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2025年4月29日火曜日

ドナルド・トランプの関税戦略(19fortyfive) ―税率や売上への変化に目を奪われていては大統領のめざす大きな戦略は理解不能なままです。その狙いはズバリあの国なのですが、日本では正面から取り上げないメディアが支配しています

 


President of the United States Donald Trump speaking with attendees at the 2019 Student Action Summit hosted by Turning Point USA at the Palm Beach County Convention Center in West Palm Beach, Florida. Image Credit: Creative Commons.

フロリダ州ウェストパームビーチのパームビーチ・カウンティ・コンベンションセンターで開催されたターニングポイントUSA主催の「2019 Student Action Summit」で出席者と話すドナルド・トランプ米大統領。

(政治や論調の大きな流れを取り上げる専用ブログ「こもん・せんす」と同時掲載の記事です)

済学者たちは、ドナルド・トランプ米大統領による関税の経済的メリットを議論できる。 しかし、もっと重要なのは、世界中を絨毯爆撃するような経済的電撃作戦が、戦略家としての大統領について何を物語っているかということかもしれない。

ドナルド・トランプと関税 指針となるアイデアの生命線

戦略とは、重要な目的を達成するための目標、方法、手段の組み合わせである。 戦略は、厳しい決断を下さなければならないとき、十分な資源がないとき、複数の差し迫った要求があるとき、そして繁栄し生き残るための行動が求められるときに必要とされる。 戦略とは、厳しい選択をし、それを貫くことを要求するものである。

戦略に従っていると主張する人のほとんどは、それ以外のことをしている。 トランプは戦略などまったく主張していないが、実際にはそうなのだ。

目指す目的とは

トランプが "アメリカ・ファースト"と言うとき、それは本心である。 しかし、彼は何を意味しているのか? 彼が公の場でこのフレーズを紹介した後、筆者は翌日、たまたま彼のアドバイザーたちと雑談をしていて、この言葉の歴史的起源が第二次世界大戦時のアメリカの孤立主義運動からきていることを思い出した。彼らは筆者を見て「そういう意味ではないよ」と笑った。彼らは正しかった。 大統領の意思決定における第一のプリズムは、文字通り、米国にとって何が最善の利益であるかということであり、その利益を重要なものから周辺的なものへとランク付けすることである。アメリカの利益に直結する政策をとるという一貫した要請は、トランプ大統領の1期目の就任当初から明確に存在していた。彼のリーダーシップのその側面は変わっていない。

アメリカの大統領はそろって、アメリカの安全、自由、繁栄を維持するために戦っていると言う。しかし、それは先見的な願望であって、たとえばドイツを最初に倒すとか、ソ連を封じ込めるといった具体的な目標ではない。トランプ大統領は、アメリカを台頭し、不安定化し、腐敗させる中国の脅威から守ることが、アメリカの戦略の主要な目標であることをはっきり表明している。

間違いなく、中国に対処する目的は進化している。 トランプが初めて大統領に就任したとき、彼は北京を基本的に経済問題として扱った。 貿易赤字を解消する貿易協定を打ち出せば、問題は解決した。 しかし、任期が終わるころには、政権は中国をより包括的な脅威と考えるようになり、すべてのアメリカ人の自由、繁栄、安全を確保するために対処しなければならない脅威であることが明らかになった。

手段

戦略の手段には、国力のすべての要素が含まれる。 戦略においては、機能するものだけが重要である。トランプは、自分が選んだ武器が軍事力と生の経済力であることを明確にした。トランプが対外援助を切り捨てたのは、その多くが金の無駄であり、多くの場合逆効果だったからというだけでなく、結局のところ対外援助で北京をゲーム盤から押し出すことはできないからだ。

方法

適切な手段を適切な時期に適切な場所で適切な方法で提供しなければ、いかなる戦略も機能しない。そこで戦略の要素としての関税が登場する。

トランプ大統領が選んだ戦略の手段には、いずれも大きな限界がある。

第一に、アメリカの「力による平和」計画は十分に強力ではない。 トランプ大統領は、ハードパワーに欠ける軍備で就任した。4年間、精力的な投資と戦略の再構築を行ったとしても、アメリカは重要な舞台(インド太平洋、中東、ヨーロッパ)のいずれにおいても決定的な力を発揮することはできないだろう。 米国は、友好国や同盟国が自衛のためにより多くの貢献をしてくれることを必要としている。

第2に、過剰な規制や無意味なグリーン・ディール、時代遅れのグローバル貿易システムに縛られていては、米国経済は急成長できない。 これらすべてを一掃しなければならない。

関税はどちらの目的にも役立つ。最近まで明確でなかったのは、全体的な戦略の中で関税政策がどのように位置づけられるかということである。答えは、関税政策は中国を圧倒するためのものだということだ。

世界的な電撃作戦は世界の注目を集めるためだった。90日間の猶予はテーブルをリセットするためだ。 その後、友好国や同盟国は新たな貿易提携を結ぶことになる。それはおそらく双方にとって有益なものになるか、あるいは相互関税に直面することになる。 このルールは中国以外のすべての国に適用される。 実際、政権高官は、すべては中国のためだと公言している。

もちろん、トランプは中国にオフランプも提示している。これはトランプと敵対する者(テロリストを除く)にとって、事実上当然のことである。しかし、北京との実質的で壮大な取引の可能性はゼロに近い。トランプは米国の重要な利益を損なうような取引はしないだろうし、北京は安全保障や経済問題について、米国が「ウィン・ウィン」として受け入れる譲歩案を提示する可能性は低い。 もしそうなれば、それは素晴らしいことだが、賢い戦略では、敵が自分の思い通りに動いてくれることに依存することはない。

戦略の尺度

しかし、大胆な戦略だけでは十分ではない。 歴史には、間違った厳しい選択をしたため失敗したリーダーが散見される。 優れた戦略とは、困難な選択をするだけでなく、適切であること(課題に適切に対処できる)、実現可能であること(実際に機能する可能性がある)、さらに受容可能であること(実行者にそれを貫く意志と資源がある)である。

今のところトランプは、適切、実現可能、許容可能のテストに合格している。

適切である: 中国経済は大きな構造的困難に直面している。北京は大規模に軍備を増強しているが、中国の軍隊は未経験であり、戦争に慣れていない。 一方、米軍は押しも押されもせぬ存在であり、同盟国が予想通り再軍備を進めれば、ロシアも中国もイランも簡単には勝てなくなる。 最後に、米国経済は依然として世界の羨望の的である。

実現可能: 75カ国がトランプと新たな貿易協定を結ぶために列をなしており、彼の計画がうまくいく可能性を示唆する証拠は少なからずある。 さらに、トランプ大統領の戦略へのアプローチの強さは直線的なものではない。 大統領は自分のイニシアチブに対する他者の反応を判断し、それに従って行動し、最終目標をしっかりと見据えているのだ。

2025年2月22日土曜日、メリーランド州オクソンヒルのゲイロード・ナショナル・リゾート&コンベンションセンターで開催された保守政治行動会議で演説するドナルド・トランプ大統領。 (ホワイトハウス公式写真:Molly Riley

容認できる: 中国がトランプの関税への反撃に加わるよう他国に打診したところ、一様に拒否された。 一方、トランプは国内では依然として人気がある。同様に重要なのは、彼が強力で首尾一貫したチームを編成したことだ。 関税政策も含め、大統領の最優先事項のすべてを支持するために内閣全体が動員されていることは非常に印象的だ。さらに、上下両院の指導部は、それぞれの会派が大統領のアジェンダを支持することを堅持している。

トランプ大統領の関税政策がもたらす経済効果について、トランプ大統領の批判が正しいかどうかは、経済学者が議論すればよい。 関税の戦略的使用については、これが良いアイデアか悪いアイデアかについて、拳を振り上げたり、テレビに向かって叫んだりしている。 しかし、トランプ大統領の関税措置が戦略の一部であることは間違いなく、大胆かつ大胆な行動でありながら、合理的かつ現実的な行動であることは間違いない。■

Yes, Donald Trump Has a Tariff Strategy

By

James Jay Carafano

https://www.19fortyfive.com/2025/04/yes-donald-trump-has-a-tariff-strategy/

著者について ジェームズ・ジェイ・カラファノ博士

ジェームズ・ジェイ・カラファノ博士は、国家安全保障と外交政策の第一人者。 ヘリテージ財団のキャサリン&シェルビー・カロム・デイヴィス国家安全保障・外交政策研究所の副所長を務めた後、米陸軍に25年間勤務。 熟達した歴史家、教師であると同時に、多作な作家、研究者でもある


2021年12月27日月曜日

米海兵隊・海軍の対中戦略は「スタンドイン」で、第一列島線からの撤退を拒否。中国をじわじわと苦しめる「潰瘍」戦術を展開する。ホームズ教授の解説。

  

イヴィッド・バーガー大将David Bergerが目指すのは習近平に潰瘍の苦しみを与えることだ。今月初めに米海兵隊総監のバーガーがサインしたのが「スタンドイン部隊構想」Concept for Stand-in Forcesで戦略指針として小規模海兵部隊をアジアの第一列島線沿いに展開し、米海軍と連携し、中国の人民解放軍海軍(PLAN)を苦しめようという構想で、東シナ海、台湾海峡、南シナ海での実施を目指す。

 

同構想は、米中戦略競争の武力論争における声明文としてとらえてみよう。戦略的競合では、各競争相手が軍事装備を開発し、誇示することで、有事に自国が勝者になると納得させようとするものである。

 

成功した側は敵対勢力を抑止または強要し、敵対勢力の同盟国協力国を説得して、敗北が明らかな大義を捨てさせ、同盟者協力国を説得し、勝利が明らかな大義の側に集結させる。

 

中国は米中間の競争で先行し、接近阻止領域拒否構想(A2/D2)を開発し、実現のため軍備を整備してきた。これが軍事論争におけるPLAの冒頭陳述だ。すなわち、PLAロケット部隊、航空部隊、艦艇は、前方展開する米軍を開戦時に打撃し、米本土から太平洋を西進する援軍の合流を阻止するはずだ。

 

その過程で、PLAは台湾を制圧するなど、他国が武力介入できないうちに目的を果たす時間を稼げる。そして、米軍は一時期、A2/ADの前提、有事に地域から撤退し、再び戦場に戻るという構想を受け入れていたようである。ペンタゴンで短命に終わった「エアシーバトル」構想も、この考え方に基づくものであったようだ。

 

ただし、第二次世界大戦の再演は中国に狙い通りの時間を与えることになる。日本軍による真珠湾攻撃から東京湾の戦艦ミズーリでの降伏式典まで4年近くが経過した。台湾、日本、その他中国のライバル国が、アメリカの援助なしに長く持ちこたえられる可能性はほとんどないといってよい。

 

戦力を温存すべく西太平洋から撤退すれば降伏に等しい。それゆえ、米海兵隊は近年、A2/ADに対抗し地域にとどまり、中国を阻止する方法を探求している。海兵隊・海軍は、艦隊と地上軍を小規模、安価で、より多くの部隊に分割し、新技術を装備し、威力を維持しようとしている。

 

海軍は、小型戦闘艦の大群を「分散」して戦わせ、また宇宙空間でも分散させアクセス拒否の矛先を回避しようとする。艦隊の戦闘力では、艦隊は戦闘で損失を出しても、勝利のために戦い続ける戦闘力を保持することができる。

 

結局、ここにポイントがある。

海兵隊も同じく部隊を分割して、ミサイルや高度なセンサーを装備した、軽量かつ高機動編成を実現したいとする。小型水陸両用艦は、必要に応じ部隊を島から島へ移動させる。偵察と反撃で艦隊を助けつつ、一撃を加える能力も備えている。

 

要するに、力づくで状態を変えようとする中国に対抗するため海軍部隊が近海で作戦を展開し、遠隔地に撤退することはない。近海作戦部隊と関連する一連の作戦構想により海軍海兵隊は、PLAのA2/ADへ反撃を加える。

 

この手法にはナポレオン戦争時の英陸軍と英海軍に先例がある。1807年、アーサー・ウェルズリー卿(後のウェリントン卿)は、小部隊軍隊を率いポルトガルに上陸した。その後7年にわたり、ウェリントン軍は海から支援を受けながら、ポルトガルやスペインのパルチザンとともに戦った。

 

同盟国側の目的はフランスを苦しめることにあったが、遠征に明確な目的はなかった。ロンドン当局は、ウェリントンに一定の資源を与え、騒乱の種をまくため送り出したのである。ナポレオンは、フランスの東側で大規模戦闘が進行中で、西側で戦争する気はさらさらなかったが、イベリア半島での脅威を容認せざるを得なかった。

 

そこにポイントがあった。

イベリア半島の作戦は、ナポレオンの主要な関心領域から兵力を吸い上げると同時に、重要事項からナポレオンの注意をそらす効果を生んだ。海事史家のジュリアン・コーベットJulian Corbettは、この戦争形態を「偶発性に限定された戦争」、つまり、特定の目的ではなく、指揮官に割り当てられた手段で支配される戦闘だとした。戦略家は目的、方法、手段の観点で通常は思考する。求められる目標により、資源の配分と使用方法が決まる。

 

実際に偶発戦争は、通常、最重要要素となる目的を戦略的定式から排除し、方法と手段を当事者にまかかせることになる。作戦や戦術で敵を苦しめればよいのである。

 

偶発戦争は、悩ましい戦略である。ナポレオンは、この解釈でコルベットを凌駕していた。小皇帝は半島戦争を 「スペインの潰瘍 」と呼んだ。潰瘍は致命的ではないが、常に悩実のタネとなる。気が散り、衰弱していく。コルベットにとって潰瘍戦略とは、「敵が我々の介入を許さず立案した戦争計画に侵入し、敵がその開始時の動きによって取り返しのつかないことになる」、つまり「敵から勝利の果実を奪うための介入」を意味する。

 

こうした戦略は、より大きな闘争の中で敵にちょっかいを出し、投入資源以上の戦果を生み、敵指導部は高い代償で対応せざるを得なくなる。この戦略は、海から遠い戦域で最も効果的に機能する。陸海空統合の「処分部隊」を展開するのだ。本隊から切り離されていても敵に損害を与えるに十分な戦力を有する水陸両用部隊を指す。

 

ナポレオンはスペイン潰瘍になった。今度は習近平が太平洋潰瘍になる番だ。■

 

The 'Ulcer' Strategy: How the US Military Could Wage War on China - 19FortyFive

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

ByJames Holmes

 

Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”

In this article:A2/AD, China, Concept for Stand-in Forces, featured, Ulcer Strategy, US Marines, US Navy

 


2021年10月16日土曜日

防衛予算GDP1%キャップを廃止し日本の防衛体制はこうなる。ホームズ教授の提示する新しい日本の防衛の姿。NATO加盟国にはGDP2%の支出が求められているが....

 

 

 

イターがティム・ケリーおよびジュミン・パークの解説を記事にしており、それによると日本で政権を握る自民党が防衛費を現行のGDP1%相当から2%に増額する案を練っているとある。実現すれば、1,000億ドル相当になる。第二次大戦後の日本は非公式に防衛費上限を設けることで日本が再び軍事大国になるとの周辺国の懸念をおさえてきた。

 

戦後直後には上限に意味があった。まだ戦時中の記憶が生々しかったからだ。だが、今日の日本は実績で悪名を償った。さらに中国の台頭で領土保全や天然資源の帰属が危うくなっており、中国は既存体制の変更を狙いながら、日本の軍事力整備をけん制している。

 

そこで自民党内に大胆な動きが出てきたのは、従来の平和主義へ大きな抵抗となる。日本は海洋大国となる素質があり、自民党は公約としてこの実現を主張している。また自衛隊(JSDF)強化への世論支持を図っている。

 

米国との長きにわたる安全保障面の同盟関係のバランスを再調整すれば同盟各国や域内に健全な結果を生む。日本は中国と力のバランスも図ろうとするだろう。

 

防衛費1,000億ドルの日本軍事力はどんな姿になるか

 

自民党構想が現実となれば日本は巨額予算をどう使うだろうか。まず、既存部隊向けに調達装備品を追加するはずで、ステルス戦闘機や水上艦艇が対象だ。筆者としては日本に戦略を意識した動きを期待したい。政界トップはまず域内や世界で果たすべき日本の役割を考え、その実現につながる戦力整備を目指すべきだ。

 

その結果生まれる戦力は現行の自衛隊を拡大した姿とは大きく異なるはずだ。まず、日本や同盟国の戦略に呼応した形で領土、水路、空域へのアクセスを守る、あるいは否定する戦力となる。新編成の自衛隊はこの任務をどう実現するだろうか。以下の原則を守る必要がある。

 

1,000億ドル予算の自衛隊に必要な原則4点とは

 

まず、日本部隊は機動性、適応力を発揮し、島しょ間を移動したり、尖閣諸島・琉球諸島のような地点を防備する能力が求められる。自衛隊の人員・装備品は問題地点へ急派され、中国の攻撃に耐えこれを死守する。軽武装部隊輸送手段が必要だ。戦術防衛策が最強の戦闘形態になる。

 

日本の防衛方針では島しょ部を侵攻勢力に占拠されたのちに奪回するシナリオが主流だ。敗北主義ではいけない。日本は地理的優位性を生かし、領土を保持する部隊を配備すべきだ。

 

二番目に、自衛隊増強は米海軍が「分散型」部隊と呼ぶ流れに呼応すべきだ。部隊を広範な地域に分散配備することを意味する。分散作戦の裏にある考えは単刀直入だ。中国の航空兵力やミサイル部隊は本国から第一列島線まで十分に到達できる。人民解放軍は緒戦で戦闘効果を上げるだろう。これに対し同盟国側には装備品の数が足りず、しかも高価な装備となっている。ひとつでも喪失すれば、総合戦力が失われる。

 

だが、そもそも大部隊を細かく小規模に再編成すれば、装備品の集中度を減らせる。艦艇一隻や航空機一機を喪失しても全体戦力に影響は少ない。これが現在の作戦戦略構想だ。日本も小さく、安く、さらに適応力豊かに考えていく必要がある。

 

三番目に、日本の戦略立案部門は日本周辺の水域・空域のアクセス制限を基本に考えるべきだ。自衛隊はPLAの封じ込めを実施する一助となり、中国の侵攻部隊を第一列島線に止めることで、同盟国側の作戦実施を必要以上に複雑にするのを避けられる。そうなると、第一列島線で敵の航行・飛行への攻撃手段がカギを握る。島しょ上で分散する部隊の防衛力が優れれば良い結果を生む。有人無人の潜水艦、航空機、哨戒艇がその他合同部隊と連携し効果を発揮し、島しょ部に残る海兵隊部隊がPLAにミサイルを発射する。各部隊はこうして西太平洋や日本本土へのアクセスを阻止できる。再び、小さく考えるべきだ。

 

そして四番目に、予算が潤沢となっても自衛隊には回復力が必要だ。分散作戦がここで威力を発揮する。また基地のインフラも列島線上で大きく変化する。PLAロケット軍や空軍部隊が横須賀、佐世保、嘉手納といった主要基地を攻撃するのが開戦直後の状況となる。同盟軍は基地の防御力を引き上げつつ、機能を分散させる対策も迫られる。基地機能の一部を地下化するとか、あるいは対空対ミサイル防衛体制を強化する必要もある。第二陣となる基地群の整備も必要だ。被害が深刻な場合に前線基地の装備、機能を一時的に展開する先とする。

 

そうなると日本の防衛費増大は必ずしも派手さをかもしださなくてもよいことになる。航空基地や建屋のひとつひとつもイージス駆逐艦果ては空母と同様に重要となる。日本政府は国力の象徴を目立たせるだけの装備品調達の道は選ぶべきではない。

 

第一列島線へのアクセスを制することで日本の国土は防衛でき、中国に抑止効果をあたえつつ、必要なら中国を敗退させる。日本政府はノーススター戦略、つまり目指すべき姿を明確にしこの実現を目指しつつ、適正な予算手当と調達を進めるべきだ。

 

急ぐべきだ。■

 

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

What Should A $100 Billion Japanese Military Look Like?

ByJames Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfighting, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.