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2025年7月10日木曜日

中国は台湾に核爆弾を投下する可能性(National Security Journal)—この答えを得るためには中共指導部の思考を知る必要があります

 


ChatGTP


国は公式には「先制不使用」の核政策を維持しているが、台湾をめぐる紛争iで核兵器を使用する可能性を完全に否定できない。

-台湾侵攻は複雑でコストのかかる作戦になる可能性が高く、台湾の山間部で長期にわたる反乱に発展した場合、不満を募らせた北京は戦いを終わらせるために核のエスカレーションを検討するかもしれない

-しかし、中国の戦術核兵器は限られているか、存在しないと考えられており、台湾への戦略的攻撃は非現実的だ

-可能性の高い核のシナリオは、米国が軍事介入した場合、ワシントンを威嚇するためのICBM実験だろう。


中国は台湾に核兵器を使用するのか?

このデジタルページで中国と台湾の戦争の可能性について広く議論しているのには理由がある。中国が台湾に対して行う作戦は、封鎖や隔離(非機動的)から始まり、全面的な水陸両用侵攻(機動的)に至る可能性がある。

 見落とされがちなのは、核戦争へのエスカレーションの可能性だ。

中国は現在、約600発の核弾頭を保有しており、2030年までに少なくとも1,000発を保有したいと考えている。中国は先制不使用政策をとっているため、習近平が台湾に対して終末装置の使用を命令するかどうかは定かではないが、核のシナリオは検討する価値がある。


中国の通常攻撃は台湾を壊滅させるだろう

中国軍の戦闘は、台北と台湾周辺の防衛拠点に対する衝撃と畏怖キャンペーンから始まるだろう。弾道ミサイルや巡航ミサイルが、陸上ランチャー、戦闘機、爆撃機、水上艦船、潜水艦から発射され、水陸両用攻撃の前に台湾を壊滅させるだろう。航空機も誘導爆弾を投下するだろう。中国は頻繁に水陸両用作戦のリハーサルを行っており、新たに建造した揚陸艦は多数の戦車や装甲兵員輸送車を配備して海岸を攻撃することができる。


台湾はどう反撃するか?

台北は最初の攻撃を受けた後、白旗を振るかもしれない。あるいは、ロケット、ミサイル、大砲で国境を守ることもできる。防空砲台は忙しくなるだろう。上陸地点はほとんどなく、厳重に防衛されている。 さらに、台北への道路は限られているため、戦車が首都まで無制限に移動することはできない。

 台北はすぐにあきらめることもできるし、戦い続けることもできる。 しかし、効果的な戦略のひとつは、防衛側がゲリラ戦ので丘陵地帯に向かい、長期の反乱を実行することだろう。台湾は高い山が連なる山岳島だ。 反乱は、中国にとって防御するのが残酷になるだろう。


中国は台湾を飢えさせることができる

しかし、中国の封鎖と飛行禁止区域は犠牲者を出すだろう。 台湾の食料とエネルギーの備蓄は、わずか1カ月分もないかもしれない。台湾は、エネルギー供給の90%以上と食料のかなりの部分を輸入している。封鎖されれば、台北は最終的にあきらめるだろう。

 残るは山中の反乱軍だ。 彼らはいつまでも戦い続け、食料を調達することで生き延びることができる。習近平はここで不満を募らせる可能性がある。反乱軍が激しく戦えば、戦争は大幅に長引く。中国は島全体を支配することはできず、反乱作戦が島内の台湾人戦闘員をすべて排除するのに苦戦し、時間は刻々と過ぎていくだろう。

 これが、習近平が核兵器の使用を検討するポイントだ。 核兵器を爆発させる選択にはリスクが伴うが、習近平には高収率の戦略兵器でそれを実行する手段があることは確かだ。


中国の戦術核兵器

戦術核兵器という選択肢もある。国防戦術情報センターによれば、中国の戦場での核兵器計画に関する情報はほとんどない。

 習近平はおそらく、高出力の攻撃は命じず、代わりに小型の非戦略兵器に頼るだろう。ArmsControl.orgは、「欠けている重要な能力の一つは、限定的な核攻撃のための大規模または多様な戦域核能力または戦術核能力である」と指摘している。

 したがって、習近平は戦術核兵器の開発を望むだろうが、中国は戦術核兵器すら持っていないかもしれない。高収率の戦略核兵器は、中国軍とともに島全体を破壊してしまうため、戦場兵器が他の選択肢となる。

 台湾の核戦略家は20年来、中国の低収量核兵器の出現を懸念してきた。 ヴァージニア州にあるアメリカのシンクタンク、国家公共政策研究所によれば、2005年、台湾の文尚憲大佐は、中国の核戦略は「先制攻撃戦略」につながり、「必要であれば、地域戦争で戦術核兵器を使用する」と述べた。


米軍が台湾を救う可能性

習近平と将軍たちにとってのもう一つの考慮点は、台湾封鎖や台湾侵攻の際に米国が介入すべきかどうかである。もし中国が多くの艦船、潜水艦、航空機をアメリカ軍に奪われれば、習近平は考えられないような行動に出るかもしれない。習近平はICBMの発射実験を行い、ワシントンを脅して凍らせ、中国との戦いを止めさせるかもしれない。これはおそらく、習近平が台湾に対して全面的な核武装を選択するよりも可能性の高いシナリオだろう。

 もし役割が逆転し、中国に対して非戦略兵器の使用を検討するのがアメリカだとしたらどうだろう?

 アトランティック・カウンシルによれば、国防総省が2022年に議会に提出した中国の軍事力に関する報告書には、「2018年後半になると、米国が台湾侵攻艦隊に対して低出力の兵器を使用するのではないかという懸念がPRCから出始めた」と記されている。

 もちろん、これはハルマゲドンにつながる。中国は、ICBMを搭載した北米に対して高収率兵器で、グアム、日本、韓国の米国の標的に対しては中距離核兵器で、確実に反撃するだろうから。 この全面核戦争は確率は低いが、米中の戦略家は考慮しなければならない。

 中国、台湾、米国の戦闘プランナーは、戦域における核兵器の配備を考慮しなければならないが、先制核攻撃の使用は低い確率とはいえ、その可能性を考えれば検討・研究されなければならない。

 中国が戦術核兵器を開発中であることは間違いない。北京は、封鎖や侵攻という形でのアメリカの介入によって、戦術核が存在すればその使用を検討するだろう。 習近平はまた、台湾での長期にわたる反乱との戦いに不満を募らせ、ICBMや中弾道ミサイルの発射実験にエスカレートさせるかもしれない。 核のオプションはおそらく不測の事態に過ぎず、台湾に対して実現することはないだろうが、だからといって核戦略家はこの可能性を無視すべきではない。■


Would China Dare Drop a Nuclear Bomb on Taiwan?

By

Brent M. Eastwood

https://nationalsecurityjournal.org/would-china-dare-drop-a-nuclear-bomb-on-taiwan/


著者について ブレント・M・イーストウッド博士

ブレント・M・イーストウッド博士は、『Don't Turn Your Back On the World: A Conservative Foreign Policy(世界に背を向けるな:保守的外交政策)』、『Humans, Machines, and Data(人間、機械、データ)』の著者である: Human, Machines, and Data: Future Trends in Warfare』のほか、2冊の著書がある。 人工知能を使って世界の出来事を予測するハイテク企業の創業者兼CEO。ティム・スコット上院議員の立法フェローを務め、国防と外交政策について同議員に助言。 アメリカン大学、ジョージ・ワシントン大学、ジョージ・メイソン大学で教鞭をとる。 元米陸軍歩兵将校。 X @BMEastwoodでフォロー可能。




2019年1月8日火曜日

今年の展望 中国に警戒を。習近平体制は不安定化に向かうのか。


Will a Failing China Attack America? 
失速する中国が米国に攻撃を仕掛ける可能性はあるのか

"That’s an especially disturbing possibility now that belligerent Chinese officers are convincing themselves they can launch surprise attacks on the U.S. Navy and kill thousands of Americans."
「米海軍を奇襲攻撃し数千名の米国人を殺せると公言してはばからない中国関係者を見ると心穏やかではいられなくなる」


by Gordon G. Chang
December 31, 2018  Topic: Security Region: Asia  Tags: ChinaXi JinpingAmericaPLAU.S. Navy

「米国は死を最も恐れる」と海軍少将羅願Luo Yuanが2018年12月20日に深センで講演した。「こちらには東風-21D、東風-26ミサイルがある。空母キラーだ。あちらの空母を沈められる。一隻で5千人だ。二隻なら死傷者一万人になる。米国が恐怖を感じないはずはない」
羅少将は毒舌で知られるが、中国上層部の思考を反映している。1月1日の米国との国交回復40周年を直前に米艦船攻撃を公言する二人目の軍関係者となった。
戦争の話題は中国で軍以外からも聞こえる。今一番ホットな記事は1938年の毛沢東演説の再録だ。
中国国営メディアが米国への憎悪でいっぱいのときに毛沢東の言葉が人気を集めていることは要注意だ。中国指導部は内部抗争に勝つためにも戦争の話題を口にしている。
中国共産党は混乱しているようだ。中央委員会は第19回人民代表会議で第四次全体会を開けなかった。
昨秋、中国経済が厳しい状況ため習近平が年末までに全体会を招集し構造改革問題を取り上げると外部は見ていた。
中央委員会には全体会を開催すべき理由が別にある。「米国の対中政策が競合に方向を変え現体制の存続が危なくなっている」と中国問題で定評のあるサイトSinoInsiderが10月に評した。「そのため習近平には党エリートを集め国内外の危機に一致して対応させる必要がある」
ではなぜ四次全体会が開催されなかったのか。「習が権力集中を完成したため全体会を開催し不必要な波を立てたくなかったのではないか」と中国ウォッチャーが匿名条件で教えてくれた。「一人で全部決められるのは毛沢東時代と同じだ。つまり全体会は都合よく開催できるので、党から追放したい同志がいれば開催するのだろう」
習は毛への心酔で知られ、毛の発言をなぞっているので、現在の中国が習により完全に統制されている可能性は高い。
だが中国ウォッチャーの大部分は別の見方だ。習の地位は従来より不安定というのだ。Sinoinsiderがこのことに触れていた。「四次全体会が開催されないのは派閥抗争が激化し習も危うい状況にあるためだ」
香港中文大の中国ウォッチャー、ウィリー・ラムは「一部アナリストは習が地方幹部に不人気で四次全体会開催を見送ったと見ている」と記した。
この説明だと反習勢力が経済失速や米国との貿易摩擦など習の政策失敗を責めている現状と合う。前例のない権力集中を得た「全案件全地点全国民の主席」は逆に誰の責任も問えない。
そうなると2018年12月18日に習が内容の乏しい演説を第11次中央委員会の第三次全体会40周年の席上で行ったのも当然か。これは中国の「改革時代」の始まりとされている。中身がない演説に終始したのは党がそこまで分裂しているためだ。さらに分裂が進みそうな兆しがある。習の前任者かつ今もライバルの江沢民、胡錦濤がともに習の90分におよぶ13千語の演説に同席しなかった。
習の権力基盤が危うくなったとの観測は正しく、四次全体会開催に失敗したのは明らかだ。習が2012年末に就任後の党は淡々と定期的に運営されてきた。人民代表会議は五年周期に、全体会がその間に開催される予測どおりの展開だった。共産党へ関心を有する向きからはこの規則正しい実行を好意的に見てきた。
だが共産党はもはや規則正しい実行ができない。三次全体会は通例の秋にでなく2月に開かれた。習はこの機会を乗っ取り統治問題を取り上げ、任期上限を取り払った国家主席となった。また四次全体会の議題を三次でとりあげたため、四次全体会が未開催なのは上述のとおりだ。
中国軍関係者が米海軍を標的とする発言を普通に行うのは良くないがもっと悪いのは共産党トップが不安定になっているのが明らかなときにこうした発言をはばからないことだ。外部からは北京で何が起こっているのかうかがい知れないが、上層部の摩擦の兆候はだれにでもわかる。
この不調和のため米政府は対中関係を抜本的に見直すことになった。共産党内部の対立により米国にとって望ましくない方向に向かうのはあきらかで、意見対立の原因の一つに対米関係なのだ。
トランプ政権は対中関係の変更に舵を切り始めた。たとえば国家安全保障戦略が一例だ。ここでは中国にはロシアと並び「現状を変更しようとする勢力」の表現が見られる。これは従来よりも現実的な認識への第一歩であるが中国の状況が不安定化しつつ強硬な態度を増しているのは戦略方針の表現を超えている。落ちめの中国が強襲に出る可能性はある。

好戦的な中国関係者が米海軍に奇襲攻撃をかけ数千名の米国人の生命を奪えると公言する中でこれは不安を煽る可能性だ。■



Gordon G. Chang is the author of The Coming Collapse of China . Follow him on Twitter @GordonGChang.

Image: Reuters

2017年5月10日水曜日

★★中国の将来を完全に変えた炒飯調理とナパーム空爆



今日の中国が一歩間違えば北朝鮮同様になっていた可能性があるということですね。しかし朝鮮民族は悲運に苦しめられており、二国がちがう道筋についたことが歴史の大きなわかれめであったことがわかります。しかし歴史を都合の良い形に平気で塗り替える、信じ込む傾向は両国で似ていますね。
Egg Fried Rice and an Air Strike Altered China’s History

Egg Fried Rice and an Air Strike Altered China’s History玉子炒飯と空爆が中国の歴史を永久に変えた

A U.S. bombing run wiped out Mao Zedong's dynasty when his son was cooking breakfast 米軍爆撃が毛沢東の世襲の夢を奪った。息子は朝食を作っていた


May 7, 2017 Sebastien Roblin


  1. 前途有望な若者が戦争で馬鹿げた形で生命を奪われる例は多い。これは北朝鮮も高く称賛する人物の死で中国の将来が変わってしまったという話だ。
  2. 彭徳懐Peng Dehuai将軍の新任書記に妙な点があると杨迪Yang Di 将軍が気付いた。若い将校はロシア語通訳官のくせに幕僚会議の途中で口をさしはさむだけでなく梁興初Liang Xingchu第38軍団司令官に戦術の指導までしていた。そこまでやっても彭徳懐(人民解放軍朝鮮志願部隊総司令官)は何ら叱責しない。彭徳懐が中国将棋で一度打った手を取り消す悪癖を示すと通訳官がいら立ちを隠さない態度を見せた。
  3. 楊は直属の上司Ding Ganru将軍に若者の行いに不満を伝えたところ、つまらないことは言うなと止められた。後になって、楊も事実を知った。書記官は毛岸英Mao Anying、毛主席の実子で中国のトップを約束された人物だった。

ソ連へ

  1. 毛岸英の出自で母親の楊開慧Yang Kaihuiは避けて通れない。楊開慧の父は毛沢東を同じ湖南出身者として助けた。毛沢東は楊開慧の美貌と政治思想にひかれ、ふたりは1920年に結婚し長沙で所帯を持つ。実は楊は毛沢東の四人の妻のうち二番目で最初の妻は本人の意思とは関係なく結婚させられたがすぐ死んでいる。
  2. 楊は子宝三人に恵まれた。岸英、岸青、岸竜の男の子ばかりだ。毛沢東は遠隔地で楊がいながら遊撃隊の狙撃名手の賀子珍He Zizhenと結婚してしまう。
  3. 1930年、共産勢力が長沙で敗れると国民党の軍閥何鍵 He Jian が楊開慧を逮捕する。毛沢東の情報開示を拒み、楊開慧は息子たちの目前で銃殺された。息子たちは上海で不良となり、岸竜は赤痢で短い生涯を閉じ、岸青は警察に拷問を受け生涯を通じ精神を病んだ。
  4. 共産勢力は残った毛沢東の子息をソ連に1936年に送った。各国共産主義者の子弟と寄宿舎で学んだ岸英はロシア名セルゲイ・ユン・フを名乗り、流ちょうなロシア語を話すようになる。継母の賀子珍もロシアで合流し戦闘の傷手当を受ける間に毛沢東は四番目で最後の妻江青 Qing Jiangと結婚した。
  5. モスクワのフルンゼ軍事大学で学んだ毛岸英はスターリンに第二次大戦中の赤軍で戦いたいと懇請し第一白ロシア戦線で砲兵隊に従軍し、ポーランド、チェコへの進軍に加わった。
  6. 1946年1月に父から延安へ戻るよう命じられたのはこれ以上ロシアに残せば中国人というよりロシア人になると恐れたためだ。毛岸英は聞く耳を持たず父へのカルト的人気さえ批判する人物だった。父により地方の肥料工場へ送られた。比較的単純な作業に従事しながら1949年に劉松林Liu Songlinと結婚する。劉の両親も国民党との内戦で死亡していた。
ソ連軍制服を着た毛岸英
Mao Anying in a Soviet uniform. Photo via Wikimedia

朝食時の戦死

  1. 毛沢東は中国の支配を1949年に掌握し、その関心は分断された南北朝鮮に向けられた。米国は国民党を支援しており、毛沢東は南朝鮮が米軍の反攻の足場となるのを阻止しようとした。
  2. 毛沢東は1950年の北朝鮮による韓国侵攻を手助けしたものの計画はすぐに裏目に出る。国連軍の反抗攻勢で北朝鮮が消滅寸前になり、さらに鴨緑江を超え中国内部にまで侵攻する勢いだった。
  3. 米大統領ハリー・トルーマンにはその意図はなかったが、在韓米軍総司令官ダグラス・マッカーサー元帥は実現を願っていた。
  4. そのため毛沢東は大規模な「志願軍」を彭徳懐将軍の指揮のもと組織し事態改善を図った。中国軍は北朝鮮国境を1950年10月に越えて冬攻勢で国連軍を撃退するつもりだった。戦闘は人海戦術のため多大な人的損害が生まれた。
  5. 岸英は志願軍入りを求め、歩兵隊従軍を願っていた。だが彭徳懐は毛沢東の息子が戦死するのは見たくないとして、岸英をロシア語通訳官として劉書記の仮名で司令部付きにした。司令部は中国北東部をはさんだ東倉郡にあり米軍空襲を避けて金鉱の中にあった。この時点で米航空戦力は戦線のいたるところで活発で共産軍兵士や車両が安全に移動できるのは夜間に限られていた。
  6. ただし双発の RF-61Cレポーター(P-61ブラックウィドー夜間戦闘機の写真偵察型)が11月24日夜に司令部の所在を数時間にわたり探っていた。彭徳懐は所在がばれることを恐れ全幕僚に地下に隠れるよう命じ、調理も夜間限定とし煙の目視を避けた。
  7. 司令部幕僚は午前4時に勤務開始だったが、岸英は眠り込んでいた。午前9時に起床し朝食が欲しくなり幕僚仲間に彭徳懐の居室にあるストーブで卵入り炒飯を作るよう命じた。居室は地上の建物にある。戦場では卵は貴重品で北朝鮮側から彭徳懐への贈答品として届いていた。
  8. 楊将軍の回想録では建物から煙が出ているのに気づき、岸英に敵の注意を引く前に火を消せと注意したとある。岸英の一行は楊に調理が終わればすぐ火を消すから心配するな、あっちへ行けと言ってきた。
  9. 午前10時、米空軍B-26インヴェーダー4機編隊が軍団本部の爆撃を開始した。岸英の友人Cheng Puだけが窓から飛び出たが、岸英は取り巻きとベッドやテーブルの下に隠れた。その建物から煙が出ているので屋内にとどまるのは賢明とはいいかねる行動だった。
  10. ナパーム弾をヴェトナム戦で使われて知ったという人が多いが、実は第二次大戦中から投下されており、朝鮮戦争で多用されていた。
  11. 一発が司令部を直撃し、炎が建物を包んだ。楊は大火を恐れず建物に入り、岸英の焼け焦げた遺体を見つける。識別できたのはソ連製腕時計が溶けて見つかったためだ。遺体は他の犠牲者とともに北朝鮮内の解放軍墓地に埋葬された。
  12. 彭徳懐は毛沢東の息子の死を二か月にわたり報告せず、1951年1月にやっと電報を一通送った。毛沢東は知らせを聞きその日は終日沈みこみ喫煙を続け、家系が「終わった」とため息をついたと述べる筋もある。
  13. 彭徳懐は毛沢東の面前で謝罪したが、毛の返答はかたくなで「正規兵が一名戦死したに過ぎない。息子だからと言って特別扱いはふさわしくない」と述べた。 のちに岸英の死に触れ「犠牲なくして勝利は得られない」と述べている。
B-26Bインヴェーダーがナパーム爆弾を北朝鮮に投下している。 1951年5月。.U.S. Air Force photo

諸説あふれる

  1. 楊将軍の回想録で卵入り炒飯の話があるが、Ding将軍への1985年インタビューやその他中国軍将校の回想では相違点がある。
  2. 南アフリカ空軍第18戦闘爆撃隊のP-51マスタングが岸英を殺したとの説がある。ただし、南アフリカ空軍は確かに朝鮮でナパーム弾を多用していたが、単発のP-51と大型で双発のB-26を見間違うのはあり得ない話だ。
  3. 卵入り炒飯の話は中国国内でよく知られているが、快く思わない向きもある。間一髪で助かったCheng Puは話は虚偽で戦場では卵など手に入らなかったと述べている。もう一人作家のCheng Xiは中国テレビで毛岸英はリンゴの皮を炒めていたと述べる。歴史家Yuan Jiangは揚げパンと粥を温めていたと主張する。
  4. 岸英の戦死はあまりにも尋常でなく、馬鹿げている余り、政府としても英雄的な物語にできなかったのか理由が見えてこないほどだ。岸英の生涯を描いた劇が北京で2013年に上演されたが演出家は自身の調査で岸英は司令部で文書を取りに行く途中で戦死したとした。別の脚色では岸英を毎日夜遅くまで仕事に取り組む人物としており、楊将軍が描いたあまやかされた王子で防衛体制を無視した人物とあまりにもかけ離れている。
  5. さらに噂が流れており、岸英の朝鮮での戦死は中国内部でお膳立てされたもので毛沢東四番目の妻江青が命じたとする説がある。たしかに岸英の未亡人劉松林も岸英の死で江青が「しごく満足した」と述べている。ただし江青は岸英の朝鮮志願軍入りに反対しており、岸英暗殺説の証拠はない。

実現しなかった道

  1. 岸英の死で毛の家系による中国支配の芽は摘まれた。兄弟の岸青は精神病のため対象外だった。岸青は結局結婚し2007年に死亡した。岸青の息子毛新宇Mao Xinyuは人民解放軍少将だが目立つことのない人物だ。
  2. 毛沢東の娘二名の婿も政治面で高位についていない。賀子珍とは娘2名と息子3名が別にいるが戦時中に死亡あるいは不明になっている。
  3. 毛沢東に岸英を後継者にする願望があれば成功していたのではないか。中国共産党は世襲を原則として認めていないが、毛沢東のカルト的人気は絶大であり、本人は1960年代に生まれた党改革を快く思っていなかった。そこで文化大革命を単独で始めたのだ。
  4. 革命指導者であり政治のまとめ役としての成功を背にしながら毛沢東は国の統治では悲惨な成果しかあげていない。五か年計画の旗の下で農業生産は大失敗に終わり、1950年代に数千万人が餓死した。
  5. 1960年代の文化大革命により大学教育は機能しなくなり、10年間ほどこのままで、共産党内の派閥間で血の闘争が生まれた。要職の解任、公の場での罵倒、政治家・専門職数万名の拷問、後者は国の運営方法を知っているだけに大きな損失になった。
  6. 毛沢東最後の妻江青が夫の権力の後押しを四人組とともにすすめ、政治ライバルのみならず個人的に気に入らない人物に暴力をふるった。毛沢東の政策の危険性をあえて口にした政治指導部は権力の座を奪われ、遠隔地の農場に送られたりした。
  7. その被害者のひとりが彭徳懐で長年の責め苦にも耐えられず後年になり名誉回復された。一部には毛沢東は岸英の戦死で高名の将軍を許せなかったのだという声があるが、廬山会議(1959年)で毛沢東を名指しで批判したことが遠因とされている。
紅衛兵に捕まった彭徳懐Peng Dehuai in the hands of Mao’s Red Guards. Photo via Wikimedia

  1. 北朝鮮は隣国の虐殺対象が政治エリート層に及んだことを注視していた。毛沢東支配下の中国は二十年間にわたりカリスマ指導者が独裁権力を行使した場合の専制国家の最悪面を示し、行政を司る官僚や政治エリートはいつも毛沢東の気まぐれや急進的な政策に振り回されていた。
  2. 毛岸英が生存していたらどんな指導者になっていたかは知りようがないし、どんな価値観を示していたかもわかりようがないが、父の政治思想を継承したら、事実上の毛王朝が生まれ中国はどうしようもない状態で血の内部抗争の陰謀がはびこり、ちょうど現在の北朝鮮の金一族支配下の様相を呈していたのではないか。現在の北朝鮮は孤立し圧政に国民が苦しんでいる。
  3. 毛沢東が1976年に死去し一か月がたち、クーデターで江青と四人組が放逐された。江青は服役後の1991年に自殺した。新しく権力の座についた指導層は毛沢東を「7割正しく3割誤っていた」とし、改革開放政策により中国を大国の座に導いた。
  4. 今日の中国も一党支配の専制国家であることに変わりないが共産党は内部で権力を争う集団に分断されている。しかし現在の最高指導者は中国共産党中央委員会総書記の肩書で全国人民代表会議で5年任期で選出される。複雑で不透明な仕組みにより特定の有力人物が主席の座に一生しがみつくのを防いでいる。
  5. 北朝鮮では今日でも毛岸英は英雄扱いだ。戦場で命を犠牲にしたとの賛辞もある一方で、権力承継が実現しなかったことに感謝する中国人もいる。■

2015年4月13日月曜日

中国提唱の一帯一路、AIIBの本質を見抜け



AIIBの話題ではバスに乗り遅れるな、あるいは様子を見る、という状況にどううまく反応するのかという小手先の議論が中心になっていますね。覇権をめぐる争いは軍事量だけの話ではなく、ソフトパワーも重要な要素で一路一帯=AIIB=中国の考える新世界秩序につながっていくのですが、ばらばらな議論をしていては中国の思いのつぼです。Holisticに物事を見られないのは学校、職場、社会で教えられてきた要素還元主義の「科学的思考」の弊害ですかね。せめてこのブログの読者には発想を広げて大きな視野で物事を考えていただきたいですね。ご関心があれば「ブレイクスルー思考」で検索してみてください。

China's 'One Belt, One Road' Strategy

By Wendell Minnick4:53 p.m. EDT April 11, 2015

Modern-day Silk Road Effort Could Challenge US Influence in Asia, Africa, Mideast


Austrian President Heinz Fischer Meets with Chinese President Xi Jinping(Photo: Parker Song-Pool/Getty Images)
TAIPEI — 中国の提唱する「一帯一路」政策が実現すれば中国は押しもされぬ地政学上の大国になるというのが専門家の多数意見だ。
  1. 構想ではアジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ新しい回廊を複数開発し、「新シルクロード経済通路」で中国とヨーロッパをむすぶべく、中央アジアの山岳地帯を直通する。「海のシルクロード」は中国の港湾部をアフリカ沿岸と結び、さらにスエズ運河経由で地中海に出る。習近平主席は3月28日海南島でのボアオアジアフォーラムBoao Forum でこの構想を公表。
  2. 「一帯一路構想は経済が出発点だが、政治的戦略的な意味もある」と上海交通大学Shanghai Jiao Tong Universityの国家戦略研究院副所長 庄建中Zhuang Jianzhongは解説する。「エネルギー安全保障では共同開発による互恵を目指す」
  3. 域内経済が向上すればテロリズムの根本原因が減るので米国も中央アジアや中東で同構想を安定化・平和の実現手段として歓迎すべきだというのが同副所長の主張だ。
  4. ただし専門家の多数意見は中国が新規開拓通商路の安全を維持できるのか疑問を呈している。それぞれ危険地帯を縫うように走るからで、アフリカ沿岸では海賊行為、中央アジアの「ワイルドウェスト」ではイスラム過激派が跋扈している。
  5. 各ルートには補給上の拠点が必要でその他通信インフラ、空港、鉄道、自動車道路、港湾の建設に加え軍部隊を配備しないと迅速な危機対応ができない。その場合は長距離戦略輸送機とともにマラッカ海峡・スエズ運河などに沿海戦闘艦船の配備が必要だろう。さらに病院船ほか各種装備で平時軍事作戦 Military Operations Other Than War (MOOTW)の実施を模索するだろう。
  6. 「一帯一路」はまだ構想段階と米海軍大学校で中国海事問題を専門とするジェイムズ・ホームズ James Holmesは言い、現時点では軍事上の意味はまだないが、「長期的には中国はアメリカをアジアから追い出し、わがほうの同盟国の切り離しを図るだろう」とする。
  7. 中国が目指すのはユーラシアに通商路複数を確保し、各国に対して中国式の制度がアメリカよりも上を行くと認識させることだが、そのためには実際に物資を輸送しなければならないとホームズは見る。「最終的に中国は仲間の各国へもっと多くを要求してくるはずで、米国が各国の港湾を利用するのを拒否するよう求めてくるでしょう。」
  8. ホームズは今回の構想は20世紀初頭のベルリン・バグダッド鉄道構想とは種類が異なると見ている。今回の構想は「経済開発に間接的な外交安産保障と軍事的意味を加えたもの」と見る。
  9. 新しいアメリカの安全保障を考えるセンターの主任顧問を務めるパトリック・クローニンPatrick Croninは「一帯一路で良くない結果が生まれる」と見るが、今のところはスローガンに過ぎず、現実になっていないと指摘。中国がソフトパワーで南シナ海、東シナ海での海洋領土問題を緩和させようとすると見る。
  10. クローニンはあわせて「米国もソフトパワーを発揮する絶好の機会なのに戦略的発想が欠けている」と批判する。
  11. 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行は2013年に誕生しており、「一路一帯」の実現のため各種施設の建設が目的だが、これも中国のソフトパワーの一種であり、米国のアジア再配備に対抗するものとクローニンは指摘した。
  12. 専門家多数の見解ではAIIBは国際通貨基金・世界銀行・アジア開発銀行の既存体制へのあからさまな挑戦であり、中国は逆に既存体制は米国の支配下にあると見ている。
  13. 「中国が米国と各国の争奪戦をする気なら、目に見える恩恵を無理のない形で提供しくはずだ。これが中国式の発想の根本だ。中国王朝は贈り物を提供し代わりに中国への政治的服従を求めるのが常だった」(ホームズ)
  14. 現時点の構想では海上関係はまだ完成度が低い。人民解放軍海軍(PLAN)はMOOTW活動を近年頻繁に行っており、海賊対策はアデン湾で2008年から実施している。今月はじめにPLANはイエメンで民間人救助を実施しているほか、2011年にもリビア内戦で民間人避難にあたっている。.
  15. 2014年に胡錦涛主席がPLANに新歴史的ミッションNew Historic Missions (NHM)を与えていると国防大学校で太平洋問題に詳しいクリストトファー・シャーマンChristopher Sharmanが解説する。その中に国家経済発展の防衛が入っていた。これは中国軍にとって目新しい任務ではないが、「2012年国防白書で前面に出され、戦略的海上交通路の防衛を特記した」とし、現在の状況もこの戦略方針の一環で、「遠隔地海上防衛」が中国の海洋戦略の一部であることがわかる。
  16. シャーマンによれば中国海軍の戦力再編のあらわれが056型江島Jiangaoコルベットであり、大型艦船が遠隔地に派遣されることが多くなる想定で第一列島線付近の任務を十分こなす性能を盛り込んである。さらに遠隔海域での作戦を想定して新艦隊編成の可能性もある。
  17. 「海のシルクロードでがそのままPLAN艦船の遠隔海域展開すにはならないと見ていますが、段階的な艦船派遣拡大はありうるでしょう」とシャーマンはフリゲート、駆逐艦、潜水艦の動向に注意をはらうよう指摘している。
  18. 戦略面では中国海軍は「基地」ではなく「寄港地」の交渉に入るはずだ。今後もスリランカや東アフリカへのアクセスを求めるほか、インドネシアも視野に入れているはずとシャーマンは指摘する。
  19. シャーマンは国防大学校で論文"China Moves Out: Stepping Stones Toward a New Maritime Strategy"(「新しい海洋戦略に乗り出した中国」)を著しており、中国の空母二番艦が構想実現の大きな要素と見る。MOOTWの各種任務の実現とともに遠隔地で中国の軍事力を誇示するはず、というのだ。■