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2019年3月28日木曜日

中国・ロシアに勝利できる米空軍の機材構成はどうあるべきか----シンクタンクCSBAの提言


シンクタンクCSBAの報告書の紹介です。予算法案を通過させながら外部シンクタンクに精査を依頼し提言に耳を傾けるのが米国式なら、国会で好き放題に空理空論を提示シアとは知らん顔というのが日本です。日本のシンクタンクも安全保障問題をしっかり提言出来る実力があると思うのですが、耳を傾ける度量が官庁にあるかが問題ですね。


What aircraft does the US Air Force need to beat China and Russia? This new study has an answer. 
中露に勝利すべく米空軍で必要な機体を新規報告書が提言


By: Valerie Insinna    
B-21は2020年代中頃までに実用化されるが極秘機材の詳細は不明のままだ(Design by Devan Feeny/Staff; Image by U.S. Air Force and Getty Images)


来の中国やロシアの脅威への対抗上386個飛行隊が必要と米空軍が昨年9月発表した。だが議会の求めで検討した結果ではこの規模では不十分と推定している。
シンクタンク戦略予算評価センター(CSBA)の検討結果をこのたびDefense Newsは独占的に入手し、新規技術としてステルス戦闘無人機、新型無人偵察機を敵領空に侵入可能な機体として、さらに全く新型の給油機の開発開始を空軍に提言していることを見つけた。
今回の検討結果は2018年国防方針法案我に求めていた調査機関MITRE Corp、CSBAとともに空軍にようる将来の戦力構造提言の一環だ。
CSBAは給油機、爆撃機、戦闘機、戦闘偵察無人機、指揮統制・情報収集監視偵察機が致命的な機材不足だとし、特に爆撃機、給油機、無人機で機数増加が必要と見ている。
爆撃機についてCSBAは現有の実戦飛行隊9個を24個体制に将来増やすべきとしている。(CSBA提言では特定年を上げていない。将来の空軍部隊の姿の仮定に空軍で想定しない機体が含まれるため)
戦闘機部隊は現行55隊を65隊に増やし、給油機は40隊を58隊にすべきとする。攻撃・偵察無人機はMQ-9リーパー中心の25隊を43に急増すべきとしている。
C2/ISR機は現在E-8JSTARS、RC-135各型、RQ-4グローバルホークの40飛行隊があるが33隊にできるという。ただしCSBAは老朽化している戦闘統制機材を各種システムで構成する高性能戦闘統制装備に統合し、対象範囲とリンクを拡大すべきとしている。
CSBAは議会審査前のためこれ以上詳細に触れられないとしている。
報告書は国防総省ウェブサイトで閲覧可能だったがその後削除されている。


米空軍が必要と(考える)内容とは


CSBA評価は空軍独自の分析と対照的だ。空軍は現状の312飛行隊の386への増加を中心に据えている。空軍による「必要な空軍像」はCSBA研究内容と異なり宇宙、サイバー、ミサイル、空輸、戦闘救難等のCSBAが触れていない機材を盛り込んだ。
空軍は爆撃機14個飛行隊、戦闘機62飛行隊、給油機54個飛行隊、無人攻撃偵察27飛行隊、C2/ISRで62飛行隊が2030年までに必要と独自検討ではじき出した。ただし空軍はこれを実現した場合の調達業務への影響や現行事業を継続して目標達成できるかは明示していない。
もう一つの相違点は空軍、CSBAが別々の脅威をもとに提言していることだ。空軍参謀総長デイヴ・ゴールドフェイン大将は386隊体制は「互角戦力を有する大国を打倒する一方でやや戦力の劣る脅威を抑止する」のに必要と述べた。


This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.来の戦力構造での提言内容。This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.

対照的にCSBAは現実的かつ高い目標から空軍像を検討した。まず空軍は互角に近い相手との大規模戦闘に直面するはずとし、その例に「南シナ海での中国軍との大規模戦」を上げた。またその10ないし20日後に、別の互角に近い相手として「ロシアによるバルト海諸国侵攻」のような動きに対応を迫られると想定した。
将来のロシアや中国は手強い相手になり、現在でも対応が難しい状況が「高度なまで対応困難」になるとし、移動式かつ相互関連式の地対空ミサイル装備がパッシブセンサー他で米軍機を探知可能となる事態を想定した。
「こうした装備の威力が高まり、各地に配備されたところに新鋭戦闘機、電子戦機、サイバー攻撃他の脅威が加われば米軍機には全方面で多様な範囲で難易度が上がる」とある。
現時点ではこの想定に対応可能な機材は米空軍にないとCSBAは指摘している。B-21爆撃機の生産がノースロップ・グラマンにより始まったが実戦投入は2020年代なかごろの目標だ。
中国、ロシアが高性能かつ広範囲の防空体制を構築するなか、長距離ステルス爆撃機で防空網をかいくぐり、地対空ミサイル陣地を粉砕し重要施設を破壊し僚機に進入路をつくりスタンドオフ攻撃させさらに深部攻撃をさせることが米国で重要性を増している。
だがCSBA分析では空軍のB-21導入規模は不十分とある。
「空軍想定のB-21の100機配備では大国相手のハイエンド戦ひとつだけでも不足」とし、B-21レイダー288機の導入を提言した。
CSBAはB-21調達のペースを早め「年間生産を2020年代末で10ないし20機に増やせば2030年までに55機のB-21が揃う」としている。
一方でB-52およびB-2は維持し、B-1はB-21就役と交換で退役させるべきとある。
This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.2030年時点の米空軍機材整備提言。This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.


戦闘機部隊


F-15Xをボーイングから調達すべきか


研究報告は明確に「ノー」とし、新規製造F-15に予算を使えば次世代戦闘機予算を消費する、空軍には新型機の早期実現の予算が必要だとする。
F-15Xは「第四世代プラス機材」で高性能だが将来の過酷な環境下で生存の可能性なしと評価し、「空軍はF-15C/Dの退役後はF-35A改装型を今後登場する航空優勢用のシステムファミリーへのつなぎとすべき」とする。
研究では第六世代戦闘機(侵攻型制空戦闘機PCA)の開発を優先すべきでF-35Aの年間70機調達を急ぐべきとしている。
PCAの実態は不明だが、極秘事業として開発は初期段階にある。研究では高速長距離性能のシステムファミリーとして敵領空深くに侵攻し防空体制を無力化し僚機に侵入口を開く機材と想定している。
PCA開発を促進すれば2030年までに最低50機の導入は可能で、B-21開発事業を範とすべきとする。「成熟技術を最大限活用し他機で開発ずみのミッションシステムを採用すれば時間と費用を短縮してPCAが実現できる」とあり、「同機の性能はいますぐにでも必要であり、開発に最高度の優先順位をつけるべき」としている。
CSBAはF-35の運用機数が増えることを前提にF-16の順次退役も提言する。またF-22ラプターおよびF-15Eの近代化改修も提言。A-10ウォートホッグ10個飛行隊は2030年代までに予定通り退役させるが近接航空支援の専用機材は整備すべきでないとしている。
「将来の精密攻撃可能な機材で近接航空支援能力も可能となるので空軍はA-10後継機として航空優勢が確保された環境でしか運用できない機材は開発すべきでない」


給油機


空軍の給油機457機で機齢平均が53年となっているように給油機は旧式化しており、将来の脅威環境に対応できない。そのため空軍は最新の給油機ボーイングKC-46調達を継続しKC-10の全機退役から始めKC-135も順次退役させるべきとCSBAは説明。
2030年までにKC-10は全機KC-46に置き換え、KC-135で最古参の50機を退役させる。KC-46が179機そろうと給油機は合計520機になる。
その時点でKC-46は改修し「通信状況認識中継点として多ドメイン運用の支援ならびに脅威への対抗手段機能の実施」を可能にすべきと提言している。
さらにKC-46に続く給油機を早期開発し630機体制を確立すべきとする。CSBAの考える将来の給油機は米国内でKC-46等有人機を運用し、国外では小型無人機を任意有人操縦機として厳しい空域で運用するもので戦闘機等の燃料需要に分散型の「オフロードポイント」を確保する。
小型無人給油機を制空権が未確保だが低脅威度の空域にも進出させれば「侵攻機の飛行距離を延長させ」つつパイロット等の人命を危険にしない方法が実現できると報告書は指摘。


ISR/軽攻撃無人機の将来像
2030年時点の米空軍はMQ-9リーパーを今日同様に供用するが、使用用途はかわり、本土防空任務にもあてる。だがCSBAは「喫緊の必要」としてステルス戦闘UAVのMQ-X開発をあげ、攻撃、電子攻撃、叡空任務をこなし他の無人機有人機との共同作戦もできる機体を想定する。


各種ステルスUCAVの開発が中途で挫折している。一例が海軍が進めていた空母運用型攻撃偵察機UCLASSで、2016年に中止となり、その後MQ-25給油無人機として復活した。
CSBAは空軍はこうした経験をもとに「敵の強固な防空体制の中に侵入し残存可能なUCAVをMQ-Xとして至急開発すべき」と述べている。MQ-Xは68機必要とし、すぐ開発開始すれば2030年頃には40機がそろうと述べた。
An MQ-9 Reaper at Nigerien Air Base 101, Niger. (Joshua R. M. Dewberry/U.S. Air Force)
An MQ-9 Reaper at Nigerien Air Base 101, Niger. (Joshua R. M. Dewberry/U.S. Air Force)


空軍はファミリー構成の無人機をMM-UASつまり多任務無人航空システムとして配備し現行無人機各種と2030年代に交代させるのがよいとCSBAは述べている。MM-UASは既存技術をもとにするか現行機材を発展させてもよいとある。
新型機は航空優勢が確保ずみ空域、未確保空域双方に投入され偵察、空爆、通信中継等各種ミッションをこなす。


ISR とBMC2 機材
空軍の全装備中でもISR機材および戦闘管理統制指揮機材ほど革新的変化が2030年代に必要となる機材はないとCSBAは考察。
U-2スパイ機、RQ-4グローバルホーク無人機、E-3早期警戒機はそれぞれ2030年まで運用を続けるべきとある。RC-135ファミリーの特殊任務機材リヴェットジョイント、コブラボール等は2040年代にかけ供用可能だ。ただしE-8CJSTARS地上監視機は2020年代中頃に退役が必要となり、そこで生まれる能力ギャップは他機種で埋めるべきと同シンクタンクは考えた。
CSBA予測で空軍に高性能戦闘管理システムが登場するのは2030年代初期とし、21組のシステム導入を提言。
空軍が考える高性能戦闘管理システムは各種システムの組み合わせファミリー構造で指揮統制機能だけでなく偵察監視機能を対地、対空で分散型で実現し、制空権の未確立空域への投入も想定する。ただし、空軍は統合するセンサー、機体、通信機器の種類を明示していない。
これに対しCSBA提言はは大きく異なり、敵地侵攻型ISR無人機P-ISR)を2030年代中に開発し、「空軍の状況認識機能の将来像として最大の優先順位をつけるべき存在」としている。
現時点で空軍にそのような機材の開発構想はない、少なくとも公表ずみの案はない。だがCSBA報告書は無人スパイ機が将来のロシア、中国との武力衝突で大きな役割を果たすと予見する。
「長距離侵攻型ISR機材は北大西洋条約加盟同盟国へ侵攻する装甲車両部隊等の阻止攻撃に不可欠になる」としロシア想定の戦闘を想定している。「また移動式地対空ミサイルの探知、把握、追尾、捕捉にも必要な装備となり、中国、ロシアの接近阻止領域拒否用ハイエンド装備への対応にもつながる」■

2017年2月13日月曜日

★★米空母の「軽」空母構想は実現するか



CSBA報告書を米海軍が前向きに捉えているようです。予想と違っていますね。新しい考え方を取りいれる態度がある海軍には将来性が感じられます。ただ報告書では財源を触れているのでしょうか。フォード級CVNの追加建造、コロンビア級新型ミサイル原潜と大型案件が控える中でCVL建造が簡単にできるでしょうか。そこで、艦体は日本が建造し、搭載航空部隊は米側が担当する案はいかがでしょうか。(英海軍の新型空母の例あり)現行のいずも級より相当大きくなりますが、日本にも有益な技術的進歩を実現する機会になりませんかね。

The National Interest

Will the U.S. Navy Build 'Light' Aircraft Carriers (Armed with Stealth Fighters)?

February 11, 2017


  1. CSBA(戦略予算評価センター)がまとめた将来の海軍戦力整備案はCVN超大型空母12隻体制の維持とともに新たにCVL軽空母の開発をすすめるべきと提言している。新型空母が実用化するまでは現在の大型揚陸強襲艦をかわりに利用するとする。
  2. 「4万から6万トン規模の小型通常動力CVLを想定し、ARG揚陸即応集団の一部として抑止効果戦力を形成することを提言したい」とCSBA報告は言及。「CVLは兵力投射効果および制海能力を提供し、小規模交戦、攻撃、CASを戦闘初期段階で行い、CVNにはハイエンド交戦を複数艦で行わせる前方攻撃部隊あるいは北部ヨーロッパ抑止部隊に専念させる」
  3. 構想中の新型通常動力空母は第二次大戦時に生まれたミッドウェー級に匹敵する規模で、相当の航空戦力を運用するだろう。「当初は既存のLHA/LHD揚陸強襲艦をCVLとして運用し、F-35Bを20機から25機搭載する。各艦が耐用年数が終りを迎える頃に専用に建造したCVLが登場しカタパルトと拘束ギアを搭載する」(CSBA報告書)
  4. CVL搭載の航空部隊は現在の海兵隊航空戦闘部隊を発展させればよい。「CVL航空部隊にはF-35Bが20機でISR、AEA他小規模CAS、SUW他攻撃任務の目標捕捉を行わせ、抑止部隊として機能させる。空母搭載用のF-35Bは海兵隊の調達機数を考慮している。この配置で陸上基地から運用するUDP(部隊展開)に影響が出るが、UDP運用は域内のARGが支援し、複数陸上基地から柔軟運用が可能となる。AEWやC2ではLHA/LHD航空部隊は陸上基地運用の哨戒機やE-2Dの支援を受ける」
  5. 最終的にはCLV航空部隊にも専用の電子攻撃機や早期警戒機を配備する。「カタパルト・拘束ギア搭載してCVLを建造すれば、航空部隊にはUCAV、輸送給油用無人機、AEW機をそれぞれ一機ないし二機加えられる。海軍海兵隊の航空部隊は統合可能になるはずで、すでにCVNでこれは実現している」
  6. 米海軍はCSBAに報告書作成を委託し、構想を前向きに捉えているようだ。提言に盛り込まれた考え方の多くが参考になる、とジョン・リチャードソン作戦部長も述べている。「勝利をおさめるために思考を磨く必要があり、研究成果は参考になる。まさしく我々が求める内容が盛り込まれた新鮮な発想だ。提言は現在の考え方を裏付けながら、さらに先を目指すもの。検討が必要な内容もあるが研究成果を分析し、戦闘演習、実験、技術実証、試作に活かしたい」
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.