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2021年4月29日木曜日

台湾が潜水艦国内建造に乗り出し、戦術・戦略地図はこう変わる。日米など同盟国も台湾の自助努力を見て、台湾支援へ動きやすくなる。そうなると中国には不利な状況が増えるばかり。

 

 

湾の潜水艦建造は大歓迎だ。

 

米国政府が台湾向け潜水艦の艤装兵装品輸出に課していた制限を解除したため建造が可能となった。台湾国内の建造所で8隻建造し、海外提携先がセンサー、戦闘システム、兵装を技術支援とともに提供することになりそうだ。末広がりで縁起の良い八隻がそろえば、現有の老朽艦2隻、旧式化が進む2隻にかわり、政治戦略的な効果を台湾にもたらす。

 

台湾は自国の運命を自らの手で開くことが可能となる。なんといっても世界では自助努力をする側が救われる構図となっている。賢明な社会は自らの手で安全と権益を守る傾向があり、頼りにならない海外同盟国に任せることはない。

 

自助努力が国際関係の基礎となるかは人間の特性を見ればわかる。ジョージ・S・パットン将軍は人間観察に優れ、人は勝者には惜しみない賛辞を送り、敗者には軽蔑を送るものと述べた。実際その通りだ。勝ち目のない側にわざわざ寄り添うものがいるだろうか。

 

ウィンストン・チャーチルの下で英国は1940年から1941年にかけ枢軸側に単独立ち向かう状態となったが、勇気を示した。それだけの価値があった。台湾の潜水艦部隊は英国の戦いにおける英国空軍に匹敵する。台湾海軍(中華民国海軍ROCN)は本国をめざす敵部隊の接近を拒みつつ、同盟諸国による台湾支援に勢いをつけるだろう。

 

軍事の賢人カール・フォン・クラウゼビッツは優先事項が競合すれば同盟軍は集中できなくなると述べている。相互に支援しあっていても対象国の主張を自国のものととらえなければ効果が生まれない。中途半端な対応のまま外交、経済、軍事各面で資源を使ってしまう。

 

事態が悪化すると、体力のない同盟国が姿を消すことになるとクラウゼビッツは警告していた。台湾住民はこの現象を骨身にしみて知っているはずだ。外諸国には台湾防衛にかけつけないよう中国本土が外交、経済、軍事で露骨な脅かしで求めているからだ。

 

このため台湾は台湾海峡をはさむ強大な兄弟国に対する防衛体制を自らの手で強化する必要がある。海軍作戦に関しては、「制海」から「海上拒否」戦略に移行することである。制海とは強者の戦略だ。制海任務にあたる海軍部隊は対抗勢力を重要水域から排除し、兵力展開の航路を制御するべく水域を確保する。

 

かつては台湾海軍も制海任務を目指し、実際にその実現の好機があった。装備人員で優秀性があったため、規模こそ大きいが遅れた人民解放軍海軍に対抗する立場にあった。だがそうした日々は回想のかなたとなり、中国はハイテク軍艦軍用機を大量生産能力を手にし、沿岸には強力な支援火力を整備している。

 

端的に言えば、台湾海軍は近隣水域さえも統制できず、海洋支配の再確立の可能性は皆無に近い。だからといって台湾が敗北にむかっているわけではない。自国防衛のためROCNは台湾周辺のPLANによる支配を打破しようとするはずだ。揚陸部隊を撃破し、封鎖をうちやぶり、海上輸送を寸断すれば、同盟国なかんずく米国が救援にかけつける時間をかせぐことができ、中国による侵攻を食い止めることができる。

 

海上拒否は昔からある戦略で弱者のものだ。巧妙に運用すれば敵部隊には暗い一日になる。歴史家セオドア・ロップは世紀末のフランス海軍を観察し、弱小ダビデが巨人ゴライアス(英海軍)に勝つためには巨人の沿海地区で移動の自由を奪えばよいと考えた。

 

ロップの海上拒否構想には今も魅了するものがあり、ディーゼル潜水艦に「大気非依存型推進」が搭載され、探知困難なまま海中待機できるようになった。高速警戒艇は水上交通にまぎれ、混雑する沿海部を気づかれずに移動できる。

 

洋上あるいは水中から魚雷攻撃や対艦ミサイルを発射し、侵攻部隊の接近に対抗できる。また無人機、無人艇、無人潜水艇を併用できる。混みあった台湾海峡でこうした装備から攻撃を受ければPLANは反撃が難しく、対応に使える時間も限られる。

 

近代海戦では一隻の小舟艇でさえ敵の戦略に打撃を与えられる。英海軍とアルゼンチン海軍で1982年のフォークランド戦争でこれを学んだ。英海軍の原子力攻撃型潜水艦がアルゼンチン海軍の誇り巡洋艦ヘネラル・ベルグラーノを撃沈した。だが英海軍任務部隊は遊弋するアルゼンチン潜水艦一隻のため対潜装備をほぼ全数投入したものの排除できなかった。台湾海軍の技量はアルゼンチン海軍以上とみる向きがあろう。ROCNが米国や西側装備品、戦術、知見を活用できるためだ。ROCNが水中戦を有利に展開すればPLANの作戦展開を妨害でき、台湾は有利になる。すべて理想通りになれば台湾近海への侵入そのものを防げるはずだ。

 

そこで潜水艦の連続建造が台湾の目的にかなうことになる。8隻を新規建造し、旧型艦を退役させる。訓練、維持、整備を順当に行えば常時三隻ないし四隻が出撃可能になる。各艦に戦略的価値が生まれる。海軍は哨戒活動を常時展開し、乗員の戦術対応能力を磨きながら、潜水艦部隊が停泊中に奇襲攻撃で壊滅する事態を回避できる。

 

台湾海軍にこれ以外にも海上拒否の手段があるのだろうか。海上拒否は防御的に見えるが、実は攻撃戦術も含まれる。攻撃が戦略的防御の中心であることは海洋戦略の大家も認めるところだ。ROCN潜水艦部隊は、高雄などの沖合で哨戒任務にあたるが、こうした地点は揚陸強襲作戦の対象になりかねない。あえて攻撃されるのを待ってから反撃を強烈に加える作戦だ。

 

潜水艦艦長に攻撃精神が旺盛なら中国本土の港湾地点沖合まで移動して海中に潜むことも可能だろう。あるいは台湾海峡周辺に待機する。ルソン海峡がPLAN潜水艦の西太平洋、南シナ海への重要な移動経路で、ここをふさげば大きな効果が生まれる。台湾北部の宮古海峡も潜水艦の狩場になりそうだ。

 

中国が第一列島線から自由に動けなくなれば台湾の東海岸が安全になる。そうなれば台湾軍は中央部防衛に集中し、米軍も同盟諸国と第一列島線に展開し、PLAの海上作戦に大きな障害が生じる。

 

政治面の効果はこうなる。ROCNにより台湾の戦略価値が高まり、全体としての同盟国側戦略にも弾みがつく。同時に米海軍、海上自衛隊といった同盟国部隊に台湾防衛に手を貸す大義名分が生まれる。同盟国側は共通の大義名分のもと団結できる。台湾が自助努力で存続をかけ努力する姿が他国からの支援につながる。好循環が生まれる。

 

就役艦が増えれば、目標実現がそれだけ早くなり、よいことづくめだ。他方で各国潜水艦部隊間で戦術、訓練、水域管理を共有する議論を静かに始めるのは早ければ早いほど良い。

 

台湾の水中戦力増強問題はつまるところ新型潜水艦調達になる。多国間部隊で水中戦技術を磨こう。ともに前進したいものである。■

 

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The Need for Taiwan's Forthcoming Submarine Program Is More Than Pressing

April 27, 2021  Topic: Submarines  Region: Asia Pacific  Blog Brand: The Reboot  Tags: TaiwanMilitaryTechnologyWorldSubmarinesChina

by James Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, coauthor of Red Star over the Pacific, and author of A Brief Guide to Maritime Strategy. The views voiced here are his alone.

Image: Reuters. 


2020年11月29日日曜日

台湾がついに潜水艦国産建造に乗り出した。8隻建造し、2025年に一番艦を就役させる。日本は傍観しているだけでいいのでしょうか。

 

KYODO VIA AP

 

ポイント 台湾は新型潜水艦を8隻国産建造し、老朽化著しい潜水艦部隊を一新し、中国の脅威増大への対応を目指す。

湾が初の国産潜水艦建造に一歩近づいた。専用建造所が完成し、中華民国海軍の近代化が実現する。蔡英文総統が開所式に出席し「台湾の主権を守り通す強い意志を世界に示す」と宣言した。

新設の潜水艦建造を専門とする施設は台湾南部の高雄に2020年11月24日完工し、新型ディーゼル電気推進方式潜水艦8隻の建造を開始する。設計は国家中山科学研究院が米国の支援のもと完成させた。初号艦は2025年に就役予定で、台湾国際造船が建造を担当する。

 

蔡英文総統は「潜水艦は台湾の目指す非対称海軍戦力整備で重要な装備で、台湾に接近を試みる敵に対する抑止効果を実現する」と祝辞で述べた。北京に対し自国防衛の強い意志を示し、潜水艦建造事業は台湾防衛の自己遂行能力を引き上げることにもつながる。

 

 

MINISTRY OF NATIONAL DEFENSE, ROC

蔡英文総統が高雄の新設潜水艦建造施設の完成式に出席した。

 

 

人民解放軍海軍(PLAN)が潜水艦多数を運用中でしかも近代化と性能向上が著しく、台湾海峡で活動も増えている中で、中華民国海軍(ROCN)は一方的に不利な状況だ。台湾の潜水艦部隊は海龍 Hai Lung級2隻、海獅Hai Shih 級2隻のみで高雄の左營區 Tsoying 基地に配備されている。

 

このうち海獅級はオランダで1980年代建造された艦で、オランダ海軍ズヴァールトフィス級を原型とし、最高速力は20ノット魚雷28本搭載といわれる。海獅級の性能改修が2016年に始まり、15年程度の供用期間延長をめざす。なおオランダ海軍はズヴァールトフィス級を1990年代に退役させている。

 

 

AP/CHIANG YING-YING

台湾海軍の海龍級潜水艦海虎はROCNに1988年就役した。

 

海龍級より古いのが海獅級で海獅は米海軍テンチ級、海豹はバラオ級と第二次大戦時の艦で台湾に余剰艦として1973年-74年に譲渡された。海獅は潜航速度が15ノットしか出せず、現代戦に適合しているとはいいがたく、訓練用途で使われているようだ。両艦ともに潜航深度に328フィート制限がついており、圧力艦体にゆがみがつき金属疲労もあるといわれる。ここ数年、両艦を退役させる話が出ているが博物館ものの両艦を見れば当然だろう。


 

CPJ2028/WIKIMEDIA COMMONS

海獅は元USSカットラスでテンチ級潜水艦として1944年進水だが、今もROCNは供用中。

 

 

新造船施設の開所式で台湾国際造船会長Cheng Wen Lungは台湾の国産潜水艦建造は多大な困難を克服してきたと語った。「開発を進めさせたくない外部勢力があった」とし、中国の反対を恐れ、海外国の潜水艦技術移転が進まなかったことを指している。中国は今も台湾を反乱地方と見ており、再統一は必須とする。

 

1990年代のクリントン政権は潜水艦売却を拒んだ。1979年の台湾関係法の想定外としたのだ。台湾はアルゼンチン、ノルウェーいずれかからの原型をもとに建造を目指したが、いずれも失敗した。

 

2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領が台湾向け装備品の大規模売却を認め、ディーゼル電気推進式潜水艦8隻もその一部としたが、その後中国の顔色を見て方針を転換した。だが米海軍の通常型推進潜水艦は終了して相当の年数が経っており、8隻は米国では設計できず、ライセンス生産するしかなかった。ドイツ、オランダの原設計が有望と見られていた。

 

だが両国は台湾への潜水艦技術提供を拒んだ。オランダ政府は武器輸出は台湾、中国本土のいずれにも行わないと述べ、ドイツは「一つの中国」方針を堅持するというものだった。

 

米国内でディーゼル電気推進方式潜水艦建造ができないため、台湾には余剰艦を供与する方針に変わった。2004年に米国は新型ディーゼル電気推進方式潜水艦をミシシッピ州のインガルス造船所で行う案を提示し、海外設計で建造する可能性が多大だったが、これも実現しなかった。ROCNは手持ちの4隻を稼働させるしか手段がなかった。

 

一方で新型潜水艦建造は台湾で政治課題となり、国産建造か完成艦輸入かで意見がわかれた。2005年に工業開発局長Chen Chao Yiは「潜水艦建造は台湾で可能」と述べたものの「潜水艦青写真と兵装システム」で米国の協力が必要と認めていた。

 

ついに台湾は国産潜水艦建造事業の開始を2014年に決定し、2017年に蔡英文総統が潜水艦建造の覚書に署名した。

 

「重層抑止力構想にもとづき、水中戦力は台湾防衛で最大の効果を発揮する」とその際に同総統は「だれでも理解できるがこれまで実現できなかった」と述べた。

 

台湾構想の実現で突破口となったのが2018年の米国務省による方針決定で関連技術の台湾向けライセンスが認められたことで、戦闘統制システムやその他技術提供に道が開いたが、米企業がどこまで関与できるのか詳細は非公表だ。

 

台湾の国産建造ではオランダ建造の海龍級建造で得た知見も参考となり、ROCNはこれまで詳細に研究しているが、その他国のノウハウも必要になるはずだ。すでに耐圧船殻製造で台湾が支援を求めているとの記事が出ている。

 

新型国産潜水艦にはオランダ製の海龍級の影響が現れているが、新型艦の詳細はほぼ不明のままで大気非依存型推進(AIP)が搭載されるかは不明だ。

 

新型潜水艦8隻と海龍級改修艦があってもROCNの潜水艦部隊はPLAN潜水艦部隊に大きく劣勢となる。だが、通常型でも新規建造艦は多国間演習で大きな効果を実証しており、乗員の練度が高ければ予想外の効果を発揮し台湾海峡に防衛緩衝地帯が生まれる。

 

潜水艦戦力の増強で台湾はPLAN艦船・揚陸部隊への防衛力を適正化し、ハープーン対艦ミサイル、ステルス機雷敷設双胴艦と組み合わせた防衛力を発揮する日がやってくる。

 

潜水艦部隊の存在そのものがPLANへの抑止力になる。PLANは対潜能力で大きく後れを取っている。世界の潜水艦部隊の中でここまで近代化が切迫したニーズになっているのは台湾以外になく、潜水艦建造施設を完成させたことはROCNが長年切望していた新造潜水艦の実現への道で大きな一歩となる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Taiwan Is Finally Set To Build The New Diesel-Electric Submarines It Desperately Needs

BY THOMAS NEWDICKNOVEMBER 25, 2020


2016年3月31日木曜日

台湾海軍の再整備計画>国産化で台湾防衛に特化した革新的な新型艦が登場する期待



Taiwan Navy Emphasizing Domestic Shipbuilding Program in Ongoing Maritime Restructure

By: Michal Thim and Liao Yen-Fan
March 25, 2016 11:30 AM

Corvette Tuo Jiang” sets sail during the handover ceremony in 2014.
海防艦沱江 Tuo Jiang” 、2014年の引き渡し時.

台湾海軍(ROCN)の大規模戦力再整備案は2014年に発表され、1万トン駆逐艦4隻、フリゲート艦10から15隻の国産建造をうたっていた。
  1. 20年にわたる戦力近代化でディーゼル電気推進式攻撃潜水艦(排水量1,200トンから3,000トン)を最大8隻建造する。これまでの外国の旧装備中心の調達を国産建造に切り替えるのは台湾事情に合わせた国防政策の一環だ。台湾は中国の装備近代化の脅威を直接受けているが、海軍関係の軍事力格差は顕著に広がっている。
  2. ただし人民解放軍海軍だけが台湾の国産化政策の背景理由ではない。現有艦船の構成をみるとその場しのぎの調達で、必ずしもROCNの希望どおりになっておらず、各種艦や装備が入り混じり、協調が難しいことがわかる。そこで大幅な手直しに入るわけだが、その中心に孫連Hsun Lienプロジェクトがあり、目標は統合戦闘システムを開発し全艦船で運用することだ。なお、新大統領蔡英文の選挙戦で経済成長のため国内造船業の再活性化策が掲げられており、国産国防装備は重要な意味を持っている。
  3. 台湾のStorm Magazine2月号によれば、孫連プロジェクト第二段階で2,500トン艦三隻を発注するという。背景には第一段階の500トン沱江Tuo Jiang級双胴船艦が成功したことがある。
  4. 新造艦はSky Bow/Tien Kung 3 (TK-3)、Sky Sword/Tien Chien 2N (TC-2N)を垂直発射システム(VLS)に搭載し、新型Sea Oryx近接防空システムを採用する。これはRIM-116ローリングエアフレイム・ミサイルと形状が類似しており、開発はまだ終わっていない。各装備はいずれも國家中山科學研究院 (NCSIST)が生産にあたる。報道では対空装備を重視しており、シンガポールのAlert 5は同艦を「防空双胴艦」と位置付けている。
  5. ROCNの近代化事業の中核は分散コンピュータ処理を基本とする戦闘システムの開発にある。これはNCSISTとハネウェル共同開発のH930モジュラー戦闘システムが基本になっていると思われる。ただし新型システムは国産の3Dフェーズアレイレーダー、VLS(Mk. 41 VLSの搭載が難しいため当面はMk. 48 VLSを搭載する)、電子戦装備、ソナーさらに長距離対応可能な高速発射5インチ砲で構成するだろう。
  6. 孫連プロジェクトはイージスシステムと同等の能力をめざすROCNの目標の実現方法だ。その前には既存のオリバー・H・ペリー級フリゲート艦ROCS田単Tian Dan を元に5,000トンのイージス艦にしようとしたが費用面で中止となっている。孫連プロジェクトでは既存艦含めて艦船すべてを対象にする。
  7. 新型艦は沱江級に外観が類似しつつ、防空能力を重視すると伝えられ、ミサイル艇集団による強襲作戦の拠点防衛に投じるのではないか。沱江級の防御も念頭にあるだろう。沱江級は空中発射対艦ミサイルには極めて脆弱である。ただし、新型艦がこのミッションに投じられる可能性は低いかもしれない。沱江級の防空能力不足を指摘する向きは多いが、その批判は的外れだ。沱江級の最大の防御性能は低レーダー断面積(RCS)であり、台湾沿岸部付近での作戦時にはこの特徴が最大限に生かせる。大型艦を投入すれば注意を引くだけでなく、防空力増強という本来の目的が台無しになってしまうだろう。
  8. むしろ新型艦に期待されるのはROCN水上行動群(SAG)の防空能力強化だろう。SAGはキッド級駆逐艦一隻とラファイエット級、オリバー・H・ペリー級フリゲート艦の混合構成だ。この中で老朽化しつつあるキッド級駆逐艦に防空任務とC4ISR機能が過大に期待されており、実際の戦闘では簡単に機能を喪失してしまうかもしれない。ここにもう一艦加えればキッドの負担を緩和でき意味がある投入になる。
  9. 別の可能性もある。キッド級の後継として大型艦を建造する意向が示されているが、ROCNは小型艦で強力な火力を実現することもできる。孫連プロジェクトでVLSを搭載すればキッド級以上の威力が発揮できるが、キッド級と同等のC4ISR能力が実現するかは不明だ。
  10. フリゲート艦は10ないし15隻を国内建造の予定で、孫連プロジェクトの戦闘システムの実証意外に沱江級で採用した波浪貫通型双胴構造を大型艦に応用するのが上位の意図だろう。

Former U.S. Navy Kidd-class destroyers ROCS Kee Lung (1801) and ROCS Su Ao (1802).
旧米海軍のキッド級駆逐艦、基隆(DDG-1801)と蘇澳(DDG-1802)

  1. 新造駆逐艦4隻を調達するROCN方針へは米海軍大学校のジェイムズ・R・ホームズが批判を寄せている。ホームズの言い分では再整備構想では制海任務を主眼に置いた大型艦で構成するSAGから高速ステルスミサイル艦を多数運用する編成に移行すべきだとする。後者では協同集団運用が中心となる。台湾海軍のつ使える資源に限りがあることで敵の侵攻を食い止める任務中心の構成にすることが理に適う点でホームズの批判は妥当と言える。
  2. 20年かけて海軍力を再整備する案で台湾は制海任務と抑止任務を共に重視するようだ。このうち抑止任務用には光華級Kuang Hua VI高速攻撃艇と沱江級ミサイル海防艦が相当する。ともに台湾海峡での作戦を念頭に置き、台湾沿岸部の複雑な地形を生かし、敵に見つかる前にミサイル発射を行う。もう一方でSAGも温存され、台湾海軍力の大きな柱とする。
  3. だがROCNが考える20年にわたる近代化案が全部承認されているか不明だ。ただし台湾が大規模建艦に踏み切るかは別にしても、孫連プロジェクトがROCN戦闘艦の将来像を示しているのは確かだ。同プロジェクトとは別にしてもWPC形状のフリゲートにVLSを搭載した新型艦は異論を生まないだろう。
  4. 確かなのは台湾が国産建艦能力引き上げに躍起となっていることで、今後も革新的な各種艦設計が出現してくるだろう。■