35億ドルが必要とわかった。

その四年後にB-21Aの要求水準が定まると、空軍はRand社に研究委託し、侵攻型爆撃機と重武装機構想の費用比較を行った。侵攻型爆撃機導入のほうが重武装機へ予算投入するより安上がりになるという結論だった。

空軍がノースロップにB-21Aの開発契約を交付したのは2015年10月だったが、議論は未決着だ。ウィル・ローパーは国防長官付き戦略戦力開発室長として2016年2月に重武装機構想を発表し、ロッキードC-130に似た機体がパレットに載せた弾薬を展開する様子を示していた。

翌年ローパーは調達・技術・兵站担当の空軍次官補に就任し、重武装機構想は空軍研究本部(AFRL)に渡された。1月に、AFRLはパレット化した弾薬の投下試験をMC-130Jで初めて実施した。拡大距離貨物投下消耗扱い空中装備Cargo Launch Expendable Air Vehicles with Extended Range (Cleaver)としてパレット6枚に異なる弾薬を乗せた。その後のテストでC-17からの投下が試された。

MC-130J air-drop test2006年のテストでC-17から重量50千ポンドのロケットを投下する能力が実証された。このロケットは極超音速滑空体の空中発射に使われる。Credit: Steve Zapka/U.S. Air Force

Cleaverテストの結果からAFRLはC-130、C-17ともに投入可能と結論づけ、C-17でロケット空中発射も実証した。2006年にC-17から極超音速加速滑空体用のミサイルも空中投下した。同機はミサイル防衛庁でも中距離弾道ミサイル想定の標的投下に使われ、ミサイル迎撃テストで役目を果たした。

AFWICはC-130やC-17へ長距離兵器を搭載するのが望ましいとしており、その理由に攻撃性能を飛躍的に伸ばせるからとする。
「性能がすべてであり、長距離攻撃能力に実効性を持たせるよう配慮が必要だ。輸送機の活用で攻撃力の強化が実現できると確信している」(ハイノート)

この考え方に全員が賛同しているわけではない。レイ大将は爆撃機部隊総司令官としてC-17を攻撃用それとも輸送用に選択する場面を司令官に与えたくないと報道陣に述べた。

「輸送機をここで使えば輸送任務と競合になる。重武装機は完全新設計で経済合理性をもたせ開発して爆撃機不足を解消する方がよい」(レイ)

ハイノート、レイの両名で既存機、新型機で意見が割れるが、ステルス性能がない機材は不適だと主張する向きもある。

長距離ミサイル導入を進めるよりB-21なら標的に接近でき、短距離射程で直接攻撃手段を使える。その場合の攻撃弾には推進用の燃料も機構も不要なので小型化できる。

「サイズが重要だ。出撃規模が縮小しており運べる兵器の数も減っている」とガンジンガーはミッチェル研究所報告書で指摘。

ガンジンガーは重武装機で搭載する長距離弾と爆撃機で運用するより安価かつ精密誘導可能な爆弾の比較もしている。中国やロシアと開戦となれば標的リストは長大となる。

「一発百万ドル超の長距離スタンドオフミサイルを何万発も発射する負担に耐えきれない」とガンジンガーは報告書で指摘している。■

この記事は以下を再構成したものです。


Steve Trimble June 02, 2020